JP3860696B2 - 多層基板の製法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は多層基板の製法に関し、特に、通信機器・電子機器用部品である高周波モジュール用基板として用いられるフィルター素子等を内蔵可能な多層基板の製法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
一般に多層基板は、ガラス−セラミックなどの絶縁層を複数積層してなり、その内部には、タングステン等の高融点金属材料、金、銀、銅などの低抵抗材料からなる内部配線やビアホール導体が形成されている。
【0003】
従来、多層基板の製法は、絶縁層となるガラス材料・セラミック材料を含有するスリップ材を形成し、ドクターブレード法などによってグリーンシートを作成し、次に、グリーンシートにビアホール導体となる位置にNCパンチや金型などで貫通孔を形成し、次に内部配線パターン及びビアホール導体に応じてグリーンシート上に導電性ペーストを印刷・充填し、次に、これらのグリーンシートを複数積層して、この積層成形体を一括して同時焼成する、いわゆるグリーンシート積層方式である。
【0004】
しかしながら、上述のグリーンシート積層方式による製法は、絶縁層となるグリーンシートを作製するためのテープ成型工程が必要であること、さらに異なる絶縁層間の内部配線を接続するためのビアホール導体となる貫通孔を開ける工程が必要となる。孔開け工程は、金型やNCパンチを用いることが一般的であり、NCパンチの場合、1つずつ孔を開けなくてはならないため、工数がかかり高価になってしまう。
【0005】
また、1枚のグリーンシートに複数種類の孔径の貫通孔を作製する場合、例えば電源用、アース用の導体となるビアホール導体を、他のビアホール導体よりも大径に設定したい場合には、その都度金型やNCパンチを交換する必要があり、極めて煩雑となってしまう。尚、NCパンチで貫通孔を形成する場合に、その孔径は最小でも100μm程度が限界であり、それ以上でなければ貫通孔は形成できなかった。
【0006】
さらに、グリーンシート積層方式の場合、グリーンシートの積層一体化時の位置合わせやグリーンシートの伸び等の変形の影響で、層間積層精度が悪く、100μm程度の積層ズレを引き起こし、内蔵する素子の特性バラツキの原因となっていた。
【0007】
上記グリーンシート多層方式による問題を解決するための多層基板の製法として、従来、支持板上に絶縁層材料と、光硬化可能なモノマーと、有機バインダーとを含有するスリップ材を薄層化し乾燥して絶縁層成形体を形成し、該絶縁層成形体に選択的な露光処理を施した後、現像処理してビアホール導体を形成するための貫通孔を形成し、貫通孔への導電性ペーストの充填及び絶縁層成形体上への内部配線パターンの形成を必要積層数繰り返して積層成形体を作製し、積層成形体を一括焼成して基板を得る製法が開示されている(特開平7−154073号公報)。
【0008】
この方法によれば、支持板を位置合わせ基準とし、フォトプロセスを用いた積層方法を採用しているため、積層時の位置精度が向上し、また一層当たりの厚みが薄いシートに小径から大径の種々の径の貫通孔を一挙に形成することができ、ハンドリング性の問題はなく、グリーンシート積層方式における問題を解決することができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記製法においても、内部配線パターンの形成は、グリーンシート積層方式と同様の一般のスクリーン印刷法による導電性ペーストの印刷・配線形成により行なっていたため、印刷用スクリーンの経時的な伸びや印刷機の位置合わせ精度等の影響でパターン印刷のズレは避けられず、層間における内部配線パターンの位置ズレが50μm程度発生していた。
【0010】
また、スクリーン印刷法の場合は、印刷したパターンの断面形状がペーストのニジミやダレのためにシャープな矩形状とならず、配線密度を上げるためのファインラインの形成や、高周波信号の伝送特性に対しての問題となっていた。
【0011】
本発明は、内部配線パターンを所望の位置に確実に形成することができるとともに、内部配線パターンの断面形状をシャープな矩形状とできる多層基板の製法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の多層基板の製法は、光硬化性樹脂を含有する複数の絶縁層成形体を積層してなるとともに、隣接する絶縁層成形体間に内部配線パターンを有する積層成形体を作製した後、該積層成形体を焼成する多層基板の製法であって、前記積層成形体の作製工程が、(e)支持板上に、ガラス−セラミックスまたはセラミックスからなる絶縁層材料と、光硬化性樹脂とを含有するスリップ材を塗布し、乾燥して絶縁層成形体を形成する工程と、(f)乾燥された絶縁層成形体を露光し、硬化する工程と、(g)露光し、硬化された前記絶縁層成形体上に、前記スリップ材を塗布、乾燥して前記絶縁層成形体を形成する工程と、前記(f)(g)工程とを繰り返す工程を具備するとともに、前記絶縁層成形体上に前記内部配線パターンを形成する工程を有し、該内部配線パターン形成工程が、(a)絶縁層成形体上に光硬化性樹脂フィルムを貼り付ける工程、(b)前記光硬化性樹脂フィルムを露光、現像し、前記内部配線パターンに相当する部分に貫通孔を形成する工程、(c)前記光硬化性樹脂フィルムの貫通孔に導電性ペーストを充填する工程、(d)前記光硬化性樹脂フィルムを前記絶縁層成形体より剥離する工程を具備する。
また、本発明の多層基板の製法は、複数の絶縁層成形体を積層してなるとともに、隣接する絶縁層成形体間に内部配線パターンを有する積層成形体を作製した後、該積層成形体を焼成する多層基板の製法であって、前記積層成形体の作製工程が、ガラス−セラミックスまたはセラミックスからなる絶縁層材料を含有するスリップ材(光硬化性樹脂を含有せず)を塗布し、乾燥して前記絶縁層成形体を形成する工程と、該絶縁層成形体上に、前記スリップ材を塗布、乾燥して前記絶縁層成形体を形成する工程と、これらの工程を繰り返す工程とを具備するとともに、前記絶縁層成形体上に前記内部配線パターンを形成する工程を有し、該内部配線パターン形成工程が、(a)絶縁層成形体上に光硬化性樹脂フィルムを貼り付ける工程、(b)前記光硬化性樹脂フィルムを露光、現像し、前記内部配線パターンに相当する部分に貫通孔を形成する工程、(c)前記光硬化性樹脂フィルムの貫通孔に導電性ペーストを充填する工程、(d)前記光硬化性樹脂フィルムを前記絶縁層成形体より剥離する工程を具備する。
【0013】
このような製法によれば、支持板の同一の位置合わせ基準によりパターンを形成し、かつメッシュスクリーンのような変形を起こしやすいものを用いずに、例えば、スキージを光硬化性樹脂フィルム上を摺動させ、光硬化性樹脂フィルム上の導電性ペーストを貫通孔内に充填して内部配線パターンを形成するため、配線パターン形成の位置精度は極めて良く、また得られるパターンの形状もシャープな矩形状となる。したがって、高密度なパターンの形成や高周波回路の特性向上に有用であり、高周波モジュールの小型化・高性能化が可能となる。
また、このような製法を採用することにより、積層時の位置精度が向上し、また一層当たりの厚みが薄いシートに小径から大径までの種々の径の貫通孔を一挙に形成することができる。即ち、光硬化性樹脂フィルムの表面に露光および現像処理を施して、内部配線パターンに相当する部分に貫通孔または貫通溝を形成する際の遮光用マスクの位置合わせ基準を支持板とし、ビアホールを形成するための遮光マスクの位置合わせ基準も支持板とすることにより、ビアホール導体に対する内部配線パターンの位置精度を向上でき、その位置精度は10μm程度を達成することができる。
【0014】
また、上記(d)工程の後に、内部配線パターン形成部分以外の絶縁層成形体上に、前記内部配線パターンの厚みに相当する絶縁層成形体を形成する工程を有することが望ましい。これにより、絶縁層成形体の上面と内部配線パターンの上面を同一平面とすることができ、内部配線パターンとその上面に形成された絶縁層成形体との間に隙間が形成されることがなく、密着力が十分となり、焼結後におけるデラミネーションの発生を防止することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の製法により得られた多層基板を、図1の断面図で説明する。尚、この例では、内部配線導体として金系、銀系、銅系導体を使用した低温焼成の多層基板で説明する。多層基板は、絶縁層1a〜1f、内部配線2、ビアホール導体3とからなり、多層基板の表面には表面配線4、厚膜抵抗体膜5、各種電子部品6が配置されている。
【0019】
即ち、絶縁層1a〜1fの厚みは40〜150μmとされ、このような複数の絶縁層1a〜1f間には、内部配線2が配置されている。内部配線2は、金系、銀系、銅系の金属材料、例えば銀系導体からなっている。また、異なる絶縁層1a〜1f間の内部配線2は、絶縁層1a〜1fの厚みを貫くビアホール導体3によって接続されている。このビアホール導体3も内部配線2と同様に金系、銀系、銅系の金属材料、例えば銀系導体からなっている。
【0020】
多層基板の表面には、絶縁層1aのビアホール導体3と接続する表面配線4が形成されており、この表面配線4上には、必要に応じて、厚膜抵抗体膜5や図示していないが厚膜保護膜が形成されたり、メッキ処理されたり、またICを含む各種電子部品6が半田やボンディング細線によって接合されている。
【0021】
このような多層基板の製法は、先ず絶縁層成形体を形成するスリップ材を形成することにより行われる。
【0022】
(スリップ材)
絶縁層成形体となるスリップ材は、例えば、セラミック材料およびガラス材料、光硬化性樹脂、有機バインダと、有機溶剤を均一混練して得られた溶剤系のスリップ材である。ここでは、ガラス−セラミックス材料を用いたが、セラミックス材料でも良い。尚、上述の実施例では溶剤系スリップ材を作製しているが、親水性の官能基を付加した光硬化性樹脂、例えば多官能基メタクリレートモノマー、有機バインダ、例えばカルボキシル変性アルキルメタクリレートを用いて、イオン交換水で混練した水系スリップ材を作成しても構わない。
【0023】
また850〜1050℃で焼成される低温焼成多層基板においては、絶縁層成形体には、セラミック材料とガラス材料(両者を合わせて固形成分という)とが互いに結合しあい強度を向上させている。
【0024】
このようなセラミック材料としては、クリストバライト、石英、コランダム(αアルミナ)、ムライト、ジルコニア、コーディエライト等の粉末であり、その平均粒径は、好ましくは1.0〜6.0μm、更に好ましくは1.5〜4.0μmである。これらのセラミック材料は2種以上混合して用いてもよい。ここで、1.0〜6.0μmのセラミック材料を用いるのは、セラミック材料の平均粒径が1.0μm未満の場合はスリップ化することが困難であり、後述の露光時に露光光が乱反射して充分な露光ができなくなり、逆に平均粒径が6.0μmを超えると緻密な絶縁層が得にくくなるからである。
【0025】
ガラス材料は、複数の金属酸化物を含むガラスフリットであり、850〜1050℃で焼成した後に、コージェエライト、ムライト、アノーサイト、セルジアン、スピネル、ガーナイト、ウィレマイト、ドロマイト、ペタライト及びその置換誘導体の結晶を少なくとも1種析出するものであれば、強度の高い絶縁層が可能となる。特に、アノーサイトまたはセルジアンを析出する結晶化ガラスフリットを用いると、より強度の高い絶縁層が得られ、また、コージェライトまたはムライトを析出し得る結晶化ガラスフリットを用いると、焼成後の熱膨張率が低いため、回路基板上にIC等のシリコンチップを配置するための回路基板としては最適となる。
【0026】
絶縁層の強度、熱膨張率を考慮した最も好ましいガラス材料としては、B2 O3 、SiO2 、Al2 O3 、ZnO、アルカリ土類酸化物を含むガラスフリットである。この様なガラスフリットは、ガラス化範囲が広く、また屈伏点が600〜800℃付近にあるため、850〜1050℃程度で焼成する場合、低温焼成多層基板に用いる内部配線、ビアホール導体となる銅系、銀系及び金系の導電材料の焼結挙動に適している。
【0027】
夫々の成分の作用として、B2 O3 、SiO2 は、主にネットワークフォーマーとして、Al2 O3 は、主にインターミディエイトとして、ZnO、アルカリ土類酸化物は、主にネットワークモディファイヤーとして作用する。
【0028】
このようなガラス材料は、上述の所定成分を所定の比率で混合して加熱溶解し、これを急冷後に粉砕することによって得られる。粉砕されたガラスフリットの平均粒径は、1.0〜5.0μm、好ましくは1.5〜3.5μmである。
【0029】
ここで、粉砕されたガラスフリットの平均粒径を1.0〜5.0μmとしたのは、平均粒径が1.0μm未満の場合はスリップ化することが困難であり、後述の露光時に露光光が乱反射して充分な露光ができなくなり、逆に平均粒径が5.0μmを超えると分散性が損なわれ、具体的には絶縁材料であるセラミック粉末間に均等に溶解分散できず、強度が非常に低下してしまうからである。
【0030】
上述のセラミック材料とガラス材料との構成比率は、セラミック材料が10重量%〜50重量%、好ましくは20重量%〜35重量%であり、ガラス材料が50重量%〜90重量%、好ましくは65重量%〜80重量%である。
【0031】
ここで、セラミック材料が10重量%〜50重量%、即ち、ガラス材料が50重量%〜90重量%としたのは、セラミック材料が10重量%未満、且つガラス材料が90重量%を越えると、絶縁層にガラス質が増加しすぎ、絶縁層の強度等からしても不適切であり、また、セラミック材料が50重量%を越え、且つガラス材料が50重量%未満となると、後述の露光時に露光光が乱反射して充分な露光ができなり、焼成後の絶縁層の緻密性も損なわれるからである。
【0032】
上述のセラミック材料、ガラス材料の他に、スリップ材の構成材料としては、焼結によって消失される光硬化可能なモノマー、有機バインダーと、更に、有機溶剤を含んでいる。
【0033】
尚、有機溶剤は主にスリップの粘度等を調整するものであり、焼成工程の脱バインダ過程で完全に消失してしまう。
【0034】
スリップ材の光硬化可能なモノマーは、低温短時間の焼成工程に対応するために、熱分解性に優れたものでなくてはならない。光硬化可能なモノマーとしては、スリップ材の塗布・乾燥後の露光によって光重合される必要があり、遊離ラジカルの形成、連鎖生長付加重合が可能で、2級もしくは3級炭素を有したモノマーが好ましく、例えば少なくとも1つの重合可能なエチレン系基を有するブチルアクリレート等のアルキルアクリレートおよびそれらに対応するアルキルメタクリレートが有効である。また、テトラエチレングリコールジアクリレート等のポリエチングリコールジアクリレートおよびそれらに対応するメタクリレートも有効である。光硬化可能なモノマーは、露光で硬化され、現像で露光以外の部分が容易に除去できるような範囲で添加され、例えば、固形分に対して5〜15重量%である。
【0035】
スリップ材の有機バインダは、光硬化可能なモノマー同様に熱分解性の良好なものでなくてはならない。同時にスリップの粘性を決めるものであるため、固形分との濡れ性も重視せねばならず、本発明者等の検討によればアクリル酸もしくはメタクリル酸系重合体のようなカルボキシル基、アルコール性水酸基を備えたエチレン性不飽和化合物が好ましい。添加量としては固形分に対して25重量%以下が好ましい。
【0036】
スリップ材における光硬化可能なモノマー及び有機バインダは上述したように熱分解性の良好なものでなくてはならないが、具体的には600℃以下で熱分解が可能でなくてはならない。更に好ましくは500℃以下である。熱分解温度が600℃を越えると、絶縁層内に残存してしまい、カーボンとしてトラップし、基板を灰色に変色させたり、絶縁層の絶縁抵抗までも低下させてしまう。またボイドとなりデラミネーションを起こすことがある。
【0037】
また、スリップ材として、増感剤、光開始系材料等を必要に応じて添加しても構わない。例えば、光開始系材料としては、ベンゾフェノン類、アシロインエステル類化合物などが挙げられる。
【0038】
上述のように、セラミック材料、ガラス材料、光硬化可能なモノマー、有機バインダ、さらに、有機溶剤とともに混合、混練して、絶縁層となる溶剤系スリップ材が構成される。混合・混練方法は従来より用いられている方法、例えばボールミルによる方法を用いればよい。スリップ材の薄層化方法は、例えば、ドクターブレード法(ナイフコート法)、ロールコート法、印刷法などにより形成され、特に塗布後の絶縁膜の表面が平坦化することが容易なドクターブレード法などが好適である。尚、薄層化の方法に応じて所定粘度に調整される。
【0039】
(導電性ペースト)
また、内部配線やビアホール導体となる導体材料の導電性ペーストは、金、銀、銅もしくはその合金のうち少なくとも1つの金属材料の粉末と、基板材料との焼結挙動を合わせるための低融点ガラス成分と、有機バインダーと及び有機溶剤とを均質混練したものが使用される。必要に応じて光硬化可能なモノマーあるいはポリマーを添加しておき、ペースト乾燥後に導体乾燥膜を光硬化させておくと、導体乾燥膜の強度をあげておくと、積層時のハンドリング等による導体膜の断線を防止することができる。
【0040】
尚、焼成温度が850〜1050℃であるため、金属材料としては、比較的低融点であり、且つ低抵抗材料が選択され、また、低融点ガラス成分も、絶縁層となる絶縁層成形体(スリップ材を塗布、乾燥したもの)との焼結挙動を考慮して、その屈伏点が700℃前後となるものが使用される。
【0041】
(光硬化性樹脂フィルム)
内部配線パターンを形成するための貫通溝または貫通孔を形成する光硬化性樹脂フィルムを準備する。この光硬化性樹脂フィルムは、上述の光硬化可能なモノマー及びフィルムの保形性を上げるためのポリマーからなるフィルムでも良い。また、ここで用いられる光硬化性樹脂フィルムは内部配線パターン形成後には直ちに剥離・除去されるため、上述の絶縁層形成用のスリップ材に用いられる樹脂のように熱分解性が良好である必要はなく、エポキシ樹脂のような熱分解性のあまり良くない樹脂材料を用いてもよい。エポキシ樹脂の場合はフィルムの強度を保つ上では有利である。
【0042】
(製法)
本発明の多層基板の製法は、まず、図2(a)に示すように、支持板10上にスリップ材を塗布し、乾燥して絶縁層1fとなる絶縁層成形体11fを形成する。尚、支持板10上に、先ず、表面配線となる導電性ペーストを印刷し、その上に上記スリップ材を塗布しても良い。この場合には、表面配線4は絶縁層成形体11f中に埋設されることになる。
【0043】
スリップ材の塗布方法としては、ドクターブレード法やロールコート法、塗布面積を概略支持板と同一面積とするスクリーンを用いた印刷法などによって形成される。乾燥方法としては、バッチ式乾燥炉、インライン式乾燥炉を用いて行われ、乾燥条件は120℃以下が望ましい。また、急激な乾燥は表面にクラックを発生する可能性があるため、急加熱は避けることが重要となる。
【0044】
ここで、支持板10としては、ガラス基板、有機フィルム、アルミナセラミックなどが例示できる。この支持板10は、焼成工程前で取り外されるが、特にアルミナセラミックなどの場合には、同時に焼成を行い、完成品の多層セラミック基板の一部を構成するようにしても構わない。従って、このアルミナ支持板に、内部配線や表面配線を形成しておいても構わない。
【0045】
次に、図2(b)に示すように、支持板10上に形成した絶縁層成形体11fにビアホール導体3となる貫通孔(貫通溝)を形成する。尚、実際には、貫通孔の下部は、支持板10などによって閉塞されているが、便宜上貫通孔という。貫通孔の形成方法は、露光・現像を用いて行う。尚、ビアホール導体の形成の不要な絶縁層成形体については、この貫通孔の形成及びビアホール導体となる導電性ペーストの充填を省略する。
【0046】
露光処理は、例えば、フォトマスク31を絶縁層成形体11f上に近接または載置して、貫通孔以外の領域に、低圧、高圧、超高圧の水銀灯系の露光光を照射する。これにより、貫通孔以外の領域では、光硬化可能なモノマーが光重合反応を起こし、非溶化部Xとなり、貫通孔部分のみが現像処理によって除去可能な溶化部Yとなる。尚、実際には、フォトターゲット31を絶縁層成形体11fに接触させて露光した方が露光精度は向上する。また、最適露光時間は絶縁層成形体11fの厚み、貫通孔の直径などで決まる。尚、露光装置は所謂写真製版技術に用いられる一般的なものでよい。
【0047】
現像処理は、炭酸ナトリウムや有機系アミン等の弱アルカリ水溶液を例えばスプレー現像法やパドル現像法によって、貫通孔である露光溶化部に接触させ、現像を行う。その後必要に応じて洗浄及び乾燥を行う。これにより、図2(c)に示すように、絶縁層成形体11fに貫通孔30を形成する。
【0048】
次に、図2(d)に示すように、導電性ペーストを貫通孔30に充填し、乾燥することによって、ビアホール導体となる導体部材31を形成する。貫通孔30への導電性ペーストの充填方法は、例えばスクリーン印刷方法で行なう。
【0049】
次に、内部配線となる内部配線パターンを形成する。まず、図2(e)に示すように、導体部材31が形成された絶縁層成形体11f上に、上記光硬化性樹脂フィルム7を貼り付ける。この貼り付けは、ローラー等を用いて空気等を巻き込まないように行なう。
【0050】
次に、光硬化性樹脂フィルム7に露光処理を行なう。露光は、図2(f)に示すように、内部配線パターンが形成される部分が遮光されるフォトマスク33を絶縁層成形体11f上に近接または載置して上記と同様の水銀灯により露光して遮光部以外の部分7Xを光硬化させる。露光した光硬化性樹脂フィルム7に上述と同様の方法で現像処理を行ない、光硬化させなかった内部配線パターンの形成部分7Yを溶解除去して、図2(g)に示すように、貫通孔35を形成する。
【0051】
この後、内部配線パターンの形成部分7Yに相当する貫通孔35に導電性ペースト37を充填する。充填は、導電性ペーストを直接光硬化性樹脂フィルム7上に載せ、スキージ39を光硬化性樹脂フィルム7上を摺動させることにより、図2(h)に示すように、圧入、充填する。尚、注射器等を用いてペーストを注入、充填しても良い。
【0052】
次に、図2(i)に示すように、光硬化性樹脂フィルム7を絶縁層積層体11fから剥離し除去することで、内部配線パターン41が形成される。尚、導電性ペーストに光硬化可能なモノマーやポリマーを添加し、導電性ペーストの充填、乾燥後に光硬化させておくと、充填した導体膜の強度が上がり、後の光硬化性樹脂フィルム7剥離工程における導体膜の保型が確実にできる。
【0053】
次に、上記スリップ材を用いて内部配線パターンの厚みに相当する厚みの絶縁層成形体11f’を、内部配線パターン41の形成されていない絶縁層積層体11fの面に形成する。絶縁層成形体11f’の形成は、図2(j)に示すように、上記スリップ材を用いて、内部配線パターン41の形成されていない絶縁層積層体11f上にドクターブレード法により形成する。
【0054】
以上、スリップ材の塗布・乾燥による絶縁層成形体の形成、露光・現像による貫通孔の形成、導電性ペーストの貫通孔への充填によるビアホール導体の形成、更に光硬化性樹脂フィルムを用いた露光・現像による内部配線パターン形成用の貫通孔の形成と、その貫通孔への導電性ペーストの充填による内部配線パターンの形成で、基本的に1層分の絶縁層成形体に内部配線パターンの形成が終了し、これを所望の回数繰り返すことにより未焼成状態の多層基板(積層成形体)が完成する。この後、支持板10と積層成形体を分離し、支持板10を除去し、その後、必要に応じてプレス等を行ない形状を整えたり、分割用のスリットを形成する。
【0055】
最後に焼成を行なう。焼成工程は脱バインダ過程と焼成過程からなり、脱バインダ過程(〜600℃)で絶縁層成形体、内部配線パターン及びビアホール導体となる導電部材の有機成分を消失し、その後所定雰囲気、所定温度で絶縁層成形体、内部配線パターン、ビアホール導体となる導電部材を一括的に焼成する。
【0056】
このようにして得られた多層基板は、基板の表面に各種処理を行う。例えば、メッキ被覆処理を行なったり、さらにICチップを含む各種電子部品の接合を行う。
【0057】
尚、表面厚膜導体パターン、厚膜抵抗体及び厚膜保護膜の形成においては、上述の絶縁層成形体と内部配線パターンの多層化後に形成された積層成形体に印刷を行い、積層成形体の焼成工程で、同時に焼成しても構わない。また、表面厚膜導体パターンの一部、例えば最上層のビアホール導体と接続する表面ランド電極のみを積層成形体上に印刷し、同時に焼成しても構わない。
【0058】
また、上記例では、絶縁層成形体中に光硬化性樹脂を含有するスラリーを塗布するビルドアップ法により積層成形体を作製したが、例えば、光硬化性樹脂を含有していないスラリーを用いてビルドアップ法により積層成形体を作製する場合や、絶縁層成形体中に光硬化性樹脂を含有するグリーンシートを用いて積層成形体を作製する場合について、さらには、光硬化性樹脂を含有していないグリーンシートを用いて積層成形体を作製する場合についても、本発明は有効である。
【0059】
以上のような多層基板の製法では、支持板10の同一の位置合わせ基準によりパターンを形成し、かつメッシュスクリーンのような変形を起こしやすいものを用いずに、例えば、スキージ39を光硬化性樹脂フィルム7上を摺動させ、光硬化性樹脂フィルム7上の導電性ペーストを貫通孔35内に充填して内部配線パターン41を形成するため、内部配線パターン41形成の位置精度は極めて良く、また得られる内部配線パターン41の断面形状もシャープな矩形状となり、高密度なパターンの形成や高周波回路の特性向上に有用であり、高周波モジュールの小型化・高性能化を達成できる。
【0060】
また、本発明では、内部配線パターンを形成する場合、光硬化性樹脂フィルムの厚みを任意に変えることにより、内部配線パターンの厚みを任意に設定できるため、内部配線の膜厚設計の自由度を向上できる。
【0061】
【実施例】
(材料)
まず、絶縁層1a〜1fとなるスリップ材を作成する。
【0062】
溶剤系スリップ材は、例えば、ガラス材料であるSiO2 、Al2 O3 、ZnO、MgO、B2 O3 を主成分とする結晶化ガラス粉末70重量%と、セラミック材料であるアルミナ粉末30重量%とからなるガラス−セラミック粉末と、光硬化可能なモノマーであるポリオキシエチル化トリメチロールプロパントリアクリレートと、有機バインダであるアルキルメタクリレートと、可塑剤とを、有機溶剤であるエチルカルビトールアセテートに混合し、ボールミルで約48時間混練して作製した。
【0063】
光硬化性樹脂フィルム7には、光硬化性モノマーとして、トリメチロールプロパントリアクリレート、保型用ポリマーとしてメチルアクリレートからなる樹脂を混合した膜厚が25μmのフィルムを用いた。
【0064】
また、内部配線2、ビアホール導体3となる導電性ペーストを作成する。導電性ペーストは、銀粉末と、B2 O3 −SiO2 −BaOガラス、CaO−B2 O3 −SiO2 からなる硼珪酸系低融点ガラスを用い、有機溶剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオ−ルモノイソブチレ−トに混合し3本ロールミルで均質に混練して作製した。
【0065】
(製造工程)
上述のスリップ材を、用意された支持板10上に、塗布・乾燥を行い、最下層となる絶縁層成形体11fを形成する。
【0066】
具体的には、図2(a)に示すように、まず、支持板10上に、上述のスリップ材をドクターブレード法によって塗布、乾燥して、絶縁層成形体11fを形成する。塗布後の乾燥条件は、60〜80℃で20分とし、塗布・乾燥された絶縁層成形体11fの厚みを100μmとした。
【0067】
次に、絶縁層成形体11fに、図2(b)に示すように、絶縁層成形体11f上に、貫通孔が形成される領域が遮光されるようなフォトマスク31を載置して、超高圧水銀灯(10mW/cm2 )を光源として用いて露光を行ない、ビアホール導体が形成されない非溶化部Xのみを硬化させ、ビアホール導体が形成される絶縁層成形体11fの溶化部Yを、トリエタノールアミン水溶液を現像液として用いてスプレー現像し、現像により生じる不要なカスなどを洗浄、乾燥し、これにより、図2(c)に示すように、貫通孔30を形成した。
【0068】
次に、図2(d)に示すように、貫通孔30内に、貫通孔30に相当する部位のみに印刷可能なスクリーンを用いた印刷によって、上述の導電性ペーストを充填し、乾燥した。
【0069】
次に、内部配線2となる内部配線パターンの形成を行った。まず、図2(e)に示すように、絶縁層成形体11f上に、ローラーを用いて光硬化性樹脂フィルム7を貼り付け、次に図2(f)に示すように、内部配線パターンが形成される部分7Xが遮光されるようなフォトマスク33を光硬化性樹脂フィルム7上に載置して、超高圧水銀灯(10mW/cm2 )を光源として用いて5秒間露光処理を行なった後、現像処理を行なって内部配線パターンを形成する部分に貫通孔35を形成した。更に、図2(g)に示すように、ゴムスキージ39を絶縁層成形体11f上を摺動させることにより、図2(h)に示すように、貫通孔35内に導電性ペースト37を圧入、充填して、80℃で15分乾燥した。
【0070】
この後、図2(i)に示すように光硬化性樹脂フィルム7を剥離除去することにより、内部配線パターン41を形成した。この後、上述のスリップ材により、ゴムスキージを内部配線パターン41上を摺動させることにより、図2(j)に示すように、内部配線パターン41が形成されていない絶縁層成形体11f上に、内部配線パターン41と同一厚みの絶縁層成形体11f’を形成した。
【0071】
こうして、ビアホール導体3となる導電部材31および内部配線パターン41を有する絶縁層成形体11f及び絶縁層成形体11f’を形成した。
【0072】
以降、上記工程を必要回数繰り返して、積層成形体を作製した。最後に、表面配線4となる導体膜を印刷・乾燥により形成した。
【0073】
次に、積層成形体をプレスで形状を整え、積層成形体から支持板10を取り外し、脱バイ後に、900℃30分ピークで焼成し、これにより6層の絶縁層1a〜1f間に内部配線2、ビアホール導体3を形成し、さらに表面配線4を形成した図1に示した多層基板を作製した。
【0074】
このようにして得られた多層セラミック配線基板について、内蔵されたコンデンサ形成部分の電極の積層ずれを測定したところ、10μmであった。
【0075】
一方、比較例として、内部配線パターンの形成をスクリーン印刷により形成する以外は、上記と同様にして多層セラミック配線基板を作製し、コンデンサ形成部分の電極の積層ずれを測定したところ、40μmのパターン積層ずれが見られた。これにより、本発明による方法では、内部配線パターンの位置精度が著しく向上していることが判る。
【0076】
【発明の効果】
本発明の多層基板の製法によれば、支持板の同一の位置合わせ基準によりパターンを形成し、かつメッシュスクリーンのような変形を起こしやすいものを用いずに、例えば、スキージを光硬化性樹脂フィルム上を摺動させ、光硬化性樹脂フィルム上の導電性ペーストを貫通孔内に充填して内部配線パターンを形成するため、配線パターン形成の位置精度は極めて良く、また得られるパターンの形状もシャープな矩形状となる。さらに、光硬化性樹脂フィルムの厚みを変えることで配線パターンの膜厚も自由に設計することが可能となる。したがって、高密度な配線パターンの形成や高周波回路の特性向上に有用であり、高周波モジュールの小型化・高性能化が達成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製法により得られた多層基板を示す断面図である。
【図2】本発明の多層基板の製法を説明するための工程工程図である。
【符号の説明】
7・・・光硬化性樹脂フィルム
10・・・支持板
1a〜1f・・・絶縁層
11a〜11f・・・絶縁層成形体
30・・・貫通孔
37・・・導電性ペースト
41・・・内部配線パターン
【発明の属する技術分野】
本発明は多層基板の製法に関し、特に、通信機器・電子機器用部品である高周波モジュール用基板として用いられるフィルター素子等を内蔵可能な多層基板の製法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
一般に多層基板は、ガラス−セラミックなどの絶縁層を複数積層してなり、その内部には、タングステン等の高融点金属材料、金、銀、銅などの低抵抗材料からなる内部配線やビアホール導体が形成されている。
【0003】
従来、多層基板の製法は、絶縁層となるガラス材料・セラミック材料を含有するスリップ材を形成し、ドクターブレード法などによってグリーンシートを作成し、次に、グリーンシートにビアホール導体となる位置にNCパンチや金型などで貫通孔を形成し、次に内部配線パターン及びビアホール導体に応じてグリーンシート上に導電性ペーストを印刷・充填し、次に、これらのグリーンシートを複数積層して、この積層成形体を一括して同時焼成する、いわゆるグリーンシート積層方式である。
【0004】
しかしながら、上述のグリーンシート積層方式による製法は、絶縁層となるグリーンシートを作製するためのテープ成型工程が必要であること、さらに異なる絶縁層間の内部配線を接続するためのビアホール導体となる貫通孔を開ける工程が必要となる。孔開け工程は、金型やNCパンチを用いることが一般的であり、NCパンチの場合、1つずつ孔を開けなくてはならないため、工数がかかり高価になってしまう。
【0005】
また、1枚のグリーンシートに複数種類の孔径の貫通孔を作製する場合、例えば電源用、アース用の導体となるビアホール導体を、他のビアホール導体よりも大径に設定したい場合には、その都度金型やNCパンチを交換する必要があり、極めて煩雑となってしまう。尚、NCパンチで貫通孔を形成する場合に、その孔径は最小でも100μm程度が限界であり、それ以上でなければ貫通孔は形成できなかった。
【0006】
さらに、グリーンシート積層方式の場合、グリーンシートの積層一体化時の位置合わせやグリーンシートの伸び等の変形の影響で、層間積層精度が悪く、100μm程度の積層ズレを引き起こし、内蔵する素子の特性バラツキの原因となっていた。
【0007】
上記グリーンシート多層方式による問題を解決するための多層基板の製法として、従来、支持板上に絶縁層材料と、光硬化可能なモノマーと、有機バインダーとを含有するスリップ材を薄層化し乾燥して絶縁層成形体を形成し、該絶縁層成形体に選択的な露光処理を施した後、現像処理してビアホール導体を形成するための貫通孔を形成し、貫通孔への導電性ペーストの充填及び絶縁層成形体上への内部配線パターンの形成を必要積層数繰り返して積層成形体を作製し、積層成形体を一括焼成して基板を得る製法が開示されている(特開平7−154073号公報)。
【0008】
この方法によれば、支持板を位置合わせ基準とし、フォトプロセスを用いた積層方法を採用しているため、積層時の位置精度が向上し、また一層当たりの厚みが薄いシートに小径から大径の種々の径の貫通孔を一挙に形成することができ、ハンドリング性の問題はなく、グリーンシート積層方式における問題を解決することができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記製法においても、内部配線パターンの形成は、グリーンシート積層方式と同様の一般のスクリーン印刷法による導電性ペーストの印刷・配線形成により行なっていたため、印刷用スクリーンの経時的な伸びや印刷機の位置合わせ精度等の影響でパターン印刷のズレは避けられず、層間における内部配線パターンの位置ズレが50μm程度発生していた。
【0010】
また、スクリーン印刷法の場合は、印刷したパターンの断面形状がペーストのニジミやダレのためにシャープな矩形状とならず、配線密度を上げるためのファインラインの形成や、高周波信号の伝送特性に対しての問題となっていた。
【0011】
本発明は、内部配線パターンを所望の位置に確実に形成することができるとともに、内部配線パターンの断面形状をシャープな矩形状とできる多層基板の製法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の多層基板の製法は、光硬化性樹脂を含有する複数の絶縁層成形体を積層してなるとともに、隣接する絶縁層成形体間に内部配線パターンを有する積層成形体を作製した後、該積層成形体を焼成する多層基板の製法であって、前記積層成形体の作製工程が、(e)支持板上に、ガラス−セラミックスまたはセラミックスからなる絶縁層材料と、光硬化性樹脂とを含有するスリップ材を塗布し、乾燥して絶縁層成形体を形成する工程と、(f)乾燥された絶縁層成形体を露光し、硬化する工程と、(g)露光し、硬化された前記絶縁層成形体上に、前記スリップ材を塗布、乾燥して前記絶縁層成形体を形成する工程と、前記(f)(g)工程とを繰り返す工程を具備するとともに、前記絶縁層成形体上に前記内部配線パターンを形成する工程を有し、該内部配線パターン形成工程が、(a)絶縁層成形体上に光硬化性樹脂フィルムを貼り付ける工程、(b)前記光硬化性樹脂フィルムを露光、現像し、前記内部配線パターンに相当する部分に貫通孔を形成する工程、(c)前記光硬化性樹脂フィルムの貫通孔に導電性ペーストを充填する工程、(d)前記光硬化性樹脂フィルムを前記絶縁層成形体より剥離する工程を具備する。
また、本発明の多層基板の製法は、複数の絶縁層成形体を積層してなるとともに、隣接する絶縁層成形体間に内部配線パターンを有する積層成形体を作製した後、該積層成形体を焼成する多層基板の製法であって、前記積層成形体の作製工程が、ガラス−セラミックスまたはセラミックスからなる絶縁層材料を含有するスリップ材(光硬化性樹脂を含有せず)を塗布し、乾燥して前記絶縁層成形体を形成する工程と、該絶縁層成形体上に、前記スリップ材を塗布、乾燥して前記絶縁層成形体を形成する工程と、これらの工程を繰り返す工程とを具備するとともに、前記絶縁層成形体上に前記内部配線パターンを形成する工程を有し、該内部配線パターン形成工程が、(a)絶縁層成形体上に光硬化性樹脂フィルムを貼り付ける工程、(b)前記光硬化性樹脂フィルムを露光、現像し、前記内部配線パターンに相当する部分に貫通孔を形成する工程、(c)前記光硬化性樹脂フィルムの貫通孔に導電性ペーストを充填する工程、(d)前記光硬化性樹脂フィルムを前記絶縁層成形体より剥離する工程を具備する。
【0013】
このような製法によれば、支持板の同一の位置合わせ基準によりパターンを形成し、かつメッシュスクリーンのような変形を起こしやすいものを用いずに、例えば、スキージを光硬化性樹脂フィルム上を摺動させ、光硬化性樹脂フィルム上の導電性ペーストを貫通孔内に充填して内部配線パターンを形成するため、配線パターン形成の位置精度は極めて良く、また得られるパターンの形状もシャープな矩形状となる。したがって、高密度なパターンの形成や高周波回路の特性向上に有用であり、高周波モジュールの小型化・高性能化が可能となる。
また、このような製法を採用することにより、積層時の位置精度が向上し、また一層当たりの厚みが薄いシートに小径から大径までの種々の径の貫通孔を一挙に形成することができる。即ち、光硬化性樹脂フィルムの表面に露光および現像処理を施して、内部配線パターンに相当する部分に貫通孔または貫通溝を形成する際の遮光用マスクの位置合わせ基準を支持板とし、ビアホールを形成するための遮光マスクの位置合わせ基準も支持板とすることにより、ビアホール導体に対する内部配線パターンの位置精度を向上でき、その位置精度は10μm程度を達成することができる。
【0014】
また、上記(d)工程の後に、内部配線パターン形成部分以外の絶縁層成形体上に、前記内部配線パターンの厚みに相当する絶縁層成形体を形成する工程を有することが望ましい。これにより、絶縁層成形体の上面と内部配線パターンの上面を同一平面とすることができ、内部配線パターンとその上面に形成された絶縁層成形体との間に隙間が形成されることがなく、密着力が十分となり、焼結後におけるデラミネーションの発生を防止することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の製法により得られた多層基板を、図1の断面図で説明する。尚、この例では、内部配線導体として金系、銀系、銅系導体を使用した低温焼成の多層基板で説明する。多層基板は、絶縁層1a〜1f、内部配線2、ビアホール導体3とからなり、多層基板の表面には表面配線4、厚膜抵抗体膜5、各種電子部品6が配置されている。
【0019】
即ち、絶縁層1a〜1fの厚みは40〜150μmとされ、このような複数の絶縁層1a〜1f間には、内部配線2が配置されている。内部配線2は、金系、銀系、銅系の金属材料、例えば銀系導体からなっている。また、異なる絶縁層1a〜1f間の内部配線2は、絶縁層1a〜1fの厚みを貫くビアホール導体3によって接続されている。このビアホール導体3も内部配線2と同様に金系、銀系、銅系の金属材料、例えば銀系導体からなっている。
【0020】
多層基板の表面には、絶縁層1aのビアホール導体3と接続する表面配線4が形成されており、この表面配線4上には、必要に応じて、厚膜抵抗体膜5や図示していないが厚膜保護膜が形成されたり、メッキ処理されたり、またICを含む各種電子部品6が半田やボンディング細線によって接合されている。
【0021】
このような多層基板の製法は、先ず絶縁層成形体を形成するスリップ材を形成することにより行われる。
【0022】
(スリップ材)
絶縁層成形体となるスリップ材は、例えば、セラミック材料およびガラス材料、光硬化性樹脂、有機バインダと、有機溶剤を均一混練して得られた溶剤系のスリップ材である。ここでは、ガラス−セラミックス材料を用いたが、セラミックス材料でも良い。尚、上述の実施例では溶剤系スリップ材を作製しているが、親水性の官能基を付加した光硬化性樹脂、例えば多官能基メタクリレートモノマー、有機バインダ、例えばカルボキシル変性アルキルメタクリレートを用いて、イオン交換水で混練した水系スリップ材を作成しても構わない。
【0023】
また850〜1050℃で焼成される低温焼成多層基板においては、絶縁層成形体には、セラミック材料とガラス材料(両者を合わせて固形成分という)とが互いに結合しあい強度を向上させている。
【0024】
このようなセラミック材料としては、クリストバライト、石英、コランダム(αアルミナ)、ムライト、ジルコニア、コーディエライト等の粉末であり、その平均粒径は、好ましくは1.0〜6.0μm、更に好ましくは1.5〜4.0μmである。これらのセラミック材料は2種以上混合して用いてもよい。ここで、1.0〜6.0μmのセラミック材料を用いるのは、セラミック材料の平均粒径が1.0μm未満の場合はスリップ化することが困難であり、後述の露光時に露光光が乱反射して充分な露光ができなくなり、逆に平均粒径が6.0μmを超えると緻密な絶縁層が得にくくなるからである。
【0025】
ガラス材料は、複数の金属酸化物を含むガラスフリットであり、850〜1050℃で焼成した後に、コージェエライト、ムライト、アノーサイト、セルジアン、スピネル、ガーナイト、ウィレマイト、ドロマイト、ペタライト及びその置換誘導体の結晶を少なくとも1種析出するものであれば、強度の高い絶縁層が可能となる。特に、アノーサイトまたはセルジアンを析出する結晶化ガラスフリットを用いると、より強度の高い絶縁層が得られ、また、コージェライトまたはムライトを析出し得る結晶化ガラスフリットを用いると、焼成後の熱膨張率が低いため、回路基板上にIC等のシリコンチップを配置するための回路基板としては最適となる。
【0026】
絶縁層の強度、熱膨張率を考慮した最も好ましいガラス材料としては、B2 O3 、SiO2 、Al2 O3 、ZnO、アルカリ土類酸化物を含むガラスフリットである。この様なガラスフリットは、ガラス化範囲が広く、また屈伏点が600〜800℃付近にあるため、850〜1050℃程度で焼成する場合、低温焼成多層基板に用いる内部配線、ビアホール導体となる銅系、銀系及び金系の導電材料の焼結挙動に適している。
【0027】
夫々の成分の作用として、B2 O3 、SiO2 は、主にネットワークフォーマーとして、Al2 O3 は、主にインターミディエイトとして、ZnO、アルカリ土類酸化物は、主にネットワークモディファイヤーとして作用する。
【0028】
このようなガラス材料は、上述の所定成分を所定の比率で混合して加熱溶解し、これを急冷後に粉砕することによって得られる。粉砕されたガラスフリットの平均粒径は、1.0〜5.0μm、好ましくは1.5〜3.5μmである。
【0029】
ここで、粉砕されたガラスフリットの平均粒径を1.0〜5.0μmとしたのは、平均粒径が1.0μm未満の場合はスリップ化することが困難であり、後述の露光時に露光光が乱反射して充分な露光ができなくなり、逆に平均粒径が5.0μmを超えると分散性が損なわれ、具体的には絶縁材料であるセラミック粉末間に均等に溶解分散できず、強度が非常に低下してしまうからである。
【0030】
上述のセラミック材料とガラス材料との構成比率は、セラミック材料が10重量%〜50重量%、好ましくは20重量%〜35重量%であり、ガラス材料が50重量%〜90重量%、好ましくは65重量%〜80重量%である。
【0031】
ここで、セラミック材料が10重量%〜50重量%、即ち、ガラス材料が50重量%〜90重量%としたのは、セラミック材料が10重量%未満、且つガラス材料が90重量%を越えると、絶縁層にガラス質が増加しすぎ、絶縁層の強度等からしても不適切であり、また、セラミック材料が50重量%を越え、且つガラス材料が50重量%未満となると、後述の露光時に露光光が乱反射して充分な露光ができなり、焼成後の絶縁層の緻密性も損なわれるからである。
【0032】
上述のセラミック材料、ガラス材料の他に、スリップ材の構成材料としては、焼結によって消失される光硬化可能なモノマー、有機バインダーと、更に、有機溶剤を含んでいる。
【0033】
尚、有機溶剤は主にスリップの粘度等を調整するものであり、焼成工程の脱バインダ過程で完全に消失してしまう。
【0034】
スリップ材の光硬化可能なモノマーは、低温短時間の焼成工程に対応するために、熱分解性に優れたものでなくてはならない。光硬化可能なモノマーとしては、スリップ材の塗布・乾燥後の露光によって光重合される必要があり、遊離ラジカルの形成、連鎖生長付加重合が可能で、2級もしくは3級炭素を有したモノマーが好ましく、例えば少なくとも1つの重合可能なエチレン系基を有するブチルアクリレート等のアルキルアクリレートおよびそれらに対応するアルキルメタクリレートが有効である。また、テトラエチレングリコールジアクリレート等のポリエチングリコールジアクリレートおよびそれらに対応するメタクリレートも有効である。光硬化可能なモノマーは、露光で硬化され、現像で露光以外の部分が容易に除去できるような範囲で添加され、例えば、固形分に対して5〜15重量%である。
【0035】
スリップ材の有機バインダは、光硬化可能なモノマー同様に熱分解性の良好なものでなくてはならない。同時にスリップの粘性を決めるものであるため、固形分との濡れ性も重視せねばならず、本発明者等の検討によればアクリル酸もしくはメタクリル酸系重合体のようなカルボキシル基、アルコール性水酸基を備えたエチレン性不飽和化合物が好ましい。添加量としては固形分に対して25重量%以下が好ましい。
【0036】
スリップ材における光硬化可能なモノマー及び有機バインダは上述したように熱分解性の良好なものでなくてはならないが、具体的には600℃以下で熱分解が可能でなくてはならない。更に好ましくは500℃以下である。熱分解温度が600℃を越えると、絶縁層内に残存してしまい、カーボンとしてトラップし、基板を灰色に変色させたり、絶縁層の絶縁抵抗までも低下させてしまう。またボイドとなりデラミネーションを起こすことがある。
【0037】
また、スリップ材として、増感剤、光開始系材料等を必要に応じて添加しても構わない。例えば、光開始系材料としては、ベンゾフェノン類、アシロインエステル類化合物などが挙げられる。
【0038】
上述のように、セラミック材料、ガラス材料、光硬化可能なモノマー、有機バインダ、さらに、有機溶剤とともに混合、混練して、絶縁層となる溶剤系スリップ材が構成される。混合・混練方法は従来より用いられている方法、例えばボールミルによる方法を用いればよい。スリップ材の薄層化方法は、例えば、ドクターブレード法(ナイフコート法)、ロールコート法、印刷法などにより形成され、特に塗布後の絶縁膜の表面が平坦化することが容易なドクターブレード法などが好適である。尚、薄層化の方法に応じて所定粘度に調整される。
【0039】
(導電性ペースト)
また、内部配線やビアホール導体となる導体材料の導電性ペーストは、金、銀、銅もしくはその合金のうち少なくとも1つの金属材料の粉末と、基板材料との焼結挙動を合わせるための低融点ガラス成分と、有機バインダーと及び有機溶剤とを均質混練したものが使用される。必要に応じて光硬化可能なモノマーあるいはポリマーを添加しておき、ペースト乾燥後に導体乾燥膜を光硬化させておくと、導体乾燥膜の強度をあげておくと、積層時のハンドリング等による導体膜の断線を防止することができる。
【0040】
尚、焼成温度が850〜1050℃であるため、金属材料としては、比較的低融点であり、且つ低抵抗材料が選択され、また、低融点ガラス成分も、絶縁層となる絶縁層成形体(スリップ材を塗布、乾燥したもの)との焼結挙動を考慮して、その屈伏点が700℃前後となるものが使用される。
【0041】
(光硬化性樹脂フィルム)
内部配線パターンを形成するための貫通溝または貫通孔を形成する光硬化性樹脂フィルムを準備する。この光硬化性樹脂フィルムは、上述の光硬化可能なモノマー及びフィルムの保形性を上げるためのポリマーからなるフィルムでも良い。また、ここで用いられる光硬化性樹脂フィルムは内部配線パターン形成後には直ちに剥離・除去されるため、上述の絶縁層形成用のスリップ材に用いられる樹脂のように熱分解性が良好である必要はなく、エポキシ樹脂のような熱分解性のあまり良くない樹脂材料を用いてもよい。エポキシ樹脂の場合はフィルムの強度を保つ上では有利である。
【0042】
(製法)
本発明の多層基板の製法は、まず、図2(a)に示すように、支持板10上にスリップ材を塗布し、乾燥して絶縁層1fとなる絶縁層成形体11fを形成する。尚、支持板10上に、先ず、表面配線となる導電性ペーストを印刷し、その上に上記スリップ材を塗布しても良い。この場合には、表面配線4は絶縁層成形体11f中に埋設されることになる。
【0043】
スリップ材の塗布方法としては、ドクターブレード法やロールコート法、塗布面積を概略支持板と同一面積とするスクリーンを用いた印刷法などによって形成される。乾燥方法としては、バッチ式乾燥炉、インライン式乾燥炉を用いて行われ、乾燥条件は120℃以下が望ましい。また、急激な乾燥は表面にクラックを発生する可能性があるため、急加熱は避けることが重要となる。
【0044】
ここで、支持板10としては、ガラス基板、有機フィルム、アルミナセラミックなどが例示できる。この支持板10は、焼成工程前で取り外されるが、特にアルミナセラミックなどの場合には、同時に焼成を行い、完成品の多層セラミック基板の一部を構成するようにしても構わない。従って、このアルミナ支持板に、内部配線や表面配線を形成しておいても構わない。
【0045】
次に、図2(b)に示すように、支持板10上に形成した絶縁層成形体11fにビアホール導体3となる貫通孔(貫通溝)を形成する。尚、実際には、貫通孔の下部は、支持板10などによって閉塞されているが、便宜上貫通孔という。貫通孔の形成方法は、露光・現像を用いて行う。尚、ビアホール導体の形成の不要な絶縁層成形体については、この貫通孔の形成及びビアホール導体となる導電性ペーストの充填を省略する。
【0046】
露光処理は、例えば、フォトマスク31を絶縁層成形体11f上に近接または載置して、貫通孔以外の領域に、低圧、高圧、超高圧の水銀灯系の露光光を照射する。これにより、貫通孔以外の領域では、光硬化可能なモノマーが光重合反応を起こし、非溶化部Xとなり、貫通孔部分のみが現像処理によって除去可能な溶化部Yとなる。尚、実際には、フォトターゲット31を絶縁層成形体11fに接触させて露光した方が露光精度は向上する。また、最適露光時間は絶縁層成形体11fの厚み、貫通孔の直径などで決まる。尚、露光装置は所謂写真製版技術に用いられる一般的なものでよい。
【0047】
現像処理は、炭酸ナトリウムや有機系アミン等の弱アルカリ水溶液を例えばスプレー現像法やパドル現像法によって、貫通孔である露光溶化部に接触させ、現像を行う。その後必要に応じて洗浄及び乾燥を行う。これにより、図2(c)に示すように、絶縁層成形体11fに貫通孔30を形成する。
【0048】
次に、図2(d)に示すように、導電性ペーストを貫通孔30に充填し、乾燥することによって、ビアホール導体となる導体部材31を形成する。貫通孔30への導電性ペーストの充填方法は、例えばスクリーン印刷方法で行なう。
【0049】
次に、内部配線となる内部配線パターンを形成する。まず、図2(e)に示すように、導体部材31が形成された絶縁層成形体11f上に、上記光硬化性樹脂フィルム7を貼り付ける。この貼り付けは、ローラー等を用いて空気等を巻き込まないように行なう。
【0050】
次に、光硬化性樹脂フィルム7に露光処理を行なう。露光は、図2(f)に示すように、内部配線パターンが形成される部分が遮光されるフォトマスク33を絶縁層成形体11f上に近接または載置して上記と同様の水銀灯により露光して遮光部以外の部分7Xを光硬化させる。露光した光硬化性樹脂フィルム7に上述と同様の方法で現像処理を行ない、光硬化させなかった内部配線パターンの形成部分7Yを溶解除去して、図2(g)に示すように、貫通孔35を形成する。
【0051】
この後、内部配線パターンの形成部分7Yに相当する貫通孔35に導電性ペースト37を充填する。充填は、導電性ペーストを直接光硬化性樹脂フィルム7上に載せ、スキージ39を光硬化性樹脂フィルム7上を摺動させることにより、図2(h)に示すように、圧入、充填する。尚、注射器等を用いてペーストを注入、充填しても良い。
【0052】
次に、図2(i)に示すように、光硬化性樹脂フィルム7を絶縁層積層体11fから剥離し除去することで、内部配線パターン41が形成される。尚、導電性ペーストに光硬化可能なモノマーやポリマーを添加し、導電性ペーストの充填、乾燥後に光硬化させておくと、充填した導体膜の強度が上がり、後の光硬化性樹脂フィルム7剥離工程における導体膜の保型が確実にできる。
【0053】
次に、上記スリップ材を用いて内部配線パターンの厚みに相当する厚みの絶縁層成形体11f’を、内部配線パターン41の形成されていない絶縁層積層体11fの面に形成する。絶縁層成形体11f’の形成は、図2(j)に示すように、上記スリップ材を用いて、内部配線パターン41の形成されていない絶縁層積層体11f上にドクターブレード法により形成する。
【0054】
以上、スリップ材の塗布・乾燥による絶縁層成形体の形成、露光・現像による貫通孔の形成、導電性ペーストの貫通孔への充填によるビアホール導体の形成、更に光硬化性樹脂フィルムを用いた露光・現像による内部配線パターン形成用の貫通孔の形成と、その貫通孔への導電性ペーストの充填による内部配線パターンの形成で、基本的に1層分の絶縁層成形体に内部配線パターンの形成が終了し、これを所望の回数繰り返すことにより未焼成状態の多層基板(積層成形体)が完成する。この後、支持板10と積層成形体を分離し、支持板10を除去し、その後、必要に応じてプレス等を行ない形状を整えたり、分割用のスリットを形成する。
【0055】
最後に焼成を行なう。焼成工程は脱バインダ過程と焼成過程からなり、脱バインダ過程(〜600℃)で絶縁層成形体、内部配線パターン及びビアホール導体となる導電部材の有機成分を消失し、その後所定雰囲気、所定温度で絶縁層成形体、内部配線パターン、ビアホール導体となる導電部材を一括的に焼成する。
【0056】
このようにして得られた多層基板は、基板の表面に各種処理を行う。例えば、メッキ被覆処理を行なったり、さらにICチップを含む各種電子部品の接合を行う。
【0057】
尚、表面厚膜導体パターン、厚膜抵抗体及び厚膜保護膜の形成においては、上述の絶縁層成形体と内部配線パターンの多層化後に形成された積層成形体に印刷を行い、積層成形体の焼成工程で、同時に焼成しても構わない。また、表面厚膜導体パターンの一部、例えば最上層のビアホール導体と接続する表面ランド電極のみを積層成形体上に印刷し、同時に焼成しても構わない。
【0058】
また、上記例では、絶縁層成形体中に光硬化性樹脂を含有するスラリーを塗布するビルドアップ法により積層成形体を作製したが、例えば、光硬化性樹脂を含有していないスラリーを用いてビルドアップ法により積層成形体を作製する場合や、絶縁層成形体中に光硬化性樹脂を含有するグリーンシートを用いて積層成形体を作製する場合について、さらには、光硬化性樹脂を含有していないグリーンシートを用いて積層成形体を作製する場合についても、本発明は有効である。
【0059】
以上のような多層基板の製法では、支持板10の同一の位置合わせ基準によりパターンを形成し、かつメッシュスクリーンのような変形を起こしやすいものを用いずに、例えば、スキージ39を光硬化性樹脂フィルム7上を摺動させ、光硬化性樹脂フィルム7上の導電性ペーストを貫通孔35内に充填して内部配線パターン41を形成するため、内部配線パターン41形成の位置精度は極めて良く、また得られる内部配線パターン41の断面形状もシャープな矩形状となり、高密度なパターンの形成や高周波回路の特性向上に有用であり、高周波モジュールの小型化・高性能化を達成できる。
【0060】
また、本発明では、内部配線パターンを形成する場合、光硬化性樹脂フィルムの厚みを任意に変えることにより、内部配線パターンの厚みを任意に設定できるため、内部配線の膜厚設計の自由度を向上できる。
【0061】
【実施例】
(材料)
まず、絶縁層1a〜1fとなるスリップ材を作成する。
【0062】
溶剤系スリップ材は、例えば、ガラス材料であるSiO2 、Al2 O3 、ZnO、MgO、B2 O3 を主成分とする結晶化ガラス粉末70重量%と、セラミック材料であるアルミナ粉末30重量%とからなるガラス−セラミック粉末と、光硬化可能なモノマーであるポリオキシエチル化トリメチロールプロパントリアクリレートと、有機バインダであるアルキルメタクリレートと、可塑剤とを、有機溶剤であるエチルカルビトールアセテートに混合し、ボールミルで約48時間混練して作製した。
【0063】
光硬化性樹脂フィルム7には、光硬化性モノマーとして、トリメチロールプロパントリアクリレート、保型用ポリマーとしてメチルアクリレートからなる樹脂を混合した膜厚が25μmのフィルムを用いた。
【0064】
また、内部配線2、ビアホール導体3となる導電性ペーストを作成する。導電性ペーストは、銀粉末と、B2 O3 −SiO2 −BaOガラス、CaO−B2 O3 −SiO2 からなる硼珪酸系低融点ガラスを用い、有機溶剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオ−ルモノイソブチレ−トに混合し3本ロールミルで均質に混練して作製した。
【0065】
(製造工程)
上述のスリップ材を、用意された支持板10上に、塗布・乾燥を行い、最下層となる絶縁層成形体11fを形成する。
【0066】
具体的には、図2(a)に示すように、まず、支持板10上に、上述のスリップ材をドクターブレード法によって塗布、乾燥して、絶縁層成形体11fを形成する。塗布後の乾燥条件は、60〜80℃で20分とし、塗布・乾燥された絶縁層成形体11fの厚みを100μmとした。
【0067】
次に、絶縁層成形体11fに、図2(b)に示すように、絶縁層成形体11f上に、貫通孔が形成される領域が遮光されるようなフォトマスク31を載置して、超高圧水銀灯(10mW/cm2 )を光源として用いて露光を行ない、ビアホール導体が形成されない非溶化部Xのみを硬化させ、ビアホール導体が形成される絶縁層成形体11fの溶化部Yを、トリエタノールアミン水溶液を現像液として用いてスプレー現像し、現像により生じる不要なカスなどを洗浄、乾燥し、これにより、図2(c)に示すように、貫通孔30を形成した。
【0068】
次に、図2(d)に示すように、貫通孔30内に、貫通孔30に相当する部位のみに印刷可能なスクリーンを用いた印刷によって、上述の導電性ペーストを充填し、乾燥した。
【0069】
次に、内部配線2となる内部配線パターンの形成を行った。まず、図2(e)に示すように、絶縁層成形体11f上に、ローラーを用いて光硬化性樹脂フィルム7を貼り付け、次に図2(f)に示すように、内部配線パターンが形成される部分7Xが遮光されるようなフォトマスク33を光硬化性樹脂フィルム7上に載置して、超高圧水銀灯(10mW/cm2 )を光源として用いて5秒間露光処理を行なった後、現像処理を行なって内部配線パターンを形成する部分に貫通孔35を形成した。更に、図2(g)に示すように、ゴムスキージ39を絶縁層成形体11f上を摺動させることにより、図2(h)に示すように、貫通孔35内に導電性ペースト37を圧入、充填して、80℃で15分乾燥した。
【0070】
この後、図2(i)に示すように光硬化性樹脂フィルム7を剥離除去することにより、内部配線パターン41を形成した。この後、上述のスリップ材により、ゴムスキージを内部配線パターン41上を摺動させることにより、図2(j)に示すように、内部配線パターン41が形成されていない絶縁層成形体11f上に、内部配線パターン41と同一厚みの絶縁層成形体11f’を形成した。
【0071】
こうして、ビアホール導体3となる導電部材31および内部配線パターン41を有する絶縁層成形体11f及び絶縁層成形体11f’を形成した。
【0072】
以降、上記工程を必要回数繰り返して、積層成形体を作製した。最後に、表面配線4となる導体膜を印刷・乾燥により形成した。
【0073】
次に、積層成形体をプレスで形状を整え、積層成形体から支持板10を取り外し、脱バイ後に、900℃30分ピークで焼成し、これにより6層の絶縁層1a〜1f間に内部配線2、ビアホール導体3を形成し、さらに表面配線4を形成した図1に示した多層基板を作製した。
【0074】
このようにして得られた多層セラミック配線基板について、内蔵されたコンデンサ形成部分の電極の積層ずれを測定したところ、10μmであった。
【0075】
一方、比較例として、内部配線パターンの形成をスクリーン印刷により形成する以外は、上記と同様にして多層セラミック配線基板を作製し、コンデンサ形成部分の電極の積層ずれを測定したところ、40μmのパターン積層ずれが見られた。これにより、本発明による方法では、内部配線パターンの位置精度が著しく向上していることが判る。
【0076】
【発明の効果】
本発明の多層基板の製法によれば、支持板の同一の位置合わせ基準によりパターンを形成し、かつメッシュスクリーンのような変形を起こしやすいものを用いずに、例えば、スキージを光硬化性樹脂フィルム上を摺動させ、光硬化性樹脂フィルム上の導電性ペーストを貫通孔内に充填して内部配線パターンを形成するため、配線パターン形成の位置精度は極めて良く、また得られるパターンの形状もシャープな矩形状となる。さらに、光硬化性樹脂フィルムの厚みを変えることで配線パターンの膜厚も自由に設計することが可能となる。したがって、高密度な配線パターンの形成や高周波回路の特性向上に有用であり、高周波モジュールの小型化・高性能化が達成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製法により得られた多層基板を示す断面図である。
【図2】本発明の多層基板の製法を説明するための工程工程図である。
【符号の説明】
7・・・光硬化性樹脂フィルム
10・・・支持板
1a〜1f・・・絶縁層
11a〜11f・・・絶縁層成形体
30・・・貫通孔
37・・・導電性ペースト
41・・・内部配線パターン
Claims (4)
- 光硬化性樹脂を含有する複数の絶縁層成形体を積層してなるとともに、隣接する絶縁層成形体間に内部配線パターンを有する積層成形体を作製した後、該積層成形体を焼成する多層基板の製法であって、
前記積層成形体の作製工程が、(e)支持板上に、ガラス−セラミックスまたはセラミックスからなる絶縁層材料と、光硬化性樹脂とを含有するスリップ材を塗布し、乾燥して絶縁層成形体を形成する工程と、(f)乾燥された絶縁層成形体を露光し、硬化する工程と、(g)露光し、硬化された前記絶縁層成形体上に、前記スリップ材を塗布、乾燥して前記絶縁層成形体を形成する工程と、前記(f)(g)工程とを繰り返す工程を具備するとともに、前記絶縁層成形体上に前記内部配線パターンを形成する工程を有し、該内部配線パターン形成工程が、以下の(a)〜(d)の工程を具備することを特徴とする多層基板の製法。
(a)絶縁層成形体上に光硬化性樹脂フィルムを貼り付ける工程、(b)前記光硬化性樹脂フィルムを露光、現像し、前記内部配線パターンに相当する部分に貫通孔を形成する工程、(c)前記光硬化性樹脂フィルムの貫通孔に導電性ペーストを充填する工程、(d)前記光硬化性樹脂フィルムを前記絶縁層成形体より剥離する工程。 - 複数の絶縁層成形体を積層してなるとともに、隣接する絶縁層成形体間に内部配線パターンを有する積層成形体を作製した後、該積層成形体を焼成する多層基板の製法であって、
前記積層成形体の作製工程が、ガラス−セラミックスまたはセラミックスからなる絶縁層材料を含有するスリップ材(光硬化性樹脂を含有せず)を塗布し、乾燥して前記絶縁層成形体を形成する工程と、該絶縁層成形体上に、前記スリップ材を塗布、乾燥して前記絶縁層成形体を形成する工程と、これらの工程を繰り返す工程とを具備するとともに、前記絶縁層成形体上に前記内部配線パターンを形成する工程を有し、該内部配線パターン形成工程が、以下の(a)〜(d)の工程を具備することを特徴とする多層基板の製法。
(a)絶縁層成形体上に光硬化性樹脂フィルムを貼り付ける工程、(b)前記光硬化性樹脂フィルムを露光、現像し、前記内部配線パターンに相当する部分に貫通孔を形成する工程、(c)前記光硬化性樹脂フィルムの貫通孔に導電性ペーストを充填する工程、(d)前記光硬化性樹脂フィルムを前記絶縁層成形体より剥離する工程。 - (c)工程が、スキージを前記光硬化性樹脂フィルム上を摺動させ、前記光硬化性樹脂フィルム上の導電性ペーストを貫通孔内に充填する工程であることを特徴とする請求項1又は2記載の多層基板の製法。
- (d)工程の後に、前記内部配線パターン形成部分以外の前記絶縁層成形体上に、前記内部配線パターンの厚みに相当する絶縁層成形体を形成する工程を有することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれかに記載の多層基板の製法。
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