JP3869878B2 - 耐摩耗性シリコーンウェザーストリップ塗料 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明はウェザーストリップ塗料(目詰め塗料)として使用するに適する塗料組成物系に関する。特に本発明は水希釈性でありかつEPDMゴムのような通常のウェザーストリップ物質に塗布する場合、低い摩擦係数、改善された耐摩耗性及び改善された凍結防止能ならびに延長された浴寿命のような性質をもつ被覆を提供するシリコーン組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
凍結防止能をもつ種々のOH−末端ジオルガノシロキサン塗料は既知でありかつ容易に入手し得るものである。これらの塗料の大部分は紙及びその他の多孔質支持体を処理してその被覆を支持体に主として物理的固着によって接着させるように使用されている。プラスチック及びゴム表面のような非孔質支持体に対しては、これらの被覆の接着性は不良である。さらに、これらの被覆は摩耗による除去に対してほとんど耐性をもたない。これらの問題点のために、非孔質支持体用の塗料系はしばしば、たとえばEndoの米国特許第4,233,428号明細書に教示されるごとく、まずプライマーを塗布する工程と、ついで塗料物質を塗布する工程とを包含する二工程を必要とする。
【0003】
一工程用塗料組成物はSumidaの米国特許第4,252,933号明細書及びMurachiの米国特許第4,987,204号明細書に教示されている。非孔質支持体用のかゝる塗料組成物は良好な凍結防止能をもつ耐摩耗性の塗膜を与えるが、それは多量の有機溶剤を含有するものである。典型的な塗料浴はクロルエタン及びトルエンのような90%以上の溶剤を含有する。産業界は今や高濃度の有機溶剤を含有する塗料から離脱しつゝあり、そしてウェザーストリップ塗料として使用される水性塗料又は水希釈性塗料の開発がきわめて望ましい。
【0004】
紙剥離剤及び艶出剤のような水性シリコーン塗料は既知でありかつ入手容易である。たとえば、水性艶出剤はTraverら(ゼネラル・エレクトリック社)の米国特許第4,600,436号明細書に教示されている。アミン官能性シリコーンエマルジョンであるこの艶出剤はジオルガノポリシロキサン油、アミノ官能性シラン、重合触媒及び水の反応生成物である。
【0005】
Yipの米国特許第5,366,808号明細書にはウェザーストリップ塗料として使用するための水希釈性シリコーン系塗料の一工程施用法について教示されている。このYipの組成物はシリコーンエマルジョン基剤、接着促進剤及び触媒を包含する三液系である。Yipの組成物は良好な凍結防止能及び低い摩擦係数を示すが、その耐摩耗性はポリウレタン塗料系と比較して不良である。かゝる組成物の浴寿命は6時間未満である。
【0006】
上記引用した特許文献はいずれも良好な耐摩耗性及び延長された浴寿命をもつウェザーストリップ塗料として使用するに適する水希釈性シリコーン塗料系のための一工程施用法については教示していない。
したがって、EPDM基ゴムのような非孔質表面に塗布しかつそこで硬化することができ、それによって実質的に延長された浴寿命をもつ低摩擦係数をもち耐摩耗性である塗膜を形成し得る水希釈性シリコーン塗料組成物を提供する必要がある。
【0007】
さらにまた、一液系又は二液系である水希釈性ウェザーストリップ塗料を製造する必要がある。
しかも、耐摩耗性を改善して損耗、コストを減少しかつ塗膜の性能を高めることも必要である。
【0008】
【発明の概要】
本発明によれば、つぎの成分:
(A)アミン官能性ポリシロキサンエマルジョン;
(B)(i) 有効量の接着促進剤;
(ii) 表面活性剤;及び
(iii) 触媒量の触媒;
を含んでなる架橋用組成物;及び
(C)(i) ポリウレタン分散物;
(ii)水希釈性樹脂;及び
(iii)(i) 及び(ii)の混合物;
から本質的になる群から選んだ有効量の浴寿命延長剤;
を含有してなり、しかも該アミン官能性ポリシロキサンエマルジョンを該浴寿命延長剤と10:90ないし90:10の比で配合してなるEPDM基ゴム用の水希釈性塗料組成物が提供される。
【0009】
本発明を構成する臨界的特徴は、本発明の組成物が実質的に増大された耐摩耗性を有するのみならず、さらにその浴寿命が少なくとも18時間まで延長されるという知見に基づくものである。
【0010】
【発明の詳細な開示】
アミン官能性ポリシロキサンエマルジョン(A)は本発明の塗料において基剤エマルジョンとして作用する。アミン官能性ポリシロキサンエマルジョンは当業者に周知の機械的又は乳化重合法によって製造し得る。エマルジョンを機械的手段によって製造する場合には、アミン官能性ポリシロキサンはたとえばBaileyの米国特許第2,947,771号明細書に記載される方法に従ってアミン官能性シランをアルカリ金属水酸化物の存在下でシロキサンと平衡化することによって製造される。このエマルジョンはまた、Friedmanらの米国特許第3,598,853号明細書に記載される方法に従ってアミン官能性シランをシラノール末端ポリジオルガノシロキサンと縮合させることによっても製造される。アミン官能性ポリシロキサン油を製造するための他の方法はMartinの米国特許第3,890,269号明細書、Jexらの米国特許第2,930,809号明細書及びJexらの米国特許第3,045,036号明細書に記載されている。これらの特許文献に記載されているアミン官能性ポリシロキサン及びそれらの製造法を本明細書中に組み入れる。上述したアミン官能性ポリシロキサンは当業者に周知の表面活性剤及び乳化方法を使用して乳化される。アミン官能性ポリシロキサンエマルジョンを乳化重合反応、たとえばTraverらの米国特許第4,600,436号明細書に記載されるごとき方法によって製造する場合、該エマルジョンは比較的低分子量のジオルガノポリシロキサンとアミン官能性シランとの乳化重合反応生成物である。この特許文献に記載されているアミン官能性ポリシロキサン及びそれらの製造法を本明細書中に組み入れる。本発明のアミン官能性ポリシロキサンはマクロエマルジョン又はミクロエマルジョンの形態であり得る。このアミン官能性ポリシロキサンエマルジョンのアミン含量は試料1g当たり0.1ミリ当量より大であり、好ましくは試料1g当たり0.2ミリ当量より大である。
【0011】
組成物(B)は本発明の塗料に架橋、接着促進及び撥水性を与えるものであり、それはつぎの成分:
(i)接着促進剤;
(ii) 表面活性剤;及び
(iii) 触媒量の触媒;
を含んでなる。
【0012】
好ましい一実施態様によれば、組成物(B)はさらに有機溶剤を含有する。
本発明において使用される架橋用組成物(B)の接着促進剤(i)は当業者には自明のものである。当業者に既知のかゝる接着促進剤としては、式:
【0013】
【化1】
【0014】
によって表される基2個又はそれ以上をその各々の分子中に含むシリコーン型又は非シリコーン型有機エポキシ樹脂;エポキシ官能性ポリシロキサン;エポキシ官能性シラン;又は上記したものの任意の混合物のような広範囲の接着促進剤がある。
【0015】
本発明において使用されるエポキシ樹脂の若干の特定的な例は一般式:
【0016】
【化2】
【0017】
(式中、mは1−15の範囲の整数であり、nは0−3の範囲の整数である)によって表すことができる。
商業的に入手し得る接着促進剤はシェル・ケミカル社から販売される登録商標“エピコート(Epicoat)”815、820、828、834、864、1001、1004、1007、1009、152及び154;チバ社から販売される登録商標“アラルダイト(Araldite)”6005、6010、6020、6030、6040及び6050;三井から販売される登録商標“エポニック(Eponic)”R−130、R−133、R−139、R−140、R−144、R−301、R−302、R−304、R−307;ダウ・ケミカル社から販売されるDEN438;ユニオン・カーバイド社から販売されるERL4221を包含するが、それらに限定されるものではない。
【0018】
エポキシ官能性ポリシロキサンを使用する場合、その一般式は、
[Ra SiO4-a/2 ]n
(式中、Rは水素原子及び置換又は非置換一価炭化水素基であり得るが、単一の分子中のすべてのRの中で、少なくとも2個はグリシドキシ基及び/又はエポキシシクロヘキシル基を含む一価炭化水素基であるものとし;aは1−3の範囲の整数であり;そしてnは10−5,000の整数である)である。
【0019】
本発明において使用される架橋用組成物(B)の接着促進剤(i)がエポキシ官能性シランである場合、それは一般式:
Ra Si(OR′)3-a
(式中、R及びaは上記の意義を有しそしてR′は置換又は非置換の一価の基である)によって表し得る。かゝるエポキシ官能性シランの例はγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、(γ−グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、ビス(3−グリシドキシプロピル)テトラメチルジシロキサン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを包含するが、それらに限定されるものではない。
【0020】
組成物(B)において上述したごときエポキシ含有接着促進剤(i)の量は組成物(B)中のシロキサン固形物に基づいて5−50%、好ましくは5−35%、より好ましくは10−25%の範囲内である。
塗料組成物の湿潤性を改善し及び/又は該組成物の接着性を調整するために有効量の表面活性剤(ii) を本発明の塗料組成物に添加し得る。適当な表面活性剤は表面活性剤又は湿潤剤を包含するが、それらに限定されない。広範囲の入手し得るかゝる表面活性剤は当業者には明らかであろう。これらは、こゝに参考文献として引用する“McCutcheons Emulsifiers & Detergents”、北米版、第322−327頁(1982)中に種類別に都合よく列挙されている。
【0021】
本発明において使用される表面活性剤は高分子量(平均分子量500又はそれ以上)及び低分子量(平均分子量500未満)の両方のノニオン系、両性系、カチオン系及びアニオン系表面活性剤を包含する。重合体状表面活性剤も使用し得る。
代表的なノニオン系表面活性剤は種々の極性をもつ基を含有し、それによって分子の一部分が親水性でありそして他の部分が疎水性であるような有機物質を包含する。かゝる物質の例はポリオール、ポリエーテル、ポリエステル及びポリハライドを包含する。本発明において使用するに好ましい表面活性剤は式:
R2 −(OCH2 CH2 )y OH
(式中、R2 はノニルフェニル又はオクチルフェニル基又は13−15個の炭素原子をもつアルキル基でありそしてyは4−40の範囲の数である)によって表し得る。もっとも好ましい表面活性剤はローム・アンド・ハース社から販売される登録商標“トライトン(Triton)”系列の商品、たとえばトライトンX405及びトライトンN401、又はICI社から販売される登録商標“レネックス(Renex)”36である。その他のノニオン系表面活性剤はミネソタ・マイニング・アンド・マニュファクチャリング社製のFC−129、FC−170C及びFC−430のようなフルオル系表面活性剤、及びエアー・プロダクツ・アンド・ケミカルズ・インク製の登録商標“サーフィノール(Surfynol)”61、104H、465及び485のようなアルキノール表面活性剤である。
【0022】
代表的なアニオン系表面活性剤は疎水性基に直接結合されたカルボキシレート基を含有するアニオン系表面活性剤、又はエステル、アミド、スルホンアミド、等のような中間の官能性を有するものを包含するが、それらに限定されない。他の有用な表面活性剤は硫酸又はスルホン酸から誘導され、その疎水性基が種々の極性の脂肪族又は芳香族基、たとえばハライド、エーテル及び/又はエステル基から選定されるアニオン表面活性剤を包含する。好ましいアニオン表面活性剤はラウリル硫酸ナトリウムである。
【0023】
代表的なカチオン表面活性剤はアミン(第1級、第2級及び/又は第3級アミン(塩)を包含する)から誘導され、その親水性が種々の異なる極性の基によって得られるものである。第4級アンモニウム化合物、グアニジン及びそれらのオニウム塩のような物質も例として挙げることができる。
かゝる表面活性剤の組み合わせも使用し得る。表面活性剤は、当業者によって理解されるであろうように、水の添加によってエマルジョンを形成するような量で使用される。好ましい実施態様においては、表面活性剤は架橋用組成物(B)に基づいて1−15重量%の範囲の量で該組成物(B)に添加される。
【0024】
塗料被覆の硬化工程の間に生起する縮合反応の触媒として作用させるために、架橋用組成物(B)に有効量の触媒を添加する。適当な触媒はオルガノ金属化合物を包含する。好ましい触媒はジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクトエート、ジメチル錫ジネオデカノエート、ジブチル錫ビス(アセチルアセトネート)、ジメチルヒドロキシ錫オレエート、又はジブチル錫オキシドのようなオルガノ錫化合物である。もっとも好ましい触媒はジブチル錫オキシド、ジメチル錫ジネオデカノエート、及びジブチル錫ジラウレートを包含する。亜鉛オクトエート、ジルコニウムオクトエート、チタン化合物、たとえばチタンナフテネート又はマンガンナフテネートのような他の金属塩も縮合触媒として使用し得るが、硬化速度の点でオルガノ錫化合物ほど有効ではない。オルガノ錫化合物は当業者によって認め得るごとき縮合反応用触媒としての有効量で添加される。本発明の好ましい実施態様におけるオルガノ錫化合物の添加量は全塗料固形分の0.01−3重量%の範囲である。
【0025】
本発明のもっとも重要な特徴の一つは浴寿命延長剤(C)である。上記したとおり、ウェザーストリップ塗料として使用するに適する慣用のシリコーン塗料組成物系はきわめて短い浴寿命をもつ。本発明者らは、驚くべきことに、かゝるシリコーン塗料組成物系にある特定の浴寿命延長剤を添加することによって浴寿命を実質的に延長し得ることを見出だした。本発明において使用される適当な浴寿命延長剤はポリウレタン分散物(i)、樹脂エマルジョン(ii)及びそれらの混合物を包含する。
【0026】
浴寿命延長剤(C)の水性ポリウレタン分散物(i)は水分散性ポリウレタンを水中に分散することによって得ることができる。ポリウレタンの水性分散物の製造法は従来技術、たとえばこゝに参考文献として引用するCooganらの米国特許第5,169,895号明細書、Xiaoらの米国特許第5,086,110号明細書及びJournal of Applied Polymer Science、第54巻、第1643−1650頁(11994)のXiaoらの報文“Polyurethane−Urea Anionomer Dispersions”に詳細に記載されている。
【0027】
本発明の塗料組成物に使用するに適する好ましい水希釈性ポリウレタンはつぎの成分の反応生成物である:
(a)分子当たり少なくとも2個のイソシアナート(−NCO)官能基をもつポリイソシアナート。適当なポリイソシアナートはつぎに挙げるジイソシアナート単量体、オリゴマーを包含する。すなわち、1,6−ヘキサメチレンジイソシアナート(HMDI)及びそのイソシアヌレート含有誘導体のような脂肪族ポリイソシアナート;4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)(H12MDI)、シクロヘキサン1,4−ジイソシアナート及びそのイソシアヌレート誘導体のような脂環式ポリイソシアナート;4,4′−ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)、キシリレンジイソシアナート(XDI)、トルエンジイソシアナート(TDI)、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、1,5−ナフタリンジイソシアナート(NDI)、4,4′,4″−トリフェニルメタンジイソシアナート及びそれらのイソシアヌレート含有誘導体のような芳香族ポリイソシアナートである。ポリイソシアナートの混合物又は反応生成物も使用し得る。ポリイソシアナートはイソシアヌレート、尿素、アロファネート、ビウレット、カルボジイミド、及びウレトンイミン体を包含するこれらのジイソシアナートの反応生成物も包含する。
(b)分子当たり少なくとも2個のヒドロキシ官能基をもちかつ250−5000g/モルの範囲の分子量をもつポリオール。このポリオールはポリウレタンの製造において通常使用されるポリオールから選定し得る。これらはヒドロキシ基含有又はヒドロキシ末端ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリチオエーテル、ポリオレフィン及びポリエステルアミドを包含する。適当なポリエステルポリオールはエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、フランジメタノール、ポリエーテルジオール、又はそれらの混合物とジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体とのヒドロキシ末端反応生成物を包含する。カプロラクトンのようなラクトンの重合によって得られるポリエステルも使用し得る。
【0028】
ポリウレタン生成反応に有用なポリエーテルポリオールはエチレンオキシド、プロピレンオキシド又はテトラヒドロフラン又はそれらの混合物を包含する環式オキシドの重合によって得られる生成物を包含する。ポリエーテルポリオールはポリオキシプロピレン(PPO)ポリオール、ポリオキシエチレン(PEO)ポリオール、ポリ(オキシエチレン−共−オキシプロピレン)ポリオール、ポリオキシテトラメチレン(PTMO)ポリオールを包含する。
【0029】
ポリウレタン生成反応に有用なポリカーボネートポリオールは1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコールのようなジオールとジフェニルカーボネートのようなジアリールカーボネートとの、又はホスゲンとの、又は脂肪族カーボネートとの、又は脂環式カーボネートとの反応によって得られる反応生成物に代表される生成物を包含する。商業的に入手し得るポリカーボネートジオールは、ともにPPGインダストリーズ社の製品である“デュロカーブ(Durocarb)”120系列の脂肪族ジオール及び“デュロカーブ(Durocarb)”140系列の脂環式ジオールを包含する。
(c)分子当たり2個のイソシアナート基又はイソシアナート−反応性基を含む親水性基含有化合物。この親水性基はイオン型、イオン前駆体型又は非イオン型のものであり得る。イソシアナート−反応性基はジオール、ポリオール、ジアミン及びポリアミンのような活性水素を含有するかゝる化合物を包含する。
【0030】
水分散性ポリウレタンの製造に適する親水性基はアニオン型及びカチオン型の基を包含する。アニオン型はα,α−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)のようなジヒドロキシカルボン酸、1−カルボキシ、1,5−ジアミノペンタン、及び2−(アミノエチル)アミノエチルカルボン酸のようなジアミノカルボン酸、及びスルホネートジアミンを包含する。アニオン型の親水性基は容易にスルホ、サルフェート、チオスルファト、ホスホ、ホスホノ、ホスファト、又はカルボキシ基の塩を形成するものであり得る。カチオン型の例は第4級アンモニウム、第4級ホスホニウム又は第3級スルホニウム塩のような塩を容易に形成する第3級アミノ基又は前駆体を包含する。
【0031】
イオン型前駆体基及び2個又はそれ以上のイソシアナート反応性基を含有する化合物の特定の例はトリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、及びそれらのオキシアルキル化及びポリエステル化生成物、トリメチロールプロパンモノホスフェート及びモノサルフェート、ビス−ヒドロキシメチル−ホスホン酸、リシン、シスチン、3,5−ジアミノ安息香酸を包含するジアミノカルボン酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、及び2,2−ジメチロールプロピオン酸を包含するジヒドロキシアルカン酸を包含する。
(d)(c)中の親水性基のための中和用化合物。ジエチルアミン又はトリエチルアミンのような第二アミン又は第三アミンはカルボキシル基の中和に有効でありそしてポリウレタン上に中和されたアニオン型の親水性部位を与える。
(e)水性媒質の存在下に過剰の又は利用し得るイソシアナート基と反応して高分子量ポリウレタン水性分散物を与える連鎖延長剤。
【0032】
水性媒質中におけるこのさらなる重合のために適当な連鎖延長剤は当該技術において周知である。代表的な例はエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、シクロヘキシレンジアミン、ピペラジン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン及びイソホロンジアミンを包含する。
【0033】
内部に組み込まれた親水性基は水中での微細な粒度の分散質を形成しかつ分散物に安定性を与える有効な方法である。安定な分散物を得るためには、ポリウレタン中に0.5−5重量%の親水性基含量を保持することが好ましい。親水性基は親水性基含有ジオール、ジアミン又はそれらの組み合わせをポリウレタンの重合中に配合することによってポリウレタン中に導入し得る。
【0034】
水分散性ポリウレタンの製造は当該技術において周知である。一般に、成分a、b、c及び随意にdの反応生成物を含有してなるイソシアナート末端ポリウレタン初期重合体を一工程反応法又は段階的反応機構のいずれかによって製造する。各成分の所要量は成分a中のイソシアナート官能基対成分b及びc中のイソシアナート反応性基の合計の比が1.1ないし5.0の範囲になるように制御される。
【0035】
ポリウレタンの水性分散物は水分散性のイソシアナート末端ポリウレタン初期重合体及びより高い官能性のポリイソシアナートの混合生成物を水性媒質中に分散させ、そして成分(e)の活性水素含有連鎖延長剤により連鎖の延長を達成させることによって製造し得る。
初期重合体中の任意のイオン型前駆体基、たとえばカルボキシル基のイオン型(塩)基への転化は該初期重合体を水に添加する前、添加と同時、又は添加後に、行うことができる。成分(d)に述べた成分はアンモニア又はトリエチルアミン、トリエタノールアミン又はN−メチルモルホリンのような第3級アミンであり得る。
【0036】
商業的に入手し得るポリウレタンはバイエル社のマイルス(Miles)・インダストリアル・ケミカル・ディビジョンから販売される登録商標“バイヒドロール(Bayhydrol)”110、バイヒドロール121及びバイヒドロール123及びサイテックス(Cytex)・インダストリーズ社から販売される登録商標“サイドロタン(Cydrothane)”HP−5135を包含するが、それらに限定されない。
【0037】
本発明において使用し得る別の浴寿命延長剤は樹脂エマルジョン(ii)である。水希釈性樹脂は本発明の塗料に対し撥水剤として作用する。好ましい水希釈性樹脂は一般式:
R″Si(OR″′)n O(3-n)/2
(式中、R″はメチル、フェニル又はそれらの組み合わせであり、R″′は1−4個の炭素原子をもつアルキル基であり、nは0.3−0.7の範囲である)によって表し得るメチルメトキシポリシロキサンを包含するが、それらに限定されない。メチルメトキシポリシロキサンは有機溶剤中の溶液の形態であり得る。メチルメトキシポリシロキサン樹脂及び/又はその溶液についてのより詳細な説明はKrantzの米国特許第2,810,704号明細書に示されている。かゝる水希釈性樹脂又はポリウレタン分散物と水希釈性樹脂の混合物の組み合わせも使用し得る。
【0038】
本発明の水希釈性塗料組成物は有効量の有機溶剤を添加することによってそのフィルム形成性能を高めることができる。有機溶剤は一種又はそれ以上の脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素、たとえば“アロマチック(Aromatic)”150、登録商標“ダウアノール(Dowanol)”DPM又はグリコールエーテル/アルコール配合物である。該溶剤は部分的には成分(C)中のメチルメトキシポリシロキサン樹脂溶液(ii)からのものであり得る。好ましい実施態様においては、有機溶剤もまた架橋用組成物(B)中に直接包含される。架橋用組成物(B)においては、有機溶剤は好ましくは成分(B)の10−70重量%の範囲の割合で存在する。
【0039】
塗料浴は当業者にとって自明の方法によって製造される。好ましい一実施態様においては、アミン官能性ポリシロキサンエマルジョン(A)、典型的には20−45重量%固形分のアミン官能性ポリシロキサン、をポリウレタン分散物(C)(i)と10:90ないし90:10の重量比で配合する。ついで、接着促進剤、触媒及び表面活性剤を含有する架橋用組成物(B)を添加、配合処理して完全な分散物を得る。(A)対(B)の配合比は重量で99:1ないし50:50の範囲で変動し得る。別の好ましい実施態様においては、樹脂エマルジョン(C)(ii)とアミン官能性ポリシロキサンエマルジョン(A)とを10:90ないし90:10の範囲の重量比で配合し、ついで架橋用組成物(B)を添加、配合処理して完全な分散物を得る。(A)対(B)の配合比は99:1ないし50:50の範囲である。第三の好ましい実施態様においては、ポリウレタン(C)(i)及び樹脂エマルジョン(C)(ii)の混合物をアミン官能性ポリシロキサンエマルジョン(A)と配合処理し、ついで架橋用組成物(B)を添加、配合処理して完全な分散物を得る。
【0040】
本発明に基づく塗料の最適性能を達成するには清浄な乾燥した支持体への塗布が必要である。本発明に基づく塗料の塗膜の硬化は時間及び温度に関係する。この塗膜は室温で約24時間で硬化し得るが、硬化は典型的には100℃−150℃の温度に3−5分間暴露することによって達成される。
本発明においては、シリカエーロゾル、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、シリカエーロゲル、粉末状石英、珪藻土、PTFE又は紫外線安定剤を上記組成物に充填剤として組成物(A)に基づいて0.05−4重量部の濃度で添加し得る。滑り特性をさらに高めるために、不活性シリコーン油、特に高粘度のポリジメチルシロキサンを上記組成物に添加し得る。
【0041】
【実施例の記載】
つぎに本発明を実施例によってさらに具体的に説明する。実施例中、すべての部は重量によるものである。これらの実施例は単に例証のためのものであって、本発明を何等限定する意図をもつものではない。
実施例1
アミン官能性ポリシロキサンエマルジョンの製造:
Traverらの米国特許第4,606,426号明細書の教示に従って、つぎのアミン官能性ポリシロキサンエマルジョンを製造した。
【0042】
実施例2
樹脂エマルジョンの製造:
* Tはメチルシロキシ、T′はフェニルシロキシ、Dはジメチルシロキシ、D′はジフェニルシロキシであり、これらのすべてはアルコキシ官能性である。
【0043】
40℃に加熱した樹脂溶液(“アロマチック150”中、固形分60%)600.0gに、ついで脱イオン水180.0g、“トライトンX−114”25.2g及び“トライトンX−305”10.8gの混合物を激しい攪拌下に30分かかってゆっくり添加した。この混合物を30℃より低い温度まで冷却し、ポリトロン(Polytron)高剪断ミキサーを使用して水中油型エマルジョンに反転させ、そして脱イオン水184.0gで希釈した。このエマルジョンを8000psiで均質化処理して粒度0.28ミクロン及び粘度48センチストークスを得た。このエマルジョンは30分間の3000rpm遠心分離試験においてクリーミング又は沈降現象を生ずることなしに合格した。
【0044】
実施例3
アミン官能性ポリシロキサンエマルジョン/水希釈性樹脂エマルジョン配合物の製造:
アミン官能性ポリシロキサンエマルジョンA1を水希釈性樹脂C1と後記表3に示す比率で配合処理した。これらの配合物を3000rpmで30分間遠心分離した。クリーミング又は沈降現象は観察されなかった。
【0045】
架橋用組成物(B)の製造:
架橋用組成物をつぎの組成で製造した。
塗料組成物の製造:
選定されたアミン官能性ポリシロキサンエマルジョン/水希釈性樹脂エマルジョン配合物22.7部を架橋用組成物5.0部及び脱イオン水40.0部と十分に混合し、ついで150℃に2分間予熱したEPDMゴム上にスプレー塗布した。この塗膜を150℃で3分間硬化し、ついで一晩冷却した。この塗料組成物を室温で18時間保持した後、別のEPDM試料上に上記と同様に塗布した。これらの試料を、重量900gで直径10mmのガラス製の指を使用して長さ10cmの経路を刻み付けることによって修正したA.A.T.C.C.型式CM−5の剥落試験機(アトラス・エレクトリック・デバイシス・カンパニー製)を使用して試験した。結果を後記の表3に示す。ゴム表面上の塗膜の破壊が生起したサイクルの数を記録しそして該塗膜の耐摩耗性の尺度として使用する。
【0046】
【0047】
実施例4
塗料2を、アミン官能性ポリシロキサンエマルジョンA1の代わりにアミン官能性ポリシロキサンエマルジョンA2ないしA5を使用した以外は実施例3におけると同様に製造した。アミン官能性ポリシロキサンエマルジョン対水希釈性樹脂C1の比は56:44であった。結果を後記の表4に示す。
【0048】
実施例5
塗料2を水希釈性樹脂C1の代わりに水希釈性樹脂C2及びC3を使用した以外は実施例3におけると同様に製造した。アミン官能性ポリシロキサン対水希釈性樹脂の比は56:44であった。結果を下表に示す。
実施例6
塗料8及び9をアミン官能性ポリシロキサンA1の代わりにアミン官能性ポリシロキサンA5を使用した以外は実施例5に述べたと同様に製造した。結果を下表に示す。
実施例7
本実施例で使用したポリウレタン分散物試料は、バイエル社の子会社であるマイルス社から商業的に入手し得るポリウレタン分散物である登録商標“バイヒドロール”110、“バイヒドロール”121、“バイヒドロール”123及びサイテック(Cytec)社から商業的に入手し得るポリウレタン分散物である登録商標“サイドロタン”HP−5125であった。実施例A1のアミン官能性ポリシロキサンエマルジョンにポリウレタン分散物を77.5対22.5の比の混合物を与えるような割合で添加した。これらの配合物を3000rpmで30分間遠心分離した。クリーミング又は沈降現象は観察されなかった。
【0049】
架橋用組成物は後記の処方を配合することによって製造した。この場合には、架橋用組成物は二液型として製造された。
* この樹脂は構造T90D10(式中、Tはメチルシロキシ基でありそしてDはジメチルシロキシ基である)のメチルメトキシポリシロキサンである。
【0050】
アミン官能性ポリシロキサンエマルジョン/ポリウレタン分散物配合物12.9gを脱イオン水40.0g中に希釈した。これに上記の組成物B2の10.0gを添加し、ついで上記の組成物B1の1.0gを添加して十分に混合した。
ついで、150℃に2分間予熱したEPDM支持体試料に塗料組成物の塗料浴を使用してスプレー塗布した。塗布された試料をついで150℃で10分間硬化しそして試験前に一晩冷却した。各塗料組成物は表5中に示すごとく配合した特定のポリウレタン分散物によって表示する。
【0051】
実施例8
塗料12をA1対バイヒドロール110の比を後記の表6に示すごとく選定した以外は実施例7に述べたと同様に製造した。
【0052】
実施例9
塗料12−16をアミン官能性ポリシロキサンエマルジョン/ポリウレタン分散物配合物比を55:45にした以外は実施例7に述べたと同様に製造した。これらの塗料組成物をEPDM支持体上に、製造直後にスプレー塗布し、ついで各塗料組成物を室温で18時間保持した後に別のEPDM支持体上にスプレー塗布した。試験結果を後記の表7に示す。対照試料は18時間でゲル化し、したがってスプレー塗布できなかった。
【0053】
実施例10
樹脂エマルジョンC1を実施例Aのアミン官能性ポリシロキサンエマルジョンA1及びポリウレタン分散物(登録商標バイヒドロール110)と38.3:30.0:31.7の比で配合した。この配合物を3000rpmで30分間遠心分離した。クリーミング又は沈降は観察されなかった。この配合物は室温で3か月間保持した後も均質であるようにみえた。
【0054】
上記樹脂エマルジョン/アミン官能性ポリシロキサンエマルジョン/ポリウレタン分散物の配合物28.0部を脱イオン水40.0部で希釈した。これに実施例1からの架橋用組成物(B)5.0部を添加した。
この塗料組成物を135℃に2分間予熱したEPDMゴム支持体上にスプレー塗布した。かく被覆された試料を135℃で10分間硬化し、ついで試験前に一晩冷却した。この塗料組成物を室温で20時間保持した後、別のEPDM支持体試料に上記のごとくスプレー塗布しかつ硬化した。つぎの結果が得られた。
【0055】
Claims (7)
- つぎの成分:
(A)アミン官能性ポリシロキサンエマルジョン;
(B)(i)非シリコーン型有機エポキシ樹脂又はエポキシ官能性シランからなる接着促進剤;
(ii) 表面活性剤;及び
(iii) 触媒量のオルガノ金属化合物縮合触媒;
を含んでなる架橋用組成物;及び
(C)ポリウレタン水性分散物から本質的になる群から選んだ有効量の浴寿命延長剤;
を含有してなる水希釈性塗料組成物。 - さらに有効量の有機溶剤を含有してなる請求項1記載の組成物。
- 該アミン官能性ポリシロキサンエマルジョンが0.1ミリ当量/gを超えるアミン含量をもつ請求項1記載の組成物。
- 該アミン官能性ポリシロキサンエマルジョン対該浴寿命延長剤の重量比が10:90ないし90:10である請求項1記載の組成物。
- 該ポリウレタン水性分散物がポリイソシアネート、ポリオール、親水性基含有化合物、中和用化合物及び連鎖延長剤の反応生成物である請求項1記載の組成物。
- 該表面活性剤がノニオン性、両性、カチオン性、アニオン性物質及び重合体状表面活性剤を含む請求項1記載の組成物。
- つぎの成分:
(A)アミン官能性ポリシロキサンエマルジョン;
(B)(i)非シリコーン型有機エポキシ樹脂又はエポキシ官能性シランからなる接着促進剤;
(ii) 表面活性剤;及び
(iii) 触媒量のオルガノ金属化合物縮合触媒;
を含んでなる架橋用組成物;及び
(C)ポリウレタン水性分散物から本質的になる群から選んだ有効量の浴寿命延長剤;
を混合する工程を含んでなる水希釈性塗料組成物の浴寿命を延長する方法。
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