JP3861488B2 - ラップフィルム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生分解性を有し、粘着性、耐熱性、カット性、風合いに優れたラップフィルム、特に食品包装用ラップフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
食品包装用ラップフィルムは、食品をラップして冷蔵庫、冷凍庫に保存、あるいは電子レンジで加熱するのに用いられている。ラップフィルムとして要求されることは、(1)透明であること、(2)カートンボックスより手で引き剥がす際にフィルムが伸びたり、小片にちぎれないこと、(3)自己粘着性を有すること、(4)カートンボックス装着のノコギリ羽でのカット性が良好なこと、(5)電子レンジで解凍するときフィルムが融着しないこと、(6)ガスバリア性を有することなどが挙げられるが、ラップフィルムの主な目的は水分の飛散防止、保存中の風味、他食品からの香気、臭気の吸収、塵埃進入を防止することである。外気からの浸入およびラップ内からの浸出を遮断する効果を持った、いわゆるガスバリア性を有することが必要である。
【0003】
ラップフィルムとしてポリ塩化ビニリデン系フィルムやポリ塩化ビニル系フィルムが用いられ、ガスバリア性と透明性が良好であることが、従来よりよく知られている。
【0004】
しかし、ポリ塩化ビニリデンやポリ塩化ビニル等の塩素を含む樹脂は、土中埋没や焼却におけるダイオキシンの発生の疑い、また、焼却時に発生する塩素系ガスの発生があり、地球環境への影響が懸念されている。近年特に廃棄、焼却時の環境汚染の問題から塩素を含まないポリマー素材のラップフィルムが望まれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
これらの問題を解決するためには例えば特開平9−11426号公報のようにポリエステル系のラップフィルム、特開平9−29908号公報のようにポリオレフィン/ナイロン系ラップフィルムを得る方法などがあり、確かに塩素を含まない樹脂が使用されているが、依然、焼却時に発生するガスがあり、環境汚染の問題を解消するまでには至っていない。
【0006】
従って本発明の目的とするところは、従来技術の問題点を解消するために、フィルムの素材が生分解性を有し、かつ、ラップフィルムとしての性能を保持するラップフィルムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、ポリ乳酸を主体とするポリマーから主としてなる基材層の少なくとも片面に、ポリ乳酸を主体とするポリマーから主としてなる粘着層を設けてなり、かつ、粘着層が脂肪族炭化水素樹脂、テルペン樹脂、クマロン・インデン樹脂、芳香族炭化水素樹脂、およびロジン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である粘着付与剤を0.5〜15重量%含有すラップフィルムによって達成することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態を説明する。
【0009】
本発明のラップフィルムに用いる基材層は、ポリ乳酸を主体とするポリマーから主としてなる。ここで、主としてなるとは、その成分が基材層中50重量%以上であることをいい、好ましくは、60重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。
【0010】
ポリ乳酸を主体とするポリマーとは、D−乳酸および/またはL−乳酸を主たる構成成分とするポリマーであり、具体的にはD−乳酸ホモポリマー、L−乳酸ホモポリマー、D−乳酸/L−乳酸コポリマー、D−乳酸/ヒドロキシカルボン酸コポリマーおよびそれらの混合物を挙げることができる。ここで、主たる構成成分とするとは、ポリマー中にD−乳酸および/またはL−乳酸を50モル%以上、好ましくは80モル%以上含むことを言う。
【0011】
ポリ乳酸を主体とするポリマーは、次のような方法で得ることができる。原料として、D−乳酸、L−乳酸を主体として、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカルボン酸類を併用することもできる。さらにジカルボン酸類やグリコール類も用いることができる。ポリ乳酸を主体とするポリマーは上記原料を直接脱水重縮合する方法、または上記環状エステル中間体を開環重合する方法によって得ることができる。例えば、直接脱水重縮合して製造する場合、乳酸類または乳酸類とヒドロキシカルボン酸類を好ましくは有機溶媒、特にフェニルエーテル系溶媒の存在下で共沸脱水縮合し、特に好ましくは共沸により重合することにより本発明に適した高分子量のポリマーが得られる。ポリマーの分子量は、フィルムとしての成形性等の点から重量平均分子量1万〜100万の範囲であることが好ましい。
【0012】
また、本発明のポリ乳酸を主体とするポリマーは、ヒドロキシカルボン酸成分を構成分とするポリグリコール酸、ポリ酪酸ヒドロキシブチレート等や、ジカルボン酸成分とグリコール成分を構成成分とするポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリヘキサメチレンテレフタレート(PHT)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリブチレンサクシネート、ポリ−ε−カプロラクトン等のポリエステル、またはこれらのポリエステルを主体とする共重合体等とのブレンド体であってもよい。また共重合体の場合は、ランダム共重合体でもブロック共重合体であってもよい。また、本発明の効果を損なわない範囲で他の生分解性ポリマーを添加しても構わない。他の生分解性ポリマーとしては、例えば、酢酸セルロース、セルロース、でんぷん、ポリビニルアルコール、ポリアミノ酸等が挙げられる。
【0013】
本発明におけるラップフィルムは、基材層の少なくとも片面に、粘着付与剤を含有する粘着層を設けてなることが必要である。かかる特定な粘着層を設けることにより、包装容器等との密着性を良くすることができ、また、外気からの浸入およびラップ内からの浸出を遮断しやすい。
【0014】
本発明におけるラップフィルムは粘着層もポリ乳酸を主体とするポリマーから主としてなることが必要である。粘着層がポリ乳酸を主体とするポリマー以外であるとフィルム全体の生分解性が低くなりやすく、廃棄するために焼却が必要となってしまう。生分解性を大きくするためには基材層と粘着層のいずれもがポリ乳酸を主体とするポリマーからなることが必要である
【0015】
本発明におけるラップフィルムは、基材層の融点が粘着層の融点より5℃以上高いことが好ましい。好ましくは10℃以上である。電子レンジ加熱の耐熱性を得るには基材層の融点は、高い方が好ましく、140〜180℃が好ましい。基材層と粘着層との融点差を5℃以上とすることにより、包装容器等への密着性と電子レンジ加熱の耐熱性とのバランスをとることができる。
【0016】
本発明において粘着層に、ポリ乳酸と選択的に相溶する粘着付与剤、具体的には脂肪族炭化水素樹脂、テルペン樹脂、クマロン・インデン樹脂、芳香族炭化水素樹脂、およびロジン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である粘着付与剤を0.5〜15重量含有させることが必須である。さらに粘着付与剤としては、ポリ乳酸と相溶性がよく、包装容器等への密着性の発現の点からテルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂が好ましい。熱安定性の点から軟化温度が100℃以上のものが好ましく用いられる。かかる粘着付与剤に加えて、さらに脂肪酸エステルを添加配合することができる。かかる脂肪酸エステルの添加量は0.5〜15重量%添加することが好ましい。かかる脂肪酸エステルおよび/または粘着付与剤の添加量は、好ましくは3〜15重量%である。添加量が0.5重量未満であると柔軟性、容器への密着性が十分でなく、逆に15重量%を超えるとフィルムの外観やハンドリング性が悪くなるので好ましくない。脂肪酸エステルとしては、例えば、グリセリン、ソルビトール、ペンタエリスリトール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコールとオリイン酸、リノール酸、ラウリン酸等の高級脂肪酸とのエステル化合物で、具体的には、モノグリセリンオレエート、ポリグリセリンオレエート、グリセリンジリシノレート、グリセリンアセチルリシノレート、プロピレングリコールオレエート、プロピレングリコールラウレート、ペンタエリスリトールオレエート、ポリエチレングリコールオレエート、ソルビタンオレエート、ソルビタンラウレート、ポリエチレングリコールソルビタンオレエート、ポリエチレングリコールソルビタンラウレート、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ベヘニン酸エステル、ショ糖エルカ酸エステル等の一種あるいは一種以上の混合物を用いることができる
【0017】
本発明において生分解性は、ASTM D 5338−92に準拠した汚泥中での促進試験(コンポスト条件)を用い、試験温度58℃で評価する。
【0018】
本発明におけるラップフィルムは、コンポスト条件下(58℃)の30日間で生分解度50%以上であることが好ましい。好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。生分解度が50%未満であると廃棄するために焼却が必要となり好ましくない。
【0019】
本発明におけるラップフィルムは、長さ方向の伸度が100%以下であることが好ましい。100%を超えるとラップフィルムが入ったカートンボックスより手で引き剥がす際にフィルムが伸びたり、カートンボックス装着のノコギリ羽でのカット性が劣りやすいので好ましくない。
【0020】
また、本発明のラップフィルムは、製造時、加工時、使用時の走行性や取扱い性の点で粒子を添加することができる。粒子の添加量としては0.01〜0.5重量%の範囲である。添加する粒子としては、ポリ乳酸ポリマーに不活性なものであれば特に限定されないが、無機粒子、有機粒子、架橋高分子粒子、重合系内で生成させる内部粒子などが挙げることができる。これらの粒子を2種以上を添加しても構わない。添加する粒子の平均粒径は0.001〜8μmの範囲が好ましく、さらに好ましくは0.01〜2μmである。平均粒子径が8μmを越えるとフィルムの欠陥が生じやすく、容器への密着が悪くなったりするので好ましくない。
【0021】
無機粒子としては、特に限定されないが炭酸カルシウム、カオリン、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、フッ化リチウムなどが挙げられる。
【0022】
有機粒子としては、シュウ酸カルシウムやカルシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム等のテレフタル酸塩などが挙げられる。
【0023】
架橋高分子粒子としては、ジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸等のビニル系モノマーの単独または共重合体が挙げられる。その他ポリテトラフルオロエチレン、ベンゾグアナミン樹脂、熱硬化エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂などの有機微粒子も好ましく使用される。
【0024】
重合系内で生成させる内部粒子としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物などを反応系内に添加し、さらにリン化合物を添加する公知の方法で生成されるものも使用される。
【0025】
本発明におけるポリ乳酸を主体とするポリマーには、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲内であれば各種の添加剤が含まれていてもよい。例えば、難燃剤、酸化防止剤、耐侯剤、熱安定剤、滑剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、着色剤、末端封鎖剤、脂肪酸エステル、ワックス等の有機滑剤あるいはポリシロキサン等を配合することができる。
【0026】
本発明のフィルムは、上述したポリマーを用い、無延伸フィルム、一軸延伸フィルムであっても二軸延伸フィルムであっても構わない。二軸延伸フィルムとする場合、延伸方法は、インフレーション同時二軸延伸法、ステンター同時二軸延伸法、ステンター逐次二軸延伸法が用いられる。
【0027】
本発明のフィルムは上述したポリマーを用いて、以下の方法によって製造することができる。ポリマーを十分乾燥させた後、押出機に供給して150〜300℃で溶融し二層あるいは三層のTダイで押出法によってキャスティングドラム上に押出すことによって未延伸フィルムを得る。キャスティングドラムへの密着方法としては静電印加法、水等の表面張力を利用した密着法、エアーナイフ法、プレスロール法等のうちいずれの方法を用いてもよいが、平面性が良好で滑表面欠点の少ないフィルムを得る手法として、水等の表面張力を利用した密着キャスト法または静電印加法を用いるのが特に好ましい。このとき、口金のスリット幅、フィルムに用いられるポリマーの吐出量、キャスティングドラムの回転数を調整することによって、所望の厚みの未延伸フィルムを得ることができる。
【0028】
二軸延伸フィルムとする場合は、次いでこの未延伸フィルムを同時あるいは逐次に二軸延伸することによって、二軸延伸フィルムを得ることができる。また、逐次二軸延伸の場合、その延伸順序はフィルムを長手方向、幅方向の順、あるいはこの逆としてもよい。さらに逐次二軸延伸においては、長手方向あるいは幅方向の延伸を2回以上行うことも可能である。フィルムの長手方向および幅方向の延伸倍率は目的とするフィルムの配向度、強度、弾性率等に応じて任意に設定することができる。好ましくは1.5〜7.0倍である。長手方向、幅方向の延伸倍率はどちらを大きくしてもよく、同一としてもよい。ラップフィルムが入ったカートンボックスより手で引き剥がす際にフィルムが伸び難くするためやカートンボックス装着のノコギリ刃でのカット性を良くするためには長手方向の延伸倍率が大きい方が好ましい。また、延伸温度は用いるポリマーのガラス転移温度以上、結晶化温度以下の範囲の温度とすることができる。さらにフィルムを二軸延伸した後に、強度、経時安定性、収縮特性の向上を目的に熱処理を行ってもよい。この熱処理は、オーブン中、加熱処理されたロール上等、任意の方法で行うことができる。熱処理温度は延伸温度以上、融点以下の任意の温度とすることができるが、好ましくは200℃以下である。また熱処理時間は任意とすることができるが、通常1〜60秒間行うのが好ましい。熱処理はフィルムをその長手方向および/または幅方向に弛緩させつつ行ってもよい。熱処理を行ったフィルムは熱処理後ガラス転移温度以下まで急冷してもよく、段階的に冷却を行ってもよい。
【0029】
本発明のフィルムの厚みは特に限定しないが、1〜300μm、好ましくは5〜100μmで有効に使用される。
【0030】
【実施例】
次に、本発明の効果を実施例により説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。まず、特性値の測定方法および評価方法を以下に示す。
【0031】
[特性値の測定方法・評価方法]
本発明の特性値は次の測定法による。
【0032】
(1)融点(Tm)
Seiko Instrment(株)製熱分析装置DSCII型を用い、サンプル5mgを室温より20℃/分の昇温速度で昇温していった際の吸熱融解曲線のピーク温度を融点(Tm)とした。
【0033】
(2)破断強度、弾性率、破断伸度
JIS−Z1702−1976に準じ、幅10mm、長さ100mmの短冊状サンプルを引張速度300mm/分で測定した。
【0034】
(3)ノコギリ刃カット性
フィルムを紙筒に巻いて市販のノコギリ刃付きのカートンケースに入れ、フィルムをカートンケースから引っ張り出して、ノコギリ刃カット性を次の基準で判定した。カット性が良いものを○、カット性がやや劣るものを△、フィルムが伸びてカット性が良くないものを×とした。
【0035】
(4)電子レンジ耐熱性
陶器製の小鉢(径5cm高さ3cm)に水3gを入れ、ラップフィルムをかけ、電子レンジで2分間加熱し、電子レンジから出して、フィルムの電子レンジ耐熱性を次の基準で判定した。フィルムが変化していないものを○、フィルムが収縮しているが、容器に密着しているものを△、フィルムが溶融して容器から剥がれているものを×とした。
【0036】
(5)ハンドリング性
フィルムの取扱性(滑り性など)について、フィルム同士がくっつき難く取扱性に優れるものを○、フィルム同士がくっつき易く取扱性に劣るものを×、その中間のものを△として評価した。
【0037】
(6)容器への密着力
陶器製の小鉢(径5cm高さ3cm)に水3gを入れ、ラップフィルムをかけ、電子レンジで2分間加熱し、電子レンジから出して、ラップをかけたまま室温で1時間冷却した後、容器への密着力ついて、次の基準で判定した。容器にラップしたフィルムの中央部が容器の内側へ延びて、水滴がフィルムの内面に付着しているものを○、容器の内側へ延びないが水滴が付着しているものを△、容器の内側へ延びず、水滴も内側に付着していないものを×とした。
【0038】
(7)ガスバリア性{水蒸気透過率(防湿性)}
モダンコントロール社製の水蒸気透過率計“PERMATRAN”W3/31を用いて、温度37.8℃、相対湿度50%の条件下で測定した値をg/m2・日の単位で示した。
【0039】
(8)生分解度の測定
ASTM−D5338−92に準拠し、フィルムを汚泥中に入れて、温度を58℃に設定し、評価を行った。生分解度の計算は次の計算式(I)で求めた。
【0040】
(BOD−B)/TOD×100 (I)
BOD:(汚泥+試験物質)系における生物化学酸素要求量(mg)
B :汚泥ブランク系の生物化学酸素要求量(mg)
TOD:被験物質が完全に酸化された場合に必要とされる理論的酸素要求量(mg)
(9)総合評価
生分解度、ノコギリ刃カット性、ハンドリング性、電子レンジ耐熱性、容器への密着性、ガスバリア性を総合的に評価し、全ての項目について優れるものを○、やや劣る項目があるものを△、劣る項目があるものを×として評価した。
【0041】
次に本発明の効果を実施例により説明する。
【0043】
比較例1
基材層樹脂として、重量平均分子量32,000のポリエチレンテレフタレートとエチレンイソフタレートとの共重合ポリエステルA(共重合モル比78/22)100重量部に、平均粒径1.2μmの凝集シリカ粒子を0.4重量部添加したものを用い、140℃で3時間減圧下乾燥させた後、押出機を用いて、Tダイ口金温度270℃で押し出し、冷却ドラム上にキャストして未延伸フィルムを作製した。次いで95℃の加熱ロール間で長手方向に3.8倍延伸した後、クリップで把持して90℃に加熱されたテンター内に導き、連続的に93℃に加熱された領域で幅方向に4.0倍延伸し、さらにテンター内で120℃で熱処理して、厚み12μmのフィルムを作製した。
【0045】
比較例2
基材層樹脂として、比較例1の共重合ポリエステルA 100重量部に、平均粒径1.2μmの凝集シリカ粒子を0.4重量部添加したものを用いた。また、粘着層樹脂として、L−乳酸100モル%である重量平均分子量170,000のポリ乳酸AとL−乳酸/D−乳酸/ヒドロキシカプロン酸の組成比が80/5/15(モル比)である重量平均分子量150,000のポリ乳酸Cをブレンド比50:50でブレンドしたポリマー100重量部に脂肪酸エステルとして、ショ糖モノステアリン酸エステル5重量部を添加したものを用いた。この基材層樹脂と粘着層樹脂を混合後、二軸押出機に供給し200℃で押出しペレットとした。得られたペレットを120℃で減圧下3時間乾燥後、別々の押出機を用いて、三層Tダイ口金に導き、温度210℃で押出し、冷却ドラム上にキャストして粘着層/基材層/粘着層の構成の未延伸フィルムを作製した。次いで88℃の加熱ロール間で長手方向に2.5倍延伸した後、クリップで把持して90℃に加熱されたテンター内に導き、連続的に93℃に加熱された領域で幅方向に1.4倍延伸し、さらにテンター内で110℃で熱処理して、厚み12μmのラップフィルムを得た。
【0046】
実施例
基材層樹脂として、L−乳酸100モル%である重量平均分子量170,000のポリ乳酸Aを用いた。また、粘着層樹脂として、L−乳酸/D−乳酸/ヒドロキシカプロン酸の組成比が80/5/15(モル比)である重量平均分子量150,000のポリ乳酸C 100重量部に脂肪エステルとして、ソルビタンラウレート1.5重量、粘着付与剤としてテルペンフェノール樹脂10重量%を添加したものを用いた。この基材層樹脂と粘着層樹脂を混合後、二軸押出機に供給し200℃で押出しペレットとした。得られたペレットを120℃で減圧下3時間乾燥後、別々の押出機を用いて、三層Tダイ口金に導き、温度210℃で押出し、冷却ドラム上にキャストして粘着層/基材層/粘着層の構成の未延伸フィルムを作製した。次いで88℃の加熱ロール間で長手方向に2.5倍延伸した後、クリップで把持して90℃に加熱されたテンター内に導き、連続的に93℃に加熱された領域で幅方向に1.4倍延伸し、さらにテンター内で110℃で熱処理して、厚み12μmのラップフィルムを作製した。
【0048】
実施例
粘着層樹脂として、ポリ乳酸Aと3−ヒドロキシ酪酸(92モル%)/3−ヒドロキシ吉草酸(8モル%)共重合体をブレンド比70/30でブレンドした重量平均分子量170,000のポリマー100重量部に、粘着付与剤としてテルペンフェノール樹脂12重量部を添加したものを用い、二層Tダイ口金を用いて基材層/粘着層のフィルム構成にした以外は実施例1と同様にしてラップフィルムを得た。
【0049】
比較例3
基材層樹脂として、ポリ乳酸Aと3−ヒドロキシ酪酸(92モル%)/3−ヒドロキシ吉草酸(8モル%)共重合体をブレンド比70/30でブレンドした重量平均分子量170,000のポリマーを用い、120℃で減圧下3時間乾燥後、押出機を用いて、Tダイ口金に導き、温度210℃で押出し、冷却ドラム上にキャストして単層の未延伸フィルムを作製した。次いで88℃の加熱ロール間で長手方向に2.5倍延伸した後、クリップで把持して90℃に加熱されたテンター内に導き、連続的に93℃に加熱された領域で幅方向に1.4倍延伸し、さらにテンター内で120℃で熱処理して、厚み12μmのフィルムを作製した。
【0050】
以上のラップフィルムの品質評価結果をまとめたのが表1である。
【表1】
Figure 0003861488
略号の説明
PLLA−A:L−乳酸100モル%のポリ乳酸
PLLA−B:L−乳酸/D−乳酸=組成比95/5のポリ乳酸
PLLA−C:L−乳酸/D−乳酸/ヒドロキシカプロン酸=組成比80/5/15のポリ乳酸
PLLA−D:PLLA−A/PLLA−C=重量比50/50にブレンド
PLLA−E:L−乳酸/イソフタル酸22モル%共重合ポリエチレンテレフタレート=重量比70/30
PLLA−F:PLLA−A/3−ヒト゛ロキシ酪酸(92モル%)−3−ヒト゛ロキシ吉草酸(8モル%)共重合体=重量比70/30のポリ乳酸
PET/I :イソフタル酸22モル%共重合ポリエチレンテレフタレート
DGL :ジグリセリンモノラウレート
SSE :ショ糖モノステアリン酸エステル
SOL :ソルビタンラウレート
PGL :プロピレングリコールモノラウレート
GRO :グリセリンモノオレート
TFR :テルペンフェノール樹脂
MD :フィルム長手方向
【0051】
表1の結果からわかるように、実施例1,2で得られたラップフィルムはノコギリ刃カット性、ハンドリング性、電子レンジ耐熱性、容器への密着力、ガスバリア性に優れ、生分解性を有するフィルムであった。
【0052】
一方、比較例1および比較例3で得られたフィルムは電子レンジ耐熱性、ハンドリング性、ガスバリア性はほぼ満足するものの、粘着層を設けていないため容器への密着性が十分でなかった。また比較例1および比較例2で得られたフィルムは生分解性を有するものではなかった。いずれも本発明のラップフィルムとしては好ましくなかった。
【0053】
【発明の効果】
本発明で得られたラップフィルムは、ポリ乳酸を主体とするポリマーから主としてなる基材層の少なくとも片面に、ポリ乳酸を主体とするポリマーから主としてなる粘着層を設けてなり、かつ、粘着層が脂肪族炭化水素樹脂、テルペン樹脂、クマロン・インデン樹脂、芳香族炭化水素樹脂、およびロジン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である粘着付与剤を0.5〜15重量%含有することにより、生分解性を有し、かつ、ラップフィルムとしての特性を保持するラップフィルムを提供することができる。

Claims (5)

  1. ポリ乳酸を主体とするポリマーから主としてなる基材層の少なくとも片面に、ポリ乳酸を主体とするポリマーから主としてなる粘着層を設けてなり、かつ、粘着層が脂肪族炭化水素樹脂、テルペン樹脂、クマロン・インデン樹脂、芳香族炭化水素樹脂、およびロジン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である粘着付与剤を0.5〜15重量%含有すことを特徴とするラップフィルム。
  2. 基材層の融点が粘着層の融点より5℃以上高いことを特徴とする請求項に記載のラップフィルム。
  3. 粘着層が脂肪酸エステルを0.5〜15重量%含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のラップフィルム。
  4. 該ラップフィルムが、コンポスト条件下(58℃)の30日間で生分解度60%以上であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のラップフィルム。
  5. 長さ方向の伸度が100%以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のラップフィルム。
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