JP3682291B2 - オレアノール酸誘導体の製造方法 - Google Patents
オレアノール酸誘導体の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は式(I):
【化2】
(式中、XおよびYは、いずれか一方が水素であって他方が保護されていてもよいヒドロキシであるか、一緒になって保護されていてもよいカルボニルを形成し、R1はヒドロキシまたはアミノを表す)
で示されるオレアノール酸誘導体(以下、化合物(I)という)の新規な製造方法および
【化3】
で示されるトリテルペン誘導体の製造の際に用いられる有用な試薬に関する。
【0002】
【従来技術と発明が解決すべき課題】
化合物(I)は、ヒトまたは動物のための医薬を含む、様々な化合物の合成における中間体として有用であり、例えば、エンドセリン受容体拮抗物質である下記の式(III):
【化4】
[式中、R4は水素または代謝性エステル残基、R5は水素または−R6−R7を表す。但し、R6はSO3、CH2COO、COCOOまたはCOR8COO(R8は低級アルキレンまたは低級アルケニレン)、R7は水素または代謝性エステル残基を表す。]
で示されるトリテルペン誘導体の製造中間体である。このトリテルペン誘導体(III)は、血管収縮作用を有する内皮細胞由来のペプチドであるエンドセリンの受容体拮抗剤であり、従って、エンドセリンの過剰分泌に起因する様々な疾患の治療または予防に特に有効である(特許文献1および特許文献2参照)。そのような疾患の例として、高血圧、虚血性心疾患、脳循環障害、腎障害、諸臓器の循環不全、喘息などを挙げることができる。
【0003】
このトリテルペン誘導体(III)は、ミリセロンまたはミリセロール(本明細書中、それぞれ、式(I)において、XおよびYが一緒になってカルボニルを表し、R1がヒドロキシである化合物、並びにXおよびYの1方がヒドロキシで他方が水素であり、R1がヒドロキシである化合物を意味するものとする)から、特許文献1および特許文献2記載の方法で製造することができる。例えば、ミリセロンに、ジメチルホスホノ酢酸を反応させて式(IV):
【化5】
で示される化合物を得、該化合物と式(V):
【化6】
(式中、R5は上記と同意義であり、R9はBoc(t−ブトキシカルボニル基)などのフェノール保護基または水素原子を表す)
で示されるアルデヒドをホーナーエモンズ反応の反応条件下で縮合させ、脱保護および/または化学修飾を行うことで製造することができる。
【0004】
従来、ミリセロン等の式(I)で示される化合物は、シロコヤマモモ(Myrica cerifera)から抽出して得られる、ミリセロンまたはミリセロールの誘導体を化学修飾することにより製造されていた。即ち、シロコヤマモモの枝をメタノール等の極性溶媒で数日間抽出し、さらに、抽出物を水と混和しないクロロホルム等の有機溶媒を用いて抽出し、得られた抽出物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−で分離し、得られた物質をさらに化学修飾することにより、式(I)の化合物を製造していた。このように従来法は極めて繁雑な工程を要するために、目的物質の収率は極めて低かった。従って、ミリセロンおよびミリセロール等の式(I)で示される化合物を、市販品又は、容易に入手可能な原料物質よりの効率良く製造する方法の開発が強く望まれていた。
【0005】
【特許文献1】
WO92/12991
【特許文献2】
特願平5-140416号
【非特許文献1】
新実験化学講座15「酸化と還元II」第1章、第165頁(1976年)
【非特許文献2】
有機化学実験のてびき[3]合成反応(I)東京化学同人(1990年)40−42頁
【非特許文献3】
Tetrahedron, Supplement No. 7, pp.57-67 (1965)
【非特許文献4】
Chem.Pharm.Bull.28 2515(1980)
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ある種のラクトンをBirch反応の条件下で還元することにより、容易に目的の化合物(I)を効率良く製造することができることを見いだした。さらに、得られた(I)をジメチルホスホノ酢酸等と反応させ、次いである種のアルデヒド化合物と反応させることにより化合物(III)を効率良く製造することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は化合物(I)の新規な製造方法であって、式(II):
【化7】
(式中、XおよびYは、いずれか一方が水素であって他方が保護されていてもよいヒドロキシであるか、一緒になって保護されていてもよいオキソを形成し、R2は酸素、保護されていてもよいヒドロキシイミノまたは保護されていてもよいイミノ、R3はエステル型ヒドロキシ保護基を表す)
で示される化合物を、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を用い、アミン溶液中で還元することを特徴とする方法を提供するものである。
【0008】
さらに本発明は、化合物(III)を製造するために、化合物(I)とジメチルホスホノ酢酸等とを反応させることにより得られた生成物との反応に用いられる、式(V):
【化8】
(式中、R5は−R6−R7を表し、R9は水素原子を表す。但し、R6はSO3、CH2COO、COCOOまたはCOR8COO(R8は低級アルキレンまたは低級アルケニレン)、R7は水素または代謝性エステル残基を表す。)
で示されるアルデヒド化合物を提供するものである。
上記の化合物(V)は化合物(III)の効率的な製造に有用である。
【0009】
本発明方法に用いられる保護基について説明する。
【0010】
XまたはYにおけるヒドロキシ保護基としては、還元反応に悪影響を及ぼさないものであれば還元中に脱保護されるものであってもよく、公知のヒドロキシ保護基を幅広く使用でき、アラルキル(メトキシベンジル、ニトロベンジル、2,4−ジメトキシベンジル、トリチル等)、アルキルカルボニル(アセチル、ハロゲン化アセチル、ピバロイル、ホルミル、シクロヘキシルアセチル等)、アリールカルボニル(ベンゾイル、トルオイル、キシリル、インダニル等)、アルコキシカルボニル(メトキシカルボニル、ヒーブトキシカルボニル、シクロプロポキシカルボニル等)、アルケニルオキシカルボニル(プロペニルオキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル(フェノキシカルボニル等)、アラルキルオキシカルボニル(ニトロベンジルオキシカルボニル等)、シリル型(トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、ジメチルフェニルシリル、トーブトキシジフェニルシリル等)およびエーテル型(アルキルエーテル、アリールエーテル、アラルキルエーテル、メトキシメチル、テトラヒドロフラニル等)等が例示される。好ましくは、アセチル等のアルカノイルである。
尚、該ヒドロキシ部分は本還元反応を行うに当たって、保護されていなくても何等不都合はない。
【0011】
XおよびYにおける、保護されていてもよいオキソにおける保護基としては、還元反応に悪影響を及ぼさないものであれば公知のカルボニル保護基を幅広く使用できるが、好ましくは、還元反応中に脱保護されず反応後に公知の方法により容易に脱保護されるものであり、ジアルキルアセタール型(ジメチルアセタール、ジエチルアセタール等)、アルキレンジオキシ型(エチレンジオキシ、プロピレンジオキシ等)およびアルキレンジチオ型(エチレンジチオ、プロピレンジチオ等)等が例示され、特に好ましくは、アルキレンジオキシ型である。
尚、XおよびYが保護されていないオキソである場合には、本反応によりヒドロキシに還元された化合物(I)の三位ヒドロキシ体が主生成物として得られる場合があるが、該ヒドロキシ体は、例えば、特願平5−140416号に記載の方法により容易に三位オキソ体に変換することが出来る。
R2におけるヒドロキシイミノの保護基としては、還元反応に悪影響を及ぼさないものであれば還元中に脱保護されるものであってもよく、前記ヒドロキシ保護基のうち、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、エーテル型が挙げられる。該ヒドロキシ部分は本還元反応を行うに当たって保護されていなくても何等不都合はない。
【0012】
R2におけるイミノの保護基としては、還元反応に悪影響を及ぼさないものであれば還元中に脱保護されるものであってもよく、公知のイミノ保護基を幅広く使用できるが、好ましくはアルキル(エチル、t−ブチル等)である。
R3におけるエステル型ヒドロキシ保護基としては、還元反応により容易に離脱してかつ反応に悪影響を及ぼさないものでなければならず、前記ヒドロキシ保護基のうちアルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニルが挙げられる。
尚、本還元反応後、化合物(I)に上記いずれかの保護基が残存する場合には、所望により、当業者に周知の方法により脱保護することが出来る。
本還元反応に係る化合物(I)及び(II)は、トリテルペン類の中でもβ−アミリン型の骨格を有する。本反応においては、Birch反応条件を利用することにより、化合物(II)の27位側鎖並びに12位及び13位部分を1工程で還元でき、化合物(I)を高収率で得ることが出来る。
【0013】
Birch反応は、通常アミン溶液中、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を用いて行う還元反応であり、その反応条件は当業者に既知であって、多くの文献に記載されている(例えば、非特許文献1および2参照)。
即ち、Birch還元に用いられるアルカリ金属またはアルカリ土類金属としては、リチウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、を挙げることができ、本発明方法においては、リチウム、ナトリウム、カルシウムが好ましい。 アミン溶液としては液体アンモニアまたはメチルアミン、エチルアミン、エチレンジアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン等のモノ又はジ低級アルキルアミンを用いることができ、本発明方法においては、液体アンモニアが特に好ましい。
【0014】
通常、2当量以上のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の存在下、所望により、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノールなどのプロトン供与体(アニオン捕捉剤)の存在下で、好ましくは無水条件下で反応させる。本発明方法においては、プロトン供与体として、無水エタノールが特に好ましい。 反応溶媒としては、アミン溶液だけでもよいが、所望によりエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどの補助溶媒を併用しても良い。反応温度は、通常、氷冷下〜−100℃、好ましくは−50〜−80℃である。
反応後、減圧濃縮し、中和し、有機溶媒で抽出し、乾燥、濃縮し、シリカゲル、アルミナ等のカラムクロマトグラフィーで精製することにより、目的化合物(I)を得ることができる。
【0015】
式(II)で示されるラクトンは、例えば、オレアノール酸等を出発原料に当業者既知の方法(例、非特許文献3参照)に従って製造することができる。
なお、式(II)において、XおよびYのいずれか一方が水素であって他方が保護されていてもよいヒドロキシであり、R2がオキソ、保護されていてもよいヒドロキシイミノまたは保護されていてもよいイミノ、R3が水素またはエステル型ヒドロキシ保護基である化合物は新規であり、本発明の製造方法の有用な中間体である。
本発明方法によれば、従来法と比較して用いる溶媒の量が格段に少なく、工程も簡単であるために、時間、労力の節約が可能となり、しかも化合物(I)を高収率で得ることができるので、最終目的物質の製造効率を飛躍的に向上し得る。従って、本発明の方法は、式(I)で示される任意の化合物を用いる製造工程の効率の改善に広く有用である。
【0016】
【実施例】
以下に実施例を挙げ、本発明を詳しく説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。
参考例1 ミリセロンの製造
【化9】
【化10】
【0017】
1) 化合物2の合成
オレアノール酸1(10.0g、21.9mmol)をクロロホルム(150ml)−アセトン(500ml)混液に溶解し、氷冷下、Jones試薬((CrO3/アセトン/H2SO4)16ml、42.7mmol)を加え、30分攪拌する。2−プロパノール(2.0ml)を加え、過剰の試薬を分解した後、水(50ml)を加え減圧下に濃縮する。残渣を酢酸エチル(200ml×2)で抽出し、食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下に溶媒を留去して結晶性の粗生成物2を得た。収量9.95g(21.9mmol)、収率100%。
化合物2:
TLC Rf=0.43(ヘキサン/酢酸エチル=2/1)
1H NMR(CDCl3)δppm; 0.81(3H,s),0.91(3H,s),0.93(3H,s),1.03(3H,s),1.05(3H,s),1.08(3H,s),1.14(3H,s),2.84(1H,dd,J=13.0,4.0Hz),5.30(1H,dd,J=3.5,3.5Hz)
【0018】
2) 化合物3の合成
粗生成物2(9.95g、21.9mmol)を塩化メチレン(300ml)−メタノール(30ml)混液に溶解し、−60℃以下に冷却する。オゾンガスを溶液が紫色に着色するまで導入する。次いで、窒素ガスをバブリングさせ過剰のオゾンを除去後ジメチルスルフィド(2.0ml)を加え室温で1時間攪拌した。減圧下溶媒を留去し、残渣を2−プロパノールより結晶化させ化合物3を得た。収量9.24g(19.7mmol)、収率90%。
化合物3:
TLC Rf=0.42(塩化メチレン/酢酸エチル=9/1)
1H NMR(CDCl3)δppm; 0.91(3H,s),0.99(6H,s),1.05(3H,s),1.10(3H,s),1.19(3H,s),1.32(3H,s),3.91(1H,br s)
【0019】
3) 化合物4の合成
化合物3(3.24g、6.9mmol)を乾燥ピリジン(50ml)に溶解し、−40℃に冷却する。ニトロシルクロライド(1.81g、27.6mmol)を窒素ガスと共に導入し、同温度にて30分間攪拌した。氷水(100ml)を加え、析出晶を吸引濾取し、水(40ml×2)で洗浄した後、減圧乾燥を行ない粉末状の化合物4を得た。収量3.40g(3.40mmol)、収率99%。
化合物4:
TLC Rf=0.76(塩化メチレン/酢酸エチル=9/1)
1H NMR(CDCl3)δppm; 0.77(3H,s),0.95(3H,s),1.01(3H,s),1.06(3H,s),1.11(3H,s),1.17(3H,s),1.28(3H,s),5.64(1H,dd,J=3.5,2.0Hz)
【0020】
4) 化合物5の合成
化合物4(20.0g,40.1mmol)の乾燥塩化メチレン(1.00L)溶液に窒素ガスを10分間バブリングを行った後、氷冷する。同温度にて窒素バブリング下、高圧水銀ランプ(450W)を1時間20分照射した。反応液は減圧下溶媒を留去し、残渣に1,2−ジクロロエタン(200ml)を加え1.5時間加熱還流した。室温に放冷ののち、析出晶を吸引濾取し粗生成物(10.6g)を得た。このものを1,2−ジクロロエタン(80ml)に懸濁し、加熱した後室温まで放冷した。析出晶を濾取し、無定形の粉末として化合物5を得た。収量9.41g(18.8mmol)、収率47%。
化合物5:
TLC Rf=0.11(塩化メチレン/酢酸エチル=9/1)
1H NMR(CDCl3)δppm; 0.90(3H,s),0.95(3H,s),0.98(3H,s),1.03(3H,s),1.07(3H,s),1.26(3H,s),3.88(1H,br d,J=6.0Hz)4.20(1H,br d,J=6.0Hz),7.60(1H,s),8.12(1H,s)
【0021】
4) 化合物6の合成
化合物5(20.0g,40mmol)のジオキサン(300ml)溶液に酢酸アンモニウム(40.0g,519mmol)、50%酢酸水溶液(60ml)を加え、氷冷下、三塩化チタン水溶液(96ml)を滴下する。室温で2時間攪拌後、氷水(500ml)−酢酸エチル(800ml)混液にあけ、炭酸水素ナトリウム(270g)にて中和した。有機層を分液し、水層は酢酸エチル(600ml)で再抽出し、それぞれの有機層を食塩水で洗浄した後無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、残渣を酢酸エチルから結晶化させ粉末状の化合物6を得た。収量16.1g(33mmol)、収率83%。
化合物6:
TLC Rf=0.20(n−ヘキサン/酢酸エチル=1/1)
1H NMR(CDCl3)δppm; 0.89(3H,s),0.92(3H,s),0.99(3H,s),1.02(3H,s),1.05(3H,s),1.30(3H,s),3.76(1H,br d,J=10.3Hz),6.99(1H,br d,J=10.0Hz),8.11(1H,br d,J=14.8Hz)
【0022】
5) 化合物8の合成
化合物6(25.37g,53mmol)を1,4−ジオキサン(500ml)に懸濁し、亜硝酸ナトリウム(36.2g,525mmol)と酢酸ナトリウム(36.2g,441mmol)を加え、攪拌下15℃で50%酢酸水溶液(150ml)を20分間で滴下した。室温下、40分攪拌後、反応液を減圧濃縮し、残渣に酢酸エチル(260ml)と水(300ml)を加え、次いで炭酸ナトリウム(67g)にて中和した。混合物を酢酸エチル(400ml×2)で抽出し、酢酸エチル層を食塩水で洗浄の後、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去して化合物7(副生成物)と新規化合物8との混合物(28.2g)を得た。
この混合物をテトラヒドロフラン−メタノール混液(3:2、280ml)にて加温溶解し、室温下、2mol/l水酸化カリウム水溶液(20ml)を加え40分攪拌した。反応液を2N塩酸水溶液(10ml)で中和した後減圧濃縮し、残渣を塩化メチレン(200ml,100ml)で抽出した。有機層を食塩水で洗浄の後、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去し、残渣を2−プロパノールより結晶化させ化合物8を得た。収量22.9g(47mmol)、収率90%。
化合物7:
TLC Rf=0.53(n−ヘキサン/酢酸エチル=1/1)
化合物8:
TLC Rf=0.40(n−ヘキサン/酢酸エチル=1/1)
1H NMR(CDCl3)δppm; 0.90(3H,s),0.94(3H,s),0.98(3H,s),1.02(3H,s),1.06(3H,s),1.26(3H,s),3.55(1H,d,J=8.5Hz),3.94(1H,br d,J=8.5Hz),10.01(1H,s)
【0023】
6) 化合物9の合成
化合物8(25.0g,52mmol)のトルエン(500ml)懸濁液にエチレングリコール(29ml,520mmol)とピリジウム−p−トルエンスルホン酸(650mg,2.6mmol)を加え、モレキュラーシーブを充填した脱水装置を付して1時間加熱還流した。反応液は冷後、トルエン(250ml)で希釈し、水(250ml)および食塩水(200ml)で順次洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去して結晶性の粗生成物9を得た。収量27.13g(51mmol)、収率99%。
化合物9:
TLC Rf=0.38(塩化メチレン/酢酸エチル=9/1)
1H NMR(CDCl3)δppm; 0.79(3H,s),0.89(3H,s),0.90(3H,s),0.94(6H,s),1.21(3H,s),3.26(1H,d,J=7.5Hz),3.94(5H,m),10.03(1H,s)
【0024】
7) 化合物10の合成
化合物9(25.4g,48mmol)の乾燥ピリジン(80ml)溶液に無水酢酸(20ml,200mmol)と4−ジメチルアミノピリジン(290mg,2.4mmol)を加え、60℃で30分攪拌した。反応液は冷後、氷水(500ml)を加え、析出晶を吸引濾取し、水(100ml×3)で洗浄した後、風乾した。粗生成物をメタノール(100ml)に懸濁し、60℃で5分加温し室温に放冷した。析出晶を吸引濾取して粉末状の新規化合物10を得た。収量25.93g(45.5mmol)、収率95%。
化合物10:
TLC Rf=0.46(塩化メチレン/酢酸エチル=19/1)
1H NMR(CDCl3)δppm; 0.80(6H,s),0.90(3H,s),0.92(3H,s),0.94(3H,s),1.21(3H,s),2.12(3H,s),3.95(4H,m),5.26(1H,dd,J=2.8,2.8Hz),10.23(1H,s)
【0025】
8) 化合物11の合成
−78℃に冷却した液体アンモニア(300ml)に金属リチウム(1.84g,263mmol)を加え30分攪拌溶解する。この中へ化合物10(30g、53mmol)の無水テトラヒドロフラン(300ml)溶液を45分にて滴下し、同温度にて1時間攪拌した。次いで無水エタノール(15ml)を滴下し、室温に放置してアンモニアを除去した後減圧濃縮する。残渣に水(150ml)および塩化メチレン(400ml)を加え、激しく攪拌下2mol/l塩酸水溶液にてpH4に調整する。有機層を分液し、水層は塩化メチレン(200ml)で再抽出する。それぞれの有機層は水および食塩水で順次洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮する。油状残渣は酢酸エチル−n−ヘキサンより結晶化させ化合物11を得た。
収量23.2g(45mmol)、収率86%
化合物11:
TLC Rf=0.40(塩化メチレン/酢酸エチル=9/1)
1H NMR(CDCl3)δppm; 0.70(3H,s),0.83(3H,s),0.90(3H,s),091(3H,s),0.92(3H,s),0.96(3H,s),2.92(1H,dd,J=13.0,4.0Hz),3.16(1H,d,J=11.8Hz),3.78(1H,d,J=11.8Hz),3.93(4H,br s),5.83(1H,br s)
【0026】
9) 化合物12(ミリセロン)の合成
化合物11(515mg、1mmol)のテトラヒドロン(2.5ml)溶液に2N塩酸(0.5ml)を加え、1時間加熱還流する。この反応液に水(5ml)、塩化メチレン(10ml)を加え攪拌静置後、有機層を分取し、水層は塩化メチレンで再抽出する。それぞれの有機層は、食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮する。残渣は、塩化メチレン−メタノールより結晶化させ、化合物12を得た。収量374mg(0.79mmol)、収率79%。
化合物12:
TLC Rf=0.57(n−ヘキサン/酢酸エチル=1/1)
1H NMR(CDCl3)δppm; 0.79(3H,s),0.94(3H,s),0.98(3H,s),1.03(6H,s),1.11(3H,s),2.3〜2.6(2H,m),2.96(1H,dd,J=13.2,3.8Hz),3.26(1H,d,J=11.8Hz),3.81(1H,d,J=11.8Hz),5.89(1H,br s)
【0027】
参考例2 ミリセロールの製造
【化11】
【化12】
【0028】
1) 化合物2’の合成
原料のオレアノール酸1(32.42g,71mmol)をピリジン(260ml)に溶かし、室温下、無水酢酸(36.2g,355mmol)を滴下する。次いで、4−ジメチルアミノピリジン(867mg,7mmol)を加え、室温下、1時間攪拌する。その後、氷冷下、メタノール(20ml)を流入し、室温で30分攪拌する。水(400ml)を加えてスラリーとし、濾過を行う。得た粗晶を、塩化メチレン(300ml)に再溶解し、1mol/l塩酸(110ml)に加える。有機層を分取し、水層は、塩化メチレンで抽出する。それぞれの有機層を食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮して粗生成物2’を得る。収量35.93g(72mmol)、収率100%
化合物2’:
TLC Rf=0.64(クロロホルム/酢酸エチル=15/1)
1H NMR(CDCl3)δppm; 0.74(s,3H),0.85(s,3H),0.86(s,3H),0.90(s,3H),0.93(s,3H),0.94(s,3H),1.13(s,3H),1.0〜2.0(m,22H),2.05(s,3H),2.82(dd,J=14.0,4.0Hz,1H),4.50(dd,J=7.8,7.8Hz,1H),5.27(br s,1H)
【0029】
2) 化合物3’の合成
粗生成物2’(35.93g,72mmol)を塩化メチレン(360ml)−メタノール(50ml)混液に溶かし、−60℃以下に冷却する。冷却下、オゾンガスを溶液が紫色に変わるまで導入する。次いで、窒素ガスをバブリングさせ、過剰のオゾンを除去(退色)後、濃縮する。容量約200mlまで濃縮したら、イソプロパノール(300ml)を加え再濃縮する。約200ml容量まで濃縮されたスラリーを濾過し、濾さい結晶はイソプロパノール(100ml)で洗浄後、減圧乾燥を行い、粉末の目的化合物を得る。収量31.52g(61.2mmol)、収率85%。
化合物3’:
TLC Rf=0.50(クロロホルム/酢酸エチル=15/1)
1H NMR(CDCl3)δppm; 0.86(s,3H),0.87(s,3H),0.91(s,6H),0.99(s,3H),1.15(s,3H),1.31(s,3H),2.05(s,3H),1.0〜2.3(m,23H),3.88(br s,1H),4.49(m,1H)
13CNMR(CDCl3)δppm; 16.4,16.5,17.6,18.6,21.2,21.3,23.6,23.9,27.5,27.9,28.0,28.7,31.6,33.3,33.9,34.2,36.4,37.8,38.4,39.3,42.0,42.3,44.5,44.7,51.1,55.3,76.0,80.9,90.8,171.2,180.2
【0030】
3) 化合物4’の合成
粉末3’(30.98g,60.2mmol)のピリジン(310ml)溶液を−30〜−40℃に冷却し、ニトロシルクロライド(23.7g,0.36mol)を導入する。1時間攪拌後、氷水(310ml)を加える。生じたスラリーを濾過し、濾さいは水(500ml)で洗浄後、塩化メチレン(200ml)で再溶解する。無水硫酸マグネシウムで乾燥後n−ヘキサン(500ml)を加え、容量約100mlまで濃縮する。生じたスラリーを濾過し、濾さいはn−ヘキサン(150ml)で洗浄後、減圧乾燥を行い、粉末の目的化合物を得る。収量32.09g(59.0mmol)、収率98%。化合物4’:
TLC Rf=0.74(クロロホルム/酢酸エチル=15/1)
1H NMR(CDCl3)δppm; 0.74(s,3H),0.85(s,3H),0.86(s,3H),0.91(s,3H),0.93(s,3H),1.14(s,3H),1.21(s,3H),2.04(s,3H),0.8〜2.4(m,23H),4.47(dd,J=8.0,8.0Hz,1H),5.59((dd,J=3.0,2.2Hz,1H)
【0031】
4) 化合物5’の合成
粉末4’(4.0g,7.4mmol)のトルエン(200ml)溶液に窒素ガスを流通し10分間バブリングを行った後、氷冷する。窒素バブリング,氷冷下,高圧水銀ランプ(450W)を45分間照射する。原料4が消失した緑色透明反応液を、約50ml容量まで濃縮し、その後、80℃のオイルバスで30分間加熱を行う。次いで、再濃縮し、カラムクロマトグラフィーにより精製して目的化合物5を得る。クロマトグラフィー条件:SiO2100g、クロロホルム/酢酸エチル=10/1→5/1→酢酸エチル。収量2.31g(4.2mmol)、収率58%。
化合物5’:
TLC Rf=0.10(クロロホルム/酢酸エチル=15/1)
1H NMR(CDCl3)δppm; 0.84(s,6H),0.88(s,3H),0.92(s,3H),0.94(s,3H),1.22(s,3H),2.08(s,3H),0.7〜2.2(m,23H),3.80(d,9.4Hz,1H),4.20(d,9.4Hz,1H),4.51(dd,J=11.2,5.4Hz,1H),7.53(s,1H),8.16(s,1H)
【0032】
5) 化合物6’の合成
粉末5’(13.10g,24mmol)のジオキサン(210ml)溶液に、酢酸アンモニウム(24.9g,312mmol)、50%酢酸水(39ml)を加え、氷冷下、三塩化チタン水溶液(55ml)を滴下する。室温で1.5時間攪拌後、氷−酢酸エチル(700ml)−10%炭酸ナトリウム(500ml)混液にあける。有機層を分取し、水層は酢酸エチルで2回抽出する(300,100ml)。それぞれの有機層を食塩水で洗浄した後無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮する。残渣を塩化メチレンで溶かし、n−ヘキサンを加え、再濃縮する。析出した固体を濾過し、粉末の目的の新規化合物6’を得る。収量12.01g(23mmol)、収率94%。
化合物6’:
TLC Rf=0.52(n−ヘキサン/酢酸エチル=1/1)
1H NMR(CDCl3)δppm; 0.81(s,3H),0.83(s,3H),0.89(s,3H),0.92(s,6H),1.26(s,3H),2.04(s,3H),0.6〜2.3(m,23H),3.74(d,J=9.4Hz,1H),4.48(dd,J=8.2,8.2Hz,1H),6.90(br s,1H),8.10(br s,1H)
13CNMR(CDCl3)δppm; 16.5,16.7,17.5,18.7,21.2,21.3,23.5,24.0,25.7,27.0,27.8,27.9,31.6,33.2,33.8,35.7,36.5,37.8,38.2,40.6,43.6,43.7,44.7,50.0,53.2,55.5,74.6,80.5,89.1,171.0,179.3,182.7
【0033】
6) 化合物8’の合成
粉末6’(50mg,0.095mmol)をジオキサン(15ml)−50%酢酸水混液に溶かし、亜硝酸ナトリウム(160mg,2.375mmol)を酢酸ナトリウム(160mg,1.951mmol)を加える。室温下、30分攪拌後、塩化メチレン(40ml)−水(10ml)混液にあける。有機層を分取し、水層は塩化メチレンで抽出する。それぞれの有機層を食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮して7’と8’の混合粗生成物である濃縮残渣(62mg)を得る。
濃縮残渣をベンゼン(5ml)に溶かし、中性アルミナ(1g)を加える。加熱還流1.5時間後、濾過し、濾さい(アルミナ)を塩化メチレン(約30ml)で洗浄する。このベンゼン−塩化メチレン溶液を濃縮して、目的化合物8’の粗生成物を得る。収量40mg(0.076mmol)、収率80%。
化合物7’:
TLC Rf=0.55(n−ヘキサン/酢酸エチル=2/1)
化合物8’:
TLC Rf=0.45(n−ヘキサン/酢酸エチル=2/1)
1H NMR(CDCl3)δppm; 0.83(s,6H),0.89(s,3H),0.94(s,6H),1.22(s,3H),2.05(s,3H),0.6〜2.4(m,23H),3.57(d,J=7.8Hz,1H),3.94(br d,J=7.4Hz,1H),4.45(dd,J=10.4,5.8Hz,1H),10.05(s,1H)
13CNMR(CDCl3)δppm; 16.5,17.2,17.5,18.6,20.9,21.2,21.3,23.5,24.4,26.9,27.8,31.6,33.1,33.7,36.3,36.9,37.6,37.8,38.3,43.4,44.7,46.0,49.9,55.5,58.4,75.3,80.5,87.1,171.1,179.1,210.0
【0034】
7) 化合物9’の合成
粗生成物8’(90mg,0.17mmol)のピリジン(1ml)溶液に無水酢酸(0.54g,5.3mmol)とジメチルアミノピリジン(9mg,0.07mmol)を加え、1.5時間の加熱を行う(油浴85℃)。その後、塩化メチレン(25ml)−2N塩酸(9ml)混液にあけ、有機層を分取する。水層は塩化メチレンで抽出し、それぞれの有機層は食塩水で洗浄する。有機層は無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮し、カラムクロマトグラフィーにより精製して目的物9’を得る。収量78mg(0.14mmol)、収率80%。
化合物9’:
TLC Rf=0.58(n−ヘキサン/酢酸エチル=2/1)
1H NMR(CDCl3)δppm; 0.81(s,3H),0.83(s,6H),0.92(s,3H),0.93(s,3H),1.21(s,3H),2.05(s,3H),2.15(s,3H),0.7〜2.4(m,23H),4.42(dd,J=8.0,4.0Hz,1H),5.25(br s,1H),10.22(s,1H)
【0035】
8) 化合物10’(ミリセロール)の合成
−78℃に冷却した液体アンモニア(5ml)に金属リチウム(45mg,6.5mmol)を加え、30分間攪拌溶解する。そこへ、原料9’(30mg、0.05mmol)のTHF溶液を流入し、−78℃下、3時間攪拌する。その後、塩化アンモニウム(170mg)を加え、反応液が紫から無色に変化することを確認する。さらに塩化メチレン(20ml)を流入後、室温に昇温し、アンモニアを気体として除去し、氷存在下、2N塩酸(10ml)を加える。有機層を分取し、水層は塩化メチレンで抽出する。それぞれの有機層は食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮する。残渣はカラムクロマトグラフィーで精製し目的化合物10’を得る。収量24mg(0.05mmol)、収率97%。
化合物10’:
TLC Rf=0.65(n−ヘキサン/酢酸エチル=1/1)
1H NMR(CDCl3)δppm; 0.70(s,3H),0.75(s,3H),0.88(s,3H),0.91(s,3H),0.96(s,3H),0.98(s,3H),1.0〜2.0(m,22H),2.91(br d,J=12.4Hz,1H),3.15〜3.26(m,2H),3.78(d,J=11.8Hz,1H),5.85(br s,1H)
【0036】
参考例3 27−アミノミリセロールの製造
【化13】
【0037】
9) 化合物11’の合成
実施例2の4)で調製した化合物5’(544mg,1mmol)のピリジン(3ml)溶液に無水酢酸(509mg,5mmol)とジメチルアミノピリジン(54mg,0.44mmol)を加える。室温下、2時間攪拌後氷−塩化メチレン(20ml)−6mol/l塩酸(10ml)混液にあける。有機層を分取し、水層は塩化メチレンで抽出する。それぞれの有機層は食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し濃縮する。濃縮残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、目的の新規化合物11’を得る。収量637mg(1.01mmol)、収率100%。
化合物11’:
TLC Rf=0.65(塩化メチレン/酢酸エチル=10/1)
1H NMR(CDCl3)δppm; 0.80(s,3H),0.84(s,3H),0.85(s,3H),0.90(s,3H),0.92(s,3H),1.25(s,3H),2.06(s,3H),2.17(s,3H),2.25(s,3H),0.7〜2.4(m,23H),4.48(m,1H),5.16(br s,1H),8.08(s,1H)
【0038】
10) 化合物12’(27−アミノミリセロール)の合成
−78℃に冷却した液体アンモニア(6ml)に粉末11’(15mg,0.24mmol)のTHF(2ml)溶液とエタノール(0.5ml)を加える。−78℃下、金属リチウム(91mg,13.1mmol)を加え、3時間攪拌後、塩化アンモニウム(0.3g)、塩化メチレン(15ml)、メタノール(15ml)を加える。昇温してアンモニアを気体として除去後、氷−塩化メチレン(20ml)−水(15ml)−6mol/l塩酸(15ml)混液にあける。水層を分取し、酢酸エチル(30ml)で抽出する。水層は再び酢酸エチルで抽出し、それぞれの酢酸エチル液は食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮する。粗生成物として目的化合物12’を得る。収量52mg(0.11mmol)、収率46%。
化合物12’:
TLC Rf=0.15(酢酸エチル/酢酸/水=30/1/1)
1H NMR(CDCl3+CD3OD)δppm; 0.77(s,3H),0.82(s,3H),0.91(s,3H),0.96(s,3H),0.98(s,3H),0.99(s,3H),0.7〜2.1(m,22H),2.67(d,J=14.0Hz,1H),3.01(br d,J=14.0Hz,1H),3.26(m,2H),5.92(br s,1H)
上記実施例で製造した化合物を用い、例えば、下記の参考例に示す方法により、抗エンドセリンレセプター活性を有するトリテルペン誘導体(III)を製造することができる。
【0039】
参考例4 ホーナー−エモンズ試薬(化合物IV)の合成
【化14】
【0040】
ジメチルホスホノ酢酸(7.07g,42.1mmol)の塩化メチレン溶液(100ml)に、窒素雰囲気下室温で塩化チオニル(9.21ml,126mmol)を加える。室温で4時間撹拌した後に濃縮して酸クロリド(7.85g)を得る。
実施例1で調製した化合物12(6.60g,14.0mmol)の塩化メチレン溶液(70ml)に、窒素雰囲気下、−78℃でピリジン(4.53mL,56mmol)を滴下する。このとき内温は、−73℃まで上昇した。次いで上で合成した酸クロリド(7.85g,14.0mmol)の塩化メチレン溶液(70ml)を25分かけて滴下する。このときの内温は−68℃まで上昇した。−75℃で40分間撹拌した後、溶媒を減圧除去する。残渣をTHF(84ml)に懸濁させ、0℃に冷却した後、2mol/l NaOH(14ml,28mmol)を加え、0℃で1時間撹拌する。反応液を氷−1N塩酸(50ml)−酢酸エチル(200ml)にあけ、有機層を分取する。水層を酢酸エチル(150ml×2)で抽出し、それぞれの有機層を食塩水(100ml×2)で洗浄する。有機層を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥し濃縮する。カラムクロマトグラフィーにより精製して目的の化合物(IV)を得る。クロマトグラフィー条件:SiO2 150g,酢酸エチル/ヘキサン=1/1→酢酸エチル→クロロホルム/メタノール=100/1→50/1→20/1。収量7.43g(11.97mmol,85%)。Mp.110−113℃、[α]D 22:+83.9°(c1.01/CHCl3)。
化合物(IV)
1H NMR(CDCl3)δppm:0.80(s,3H),0.89(s,3H),0.94(s,3H),1.02(s,3H),1.04(s,3H),1.08(s,3H),1.0〜2.0(m,20H),2.3〜2.7(m,2H),2.8〜3.0(m,1H),2.95(d,2JPH=22.0Hz,2H),3.78(s,3H),3.83(s,3H),4.13(ABq,Apart,J=12.9Hz,1H),4.32(ABq,Bpart,J=12.9Hz,1H),5.60(br s,1H)
IR(CHCl3):2944,1728,1696,1263cm-1
13C NMR(CDCl3)δppm:15.3,18.0,19.5,21.4,22.7,22.8,23.5,23.7.26.5,30.6,32.2,32.4,32.8,32.9,33.6,34.0,34.9,37.0,39.0,39.9,40.8,45.3,46.3,46.4(d,1JCP=144Hz),47.4,53.1(d,2JCOP=6.4Hz),53.2(d,2JCOP=6.4Hz),66.8,127.4,137.0,165.3(d,2JCCP=6.4Hz),183.2,217.3
【0041】
実施例1 アルデヒド(V)の製造
【化15】
【0042】
染井ら(非特許文献4参照)の方法を応用してアルデヒドを合成した。
1gのヒドロキシニトロベンズアルデヒドを20mlの酢酸−水(1:1)混液に溶解し、三塩化チタン水溶液25mlを加える。室温で10分撹拌後水−酢酸エチルにあける。水層を炭酸ナトリウム水溶液でpH8とし、酢酸エチルで抽出する。抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥後約20mlまで濃縮する。この溶液に氷冷下ピリジン0.46mlを加え、そこに3−メトキシカルボニルアクリル酸クロリド442mgを加える。0℃で30分撹拌後、酢酸エチルで抽出する。抽出液を濃縮し、析出した固体を濾過し、アルデヒド(V)の粉末432mg(29%収率)を得る。
化合物(V)
1H NMR(CDCl3+CD3OD):3.85(s,3H),6.91(d,1H,J=15.4Hz),7.12(d,1H,J=15.4Hz),7.14(d,1H,J=2.8Hz),7.18(dd,1H,J=8.8,2.8Hz),8.58(d,1H,J=8.8Hz),9.86(s,1H)
【0043】
実施例2 トリテルペン(III)の合成
【化16】
【0044】
1)化合物(IV)と化合物(V)の縮合
参考例4で得た化合物(IV))621mg(1mmol)と実施例1で得たアルデヒド(V)299mg(1.2mmol)をDMF6mlに溶解する。そこにDBU(ジアサビシクロウンデセン)0.358ml,塩化リチウム93mgを加え室温で1.5時間撹拌を続ける。反応液を酢酸エチル抽出し、シリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)にかけ、化合物(IIIa)670mg(90%収率)を得た。
化合物(IIIa)
1H NMR(CDCl3):0.83(s,3H),0.84(s,3H),0.93(s,3H),1.03(s,3H),1.04(s,3H),1.07(s,3H),1.0−2.1(m,20H),2.2−2.8(m,2H),2.8−3.0(m,1H),3.84(s,3H),4.16,4.40(ABq,2H,J=13.0Hz),5.61(br s,1H),6.27(d,1H,J=16.0Hz),6.90(dd,1H,J=8.8,2.8Hz),6.94(d,1H,J=15.2Hz),7.07(d,1H,J=2.8Hz),7.21(d,1H,J=15.2Hz),7.44(d,1H,J=8.8Hz),7.74(d,1H,J=16.0Hz)
【0045】
次いで、化合物(IIIa)5mg(6.6μmol)のメタノール300μl溶液に1mol/l−NaOH 100μlを加える。室温で1.5時間撹拌後酢酸エチル抽出する。抽出液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル:酢酸:水、30−1−1)にて精製し、化合物IIIbを3.5mg(収率73%)得た。
さらに、この化合物IIIb21.9mg(0.03mmol)を水1.2mlに懸濁し、0.1mol/l−NaOH 600μlを加える。生じた溶液を凍結乾燥し、二ナトリウム塩(化合物IIIc)を21.5mg(93%収率)得た。
【0046】
IIIb
Rf:0.65(酢酸エチル:酢酸:水;30−1−1)
1H NMR δppm (CD3OD):0.85(s,3H),0.87(s,3H),0.94(s,3H),1.03(s,6H),1.05(s,3H),1.1−2.0(m,20H),2.3−2.6(m,2H),2.8−3.0(m,1H),4.11,4.49(ABq,2H,J=12.6Hz),5.59(br s,1H),6.36(d,1H,J=16.0Hz),6.84(d,1H,J=15.6Hz),6.89(dd,1H,J=8.6,2.6Hz),7.12(d,1H,J=2.6Hz),7.14(d,1H,J=8.6Hz),7.20(d,1H,J=15.6Hz),7.66(d,1H,J=16.0Hz)
【0047】
IIIc
1H NMR δppm (D2O) DSS(Me3SiCH2CH2CH2SO3Na) standard,0.73(s,3H),0.80(s,3H),0.87(s,3H),0.97(s,3H),1.00(s,6H),1.1−2.0(m,20H),2.2−2.6(m,2H),2.7−3.0(m,1H),4.05,4.41(ABq,2H,J=12.4Hz),5.58(br s,1H),6.34(d,1H,J=16.0Hz),6.87,6.92(ABq,2H,J=16.0Hz),7.00(dd,1H,J=8.6,2.0Hz),7.19(d,1H,J=8.6Hz),7.21(d,1H,J=2.0Hz),7.58(d,1H,J=16.0Hz)
上記参考例で得た化合物は、インビトロおよびインビボでエンドリンレセプターに対するエンドセリンの結合を高度に阻害し、エンドセリンの作用を特異的に抑制する。
【0048】
参考例5 化合物4の酸素存在下での光反応
【化17】
光反応装置にアセトン120mlを加え氷冷下酵素ガスを5分通気する。次に原料1.0g(2.0mmol)を加え回転子撹拌下溶解させる。高圧水銀ランプ(400W)にて0.5Hν照射する。(反応温度:5−8℃)。反応液は、減圧濃縮し、残渣にイソプロパノール2mlを加えて結晶化する。dp221−222℃を示す27−硝酸塩0.437g(41.2%)を得た。母液をシリカゲルクロマトで精製し、更に96mg(9.1%)を得た。合計収率50.3%。この化合物1 3は新規化合物である。Mp.221−222℃(分解)。
元素分析(C30H45O7Nとして)
計算値:C,67.77;H,8.53;N、2.63
実測値:C,67.29;H,8.49;N,2.56
IRνmax(Nujol):3410, 1749, 1701, 1625, 1278 cm-1
1H NMR(CDCl3)δ(200MHz):0.92(s,3H),0.98(s,3H),0.99(s,3H),1.05(s,3H),1.11(s,3H),1.24(s,3H),1.2−2.2(m,20H),2.5(m,2H,J=7.4Hz),3.9(t,1H,J=2.6Hz),4.76 5.02(ABq,2H,J=13Hz)
【0049】
【発明の効果】
本発明方法によれば、従来のシロコヤマモモからの抽出および化学修飾による製造法に比較して、高効率、高収率で、医薬等の合成中間体として極めて有用なミリセロン誘導体を得ることができる。さらに、得られた誘導体および本発明化合物(V)を反応させることにより、エンドセリン受容体拮抗物質として非常に有用な化合物(III)を製造することができる。
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