この発明は,通信を希望する車両が存在する領域を指定することによって,その指定された領域内に存在する1または複数の車両と通信(データ通信および会話を含む)を行うことができる通信方法およびシステムを提供するものである。この発明はまたこの通信システムで用いられる通信装置および中央局を提供している。
相互に通信を行う2つの通信装置を第1の通信装置および第2の通信装置とする。これらの通信装置は一般的には車両に搭載される(もちろん,必ずしも車両に搭載される必要はない)。
これらの第1の通信装置と第2の通信装置とが存在しうる空間(たとえば,車両が走行する道路)が複数の分割領域に分けられる。各分割領域には分割領域番号が付けられる。
第1および第2の通信装置には通信用識別番号が割当てられる。この通信用識別番号には車両の識別番号(ナンバープレートの番号でもよい),電話番号,その他の番号が用いられる。
第1の通信装置から通信を行う場合には,通信したい相手が存在する領域が指定される。この領域はもちろん任意の領域でよく,一般には一または複数の分割領域が含まれる。領域の指定は種々の方法で行うことができる。いずれにしても,指定領域を表わすデータに基づいて通信領域が決定される。この決定された通信領域内に存在する通信装置(第2の通信装置)と第1の通信装置との間で通信が開始される。
この発明においては,第1の通信装置と通信領域内に存在する1または複数の第2の通信装置との間で無線により直接通信を行う第1の通信モード,第1の通信装置と上述の通信領域内に存在する1または複数の第2の通信装置との間で電話局および通信回線(一般には電話回線)を通して通信を行う第2の通信モードおよび第1の通信装置が通信用識別番号(ここでは一般には電話番号)を用いて第2の通信装置を呼ぶ第3の通信モードがある。
第1の発明は,第1の通信モードによる通信方法,通信システムおよび通信装置を提供している。
第1の発明による通信方法は,空間的に異なる場所にある第1の通信装置と第2の通信装置との間で無線により直接通信を行う方法である。この通信方法によると,上記第1の通信装置において,所望の指定領域に関する入力を受付け,少くとも入力された指定領域を表すデータと上記第1の通信装置に割当てられた通信用識別番号とを含む送信電文を送信する。この後,上記指定領域を表すデータによって規定される通信領域内に存在する上記第2の通信装置から送信される返信電文を待つ。上記第2の通信装置において,上記第1の通信装置から送信された上記送信電文を受信すると,受信した上記送信電文に含まれる指定領域を表すデータによって規定される通信領域内に上記第2の通信装置が存在するかどうかを判定し,存在すると判定したときに受信した上記送信電文に含まれる通信用識別番号をもつ上記第1の通信装置に対して上記返信電文を送信する。これによって,上記第1の通信装置と上記第2の通信装置との間で通信が行われる。
第1の発明による通信システムは,空間的に異なる場所に存在する第1の通信装置と第2の通信装置とから構成され,これらの通信装置の間で無線により直接通信を行うシステムである。
上記第1の通信装置は,上記第2の通信装置と無線により直接通信を行うための第1の通信手段,所望の指定領域に関する入力を与えるための入力手段,上記入力手段から指定領域が入力されると,少くとも入力された指定領域を表すデータと上記第1の通信装置に割当てられた通信用識別番号とを含む送信電文を上記第1の通信手段に送信させる送信制御手段,および上記指定領域を表すデータによって規定される通信領域内に存在する上記第2の通信装置から送信される返信電文を上記第1の通信手段に受信させる受信制御手段を備えている。
上記第2の通信装置は,上記第1の通信装置と無線により直接通信を行うための第2の通信手段,および上記第2の通信手段が上記第1の通信装置から送信された上記送信電文を受信したことに応答して,受信した上記送信電文に含まれる指定領域を表すデータによって規定される通信領域内に上記第2の通信装置が存在するかどうかを判定し,存在すると判定したときに受信した上記送信電文に含まれる通信用識別番号をもつ上記返信電文を上記第2の通信手段から上記第1の通信装置に送信させる返信制御手段を備えている。
第1の発明による通信装置は,上述した第1の通信装置または第2の通信装置を規定している。第1の発明による通信装置は,他の通信装置と無線により直接通信を行うための通信手段,所望の指定領域に関する入力を与えるための入力手段,上記入力手段から指定領域に関する入力が与えられると,少くとも入力された指定領域を表すデータと通信装置に割当てられた通信用識別番号とを含む送信電文を上記通信手段に送信させる送信制御手段,上記指定領域を表わすデータによって規定される通信領域内に存在する上記他の通信装置から送信される返信電文を上記通信手段に受信させる受信制御手段,および上記通信手段がさらに他の通信装置から送信された送信電文を受信したことに応答して,受信した上記送信電文に含まれる指定領域を表すデータによって規定される通信領域内に通信装置が存在するかどうかを判定し,存在すると判定したときに受信した上記送信電文に含まれる通信用識別番号をもつ返信電文を上記通信手段から上記のさらに他の通信装置に送信させる返信制御手段を備えている。
第1の通信モードにおける通信は次のようにして行われる。第1の通信装置において,所望の指定領域に関する入力がユーザ(第1の通信装置を所持した人,第1の通信装置が搭載された車両のドライバ等)によって与えられる。少なくとも入力された指定領域を表すデータと第1の通信装置に割当てられた通信用識別番号とを含む送信電文が第1の通信装置から送信される。その後,第1の通信装置は,通信領域内に存在する第2の通信装置から送信される返信電文を待つ。
第2の通信装置は,第1の通信装置から送信された送信電文を受信すると,受信した送信電文に含まれる指定領域を表すデータによって規定される通信領域内にこの第2の通信装置が存在するかどうかを判断する。第2の通信装置が通信領域内に存在すると判定すると,第2の通信装置は受信した送信電文に含まれる通信用識別番号をもつ返信電文を第2の通信装置に送信する。
このようにして,第1の通信装置と,指定された通信領域内に存在する第2の通信装置との間で無線による通信(データ通信または会話)が行われる。
たとえば,第1および第2の通信装置が異なる車両に搭載されているとする。自車両(第1の通信装置が搭載されている車両)の周囲に存在する他の車両(第2の通信装置が搭載されている)との間で通信を行うときには,自車両のドライバ(ユーザ)が上記他の車両が存在する領域を第1の通信装置において指定する。これによって,自車両に搭載された第1の通信装置と,自車両の周囲に存在する他の車両に搭載された第2の通信装置との間で通信(データ通信)が可能となる。これらの通信装置の間で通信されるデータには,車両に搭載された各種センサによって検出されたデータ,この検出データに基づいて作成されたデータ,ドライバ(ユーザ)が入力する周囲の状況や運転に関する情報等の車両の走行状況に関するデータ(情報)がある。このようなデータの通信によって,ドライバの把握できる道路状況,走行状況に関する情報が増大する。したがって,ドライバの状況認識および判断能力が向上する。通信により取得したデータに基づいて車両の自動制御を行うことによって,先行車両等に関するデータをレーザ・レーダによって検出する場合に比べて,より正確かつ適切な制御を行うことができる。
第1の通信装置が搭載された自車両の周囲に存在する他の車両に搭載された第2の通信装置の通信用識別番号(電話番号等)があらかじめ分からなくても,第2の通信装置を搭載した他の車両が存在する領域をドライバが指定すれば,その領域に存在する他車両と自車両との間で通信を行うことができる。
第1および第2の通信装置を人が所持している場合には,第1の通信装置を所持した人(ユーザ)が,会話したい相手が存在する領域を指定するだけで,その領域に存在する第2の通信装置を所持した人と会話を行うことができる。
このようにして,第1の発明によると,通信相手となる第2の通信装置に割当てられた通信用識別番号があらかじめ分かっていなくても,ユーザは通信を行いたい通信相手が存在する領域を指定するだけで,その領域に存在する第2の通信装置と通信を行うことができる。
通信相手が存在する領域を指定するやり方には種々のものがある。
その一は,上記第1および第2の通信装置が存在しうる空間が,それぞれに領域番号が割当てられた複数の分割領域に分けられている場合に有効なものである。上記第1の通信装置において,指定領域に関する入力によって規定される通信領域を構成する1または複数の分割領域の領域番号を決定し,少くとも決定した1または複数の領域番号と上記第1の通信装置の通信用識別番号とを含む上記送信電文を送信する。上記第2の通信装置において,受信した上記送信電文に含まれる1または複数の領域番号をもつ分割領域によって構成される通信領域内に上記第2の通信装置が存在するかどうかを判定し,存在すると判定したときに受信した上記送信電文に含まれる通信用識別番号をもつ上記第1の通信装置に対して上記返信電文を送信する。
その二は,通信相手が存在する領域の方向および距離を入力するものである。上記第1の通信装置において,上記指定領域に関する入力として与えられた方向および距離を受付けると,少くとも上記第1の通信装置の位置,入力された方向および距離,ならびに上記第1の通信装置の通信用識別番号を含む上記送信電文を送信する。上記第2の通信装置は,受信した上記送信電文に含まれる位置,方向および距離によって規定される通信領域内に上記第2の通信装置の位置が存在するかどうかを判定し,存在すると判定したときに受信した上記送信電文に含まれる通信用識別番号をもつ上記第1の通信装置に対して上記返信電文を送信する。
第2の発明は第2の通信モードによる通信方法,通信システム,通信装置および中央局を提供している。
第2の発明による通信方法では,相互に通信を行う第1の通信装置と第2の通信装置とが存在しうる空間が複数の分割領域に分けられており,これらの分割領域にそれぞれ領域番号が割当てられており,上記第1および第2の通信装置にそれぞれ通信用識別番号が割当てられていることを前提とし,この通信方法は,上記第1の通信装置と上記第2の通信装置とが中央局を介して通信を行う方法である。上記中央局には,上記複数の分割領域内にぞれぞれ存在する通信装置の通信用識別番号を,その分割領域に割当てられた領域番号に対応して通信用識別番号データ・ベースに登録しておく。上記第1の通信装置において,所望の指定領域に関する入力を受付け,少くとも入力された指定領域を表すデータを含む送信電文を上記中央局に送信する。上記中央局は,上記第1の通信装置から送信された上記送信電文を受信すると,受信した上記送信電文に含まれる指定領域を表すデータによって規定される通信領域を構成する1または複数の分割領域の領域番号に対応して登録されている通信用識別番号を上記通信用識別番号データ・ベースを参照して決定し,決定した通信用識別番号をもつ上記第2の通信装置と上記第1の通信装置との間の通信回線を接続する。上記中央局によって通信回線が接続された上記第1の通信装置と上記第2の通信装置とが通信回線を通して通信を行う。
第2の発明による通信システムは,第1の通信装置と第2の通信装置と中央局とから構成される。
上記中央局は,上記複数の分割領域内にそれぞれ存在する通信装置の通信用識別番号を,その分割領域に割当てられた領域番号に対応して登録されている通信用識別番号データ・ベース,および上記第1の通信装置から送信される送信電文を受信すると,受信した上記送信電文に含まれる指定領域を表すデータによって規定される通信領域を構成する1または複数の分割領域の領域番号に対応して登録されている通信用識別番号を上記通信用識別番号データ・ベースを参照して決定し,決定した通信用識別番号をもつ上記第2の通信装置と上記第1の通信装置との間の通信回線を接続する通信回線接続手段を備えている。
上記第1の通信装置は,上記第2の通信装置と通信回線を通して通信を行うための第1の通信手段,所望の指定領域の入力を与えるための入力手段,上記入力手段から指定領域に関する入力が与えられると,少くとも入力された指定領域を表すデータを含む送信電文を上記中央局に上記第1の通信手段から送信させる送信制御手段,および上記中央局によって通信回線が接続されると,通信回線が接続された上記第2の通信装置との通信を上記第1の通信手段を用いて行う第1の通信制御手段を備えている。
上記第2の通信装置は,上記第1の通信装置と通信回線を通して通信を行うための第2の通信手段,および上記中央局によって通信回線が接続されると,通信回線が接続された上記第1の通信装置との通信を上記第2の通信手段を用いて行う第2の通信制御手段を備えている。
第2の発明による通信装置は上記の第1または第2の通信装置である。この通信装置は他の通信装置と通信回線を通して通信を行うための通信手段,所望の指定領域に関する入力を与えるための入力手段,上記入力手段から指定領域に関する入力が与えられると,少くとも入力された指定領域を表すデータを含む送信電文を,通信回線を接続するために中央局に,上記通信手段から送信させる送信制御手段,および上記中央局によって通信回線が接続されると,通信回線が接続された他の通信装置との通信を上記通信手段を用いて行う通信制御手段を備えている。
第2の発明による通信装置もまた,車両に搭載される,または人に所持される。
第2の発明による中央局は上述した通信システムに含まれるものであり,上記複数の分割領域内にそれぞれ存在する通信装置の通信用識別番号を,その分割領域に割当てられた領域番号に対応して登録した通信用識別番号データ・ベース,および上記第1の通信装置から送信された送信電文を受信すると,受信した上記送信電文に含まれる指定領域を表すデータによって規定される通信領域を構成する1または複数の分割領域の領域番号に対応して登録されている通信用識別番号を上記通信用識別番号データ・ベースを参照して決定し,決定した通信用識別番号をもつ上記第2の通信装置と上記第1の通信装置との間の通信回線を接続する通信回線接続手段を備えている。
第2の通信モードにおける通信は次のようにして行われる。第1の通信装置において,指定領域がユーザによって入力される。少なくとも入力された指定領域を表すデータを含む送信電文が第1の通信装置から中央局に送信される。
第1の通信装置から送信された送信電文を受信すると,中央局は受信した送信電文に含まれる指定領域を表すデータによって規定される通信領域を構成する1または複数の分割領域の領域番号に対応して登録されている通信用識別番号を通信用識別番号データ・ベースを参照して決定する。決定された通信用識別番号をもつ第2の通信装置と第1の通信装置との間の通信回線が中央局によって接続される。
中央局によって通信回線が接続された第1の通信装置と第2の通信装置との間で通信回線を通して通信(データ通信または会話)が行われる。
したがって,第1の通信モードと同様に,第1の通信装置は,第1の通信装置のユーザが入力する所望の指定領域によって規定される通信領域内に存在する第2の通信装置と通信回線を通して通信を行うことができる。
第1の通信装置と中央局との間,および中央局と第2の通信装置との間は一般には無線通信によって結ばれるであろう。
とくに第2の発明では第1の通信装置と第2の通信装置が通信回線(電話回線)を通して接続される。電話回線が接続されているところであれば,第1の通信装置と第2の通信装置の間の距離が長くても両装置間の通信が可能である。第2の発明は特に遠距離通信に適している。
好ましくは,上記複数の分割領域のそれぞれに,分割領域内に存在する通信装置と上記中央局との通信回線を中継する複数の中継局が設けられる。
中継局の存在によりより広いエリアをカバーして第2の通信モードによる通信を実現することができる。
中央局の通信用識別番号データ・ベースに各分割領域に存在する通信装置の通信用識別番号に関する最新の情報を登録しておくために,第1および第2の通信装置はそれぞれ少くともそれぞれの通信装置の通信用識別番号を含む通知電文を間欠的に繰返し送信する。上記中央局は,上記第1および第2の通信装置からそれぞれ送信された上記通知電文を受信すると,各通信装置が存在する分割領域の領域番号に対応してその通知電文に含まれる通信装置の通信用識別番号を上記通信用識別番号データ・ベースに登録する。
中継局が設けられている場合には,各中継局は上記第1および第2の通信装置からそれぞれ送信された上記通知電文を受信すると,受信した上記通知電文を上記中央局に送信する。
1つの通信装置から送信された通信電文を複数の中継局が受信することがある通信装置が存在する分割領域を正しく決定するために次のようにするとよい。
各中継局はそれぞれ,上記第1および第2の通信装置からそれぞれ送信された上記通知電文を受信すると,受信した上記通知電文とその受信強度とを上記中央局に送信する。上記中央局は,上記複数の中継局から送信された上記通知電文とその受信強度を受信すると,同一の通信用識別番号を含む通知電文について,その受信強度が最大である通知電文を受信した1つの中継局を決定し,決定した中継局が設置された分割領域の領域番号に対応してその通信用識別番号を上記通信用識別番号データ・ベースに登録する。
第2の発明においても,第1の発明におけるものと同じように種々の方法で通信相手が存在する領域を指定することができる。
第3の発明は,上述した第1の通信モードおよび第2の通信モードによる通信方法,通信システムおよび通信装置を提供している。
第1の通信モードにおける通信を行う場合には,まず第1の通信モードがユーザによって選択され,さらに指定領域が指定される。指定される領域について,先に説明したようにして第1の通信モードにおける通信が行われる。
第2の通信モードにおける通信を行う場合には,第2の通信モードがユーザによって選択され,さらに領域が指定される。指定された領域について,先に説明したようにして第2の通信モードにおける通信が行われる。
第1の通信モードでは,第1の通信装置と第2の通信装置とが無線により直接通信を行うので,通信相手となる第2の通信装置までの距離が第1の通信装置から近いときに利用するのに好適である。第2の通信モードは,通信回線を利用するので,第1の通信装置から第2の通信装置までの距離に原則的に制限を受けない。第2の通信モードは第1の通信モードによってカバーできない遠方の領域に存在する第2の通信装置との通信に有利である。
第4の発明は,第1の通信モード,第2の通信モードおよび第3の通信モードによる通信方法,通信システムおよび通信装置を提供している。第1の通信モードおよび第2の通信モードによる通信は上述した通りである。
第4の発明によると,第1の通信モード,第2の通信モードおよび第3通信モードのいずれか選択される。第3の通信モードがユーザによって選択された場合には,次のようにして第3の通信モードにおける通信が行われる。
第1の通信装置において,所望の通信用識別番号がユーザによって入力される。少なくとも入力された通信用識別番号を含む送信電文が第1の通信装置から中央局に送信される。中央局は,第1の通信装置から送信された送信電文を受信すると,受信した送信電文に含まれる通信用識別番号をもつ第2の通信装置と第1の通信装置との間の通信回線を接続する。中央局によって通信回線が接続された第1の通信装置と第2の通信装置との間で通信回線を通して通信が行われる。
第3の通信モードは電話番号をダイヤルする通常の電話機による通信に以ている。このようにして,所望の領域を指定する第1および第2の通信モードによる通信に加えて,相手の番号を用いた第3のモードによる通信も可能となる。
第5の発明は,第1の通信モードおよび第3の通信モードによる通信方法,通信システムおよび通信装置を提供している。
第6の発明は,第2の通信モードおよび第3の通信モードによる通信方法,通信システムおよび通信装置を提供している。
第5および第6の発明によると,第1,第2および第3の通信モードによる通信のうちのいずれか二つの利用が可能である。利用できる通信モードは二つであるが,その分通信システム,通信装置の簡素化を図ることができる。
第1実施例
この実施例における移動体通信システムは,一の車両に搭載された端末装置(これを車載端末装置という)と,他の車両(1台または複数台)に搭載された車載端末装置との間で通信(データ通信,会話を含む)を行うためのシステムである。
通信の相手となる車載端末装置を指定する方法には次の2通りある。
その一は,一の車載端末装置のユーザが,通信相手となる他の車載端末装置が存在する領域(これを指定領域という)を指定する方法である(領域指定)。この場合に車載端末装置間の通信は,(i) 電話回線(有線,無線を含む)を介して実現されるか(とくに比較的遠い距離に存在する車載端末装置間の通信に適しているために,これを遠車通信モードという),または(ii)電話回線を介することなく無線による直接通信により実現される(これはとくに比較的近い距離に存在する車載端末装置間の通信に適しているため,これを近車通信モードという)。
通信相手を指定する方法のその二は,ユーザが通信相手の車載端末装置をその電話番号により指定する方法である(これを通常通信モードという)。この通信は当然電話回線を介して実現される。
移動体通信の上述のすべての通信モードを実現するために,移動体通信システムには,電話局および中継局が含まれる。
この移動体通信システムにおいて,車載端末装置には電話番号と識別番号とがあらかじめ割当てられている。電話番号は通常通信モードおよび遠車通信モードにおいて電話回線を接続するために用いられ,識別番号は近車通信モードにおいて無線による直接通信を行なうために用いられる。電話番号を識別番号とすることも,識別番号を電話番号とすることも可能である。これらの場合には,少なくとも電話番号または識別番号のいずれか一方があればよい。
この移動体通信システムは適当な広さの地域にわたって設けられる。この地域は日本全国でも,北海道,本州,四国,九州のような広さでもよいし,さらに東北地方,関東地方,中部地方という単位でもよく,行政区画(都道府県,市区町村)別でもよい。複数の行政区画にわたるものでもよい。いずれにしても移動体通信システムが設けられる地域は,複数の領域(これを分割領域という)に分割される。この分割領域は移動体通信に適した広さまたは区域等を単位として定められることが好ましい。分割領域にはそれぞれ少なくとも一の中継局が設置される。分割領域には,各分割領域を識別するための領域番号があらかじめ割当てられている。
中継局は基本的に有線によって電話局に接続されている。もちろん中継局は電話局とが無線で交信できるようにしてもよい。中継局はまた,車載端末装置と無線により交信を行う。中継局は,車載端末装置と電話局との間の交信を中継する。
電話局は,遠車通信モードにおいて電話回線を接続する通信相手の車載端末装置を決定するために車載端末データ・ベースを備えている。車載端末データ・ベースの構成の詳細は後述するが,この車載端末データ・ベースには,その電話局に接続された中継局が管理している分割領域に存在する車両に搭載された車載端末装置(電源がオンであるもの)の電話番号が,分割領域番号(中継局)ごとに登録されている。後述するように,車載端末装置は電源がオンである限り中継局に向けて一定時間ごとに少なくとも自分の電話番号を含む通知信号を中継局に送信する。
電話局は,この車載端末データ・ベースを用いて,遠車通信モードにおいて,一の車載端末装置と,この車載端末装置のユーザが指定した領域に属する1または複数の分割領域(後述するようにして決定される)に存在する車載端末装置との間の電話回線を接続する。電話回線が接続されると車載端末装置の間で通信が可能となる。通信が終了し電話回線が切断されると,発呼側の車載端末装置に対して通信時間および距離に応じた電話回線の使用料金(通話料金)が課金される。
電話局はまた,通常通信モードにおいて,一の車載端末装置と,この車載端末装置のユーザが入力する電話番号をもつ車載端末装置との間の電話回線を接続する。これらの電話回線が接続された車載端末装置の間で通信が行われる。通常通信モードの場合にも電話回線の使用料金が課金される。
近車通信モードでは,電話回線を使用しないので電話回線の使用料金がかからない。近車通信モードは長時間または常時通信する場合,たとえば周囲に存在する車両からその走行状況を取得して定車間走行等の制御を行う場合に有利である。近車通信モードによる通信は車載端末装置から送信する電波が届く範囲に限られる。もっとも,中継局を通して中継することによって,より広い範囲で近車通信を行うこともできる。
遠車通信モードは,通信相手の車載端末装置までの距離に制約が原則的にないので,たとえば目的地または目的地までの経路上の特定の地点における天候,渋滞,事故等の情報を取得するときに有利である。
車載端末装置が近車通信モードのみをもつ場合には,電話局および中継局は不要である。
図1は移動体通信システムの空間的配置の一例を示している。道路Lは両側4車線(片側2車線)のもので,車線LL1,LL2,LR1およびLR2をもつ。車線LL1を車両C1,C2,C4およびC6が走行している。同様に車線LL2を車両C3およびC5が,車線LR1を車両C7が,車線LR2を車両C8およびC9がそれぞれ走行している。
道路Lが車線LL1およびLL2と,車線LR1およびLR2とに分割される。さらに道路Lの車線LL1およびLL2が一定間隔(たとえば50m)で分割される。道路Lの車線LR1およびLR2についても同様に分割される。このようにして道路Lは複数の分割領域に分割される。
これらの分割領域にはそれぞれ,領域番号A11,A12,A13,A14およびA15,ならびに領域番号A21,A22,A23,A24およびA25が割当てられている。各分割領域の路側に,中継局11,12,13,14および15,ならびに中継局21,22,23,24および25が設置されている。
中継局は好ましくは,信号機,街路灯,歩道橋,陸橋等の道路に関連する建造物,構造体,施設等の設備に取付けられる。専用の支柱等に中継局を取付けることもできる。携帯電話,自動車電話,簡易型携帯電話(PHS:Personal Handyphone Sysrtem )等の既存の移動体通信システムにおける中継局を,この実施例の移動体通信システムの中継局として利用してもよい。
図2は移動体通信システムにおける電話局と中継局との関係を示している。中継局11〜15および21〜25が有線により電話局(電話交換機)10に接続されている。電話局10は他の電話局(図示略)とも接続されている。
図3は,図1に示す道路L上に存在する車両について,電話局10に設けられている車載端末データ・ベースの一例を示している。図1において,分割領域A11に車両C1およびC2が存在するので,車載端末データ・ベースの分割領域番号A11に対応して車両C1に搭載された車載端末装置の電話番号0001(簡単のために電話番号を4桁の番号とする)および車両C2の電話番号0002が登録されている。同様に,分割領域番号A12に対応して車両C3の電話番号0003および車両C4の電話番号0004が,分割領域番号A13に対応して車両C5の電話番号0005が,分割領域番号A14に対応して車両C6の電話番号0006が,分割領域番号A21に対応して車両C7の電話番号0007が,分割領域番号A22に対応して車両C8の電話番号0008が,分割領域番号A23に対応して車両C9の電話番号0009がそれぞれ,車載端末データ・ベースに登録されている。分割領域A15,A24およびA25に属する車両はないので,これらの分割領域番号に対応して車載端末データ・ベースに登録される電話番号はない。
車載端末装置の電話番号は車載端末データ・ベースに次のようにして登録される。
車載端末装置は電源がオンである限り一定時間間隔で通知信号を送信する。この通知信号には少なくとも車載端末装置の電話番号が含まれている。通知信号はその車載端末装置の周囲にある一または複数の中継局に受信される。
中継局は車載端末装置からの通知信号を受信すると,それに含まれる電話番号とその通知信号の受信強度とを電話局10に送信する。
電話局10は通知信号の受信強度が最大となる中継局を決定する。決定された中継局に割当てられた分割領域番号に対応して,通知信号を送信した車載端末装置の電話番号が,車載端末データ・ベースに登録される。この中継局が通知信号を送信した車載端末装置と電話局10との間の交信を中継する。
通常,車載端末装置に最も近い中継局における通知信号の受信強度が最大となる。車載端末装置から最も近い中継局は,その車載端末装置の属する分割領域の路側に設けられた中継局である。
また車載端末装置が搭載された車両が移動することにより,車載端末装置(この車載端末装置が搭載された車両)の属する分割領域が変わると,車載端末装置からの通知信号の最大受信強度をもつ中継局は,車載端末装置が進入した分割領域の路側に設けられた中継局に変わるので,車載端末装置の属する分割領域が変わるにつれて車載端末データ・ベースにおける車載端末装置の電話番号に対応する分割領域番号も変わる。
電源がオフの車載端末装置からは通知信号が送信されないから,その車載端末装置の電話番号は車載端末データ・ベースに登録されない。電源がオフの車載端末装置は通信を行うことはできない。
車載端末装置の電話番号はまた,次のように車載端末データ・ベースに登録してもよい。
車載端末装置の属する分割領域の領域番号(後述するようにして検出される)とその電話番号とを含む通知信号を車載端末装置から中継局を介して電話局10に一定時間間隔で送信する。電話局10において,受信した通知信号に含まれる分割領域の領域番号に対応してその電話番号を車載端末データ・ベースに登録する。
また車載端末装置の現在位置(後述するようにして検出される)とその電話番号とを含む通知信号を車載端末装置から中継局を介して一定時間間隔で送信する。電話局10において,受信した通知信号に含まれる車載端末の現在位置に基づいて,その車載端末装置の属する分割領域の領域番号を決定する。その分割領域番号に対応して通知信号に含まれる車載端末装置の電話番号を車載端末データ・ベースに登録する。この場合,分割領域番号に代えてまたは加えて車載端末装置の現在位置を車載端末データ・ベースに登録する。
車載端末装置から電話局10に分割領域番号と電話番号とを含む通知信号を送信する場合および現在位置と電話番号とを含む通知信号を送信する場合には,中継局を分割領域ごとに設ける必要は必ずしもない。電話局10と車載端末装置との間の交信は,通知信号の受信強度が最大となる中継局によって中継される。
車載端末装置の構成について説明する。図4は車載端末装置の構成を示すブロック図である。車載端末装置は,MMI(Man Machine Interface )機器30,中央処理装置40,レーザ・レーダ41,ナビゲーション・システム42,センサ群43,アクチュエータ群44,電話回線/無線通信装置45および無線通信装置46から構成される。
車載端末装置の動作は中央処理装置40によって統括される。中央処理装置40はプログラムされたコンピュータ(とくにマイクロプロセッサ)によって実現される。中央処理装置40における処理の詳細については後に説明する。
センサ群43には,方位センサ(たとえばジャイロ・スコープ),車輪速差センサ,車速センサ,操舵角センサ,ブレーキ・センサ,衝撃センサ,加速度センサ,路面状態センサ,日照センサ,雨滴センサ,温度センサ,ワイパのオン/オフ・センサ等がある。各センサの検出信号は中央処理装置40に与えられる。また,車輪速差センサ,方位センサ等の検出信号はナビゲーション・システム42にも与えられ,車速センサ,路面状態センサ等の検出信号はレーザ・レーダ41にも与えられる。
レーザ・レーダ41は,車両の前方(および後方)に向けてパルス・レーザ光を投射しかつ水平方向に一次元的にまたは水平,垂直方向に二次元的にスキャンし,前方にある物体からの反射光を受光する。この受光信号と,センサ群43に含まれる車速センサ,路面状態センサ等の検出信号とに基づいて所定の信号処理が行なわれ,これによって車両の周囲の状況に関する情報(先行する車両までの距離(相対位置),車両の相対速度,車両形状,道路形状,渋滞情報,事故情報,気象情報等)が生成される。レーザ・レーダ41の詳細については,同一出願人による特許出願,特願平4-305019号,特願平6-52512 号,特願平6-83793 号および特願平7-351250号に記載されている。レーザ・レーダ41は必ずしもなくてもよい。
ナビゲーション・システム42は位置センサとして利用される。ナビゲーション・システム42は,車両の位置を表すデータ(経度,緯度および必要に応じて高度)を出力する。位置センサとして他のセンサを用いることができる。
ナビゲーション・システム42は,良く知られているように,道路地図を表示装置33(図6参照)に表示させ,この道路地図上に自車両の現在位置,目的位置,最短経路等を明示するものである。
図5はナビゲーション・システム42の構成の概要を示している。ナビゲーション・システム42は,少なくとも,プロセッサ51,GPS(Grobal Positioning System )受信機52,地図データ・ベース53およびキー群54を備えている。プロセッサ51はプログラムされたコンピュータ(とくにマイクロプロセッサ)によって実現される。
地図データ・ベース53には,いくつかの縮尺の地図を表す地図データと,上述の道路地図上に設定された分割領域を規定するデータと,各分割領域の領域番号を表すデータとが格納されている。地図データ・ベース53は一般にCD−ROMによって実現される。
キー群54は,ナビゲーション・システム42に,目的位置の入力,表示装置33に表示される道路地図のスクロール,その道路地図の縮尺の変更,自車両の現在位置のマニュアル調整を行うためのキーを含む。キー群54は後述するMMI機器30に含めてもよい。
ナビゲーション・システム42における位置の計測には種々の方式があるが,一般には複数の方式を併用することにより正確な位置が求められる。GPS(Grobal Positioning System )方式は複数の人工衛星から発射される電波をGPS受信機52によって受信し,その到達時間を計測し,衛星からの距離を計算することによって位置を知るものである。
また路側に設けられる電波発信設備(ビーコンと呼ばれる)からの電波を受信して位置を計測する方式もある。上記の中継局11〜15および21〜25がビーコンとしての役割を果たす。中継局から発信される位置計測用信号は,電話回線/無線通信装置45(または無線通信装置46)によって受信され,中央処理装置40を介して,プロセッサ51に与えられる。
上述のように,センサ群43に含まれる方位センサ,車輪速差センサ等の検出信号もプロセッサ51に与えられている。
プロセッサ51は,GPS受信機52および電話回線/無線通信装置45(または無線通信装置46)がそれぞれ受信した受信信号,ならびに方位センサ,車輪速差センサ等からそれぞれ出力される検出信号に基づいて,必要に応じて地図データ・ベース53に記憶された地図データによって表される道路地図を用いて位置を修正し(マップ・マッチング),正確な位置を表すデータを得る。
アクチュエータ群44には,アクセル,ブレーキ,ハンドル,ワイパ,ヘッド・ライト等を駆動またはオン/オフ・スイッチングするためのアクチュエータが含まれる。中央処理装置40から与えられる操作量を表す信号に基づいて,アクセル,ブレーキ,ハンドル,ワイパ,ヘッド・ライト等が各アクチュエータによって駆動またはオン/オフ・スイッチングされる。
エア・コンディショナ,サスペンション・コントロール・システム,スキッド・コントロール・システム等を車両に設けた場合には,中央処理装置40からそれらのコントローラに目標値,最適な制御のための情報等を表す信号を与えるようにすることもできる。
電話回線/無線通信装置45は通常通信または遠車通信を行うためのものである。電話回線/無線通信装置45は,上述のように,一の中継局に一定時間間隔で通知信号を送信している。通常通信または遠車通信においてデータ通信を行なう場合,電話回線/無線通信装置45は,中央処理装置40から与えられる信号を変調して送信し,かつ受信した信号を復調して中央処理装置40に与える。会話の場合は,電話回線/無線通信装置45は,送受話器37(図6参照)から与えられる音声信号を送信し,かつ受信した音声信号を送受話器37に与える。電話回線/無線通信装置45は,携帯電話,PHS等の電話機(データ通信が可能なもの)とモデム(Modulator-Demodulator )とによって実現することができる。
無線通信装置46は,近車通信を行うためのものである。無線通信装置46は,他の車載端末装置の無線通信装置46と電話回線を介さずに直接無線により通信を行う。近車通信においてデータ通信を行う場合には,無線通信装置46は,中央処理装置40から与えられる信号を変調して送信するとともに,受信した信号を復調して中央処理装置40に与える。会話の場合には,無線通信装置46は送受話器37から与えられる音声信号を送信し,かつ受信した音声信号を送受話器37に与える。
電話回線/無線通信装置45と無線通信装置46とを1つの通信装置により実現することもできる。
MMI(Man Machine Interface )機器30は入,出力装置を含む。図6はMMI機器30の構成例を示している。
切替ボタン31には,OFFボタン31a ,ON(終了)ボタン31b ,近ボタン31c ,遠ボタン31d ,近/遠ボタン31e および通ボタン31f がある。
OFFボタン31a は車載端末装置の電源を切るときにユーザによって押される。ON(終了)ボタン31b は電源を投入するときに押される。またON(終了)ボタン31b は,近ボタン31c ,遠ボタン31d ,近/遠ボタン31e または通ボタン31f のいずれか1つの切替ボタンによって特定される通信モードを終了するときにも押される。
近ボタン31c は近車通信モードを設定するときに押され,遠ボタン31d は遠車通信モードを設定するときに押される。近/遠ボタン31e は近車通信モードと遠車通信モードの両方を設定するときにときに押される。通ボタン31f は通常通信モードを設定するときに押される。
キー群32には,「1〜9,0」の数値キーと,「#,*」の機能キーがあり,これらのキーは,電話番号の入力,指定領域の入力,その他の情報の入力等に使用される。
表示装置33には,道路地図が表示され,その道路地図上に自車両の現在位置,目的位置,最適経路等がナビゲーション・システム42によって表示される。また後述するように,近車通信,遠車通信および通常通信により得られた情報等(たとえば,事故等)も中央処理装置40によって表示装置33上に表示される。表示装置33は,CRT表示装置,液晶表示装置等によって実現される。表示装置33としてテレビジョン受像機を用いてもよい。
表示装置33の表示画面上には好ましくは,タッチパネルが設けられる。タッチ・パネルは表示装置33の表示画面に表示される項目の選択,道路地図上における位置または領域の指定等に用いられる。
表示器36は,この車載端末装置が搭載された車両がそのまま走行するとその車両に迫るであろう危険性の度合いを表す危険度(たとえば,走行車両の車間距離が短い場合には危険度が高い)を表示するものである。表示器36は7個のLEDが横一列に並べられて構成されている。危険度に応じて発光するLEDの数が変る。図6においては,表示器36は7個のLEDのうち,ハッチングで示す左端から3個のLEDが発光している。好ましくは,LEDの発光色を危険度に応じて変えるとよい。表示器36は必ずしもなくてもよい。
スピーカ35は,メッセージ等の音声または警報音を出力するためのものである。音声または警報音の音量は,つまみ34を回すことによって調整される。ブザーを用いて警報音を発するようにしてもよい。
送受話器37はユーザが通信相手と会話(音声による通信)するときに使用される。
中央処理装置40における通信処理について説明する。通信モードには,上述した通常通信モード,遠車通信モードおよび近車通信モードがある。
通常通信モードにおける処理には通常通信処理および通常返信処理がある。通常通信処理は,所望の通信相手の車載端末装置の電話番号を入力し,その通信相手と電話回線を介して通信(データ通信および音声による通信を含む)を行う処理である。通常返信処理は,他の通信相手からの通常通信による通信要求に応答する処理である。
遠車通信モードにおける処理には遠車通信処理および遠車返信処理がある。遠車通信処理は,指定領域に存在する一または複数の車載端末装置に遠車通信を要求し,この通信要求に応答した車載端末装置との間で電話回線を介して通信(データ通信および音声による通信を含む)を行なう処理である。遠車返信処理は,他の車載端末装置からの遠車通信による通信要求に応答する処理である。
近車通信モードにおける処理には近車通信処理および近車返信処理がある。近車通信処理は,指定領域に存在する一または複数の車載端末装置に近車通信を要求し,この通信要求に応答した車載端末装置との間で通信(データ通信および音声による通信を含む)を行なう処理である。近車返信処理は,他の車載端末装置からの近車通信による通信要求に応答する処理である。
図7は中央処理装置40における通信処理の全体的な処理手順を示している。
MMI機器30のボタン31a 〜31f のいずれかがユーザによって押されたかどうかが判断される(ステップ101 )。異なるボタンが複数回にわたって押された場合には,最後に押されたボタンによって処理が決定される。
近車通信処理は近ボタン31c または近/遠ボタン31e が押されたときに行なわれる(ステップ102 )。遠車通信処理は遠ボタン31d または近/遠ボタン31e が押されたときに行われる(ステップ104 )。近/遠ボタン31e が押されたときには,近車通信処理と遠車通信処理とが行われる。通常通信処理は通ボタン31f が押されたときに行われる(ステップ106 )。
近車返信処理,遠車返信処理および通常返信処理は,車載端末装置の電源がオンである限り,他の車載端末装置から通信要求があったときに行われる(ステップ103 ,105 ,107 )。
近車通信モードにおける近車通信処理(ステップ102 )および近車返信処理(ステップ103 )について説明する。
図8,9,10および11は近車通信処理(ステップ102 )の手順を示すフロー・チャートである。
図1に示す車両C1から近車通信を開始する場合を例にとって以下に説明する。
近ボタン31c または近/遠ボタン31e が車両C1のユーザによって押され,近車通信モードが選択される。MMI機器30のキー群32を用いてユーザによって入力される指定領域が中央処理装置40に取込まれる(ステップ111 )。
指定領域は指示種類,指定方向および指定距離によって規定される。
指示種類は指定方向の指示方法を表す。指示種類には,指定方向を方位によって入力する絶対指示と,指定方向を自車両の進行方向を基準として入力する相対指示の2種類がある。絶対指示と相対指示はそれぞれ,キー群32の数値キー「1」と「2」によって表される。
指定方向は方位または自車両の進行方向を基準とする方向である。指定方向はキー群32の数値キー「1」〜「9」を用いて入力される。
絶対指示の場合,図15(A) に示すように,「5」の数値キーを「中心」として,「1」,「2」,「3」,「4」,「6」,「7」,「8」および「9」の数値キーによってそれぞれ,「北西」,「北」,「北東」,「西」,「東」,「南西」,「南」および「南東」の方位が指定される。「中心」は自車両(車載端末装置)の属する分割領域であり,各方位は上記の方位(「北西」,「北」等)の両側に22.5度ずつ合計45度の角度範囲をもつ。
相対指示の場合,図15(B) に示すように,「5」の数値キーを「中心」として,「1」,「2」,「3」,「4」,「6」,「7」,「8」および「9」の数値キーによってそれぞれ,「左前」,「前」,「右前」,「左」,「右」,「左後」,「後」および「右後」の方向が指定される。「中心」は自車両(車載端末装置)の属する分割領域であり,各方向は上記の方向(「右前」,「前」等)の両側に25.5度ずつ合計45度の角度範囲をもつ。
指定距離は自車両の位置を基準とした距離または距離範囲によって表わされる。指定距離は,キー群32の数値キーを用いて入力される。距離範囲を入力するときには,キー群32の機能キー「#」が用いられる。
図16は指定領域の入力例を示している。「*2*23*100#200*」が入力されている。これは先頭から順に,開始マーク「*」,指示種類「2」,区切マーク「*」,指定方向「23」,区切マーク「*」,指定距離「100#200」および終了マーク「*」である。指示種類が「2」で,これは「相対指示」である。指定方向が「23」で,これによって指定方向が「前」と「右前」の2つの方向が指定されていることになる。指定距離として「100#200」が入力されているから,指定距離は「100m〜200m」である。
相対指示の場合,指定方向は自車両の進行方向を基準とした方向であるから,指定方向を方位に変換するために,指示種類が相対指示であるかどうかが判断される(ステップ112 )。開始マーク「*」の次に入力された値が「1」のときには絶対指示と判定され(ステップ112 でNO),その値が「2」のときには相対指示と判定される(ステップ112 でYES )。たとえば,図16に示す例では,開始マーク「*」の次に入力された数値は「2」であるから,ステップ112 において相対指示と判定される。
ステップ112 において相対指示であると判定されると(ステップ112 でYES ),自車両が走行している進行方向の方位が,センサ群43に含まれる方位センサの検出信号に基づいて決定される(ステップ113 )。図1において,自車両C1は「北」に向かって走行しているので,自車両C1の進行方向の方位は「北」となる。
この自車両の進行方向の方位と,入力された指定方向とに基づいて方位が決定される(ステップ114 )。たとえば,図16に示す例では指定方向は「2」と「3」の2つであるから,方向は「前」と「右前」の2方向である。したがって,自車両の進行方向の方位が「北」であるから,「前」と「右前」の方位は「北」と「北東」となる。
次に車載端末装置の現在位置(車載端末装置が搭載された自車両の現在位置)を表す位置データ(少なくとも,経度と緯度を含む)が,ナビゲーション・システム42から中央処理装置40に取込まれる(ステップ115 )。
この取込まれた自車両の現在位置と,先に入力されたまたは決定された方位,および入力された指定距離とに基づいて通信領域(1または複数の分割領域)が決定される(ステップ116 )。地図データ・ベース52が検索されることにより,自車両の位置と方位と指定距離とによって定まる領域(図17にハッチングで示す領域)に一部または全部が属する1または複数の分割領域が決定され,これらの分割領域の領域番号が得られる。
上記の例では,自車両C1の位置から「北」および「北東」に「100m〜200m」離れた領域が図17においてハッチングで示されている。このハッチングで示された領域に,領域番号A13,A14,A15,A23,A24およびA25の分割領域が属する。
指定領域の入力は,ユーザが所望の地域の道路地図を表示装置33に表示させ,その道路地図上において位置または領域をユーザが指定するようにしてもよい。このようにすれば,目的地,目的地までの経路上の特定の地点を容易に指定することができる。
続いて,送信すべき通信情報を作成する通信情報作成処理が行われる(ステップ117 )。通信情報は,レーザ・レーダ41,ナビゲーション・システム42およびセンサ群43の各センサからそれぞれ出力される検出信号に基づいて作成される情報,MMI機器30から入力される情報,ならびに近車通信,遠車通信および通常通信により他の車載端末装置から得られた情報に基づいて作成される。
通信情報には,走行状態情報,相対位置関係情報,緊急/警告情報,意志情報,車群内伝達情報等がある。
走行状態情報は車載端末装置が搭載された車両(自車両)の走行に関する情報であり,センサ情報と制御情報とを含む。
センサ情報は,各センサから出力される信号に基づいて作成される。たとえば,センサ情報には,位置情報,車速情報,急ブレーキ情報,急ハンドル情報,事故情報,気象情報,路面状態情報等がある。
位置情報は自車両の位置を示すものであり,ナビゲーション・システム42によって検出された位置である。
車速情報は自車両の車速を示すものであり,車速センサの検出信号に基づいて作成される。
急ブレーキ情報は自車両に急ブレーキがかけられたことを示すものであり,ブレーキ・センサの検出信号に基づいてブレーキの踏み具合いが急激に増加したときに生成される。
急ハンドル情報は自車両のハンドルが急にきられたことを示すものであり,操舵角センサの検出信号に基づいてハンドルの操舵角が急激に変化したときに生成される。
事故情報は自車両に事故が発生したことを示すものであり,衝撃センサの検出信号に基づいて強い衝撃が検出されかつ加速度センサの検出信号に基づいて加速度の急激な変化が検出されたときに生成される。また事故情報は自車両にエア・バッグが装備されている場合,エア・バッグが作動したときに生成される。
気象情報は,晴,曇,雨,雪等の気象に関するものであり,雨滴センサ,日射センサ,温度センサ等の検出信号に基づいて作成される。
路面状態情報は,雪,アスファルト(またはコンクリート),砂利(または土もしくは砂)等の路面状態を表わすものであり,路面状態センサの検出信号に基づいて作成される。
事故情報,気象情報および路面状態情報の作成の詳細については,同一出願人による特許出願,特願平7-351250号に開示されている。
制御情報は,中央処理装置40からアクチュエータ群44に出力される操作量に関する情報である。たとえば,アクセルの操作量,ブレーキの操作量等である。
相対位置関係情報は,自車両と,自車両の周囲に存在する他の車両との位置関係を示す情報である。この相対位置関係情報はたとえば,レーザ・レーダ41によって生成された他車両までの距離,または自車両の位置と他の車載端末装置から通信により得られた他の車両の位置とに基づいて作成される。
車郡内伝達情報は,自車両の属する所定の広さの領域内,または自車両の属する分割領域もしくは自車両の属する分割領域を含む複数の分割領域内に存在する車両(自車両を含む)に関する情報,たとえば渋滞情報,事故情報等である。車郡内伝達情報にはその領域内における気象情報等を含めてもよい。これらの情報は,自車両において作成されたセンサ情報および緊急/警告情報,ならびに上述の領域内に存在する他の車両の車載端末装置から通信により取得したセンサ情報および緊急/警告情報に基づいて作成される。渋滞情報,事故情報および気象情報の作成の詳細については,同一出願人による特許出願,特願平7-351250号に開示されている。
緊急/警告情報は,車両の走行に危険となる,または交通事故の発生原因となるような先行車両等の自車両以外の車両に関する急ブレーキ,急ハンドル,事故等を示す情報である。緊急/警告情報は,先行車両等に搭載された車載端末装置から通信により得られたセンサ情報および自車両のレーザ・レーダ41によって検出された車両の周囲の状況に関する情報に基づいて作成される。急ブレーキ情報,急ハンドル情報等に,その先行車両等の位置を対応させておくと,危険な車両が存在する位置を特定することができる。
意志情報はユーザによって入力される情報である。たとえば,自車両の車線変更,右折,左折,合流等の他の車両への報知,他の車両から渋滞,気象,事故等の情報を取得するための要求等を含む。意志情報はたとえば,上述の車線変更等の項目リストを中央処理装置40に付随するメモリ(ROM,EEPROM等)に格納しておき,そのリストを表示装置33に表示させ所望の項目をユーザが選択することにより入力される。
ステップ116 において決定された1または複数の分割領域の領域番号,ステップ117 において作成された通信情報,自車両に搭載された車載端末装置の識別番号(これを送信車両の識別番号という)を含む送信電文(図14参照)が作成される(ステップ118 )。送信電文を送信する車両を送信車両という。
送信電文に含まれる送信車両の識別番号は,送信車両を識別するためのものである。送信車両の識別番号に代えてまたは加えて送信車両に搭載された車載端末装置の電話番号(これを送信車両の電話番号という)を用いてもよい。また送信電文に送信車両(送信車両に搭載された車載端末装置)の属する分割領域の領域番号を含めてもよい。送信車両の属する分割領域の領域番号は,送信車両の現在位置に基づいてナビゲーション・システム42の地図データ・ベース53を検索することによって得られる。また送信車両の電話回線/無線通信装置45と電話局10との間の交信を中継する中継局に割当てられた領域番号を,電話回線/無線通信装置45がその中継局から受信することによって送信車両の属する領域番号を得ることもできる。
送信電文を表す信号が中央処理装置40から無線通信装置46に与えられ,この送信電文を表す信号が無線通信装置46によって送信される(ステップ119 )。指向性の強いアンテナを搭載している車両においては,指定方向にアンテナを向けて送信電文を表わす信号を送信するとよい。
中央処理装置40は,送信電文を表す信号が無線通信装置46によって送信された後一定時間(たとえば200msec )経過するまで,他の車載端末装置から返信される返信電文の受信待ちとなる(ステップ120 でNO,ステップ124 でNO)。
他の車両に搭載された車載端末装置において,無線通信装置46が送信電文を表す信号を受信すると,その送信電文を表す信号が無線通信装置46から中央処理装置40に与えられる。この他車両において近車通信処理が始まる。
図12および13は近車返信処理(ステップ103 )の手順を示すフロー・チャートである。近車返信処理の説明において,説明の便宜のために,その近車返信処理を行う車両(上記の「他の車両」)を自車両ということにする。
中央処理装置40は無線通信装置46が送信電文を受信すると(ステップ131 でYES ),その送信電文に含まれる1または複数の分割領域番号を抽出する(ステップ132 )。
次にナビゲーション・システム42から自車両の現在位置を表す位置データが中央処理装置40に取込まれる(ステップ133 )。この自車両の現在位置に基づいて,地図データ・ベース53が検索され,自車両(自車両に搭載された車載端末装置)の属する分割領域の領域番号が得られる(ステップ134 )。自車両の属する分割領域の領域番号は,電話回線/無線通信装置45と電話局10との間の交信を中継する中継局に割当てられた領域番号を電話回線/無線通信装置45がその中継局から受信することによって取得してもよい。
自車両の属する分割領域の領域番号が,送信電文に含まれる1または複数の分割領域のいずれかの領域番号と一致するかどうかが判断される(ステップ135 )。
たとえば,送信車両C1から送信された送信電文には,領域番号A13,A14,A15,A23,A24およびA25が含まれている。これらの領域番号の分割領域に存在する車両は車両C5,C6およびC9である。したがって,車両C5,C6およびC9ではステップ135 でYES と判定され,その他の車両C2,C3,C4,C7およびC8ではステップ135 でNOと判定される。
またステップ135 における処理は,送信電文に含まれる分割領域番号の分割領域に自車両の現在位置が存在するかどうかを,地図データ・ベース53を参照して判断するようにしてもよい。
ステップ135 において,領域番号が一致すれば(ステップ135 でYES ),送信電文に含まれる通信情報および送信車両の識別番号が抽出される(ステップ136 )。送信電文に含まれる通信情報と,自車両において作成されたセンサ情報とに基づいて,制御処理および出力処理が行われる(ステップ137 )。
制御処理は,上記の情報に基づいてアクチュエータ群44に与えるべき操作量を決定して出力する処理である。
出力処理には,受信した通信情報等を表示装置33に表示させる処理,表示器36を発光させる処理,警報音またはメッセージ等の音声をスピーカ35から出力する処理が含まれる。
図18は表示装置33の表示画面の一例である。
図18(A) は自車両の位置から160m先に存在する車両に事故が発生したときの表示例である。自車両の現在位置に基づいて地図データ・ベース52を検索することにより道路地図,その道路地図上における自車両(クロスハッチングで示す)の位置が表示される。また事故車の位置および事故車と自車両との距離160mが表示される。これらの表示は自車両の現在位置,ならびに通信情報に含まれる事故情報および事故車の位置に基づいて行なわれる。また「160m先に事故車があります」というメッセージを音声によりスピーカ35から報知する。事故車があることを警報音により報知するようにしてもよい。
このような情報の報知があると,事故車に追突しないように車速を落す措置がユーザ(ドライバ)によって行われるであろう。この措置と同等の制御を中央処理装置40によって自動的に行なうようにしてもよい。またその事故車が存在することによって渋滞が既に生じている,または生じうる場合には,その渋滞を避けるように,ナビゲーション・システム42による目的地までの経路決定がユーザの指示によって行われるであろう。
図18(B) は自車両の右車線前方50m を走行している車両から,右車線への車線変更を表す意思情報を含む通信情報を受信したときの表示例である。道路地図,ならびにこの道路地図上において,自車両(クロスハッチングで示す)の位置,左に車線変更する車両(ハッチングで示す)の位置および左に車線変更を表す左斜め方向に向いた矢印が表示装置33に表示される。また「右車線50m 先の車両が自車線に車線変更します」というメッセージが音声により報知される。車線変更する車両があることを警報音により報知するようにしてもよい。
このような情報の報知があると,自車両が車線変更する車両に接触または追突しないように,自車両から車線変更する車両まで充分な車間距離をとる措置がユーザによって行われるであろう。この措置と同等の制御を中央処理装置40によって自動的に行わせるようにしてもよい。
図18(C) は自車両の走行する道路に合流する道路があり,この道路を走行する他車両が,自車両の走行する道路への合流する場合を示し,他車両から合流を表す意思情報を含む通信情報を自車両が受信したときの表示例である。自車両の走行する道路と合流する道路の地図,ならびにこの道路地図上において,自車両(クロスハッチングで示す)の位置,合流する他車両(ハッチングで示す)の位置および合流を表す矢印が表示装置33に表示される。また「左側から合流車が来ています」というメッセージが音声により報知される。合流する車両があることを警報音により報知するようにしてもよい。
このような情報の報知があると,車線変更する車両の場合と同様に,自車両が合流する車両に接触または追突しないように,自車両から合流する車両まで充分な車間距離をとる措置がユーザによって行われるであろう。この措置と同等の制御を中央処理装置40によって自動的に行なわせるようにしてもよい。
次に,送信車両に返信すべき通信情報が作成される(ステップ138 )。返信車両における通信情報作成処理は送信車両における処理と同様に行われる。送信電文の通信情報に,気象,渋滞,事故等の情報要求を表す意志情報が含まれているときには,その要求された情報が通信情報として作成される。
送信電文に含まれる送信車両の識別番号,ステップ138 において作成された通信情報および自車両に搭載された車載端末装置の識別番号(これを返信車両の識別番号という)を含む返信電文(図14参照)が作成される(ステップ139 )。返信電文を送信する車両を返信車両という。
返信電文に含まれる返信車両の識別番号は,返信車両を識別するためのものである。返信車両の識別番号に代えてまたは加えて返信車両の電話番号を用いてもよい。返信車両の識別番号は必ずしもなくてもよい。また返信電文に,返信車両の属する分割領域の領域番号を含めてもよい。
返信電文を表す信号が中央処理装置40から無線通信装置46に与えられ,この返信電文を表す信号が無線通信装置46によって送信される(ステップ140 )。指向性の強いアンテナを搭載している車両においては,指定方向にアンテナを向けて送信電文を表わす信号を送信するとよい。
その後,ステップ131 に戻り,他の車両からの送信電文の受信待ちとなる(ステップ131 でNO)。
また,ステップ135 において,返信車両の属する分割領域の領域番号が送信電文に含まれる領域番号のいずれにも一致しないと判定されたときにも(ステップ135 でNO),ステップ131 に戻り,送信電文の受信待ちとなる。
返信電文を表わす信号は返信電文の受信待ちの車両の無線通信装置46に受信される。この車両において,返信電文を表す信号を無線通信装置46が受信すると,返信電文を表す信号は無線通信装置46から中央処理装置40に与えられる。
再び図10および11を参照する。この処理を実行する車載端末装置を搭載した車両を自車両ということにする。中央処理装置40は無線通信装置46から返信電文を表す信号が与えられると(ステップ120 でYES ),この返信電文に含まれる送信車両の識別番号を抽出する(ステップ121 )。
返信電文に含まれる送信車両の識別番号が自車両の識別番号に一致するかどうかが判断される(ステップ122 )。識別番号が一致したときには(ステップ120 ),その返信電文は,自車両から送信した送信電文に対する返信電文である。
その返信電文から通信情報および返信車両の識別番号が抽出され,中央処理装置40に付随するメモリ(RAM等)に一時的に記憶される(ステップ123 )。複数台の車両から返信電文が送信される場合があるので,中央処理装置40は他の返信車両からの返信電文を一定時間待つ。
ステップ119 において,送信電文を送信した後一定時間経過すると(ステップ124 でYES ),中央処理装置40に付随するメモリに記憶されている,1台または複数台の返信車両から受信した通信情報と,自車両において作成されたセンサ情報および緊急/警告情報とに基づいて,制御処理および出力処理が行われる(ステップ125 )。これらの制御処理および出力処理は返信車両における場合と同様に行われる。
その後,指定領域が変更されたかどうかが判断される(ステップ126 )。ユーザが新たな指定領域を入力した場合には指定領域が変更されたと判定される(ステップ126 でYES )。この場合には,ステップ111 に戻り,この新たな指定領域について通信領域が決定され,上述した送信電文が送信される。
ステップ126 において,指定領域が変更されていなければ(ステップ126 でNO),ステップ127 に進み,近車通信処理を終了するかどうかが判断される(ステップ127 )。近ボタン31b または近/遠ボタン31d が押されたままであれば(ステップ127 でNO),近車通信処理を終了しない。この場合には,ステップ115 に戻り,最新の自車位置が取込まれ,この最新の自車位置に基づいて,先に入力された指定領域について通信領域が決定される。そして上述した送信電文が送信される。
ステップ127 において,OFFボタン31a ,ON(終了)ボタン31b ,遠ボタン31d または通ボタン31f のいずれかがユーザによって押されていれば(ステップ127 でYES ),中央処理装置40は近車通信処理を終了する。
車両が走行しているときには,通信領域内に存在する車両が頻繁に変わることが多いので,通信領域を構成する1または複数の分割領域の領域番号を含む送信電文を送信車両から繰返し送信している。
送信車両が同一の返信車両と連続して通信を行うようにしてもよい。所望の返信車両との間で近車通信を連続して行う場合には,たとえば次のようにして行なう。近車通信により受信した返信車両の識別番号を表示装置33に表示させる。この表示された返信車両の識別番号の中から所望の識別番号をユーザが選択または入力する。選択または入力された返信車両の識別番号,通信情報および送信車両の識別番号を含む送信電文を作成し,作成した送信電文を送信車両から送信する。返信車両において,送信車両から送信された送信電文を受信すると,受信した送信電文に含まれる返信車両の識別番号と自車両の識別番号とが一致するかどうかを判定する。識別番号が一致するときに,その送信電文に対して返信電文を送信車両に送信する。
また返信電文に返信車両の電話番号を含めておくと,通常通信モードに移って,その電話番号をもつ車載端末装置との間で通常通信を行うこともできる。
遠車通信モードにおける遠車通信処理(ステップ104 )および遠車返信処理(ステップ105 )について説明する。
図19,20,21および22は自車両に搭載された車載端末装置の中央処理装置40における遠車通信処理(ステップ104 )の手順を示すフロー・チャートである。図19〜22において,図8〜11に示す処理と同一処理には同一符号を付し,詳細な説明を省略する。
遠ボタン31c または近/遠ボタン31e が押され,遠車通信モードが選択される。指定領域を示す指定種類,指定方向および指定距離がユーザによって入力されると,これらの入力データによって規定される領域に一部または全部が属する分割領域の領域番号が中央処理装置40によって決定され(図19,20:ステップ111 〜116 ),分割領域番号および送信車両の電話番号を含む送信電文(図26参照)が作成される(ステップ141 )。送信電文に含まれる送信車両の電話番号は電話局10が送信車両を特定するためのものであり,送信電文に送信車両の電話番号に代えてまたは加えて送信車両の識別番号を含めてもよい。
この作成された送信電文を表す信号は中央処理装置40から電話回線/無線通信装置45に与えられ,送信電文を表す信号が電話回線/無線通信装置45から中継局を介して電話局10に送信される(ステップ142 )。その後,電話局10から送信される電話番号の受信待ちとなる(ステップ143 )。
図24および25は電話局(電話交換機)10における電話回線の接続処理を示すフロー・チャートである。この処理は遠車通信および通常通信の両方に通用される。
送信電文が中継局を介して送信車両の電話回線/無線通信装置45から電話局10に与えられると,電話局10はその送信電文が遠車通信のものか,または通常通信のものかを判断する(ステップ171 )。遠車通信の送信電文には通信領域に含まれる分割領域番号および送信車両の電話番号が含まれる。通常通信の送信電文には,後述するように,通信対象の電話番号および送信車両の電話番号が含まれている。
送信電文に分割領域番号があれば遠車通信であると判定される(ステップ171 で遠車通信)。車載端末データ・ベースを参照して,この送信電文に含まれる分割領域番号に対応して登録されているすべての電話番号が検索される(ステップ172 )。たとえば,分割領域番号A13,A14,A15,A23,A24およびA25が送信電文に含まれているときには,電話番号0005,0006および0009が検索により得られる。
車載端末データ・ベースを検索することにより電話番号が得られると(ステップ173 でYES ),その得られた電話番号を表わす信号が送信車両の電話回線/無線通信装置45に返信される(ステップ174 )。電話局10が既に電話回線を接続した車載端末装置の電話番号については送信車両に送信しないようにしてもよい。その後,電話局10は送信車両の電話回線/無線通信装置45から送信される電話番号の受信待ちとなる(ステップ175 )。
図21を参照して,送信車両の電話回線/無線通信装置45が電話局10から与えられる分割領域番号に対応する電話番号を受信すると(ステップ143 でYES ),その電話番号が電話回線/無線通信装置45から中央処理装置40に与えられ,受信した電話番号のリストが表示装置33に中央処理装置40によって表示される(ステップ144 )。電話番号を表示装置33に表示出力とともにスピーカ35から音声出力してもよい。
表示装置33に表示された電話番号リストの中から,所望の電話番号をユーザがMMI機器30の数値キー32を用いて選択する。たとえば,表示装置33の表示画面上に設けられたタッチパネルを用いて選択する。ユーザが数値キー32を用いて所望の電話番号を入力してもよい。1つの電話番号がユーザによって選択されると(ステップ145 でYES ),その電話番号を表す信号が中央処理装置40から電話回線/無線通信装置45に与えられ,さらに電話回線/無線通信装置45によって電話番号を表す信号が中継局を介して電話局10に送信される(ステップ146 )。
図25を参照して,中継局を介して送信車両の電話回線/無線通信装置45から送信された電話番号を表す信号を受信すると(ステップ175 でYES ),電話局10は受信した電話番号をもつ車載端末装置(この車載端末装置が搭載されている車両を返信車両という)の電話回線/無線通信装置45を,その電話番号が登録されていた分割領域番号をもつ中継局を介してコールする。返信車両の電話回線/無線通信装置45がそのコールに応答してオン・フックにすることにより,返信車両の電話回線/無線通信装置45と送信車両の電話回線/無線通信装置45との間で電話回線が接続される(ステップ176 )。
ステップ172 において検索された電話番号が1つの場合には,検索された電話回線を送信車両に返信することに代えて,電話局10はその電話番号をもつ車載端末装置と電話回線を接続するようにしてもよい。また複数の電話番号が検索された場合にも,電話局10がすべての電話番号をもつ返信車両との間で電話回線を,1台ずつ順次または一斉に接続するようにしてもよい。
図21を参照して,送信車両の中央処理装置40において,返信車両と電話回線が接続されると(ステップ147 でYES ),通信情報が作成され(ステップ148 ),さらに通信情報および送信車両の電話番号を含む通信電文(図26参照)が作成される(ステップ149 )。通信電文に含まれる送信車両の電話番号は返信車両が送信車両を識別するためのものであり,電話番号に代えてまたは加えて,送信車両の識別番号を用いてもよい。また送信電文に,送信車両の属する分割領域番号を加えてもよい。
通信電文を表す信号は,中央処理装置40から電話回線/無線通信装置45に与えられ,さらに電話回線/無線通信装置46によって電話回線を介して返信車両の電話回線/通信装置45に送信される(ステップ150 )。
返信車両において,送信車両の電話回線/無線通信装置45から送信された通信電文を表す信号が返信車両の電話回線/無線通信装置45に受信されると,その通信電文を表す信号は電話回線/無線通信装置45から中央処理装置40に与えられる。
図23は遠車通信モードにおける遠車返信処理(ステップ105 )の手順を示すフロー・チャートである。
ステップ161 において,返信車両の中央処理装置40は,電話回線/無線通信装置45から通信電文を表す信号が与えられると(ステップ161 でYES ),その通信電文を取込む(ステップ162 )。その通信電文に含まれる通信情報と返信車両において作成されたセンサ情報および緊急/警告情報とに基づいて制御処理および出力処理が行われる(ステップ163 )。さらに通信情報作成処理が行なわれる(ステップ164 )。制御処理および出力処理,ならびに通信情報作成処理は近車返信処理における処理と同様に行われる。
通信情報を含む返信電文(図26参照)が作成される(ステップ165 )。返信電文に返信車両の電話番号または返信車両の識別番号を含めてもよい。また返信電文に,返信車両の位置(返信位置)または返信車両の属する分割領域の領域番号を含めてもよい。
この返信電文を表す信号は,中央処理装置40から電話回線/無線通信装置45に与えられ,さらに電話回線/無線通信装置45から電話回線を通して送信車両の電話回線/無線通信装置45に返信される(ステップ166 )。その後,ステップ161 に戻り,返信車両の中央処理装置40は,送信車両からの通信電文の受信待ちになる。通信情報は送信車両から返信要求があったときにのみ作成し,その通信情報を含む返信電文を送信するようにしてもよい。
送信車両の電話回線/無線通信装置45は,電話回線を通して返信車両の電話回線/無線通信装置45から返信された返信電文を表す信号を受信すると,この返信電文を表す信号を中央処理装置40に与える。
図20のステップ151 において,送信車両の中央処理装置40は,電話回線/無線通信装置40から返信電文を表す信号が与えられると(ステップ151 でYES ),その返信電文を取込む(ステップ152 )。その返信電文に含まれる通信情報および送信車両において作成されたセンサ情報について制御処理および出力処理が行われる(ステップ153 )。
続いて,遠車通信処理を終了するかどうかが判断される(ステップ154 )。遠ボタン31d または近/遠ボタン31e が押されたままであれば(ステップ154 でNO),ステップ148 に戻り,再び通信情報が作成され,この通信情報を含む通信電文が送信される。2回目以降の通信電文には,送信車両の電話番号は必ずしもなくてもよい。
遠車通信は,上述のように,気象情報等の所望の情報を取得する場合に利用されるので,一台の返信車両と通信すれば足りる。遠車通信においても近車通信の場合と同様に,中央処理装置40が返信車両から返信電文を受信すると,送信車両と返信車両との間の電話回線を電話回線/無線通信装置45に切断させ,送信電文を電話局10に送信してもよい。
遠ボタン31d または近/遠ボタン31e 以外の切替ボタン31が押されていれば(ステップ154 でYES ),遠車通信処理を終了するので,中央処理装置40が電話回線/無線通信装置45にオフ・フックにさせることにより電話回線を切断させる(ステップ155 )。
図25のステップ177 において,送信車両の電話回線/無線通信装置45によって電話回線が切断されると(ステップ177 でYES ),送信車両の所有者(ユーザ)に対して電話回線の接続時間および距離に応じて通話料金が課金される(ステップ178 )。情報料等の報酬を発信車両から返信車両に返信される通信情報に応じて提供するようにしてもよい。
図24のステップ173 において,車載端末データ・ベースを検索した結果,送信電文に含まれるすべての分割領域番号に対応する電話番号がない場合および分割領域番号に対応するすべての電話番号について電話回線が既に使用されている場合には通信対象がないので(ステップ173 でNO),その旨を表す信号が電話局10から送信車両の電話回線/無線通信装置45に送信される(ステップ181 )。その後,電話局10は電話回線の接続処理を終了する。
図21のステップ143 において,送信車両の電話回線/無線通信装置45が電話局10から送信される通信対象のない旨を表す信号を受信すると,その通信対象がない旨を表わす信号が電話回線/無線通信装置45から中央処理装置40に与えられる。中央処理装置40は通信対象のない旨を表わす信号が電話回線/無線通信装置45から与えられると(ステップ143 で通信対象無),ステップ156 に進み,その通信対象のない旨を出力する(ステップ156 )。たとえば通信対象のない旨が表示装置33に出力される,またはスピーカ35から音声出力される。
通信対象がない場合には,ユーザは指定領域を変更するか,または遠車通信モードを終了する。新たな指定領域がユーザによって入力された場合には,指定領域が変更されたと判定され(ステップ157 でYES ),図19のステップ111 に戻り,新たな指定領域について通信領域が決定される。
指定領域が変更されていないときには(ステップ157 でNO),遠車通信処理を終了するかどうかが判断される(ステップ158 )。遠ボタン31d または近/遠ボタン31e が押されたままであれば(ステップ158 でNO),遠車通信処理を終了せず,ステップ117 に戻り,同じ指定領域について最新の自車位置に基づいて通信領域が決定されることになる。遠ボタン31d または近/遠ボタン31e 以外の切替ボタン31が押されていれば(ステップ154 でYES ),中央処理装置40は遠車通信処理を終了する。
最後に,通常通信モードにおける通常通信処理(ステップ106 )および通常返信処理(ステップ107 )について,図24および25,ならびに図27,28,29および30を参照して説明する。
図27および28は通常通信処理(ステップ106 )の手順を示すフロー・チャートである。
通ボタン31f がユーザによって押され,通常通信モードが選択される。さらにMMI機器30のキー群32を用いて通信を行う所望べき通信対象の電話番号が入力される。電話番号は次のように入力することができる。あらかじめ登録された複数の電話番号のリストをユーザがMMI機器30を用いて表示装置33に表示させ,その表示された電話番号リストの中から所望の電話番号を選択することにより入力する。入力された電話番号が中央処理装置40に取込まれる(ステップ191 )。取込まれた通信対象の電話番号を含む送信電文(図30参照)が作成される(ステップ192 )。送信電文に含まれる送信車両の電話番号は電話局10が送信車両を識別するためのものであり,電話番号に代えてまたは加えて識別番号を用いてもよい。
送信電文を表す信号は,中央処理装置40から電話回線/無線通信装置45に与えられ,さらに電話回線/無線通信装置45によって中継局を介して電話局10に送信される(ステップ193 )。中央処理装置40は電話回線の接続待ちとなる(ステップ194 )。この送信電文を送信した車両を送信車両という。
図24を参照して,送信車両から送信された送信電文が電話局10に与えられると,送信電文に通信対象の電話番号が含まれているので,ステップ171 で通常通信と判定され,この送信電文に含まれる通信対象の電話番号が車載端末データ・ベースに登録されているかどうかが検索される(ステップ179 )。
電話番号が検索により得られれば(ステップ180 でYES ),その電話番号をもつ車載端末装置(この車載端末装置の搭載された車両を返信車両という)の電話回線/無線通信装置45と送信車両の電話回線/無線通信装置45との間で電話回線が接続される(ステップ176 )。電話回線が切断されると(ステップ177 でYES ),通話料金が課金される(ステップ178 )。ステップ176 〜178 における電話回線の接続から通話料金の課金までの処理は,既存の移動体通信システムにおける処理と同様に行うことができる。
ステップ180 において,検索により電話番号が得られない場合およびその電話番号について電話回線が既に接続されている場合には通信対象がないので(ステップ180 でNO),その旨が中央局10から送信車両の電話回線/無線通信装置45に返信される(ステップ181 )。その後,電話局10は電話回線の接続処理を終了する。
図27のステップ194 において,電話回線が接続されると(ステップ194 でYES ),中央処理装置40は,通信情報を作成し(ステップ195 ),さらにその通信情報および送信車両の電話番号を含む通信電文(図30参照)を作成する(ステップ196 )。通信電文に含まれる送信車両の電話番号は返信車両が送信車両を識別するためのものであり,電話番号に代えてまたは加えて識別番号を用いてもよい。通信電文に,送信車両の属する分割領域の領域番号を加えてもよい。
通信電文を表す信号は,中央処理装置40から電話回線/無線通信装置45に与えられ,さらに電話回線/無線通信装置45によって電話回線を通して返信車両の電話回線/無線通信装置45に送信される(ステップ197 )。
送信車両から送信された通信電文を表す信号が,返信車両の電話回線/無線通信装置45に受信されると,その通信電文を表す信号は電話回線/無線通信装置45から中央処理装置40に与えられる。
図29は通常通信モードにおける通常返信処理(ステップ107 )を示すフロー・チャートである。
返信車両の中央処理装置40は,電話回線/無線通信装置45から通信電文を表す信号が与えられると(ステップ211 ),その通信電文を取込み(ステップ212 ),その通信電文に含まれる通信情報と返信車両において作成されたセンサ情報および緊急/警告情報とに基づいて制御処理および出力処理が行われる(ステップ213 )。
その後,通信情報作成処理が行なわれ(ステップ214 ),この通信情報を含む返信電文が作成される(ステップ215 )。返信電文に,返信車両の属する分割領域の領域番号,または返信車両の電話番号もしくは識別番号を加えてもよい。
返信電文を表す信号は,中央処理装置40から電話回線/無線通信装置45に与えられ,電話回線/無線通信装置45によって電話回線を通して送信車両の電話回線/無線通信装置45に送信される(ステップ216 )。その後,ステップ211 に戻り,返信車両の中央処理装置40は,送信車両からの通信電文の受信待ちになる。
図28を参照して,送信車両において,返信車両から返信された返信電文を表す信号を電話回線/無線通信装置45が受信すると(ステップ198 ),その返信電文が中央処理装置40に取込まれ(ステップ199 ),その返信電文に含まれる通信情報と送信車両において作成されたセンサ情報とに基づいて制御処理および出力処理が中央処理装置40によって行われる(ステップ200 )。
通ボタン31f が押されたままであれば(ステップ201 でNO),ステップ195 に戻り,ステップ195 〜200 の処理が繰返し行われる。通ボタン31f 以外の切替ボタン31が押されていれば,電話回線/無線通信装置45がオフ・フックにすることにより,電話回線が切断される(ステップ202 )。
図27を参照して,ステップ194 において,送信車両が通信対象のない旨の電文を受信すると(ステップ194 でNO),その旨が表示される(ステップ203 )。ユーザによって電話番号が再び入力されることにより,電話番号が変更されると(ステップ204 でYES ),ステップ191 に戻り,その電話番号を含む送信電文が送信される。通ボタン31f 以外の切替ボタン31が押されていれば(ステップ205 でYES ),中央処理装置40は通常通信処理を終了する。
遠車通信モードにおける通信を次のようにして行なうこともできる。中継局を相互に有線により接続しておく(無線による交信でもよい)。各中継局が管理している分割領域が存在する車載端末装置の電話番号をその中継局に登録しておく(各中継局に電話局10の車載端末データ・ベースと同じものを設けてもよい)。送信車両の車載端末装置から送信される送信電文を,その車載端末装置の存在する分割領域を管理する中継局(これを第1中継局という)が受信すると,第1中継局がその送信電文に含まれる分割領域番号が割当てられた中継局(これを第2中継局という)と交信を行うことによって,送信車両の車載端末装置と第2中継局との間で交信が可能となる。そして,第2中継局に登録された電話番号をもつ車載端末装置と,送信車両の車載端末装置との間で第1および第2中継局を介して通信が可能となる。第2中継局に登録された電話番号が複数ある場合には,それらの電話番号を送信車両に返信して所望の電話番号を送信車両のユーザに選択させ,選択された電話番号をもつ車載端末装置と送信車両の車載端末装置との間で電話回線を接続する。
音声による通信(会話)は,たとえば次のようにして行われる。音声の送受信は基本的には上述したデータに関する通信と同じであるので音声通信に特有の事柄についてのみ説明する。
近車通信モードにおいては,ユーザが送受話器37を取って近ボタン31c を押しかつ指定領域を入力する。入力された指定領域についての送信電文が送信車両の車載端末装置から送信される。その後返信車両の車載端末装置から送信される返信電文を受信すると,送信車両の車載端末装置はその送信電文に含まれる返信車両の識別番号を出力(表示または音声による出力)させる。その出力された識別番号の中から所望の識別番号をユーザが選択または入力する。この選択または入力された識別番号が送信車両の車載端末装置から送信される。送信された識別番号をその識別番号をもつ返信車両の車載端末装置が受信すると,その車載端末装置は送信車両から近車通信による通信要求があったことを表わすコール音をスピーカ35から発する。このコール音によって,その返信車両のユーザ(ドライバ等)は,近車通信による通信要求があったことを知り,送受話器37を取って会話する。
遠車通信モードにおいては,ユーザが車載端末装置の送受話器37を取って遠ボタン31d を押しさらに指定領域を入力する。入力された指定領域についての送信電文が車載端末装置から中継局を介して電話局10に送信される。その後電話局から送信された電話番号が車載端末装置から出力(表示または音声による出力)されると,その出力された電話番号の中から所望の電話番号をユーザが選択または入力する。選択または入力された電話番号が車載端末装置から中継局を介して電話局10に送信され,電話局10によってその電話番号をもつ車載端末装置がコールされる。電話局10によってコールされた車載端末装置のスピーカ35からコール音が発する。このコール音によって,そのコールされた車載端末装置が搭載された車両のユーザ(ドライバ等)は,電話がかかってきたことを知り,ユーザは送受話器37を取って会話する。電話局10における車載端末データ・ベースに,車載端末装置の電話番号に加えて,既存の携帯電話,PHS等の電話機の電話番号を登録しておくことによって,送信車両のユーザはそれらの既存の電話機の所持者,利用者等と会話を行うことができる。
通常通信モードにおいては,ユーザが送受話器37をユーザが取って通ボタン31f を押しさらに所望の電話番号を入力する。入力された電話番号が,車載端末装置から中継局を介して電話局10に送信され,電話局10によってその電話番号をもつ車載端末装置がコールされる。電話局10によってコールされた車載端末装置のスピーカ35からコール音が発する。このコール音によって,そのコールされた車載端末装置が搭載された車両のユーザ(ドライバ等)は,電話がかかってきたことを知り,ユーザは送受話器37を取って会話する。通信相手(会話する相手)は,車載端末装置が搭載された車両のユーザに限られず,家,事務所等に設置された電話機,携帯電話,PHS等の電話機の所持者,利用者等が含まれる。
第2実施例
第2実施例は,近車通信モードおよび遠車通信モードにおいて,送信電文に,通信領域を形成する1または複数の分割領域の領域番号に代えて,通信領域を規定するための送信位置,方位および指定距離を含ませ,この送信電文を送信車両から送信する。
近車通信モードにおいては,送信車両から送信された送信電文を他の車両の無線通信装置46が受信すると(一般には中継局を介することなく),その送信電文に含まれる送信位置,方位および指定距離に基づいて上記他の車両の中央処理装置40は通信領域を決定し,この通信領域内に上記他の車両が存在するかどうかを判断する。
遠車通信モードにおいては,電話局10が送信車両から送信された送信電文を受信すると,その送信電文に含まれる送信位置,方位および指定距離に基づいて通信領域を構成する1または複数の分割領域の領域番号を電話局10が決定する。通信領域を構成する1または複数の分割領域の領域番号を決定するために,電話局10には,ナビゲーション・システム42の地図データ・ベース53と同じ地図データ・ベースが設けられている。決定された分割領域番号について電話番号の検索が車載端末データ・ベースを参照して電話局10によって行われる。
第2実施例における近車通信モードの近車通信処理および近車通信処理について説明する。
図31,32,33および34は第2実施例における近車通信処理の手順を示すフロー・チャートである。図31〜34において,図8〜11に示す処理と同一の処理には同一符号を付し重複説明を避ける。
近ボタン31c または近/遠ボタン31e がユーザによって押され,近車通信モードが選択される。さらに指定領域を示す指示種類,指定方向および指定距離がユーザによって入力されると,指示種類が相対指示のとき,指定方向によって定まる方位が中央処理装置40によって決定される(ステップ111 〜114 )。指示種類が絶対指示のとき,指定方向は方位である。自車両の現在位置(これを送信位置という)がナビゲーション・システム42から中央処理装置40に取込まれる(ステップ115 )。さらに通信情報が作成される(ステップ117 )。
取込まれた送信位置,入力または決定された方位,入力された指定距離,作成された通信情報および送信車両の識別番号を含む送信電文(図37参照)が作成される(ステップ118A)。送信電文に,送信位置に代えてまたは加えて送信車両の属する分割領域の領域番号を用いてもよい。また送信車両の識別番号に代えてまたは加えて送信車両の電話番号を用いてもよい。
送信電文を表す信号が無線通信装置46によって送信される(ステップ119 )。ステップ122 〜130 における処理は第1実施例における処理と同様である。
他の車両に搭載された車載端末装置において,無線通信装置46が送信車両の無線通信装置46から送信された送信電文を受信すると,その送信電文を表す信号が無線通信装置46から中央処理装置40に与えられる。上記他の車両において近車返信処理が始まる。
図35および36は第2実施例における近車返信処理の手順を示すフロー・チャートである。図35および36において,図12および13における処理と同一の処理には同一符号を付し重複説明を避ける。
近車返信処理の説明において,説明の便宜のために,この近車返信処理を行う車両(上述の他の車両)を自車両という。
送信車両から送信された送信電文が無線通信装置46から与えられると(ステップ131 でYES ),中央処理装置40はこの送信電文から送信位置,方位および指定距離を抽出する(ステップ221 )。これらの送信位置,方位および指定距離に基づいて規定される領域に一部または全部が属する分割領域の領域番号が,地図データ・ベース53を参照して決定される(ステップ222 )。
自車両の現在位置が取込まれ(ステップ133 ),この自車位置に基づいて自車両の属する分割領域の領域番号が決定される(ステップ134 )。通信領域を構成する1または複数の分割領域のいずれかの領域番号と自車両の属する分割領域の領域番号とが一致するかどうか判断される(ステップ135A)。
領域番号が一致しなければ(ステップ135AでNO),ステップ131 に戻り,送信電文の受信待ちになる。領域番号が一致すれば(ステップ135AでYES ),ステップ136 に進む。ステップ136 〜140 における処理は第1実施例における処理と同様である。
このようにして,送信電文を受信した車両において通信領域を構成する分割領域の領域番号が決定され,返信電文を送信するかどうかが判断される。
送信電文を受信した車両において,返信電文を送信するかどうかの判断は次のようにして行うこともできる。すなわち,送信電文に含まれる送信位置,方位および指定領域に基づいて決定される領域内またはこの領域に一部または全部が属する1または複数の分割領域(通信領域)内に,自車位置が存在するかどうかによって判断する。
第2実施例における遠車通信モードの遠車通信処理および遠車返信処理について説明する。
図38,39,40および41は第2実施例における遠車通信処理の手順を示すフロー・チャートである。図38〜41において,図19〜22に示す処理と同一処理には同一符号を付し,重複説明を避ける。
遠ボタン31c または近/遠ボタン31e がユーザによって押され,遠車通信モードが選択される。指定領域を示す指示種類,指定方向および指定距離がユーザによって入力されると,指示種類が相対指示のときには指定方向の方位が中央処理装置40によって決定される(ステップ111 〜114 )。指示種類が絶対指示のときには指定方向は方位である。自車両の現在位置(これを送信位置という)がナビゲーション・システム42から中央処理装置40に取込まれる(ステップ115 )。
取込まれた送信位置,入力または決定された方位,入力された指定距離および送信車両の電話番号を含む送信電文(図44参照)が作成される(ステップ141A)。送信電文に,送信車両の属する分割領域の領域番号を加えてもよい。また送信車両の電話番号に代えてまたは加えて送信車両の識別番号を用いてもよい。
送信電文を表す信号は,中央処理装置40から電話回線/無線通信装置45に与えられ,電話回線/無線通信装置45によって中継局を介して電話局10に送信される(ステップ142 )。中央処理装置40は電話局10からの電話番号の受信待ちとなる。ステップ143 〜158 における処理は第1実施例における処理と同様である。
図42および43は第2実施例における電話局10の電話回線の接続処理の手順を示している。この処理は第1実施例と同様に遠車通信と通常通信の両方に適用される。図42および43において,図24および25に示す処理と同一処理には同一符号を付し,重複説明を避ける。
送信電文を表す信号が中継局を介して送信車両の電話番号/無線通信装置45から電話局10に与えられると,電話局10はその送信電文が遠車通信のものか,通常通信ものかを判断する(ステップ171 )。送信電文が遠車通信ものであると判定されると(ステップ171 で遠車通信),受信した送信電文に含まれる送信位置,方位および指定距離が抽出される(ステップ231 )。これらの送信位置,方位および指定距離に基づいて決定される領域に一部または全部が含まれる1または複数の分割領域の領域番号が,電話局10に設けられた地図データ・ベースを参照して決定される(ステップ232 )。
このように決定された1または複数の分割領域番号について,車載端末データ・ベースに登録された電話番号が検索される(ステップ172 )。ステップ173 〜181 における処理は第1実施例における処理と同様に行われる。
近車通信モードにおいて,指定領域として,特定の位置または領域が入力されたときには,送信位置,方位および指定距離に代えて,その特定の位置または領域を含む送信電文が送信車両から送信される。他の車両が送信車両から送信された送信電文を受信すると,その送信電文に含まれる特定の位置または領域に一部または全部が属する分割領域の領域番号が上記他の車両の中央処理装置40によって決定される。
遠車通信モードにおいても同様に,指定領域として,特定の位置または領域が入力されたときには,送信位置,方位および指定距離に代えて,その特定の位置または領域を含む送信電文が送信車両から中継局を介して電話局10に送信される。電話局10が送信車両から送信された送信電文を受信すると,その送信電文に含まれる特定の位置または領域に一部または全部が属する分割領域(通信領域)の領域番号が電話局10によって決定される。
第2実施例において,音声による通信(会話)は第1実施例の場合と同様に行うことができる。