JP3868816B2 - 金属製ボトル缶及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、金属製ボトル缶及びその製造方法に係り、特に、内容物がレトルト処理(高温処理)される場合に用いて好適な金属製ボトル缶及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、飲料用の缶として広く使われている金属製ボトル缶(以下、単にボトル缶と略称す)は、アルミニウムやアルミニウム合金製の金属板を絞り加工(Drawing)と、次いで行われるしごき加工(Ironing)とによって形成される、一般にDI缶と呼ばれている缶の上部に、口金部が形成されて製造されている。
【0003】
例えば、従来のボトル缶は図5に示されるように、缶基体1の上部には口金部1aを構成するねじ部1bやカール部1cが形成され、口金部1aの下方にはテーパー部が形成されている。この缶基体1の表面には、塗装処理時に3層の塗膜が形成され、第1層となるサイズコート層2は口金部1aの上端部まで塗装され、第2層となるインク層3はテーパー部まで塗装され、第3層となるオーバーコート層4は口金部1aの上端部まで塗装されている。
【0004】
サイズコート層2は、ヤング率の低く柔軟性のある材料が使用され、缶基体1とオーバーコート層4との密着性を高めるために用いられる。インク層3は、内容物に合わせた情報や絵柄などが印刷され、サイズコート層2の上に塗装される。オーバーコート層4は、ヤング率の高い硬質な材料が使用され、塗装されたインク層3を保護するためや、製造時に缶基体1がコンベアーで移送される際の缶表面のすべりを良好にし、缶基体1が横転等して移送障害が起きないようにするために用いられる。
【0005】
このように缶基体1の表面に塗膜が形成された後、ネックイン加工により缶基体1の上部が絞られ細い形状の口金部1aが形成され、その後、ねじ加工によりねじ部1bやカール部1cが形成される。このような缶基体1の加工時には、オーバーコート層4にも圧縮力や引っ張り力等の力が加えられる。オーバーコート層4は硬質な材料が使用されているが、柔軟性のあるサイズコート層2の上に塗装されているので、加工時の力に対応することができ、製品として問題になるような剥離やひび割れが生じることはない。
【0006】
そして、缶基体1にビール,ジュースなど種々の内容物が充填された後、缶基体1の口金部1aに図示しないキャップが巻き締められて密封される。充填される内容物の種類によっては、その後に殺菌を目的とした処理が施される。この殺菌の条件は、内容に応じて選択的に行われるが、特に内容物がお茶やミルク入りコーヒー等の場合には、厳しい条件である115℃から130℃程度の水蒸気や温水等の雰囲気にさらされる高温殺菌(レトルト処理)が行われることとなる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したようなネックイン加工やねじ加工時に、製品として問題にならないような微細なひび割れがオーバーコート層4に生じていることがあり、このような場合には、レトルト処理に際し、この微細なひび割れに水分が進入し、それが膨張することによってひび割れが進行し、オーバーコート層4が剥離するという問題があった。
【0008】
このように、オーバーコート層4に剥離やひび割れが生じると、ボトル缶の耐腐食性が低下するばかりではなく、キャップの回栓トルクが著しく高くなってしまうなど、ボトル缶の品質を低下させる悪影響を引き起こすおそれがあった。
【0009】
一方、オーバーコート層4に、ヤング率が低く柔軟性のある材料を使用することで、ひび割れなどによる問題が起こらないと考えられるが、そのようにすると、ボトル缶の搬送工程でボトル缶同士の接触などの理由でボトル缶に傷がついてしまい、品質低下を招くおそれがあった。また、ボトル缶に塗膜を形成しない場合には、ボトル缶の耐腐食性の低下や、レトルト処理の熱により変色が起こるという問題があった。
【0010】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、ボトル缶表面に硬質の塗膜が形成され、この塗膜がレトルト処理によっても品質が低下することがなく、レトルト処理に適した金属製ボトル缶及びその製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、この発明は以下の手段を提案している。請求項1に係る発明は、金属製の缶基体の上部にテーパー部が形成され、このテーパー部の上部に口金部が形成されると共に、その口金部にねじ部が形成されてなる金属製ボトル缶において、缶基体の表面に形成された複数層の塗膜が、缶基体の表面に対し前記ねじ部及びそれより下に形成された第1層の塗膜と、ねじ部より下の前記テーパー部を含む部分に形成された第2層及び第3層の塗膜とからなり、第1層の塗膜のヤング率が第3層のそれより低くされていることを特徴とする。
【0012】
この発明に係る金属製ボトル缶によれば、ヤング率の低い第1層の塗膜の上にヤング率の高い第3層の塗膜が形成されているので、ネックイン加工時に、第3層に剥離やひび割れが生じることがなく、ねじ部に第3層の塗膜が形成されていないので、ねじ加工が第3層に与える影響はない。これにより、金属製ボトル缶表面の塗膜がレトルト処理によって品質低下することがなくなるので、問題なくボトル缶をレトルト処理することができる。また、ねじ部より下のテーパー部を含む部分には第3層の塗膜が形成されているので、金属製ボトル缶表面のすべりが良く、傷などを防止することができる。
【0015】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の金属製ボトル缶において、前記缶基体が一枚の金属板により形成された1ピース缶であることを特徴とする。
【0016】
この発明に係る金属製ボトル缶によれば、缶基体が1ピース缶であるので、2ピース缶と異なり、底蓋を巻き締めなどによって設けることが不要になる。
【0017】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の金属製ボトル缶において、前記缶基体の底面に塗膜が形成されていることを特徴とする。
【0018】
この発明に係る金属製ボトル缶によれば、缶基体の底面に塗膜が形成されているので、缶基体の底面の耐腐食性を向上させることができ、レトルト処理の熱による缶基体の底面の変色を防止することができる。
【0019】
請求項4に係る発明は、金属製の缶基体の上部にねじ部が形成される金属製ボトル缶の製造方法において、一枚の金属板により有底円筒状の缶基体が形成され、この缶基体の表面に形成される複数層の塗膜のうち、第1層の塗膜は、ねじ部が形成される部分及びそれより下に形成され、第2層及び第3層の塗膜は、ねじ部が形成される部分より下の前記テーパー部を含む部分に形成され、この塗膜の第1層のヤング率が第3層のそれより低くされており、これらの塗膜が形成された後、缶基体の上部にねじ部を有する口金部が形成されることを特徴とする。
【0020】
この発明に係る金属製ボトル缶の製造方法によれば、金属製ボトル缶の表面を硬質の塗膜によって保護することができるとともに、口金部の形成時に塗膜に剥離やひび割れが生じることがなく、レトルト処理によって品質低下することがない金属製ボトル缶を製造することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態について説明する。図1から図4は、この発明の一実施の形態に係る金属製ボトル缶を示す図であって、図1は金属製ボトル缶を製造工程順に示す説明図、図2は金属製ボトル缶の缶基体に設けられた口金部の周辺を示す拡大図、図3は缶基体に形成された塗膜を示す説明図、図4は缶基体を示す全体図である。
【0022】
図1に示すこの実施形態の金属製ボトル缶(以下、単に「ボトル缶」と略称す)10は、アルミニウム若しくはアルミニウム合金からなる一枚の金属板10Aに絞り加工及びしごき加工の加工処理Aを行うことによって缶基体11が形成され、次いで、その缶基体11の上端部が切断されることによって缶基体11の高さを調節するトリミング処理Bが行われ、その後、缶基体11の表面が塗装処理Cによって塗膜が形成される。
【0023】
そして、ネックイン加工処理Dにより、缶基体11の上端側を絞り加工して細い形状とすることにより口金部12が設けられる。その後、口金部12の上端部を若干膨出させ、更に閉栓用としてのキャップ(図示せず)を巻き締めるため、図2のようにねじ部14が形成されるねじ形成処理Eが行われる。このねじ部14の形成時には、図2のように上端を外側に折り返してねじ部14の先端に密着させるカール部15が形成されるようになっている。
【0024】
このようにしてカール部15を有するねじ部14が形成されると、内容物の充填工程に移送され、そこで内容物が充填された後、口金部12にキャップが巻き締められて密封され、その後、内容物がお茶やミルク入りコーヒーなどの飲料水の場合には高温殺菌としてのレトルト処理が行われることとなる。
【0025】
この実施形態では、缶基体11への塗装処理Cとして、まず、図3に示すように、缶基体11の表面にサイズコート層(第1層)21が、缶基体11の口金部12に設けられているねじ部14及びそのねじ部14より下方にも全て塗装され、従って、缶基体11の表面全面に塗装される。また、サイズコート層21が塗装され、乾燥された後、口金部12より下方に内容物などの情報や絵柄等が印刷されることで、インク層(第2層)22の塗膜が形成される。そして、インク層22の上にオーバーコート層(第3層)23が塗装され、乾燥される。このとき、オーバーコート層23は口金部12より下方のテーパー部を含む部分に塗装される。そして、サイズコート層21はヤング率の低い柔軟性のある材料とされ、オーバーコート層23は、ヤング率が高い硬質な材料とされている。
【0026】
また、缶基体11の底面11Pには図4に示すように、ボトム層24が塗装されている。この場合、ボトム層24は、サイズコート層21の塗装時に塗膜が形成される。
【0027】
この実施形態のボトル缶10は、上記のように構成されており、これを製造するには、図1のように、一枚の金属板10Aを絞り加工及びしごき加工の加工処理Aすることによって有底円筒状の缶基体11が形成され、次いで、有底円筒状の缶基体11の高さが調節されるトリミング処理Bが行われる。その後、塗装処理Cとして、缶基体11の表面にサイズコート層21が塗装されると共に、その上にインク層22,オーバーコート層23が塗装される。この塗膜が乾燥して硬化すると、缶基体11の上端側にネックイン加工処理Dが施されることにより口金部12が形成され、更に、口金部12にねじ加工処理Eを行うことによってカール部15を有するねじ部14が設けられる。
【0028】
この実施形態においては、缶基体11の表面にサイズコート層21が塗装され、口金部12より下方のテーパー部を含む部分にインク層22及びオーバーコート層23が設けられているので、上述したようなネックイン加工処理Dやねじ加工処理Eにおいて、オーバーコート層23に剥離やひび割れが生じることはない。そして、缶基体11内に例えばお茶が充填され、レトルト処理が施されることによって、塗膜に悪影響を与えることはない。つまり、ボトル缶10の耐腐食性が低下することがなく、キャップの回栓トルクが高くなることもなくなり、ボトル缶10の品質が低下することを確実に防止することができる。また、ボトル缶10の表面にオーバーコート層23が塗装されているので、インク層22を保護することできると共に、缶基体11の表面のすべりも良好となる。
【0030】
また、缶基体11が一枚の金属板からなる1ピース缶であるので、2ピース缶と異なり、底蓋を巻き締めなどによって設けることが不要になり、部品点数が最小点数で済み、部品管理もそれだけ容易となる。
【0031】
更に、缶基体11の底面11Pにボトム層24が塗装されているので、底面11Pにおいても良い耐腐食性が得られ、レトルト処理時の熱で缶基体11の底面11Pが変色することがなくなり、品質の高いボトル缶10が得られる。
【0032】
そして、このボトル缶10の製造方法によれば、硬質のオーバーコート層23により表面が保護され、表面のすべりが良く、さらに、レトルト処理を施すことによっても品質が低下することのないボトル缶10を製造することができる。
【0033】
なお、図示実施形態においては、缶基体11にサイズコート層21の塗膜が形成された時に、缶基体11の底面11Pにもボトム層24が塗装された例を示したが、このボトム層24は、インク層22及びオーバーコート層23の塗装時に塗膜が形成されてもよく、或いはオーバーコート層23が塗装された後の工程で塗膜が形成されてもよく、図示に限られるものではない。
また、図示実施形態では、金属製ボトル缶10として、アルミニウム若しくはアルミニウム合金によって形成された例を示したが、この材質に限定されるものではなく、他の金属、例えば加工性に優れたスズめっき鋼板等で形成しても同様の効果が得られる。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係る発明によれば、缶基体の口金部より下方のテーパー部を含む部分に硬質の塗膜を形成したので、口金部の加工が硬質の塗膜に剥離などの影響を与えることがなく、レトルト処理時にボトル缶の品質が低下することがなくなり、問題なくボトル缶をレトルト処理することができる。また、硬質の塗膜により、金属製ボトル缶表面のすべりが良く、傷などを防止することができる効果が得られる。
【0036】
請求項2に係る発明によれば、缶基体が1ピース缶であるので、2ピース缶と異なり、底蓋を巻き締めなどによって設けることが不要になる効果が得られる。
【0037】
請求項3に係る発明によれば、缶基体の底面に塗膜が形成されるので、底面の耐腐食性を向上させることができ、レトルト処理時の熱で缶基体の底面が変色することがなくなり、ボトル缶の品質をいっそう高めることができる効果が得られる。
【0038】
請求項4に係る発明によれば、硬質の塗膜により表面が保護され、表面のすべりが良く、さらに、レトルト処理を施すことによっても品質低下のないボトル缶を製造することができる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施の形態に係る金属製ボトル缶を製造工程順に示す説明図である。
【図2】 同じく金属製ボトル缶の缶基体に設けられる口金部の周辺を示す拡大図である。
【図3】 缶基体に形成された塗膜の層を示す説明図である。
【図4】 缶基体を示す右半断面の全体図である。
【図5】 従来の金属製ボトル缶を示す説明図である。
【符号の説明】
10 金属製ボトル缶
10A 金属板
11 缶基体
11P 底面
12 口金部
14 ねじ部
15 カール部
21 サイズコート層(第1層)
22 インク層(第2層)
23 オーバーコート層(第3層)
24 ボトム層
Claims (4)
- 金属製の缶基体の上部にテーパー部が形成され、このテーパー部の上部に口金部が形成されると共に、その口金部にねじ部が形成されてなる金属製ボトル缶において、
缶基体の表面に形成された複数層の塗膜が、缶基体の表面に対し前記ねじ部及びそれより下に形成された第1層の塗膜と、ねじ部より下の前記テーパー部を含む部分に形成された第2層及び第3層の塗膜とからなり、第1層の塗膜のヤング率が第3層のそれより低くされていることを特徴とする金属製ボトル缶。 - 請求項1に記載の金属製ボトル缶において、前記缶基体が一枚の金属板により形成された1ピース缶であることを特徴とする金属製ボトル缶。
- 請求項1又は2に記載の金属製ボトル缶において、前記缶基体の底面に塗膜が形成されていることを特徴とする金属製ボトル缶。
- 金属製の缶基体の上部にねじ部が形成される金属製ボトル缶の製造方法において、一枚の金属板により有底円筒状の缶基体が形成され、この缶基体の表面に形成される複数層の塗膜のうち、第1層の塗膜は、ねじ部が形成される部分及びそれより下に形成され、第2層及び第3層の塗膜は、ねじ部が形成される部分より下の前記テーパー部を含む部分に形成され、この塗膜の第1層のヤング率が第3層のそれより低くされており、これらの塗膜が形成された後、缶基体の上部にねじ部を有する口金部が形成されることを特徴とする金属製ボトル缶の製造方法。
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