JP3871592B2 - 心電信号処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、浴槽内に設置された電極によって検知された入浴者の心電信号に基づいて、入浴者の心拍数を算出する心拍数算出処理等の所定の信号処理を行う心電信号処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
入浴時に心拍を測定する浴槽においては、心臓に負担をかけずに入浴を行うことができるように、従来から、浴槽に浸かっている入浴者の心拍数や心電波形等の心電情報を報知する心電情報報知システムが開発されており、この種の心電情報報知システムとしては、例えば、図4に示すようなものがある。
【0003】
この心電情報報知システム50は、同図に示すように、浴槽に浸かっている入浴者が発する心電信号を、浴槽内の湯水を介して検出する電極51a、51b、51cと、この電極51a、51bによって検出された心電信号に基づいて、単位時間当りの心拍数を算出する心拍数算出処理を行う心電信号処理装置52と、この心電信号処理装置52によって算出された単位時間当りの心拍数を表示する表示装置58とから構成されており、心電信号処理装置52は、電極51a、51b間の電位差を心電信号として増幅する差動増幅回路53と、この差動増幅回路53によって増幅された心電信号からノイズ成分を除去するフィルタ回路54と、このフィルタ回路54によってノイズ成分が除去された心電信号を増幅する増幅回路55と、この増幅回路55によって増幅された心電信号の波形を整形する波形整形回路56と、この波形整形回路56によって波形整形された心電信号に基づいて、単位時間当りの心拍数を算出する演算回路57とを備えている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、人間の心電信号は、その周波数帯域が10〜30Hzであり、しかも、上述したように、浴槽内の湯水を介して心電信号を検出する場合は、人間の肌に心拍検出電極を直接接触させた状態で心電信号を検出する場合に比べて、湯水の抵抗分だけ信号強度が小さくなるが、電源周波数同期ノイズの強度は変化しないので、心電信号と電源周波数同期ノイズの信号強度の比(S/N比)が悪くなる。このため、上述したような心電信号処理装置52に搭載されるフィルタ回路54としては、電源周波数以上のノイズを除去することができるように、通常、カットオフ周波数が45Hz付近に設定されたローパスフィルタが使用されることになる。
【0005】
しかしながら、上述したように、心電信号の周波数帯域は、電源周波数に接近しているため、遷移帯における減衰が緩やかな周波数特性を有する低次のローパスフィルタを使用したのでは、電源周波数同期ノイズを確実に減衰させることができず、適正に心拍数を算出することができない場合がある。
【0006】
このため、上述したような心電信号処理装置52では、遷移域において急激な減衰を示す周波数特性を有する6次または8次のローパスフィルタを使用する必要があるが、高次のローパスフィルタは、部品コストが高くなると共に、回路自体が大きくなるので、それに伴って基板面積が大きくなり、逆に、輻射ノイズの影響を受けやすくなるといった問題がある。
【0007】
そこで、この発明の課題は、高次のローパスフィルタを使用することなく、電源周波数同期ノイズを確実に除去することができる、小型かつ安価なノイズフィルタを備えた心電信号処理装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段及びその効果】
上記の課題を解決するため、請求項1にかかる発明は、浴槽内に設置された電極によって検知された入浴者の心電信号に基づいて、所定の信号処理を行う心電信号処理装置において、前記心電信号から電源周波数以上のノイズを除去するノイズフィルタを備え、前記ノイズフィルタは、バンドエリミネーションフィルタと、カットオフ周波数が前記バンドエリミネーションフィルタの中心周波数より低い所定の周波数帯域に設定されている2次または4次のローパスフィルタとから構成されており、前記バンドエリミネーションフィルタは、その中心周波数と前記ローパスフィルタのカットオフ周波数との間の周波数帯域において急激な減衰を示す周波数特性を有しており、前記ローパスフィルタは、通過域におけるカットオフ周波数の近傍のQ値が高くなっていることを特徴とする心電信号処理装置を提供するものである。
【0009】
以上のように、この心電信号処理装置では、心電信号から電源周波数以上のノイズを除去するノイズフィルタを、通常使用される安価な2次または4次のローパスフィルタと、部品点数が少なく、安価に製造することができる、中心周波数とローパスフィルタのカットオフ周波数との間の周波数帯域において急激な減衰を示す周波数特性を有しているバンドエリミネーションフィルタとによって構成しているので、遷移域において急激な減衰を示す周波数特性を有する高次のローパスフィルタと同等の性能を、小型かつ安価に実現することができ、しかも、高次のローパスフィルタとは異なり、輻射ノイズの影響を受けにくいという効果が得られる。
【0010】
特に、この心電信号処理装置では、ローパスフィルタとして、通過域におけるカットオフ周波数の近傍のQ値が高くなっているものを使用しているので、ローパスフィルタのカットオフ周波数より低い周波数帯域におけるバンドエリミネーションフィルタの減衰を抑えることができる。従って、ローパスフィルタのカットオフ周波数より低い周波数帯域においてほとんど減衰しない高価なバンドエリミネーションフィルタを使用しなくても、心電信号の減衰を簡単かつ確実に抑えることができる。
【0011】
具体的には、請求項2にかかる発明の心電信号処理装置のように、中心周波数が電源周波数より高い所定の周波数帯域に設定されたバンドエリミネーションフィルタと、カットオフ周波数が心電信号の周波数帯域より高い所定の周波数帯域に設定されたローパスフィルタとから構成されたノイズフィルタを使用することによって、電源周波数同期ノイズを確実に減衰させることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。図1に示すように、この心電情報報知システム1は、浴室R内に設置された浴槽Bに対する自動注湯機能や追焚機能の他、シャワーやカラン等への給湯機能を備えた風呂追焚機能付給湯器(以下、風呂給湯器という)10と、この風呂給湯器10を操作するために浴室R及び台所に設置される浴室用操作リモコン20a及び台所用操作リモコン20bと、浴槽Bに浸かっている入浴者の心電信号を検出するために浴槽B内に設置される心拍検出電極31、32、33と、これらの心拍検出電極31、32、33がそれぞれ接続され、心拍検出電極31、32、33によって検出された心電信号に基づいて、1分間当りの心拍数を算出する心拍数演算ユニット40とを備えており、心拍数演算ユニット40と浴室用操作リモコン20a及び台所用操作リモコン20bとが、風呂給湯器10の端子台を介して、直流電圧に信号を重畳して伝送する2芯線によって接続されている。
【0013】
前記風呂給湯器10、前記浴室用操作リモコン20a及び台所用操作リモコン20bには、通信手段であるシリアルインターフェースを介して相互に通信可能なコントローラ11、21a、21bがそれぞれ搭載されており、これらのコントローラ11、21a、21bが相互に連携をとりながら、風呂給湯器10の運転動作を統括的に制御している。
【0014】
また、浴室用操作リモコン20a及び台所用操作リモコン20bは、風呂設定温度、給湯設定温度等の風呂給湯器関連情報や入浴者の心拍数等の心電情報等を表示する表示部22a、22bをそれぞれ備えており、これらの表示部22a、22bには、風呂給湯器関連情報または心電情報のいずれを表示させるのかを切り替える(選択する)ための報知モード切替(選択)用のメニュースイッチ(図示せず)が表示されるようになっている。
【0015】
一対の心拍検出電極31、32は、浴槽Bに浸かった入浴者の心臓を挟むように、浴槽Bにおける一端側の左右両側壁に、残りの心拍検出電極(中性点)33は、浴槽Bに浸かった入浴者の足元側(他端側)における浴槽Bの側壁にそれぞれ設置されており、各心拍検出電極31、32、33は、浴槽Bに貯留された湯水を介して入浴者の心電信号が検出されるように、所定の高さ位置に設置されている。
【0016】
前記心拍数演算ユニット40は、通信手段であるシリアルインターフェースを介して、浴室用操作リモコン20aや台所用操作リモコン20bに通信可能に接続されており、この心拍数演算ユニット40によって、所定の時間間隔(例えば、2秒間隔)毎に算出された、1分間当りの心拍数が、同様の時間間隔で浴室用操作リモコン20aや台所用操作リモコン20bのコントローラ21a、21bに送信されるようになっている。
【0017】
この心拍数演算ユニット40は、図2(a)に示すように、心拍検出電極31、32、33がそれぞれ接続され、心拍検出電極31、32、33によって検出された心電信号から周波数の高いインパルスノイズを除去する第1フィルタ回路41と、この第1フィルタ回路41によってノイズが除去された心電信号を増幅する差動増幅回路42と、この差動増幅回路42によって増幅された心電信号から電源周波数以上のノイズを除去する第2フィルタ回路43と、この第2フィルタ回路43によってノイズが除去された心電信号を再度増幅する増幅回路44と、この増幅回路44によって増幅された心電信号が入力されるマイクロコンピュータ45とを備えており、このマイクロコンピュータ45が、入力された心電信号に基づいて1分間当りの心拍数を算出し、この心拍数をシリアルインターフェース(I/F)46を介して浴室用操作リモコン20aや台所用操作リモコン20bのコントローラ21a、21bに送信するようになっている。
【0018】
前記第2フィルタ回路43は、同図(b)に示すように、バンドエリミネーションフィルタ43aと、2次のローパスフィルタ43bとから構成されており、バンドエリミネーションフィルタ43aは、その中心周波数が80Hzに、ローパスフィルタ43bは、そのカットオフ周波数が45Hzにそれぞれ設定されている。
【0019】
前記バンドエリミネーションフィルタ43aは、抵抗及びコンデンサを組み合わせたパッシブフィルタであり、図3(a)に示すように、ローパスフィルタ43bのカットオフ周波数(45Hz)より低い周波数帯域においてある程度の減衰を示し、ローパスフィルタ43bのカットオフ周波数(45Hz)と中心周波数(80Hz)との間の周波数帯域において急激な減衰を示す周波数特性を有している。
【0020】
前記ローパスフィルタ43bは、オペレーショナルアンプ、抵抗及びコンデンサを組み合わせたアクティブフィルタであり、同図(b)に示すように、カットオフ周波数(45Hz)より低い周波数帯域のQ値を高くすることによって、その周波数帯域において信号を強調する周波数特性を有している。
【0021】
従って、上述したバンドエリミネーションフィルタ43aとローパスフィルタ43bとを組み合わせた第2フィルタ回路43では、バンドエリミネーションフィルタ43aの45Hzより低い周波数帯域における減衰域が、ローパスフィルタ43bの増幅域によって補われ、同図(c)に示すように、45Hzより低い周波数帯域では、ほとんど減衰を示さず、45〜80Hzの周波数帯域では、急激に減衰を示す周波数特性を有することになり、10〜30Hzの周波数帯域にある心電信号を減衰させることなく、電源周波数同期ノイズのみを確実に減衰させることができる。
【0022】
以上のように、この心拍数演算ユニット40では、心電信号から電源周波数以上のノイズを除去する第2フィルタ回路43を、部品点数が少なく、安価に製造することができる、80Hzと45Hzとの間の周波数帯域において急激に減衰を示す周波数特性を有しているバンドエリミネーションフィルタ43aと、カットオフ周波数が45Hzに設定された、通常使用される安価な2次のローパスフィルタ43aとによって構成することで、カットオフ周波数が45Hzに設定された、遷移域において急激な減衰を示す周波数特性を有する高次のローパスフィルタと同等の性能を、小型かつ安価に実現することができ、しかも、高次のローパスフィルタを使用する場合とは異なり、輻射ノイズの影響を受けにくいという効果が得られる。
【0023】
また、この第2フィルタ回路43では、カットオフ周波数(45Hz)より低い周波数帯域のQ値を高くしたローパスフィルタ43bを使用することによって、バンドエリミネーションフィルタ43aの45Hzより低い周波数帯域における減衰を抑えるようにしているので、部品点数が多く、構成が複雑になる、45Hzより低い周波数帯域においてほとんど減衰を示さないバンドエリミネーションフィルタを使用する場合に比べて、同等の性能を低コストで実現することができる。
【0024】
なお、上述した実施形態では、ローパスフィルタ43bにおけるカットオフ周波数(45Hz)より低い周波数帯域のQ値を高くすることによって、バンドエリミネーションフィルタ43aにおける45Hzより低い周波数帯域の減衰を抑えるようにしているが、これに限定されるものではなく、45Hzより低い周波数帯域においてほとんど減衰を示さないバンドエリミネーションフィルタを使用することも可能である。
【0025】
また、上述した実施形態では、中心周波数が80Hzに設定されたバンドエリミネーションフィルタ43aと、カットオフ周波数が45Hzに設定されたローパスフィルタ43bとによって第2フィルタ回路43を構成しているが、これに限定されるものではなく、バンドエリミネーションフィルタ43aの中心周波数は、70〜90Hzの周波数帯域内、より好ましくは、75〜85Hzの周波数帯域内で適宜設定すればよく、ローパスフィルタ43bのカットオフ周波数は、30〜45Hzの周波数帯域内、より好ましくは、35〜45Hzの周波数帯域内で適宜設定すればよい。
【0026】
また、上述した実施形態では、第2フィルタ回路43を構成しているローパスフィルタ43bとして、2次のローパスフィルタを使用しているが、これに限定されるものではなく、4次のローパスフィルタを使用することも可能である。
【0027】
また、上述した実施形態では、心電信号の入力側にバンドエリミネーションフィルタ43aを設け、心電信号の出力側にローパスフィルタ43bを設けているが、これに限定されるものではなく、両者を逆に設けることも可能である。
【0028】
また、上述した実施形態では、パッシブフィルタであるバンドエリミネーションフィルタ43aと、アクティブフィルタであるローパスフィルタ43bとを組み合わせることによって、第2フィルタ回路43を構成しているが、これに限定されるものではなく、バンドエリミネーションフィルタ43a及びローパスフィルタ43bを、パッシブフィルタまたはアクティブフィルタのいずれによって構成することも可能である。
【0029】
また、上述した実施形態では、本発明にかかる心電信号処理装置の一例である心拍数演算ユニット40を使用した心電情報報知システム1について説明したが、これに限定されるものではなく、本発明の心電信号処理装置は、浴槽内に設置された電極によって間接的に検知された入浴者の心電信号に基づいて、種々の信号処理を行う場合に適用することができることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明にかかる心電信号処理装置の一実施形態である心拍数演算ユニットが使用されている心電情報報知システムを示す概略構成図である。
【図2】(a)は同上の心拍数演算ユニットを示すブロック図、(b)は同上の心拍数演算ユニットを構成している第2フィルタ回路を示すブロック図である。
【図3】(a)は同上の第2フィルタ回路を構成しているバンドエリミネーションフィルタの周波数特性を示す図、(b)は同上の第2フィルタ回路を構成しているローパスフィルタの周波数特性を示す図、(c)は同上の第2フィルタ回路全体の周波数特性を示す図である。
【図4】従来の心電信号処理装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 心電情報報知システム
10 風呂追焚機能付給湯器
20a 浴室用操作リモコン
20b 台所用操作リモコン
31、32、33 心拍検出電極(電極)
40 心拍数演算ユニット(心電信号処理装置)
41 第1フィルタ回路
42 差動増幅回路
43 第2フィルタ回路(ノイズフィルタ)
43a バンドエリミネーションフィルタ
43b ローパスフィルタ
44 増幅回路
45 マイクロコンピュータ
46 シリアルインターフェース
B 浴槽
R 浴室
Claims (2)
- 浴槽内に設置された電極によって検知された入浴者の心電信号に基づいて、所定の信号処理を行う心電信号処理装置において、
前記心電信号から電源周波数以上のノイズを除去するノイズフィルタを備え、
前記ノイズフィルタは、バンドエリミネーションフィルタと、カットオフ周波数が前記バンドエリミネーションフィルタの中心周波数より低い所定の周波数帯域に設定されている2次または4次のローパスフィルタとから構成されており、
前記バンドエリミネーションフィルタは、その中心周波数と前記ローパスフィルタのカットオフ周波数との間の周波数帯域において急激な減衰を示す周波数特性を有しており、
前記ローパスフィルタは、通過域におけるカットオフ周波数の近傍のQ値が高くなっていることを特徴とする心電信号処理装置。 - 前記バンドエリミネーションフィルタは、その中心周波数が電源周波数より高い所定の周波数帯域に設定されており、
前記ローパスフィルタは、そのカットオフ周波数が心電信号の周波数帯域より高い所定の周波数帯域に設定されている請求項1に記載の心電信号処理装置。
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