JP3872147B2 - マルチストランドスチールコード - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は互いに撚り合わされた多数のストランドから成るスチールコード、すなわちマルチストランドスチールコード(multi-strand steel cord) に関する。
【0002】
【従来の技術】
十乃至二十年以前、マルチストランドスチールコードはゴムタイヤ、コンベヤーベルト、伝動ベルト等のエラストマー製品を補強する標準コードであった。
しかし、比較的細い素線とその結果得られる高いレベルの疲れ強さ(fatigue resistance)或いはその高い引張強さとのゆえにマルチストランドスチールコードが真に必要とされた分野を除いて、より大径の、且つ、より少数の素線から成る、より簡易な構造を望む一般的傾向によってマルチストランドスチールコードは駆逐された。現在、オフロードタイヤのような重荷重タイヤ、コンベヤーベルト、タイミングベルト、伝動ベルト等を補強する場合にはマルチストランドスチールコードが尚一般に使用されている。
大抵のマルチストランドスチールコードの製造には費用がかかり、その最終工程を要約すると下記の如くである。
(a)素線を繰り出し、素線の最終直径が得られるまで湿式伸線法で素線を伸線し、このように引き抜き加工した素線を巻き取る。
(b)引き抜き加工された素線を繰り出し、該素線を個々のストランドに撚りあげ、できたストランドを巻き取る。
(c)前記ストランドを繰り出し、該ストランドを最終コードに撚りあげ、できたコードを巻き取る。
特に上記工程(b)は最終コードの個々のストランドに対して別々に行わなければならず、例えば、7×19型コードの場合には七回行わねばならず、マルチストランドスチールコード製造工程の生産性と効率とに対し悪影響を与えている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、個々のストランドを製造する独立した工程(b)を省略でき、一般的に使用されている7×7型コード、7×19型コード、7×31型コード等のマルチストランドスチールコードを代替できる新たな系列のマルチストランドスチールコードを提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
互いに撚り合わされた八本以上のストランドから成るスチールコードが、本発明に準拠して得られる。各ストランドは、ほぼ同じコード撚り方向と、ほぼ同じコード撚りピッチとを有する。前記ストランドは各々、互いに撚り合わされた二乃至五本の個別の素線から成っている。
「コード撚りピッチ」という用語は、最終コード内で当該ストランドが360度回転するのに必要な軸方向距離を表す。
後述する如く、各ストランドが同じコード撚り方向と同じコード撚りピッチとを有することにより、マルチストランドスチールコードを経済的且つ高効率的方法で製造することができる。また各ストランドが二乃至五本だけの個別の素線で構成されており、従って中心素線すなわち心線がないので、個々のストランド内での、中心素線移動(core filament migration) の問題を経験することなくマルチストランドスチールコードを製造することができる。
【0005】
本発明の好適な一実施例において、総てのストランドにおける個々のスチール素線は、同じストランド撚り方向と、ほぼ同じストランド撚りピッチとを有する。
用語「ストランド撚りピッチ」は最終コードのストランド内で1本の素線が360度回転するのに必要な軸方向距離を表す。
【0006】
従来技術の7×7型、7×19型、7×31型のコードに対する好適な代替品を提供する為、本発明のマルチストランドスチールコードにおけるストランド数は少なくとも八本であり、九本、十二本、十五本、……とすることができる。
しかしながら、好適な構成は十二、十九、或は二十七本のストランドから成り、これらはそれぞれ12×n型コード、19×n型コード及び27×n型コードと表示される。ここで、nは各ストランド内の素線数であり、二乃至五本の範囲内にある。
12×n型コードは三本の中心部ストランドと九本の外側ストランドとを有する。
19×n型コードは一本の中心ストランドと、六本の中間部ストランドと、十二本の外側ストランドとを有する。
27×n型コードは三本の中心部ストランドと、九本の中間部ストランドと、十五本の外側ストランドとを有する。
【0007】
繰り返し外部曲げ力の影響下で中心部ストランドがコードからとび出すのを防ぐためには、中心部ストランドが外側ストランドの及び、又は中間部ストランドの外径より大きい外径を有することが望ましい。
【0008】
ストランド撚り方向はコード撚り方向と同じでも反対でも構わない。後述の説明で明らかになるように、ストランド撚り方向がコード撚り方向と等しいマルチストランドスチールコードは、効率の高い方法で製造することができる。
ストランド撚りピッチは、コード撚りピッチと等しくても、或は異なっていても構わない。
【0009】
前述のマルチストランドスチールコードはエラストマー製品の補強に好適であるが、このことはマルチストランドスチールコードが下記性質を単独に、または組合わせて有することを意味する。
・素線直径は0.04mm(例えばタイミングベルト補強用)から1.1mm(例えばコンベヤーベルト用)の範囲にある。
・スチールの組成は、通常0.60%の最小炭素含有量、0.20乃至0.90%のマンガンと0.10乃至0.90%のシリコンとを含み、硫黄、燐含有量はそれぞれ好ましくは0.03%未満とする。クロム、硼素、コバルト、ニッケル等の付加的成分を付加することができる。
・素線は場合に応じて、亜鉛等による耐食被覆で覆うか、または、エラストマー材料に対する付着力を増す黄銅、青銅等の被覆を施している。
【0010】
マルチストランドスチールコードをエラストマー製品補強分野以外で他の用途に応用することもできる。その様な場合には、本発明のマルチストランドスチールコードをポリアミド等の合成材料で被覆することも可能である。
【0011】
【発明の実施の形態】
添付の図面に基づいて、本発明を更に詳細に説明する。
【0012】
図1は12×2型マルチストランドスチールコード10の横断面を示す。該コード10は三本の中心部ストランド12と九本の外側ストランド14とから成っている。中心部ストランド12と外側ストランド14とは、各々二本の素線16のみから構成されている。また中心部ストランド12と外側ストランド14とは、最終コード10内で、各々同じコード撚りピッチと、同じコード撚り方向とを有している。
Figure 0003872147
【0013】
図2は12×3型マルチストランドスチールコード10の横断面を示す。スチールコード10は三本の中心部ストランド12と、九本の外側ストランド14とから成っている。中心部ストランド12の素線18の外径が外側ストランド14の素線16の外径より大きいので、中心部ストランド12の外径は外側ストランド14の外径より幾分大きくなっている。
下記に一例を示す。0.175及び0.15は使用素線の直径(mm)を示す。
3×3×0.175 | 9×3×0.15
コード撚りピッチ(mm)及び撚り方向 = 8mmZ
ストランド撚りピッチ(mm)及び撚り方向 = 8mmS
【0014】
図3は、同様に三本の中心部ストランド12と九本の外側ストランド14とから成る、他の実施例のコードの横断面を示す。中心部ストランド12が三本の素線18で構成されているが、外側ストランド14が二本の素線16のみで構成されているので、中心部ストランド12の外径は外側ストランド14の外径より大きくなっている。中心部ストランド12の素線18の外径と外側ストランド14の素線16の外径とは同じである。
直径0.15mmの素線を用いた例としては:
3×3×0.15 | 9×2×0.15
コード撚りピッチ(mm)及び撚り方向 = 16mmS
ストランド撚りピッチ(mm)及び撚り方向 = 8mmS
【0015】
図4は19×4型マルチストランドスチールコード10の横断面を示す。コード10は一本の中心部ストランド12、六本の中間部ストランド20及び十二本の外側ストランド14から成っている。各ストランドは四本の素線で構成されているが、中心部ストランド12の四本の素線の外径は、中間部ストランド20及び外側ストランド14の各素線の外径より幾分大きい。
【0016】
図5は27×2型マルチストランドスチールコード10の横断面を示す。コード10は三本の中心部ストランド12、九本の中間部ストランド20及び十五本の外側ストランド14から成っている。各ストランドは二本の素線で構成されているが、中心部ストランド12の二本の素線18の外径は、中間部ストランド20及び外側ストランド14の各素線16の外径より幾分大きい。
【0017】
本発明のマルチストランドスチールコードは、引張強さまたは他の機械的性質を損なうことなしに普通のマルチストランドスチールコードの代替物として使用できる。
例えば:
・49本の素線を有する普通の7×7×d型コードは、38本の素線を有する本発明の19×2×d1 型コード(d1 > d)、または、57本の素線を有する19×3×d2 型コード(d2 < d)で代替できる。
・133本の素線を有する普通の19×7×d型コードは、135本の素線を有する本発明の27×5×d型コードで代替できる。
図6は、本発明の12×3型マルチストランドスチールコードが、どのように単一のコード製造工程で製造でき、従って、個々のストランドを製造する多段階工程を省略できるかを示す。
【0018】
図6の左側からスタートして、三本の別個の素線16が一つの供給スプール22から、または、三個の別個の供給スプール22から引き出される。素線16は変向用のプーリ23を経由し、フライヤ24を過ぎ、案内プーリ25へと導かれる。フライヤ24が、回転速度nRAD で回転し、素線16に一回転につき二つの撚りを与えることによって、(仮)ストランド14が製造される。この作業は同時に十二のセットで行われる。十二台の供給スプール22とそれらに対応するフライヤ24との全体セットでいわゆる回転繰出し装置(rotating pay-off installation) が構成される。十二本の仮ストランドが組立場所(assembly point)26に集められ、仮より装置28に導かれる。仮より装置28は、下流のダブルツイスタの回転速度nB の二倍速で回転する仮より装置28の段階でコードが一時的に最終コード撚りピッチに達するので、この仮より装置28の機能は最終コードで必要とされる正確な長さのストランドを引き出すことである。撚られたストランドは、仮より装置28を出た後、案内プーリ30を経由しフライヤ32と変向プーリ34を過ぎて導かれ、最終的にスプール36に巻き取られる。フライヤ32は回転速度nB で回転し、前記撚られたストランドに一回転につき二つの撚りを与え、マルチストランドスチールコード10の最終コード撚りピッチ及び(回転フライヤ24と一緒に)最終ストランド撚りピッチを決定する。
【0019】
第一の例として下記の状態を仮定する。
・ダブルツイスタのフライヤ32は、図6に示す如く矢印38の方向に2000rpmの回転速度nB で回転する(Zよりを与える)。
・回転繰出し装置のフライヤ24は、矢印40の方向に4000rpm(=2×nB ) の回転速度nRAD で回転する(Sよりを与える)。
その結果、下記特性を有する12×3型マルチストランドコードができる。
・コード撚りピッチ(mm)及び撚り方向 = XmmS
・ストランド撚りピッチ(mm)及び撚り方向 = XmmZ、 これはフライヤ24によりストランドに与えられる撚りの半分は、最終コード製造工程における下流のフライヤ32により相殺されているからである。
【0020】
第二の例として下記の状態を仮定する。
・ダブルツイスタのフライヤ32は、図6に示す矢印38の反対方向に1000rpmの回転速度nB で回転する(Sよりを与える)。
・回転繰出し装置のフライヤ24は、矢印40の方向に2000rpm(=2×nB )の回転速度nRAD で回転する(同じくSよりを与える)。
その結果、下記特性を有する12×3型マルチストランドコードができる。
・コード撚りピッチ(mm)及び撚り方向 = 2XmmS、 これはこのフライヤ32が第一例のフライヤ32の半分の速度で回転するからである。
・ストランド撚りピッチ(mm)及び撚り方向 = XmmS、 これは回転繰出し装置のフライヤ24による撚りと、ダブルツイスタのフライヤ32による撚りとが加算されているからである。
【0021】
この第二の例は、本発明に基づくマルチストランドコードの有益な実施例を示すものである。もしもコード撚り方向とストランド撚り方向とが等しければ、回転繰出し装置のフライヤで生ずる撚りはダブルツイスタのフライヤで生ずる撚りに加えられ、その結果、最終の撚りが、最小の撚りエネルギーで得られる(第二例の回転速度と、第一例の遥かに高速な回転速度を比較されたい)。
【0022】
回転繰出し装置のフライヤによる撚りがダブルツイスタのフライヤによる撚りによって100%相殺される事態を避けるため、回転繰出し装置のフライヤの回転速度nRAD は、ダブルツイスタのフライヤの回転速度nB とはとにかく異なっている。そのような事態で得られるスチールコードにおいては、ストランド間の差異が無くなり、ストランド撚り方向と撚りピッチとに等しいコード撚り方向と撚りピッチとを有する素線のみで構成される、いわゆるコンパクトスチールコード(compact steel cords) が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に基づく12×n型コードの横断面を示す。
【図2】本発明に基づく12×n型コードの横断面を示す。
【図3】本発明に基づく12×n型コードの横断面を示す。
【図4】本発明に基づく19×n型コードの横断面を示す。
【図5】本発明に基づく27×n型コードの横断面を示す。
【図6】本発明に基づくマルチストランドコードの製造方法を略図で示す。
【符号の説明】
10 スチールコード
12 中心部ストランド
14 外側ストランド
16 素線
18 素線
20 中間部ストランド
22 供給スプール
24 フライヤ
26 組立場所
28 仮より装置
32 フライヤ
36 スプール

Claims (11)

  1. スチールコード(10)であって、互いに撚り合わされた八本以上のストランド(12、14)から成り、前記ストランドそれぞれが前記スチールコード内において同じコード撚り方向と同じコード撚りピッチとを有し、且つ、前記ストランドそれぞれが、二乃至五本の素線(16、18)を撚り合わされて成り、前記各々のストランドにおける素線が、同じストランド撚りピッチに、同じストランド撚り方向で撚られ、各々の前記ストランド撚りピッチが、前記コード撚りピッチと異なるか、または各々の前記ストランド撚り方向が、前記コード撚り方向と異なることを特徴とするスチールコード。
  2. 前記ストランドすべてにおける各素線が、同じストランド撚り方向に、同じストランド撚りピッチで撚られていることを特徴とする請求項1に記載するスチールコード。
  3. 前記スチールコード内のストランド数が十二本で、三本の中心部ストランドと九本の外側ストランドとから成ることを特徴とする請求項1または2に記載するスチールコード。
  4. 前記外側ストランドのすべてが、同じ外側ストランド直径を有し、前記中心部ストランドの少なくとも一つが前記外側ストランドのストランド直径より大きなストランド直径を有することを特徴とする請求項3に記載するスチールコード。
  5. 前記外側ストランドのすべてが、同じ素線径の素線を有し、前記少なくとも一つの中心部ストランドが、前記外側ストランドの素線の素線径より大きな直径を有する素線から成ることを特徴とする請求項4に記載するスチールコード。
  6. 前記外側ストランドのすべてが、同数の素線を有し、前記少なくとも一つの中心部ストランドが、前記外側ストランドのよりも多数の素線を有することを特徴とする請求項4または5に記載するスチールコード。
  7. 前記スチールコード内のストランド数が十九本で、一本の中心部ストランドと、六本の中間部ストランドと、十二本の外側ストランドとから成ることを特徴とする請求項1または2に記載するスチールコード。
  8. 前記中間部ストランドのすべてが、同じ直径を有し、前記外側ストランドのすべてが、同じ直径を有し、前記中心部ストランドの直径が、前記中間部ストランドの直径より大きく、且つ、前記外側ストランドの直径よりも大きいことを特徴とする請求項7に記載するスチールコード。
  9. 前記スチールコード内のストランド数が二十七本で、三本の中心部ストランドと、九本の中間部ストランドと、十五本の外側ストランドとから成ることを特徴とする請求項1または2に記載するスチールコード。
  10. 前記中間部ストランドのすべてが、同じ直径を有し、前記外側ストランドのすべてが、同じ直径を有し、少なくとも一つの前記中心部ストランドの直径が、前記中間部ストランドの直径より大きく、且つ、前記外側ストランドの直径より大きいことを特徴とする請求項9に記載するスチールコード。
  11. 幾つかの前記ストランドにおいて前記素線が、他のストランドにおけるストランド撚り方向またはストランド撚りピッチとは異なるストランド撚り方向またはストランド撚りピッチで撚られていることを特徴とする請求項1に記載するスチールコード。
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