JP3869788B2 - コリネ型細菌を用いる有機化合物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はコリネ型細菌を用いる有機化合物の製造方法に関する。さらに詳しくは、コリネ型細菌を用いて特定の反応状態下において有機酸、アルコール、アミノ酸およびビタミン類の有機化合物を生成せしめ、ついでこれを採取することからなる高効率な有機化合物の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、好気性コリネ型細菌は通気攪拌培養法または振盪培養法等の好気的条件下でアミノ酸等有用物質生産に広く用いられてきた(特許文献1)。また、嫌気的条件下(微量酸素存在条件を含む)で炭酸イオンあるいは炭酸ガスを含有する反応液中で好気性コリネ型細菌またはその処理物を有機原料に作用させることにより含酸素化合物の製造にも用いられている(特許文献2)。
【0003】
コリネ型細菌を好気的条件もしくは微酸素条件下、すなわち酸化条件下にて用いる従来技術の方法では、当然のことながらコリネ型細菌は酸素存在量に依存した分裂増殖が認められる。その分裂に要する時間は2時間程度以内の速い分裂速度の場合から、10時間程度もしくはそれ以上の時間を要する場合など大きく変動する。
いずれにしても、分裂増殖する事により、コリネ型細菌に与えた栄養源は増殖に消費され、目的生産物の生産量が低下、すなわち栄養源からの目的生産物への変換率が低下するなどの工業的生産上重要な課題が指摘されている。さらに、増殖過程においては、これに起因する代謝物が分泌物として生成されることから、これら目的生産物以外の分泌副生成物と目的生産物の分離が生産物品質純度の観点より必要となり、特に微量で多様な分泌副生物の分離精製工程は工業的生産技術の経済性悪化の大きな要因となっている。
【0004】
【特許文献1】
特開平05−015377号公報(請求項3)
【特許文献2】
特開平11−113588号公報(請求項1)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、好気性コリネ型細菌による増殖を伴う物質生産技術に関する上記技術的課題を解決することを目的とする。すなわち、本発明は、好気性コリネ型細菌またはその処理物を用いた有機化合物の製造方法において、糖などの有機炭素源から目的有機化合物への変換率、および得られる目的有機化合物の純度を向上させることができる方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
コリネ型細菌は従来より好気的条件下や嫌気的条件下(微量酸素存在条件を含む)で有機化合物の生産に用いられてきた。しかし、本発明者は今まで知られていなかった還元状態下でコリネ型細菌を用いることにより、より具体的には、好気性コリネ型細菌またはその処理物と糖類とを還元状態下の反応培地中で反応させることにより、従来技術が有していた、グルコース等糖類からの目的生産物への変換率が低いなどの問題点が克服され、有機化合物の製造をより効率的に行うことが出来ることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1) 好気性コリネ型細菌を好気条件下で増殖培養し回収した菌体またはその菌体処理物と糖類とを還元条件下の反応培地中で反応させ、反応培地に生成する有機化合物を採取することを特徴とする有機化合物の製造方法、
(2) 還元状態下の反応培地の酸化還元電位が−200ミリボルト乃至−500ミリボルトであることを特徴とする前記(1)に記載の有機化合物の製造方法、
(3) 反応培地が、増殖培養過程で生成し、菌体内外に存在する生成物質を実質的に含有しないことを特徴とする前記(1)または(2)に記載の有機化合物の製造方法、
(4) 有機化合物が、有機酸、アルコール、アミノ酸およびビタミン類から選ばれることを特徴とする前記(1)〜(3)に記載の有機化合物の製造方法、に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられる好気性コリネ型細菌とは、バージーズ・マニュアル・デターミネイティブ・バクテリオロジー(Bargeys Manual of Determinative Bacteriology, 8, 599、1974)に定義されている一群の微生物であり、通常の好気的条件で増殖し、本発明の還元状態下で目的とする有機化合物を生成するものならば特に限定されるものではない。
具体例を挙げれば、コリネバクテリウム属菌、ブレビバクテリウム属菌、アースロバクター属菌、マイコバクテリューム属菌またはマイクロコッカス属菌等が挙げられる。
【0009】
さらに具体的には、コリネバクテリウム属菌としては、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)FERM P−18976、ATCC13032、ATCC13058、ATCC13059、ATCC13060、ATCC13232、ATCC13286、ATCC13287、ATCC13655、ATCC13745、ATCC13746、ATCC13761、ATCC14020またはATCC31831等が挙げられる。
ブレビバクテリウム属菌としては、ブレビバクテリウム ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)ATCC13869、ブレビバクテリウム フラバム(Brevibacterium flavum)MJ−233(FERM BP−1497)もしくはMJ−233AB−41(FERM BP−1498)、またはブレビバクテリウム アンモニアゲネス(Brevibacterium ammoniagenes)ATCC6872等があげられる。
アースロバクター属菌としては、アースロバクター グロビフォルミス(Arthrobacter globiformis)ATCC8010、ATCC4336、ATCC21056、ATCC31250、ATCC31738またはATCC35698等が挙げられる。
マイクロコッカス属菌としては、マイクロコッカス・フロイデンライヒ(Micrococcus freudenreichii)No.239(FERM P−13221)、マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)No.240(FERM P−13222)、マイクロコッカス ウレアエ(Micrococcus ureae)IAM1010またはマイクロコッカス ロゼウス(Micrococcus roseus)IFO3764等が挙げられる。
本発明で用いられる好気性コリネ型細菌としては、Corynebacterium glutamicum R (FERM P-18976)、Corynebacterium glutamicum ATCC13032またはCorynebacterium glutamicum ATCC13869などが好ましい。
【0010】
本発明で用いられる好気性コリネ型細菌としては自然界に存在する野生株の変異株(例えば、FERM P−18977,FERM P−18978株など)であってもよく、また遺伝子組換え等のバイオテクノロジーを利用した人為株(例えば、FERM P−17887、FERM P−17888、FERM P−18979など)でもよい。
【0011】
本発明に係る有機化合物の製造方法においては、まず上述した好気性コリネ型細菌を好気条件下で増殖培養する。
好気性コリネ型細菌の培養は、炭素源、窒素源および無機塩等を含む通常の栄養培地を用いて行うことが出来る。培養には、炭素源として、例えばグルコースまたは廃糖蜜等を、そして窒素源としては、例えばアンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウムまたは尿素等をそれぞれ単独もしくは混合して用いることが出来る。また、無機塩として、例えばリン酸一水素カリウム、リン酸ニ水素カリウムまたは硫酸マグネシウム等を使用することが出来る。
この他にも必要に応じて、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスティープリカー、カザミノ酸またはビオチンもしくはチアミン等の各種ビタミン等の栄養素を培地に適宜添加することも出来る。
【0012】
培養は、通常、通気攪拌または振盪等の好気的条件下、約20℃〜約40℃、好ましくは約25℃〜約35℃の温度で行うことが出来る。培養時のpHは5〜10付近、好ましくは7〜8付近の範囲がよく、培養中のpH調整は酸またはアルカリを添加することにより行うことが出来る。培養開始時の炭素源濃度は、約1〜20%(W/V)、好ましくは約2〜5%(W/V)である。また、培養期間は通常1〜7日間程度である。
【0013】
ついで、好気性コリネ型細菌の培養菌体を回収する。上記の如くして得られる培養物から培養菌体を回収分離する方法としては、特に限定されず、例えば遠心分離や膜分離等の公知の方法を用いることができる。
回収された培養菌体に対して処理を加え、得られる菌体処理物を次工程に用いてもよい。前記菌体処理物としては、培養菌体に何らかの処理が加えられたものであればよく、例えば、菌体をアクリルアミドまたはカラギーナン等で固定化した固定化菌体等が挙げられる。
【0014】
ついで、上記の如くして得られる培養物から回収分離された好気性コリネ型細菌の培養菌体またはその菌体処理物は還元状態下の反応培地での目的有機化合物の生成反応に供せられる。有機化合物生成方式は、回分式、連続式いずれの生成方式も可能である。
本発明の還元状態下の生化学反応に於いては、コリネ型細菌の増殖分裂が完全に抑制され、本発明の課題であるグルコース等糖類栄養源からの目的有機化合物への変換率が画期的に向上し、また増殖に伴う分泌副生物の実質的な完全抑制を実現することが出来る。この観点からは、培養回収されたコリネ型細菌またはその菌体処理物が反応培地に供せられるときには、コリネ型細菌細胞内外の培養時環境状態が反応培地にもたらされない方法や条件を用いることが推奨される。つまり、反応培地は、増殖培養過程で生成し、菌体内外に存在する生成物質を実質的に含有しないことが好ましい。より具体的には、増殖培養過程で生成し、菌体外に放出された分泌副生物、および培養菌体内の好気的代謝機能により生成し菌体内に残存する物質が、反応培地に実質的に存在しない状態であることが推奨される。このような状態は、例えば、増殖培養後の培養液の遠心分離、膜分離等の方法および/または培養後の菌体を還元状態下で2時間ないし10時間程度放置することで実現される。
【0015】
本工程においては、還元状態下の反応培地を用いる。反応培地は、還元状態下にあれば、固体状、半固体状または液体状等いずれの形状を有していてもよい。
本発明の必須の要件は、還元状態下でコリネ型細菌の代謝機能による生化学反応を行わせしめ、目的とする有機化合物を生成することである。
本発明における還元状態とは、反応系の酸化還元電位で規定され、反応培地の酸化還元電位は、好ましくは約−200mV〜−500mV程度、より好ましくは約−250mV〜−500mV程度である。反応培地の還元状態は簡便にはレサズリン指示薬(還元状態であれば、青色から無色への脱色)である程度推定できるが、正確には酸化還元電位差計(例えば、BROADLEY JAMES社製、ORP Electrodes)を用いる。本発明においては、反応培地に菌体またはその処理物を添加した直後から有機化合物を採取するまで、還元状態を維持していることが好ましいが、少なくとも有機化合物を採取する時点で反応培地が還元状態であればよい。反応時間の約50%以上、より好ましくは約70%以上、さらに好ましくは約90%以上の時間、反応培地が還元状態に保たれていることが望ましい。なかでも、反応時間の約50%以上、より好ましくは約70%以上、さらに好ましくは約90%以上の時間、反応培地の酸化還元電位が約−200mV〜−500mV程度に保たれていることがより望ましい。
【0016】
このような還元状態の実現は具体的には、前記の培養後の培養菌体調製方法、反応培地の調整方法、または反応途中における還元状態の維持方法等によりなされる。
還元状態下の反応培地の調整方法は、公知の方法を用いてよい。例えば、反応培地用水溶液の調整方法は、例えば硫酸還元微生物などの絶対嫌気性微生物用の培養液調整方法(Pfennig, N et. al.(1981):
The dissimilatory sulfate-reducing bacteria, In The Prokaryotes,A Handbook on Habitats, Isolation and Identification of Bacteria,Ed. by Starr, M. P. et. al. p.926-940, Berlin, Springer Verlag.や「農芸化学実験書 第三巻、京都大学農学部 農芸化学教室編、1990年第26刷、産業図書株式会社出版」)などが参考となり、所望する還元状態の水溶液を得ることが出来る。
【0017】
反応培地用水溶液の調整方法として、より具体的には反応培地用水溶液を加熱処理や減圧処理することにより溶解ガスを除去する方法等が挙げられる。より具体的には、約10mmHg以下、好ましくは約5mmHg以下、より好ましくは約3mmHg以下の減圧下で、約1〜60分程度、好ましくは5〜40分程度、反応培地用水溶液を処理することにより、溶解ガス、特に溶解酸素を除去し、還元条件下の反応培地用水溶液を作成することができる。また、適当な還元剤(例えば、チオグリコール酸、アスコルビン酸、システィン塩酸塩、メルカプト酢酸、チオール酢酸、グルタチオンそして硫化ソーダ等)を添加して還元状態の反応培地用水溶液を調整することも出来る。また、場合により、これらの方法を適宜組み合わせることも有効な還元状態の反応培地用水溶液を調整する方法となる。
【0018】
反応途中における還元状態の維持方法としては、反応系外からの酸素の混入を可能な限り防止することが望ましく、反応系を窒素ガス等の不活性ガスや炭酸ガス等で封入する方法が通常用いられる。酸素混入をより効果的に防止する方法としては、反応途中においてコリネ型細菌の菌体内の代謝機能を効率よく機能させるために、反応系のpH維持調整液の添加や各種栄養素溶解液を適宜添加する必要が生じる場合もあるが、このような場合には添加溶液から酸素を予め除去しておくことが有効である。
【0019】
本発明の有機化合物生成反応において、生成反応系の酸化還元電位の規定が目的とする有機化合物の効率的な生産に関してなぜ有効であるかの理由は明らかではないが、下記にその推定理由を記す。ただし、本発明はその推定理由になんら限定されるものではない。
本発明の目的生産物である有機化合物はコリネ型細菌の代謝機能に基づく生化学反応により産生される化合物である。微生物細胞内の生化学反応には各種の酸化還元反応が関与しており、電子の授受移動が行われている。酸化還元電位は反応系での電子の受容性、供与性の難易度を示す尺度の一つであるが、この電位は微生物細胞内で起こっている代謝経路を構成する各種反応(酸化還元反応)の状態や細胞内外との電子授受の状態を反映している。電位差計により直接測定される酸化還元電位は反応溶液と電極との電位であるが反応溶液の電位は細胞膜を介してある電位勾配を持って細胞内で生じている反応と相関している。即ち、酸化還元電位は細胞内外を含む反応系全体の酸化還元反応の総和を反映(各種反応の内容やその頻度等も含めて)したものである。
【0020】
反応系の酸化還元電位に影響する因子としては、反応系雰囲気ガスの種類と濃度、反応温度、反応溶液pH、反応液中に存在する目的有機化合物生成のために使用される無機および有機の各種化合物濃度と組成等が考えられる。本発明における反応培地の酸化還元電位とは上記各種影響因子が統合されて示されるものである。従って、本発明は、目的とする有機化合物への代謝経路には各種化学反応が関与し、これら化学反応は上記因子群の影響下にあるが、単一の酸化還元電位なる反応状態を規定する尺度により、効率的に目的有機化合物が生成されることを見出した結果、本発明に到達できたものである。
【0021】
反応培地には、通常、有機化合物生成の原料となる有機炭素源が含まれている。有機炭素源としては、コリネ型細菌が生化学反応に利用できる物質が挙げられ、なかでもコリネ型細菌が代謝できる物質が好ましく、具体的には糖類や場合によりエタノールなどが挙げられる。特に、本発明で用いる反応培地には、糖類が含有されていることが好ましい。糖類としては、グルコース、ガラクトース、フルクトースもしくはマンノースなどの単糖類、セロビオース、ショ糖もしくはラクトース、マルトースなどの二糖類、またはデキストリンもしくは可溶性澱粉などの多糖類などが挙げられる。なかでも、グルコースが好ましい。
【0022】
より好ましくは、有機化合物の生成反応に用いられる反応培地組成は、コリネ型細菌またはその処理物がその代謝機能を維持するために必要な成分、即ち、各種糖類等の炭素源、蛋白質合成に必要な窒素源、その他リン、カリウムまたはナトリウム等の塩類、さらに鉄、マンガンまたはカルシウム等の微量金属塩を含む。これらの添加量は所要反応時間、目的有機化合物生産物の種類または用いられるコリネ型細菌の種類等により適宜定めることが出来る。用いるコリネ型細菌によっては特定のビタミン類の添加が好ましい場合もある。また、前記の反応系の炭酸ガス封入法にも関連して、反応培地に二酸化炭素または各種の炭酸塩もしくは炭酸水素塩等の無機炭酸塩を糖類などの有機炭素源に加えて注入することが目的有機化合物によっては有効な場合もある。
【0023】
好気性コリネ型細菌またはその菌体処理物と糖類との反応は、好気性コリネ型細菌またはその菌体処理物が活動できる温度条件下で行われることが好ましく、好気性コリネ型細菌またはその菌体処理物の種類などにより適宜選択することができる。
【0024】
最後に、上述のようにして反応培地で生成した有機化合物を採取する。その方法はバイオプロセスで用いられる公知の方法を用いることが出来る。そのような公知の方法として、有機化合物生成液の塩析法、再結晶法、有機溶媒抽出法、エステル化蒸留分離法、クロマトグラフィー分離法または電気透析法等があり、生成有機化合物の特性に応じてその分離精製採取法は適宜定めることが出来る。
【0025】
本発明で製造することができる有機化合物としては、有機酸、アルコール、アミノ酸またはビタミン類等が挙げられる。有機酸としては、例えば、乳酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、オキサロ酢酸、クエン酸、シスアコニット酸、イソクエン酸、2−オキソグルタル酸または酢酸などが挙げられ、なかでも、乳酸またはコハク酸が好ましい。アルコールとしては、例えば、エタノール、ブタノール、1,3−プロパンジオールまたは1,4−ブタンジオールなどが挙げられ、なかでもエタノールが好ましい。アミノ酸としては、例えば、バリン、ロイシン、アラニン、アスパラギン酸、リジン、イソロイシンまたはスレオニンなどが挙げられる。
【0026】
【実施例】
以下、実施例でもって本発明を説明するが、本発明はこのような実施例に限定されるものではない。
【0027】
〔実施例1〕
(1)コリネ型細菌Corynebacterium glutamicum R (FERM P-18976)の好気的条件による培養:
(培養基の調製);尿素 2g、硫安 7g、KH2PO4 0.5g、K2HPO4 0.5g、MgSO4・7H2O 0.5g、FeSO4・7H2O 6mg、MnSO4・7H2O 4.2mg、Biotin(ビオチン)200μg、塩酸チアミン 200μg、酵母エキス 2g、カザミノ酸 7g、蒸留水1000mlからなる培地500mlを容量1Lフラスコに分注し、120℃で10分間加熱滅菌後、室温に冷却した該フラスコを種培養基とした。同じく同組成の培地1000mlを2L容ガラス製ジャーファーメンターに入れ、120℃、10分間加熱滅菌し、本培養基とした。
(培養):上記種培養基1ケに、コリネ型細菌Corynebacterium glutamicum R (FERM P-18976) を無菌条件下にて接種し、33℃にて12時間好気的振盪培養を行い、種培養液とした。この種培養液50mlを上記ジャーファーメンターに接種し、通気量1vvm(Volume/Volume/Minute)、温度33℃で一昼夜、本培養を実施した。好気的培養に起因する影響を除去するため培養液を約3時間窒素ガス雰囲気下で静置した後、培養液200mlを遠心分離機にかけ(5000回転、15分)、上澄み液を除去した。このようにして得られたwet菌体を、以下の反応に用いた。
【0028】
(2)反応用還元状態反応培地溶液の調製:
硫安 7g、KH2PO4 0.5g、K2HPO4 0.5g、MgSO4・7H2O 0.5g、FeSO4・7H2O 6mg、MnSO4・7H2O4.2mg、Biotin(ビオチン) 200μg、塩酸チアミン 200μg、蒸留水1000mlからなる反応原液を調製し、120℃で10分加熱後、ただちに減圧条件(〜3mmHg)にて20分間、溶解している酸素の除去を行った。反応原液の還元状態の確認は減圧開始時に反応原液に加えた還元状態指示薬レサズリンの色調変化(青色から無色への変化)にて行った。この反応原液500mlを容量1Lの窒素雰囲気下のガラス製反応容器に導入した。この反応容器はpH調整装置、温度維持装置、容器内反応液攪拌装置および還元電位測定装置を備えている。
【0029】
(3)反応の実施:
前記培養後調製されたコリネ型細菌菌体を窒素ガス雰囲気下にある反応容器内の反応原液500mlに加えた。グルコース200mMを加え、反応温度33℃に維持し、有機化合物生成反応を行った。反応時の酸化還元電位は初期−200mVであったが反応開始後直ちに低下し、−400mVに維持して反応が継続された。3時間反応後、反応培地溶液を液体クロマトグラフィーを用いて分析したところ、乳酸186mM(16.7g/L)が生成していた。
【0030】
〔実施例2〕
実施例1で使用したコリネ型細菌をCorynebacterium glutamicum ATCC13032に、培養温度を30℃に変えた以外は、実施例1と同様の方法、条件にて有機化合物生成反応を行った。反応時の酸化還元電位は初期−190mVであったが反応開始後直ちに低下し、−390mVに維持して反応が継続された。3時間反応後、反応培地溶液を液体クロマトグラフィーを用いて分析したところ、乳酸65mM(5.9g/L)が生成していた。
【0031】
〔実施例3〕
実施例1で使用したコリネ型細菌をCorynebacterium glutamicum ATCC13869に、培養温度を30℃に変えた以外は、実施例1と同様の方法、条件にて有機化合物生成反応を行った。反応時の酸化還元電位は初期−195mVであったが反応開始後直ちに低下し、−395mVに維持して反応が継続された。3時間反応後、反応培地溶液を液体クロマトグラフィーを用いて分析したところ、乳酸67mM(6.0g/L)が生成していた。
【0032】
〔実施例4〕
実施例1と同様にして得られた菌体および反応条件により、反応中に炭酸ナトリウム200mMを添加すること以外は実施例1と同様の反応を行い、得られた反応液を分析した。反応時の酸化還元電位は初期−205mVであったが反応開始後直ちに低下し、−405mVに維持して反応が継続された。3時間反応後、反応培地溶液を液体クロマトグラフィーを用いて分析したところ、乳酸200mM(18.0g/L)、コハク酸81mM(9.6g/L)が生成していた。
【0033】
〔実施例5〕
実施例1と同様にして得られた菌体および反応条件により、反応原液に炭酸ガスを1vvm(Volume/Volume/Minute)で通気すること以外は実施例1と同様の反応を行い、得られた反応液を分析した。反応時の酸化還元電位は初期−210mVであったが反応開始後直ちに低下し、−410mVに維持して反応が継続された。3時間反応後、反応培地溶液を液体クロマトグラフィーを用いて分析したところ、乳酸202mM(18.2g/L)、コハク酸85mM(10g/L)が生成していた。
【0034】
〔比較例1〕
実施例1と同様の方法、条件にて反応を実施する際に、コリネ型細菌の培養後の静置時間を15分間とし、減圧処理を施していない反応原液を使用し、そして反応時における還元状態を極微量の空気を導入することにより、酸化還元電位−180mVに制御して、有機化合物生成反応を実施した。なお、このときの反応液溶存酸素濃度は0.01ppmであった。溶存酸素濃度は、酸素膜電極電位と酸化還元電位との補正相関データより外挿して求めた。
得られた反応液を液体クロマトグラフィーを用いて分析したところ、乳酸29mM(2.6g/L)、コハク酸2mM(0.24g/L)が生成していた。
【0035】
〔実施例6〕
実施例1で使用したコリネ型細菌をエタノール生産組換えコリネ型細菌(FERM P-17887)に、培養温度を30℃に変えた以外は、実施例1と同様の方法、条件にて有機化合物生成反応を行った。反応時の酸化還元電位は初期−195mVであったが反応開始後直ちに低下し、−395mVに維持して反応が継続された3時間反応後、反応培地溶液を液体クロマトグラフィーを用いて分析したところ、エタノールが3.0(gエタノール/l)の濃度で生成していた。
【0036】
〔比較例2〕
実施例6と同様の方法、条件にて反応を実施する際に、コリネ型細菌の培養後の静置時間を15分間とし、減圧処理を施していない反応原液を使用し、そして反応時における還元状態極微量の空気を導入することにより、酸化還元電位−180mVに制御して、有機化合物生成反応を実施した。なお、このときの反応液溶存酸素濃度は0.01ppmであった。溶存酸素濃度は、酸素膜電極電位と酸化還元電位との補正相関データより外挿して求めた。
得られた反応液を液体クロマトグラフィーを用いて分析したところ、エタノールが1.6(gエタノール/l)の濃度で生成していた。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、好気性コリネ型細菌またはその処理物と糖類とを還元状態下で反応させることにより、コリネ型細菌の増殖分裂が抑制され代謝反応が主として行われることになるから、糖類からの目的有機化合物への変換率が画期的に向上する。また増殖に伴う分泌副生物の実質的な抑制を実現することができ、純度の高い目的有機化合物が得られる。その結果、分泌副生物と目的有機化合物との分離工程が事実上必要なくなり、工業的生産における工程管理が行いやすく、また安価な製品を提供することができるようになる。
Claims (2)
- コリネバクテリウム グルタミカム( Corynebacteriumglutamicum )またはその変異株もしくはバイオテクノロジーを利用した人為株であって、還元状態下で乳酸、コハク酸およびエタノールから選択される有機化合物を生成する能力を有するコリネバクテリウム グルタミカムを、好気条件下で増殖培養し、回収した菌体またはその菌体処理物と糖類とを、反応培地の酸化還元電位が−250ミリボルト乃至−500ミリボルトである還元条件下の反応培地中で反応させ、反応培地に生成する乳酸、コハク酸およびエタノールから選択される有機化合物を採取することを特徴とする有機化合物の製造方法。
- 反応培地が、増殖培養過程で生成し、菌体内外に存在する生成物質を実質的に含有しないことを特徴とする請求項1に記載の有機化合物の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002367331A JP3869788B2 (ja) | 2002-12-18 | 2002-12-18 | コリネ型細菌を用いる有機化合物の製造方法 |
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