JP3867683B2 - 溶鋼精錬装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば取鍋内溶鋼の成分・温度・介在物等のうちの少なくとも1つの調整を行う溶鋼精錬装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
取鍋精錬には、▲1▼合金鉄添加、▲2▼浸漬ランス又は鍋底ポーラスプラグからの不活性ガス吹込みによる攪拌・脱硫・温度調整、▲3▼カルシウム合金粉のインジェクション又はカルシウム合金粉内包金属ワイヤーの溶鋼への供給によるカルシウム成分の調整或いは介在物形態制御、及び、▲4▼酸素吹き付けによる温度調整、の4つの機能がある。
【0003】
そして、上記4つの機能のうちの▲1▼では、特に溶融スラグより比重の小さい合金鉄を投入した時、或いは、スラグによって酸化されやすいアルミニウムやチタン等の合金鉄を添加した時には、これらの合金鉄がスラグ上に浮いたままになって溶鋼に供給されなくなることを防止したり、スラグ中の酸素分との反応を防止するために、前記合金鉄の投入、添加時に溶鋼に対して浸漬可能な精錬器(シュノーケル)を使用することが有効である。
【0004】
すなわち、浸漬ランス又は底吹きポーラスプラグから溶鋼中に吹込んだ不活性ガスの気泡により溶鋼の一部表面を盛り上げて溶鋼表面の低い位置にスラグを移動させた後、前記盛り上げて表面にスラグが存在しなくなった溶鋼中にシュノーケルを浸漬させると、シュノーケル内部にスラグがほとんど存在しない状態になるため、スラグに接触させることなく合金鉄を溶鋼内に供給できるようになるからである。
【0005】
一方、上記機能のうちの▲2▼と▲3▼では、シュノーケルは不要である。勿論、▲1▼〜▲4▼の全てにおいて、目的に応じて合金鉄の添加装置や不活性ガス吹き込み装置、カルシウム添加装置及び酸素吹き付け装置が必要であることは言うまでも無いし、発煙・粉塵飛散防止のための集塵フードが必要であることも言うまでも無い。
【0006】
しかしながら、従来は、上記▲1▼〜▲4▼の全ての操作を、同じ処理位置で行っていたため、例えば合金鉄を添加する必要がないときも、シュノーケルをフリーボード部に待機させた状態で、▲2▼の攪拌・脱硫・温度調整や、▲3▼のカルシウム添加を行わなければならず、スラグやメタルの跳ね上がりによる付着や溶損と言った問題が発生していた。
【0007】
シュノーケルヘ溶鋼やスラグが付着すると、シュノーケルの内側の面積が小さくなり、酸素吹き付けランスや溶鋼攪拌用の不活性ガス吹き込み用浸漬ランスが使用できなくなったり、合金鉄が添加できなくなるため、シュノーケルを一旦下ろして作業場に運搬し、新品または補修済みのシュノーケルに取り替えなければならず、30分程度操業を止める必要がある。また、補修に必要な作業コストも発生する。
【0008】
また、低窒素鋼の溶製時には、空気の侵入や吹き付け酸素流れによる空気の巻き込みにより、溶鋼中の窒素含有量が上昇するという問題もある。
【0009】
このような観点から、溶融金属の二次精錬を安定的に、かつ、迅速適確に行える取鍋精錬設備が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0010】
【特許文献1】
特開平7−278642号公報(第2頁、図1)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に記載された取鍋精錬設備も、シュノーケルが不要な▲2▼と▲3▼の作業を行なう際にもシュノーケルが常にフード内に存在するため、飛散溶鋼がシュノーケルに付着することは避けられず、除去作業による生産阻害が問題になる場合があることは、先に説明した従来設備と同様である。
【0012】
なお、飛散溶鋼がシュノーケルに付着することを避ける為には、シュノーケルが不要な▲2▼と▲3▼の作業時にはこれを取り外しておけば良いが、取り付け、取り外しの作業により生産性が阻害される。
【0013】
本発明は、上記した従来の問題点、すなわち前述の▲2▼と▲3▼の作業の際に、シュノーケルヘのスラグ及び飛散溶鋼の付着を抑制し、生産性を向上させることが可能な溶鋼精錬装置を提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、本発明に係る溶鋼精錬装置は、溶鋼の供給位置と操業位置の間を、溶鋼が注入された容器を積載して移動が可能な容器台車と、集塵フードと、集塵フード及びシュノーケルを夫々別の位置に昇降可能に吊り下げた操業台車であって、該操業台車は、集塵フードのみの吊り下げ位置と集塵フード及びシュノーケルの吊り下げ位置を前記操業位置に一致させるべく、前記容器台車の上方で移動が可能なようになされ、さらに前記操業台車の集塵フードのみ及び集塵フードとシュノーケルの吊り下げ位置には、夫々合金鉄の投入口を設け、また、前記操業位置における操業台車の上方には、(1)合金鉄の投入設備と、(2)前記溶鋼の攪拌用ガス及びカルシウム合金粉の吹込み用浸漬ランス及びこの浸漬ランスの昇降装置と、(3)酸素吹付け用ランスと、(4)測温・サンプリング・溶存酸素量測定の少なくとも何れか1つが実施可能なランス及びこのランスの昇降装置が設けられていることとしている。
【0015】
そして、このようにすることで、シユノーケルと集塵フードの相互利用を迅速に行えるようになる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明に係る溶鋼精錬装置は、
シュノーケルを使用する操業と使用しない操業を夫々別に行う溶鋼の精錬装置であって、
溶鋼の供給位置と操業位置の間を、溶鋼が注入された容器を積載して移動が可能な容器台車と、
集塵フードと、集塵フード及びシュノーケルを夫々別の位置に昇降可能に吊り下げた操業台車であって、該操業台車は、集塵フードのみの吊り下げ位置と集塵フード及びシュノーケルの吊り下げ位置を前記操業位置に一致させるべく、前記容器台車の上方で移動が可能なようになされ、
さらに前記操業台車の集塵フードのみ及び集塵フードとシュノーケルの吊り下げ位置には、夫々合金鉄の投入口を設け、
また、前記操業位置における操業台車の上方には、
合金鉄の投入設備と、
前記溶鋼の攪拌用ガス及びカルシウム合金粉の吹込み用浸漬ランス及びこの浸漬ランスの昇降装置と、
酸素吹付け用ランスと、
測温・サンプリング・溶存酸素量測定の少なくとも何れか1つが実施可能なランス及びこのランスの昇降装置が設けられていることを要旨とするものである。
【0017】
本発明に係る溶鋼精錬装置によれば、操業位置に、集塵フードのみの吊り下げ位置と集塵フード及びシュノーケルの吊り下げ位置が合致するように操業台車を移動可能に構成することにより、シユノーケルと集塵フードの相互利用を迅速に行えるようになる。
【0018】
すなわち、シュノーケルが必要な合金鉄の添加時には、操業位置に集塵フード及びシュノーケルの吊り下げ位置が合致するように操業台車を移動させれば、シュノーケルの使用と共に、酸素吹き付け用ランス、攪拌用ガスの供給及びカルシウム合金粉の吹き込み(カルシウムの添加)等が可能になる。
【0019】
一方、合金鉄を添加しないとき、すなわちシュノーケルを使用する必要がない時には、操業位置に集塵フードのみの吊り下げ位置が合致するように操業台車を移動させ、シュノーケル以外の機能が利用できるようにしておく。これにより、シュノーケルを使用する必要がない時には、シュノーケルにスラグやメタルが付着したり、シュノーケルが溶損したりすることがなくなるので、付着物除去作業に要する負担が減少し、装置の稼働率向上・生産性向上につながる。
【0020】
上記の本発明に係る溶鋼精錬装置において、少なくともシュノーケルを使用する操業において、容器内の溶鋼にカルシウム合金粉を内包した金属ワイヤーを供給するワイヤー供給機構を設けた場合には、カルシウム合金粉がスラグと接触せずに歩留良く溶鋼中に供給できるという作用を奏する。このワイヤー供給機構は、操業台車上に配置しても、操業台車と別の位置に配置しても良い。
【0021】
また、上記の何れかの本発明に係る溶鋼精錬装置において、前記集塵フードを山高型とした場合には、集塵フードへの飛散溶鋼の到達が減少し、集塵フードの溶損に伴う補修作業や付着物除去作業に要する負担が低減する。
【0022】
すなわち、本発明に係る溶鋼精錬装置によれば、シュノーケル及び集塵フードの補修作業が軽減され、休止時間が減少し、生産能力が拡大する。
【0023】
【実施例】
以下、取鍋内の溶鋼を精錬する場合における本発明の1実施例を、図1及び図2に基づいて説明する。
図1は本発明に係る溶鋼精錬装置の1実施例を示した概略構成図、図2は集塵フードの説明図で、(a)は本発明に適用する山高型の集塵フードの説明図、(b)は(a)の集塵フードを使用して本発明を実施する場合の図、(c)は従来の集塵フードの説明図である。
【0024】
図1において、1は溶鋼2が注入された例えば取鍋3を積載する容器台車であり、溶鋼2の供給を受ける箇所と操業位置の間を、集塵フード4及びシュノーケル5の下方において移動が可能なように構成されている。
【0025】
なお、取鍋3は、取鍋3内の溶鋼2を攪拌処理するため、その底部にポーラスプラグを設け、攪拌用アルゴンガスや窒素成分添加用窒素ガスを供給できるようになっているものでも良い。
【0026】
6は集塵フード4と、集塵フード4及びシュノーケル5を夫々別の位置に昇降可能に吊り下げた操業台車であり、前記集塵フード4のみ及び集塵フード4とシュノーケル5の吊り下げ位置に、夫々合金鉄の投入口7が設けられている。この操業台車7は、集塵フード4のみの吊り下げ位置と、集塵フード4及びシュノーケル5の吊り下げ位置を、操業態様に合わせて前記操業位置に一致させるべく、前記容器台車1の上方で移動が可能となっている。
【0027】
前記合金鉄の投入口7は、前記操業位置に停止した容器台車1に載置された取鍋3内の溶鋼2中に合金鉄を添加できるように、操業台車6の表裏面を貫通して設けられている。なお、この投入口7への合金鉄の投入は、前記操業位置における上方に配置されたホッパー8のほか、図示省略した切り出し装置や秤量装置、搬送装置等から構成された合金鉄の投入設備によって行われる。
【0028】
9は前記操業位置で停止した取鍋3内の溶鋼2に、攪拌用ガスやこの攪拌用ガスをキャリアガスとしてカルシウム合金粉、例えばタンク10内のCaSi粉を吹込む浸漬ランスであり、昇降装置11により昇降可能に構成されている。なお、12はCaSi粉の吹き込み時、タンク10内のCaSi粉を切出すディスペンサーである。これらは、前記合金鉄の投入設備と同様、操業位置における操業台車6の上方に固定配置されている。
【0029】
13は前記操業位置で停止した取鍋3内の溶鋼2を昇熱するための酸素を吹付けるためのランスであり、昇降装置14により昇降可能に構成されている。
15は前記操業位置で停止した取鍋3内の溶鋼2の、例えば温度測定と溶鋼2のサンプリングを行うためのランスであり、昇降装置16により昇降可能に構成されている。
【0030】
これらのランス13,15や昇降装置14,16も、前記合金鉄の投入設備と同様、操業位置における操業台車6の上方に固定配置されている。
【0031】
なお、前記昇降装置11,14,16は浸漬ランス9、ランス13,15を昇降できるものであれば、その構成は問わないが、本実施例では、ウインチ11a,14a,16aのワイヤー11b,14b,16bの繰り出し、巻き戻しによって浸漬ランス9、ランス13,15を昇降するものを示している。
【0032】
17は前記シュノーケル5を使用した操業時に取鍋3内の溶鋼2に供給される、カルシウム合金粉を内包した金属ワイヤー、例えば直径10〜20mm程度の鉄フープの中に、CaSi粉を充填したCaSiワイヤーであり、通常数100mのCaSi粉内包鉄フープ(ワイヤー)に巻かれ、例えば操業台車6上に設けた供給機構18によりフープの一端を引っ張りながら溶鋼2に供給される。
【0033】
ところで、前記集塵フード4のみを使用する操業では、昇降装置19によって集塵フード4だけを昇降させるもので、底吹きあるいは浸漬ランス9によるガス攪拌によってスラグ−メタル反応を促進させての脱硫や、CaSi粉のインジェクションが可能となっている。また、ランス13からの酸素供給による昇熱も可能である。
【0034】
一方、シュノーケル5を使用する操業では、ウインチなどの昇降装置19でシュノーケル5と集塵フード4を昇降させ、シュノーケル5を使用しての合金鉄投入、CaSiワイヤー17の装入、ランス13からの酸素供給による昇熱が可能である。
【0035】
上記のような構成の本発明に係る溶鋼精錬装置では、シュノーケル5を使用しない場合は、集塵フード4のみを使用して精錬処理を行うので、シュノーケル5ヘの地金付着や溶損が回避でき、付帯作業が軽減できる。
【0036】
上記の本発明に係る溶鋼精錬装置において、集塵フード4を図2(a)に示すように、従来の集塵フード4(図2(c)参照)に比べて山高型に形成することにより、集塵フード4に対する地金付着や溶損も減少する。この場合、集塵フード4の下面と取鍋3の上端との間隔は大きい程良いが、上部空間の制約(ランスの昇降装置や合金鉄貯蔵用ホッパーなど)もあるので、常識的には600mm〜2000mm確保できれば、スラグの付着や跳ね上がり溶鋼による溶損の問題を低減することが可能となる。
【0037】
また、上記の本発明に係る溶鋼精錬装置において、図1に示したように、前記浸漬ランス9やランス13の交換装置21を前記操業位置の近傍に設けた場合には、浸漬ランス9等の交換に要する時間を短縮でき、さらなる作業能率の向上を図ることができるようになる。
【0038】
上記の本発明に係る溶鋼精錬装置によれば、シュノーケル5が必要な合金鉄類の添加時には、操業位置に集塵フード4及びシュノーケル5の吊り下げ位置を一致させるべく操業台車6を移動させ、シュノーケル5の使用と共に、ランス13を用いた酸素吹き付けや浸漬ランス9を用いた攪拌用ガスの供給及びカルシウム合金粉の吹き込み(カルシウムの添加)等を行う。
【0039】
一方、合金鉄類を添加しないとき、すなわちシュノーケル5を使用する必要がない時には、操業位置に集塵フード4のみの吊り下げ位置を一致させるべく操業台車6を移動させ、シュノーケル5以外の機能を利用する。
【0040】
これにより、シュノーケル5を使用する必要がない時には、シュノーケル5にスラグやメタルが付着したり、シュノーケル5が溶損したりすることがなくなり、付着物除去作業に要する負担が減少して装置の稼働率向上や生産性向上が図れる。
【0041】
ところで、上記本発明に係る溶鋼精錬装置を使用した低窒素鋼の溶製時においては、取鍋3の上部に配置する集塵フード4内を5Nm3 /分以上のアルゴンガスでパージすれば、処理中のNピックアップを最小限に抑制することができる。
【0042】
その際、Nピックアップ防止用のアルゴンガスの供給は、酸素吹き付け用のランス13から供給させるようにしても、また、集塵フード4にアルゴンガスパージ用の配管20を設置しても良い。勿論、図2(c)に示したように、これらを併用しても良い。
【0043】
次に、本発明の効果を確認するために行った実施結果について説明する。
〔実施例1〕
転炉での脱炭処理が終了した後の溶鋼流(250トン)に、Alを300kg巻き込ませて取鍋に出鋼した。そして、この取鍋に出鋼した溶鋼の成分分析を行った結果を下記表1の上段に示した。
【0044】
この取鍋を先に説明した溶鋼精錬装置の容器台車に運搬し、この容器台車を操業位置に移動した後、この操業位置に集塵フードのみの吊り下げ位置を一致させるべく操業台車を移動し、取鍋内の溶鋼温度を測温したところ1617℃であった。その5分後、集塵フード及びシュノーケルの吊り下げ位置を操業位置に一致させるべく前記操業台車を移動し、浸漬ランスにより上方からArガスを吹き付けて溶鋼を1分間攪拌した後、攪拌を継続しながらシュノーケルを浸漬させ、Alを177kg添加した。
【0045】
その後3分間攪拌した後、上吹きの水冷ランスから酸素ガスを2,500Nm3 /hで約3分間溶鋼表面に吹き付けて再度溶鋼温度を測定すると共に溶鋼成分分析用サンプルを採取(分析結果は表1の中段に示す)した。これらの作業終了後、シュノーケルを引き上げ、連続鋳造設備に運搬して鋳造した。前記精錬作業中、集塵フード内におけるArパージを10Nm3 /分で行った為、処理中のNピックアップは見られなかった。
【0046】
【表1】
【0047】
〔実施例2〕
転炉での脱炭処理が終了した後の溶鋼流(245トン)に、Alを300kg巻き込ませて取鍋に出鋼した。そして、この取鍋に出鋼した溶鋼の成分分析を行った結果を下記表2の上段に示した。
【0048】
この取鍋を先に説明した溶鋼精錬装置の容器台車に運搬し、この容器台車を操業位置に移動した後、この操業位置に集塵フードのみの吊り下げ位置を一致させるべく操業台車を移動し、取鍋内の溶鋼温度を測温したところ1620℃であった。その5分後、浸漬ランスにより上方からArガスを吹き付けて溶鋼を1分間攪拌した後、攪拌を継続しながら、上吹きの水冷ランスから酸素ガスを2,500Nm3 /hで約3分間溶鋼表面に吹き付けて再度溶鋼温度を測定すると共に溶鋼成分分析用サンプルを採取(分析値は表2の中段に示す)した。
【0049】
これらの作業を終了した後、連続鋳造設備に運搬して鋳造した。この場合、すべての処理をシュノーケルを使用しない操業にて処理できた。また、前記精錬作業中、集塵フード内におけるArパージを10Nm3 /分で行った為、処理中のNピックアップも最小限に抑えることができた。
【0050】
【表2】
【0051】
〔比較例〕
転炉での脱炭処理が終了した後の溶鋼流(248トン)にAlを300kg巻き込ませ取鍋に出鋼した。そして、この取鍋に出鋼した溶鋼の成分分析を行った結果を下記表3の上段に示した。
【0052】
この取鍋を従来型の簡易取鍋精錬装置まで運搬し、精錬処理を行った。従来型の簡易取鍋精錬装置とは、処理位置が1箇所で、集塵フードが山高型になっていないものである。
【0053】
まず、処理前に取鍋内の溶鋼温度を測温したところ1625℃であった。その5分後、浸漬ランスにより上方からArガスを吹き付けて溶鋼を1分間攪拌した後、攪拌を継続しながら、上吹きの水冷ランスから酸素ガスを2,500Nm3 /hで約3分間溶鋼表面に吹き付けて再度溶鋼温度を測定すると共に溶鋼成分分析用サンプルを採取(分析値は表3の中段に示す)した。
【0054】
これらの作業終了後、連続鋳造設備に運搬して鋳造した。この場合、シュノーケルは使用しなかったが、精錬処理中上部に待機させた状態であったので、Arガスによる攪拌中の溶鋼飛散による溶損及びスラグ付着がみられた。
【0055】
この1回の処理のみでは、シュノーケルの補修は必要なかったが、同様な処理を7回行った後は、スラグの付着が多く、取り外してスラグの除去ならびに耐火物溶損箇所の補修を行う必要があった。また、集塵フード内におけるパージ用のArガスの供給を3Nm3 /分しか行わなかったため、処理中のNピックアップが大きく、Nの目標成分を外れてしまった。
【0056】
【表3】
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、シュノーケルが必要な時以外は、シュノーケルを使用せずに集塵フードのみを使用して処理するので、シュノーケルの補修頻度が大幅に低減する。また、山高型の集塵フードを採用すれば、跳ね上がった溶鋼やスラグが集塵フードまで到達する頻度が減少し、集塵フードの溶損及び集塵フードヘの付着物除去作業が軽減できる。これらのことから、集塵フードやシュノーケルに付着した地金除去作業の頻度減少ならびに溶損が軽減され、稼働率が向上し、生産能力が増大する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る溶鋼精錬装置の1実施例を示した概略構成図である。
【図2】集塵フードの説明図で、(a)は本発明に適用する山高型の集塵フードの説明図、(b)は(a)の集塵フードを使用して本発明を実施する場合の図、(c)は従来の集塵フードの説明図である。
【符号の説明】
1 容器台車
2 溶鋼
3 取鍋
4 集塵フード
5 シュノーケル
6 操業台車
7 投入口
9 浸漬ランス
11 昇降装置
13 ランス
14 昇降装置
15 ランス
16 昇降装置
17 CaSiワイヤー
18 供給機構
Claims (3)
- シュノーケルを使用する操業と使用しない操業を夫々別に行う溶鋼の精錬装置であって、
溶鋼の供給位置と操業位置の間を、溶鋼が注入された容器を積載して移動が可能な容器台車と、
集塵フードと、集塵フード及びシュノーケルを夫々別の位置に昇降可能に吊り下げた操業台車であって、該操業台車は、集塵フードのみの吊り下げ位置と集塵フード及びシュノーケルの吊り下げ位置を前記操業位置に一致させるべく、前記容器台車の上方で移動が可能なようになされ、
さらに前記操業台車の集塵フードのみ及び集塵フードとシュノーケルの吊り下げ位置には、夫々合金鉄の投入口を設け、
また、前記操業位置における操業台車の上方には、
合金鉄の投入設備と、
前記溶鋼の攪拌用ガス及びカルシウム合金粉の吹込み用浸漬ランス及びこの浸漬ランスの昇降装置と、
酸素吹付け用ランスと、
測温・サンプリング・溶存酸素量測定の少なくとも何れか1つが実施可能なランス及びこのランスの昇降装置が設けられていることを特徴とする溶鋼精錬装置。 - 請求項1に記載の溶鋼精錬装置において、
少なくともシュノーケルを使用する操業において、容器内の溶鋼にカルシウム合金粉を内包した金属ワイヤーを供給するワイヤー供給機構を設けたことを特徴とする溶鋼精錬装置。 - 請求項1又は2に記載の溶鋼精錬装置において、
前記集塵フードが山高型であることを特徴とする溶鋼精錬装置。
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