JP3860299B2 - 圧電振動子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気素子或いは機械部品等比較的小さな物品を振動により搬送するパーツフィーダの駆動源として使用される圧電バイモルフ振動子などの圧電振動子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
圧電バイモルフ振動子を駆動源とした圧電型パーツフィーダは、電磁型パーツフィーダと比較して物品の搬送が非常にスムーズで、消費電力が小さい特徴を有する。近年、圧電型パーツフィーダは、電子機器の小型化に伴い電子部品の小型化が進むにつれて、その搬送性能の有効性が発揮され、既に各種自動組立工程で使用され、普及している。
【0003】
圧電型パーツフィーダの構成を図6に示す。この図6において、10は接地固定した基台、11はこの基台10に支持された菱形の加振枠で、その加振枠11は、基台10に固定の下方水平枠片14と上面にトラフ13を水平に固定する上方水平枠片15とを、圧電素子16を両面に貼着した弾性板17より成る圧電バイモルフ振動子18により連結したものである。かかる構成の圧電型パーツフィーダ19において、加振電圧を圧電素子16に印加すると、圧電素子16は弾性板17と一体となってたわみ振動を起し、弾性板17の可動部に結合した上方水平枠片15上のトラフ13を斜め上下方向に加振し、搬送物12をトラフ13に沿って矢印方向に移送せしめる。
【0004】
上記圧電型パーツフィーダ19に使用されている圧電バイモルフ振動子18は、近時、図7に示すように弾性板17の代りにSK鋼焼入れ処理の金属シム板20が用いられ、その金属シム板20の上部に図8に示すように変位拡大ばね21を取り付けるねじ穴22,22が設けられ、下部に下方水平枠片14に固定するねじ穴23,23が設けられ、金属シム板20の両面に、圧電素子16として夫々電極24,25を内外両面に備えた圧電セラミックス板26,26が有機系接着剤で接着された圧電バイモルフ振動子18’が多く使用されるようになっている。この圧電バイモルフ振動子18’は、圧電セラミックス板26,26の外面の電極25からリード端子27,28がハンダ付けされて引き出されて共通になされ、パーツフィーダ19のもう一方の圧電バイモルフ振動子18’の金属シム板20の両面の圧電セラミックス板26,26の外面の電極からもリード端子27,28がハンダ付けされて引き出されて共通になされて、圧電セラミックス板26,26に電圧を印加したとき、圧電バイモルフ振動子18’が屈曲振動を起す。
【0005】
ところで、圧電バイモルフ振動子18’を作るには、従来、図9の(a)に示す圧電セラミックス板26の両面に、図9の(b)に示すように銀ペースト24a,25aを塗り、焼付して図9の(c)に示すように表面が粗い電極24,25を形成し、この電極24,25を両面に備えた圧電セラミックス板26を2枚、図9の(d)に示すように金属シム板20の両面に極薄の有機系接着剤20aを介して接着して、約100℃で乾燥の上、冷却して圧電バイモルフ振動子18’を作っている。この製造方法では電極24の粗い表面の凸部が極薄の有機系接着剤20aを突き抜けて金属シム板20と接触し、金属シム板20と電極24とが導通するので、前記のように約100℃で乾燥の上冷却した際には、金属シム板20と圧電セラミックス板26の熱膨張係数差によって圧電セラミックス板26に応力がかかった状態となる。この残留応力によって、圧電セラミックス板26の誘電率が低下し、圧電D定数が下がり、その結果、圧電バイモルフ振動子18’の振動加速度が低下していた。
【0006】
また、上記圧電バイモルフ振動子18’では、金属シム板20が基台に取り付けられるため、パーツフィーダ装置としたとき、電気的安全面から金属シム板20側をグランド側(低電位側)にせざるを得ないことから、圧電セラミックス板26の外面の電極25が高電位側となり、電気的安全性を保持するため圧電セラミックス板26の外周面に絶縁カバー或いは絶縁コーティングを施す必要があった。
【0007】
他方、前記圧電型パーツフィーダは、搬送部品の小型化と共に装置としての小型化、高速搬送化が要求されるようになってきた。圧電型パーツフィーダの小型化には、駆動電源回路の部品点数の削減がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、圧電バイモルフ振動子などの圧電振動子を改善し、駆動電源回路の部品点数の削減を図って圧電型パーツフィーダの小型化を実現し、しかも高速搬送性能を得るよう、振動加速度の向上を図ろうとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明の圧電振動子は、金属シム板の一面又は両面に、電極を両面に有する圧電セラミックス板を接着し、この圧電セラミックス板の一面又は両面の電極に交流電圧を印加し、アクチュエータとして振動させる振動子であって、金属シム板と圧電セラミックス板との間に、絶縁フィルムを介在させ、金属シム板と圧電セラミックス板とを電気的に絶縁したことを特徴とするものである。
【0010】
上記の圧電振動子において、金属シム板の両面に、夫々電極を両面に有する圧電セラミックス板を接着している場合、絶縁フィルムは、少くとも一つの屈曲部を有する単体から成ることが好ましい。その理由は、絶縁フィルム2枚とし、金属シム板と各圧電セラミックス板との間に介在することができるが、この場合、絶縁フィルムの位置決め、リード端子の接続等の作業が煩雑となるのに対し、上記構成によれば、前記作業が極めて簡易となるからである。
【0011】
また、絶縁フィルムは、厚さ10μm〜200μmの柔軟性材料から成り、かつ上記絶縁フィルムの表面に金属箔が接着され、この金属箔が圧電セラミックス板内側面の電極のリード部となされていることが好ましい。その理由は、絶縁フィルムの厚さが10μm未満では、製造時においてハンドリングが悪く、破損し易く、絶縁の意味がなされなくなる。また200μmを超えると、厚くて平坦性があっても圧電セラミックス板のたわみ振動を金属シム板に充分伝達されなくなるからである。
【0012】
さらに、絶縁フィルムは、ポリイミド,ポリエステル,ポリアミド,ポリイミドエステル,ポリアミドエステル,ポリフェニレンオキシド,ポリエーテルケトンのいずれかから成ることが好ましい。その理由は、絶縁フィルムとして、特に電気的絶縁性,柔軟性,耐熱性,耐破損性が必要であるが、10μm〜200μmの厚さの上記材料のフィルムで上記特性を十分に有するからである。
【0013】
上記の圧電振動子において、絶縁フィルムに接着された金属箔の厚さは、10μm〜50μmであることが好ましい。その理由は、10μm未満では、絶縁フィルムを折り曲げた際に金属箔が切断されて導電性が損われ、50μmを超えると可変形性がそう失するからである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の圧電振動子の一実施形態を圧電バイモルフ振動子の場合を図によって説明する。図1において、20はSK鋼焼入れ処理の金属シム板で、上部に拡大変位ばね21(図7を参照)を取り付けるねじ穴22,22が設けられ、下部に下方水平枠片14(図7を参照)に固定するねじ穴23,23が設けられている。この金属シム板20の両面にわたって、後述の圧電セラミックス板の幅よりもやや大きい幅を有する絶縁フィルム,本例の場合厚さ10μm〜200μmで、柔軟性を有し、且つ圧電セラミックス板の伸縮を金属シム板20に伝達するのに好適な硬さを有する完全な絶縁性の図2に示すフレキシブルなポリイミド樹脂フィルム30に、周囲に余白をあけて銅箔31を接着して成る絶縁フィルムが、図1に示すように銅箔31が表になるように屈曲して接着されている。そして、金属シム板20の両面側の銅箔31の上には、夫々銅箔31の幅とほぼ同等の幅で且つ内外両面に電極24,25を備えた圧電セラミックス板26,26が有機系接着剤で接着され、この圧電セラミックス板26,26の外面の電極25からリード端子27,28がハンダ付けされて引き出され、圧電セラミックス板26,26の内面の電極24からはポリイミド樹脂シート30の表面の銅箔31にリード端子32がハンダ付けされて引き出されている。
【0015】
尚、圧電セラミックス板26としては、例えばチタン酸,ジルコン酸,鉛等のセラミックス板を分極処理して、一方の面にプラス極性の、他方の面にマイナス極性の分極電位を持たせたものであればどのようなものでもよい。
【0016】
このように構成された実施形態の圧電バイモルフ振動子33は、金属シム板20と圧電セラミックス板26,26の内面の電極24が図3,図4に示すようにポリイミド樹脂フィルム30により絶縁されているので、圧電セラミックス板26,26を金属シム板20へ接着した際の乾燥,冷却工程において熱膨張差に起因して圧電セラミックス板26,26に加わる残留ひずみが緩和され、その結果、誘電率の低下が少なくなり、バイモルフ振動子の駆動力に関係してくる圧電D定数が見かけ上大きくなり、振動加速度が増加し、パーツフィーダとしての加速性が向上し、高速搬送性能が得られる。
【0017】
また、金属シム板1と圧電セラミックス板26,26とがポリイミド樹脂フィルム30により電気的に絶縁されているので、筺体と直接接続されている金属シム板1は駆動電気回路との兼ね合いで従来電気的な絶縁トランスを必要としていたものが不要となって、電気回路の小型化、即ち、駆動電源ボックスの軽量化、小型化、低価格化が図れる。さらに、金属シム板20と圧電セラミックス板26の電極24,25とが電気的に絶縁されているので、図4に示すように圧電セラミックス板26の内側面の電極24をポリイミド樹脂フィルム30の表面の銅箔31を介して高電位側に接続し、圧電セラミックス板26,26の外側面の電極25をグランド側(低電位側)に接続することができる。従って、圧電バイモルフ振動子33の外周部は電気的に安全な面となり、電気的安全性が向上し、従来の圧電バイモルフ振動子18’の場合のように圧電セラミックス板の外周面に、絶縁カバーもしくは絶縁コーティングを施すことは不要となる。
【0018】
上記の圧電バイモルフ振動子の具体的な実施例を従来例と共に説明する。
図1に示すように幅50mm,高さ86mm,厚さ6mmのSK鋼焼入れ処理の金属シム板20の両面にわたって、表面に厚さ30μmの銅箔31を周囲に幅2mmの余白を残して接着した幅106mm,高さ52mm,厚さ70μmのフレキシブルなポリイミド樹脂フィルム30を、銅箔31が表になるように屈曲させて接着し、金属シム板20の両面側の銅箔31の上に、幅47mm,高さ45mm,厚さ0.7mmで両面に電極24,25を備えた圧電セラミックス板26,26を有機系接着剤で接着し、圧電セラミックス板26,26の外面の電極25にリード端子27,28をハンダ付けし、内面の電極24と接続されているポリイミド樹脂フィルム30の屈曲部の銅箔31にリード端子32をハンダ付けして、実施例である圧電バイモルフ振動子33を作成した。この実施例の圧電バイモルフ振動子33を、直径230mmの搬送ボールを有するパーツフィーダの駆動部に2ヶ組み込み(他の2ヶは前記金属シム板20のみ)、共振周波数約170KHzで駆動させ、駆動電圧に対する加速度Gを測定した。同様に図5に示すように金属シム板20の両面に、直接電極24,25を内外両面に備えた圧電セラミックス板26,26を接着し、その他上記実施例と全く同じ寸法,構成とした従来の圧電バイモルフ振動子18’を、上記と同じ搬送ボールを有するパーツフィーダの駆動部に2ヶ組み込み(他の2ヶは金属シム板20のみ)、共振周波数約170KHzで駆動させ、駆動電圧に対する加速度Gを測定した。その結果を下記の表1に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
上記の表1で明らかなように実施例の圧電バイモルフ振動子は、従来例の圧電バイモルフ振動子に比べ、駆動電圧に対する加速度Gが高いことが判る。また、従来例の圧電バイモルフ振動子の静電容量が平均値で55.6nFであったのに対し、実施例のバイモルフ振動子の静電容量は平均値で67.1nFと大きくなっている。これは、従来例の圧電バイモルフ振動子18’が、金属シム板20の両面に、直接圧電セラミックス板26,26を接着するため、接着時の温度による金属シム板20と圧電セラミックス板26,26の熱膨張差で圧電セラミックス板26,26に残留ひずみが加わっているが、実施例の圧電バイモルフ振動子33は、金属シム板20とその両面の圧電セラミックス板26,26との間に絶縁フィルムであるポリイミド樹脂フィルム30を介在させて、そのポリイミド樹脂フィルム30で圧電セラミックス板26,26に加わる残留ひずみを緩和させた結果、バイモルフ振動子の駆動力に関係する圧電D定数が大きくなり、パーツフィーダとして振動加速度が向上したからに他ならない。
【0021】
以上本発明の圧電振動子の一実施形態として圧電バイモルフ振動子の場合を説明したが、他の実施形態としては図5に示す圧電モノモルフ振動子34がある。この圧電モノモルフ振動子34は、SK鋼焼入れ処理の金属シム板20の一面に、圧電セラミックス板の幅よりもやや大きい幅を有する絶縁フィルム、本例の場合厚さ10μm〜200μmで柔軟性を有し、且つ圧電セラミックス板の伸縮を金属シム板20に伝達するのに好適な硬さを有する完全な絶縁性のフレキシブルなポリイミドフィルム30に、周囲に余白をあけて銅箔31を接着して成る絶縁フィルムが、銅箔31が表になるように接着されている。そして、銅箔31の表面に銅箔31の幅とほぼ同等の幅で且つ内外両面に電極24,25を備えた圧電セラミックス板26が有機系接着剤で接着され、この圧電セラミックス板26の外面の電極25からリード端子28がハンダ付けされて引き出され、圧電セラミックス板26の内面の電極24からはポリイミド樹脂シート30の表面の銅箔31にリード端子32がハンダ付けされて引き出されている。
【0022】
このように構成された実施形態の圧電モノモルフ振動子34は、金属シム板20と圧電セラミックス板26の内面の電極24がポリイミド樹脂フィルム30により絶縁されているので、圧電セラミックス板26を金属シム板20へ接着した際の乾燥,冷却工程において熱膨張差に起因して圧電セラミックス板26に加わる残留ひずみが緩和され、その結果、透電率の低下が少なくなり、モノモルフ振動子の駆動力に関係してくる圧電D定数が見かけ上大きくなり、振動加速度が増加する。
【0023】
【発明の効果】
以上の説明で判るように本発明の圧電振動子は、パーツフィーダとしての振動加速度を向上できるので、高速搬送性能が得られる。また、振動加速度がこれまでと同じでよい場合は、駆動電圧を下げることができ、消費電力を減少できる。さらに、本発明の圧電振動子は、金属シム板と圧電セラミックス板とが電気的に絶縁されているので、金属シム板と筺体との間に絶縁トランスを設けることは不要となり、電気回路の小型化、即ち、駆動電源ボックスの軽量化、小型化と低価格化が可能である。また、本発明の圧電振動子は、圧電セラミックス板の外側の電極を低電位側に接続できるので、外部に電気安全のための絶縁カバーもしくは絶縁コーティングを施すことは不要である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧電振動子の一実施形態である圧電バイモルフ振動子を示す斜視図である。
【図2】図1の圧電バイモルフ振動子に使用されているフレキシブルなポリイミド樹脂シートの展開図である。
【図3】図1のA−A線縦断側面図である。
【図4】図1のB−B線横断平面図である。
【図5】本発明の圧電振動子の他の実施形態である圧電モノモルフ振動子を示す横断平面図である。
【図6】従来の圧電型パーツフィーダの構成を示す図である。
【図7】従来の圧電バイモルフ振動子を示す斜視図である。
【図8】図6の圧電バイモルフ振動子を用いた従来の圧電型パーツフィーダの構成を示す図である。
【図9】a〜dは従来の圧電バイモルフ振動子を作る工程を示す図である。
【符号の説明】
20 金属シム板
24,25 電極
26 圧電セラミックス板
27,28 リード端子
30 絶縁フィルム
31 銅箔
32 リード端子
33 圧電バイモルフ振動子
34 圧電モノモルフ振動子
Claims (5)
- 金属シム板の一面又は両面に、電極を両面に有する圧電セラミックス板を接着し、この圧電セラミックス板の一面又は両面の電極に交流電圧を印加し、アクチュエータとして振動させる振動子であって、金属シム板と圧電セラミックス板との間に、絶縁フィルムを介在させ、金属シム板と圧電セラミックス板とを電気的に絶縁したことを特徴とする圧電振動子。
- 請求項1記載の圧電振動子において、金属シム板の両面に、夫々電極を両面に有する圧電セラミックス板を接着している場合、絶縁フィルムが少くとも一つの屈曲部を有する単体から成ることを特徴とする圧電振動子。
- 請求項1又は2記載の圧電振動子において、絶縁フィルムが厚さ10μm〜200μmの柔軟性樹脂材料から成り、かつ上記絶縁フィルムの表面に金属箔が接着され、この金属箔が圧電セラミックス板内側面の電極のリード部となされていることを特徴とする圧電振動子。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の圧電振動子において、絶縁フィルムが、ポリイミド,ポリエステル,ポリアミド,ポリイミドエステル,ポリアミドエステル,ポリフェニレンオキシド,ポリエーテルケトンのいずれかから成ることを特徴とする圧電振動子。
- 請求項2〜4のいずれかに記載の圧電振動子において、絶縁フィルムに接着された金属箔の厚さが10μm〜50μmであることを特徴とする圧電振動子。
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