JP3863577B2 - 半導体レーザ - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、十分なモニタ電流を確保できる半導体レーザに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体レーザ素子の端面に多層膜を設け、高反射率を得る半導体レーザが例えば米国特許4,092,659に開示され、それを図6の断面図で示す。この図に於て、半導体レーザ素子21の発光端面の上に第1層22と第2層23が積層されている。第1層22は厚さλ/(4・n1)の二酸化シリコンからな り、第2層23は厚さλ/(4・n2)のシリコンからなり、約80%の高反射 率を得ており、第3層24を介して主出射光が放出されている(λは発振波長、n1とn2は各々第1層22、第2層23の屈折率である)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この様に従来の半導体レーザでは、反射率が高いので、第1層22と第2層23を介して放出される副出射光の量が少なく、この光量を受光素子(図示せず)で受光し、それのモニタ電流により動作電流を制御する回路に於て、制御しにくい第1の欠点がある。
【0004】
この欠点を解消するために本発明者は、第2層23の厚さを例えば15nmと薄くし、44%の低反射率を得た。しかし、このポイントは図3の反射率特性図のB点に示す様に、膜厚のわずかな差により反射率が大きく変わる特性上にあり、反射率の制御がしにくい第2の欠点がある。
【0005】
更に図4のモニタ電流特性の一点鎖線と図5の動作電流特性の一点鎖線に示す様に、両方共に運転時間の経過と共に電流値が高がる第3の欠点がある。これは薄い第2層23が露出しているため、第2層23の組織が劣化し、第1層22と第2層23による反射率が徐々に下がるためである。故に、本発明はこの様な従来の欠点を考慮して、十分かつ安定した副出射光が得られ、反射率の制御のし易い、かつ動作電流すなわち主出射光量の経時変化が少ない半導体レーザを提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は上述の課題を解決するために、半導体レーザ素子と、それの少なくとも一つの発光端面の上に積層された第1層と第2層と第3層とを備え、前記半導体レーザ素子の発振波長をλ、前記第1層と第2層の屈折率を各々n1とn2、aを任意の整数、bを任意の奇数として、前記第1層は厚さ略a・λ/(4・n1)の低屈折率材料からなり、前記第2層は厚さ略b・λ/(8・n2)の高屈折率材料からなり、前記第3層は低屈折率材料からなり、30〜50%の反射率が得られるように前記第1層〜第3層の屈折率が設定されている事を特徴とする。
【0007】
本発明は更に望しくは、第3層の屈折率をn3として、第2層を厚さ15nm乃 至40nmのシリコンまたは非晶質シリコンからなし、第3層を厚さ20nm乃至λ/(4・n3)からなすものである。
【0008】
【作用】
上述の様に、半導体レーザ素子の発光端面上に、厚さ略a・λ/(4・n1) の低屈折率材料からなる第1層と、厚さ略b・λ/(8・n2)の高屈折率材料 からなる第2層と、低屈折率材料からなる第3層とを積層する。その結果、比較的低い反射率(30〜50%)が安定して得られ、この積層を介して取出される副出射光量が十分に得られ、十分なモニタ電流が得られる。また、第1層と第2層上に第3層を積層する事により、第3層の膜厚を少し変化させても反射率の変化は少ないので、反射率の制御がし易い。
【0009】
更に望しくは、第2層を厚さ15nm乃至40nmのシリコン又は非晶質シリコンからなし、第3層を厚さ20nm乃至λ/(4・n3)に設ける事により、この積 層の構造が安定し反射率が安定し、積層と反対側から出力される主出射光量の経時変化が少なくなる。
【0010】
【実施例】
以下に本発明の実施例を図1に従い説明する。図1は本実施例に係る半導体レーザの断面図である。この図に於て、金を主体とする材料からなる裏面電極1上にn型ガリウム砒素からなる半導体基板2が設けられ、その半導体基板2上にn型アルミニウム・ガリウム・インジュウム・燐、(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなるn型クラッド層3が設けられている。
【0011】
そのn型クラッド層3の上に、不純物が添加されないアルミニウム・ガリウム・インジュウム・燐、(Al×Ga1-x)0.5In0.5Pからなる活性層4が設け られ、活性層4の上にP型アルミニウム・ガリウム・インジュウム・燐、(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5PからなるP型クラッド層5が設けられている。そのP型クラッド層5の上にn型ガリウム・砒素からなるブロック層6が設けられているが、P型クラッド層5のリッジ頂部7には設けられていない。
【0012】
そして、P型クラッド層5の頂部7とブロック層6の上に、P型ガリウム・砒素からなるキャップ層8が設けられ、そのキャップ層8の上に金を主体とする表面電極9が設けられている。これらの層により、半導体レーザ素子10が構成されている。
【0013】
この半導体レーザ素子10の両端面は壁開され、一つの発光端面11と他の発光端面12が設けられている。そして例えば波長685nmの光を発振している。
【0014】
発光端面11の上にスパッタ蒸着法等により第1層13が形成されている。第1層13は、厚さが略aλ/4n1の低屈折率材料からなる。但しaは任意の整 数、λは発振波長、n1は屈折率を示す。例えば第1層13は、n1=1.67のアルミナ(Al203)からなり、a=1、λ=685nmとして、厚さは685/(4×1.67)=102.5nmである。また低屈折率材料として他に、一酸化シリコン(SiO)、二酸化シリコン(SiO2)、沸化マグネシウム(MgF2)等も使用できる。
【0015】
そして、第1層13の上に第2層14が形成されている。第2層14は、厚さが略b・λ/(8・n2)の高屈折率材料からなる。但しbは任意の奇数、λは 発振波長、n2は屈折率を示す。例えば第2層14は、n2=3.6の非晶質シリコン(a−Si)からなり、b=1、λ=685nmとして、厚さは例えば24nmである。これとは違って、第2層14の厚さとして、b・λ/(4・n2)にし た時、第2層14上に後述の第3層を設けると、反射率が50〜80%になるので好ましくない。従って第2層14は例えばb=1として、λ/(12・n2) 乃至λ/(5・n2)の厚さが望ましい。また、高屈折率材料として、他にシリ コン等を用いる事ができる。
【0016】
そして、第2層14の上に第3層15が形成されている。第3層15は低屈折率材料からなる。例えば第3層15は、n3=1.67のアルミナからなり、λ /(4・n3)=102.5nmの厚さに形成されている。これらの第1層13と 第2層14と第3層15により積層16が構成され、反射率が約31%と比較的低くなり、積層16を介して副出射光17が放出される。
【0017】
また、半導体レーザ素子10の他の発光端面12には、第4層18が形成されている。第4層18は、厚さが約λ/(2・n4)からなる低屈折率材料からな り(n4は屈折率)、例えば厚さ205nmのアルミナからなる。この様にして、 第4層18を介して主出射光19が放出される。これらの層により、本実施例の半導体レーザ20が構成されている。
【0018】
次にこの半導体レーザ20の反射特性を図3に従い説明する。この図3に於て横軸は積層16の膜厚(nm)であり、縦軸は積層16に於ける反射率である。この特性図に於て、実線は本実施例の特性である。そして、1点鎖線は従来の様に厚さλ/(4・n1)の二酸化シリコンと厚さλ/(4・n2)のシリコンと厚さλ/(4・n3)の二酸化シリコンを積層した半導体レーザの特性である。
【0019】
この様に、第2層14の厚さを15nm乃至40nmに設ける事により、積層16の反射率が比較的低くなり、積層16を介して取出される副出射光17の光量が十分確保できる。また、第3層15の厚さを20nm(C点で示したポイント)乃至λ/(4・n3)(D点で示したポイント)に設ける事により、反射率を50 〜31%に設定する事ができる。更にポイントCからDまでに第3層15の厚さを任意に設定する事により、この間の特性の変化は比較的緩やかであるので、膜厚のわずかな差により反射率が大きく変化する事がない。故に反射率の大きさの制御がし易くなる。
【0020】
次に、モニタ電流特性を図4に従い説明する。横軸は、一定電流を供給する経過時間(h)を示す。縦軸は、主出射光からの光量が一定になる様に電流を供給した時のモニタ電流値(相対値)を示し、試験開始時のモニタ電流値を1としている。
【0021】
この特性図の実線は本実施例の半導体レーザ20の特性であり、1点鎖線は従来の、厚さλ/(4・n1)の二酸化シリコンと厚さ15nmのシリコンが積層さ れた半導体レーザの特性である。この特性図に於て、半導体レーザ20は従来と違ってモニタ電流値の変化量が極めて小さく、実用上支障のない程度のものである。
【0022】
この様にモニタ電流値の変化量が少ない理由は、半導体レーザ20に於て、第1層13上に15nm以上の厚さを持つ第2層14と、その上に20nm以上の厚さを持つ第3層15により、積層16が構成され、これにより積層16の組織が強固にかつ安定し、積層16の反射率の変化が小さくなったためである。
【0023】
また、第2層14の厚さを15nm未満としたり、又は第3層15の厚さを20nm未満に形成すると、積層16の組織が急激に弱体化し、反射率が運転時間と共に急激に低下する事がわかった。
【0024】
更に、動作電流特性を図5に従い説明する。横軸は、経過時間である。縦軸は主出射光からの光量が一定になる様に電流を供給した時の、供給電流値(動作電流値)を示し、試験開始時の動作電流値を1としている。
【0025】
この特性図の実線は本実施例の半導体レーザ20の特性であり、1点鎖線は図4について述べた従来の半導体レーザの特性である。この特性図に於て、半導体レーザ20は従来と違って、動作電流値の変化量が極めて小さい事がわかる。
【0026】
この事は、逆の見方をすれば、半導体レーザ20に於て、一定の電流を供給すれば、運転時間が経過しても、主出射光の光量が略一定となる事を示す。その理由は上述した様に、半導体レーザ20の積層16の組織が強固になったため、積層16での反射率の変化が小さくなり、発光端面12での光出力が一定となるからである。
【0027】
【発明の効果】
上述の様に、半導体レーザ素子の発光端面上に、a・λ/(4・n1)の厚さ の低屈折率材料からなる第1層と、b・λ/(4・n2)を除く所定の厚さの高 屈折率材料からなる第2層と、低屈折率材料からなる第3層とを積層する。その結果、比較的低い反射率(30〜50%)が安定して得られ、この積層を介して取出される副出射光量が十分に得られ、十分なモニタ電流が得られる。また、第1層と第2層上に第3層を積層する事により、第3層の膜厚を少し変化させても反射率の変化は少ないので、反射率の制御がし易い。
【0028】
更に望しくは、第2層を厚さ15nm乃至40nmのシリコン又は非晶質シリコンからなし、第3層を厚さ20nm乃至λ/(4・n3)に設ける事により、この積 層の構造が安定し反射率が安定し、積層と反対側から出力される主出射光量の経時変化が少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る半導体レーザの断面図である。
【図2】図1のAA断面図である。
【図3】本発明の実施例に係る半導体レーザおよび従来の半導体レーザに於ける、反射率特性図である。
【図4】本発明の実施例に係る半導体レーザおよび従来の半導体レーザに於ける、モニタ電流特性図である。
【図5】本発明の実施例に係る半導体レーザおよび従来の半導体レーザに於ける、動作電流特性図である。
【図6】従来の半導体レーザの断面図である。
【符号の説明】
10 半導体レーザ素子
11 発光端面
13 第1層
14 第2層
15 第3層
Claims (2)
- 半導体レーザ素子と、それの少なくとも一つの発光端面の上に積層された第1層と第2層と第3層とを備え、前記半導体レーザ素子の発振波長をλ、前記第1層と第2層の屈折率を各々n1とn2、aを任意の整数、bを任意の奇数として、前記第1層は厚さ略a・λ/(4・n1)の低屈折率材料からなり、前記第2層は厚さ略b・λ/(8・n2)の高屈折率材料からなり、前記第3層は低屈折率材料からなり、30〜50%の反射率が得られるように前記第1層〜第3層の屈折率が設定されている事を特徴とする半導体レーザ。
- 前記第3層の屈折率をn3として、前記第2層は厚さ15nm乃至40nmのシリコン又は非晶質シリコンからなり、前記第3層は厚さ20nm乃至λ/(4・n3)からなる事を特徴とする請求項1の半導体レーザ。
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