JP3862133B2 - 片側斜板式圧縮機 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両空調用等に用いられる片側斜板式圧縮機に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来、特開平１１−１０７９１２号公報に片側斜板式圧縮機が開示されている。この片側斜板式圧縮機では、ハウジングの内部にシリンダボア、クランク室、吸入室及び吐出室が区画形成されており、シリンダボア内には往復動可能にピストンが収容されている。また、ハウジングには駆動軸が回転可能に支承され、この駆動軸は外部駆動源により駆動されるようになっている。さらに、駆動軸には斜板が同期回転可能に支承されており、斜板とピストンとの間には前後で対をなすシューが設けられている。つまり、ピストンはシリンダボアの内周面と摺接する本体部を有し、この本体部と一体に設けられたシュー連結部と斜板との間にシューが連結されている。また、この片側斜板式圧縮機では、クランク室内の圧力と吸入圧力との差圧に応じてピストンのストローク及び斜板の傾斜角が変化するようになっており、これにより圧縮容量が制御されるようになっている。そして、この片側斜板式圧縮機の特徴的な構成として、ピストンの本体部には軽量化を実現する空部が形成されている。ここで、空部としては、外部と連通しない中空部の他、連通孔等の開口により外部と連通する肉盗部があり得る。
【０００３】
かかる片側斜板式圧縮機では、外部駆動源により駆動軸が駆動されれば、斜板が同期回転することから、シューを介してピストンがシリンダボア内を往復動する。これにより、シリンダボアはピストンのヘッドとの間に圧縮室を形成することから、この圧縮室が吸入行程にあるときには、その圧縮室に冷凍回路の蒸発器と接続された吸入室から低圧の冷媒ガスが吸入され、圧縮室が圧縮行程にあるときには、その圧縮室から高圧の冷媒ガスが吐出室に吐出されることとなる。かかる吐出室は冷凍回路の凝縮器に接続され、冷凍回路が車両用空調システムとして車両の空調に供されることとなる。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の片側斜板式圧縮機では、軽量化の実現のためにピストンに空部を形成しており、かかる空部により本体部の強度が小さくなる。特に、ピストン空部と外部とを連通する開口を設けると、開口近傍の強度が不十分となる可能性がある。
【０００５】
本発明は、片側斜板式圧縮機において、ピストンの空部の利点を生かしつつ、過酷な運転条件下の耐久性を向上させることを解決すべき課題としている。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
本発明の片側斜板式圧縮機は、内部にシリンダボア、クランク室、吸入室及び吐出室を区画形成するハウジングと、該シリンダボア内に往復動可能に収容されたピストンと、外部駆動源により駆動され、該ハウジングに回転可能に支承された駆動軸と、該駆動軸に対して同期回転可能に支承され、該ピストンを従動させる斜板とを備え、該ピストンの該シリンダボアの内周面と摺接する本体部には、軽量化を実現する空部が形成された片側斜板式圧縮機である。
本発明の第１の片側斜板式圧縮機は前記ピストンと前記斜板との間には前後で対をなすシューが設けられ、該ピストンは各該シューを連結するシュー連結部を有し、前記ピストンは前記本体部を補強するリブを有し、前記本体部は内部に空部を有する円筒壁を有し、前記リブは、シュー連結部側の端面及び前記円筒壁の内周面に接するように設けられていることを特徴とする。
また、本発明の第２の片側斜板式圧縮機は前記ピストンと前記斜板との間には前後で対をなすシューが設けられ、該ピストンは各該シューを連結するシュー連結部を有し、前記ピストンは前記本体部を補強するリブを有し、前記本体部は内部に空部を有する円筒壁を有し、前記リブは、シュー連結部及び前記本体部に接するように設けられていることを特徴とする。
【０００７】
本発明の片側斜板式圧縮機では、ピストンの本体部に空部が形成されているため、軽量化を実現している。かかる空部としては肉盗部又は中空部を採用することができる。また、本発明の片側斜板式圧縮機では、ピストンにリブが設けられ、このリブが本体部を補強している。リブは空部の外側又は内側に位置していることができる。
【０００８】
したがって、本発明の片側斜板式圧縮機では、ピストンの空部の利点である軽量化を実現しつつ、過酷な運転条件下の耐久性を向上させることができる。
【０００９】
本発明の片側斜板式圧縮機では、ピストンと斜板との間には前後で対をなすシューが設けられ、ピストンは各シューを連結するシュー連結部の近傍にリブを有するので、本体部の補強の効果が大きい。つまり、ピストンは、吸入行程や圧縮行程の際、シュー連結部の近傍に圧縮応力、慣性力及び曲げモーメントを最も受ける。このため、かかるシュー連結部の近傍にリブを設けることが効果的である。
【００１０】
また、本発明の片側斜板式圧縮機では、肉盗部はピストンにおけるシュー連結部の左右に開く開口を有し、リブは両開口間に形成されていることが好ましい。空部としての肉盗部が形成されたピストンでは、肉盗部がシュー連結部の左右に開く開口を有する場合がある。これは、製造時のバリ等を空部に残存させないこと、真空中での溶接を不要として簡易な製造性も確保すること等を目的とするものである。この場合、両開口間が比較的脆弱になりやすいが、ここにリブを設けることで十分な強度が確保される。
【００１１】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の片側斜板式圧縮機を具体化した実施形態１〜３を図面を参照しつつ説明する。
【００１２】
（実施形態１）
実施形態１の片側斜板式圧縮機では、図１に示すように、複数のシリンダボア１ａと軸孔１ｂとマフラ室１ｃとが形成されたシリンダブロック１の前端にカップ状のフロントハウジング２が接合され、シリンダブロック１の後端には吸入弁３、弁板４、吐出弁５及びリテーナ６を挟持してリアハウジング７が接合されている。シリンダブロック１、フロントハウジング２及びリアハウジング７がハウジングである。
【００１３】
フロントハウジング２にも軸孔２ａが形成され、シリンダブロック１の前端とフロントハウジング２とで形成されるクランク室８内には、軸孔２ａに軸封装置９及びラジアル軸受１０を介し、かつシリンダブロック１の軸孔１ｂにラジアル軸受１１を介して駆動軸１２が回転可能に支承されている。
【００１４】
クランク室８内では、フロントハウジング２との間にスラスト軸受１３を介して駆動軸１２にラグプレート１４が固定されている。ラグプレート１４には後方に向かって一対のアーム１５が突設されており、各アーム１５には円筒状の内面をもつガイド孔１５ａが貫設されている。また、駆動軸１２は斜板１６の貫通孔１６ａを挿通しており、斜板１６とラグプレート１４との間には傾角減少バネ１７が設けられている。斜板１６は、この傾角減少バネ１７により傾角が最大傾角から最小傾角まで減少する方向に付勢されている。
【００１５】
斜板１６の前端には各アーム１５に向かって一対のガイドピン１６ｂが突設されており、各ガイドピン１６ｂの先端にはガイド孔１５ａ内を摺動しつつ回転可能な球状の外面をもつガイド部１６ｃが設けられている。また、斜板１６の前後周縁にはそれぞれ対をなすシュー１８を介してピストン１９が設けられており、各ピストン１９は各シリンダボア１ａ内に収容されている。
【００１６】
フロントハウジング２から前方に突出した駆動軸１２にはボス２０がスプライン嵌合されており、ボス２０はキー２１によりプーリ２２と固定されている。このプーリ２２は、駆動軸１２との間でボルト２３により固定されているとともにフロントハウジング２との間で軸受２４により支承されている。プーリ２２には外部駆動源としてのエンジンＥＧと接続されたベルト３４が巻きかけられている。
【００１７】
駆動軸１２の斜板１６よりやや後方にはサークリップ２５により復帰バネ２６が設けられている。シリンダブロック１の軸孔１ｂ内では駆動軸１２の後端にスラスト軸受２７及び座金２８が設けられ、座金２８と吸入弁３との間にはばね２９が設けられている。
【００１８】
リアハウジング７の内側には吸入室７ａが形成され、この吸入室７ａはリテーナ６、吐出弁５及び弁板４に貫設された吸入ポート３０により各シリンダボア１ａと連通している。吸入室７ａは外部冷凍回路の蒸発器ＥＶに配管により接続され、蒸発器ＥＶは配管により膨張弁Ｖを介して凝縮器ＣＯに接続されている。また、リアハウジング７の外側には吐出室７ｂが形成されている。吐出室７ｂとシリンダブロック１のマフラ室１ｃとはリテーナ６、吐出弁５、弁板４及び吸入弁３を貫通する吐出通路７ｃにより連通されている。マフラ室１ｃは冷凍回路の凝縮器ＣＯに配管により接続されている。吐出室７ｂは弁板４及び吸入弁３に貫設された吐出ポート３１により各シリンダボア１ａと連通している。また、リアハウジング７には制御弁３２が収納されている。これにより、この片側斜板式圧縮機では、クランク室８内の圧力と吸入室７ａ内の吸入圧力との差圧に応じてピストン１９のストローク及び斜板１６の傾斜角が変化することにより圧縮容量が制御されるようになっている。
【００１９】
そして、この片側斜板式圧縮機のピストン１９はシリンダボア１ａの内周面と摺接する部分である本体部１９ｃを有しており、この本体部１９ｃのヘッド側にはリング溝４２が凹設されている。リング溝４２には、シリンダボア１ａの内周面と摺接するピストンリング４１が嵌装されている。特徴的な構成としては、図２及び図３に示すように、ピストン１９の本体部１９ｃの内部には、軽量化を実現する空部としての肉盗部１９ａが形成されている。特に、図３に示すように、ピストン１９の肉盗部１９ａ内には、シュー１８を連結する部分であるシュー連結部１９ｂ側に内周面と前端面とに接する三角形状のリブ３３ａが一対設けられている。また、本体部１９ｃとシュー連結部１９ｂとの間にはシュー連結部１９ｂの径方向の対称位置に外側に位置する三角形状のリブ３３ｂが設けられている。さらに、ピストン１９のシュー連結部１９ｂの後方には、図４に示すように、シュー連結部１９ｂを上方に位置させた際に左右に開く一対の開口１９ｄが貫設され、これら開口１９ｄにより肉盗部１９ａはクランク室８と連通している。リブ３３ｂはこれら開口１９ｄ間に設けられている。
【００２０】
以上のように構成された片側斜板式圧縮機では、エンジンＥＧにより駆動軸１２が駆動されれば、斜板１６が同期回転することから、シュー１８を介してピストン１９がシリンダボア１ａ内を往復動する。これにより、シリンダボア１ａはピストン１９のヘッドとの間に圧縮室５０を形成することから、この圧縮室５０が吸入行程にあるときには、その圧縮室５０に冷凍回路の蒸発器ＥＶと接続された吸入室７ａから低圧の冷媒ガスが吸入され、圧縮室５０が圧縮行程にあるときには、その圧縮室５０から高圧の冷媒ガスが吐出室７ｂに吐出されることとなる。そして、冷凍回路が車両用空調システムとして車両の空調に供されることとなる。
【００２１】
ここで、この片側斜板式圧縮機では、図３に示すように、ピストン１９に肉盗部１９ａが形成されているため、軽量化を実現している。
【００２２】
そして、この片側斜板式圧縮機では、ピストン１９の肉盗部１９ａ内にリブ３３ａが設けられているとともに、ピストン１９の本体部１９ｃとシュー連結部１９ｂとの間にもリブ３３ｂが設けられているため、ピストン１９の本体部１９ｃの強度を補強している。特に、これらリブ３３ａ、３３ｂは、圧縮応力、慣性力及び曲げモーメントを最も受けるシュー連結部１９ｂの近傍に設けられているため、この効果が大きい。さらに、このピストン１９は、比較的脆弱になりやすい両開口１９ｄ間にリブ３３ｂを設けているため、十分な強度を確保している。
【００２３】
したがって、本実施形態の片側斜板式圧縮機では、ピストン１９の肉盗部の利点である軽量化を実現しつつ、過酷な運転条件下の耐久性を向上させることができる。
【００２４】
また、図４に示すように、ピストン１９の肉盗部１９ｄはシュー連結部１９ｂの左右に開く開口１９ｄを有している。このため、このピストン１９が軸方向に分割されたパーツを溶接して得られるものである場合でも、このピストン１９は、それら開口１９ｄにより溶接の際のバリを肉盗部１９ａ外に排出しやすく、肉盗部１９ａ内に残さないようにしやすい。このため、異音の発生も防止できるとともに、運転中にバリがクランク室８内に排出されることによる不具合も防止できる。
【００２５】
さらに、こうして分割したパーツを溶接する際、両開口１９ｄが内部の肉盗部１９ａを外部と連通させていることから、内部を完全な中空部とする場合の内部の空気の膨張による溶接欠陥を懸念する必要がないため、真空中での溶接が不要となり、簡易な製造性も確保し、製造コストの低廉化を実現できる。
【００２６】
（実施形態２）
実施形態２の片側斜板式圧縮機では、図５に示すように、ピストン１９の肉盗部１９ａ内にはシュー連結部１９ｂ側で径方向に延在する板状のリブ３５が設けられている。また、図６に示すように、本体部１９ｃとシュー連結部１９ｂとの間には一対の開口１９ｄ間で外側に位置して外方に広がる二股形状のリブ３６が設けられている。他の構成は実施形態１と同様である。
【００２７】
かかる片側斜板式圧縮機においても、実施形態１と同様の作用効果を奏することができる。
【００２８】
（実施形態３）
実施形態３の片側斜板式圧縮機では、図７及び図８に示すように、ピストン１９の肉盗部１９ａ内に、シュー連結部１９ｂ側で径方向に延在する板状のリブ３５が設けられているとともに、内周面とリブ３５の後端面とに接する三角形状のリブ３３ａが一対設けられている。他の構成は実施形態１と同様である。
【００２９】
かかる片側斜板式圧縮機においても、実施形態１と同様の作用効果を奏することができる。
【００３０】
なお、上記実施形態１〜３では空部が肉盗部１９ａである場合について説明したが、空部が密閉状の中空部である場合にも本発明を適用することは可能である。
【００３１】
【図面の簡単な説明】
【図１】実施形態１〜３に係る片側斜板式圧縮機の全体縦断面図である。
【図２】実施形態１に係るピストンの側面図である。
【図３】実施形態１に係るピストンの縦断面図である。
【図４】実施形態１に係るピストンの正面を示し、図３のＩＶ矢視図である。
【図５】実施形態２に係るピストンの縦断面図である。
【図６】実施形態２に係るピストンの正面を示し、図５のＶＩ矢視図である。
【図７】実施形態３に係るピストンの縦断面図である。
【図８】実施形態３に係るピストンの正面を示し、図７のＶＩＩＩ矢視図である。
【符号の説明】
１ａ…シリンダボア
８…クランク室
７ａ…吸入室
７ｂ…吐出室
１、２、７…ハウジング（１…シリンダブロック、２…フロントハウジング、７…リアハウジング）
１９…ピストン
１９ｃ…本体部
ＥＧ…外部駆動源（エンジン）
１２…駆動軸
１６…斜板
１９ａ…空部（１９ａ…肉盗部）
３３ａ、３３ｂ、３５、３６…リブ
１８…シュー
１９ｂ…シュー連結部
１９ｄ…開口
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両空調用等に用いられる片側斜板式圧縮機に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来、特開平１１−１０７９１２号公報に片側斜板式圧縮機が開示されている。この片側斜板式圧縮機では、ハウジングの内部にシリンダボア、クランク室、吸入室及び吐出室が区画形成されており、シリンダボア内には往復動可能にピストンが収容されている。また、ハウジングには駆動軸が回転可能に支承され、この駆動軸は外部駆動源により駆動されるようになっている。さらに、駆動軸には斜板が同期回転可能に支承されており、斜板とピストンとの間には前後で対をなすシューが設けられている。つまり、ピストンはシリンダボアの内周面と摺接する本体部を有し、この本体部と一体に設けられたシュー連結部と斜板との間にシューが連結されている。また、この片側斜板式圧縮機では、クランク室内の圧力と吸入圧力との差圧に応じてピストンのストローク及び斜板の傾斜角が変化するようになっており、これにより圧縮容量が制御されるようになっている。そして、この片側斜板式圧縮機の特徴的な構成として、ピストンの本体部には軽量化を実現する空部が形成されている。ここで、空部としては、外部と連通しない中空部の他、連通孔等の開口により外部と連通する肉盗部があり得る。
【０００３】
かかる片側斜板式圧縮機では、外部駆動源により駆動軸が駆動されれば、斜板が同期回転することから、シューを介してピストンがシリンダボア内を往復動する。これにより、シリンダボアはピストンのヘッドとの間に圧縮室を形成することから、この圧縮室が吸入行程にあるときには、その圧縮室に冷凍回路の蒸発器と接続された吸入室から低圧の冷媒ガスが吸入され、圧縮室が圧縮行程にあるときには、その圧縮室から高圧の冷媒ガスが吐出室に吐出されることとなる。かかる吐出室は冷凍回路の凝縮器に接続され、冷凍回路が車両用空調システムとして車両の空調に供されることとなる。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の片側斜板式圧縮機では、軽量化の実現のためにピストンに空部を形成しており、かかる空部により本体部の強度が小さくなる。特に、ピストン空部と外部とを連通する開口を設けると、開口近傍の強度が不十分となる可能性がある。
【０００５】
本発明は、片側斜板式圧縮機において、ピストンの空部の利点を生かしつつ、過酷な運転条件下の耐久性を向上させることを解決すべき課題としている。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
本発明の片側斜板式圧縮機は、内部にシリンダボア、クランク室、吸入室及び吐出室を区画形成するハウジングと、該シリンダボア内に往復動可能に収容されたピストンと、外部駆動源により駆動され、該ハウジングに回転可能に支承された駆動軸と、該駆動軸に対して同期回転可能に支承され、該ピストンを従動させる斜板とを備え、該ピストンの該シリンダボアの内周面と摺接する本体部には、軽量化を実現する空部が形成された片側斜板式圧縮機である。
本発明の第１の片側斜板式圧縮機は前記ピストンと前記斜板との間には前後で対をなすシューが設けられ、該ピストンは各該シューを連結するシュー連結部を有し、前記ピストンは前記本体部を補強するリブを有し、前記本体部は内部に空部を有する円筒壁を有し、前記リブは、シュー連結部側の端面及び前記円筒壁の内周面に接するように設けられていることを特徴とする。
また、本発明の第２の片側斜板式圧縮機は前記ピストンと前記斜板との間には前後で対をなすシューが設けられ、該ピストンは各該シューを連結するシュー連結部を有し、前記ピストンは前記本体部を補強するリブを有し、前記本体部は内部に空部を有する円筒壁を有し、前記リブは、シュー連結部及び前記本体部に接するように設けられていることを特徴とする。
【０００７】
本発明の片側斜板式圧縮機では、ピストンの本体部に空部が形成されているため、軽量化を実現している。かかる空部としては肉盗部又は中空部を採用することができる。また、本発明の片側斜板式圧縮機では、ピストンにリブが設けられ、このリブが本体部を補強している。リブは空部の外側又は内側に位置していることができる。
【０００８】
したがって、本発明の片側斜板式圧縮機では、ピストンの空部の利点である軽量化を実現しつつ、過酷な運転条件下の耐久性を向上させることができる。
【０００９】
本発明の片側斜板式圧縮機では、ピストンと斜板との間には前後で対をなすシューが設けられ、ピストンは各シューを連結するシュー連結部の近傍にリブを有するので、本体部の補強の効果が大きい。つまり、ピストンは、吸入行程や圧縮行程の際、シュー連結部の近傍に圧縮応力、慣性力及び曲げモーメントを最も受ける。このため、かかるシュー連結部の近傍にリブを設けることが効果的である。
【００１０】
また、本発明の片側斜板式圧縮機では、肉盗部はピストンにおけるシュー連結部の左右に開く開口を有し、リブは両開口間に形成されていることが好ましい。空部としての肉盗部が形成されたピストンでは、肉盗部がシュー連結部の左右に開く開口を有する場合がある。これは、製造時のバリ等を空部に残存させないこと、真空中での溶接を不要として簡易な製造性も確保すること等を目的とするものである。この場合、両開口間が比較的脆弱になりやすいが、ここにリブを設けることで十分な強度が確保される。
【００１１】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の片側斜板式圧縮機を具体化した実施形態１〜３を図面を参照しつつ説明する。
【００１２】
（実施形態１）
実施形態１の片側斜板式圧縮機では、図１に示すように、複数のシリンダボア１ａと軸孔１ｂとマフラ室１ｃとが形成されたシリンダブロック１の前端にカップ状のフロントハウジング２が接合され、シリンダブロック１の後端には吸入弁３、弁板４、吐出弁５及びリテーナ６を挟持してリアハウジング７が接合されている。シリンダブロック１、フロントハウジング２及びリアハウジング７がハウジングである。
【００１３】
フロントハウジング２にも軸孔２ａが形成され、シリンダブロック１の前端とフロントハウジング２とで形成されるクランク室８内には、軸孔２ａに軸封装置９及びラジアル軸受１０を介し、かつシリンダブロック１の軸孔１ｂにラジアル軸受１１を介して駆動軸１２が回転可能に支承されている。
【００１４】
クランク室８内では、フロントハウジング２との間にスラスト軸受１３を介して駆動軸１２にラグプレート１４が固定されている。ラグプレート１４には後方に向かって一対のアーム１５が突設されており、各アーム１５には円筒状の内面をもつガイド孔１５ａが貫設されている。また、駆動軸１２は斜板１６の貫通孔１６ａを挿通しており、斜板１６とラグプレート１４との間には傾角減少バネ１７が設けられている。斜板１６は、この傾角減少バネ１７により傾角が最大傾角から最小傾角まで減少する方向に付勢されている。
【００１５】
斜板１６の前端には各アーム１５に向かって一対のガイドピン１６ｂが突設されており、各ガイドピン１６ｂの先端にはガイド孔１５ａ内を摺動しつつ回転可能な球状の外面をもつガイド部１６ｃが設けられている。また、斜板１６の前後周縁にはそれぞれ対をなすシュー１８を介してピストン１９が設けられており、各ピストン１９は各シリンダボア１ａ内に収容されている。
【００１６】
フロントハウジング２から前方に突出した駆動軸１２にはボス２０がスプライン嵌合されており、ボス２０はキー２１によりプーリ２２と固定されている。このプーリ２２は、駆動軸１２との間でボルト２３により固定されているとともにフロントハウジング２との間で軸受２４により支承されている。プーリ２２には外部駆動源としてのエンジンＥＧと接続されたベルト３４が巻きかけられている。
【００１７】
駆動軸１２の斜板１６よりやや後方にはサークリップ２５により復帰バネ２６が設けられている。シリンダブロック１の軸孔１ｂ内では駆動軸１２の後端にスラスト軸受２７及び座金２８が設けられ、座金２８と吸入弁３との間にはばね２９が設けられている。
【００１８】
リアハウジング７の内側には吸入室７ａが形成され、この吸入室７ａはリテーナ６、吐出弁５及び弁板４に貫設された吸入ポート３０により各シリンダボア１ａと連通している。吸入室７ａは外部冷凍回路の蒸発器ＥＶに配管により接続され、蒸発器ＥＶは配管により膨張弁Ｖを介して凝縮器ＣＯに接続されている。また、リアハウジング７の外側には吐出室７ｂが形成されている。吐出室７ｂとシリンダブロック１のマフラ室１ｃとはリテーナ６、吐出弁５、弁板４及び吸入弁３を貫通する吐出通路７ｃにより連通されている。マフラ室１ｃは冷凍回路の凝縮器ＣＯに配管により接続されている。吐出室７ｂは弁板４及び吸入弁３に貫設された吐出ポート３１により各シリンダボア１ａと連通している。また、リアハウジング７には制御弁３２が収納されている。これにより、この片側斜板式圧縮機では、クランク室８内の圧力と吸入室７ａ内の吸入圧力との差圧に応じてピストン１９のストローク及び斜板１６の傾斜角が変化することにより圧縮容量が制御されるようになっている。
【００１９】
そして、この片側斜板式圧縮機のピストン１９はシリンダボア１ａの内周面と摺接する部分である本体部１９ｃを有しており、この本体部１９ｃのヘッド側にはリング溝４２が凹設されている。リング溝４２には、シリンダボア１ａの内周面と摺接するピストンリング４１が嵌装されている。特徴的な構成としては、図２及び図３に示すように、ピストン１９の本体部１９ｃの内部には、軽量化を実現する空部としての肉盗部１９ａが形成されている。特に、図３に示すように、ピストン１９の肉盗部１９ａ内には、シュー１８を連結する部分であるシュー連結部１９ｂ側に内周面と前端面とに接する三角形状のリブ３３ａが一対設けられている。また、本体部１９ｃとシュー連結部１９ｂとの間にはシュー連結部１９ｂの径方向の対称位置に外側に位置する三角形状のリブ３３ｂが設けられている。さらに、ピストン１９のシュー連結部１９ｂの後方には、図４に示すように、シュー連結部１９ｂを上方に位置させた際に左右に開く一対の開口１９ｄが貫設され、これら開口１９ｄにより肉盗部１９ａはクランク室８と連通している。リブ３３ｂはこれら開口１９ｄ間に設けられている。
【００２０】
以上のように構成された片側斜板式圧縮機では、エンジンＥＧにより駆動軸１２が駆動されれば、斜板１６が同期回転することから、シュー１８を介してピストン１９がシリンダボア１ａ内を往復動する。これにより、シリンダボア１ａはピストン１９のヘッドとの間に圧縮室５０を形成することから、この圧縮室５０が吸入行程にあるときには、その圧縮室５０に冷凍回路の蒸発器ＥＶと接続された吸入室７ａから低圧の冷媒ガスが吸入され、圧縮室５０が圧縮行程にあるときには、その圧縮室５０から高圧の冷媒ガスが吐出室７ｂに吐出されることとなる。そして、冷凍回路が車両用空調システムとして車両の空調に供されることとなる。
【００２１】
ここで、この片側斜板式圧縮機では、図３に示すように、ピストン１９に肉盗部１９ａが形成されているため、軽量化を実現している。
【００２２】
そして、この片側斜板式圧縮機では、ピストン１９の肉盗部１９ａ内にリブ３３ａが設けられているとともに、ピストン１９の本体部１９ｃとシュー連結部１９ｂとの間にもリブ３３ｂが設けられているため、ピストン１９の本体部１９ｃの強度を補強している。特に、これらリブ３３ａ、３３ｂは、圧縮応力、慣性力及び曲げモーメントを最も受けるシュー連結部１９ｂの近傍に設けられているため、この効果が大きい。さらに、このピストン１９は、比較的脆弱になりやすい両開口１９ｄ間にリブ３３ｂを設けているため、十分な強度を確保している。
【００２３】
したがって、本実施形態の片側斜板式圧縮機では、ピストン１９の肉盗部の利点である軽量化を実現しつつ、過酷な運転条件下の耐久性を向上させることができる。
【００２４】
また、図４に示すように、ピストン１９の肉盗部１９ｄはシュー連結部１９ｂの左右に開く開口１９ｄを有している。このため、このピストン１９が軸方向に分割されたパーツを溶接して得られるものである場合でも、このピストン１９は、それら開口１９ｄにより溶接の際のバリを肉盗部１９ａ外に排出しやすく、肉盗部１９ａ内に残さないようにしやすい。このため、異音の発生も防止できるとともに、運転中にバリがクランク室８内に排出されることによる不具合も防止できる。
【００２５】
さらに、こうして分割したパーツを溶接する際、両開口１９ｄが内部の肉盗部１９ａを外部と連通させていることから、内部を完全な中空部とする場合の内部の空気の膨張による溶接欠陥を懸念する必要がないため、真空中での溶接が不要となり、簡易な製造性も確保し、製造コストの低廉化を実現できる。
【００２６】
（実施形態２）
実施形態２の片側斜板式圧縮機では、図５に示すように、ピストン１９の肉盗部１９ａ内にはシュー連結部１９ｂ側で径方向に延在する板状のリブ３５が設けられている。また、図６に示すように、本体部１９ｃとシュー連結部１９ｂとの間には一対の開口１９ｄ間で外側に位置して外方に広がる二股形状のリブ３６が設けられている。他の構成は実施形態１と同様である。
【００２７】
かかる片側斜板式圧縮機においても、実施形態１と同様の作用効果を奏することができる。
【００２８】
（実施形態３）
実施形態３の片側斜板式圧縮機では、図７及び図８に示すように、ピストン１９の肉盗部１９ａ内に、シュー連結部１９ｂ側で径方向に延在する板状のリブ３５が設けられているとともに、内周面とリブ３５の後端面とに接する三角形状のリブ３３ａが一対設けられている。他の構成は実施形態１と同様である。
【００２９】
かかる片側斜板式圧縮機においても、実施形態１と同様の作用効果を奏することができる。
【００３０】
なお、上記実施形態１〜３では空部が肉盗部１９ａである場合について説明したが、空部が密閉状の中空部である場合にも本発明を適用することは可能である。
【００３１】
【図面の簡単な説明】
【図１】実施形態１〜３に係る片側斜板式圧縮機の全体縦断面図である。
【図２】実施形態１に係るピストンの側面図である。
【図３】実施形態１に係るピストンの縦断面図である。
【図４】実施形態１に係るピストンの正面を示し、図３のＩＶ矢視図である。
【図５】実施形態２に係るピストンの縦断面図である。
【図６】実施形態２に係るピストンの正面を示し、図５のＶＩ矢視図である。
【図７】実施形態３に係るピストンの縦断面図である。
【図８】実施形態３に係るピストンの正面を示し、図７のＶＩＩＩ矢視図である。
【符号の説明】
１ａ…シリンダボア
８…クランク室
７ａ…吸入室
７ｂ…吐出室
１、２、７…ハウジング（１…シリンダブロック、２…フロントハウジング、７…リアハウジング）
１９…ピストン
１９ｃ…本体部
ＥＧ…外部駆動源（エンジン）
１２…駆動軸
１６…斜板
１９ａ…空部（１９ａ…肉盗部）
３３ａ、３３ｂ、３５、３６…リブ
１８…シュー
１９ｂ…シュー連結部
１９ｄ…開口
Claims (8)
- 内部にシリンダボア、クランク室、吸入室及び吐出室を区画形成するハウジングと、該シリンダボア内に往復動可能に収容されたピストンと、外部駆動源により駆動され、該ハウジングに回転可能に支承された駆動軸と、該駆動軸に対して同期回転可能に支承され、該ピストンを従動させる斜板とを備え、該ピストンの該シリンダボアの内周面と摺接する本体部には、軽量化を実現する空部が形成された片側斜板式圧縮機において、
前記ピストンと前記斜板との間には前後で対をなすシューが設けられ、
該ピストンは各該シューを連結するシュー連結部を有し、
前記ピストンは前記本体部を補強するリブを有し、
前記本体部は内部に空部を有する円筒壁を有し、
前記リブは、シュー連結部側の端面及び前記円筒壁の内周面に接するように設けられていることを特徴とする片側斜板式圧縮機。 - 内部にシリンダボア、クランク室、吸入室及び吐出室を区画形成するハウジングと、該シリンダボア内に往復動可能に収容されたピストンと、外部駆動源により駆動され、該ハウジングに回転可能に支承された駆動軸と、該駆動軸に対して同期回転可能に支承され、該ピストンを従動させる斜板とを備え、該ピストンの該シリンダボアの内周面と摺接する本体部には、軽量化を実現する空部が形成された片側斜板式圧縮機において、
前記ピストンと前記斜板との間には前後で対をなすシューが設けられ、
該ピストンは各該シューを連結するシュー連結部を有し、
前記ピストンは前記本体部を補強するリブを有し、
前記本体部は内部に空部を有する円筒壁を有し、
前記リブは、シュー連結部及び前記本体部に接するように設けられていることを特徴とする片側斜板式圧縮機。 - 空部は肉盗部又は中空部であることを特徴とする請求項１又は２記載の片側斜板式圧縮機。
- 肉盗部はピストンにおけるシュー連結部の左右に開く開口を有し、リブは両該開口間に形成されていることを特徴とする請求項３記載の片側斜板式圧縮機。
- クランク室内の圧力と吸入圧力との差圧に応じてピストンのストローク及び斜板の傾斜角が変化することにより圧縮容量が制御されるものであることを特徴とする請求項１、２、３又は４記載の片側斜板式圧縮機。
- 前記リブは前記シュー連結部側で径方向に延在するように設けられている請求項１に記載の片側斜板式圧縮機。
- 前記リブは前記シュー連結部の径方向の対称位置に設けられている請求項２に記載の片側斜板式圧縮機。
- 前記リブは、前記シュー連結部側で径方向に延在する板状のリブと、前記内周面と該板状のリブの端面とに接する三角形状のリブとからなる請求項１に記載の片側斜板式圧縮機。
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