JP3862028B2 - クラリスロマイシンの精製法 - Google Patents
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Description
両化合物間の構造的相違は、マクロラクトンの6位ヒドロキシル基のメチル化の有無にある。この変形によって、エリスロマイシンAの胃酸による不活性化、及びその後の吸収低下という欠点が回避される(ナカガワ、Y.、イタイ、S.、ヨシダ、T.、ナガイ、T.、Chem.Pharm.Bull.1992、40巻、725〜728ページ)。
この化合物は、ワタナベら(大正製薬)によって、EP41,355(US4,331,803)に初めて開示された。
例えば、この化合物は、2′−O−3′−N−ジベンジルオキシカルボニル−デス−N−メチル−エリスロマイシンA誘導体のメチル化によって製造できる(US4,331,803)。
また、化合物(1)は、エリスロマイシンA 9−オキシム(2)誘導体からも製造されている(US5,274,085、US4,680,386、US4,668,776、US4,670,549、US4,672,109、EP0260938公開公報、WO00/31099)。
この保護は、2−アルケニル基(US4,670,549及び4,668,776)、ベンジルまたは置換ベンジル基(US4,680,386及び4,670,549)、低級アルキルまたは置換アルキル,低級アルケニル,メチル置換基を有するアリール,置換オキサリル及び置換チオメチル基(US4,672,109)、トリアルキルシリル基(国際出願PCT/US97/01955)、1,3−ベンゾジチオール−2−イル(WO00/31099)等の種々の基によって行われる。
1.粗6−O−メチル−エリスロマイシンAの精製法であって、水と混合可能な溶媒及び水に溶かした粗6−O−メチル−エリスロマイシンA溶液に、無機酸を加えた後、チオシアン酸アンモニウムとの反応によって6−O−メチル−エリスロマイシンAのチオシアネート塩を形成し、その後6−O−メチル−エリスロマイシンAを結晶II型としてアルカリ性媒体中に放出させる精製法、
2.前記チオシアン酸アンモニウムとの反応が、チオシアン酸アンモニウム溶液を加えることによって行われる1の精製法、
3. 6−O−メチル−エリスロマイシンAが、水と混合可能の溶媒及び水との混液中で無機塩基の添加によって、そのチオシアネート塩から遊離する1又は2の精製法
を提供する。
この精製法は、公知のあらゆる合成法によって生産される粗クラリスロマイシンに適用できる。
本発明においては、化合物(2)またはその塩酸塩を出発原料として、6−O−メチル−エリスロマイシンAを合成することが好ましい。
その際、C9オキシムのヒドロキシル基を、窒素含有アリール基のハロゲン化誘導体と反応させる。これにより、9−O−アリール誘導体が生成し、次にその2'及び4''位がトリアルキルシリル基で保護され、続いてC6位ヒドロキシルの選択的アルキル化が行われる。その後、前記6−O−メチレートを単一段階で脱シリル化及び脱オキシム化すると、6−O−メチル−エリスロマイシンAが生成する。アルキル化剤がメチル化剤である場合は、生成産物はクラリスロマイシンである。
なお、この精製法は、その他のいかなる公知の合成法によって生産される粗クラリスロマイシンにも適用できる。
エリスロマイシンA 9−O−アリールオキシムは、化合物(2)またはその塩酸塩と、以下の二つのうちのどちらかの式から誘導される化合物である窒素含有アリール基のハロゲン化誘導体とによって製造される。
概してこれらの化合物はエリスロマイシンAから出発して製造される。エリスロマイシンAを塩酸ヒドロキシルアミン及び塩基と反応させるか、メタノール中でヒドロキシルアミンと反応させるか、またはヒドロキシルアミン及び有機酸と反応させる。結晶化条件によって、上記の二化合物のいずれかが分離できる。
エリスロマイシンA及び置換O−アリールヒドロキシルアミンを、少なくとも1個の窒素を含む複素環と反応させ、対応するエリスロマイシンA 9−O−オキシム誘導体を作ることも可能である。
第三段階では適切なメチル化剤の使用によってC6ヒドロキシルのアルキル化が選択的に行われる。
であり、X、Y及びZの少なくとも1つは(E)で示されるエリスロマイシンA オキシム基である。〕
酸素原子の保護基は、公知の方法を使用して導入される。例えば、Et3N、ピリジンまたはイミダゾール等の有機塩基の存在下で、化合物(4)と塩化トリメチルシリル等のシリル化剤とを反応させることで、2'位−及び4''位−ヒドロキシルにトリメチルシリルが導入され、下記式で表される2',4''−O−ビス(トリメチルシリル)−9−O−(2−ピリミジル)エリスロマイシンA オキシムが生成する。
メチル化により、下記式(5)で表されるエリスロマイシンA 2',4''−ビス(トリメチルシリル)−6−O−メチル−9−O−(2−ピリミジル)オキシムAが得られる。
第二段階において、化合物4を適切なシリル化剤(例えば、塩化トリメチルシリルおよび/またはトリメチルシリルイミダゾール)と反応させ、エリスロマイシンA 2',4''−ビス−トリメチルシリル−9−O−(2−ピリミジル)オキシム誘導体(化合物6)を形成する。
第四段階において、化合物5を40%亜硫酸水素ナトリウム水溶液と共にアルコール(エタノール等)中で還流することによって、2'位−及び4''位−のシリル基、並びに9−O−(2−ピリミジル)オキシムを除去し、粗6−O−メチル−エリスロマイシンA オキシムが回収される。
また、この方法のその他の利点は、一般的市販の試薬を使用し、緩和な条件で単一段階においてクラリスロマイシンを脱保護できることである。
医薬品の厳しい品質条件に達するために必要なその後の精製段階は、マクロライドの世界では既に知られているチオシアネート塩等の中間体を使用するという点で革新的なものである。この方法では中間体チオシアネートを最初に簡単かつ安全に分離することができ、最終的に高純度のクラリスロマイシンに導くことができる。
この最後の段階によって、結晶化過程中に、II型クラリスロマイシンとして知られる構造を有するクラリスロマイシンが生成する。
不活性気流下、室温で、カリウムt−ブトキシド3.6gを蒸留ジメチルホルムアミド(DMF)75mL中エリスロマイシンA オキシム20gの溶液に激しく撹拌しながら加える。この混合物が均質になったとき、DMF15mL中に2−クロロピリミジン4.38gを溶かした溶液を加える。混合物をアルゴン気流下で12〜24時間、80℃に加熱する。TLC(薄層クロマトグラフィー)(CH2Cl2:MeOH:NH4OH 20:1:0.1)プレートが反応の終点を示す(出発生成物Rf≒0.4;2−ピリミジン誘導体Rf≒0.6)。これを氷で冷やし、撹拌しながら水150mLで処理する。15分後、沈殿物を濾過し、生成した固体を沸騰水100〜150mLで処理する。その後上記固体が溶解するまで少量のエタノールを加える。熱溶液を速やかに濾過し、濾液を静置して沈殿させると9−O−エリスロマイシンA(2−ピリミジル)オキシム18〜20gが得られる。その構造をNMR及び質量スペクトルによって確認する。
13C−NMR(75MHz、CDCl3):δ 177.6(C−9)、175.6(C−1)、165.6(2C3''')、159.5(C1''')、116.5(C−4''')、103.3(C−1')、96.2(C−1'')、83.6(C−5)、79.8(C−3)、77.9(C−4'')、77.1(C−13)、74.9(C−6)、74.4(C−12)、72.6(C−3'')、70.9(C−2')、70.0(C−11)、68.8(C−5')、65.4(C−3')、65.4(C−5'')、49.5(C−3''CH3)、44.8(C−2)、40.4(C3'N−(CH3)2)、39.3(C−4)、37.7(C−7)、35.0(C−2'')、34.0(C−8)、28.7(C−4')、28.0(C6CH3)、26.8(C−7)、21.4(C−5'CH3)、21.3(C−3''CH3)、21.2(C13CH2CH3)、18.6(C−5''CH3)、18.3(C−8CH3)、16.3(C−12CH3)、15.9(C−2CH3)、14.9(C−10CH3)、10.6(C13CH2 CH3)、9.0(C−4C−H3).
MS(m/z):L−SIMS 849〔M+Na+〕.
100mL丸底フラスコ中、不活性気流下で、エリスロマイシン オキシム塩酸5g溶液(6.37mmol)を乾燥THF25mL中に入れる。カリウムt−ブトキシド1.78g(15.9mmol)を激しく撹拌しながら加える。均質溶液が得られたならば、2−クロロピリミジン1.81gを乾燥THF5mLに溶かした溶液を加える。生成した溶液を50〜60℃で20時間加熱する。反応をTLCによってコントロールする(合成例1を参照)。必要な反応時間後、溶媒を除去すると黄色固体が生成する。それを約30mLの水で沸点で処理する。少量の、ほとんど全ての固体が溶解するのに十分なエタノール(5mL)を加え、それを濾過し、母液を冷まして生成物を結晶させる。白色固体4〜5gが生成し、そのNMR及び質量スペクトルは、実施例1で生成した化合物のそれらと一致する。
9−O−(2−ピリミジル)エリスロマイシンA オキシム10gをジクロロメタン50mLに溶かした溶液を、不活性気流下で0〜5℃に冷やす。上記溶液を撹拌し、無水硫酸マグネシウム2gを加える。ジクロロメタン中シリル化剤の溶液60mL(塩化トリメチルシリル18.6g及びトリメチルシリルイミダゾール24g)を、室温で一晩撹拌した反応混合物に加える。TLC(CH2Cl2:MeOH 10:1)プレートは反応の終わりを示す(出発生成物Rf≒0.3;ビス−トリメチルシリル誘導体Rf≒0.6)。
水100mLを加え、有機相を分離する。水相をジクロロメタン10mLで洗い、有機相を無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、濃縮すると、2',4''−O−ビス(トリメチルシリル)−9−O−(2−ピリミジル)エリスロマイシンA オキシム10〜12gが得られる。その構造をNMR及び質量スペクトルによって確認する。
13C−NMR(75MHz、CDCl3):δ 177.1(C−9)、176.0(C−1)、165.6(2C3''')、159.6(C1''')、116.3(C−4''')、102.8(C−1')、96.3(C−1'')、81.7(C−5)、80.8(C−4'')、79.3(C−3)、77.1(C−13)、75.3(C−6)、74.3(C−12)、73.3(C−2')、73.1(C−3'')、69.9(C−11)、67.7(C−5')、65.1(C−3')、64.9(C−5'')、49.7(C−3'''CH3)、44.7(C−2)、40.9(C3'N−(CH3)2)、40.2(C−4)、38.3(C−10)、35.7(C−2'')、34.2(C−8)、29.6(C−4')、27.9(C6CH3)、26.9(C−7)、22.1(C−3''CH3)、21.7(C−5'CH3)、21.3(C13CH2CH3)、19.1(C−5''CH3)、18.6(C−8CH3)、16.3(C−12CH3)、15.5(C−2 CH3)、14.8(C−10CH3)、10.7(C13CH2 CH3)、9.6(C−4CH3)、0.98(Si(CH3)3)、0.79(SiCH3)3.
MS(m/z):L−SIMS 971〔MH+〕.
粉末水酸化カリウム1.3gとヨウ化メチル3g(1.3mL)とを、2',4''−O−ビス(トリメチルシリル)−9−O−(2−ピリミジル)エリスロマイシンAオキシム 10gをテトラヒドロフラン(THF)40mL及びジメチルスルホキシド(DMSO)50mLに溶かした氷冷溶液に加え、この混合物を室温で6時間撹拌する。トリエチルアミン(1.5mL)を加え、さらに30分間撹拌した後、ヘプタン100mLを加える。DMSOを含む相を分離し、ヘプタン100mLで3回抽出する。合一したヘプタン抽出液を水100mL、ブライン100mLで洗い、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮すると、粗2',4''−O−ビス(トリメチルシリル)−6−O−メチル−9−O−(2−ピリミジル)エリスロマイシンA オキシムが6〜7.5g得られる。これをさらに精製することなく、次の段階に使用する。その構造をNMR及び質量スペクトルによって確認する。
13C−NMR(75MHz、CDCl3):δ 175.9(C−9)、176.0(C−1)、165.9(2C3''')、159.5(C1''')、116.0(C−4''')、102.5(C−1')、96.2(C−1'')、80.8(C−5)、80.8(C−4'')、79.1(C−3)、77.9(C−13)、76.9(C−6)、74.3(C−12)、73.3(C−2')、73.1(C−3'')、70.1(C−11)、67.1(C−5')、65.2(C−3')、65.2(C−5'')、50.9(C−6OCH 3)、49.7(C−3''CH3)、45.3(C−2)、41.0(C3'N−(CH3)2)、39.2(C−4)、38.3(C−10)、35.8(C−2'')、34.1(C−8)、27.9(C6CH3)、22.2(C−3''CH3)、21.9(C−5'CH3)、21.2(C13CH2CH3)、19.4(C−5''CH3)、18.7(C−8CH3)、16.3(C−12CH3)、16.1(C−2CH3)、15.1(C−10CH3)、10.6(C13CH2 CH3)、9.8(C−4CH3)、1.08(Si(CH3)3)、0.91(SiCH3)3.
MS(m/z):L−SIMS 985〔MH+〕.
前段階で製造した生成物(5g)を、水とエタノールとの1:1混液に溶解し、亜硫酸水素ナトリウム40%水溶液5.3gを加える。生成した混合物を80℃で6時間撹拌し、水50mLで希釈し、室温で冷まし、ジクロロメタン50mLで3回抽出する。合一した有機抽出物を無水炭酸カリウム上で乾燥し、溶媒を蒸発すると粗6−O−メチル−エリスロマイシンA生成物が3〜3.5g得られる。その構造はNMR及び質量スペクトルによって確認される。
13C−NMR(75MHz、CDCl3):δ 221.0(C−9)、175.8(C−1)、102.8(C−1')、96.1(C−1'')、80.7(C−5)、78.4(C−6,C−3)、77.9(C−4'')、76.5(C−13)、74.2(C−12)、72.6(C−3'')、69.0(C−11)、68.7(C−5')、65.7(C−3')、65.5(C−5'')、50.6(C−60CH 3)、49.4(C−3''CH3)、40.2(C3'N−(CH3)2)、39.3(C−7)、38.2(C−10)、34.9(C−2'')、28.6(C−4')、21.4(C−5'CH3,C13CH2CH3,C−3''CH3)、19.7(C−6CH3)、18.6(C−5''CH3)、17.9(C−8CH3)、15.9(C−2CH3,C−12CH3)、12.2(C−10CH3)、10.5(C−5''CH3)、9.0(C−4CH3).
MS(m/z):L−SIMS 748〔MH+〕.
これまでの合成例において製造した粗クラリスロマイシンを、2:1水−メタノール混合物に一部分再溶解する。上記懸濁液を35〜40℃に加熱し、16%HClで徐々にpHを3.5〜4.4に調節する。その後、懸濁固体の完全な溶解が認められる。水5mLに溶解したチオシアン酸アンモニウム0.7gを加え、5%NaOHでpHを6.4〜6.8に調節する。上記混合物を35〜40℃で60分間沈殿させ、沈殿物を濾過し、30〜35℃の水で洗い(3×15mL)、50℃で真空乾燥する。クラリスロマイシン チオシアネート2.5〜3gが得られる。その構造をNMRスペクトルによって確認する。
13C−NMR(75MHz、CDCl3):δ 221.2、176.8、132.7(SCN)、102.0、96.6、81.1、78.7、78.3、77.9、77.0、75.0、73.4、69.7、69.5、67.1、65.7、65.6、50.2、49.0、45.5、45.2、39.4、39.1、38.2、34.9、30.0、20.8、20.6、21.2、19.7、18.4、17.5、15.5、16.1、11.6、10.1、9.0.
これまでの段階で製造したチオシアネート3gを、メタノール15mLに溶解し、その溶液を40℃に加熱する。それを活性炭で漂白し、濾過し、水15mLを加える。15%NaOHでpHを10.0〜10.2に調節する。pHが7.5〜8.0になると、クラリスロマイシンは結晶し始める。この混合物を20〜25℃で2時間静置し、固体を濾過し、25℃の水で洗い(3×12mL)、50℃で真空乾燥する。クラリスロマイシン2.5gが生成する。その構造はNMR及び質量スペクトル、そしてX線粉末回折によって確認される。
13C−NMR(75MHz、CDCl3):δ 221.0(C−9)、175.8(C−1)、102.8(C−1')、96.1(C−1'')、80.7(C−5)、78.4(C−6,C−3)、77.9(C−4'')、76.5(C−13)、74.2(C−12)、72.6(C−3'')、69.0(C−11)、68.7(C−5')、65.7(C−3')、65.5(C−5'')、50.6(C−6OCH 3)、49.4(C−3''CH3)、40.2(C3'N−(CH3)2)、39.3(C−7)、38.2(C−10)、34.9(C−2'')、28.6(C−4')、21.4(C−5'CH3、C13CH2CH3,C−3''CH3)、19.7(C−6CH3)、18.6(C−5''CH3)、17.9(C−8CH3)、15.9(C−2CH3,C−12CH3)、12.2(C−10CH3)、10.5(C−5''CH3)、9.0(C−4CH3).
MS(m/z):L−SIMS 748〔MH+〕
X線粉末回折(2θ位置):8.5;9.4;10.7;11.2;11.9;12.3;13.1;13.8;14.1;15.0;15.4;16.3;17.0;17.2;17.5:18.1;19.0;19.9;20.3;21.2;22.2;23.1;25.0.
Claims (3)
- 粗6−O−メチル−エリスロマイシンAの精製法であって、水と混合可能な溶媒及び水に溶かした粗6−O−メチル−エリスロマイシンA溶液に、無機酸を加えた後、チオシアン酸アンモニウムとの反応によって6−O−メチル−エリスロマイシンAのチオシアネート塩を形成し、その後6−O−メチル−エリスロマイシンAを結晶II型としてアルカリ性媒体中に放出させる精製法。
- 前記チオシアン酸アンモニウムとの反応が、チオシアン酸アンモニウム溶液を加えることによって行われる請求項1記載の精製法。
- 6−O−メチル−エリスロマイシンAが、水と混合可能の溶媒及び水との混液中で無機塩基の添加によって、そのチオシアネート塩から遊離する請求項1又は2記載の精製法。
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