JP3861458B2 - 吸湿性繊維構造物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐久性のある吸湿性と制電性を兼ね備え、しかも風合いの柔軟な吸湿性繊維構造物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルやナイロンなどの合成繊維は、優れた物理的および化学的特性を有しているため広く利用されているが、その反面吸湿性が低いため着用時に蒸れやすく、帯電しやすいという欠点があり、改善が望まれている。
【0003】
このため、特公昭60−34979号公報で示されるように、合成繊維にアクリル酸やメタクリル酸をグラフト重合させたり、特公昭58−46589号公報に示されるように、ラジカル重合可能な親水性モノマーをポリエステル繊維上で重合させる方法が提案されている。
【0004】
しかし、これらの方法は性能や耐久性が不十分であったり、風合いが硬くなったりする欠点があった。
【0005】
これらを解決すべく、耐久性のある吸放湿性、制電性を有し、しかも柔軟な風合いを有する繊維材料を得る方法として、ビニルカルボン酸および/またはビニルスルホン酸モノマーとジビニルモノマーの重量比が1:1〜20:1である処理液を繊維材料表面で重合させる方法が特開平8−209540号公報で提案されている。この方法により、耐久性のある吸湿性と制電性が得られるが、さらに高い制電性能と耐久性が望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、十分な耐久性のある吸湿性と制電性を有し、しかも柔軟な風合いの繊維構造物を提供せんとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は十分な耐久性と柔軟な風合いを得るために、次のような手段を採用する。
【0008】
すなわち、ビニルスルホン酸モノマー(以下、「モノマーA」という。)と、一般式 [I]で示されるジビニルモノマー(以下、「モノマーB」という。)とを重量比1:20〜1:2で含む処理液が繊維材料の表面上に付与され重合されてなることを特徴とする繊維構造物である。
【0009】
【化3】
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に用いるモノマーAとしては、ビニルカルボン酸および/またはビニルスルホン酸が選ばれる。ビニルカルボン酸の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸などが挙げられる。ビニルスルホン酸の具体例としては、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(以下、「AMPS」という。)、2−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。本発明では、これらのモノマー2種類以上用いることも何ら差し支えない。特に重合効率と吸湿性の面から、アクリル酸、メタクリル酸、AMPS、スチレンスルホン酸ナトリウムが好ましい。
【0011】
本発明に用いるモノマーBの一種は、前記一般式[I]で表され、制電性の面から、n=14〜23の範囲であることがモノマーBとして好ましい。モノマーBとして、一般式 [I]で表されるものに含まれる2種以上のものを用いても何ら差し支えない。またXについては安全の面からX=CH3を用いることが好ましい。
【0012】
モノマーAとモノマーBの混合比は、重量比で1:20〜1:2とする。この重量比が1:20を超える場合には、得られる吸湿性が低いレベルにとどまる。一方、1:2に満たない場合には、重合体の網目構造化が十分進まず耐久性が悪くなってしまう。制電性の面からも、重量比でモノマーAよりもモノマーBの使用量が多い方がよい。モノマーAとモノマーBの使用量については特に限定なく目的に応じて任意に決定できる。
【0013】
本発明に用いる重合開始剤としては、通常のラジカル開始剤を使用できる。例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素など無機系重合開始剤や、2,2’−アゾビス(2−アミディノプロパン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス(N、N−ジメチレンイソブチラミディン)ジハイドロクロライド、2−(カルバモイラゾ)イソブチロニトリルなどの有機系重合開始剤が挙げられる。また、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリルなどの水不溶性重合開始剤をアニオン、ノニオン等の界面活性剤で乳化させて用いてもよい。コスト、取り扱いに容易さの点からは、過硫酸アンモニウムが好ましく用いられる。さらに、重合効率を高めるために、重合開始剤としての過酸化物と還元性物質を併用するいわゆるレドックス開始剤を用いてもよい。この過酸化物としては、例えば、過硫酸アンモニウムや過硫酸カリウム、還元性物質としては、例えば、スルホキシル酸ナトリウムとホルマリンとの反応物やハイドロサルファイトなどが挙げられる。重合開始剤の使用濃度は、使用するモノマー濃度や処理条件にもよるが、0.1〜3%が好ましい。
【0014】
本発明に用いる処理液には、必要に応じて仕上げ加工剤、例えば、撥水剤、柔軟剤、難燃剤、抗菌防臭加工剤などを添加してもよい。また、架橋促進のために、風合いをあまり粗硬にしない程度に、メチロール基を有するビニルモノマー、例えば、N−メチロールアクリルアミドやN−メチロールメタクリルアミドなどを添加してもよい。
【0015】
処理液を繊維材料に付与する方法としては、通常用いられる手段が適用可能である。例えば、パディング法、スプレー法、キスロールコータ、スリットコータなどが挙げられる。これらの方法で処理液を付与後、例えば真空脱水機で処理するなどして付与量を調整することも好ましく行われる。
【0016】
本発明において、モノマーAとモノマーBを重合させる方法としては、ラジカル重合に用いられるあらゆる手段が適用可能である。例えば、乾熱処理、スチーム処理、浸漬法、コールドバッチ法、マイクロ波処理、紫外線処理などが挙げられる。マイクロ波処理とは、2450MHzまたは920MHzの波長の高周波を被加熱物に当てることで発熱させるものである。これらの処理手段は、単独で適用してもよいし、加熱効率を高めるために、例えば、スチーム処理または乾熱処理時にマイクロ波処理または紫外線処理を併用するなどしてもよい。なお、空気中の酸素が存在すると重合が進みにくくなるので、乾熱処理、マイクロ波処理、紫外線処理の場合には、不活性ガス雰囲気下で処理するのが好ましく、コールドバッチ法の場合にも、シール材で密封するのが好ましい。
【0017】
これらの重合法のなかでは、スチーム処理が重合効率および処理の安定性の観点から好適である。スチーム処理は、常圧スチーム、加熱スチーム、高圧スチームのいずれでもよいが、コスト面からは、常圧スチームまたは加熱スチームが好ましい。スチーム処理温度は、80〜180℃さらには100〜160℃が好ましい。スチーム処理時間は、1〜10分程度でよい。
【0018】
なお、本発明において、繊維材料に処理液を付与した後、モノマーAとモノマーBを重合させる前に、風乾あるいは乾燥機などで予備乾燥することも好ましく行われる。
【0019】
本発明の処理液による重合物の付着量は、吸湿性能を優れたものにし、一方、風合いの粗硬化を防ぐ観点から、繊維材料に対して1〜20重量%とするのが好ましい。
【0020】
本発明に用いうる繊維材料としては、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系繊維、ポリエステルに第3成分を共重合したポリエステル系繊維、ナイロン6やナイロン66などのポリアミド系繊維、ポリアミドに第3成分を共重合したポリアミド系繊維、ポリアクリロニトリルを主成分とするアクリル系繊維、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、セルロース系繊維、たんぱく質系繊維などが挙げられ、これらを混紡混織、交織、交編した混用素材も含まれる。また、繊維の形態としては、フィラメント、ステープル、織編物、不織布などいかなる形態であってもよい。
【0021】
【実施例】
以下、実施例および比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。
【0022】
なお、実施例中に記載した各種性能は以下の方法により評価した。
【0023】
[洗濯]
自動反転渦巻き式電気洗濯機(東芝(株)製;VH−1150と同性能のもの)に、45cm×45cmの試験布500gと、40±2℃の0.2%弱アルカリ性合成洗剤(JIS K−3371弱アルカリ性・第1種)液25lとを入れ、強条件で25分間洗濯した。ついで、遠心脱水機で30秒間脱水後、常温水をオーバーフローさせながら10分間すすぎを行った。その後、再度30秒間脱水し、同条件で10分間すすいだ前記方法を洗濯5回とする。表1では、これを4回繰り返し洗濯20回と表示した。
【0024】
[樹脂付着量]
樹脂付着量[%]=[(A−B)/B]×100
ここで、A:加工後の生地重量
B:加工前の生地重量
ここで、生地重量とは20℃×65%RH雰囲気下に24時間放置したときの重量をいう。
【0025】
[吸湿性(ΔMR)]
ΔMR(%)=MR2−MR1
ここで、MR1とは絶乾状態から20℃×65%RH雰囲気下に24時間放置したときの吸湿率(%)をいい、洋服ダンスの中に入っている状態、すなわち着用前の環境に相当する。また、MR2とは絶乾状態から30℃×90%RH雰囲気下に24時間放置したときの吸湿率(%)をいい、運動状態における衣服内の環境にほぼ相当する。
【0026】
ΔMRは、MR2からMR1の値を差し引いた値で表されるものであり、衣服を着用してから運動したときに、衣服内のムレをどれだけ吸収するかに相当し、ΔMR値が高いほど快適であるといえる。一般に、ポリエステルのΔMRは0%、ナイロンで2%、木綿で4%、ウールで6%といわれる。
【0027】
[摩擦帯電圧]
試験片と綿布を20℃・30%RHの雰囲気中に24時間放置後、京大化研式ロータリースタチックテスタを用い、20℃・30%RHの雰囲気中で両者を摩擦させ、帯電圧を測定した(JIS L 1094の規定による)。
【0028】
[供試生地]
実施例の供試生地には、ポリエステル100%織物(番手40×40、密度128×83本/インチ)を用いた。
【0029】
[風合い]
生地を掴んだときの感触を、非常に柔らかい、柔らかい、やや硬い、硬い、非常に硬いの5段階で評価した。
【0030】
実施例1
供試生地を下記組成の処理液に浸漬後、ピックアップ率80%に設定したマングルで絞り、乾燥機で120℃、2分乾燥させた。
【0031】
AMPS 20g/l
一般式[I]においてX:−CH3、n=23のモノマー 40g/l
N−メチロールアクリルアミド 7g/l
過硫酸アンモニウム 2g/l
乾燥後直ちに、105℃の加熱スチーマーで5分間処理し、湯水洗、乾燥した。 次いで、乾燥機で170℃、1分でセットし、評価に供した。結果を表1に示す。
【0032】
実施例2
供試生地を下記組成の処理液に浸漬後、実施例1と同じ処理を施して試料を作製した。評価結果を表1に示す。
【0033】
AMPS 20g/l
一般式[I]においてX:−CH3、n=23のモノマー 30g/l
一般式[II]においてX:−CH3、m+n=30のモノマー 10g/l
N−メチロールアクリルアミド 7g/l
過硫酸アンモニウム 2g/l
実施例3
供試生地を下記組成の処理液に浸漬後、実施例1と同じ処理を施して試料を作製した。評価結果を表1に示す。
【0034】
AMPS 20g/l
一般式[I]においてX:−CH3、n=23のモノマー 10g/l
一般式[II]においてX:−CH3、m+n=30のモノマー 30g/l
N−メチロールアクリルアミド 7g/l
過硫酸アンモニウム 2g/l
【0035】
実施例4
供試生地を下記組成の処理液に浸漬後、実施例1と同じ処理を施して試料を作製した。評価結果を表1に示す。
【0036】
AMPS 20g/l
一般式[I]においてX:−CH3、n=14のモノマー 40g/l
N−メチロールアクリルアミド 7g/l
過硫酸アンモニウム 2g/l
実施例5
供試生地を下記組成の処理液に浸漬後、実施例1と同じ処理を施して試料を作製した。評価結果を表1に示す。
【0037】
AMPS 15g/l
一般式[I]においてX:−CH3、n=23のモノマー 45g/l
N−メチロールアクリルアミド 7g/l
過硫酸アンモニウム 2g/l
実施例6
供試生地を下記組成の処理液に浸漬後、実施例1と同じ処理を施して試料を作製した。評価結果を表1に示す。
【0038】
AMPS 10g/l
一般式[I]においてX:−CH3、n=23のモノマー 50g/l
N−メチロールアクリルアミド 7g/l
過硫酸アンモニウム 2g/l
実施例7
供試生地を下記組成の処理液に浸漬後、実施例1と同じ処理を施して試料を作製した。評価結果を表1に示す。
【0039】
AMPS 5.5g/l
一般式[I]においてX:−CH3、n=23のモノマー 55g/l
N−メチロールアクリルアミド 7g/l
過硫酸アンモニウム 2g/l
実施例8
供試生地を下記組成の処理液に浸漬後、実施例1と同じ処理を施して試料を作製した。評価結果を表1に示す。
【0040】
AMPS 4g/l
一般式[I]においてX:−CH3、n=23のモノマー 80g/l
N−メチロールアクリルアミド 7g/l
過硫酸アンモニウム 2g/l
比較例1
供試生地を下記組成の処理液に浸漬後、実施例1と同じ処理を施して試料を作製した。評価結果を表1に示す。
【0041】
AMPS 40g/l
一般式[I]においてX:−CH3、n=9のモノマー 20g/l
N−メチロールアクリルアミド 7g/l
過硫酸アンモニウム 2g/l
比較例2
供試生地を下記組成の処理液に浸漬後、実施例1と同じ処理を施して試料を作製した。評価結果を表1に示す。
【0042】
AMPS 40g/l
一般式[I]においてX:−CH3、n=23のモノマー 20g/l
N−メチロールアクリルアミド 7g/l
過硫酸アンモニウム 2g/l
比較例3
供試生地に加工を施さず、そのまま評価に用いた。結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、吸湿性と制電性の耐久性が非常に優れ、風合いの柔軟な生地が得られる。
Claims (2)
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP12871498A JP3861458B2 (ja) | 1998-05-12 | 1998-05-12 | 吸湿性繊維構造物 |
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---|---|---|---|
JP12871498A JP3861458B2 (ja) | 1998-05-12 | 1998-05-12 | 吸湿性繊維構造物 |
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JPH11323731A JPH11323731A (ja) | 1999-11-26 |
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ID=14991620
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JP12871498A Expired - Lifetime JP3861458B2 (ja) | 1998-05-12 | 1998-05-12 | 吸湿性繊維構造物 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3861458B2 (ja) |
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CN1320200C (zh) | 2002-08-28 | 2007-06-06 | 希麦特有限公司 | 多孔聚合物制品 |
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-
1998
- 1998-05-12 JP JP12871498A patent/JP3861458B2/ja not_active Expired - Lifetime
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Publication number | Publication date |
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JPH11323731A (ja) | 1999-11-26 |
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