JP3860049B2 - ポリエーテル系共重合体の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエーテル系共重合体の製造法に関する。更に詳しくは、トリオキサンと多量の1,3 −ジオキソランを共重合してなり、水との親和性が高く、高分子でありながら室温付近で液状の性質を有するポリエーテル系共重合体の製造法に関する。
【0002】
本発明により製造されるポリエーテル系共重合体は、そのままで或いは水などの各種溶媒と混合して、熱媒や潤滑剤、オイルなどの用途に好適に用いられる。
【0003】
【従来の技術】
液状高分子としては、シリコーン、ポリアルキレングリコール、ポリビニルエーテル等が知られており、熱媒、潤滑剤、オイル等に利用されている。このような利用分野においては、洗浄等のメインテナンスを考慮すると、液状高分子材料は水溶性であることが好ましい。
【0004】
これに対し、シリコーンは優れた潤滑特性を示す高分子材料ではあるが、水との親和性が極めて乏しく水溶性に欠けるため、その用途は制約されたものになる。また、ポリアルキレングリコールの代表例であるポリエチレングリコールは、低分子量〜中分子量の領域においてはそれ自身が液状であると共に水溶性にも優れた物質であるが、耐熱性の点で十分とは言えず、一方、高分子量になると結晶性を示して液状とは言えないものになり、その取扱いが難しくなる。さらに、ポリビニルエーテルの代表例であるポリビニルメチルエーテルは、温水への溶解性はあるが水溶性とは言い難い。
【0005】
このように、それ自身が室温で液状であり、且つ水溶性を示す高分子材料は例が少なく、特に水溶性、耐熱性等の観点から、ポリエーテル型の高分子材料が市場から望まれている。
【0006】
一方、本発明に関連する技術として、トリオキサンと1,3 −ジオキソランを共重合してなる共重合体とその製造法については、以下の如きものが知られている。
【0007】
先ず、トリオキサンを主成分とし、これに少量の1,3 −ジオキソランを共重合してなる共重合体はポリアセタールコポリマーとして広く知られるものであり、トリオキサンが固化しない80℃前後の温度にて、トリオキサンと1,3 −ジオキソランを塊状重合することにより得るのが一般的である。トリオキサン由来のオキシメチレン鎖がポリマー骨格の大半を占めるかかるポリアセタールコポリマーは、言うまでもなく液状でもなければ水溶性ポリマーでもない。
【0008】
次に、特公昭42−22065号、米国特許第3337507号(特公昭42−11661号)の各公報には、トリオキサンと多量(37〜75モル%)の1,3 −ジオキソランを共重合した共重合体について開示されている。しかし、これらの公報で示された発明においては、液状且つ水溶性の共重合体を得ることは全く想定されておらず、得られるポリマーは常温で固体であり、液状ポリマーの製法に関する開示はない。
【0009】
また、米国特許第4788258号(特開平1−131235号)には、トリオキサンと65〜75モル%の1,3 −ジオキソランからなる低ガラス転移温度を有する非晶質コポリマーが開示されている。本発明者らが、この組成範囲のコポリマーを追試したところ、得られるポリマーは室温で液状体とは言い難いものであった。また、かかる重合体の製造法、特に重合時の温度条件としては、約15〜30℃の温度で重合反応を行うことが記載されているのみで、重合中の温度制御については全く触れられていない。
【0010】
更に、米国特許第4898925号(特開平2−113010号)や米国特許第4954400号(特開平2−166184号)には、約15〜45モル%のトリオキサン及び約55〜85モル%の1,3 −ジオキソランと、少量の2官能モノマーを共重合させてなるエラストマー性コポリマーが開示されている。ここで、最終的に得られるターポリマーは、室温で非晶質であってもエラストマーとしての固体質ポリマーに近いものであり、液状ポリマーを想定しているわけではない。また、その製造法については、前述の米国特許第4788258号(特開平1−131235号)の記載と同様であり、液状ポリマーを得るための製法、特に温度条件の制御については何ら開示されていない。
【0011】
このように、少量のトリオキサンと多量の1,3 −ジオキソランを共重合してなり、室温又はその付近で液状を示し、水溶性、耐熱性等にも優れたポリエーテル型の共重合体とその経済的な製造方法は、従来知られていなかった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、少量のトリオキサンと多量の1,3 −ジオキソランを共重合してなり、室温(25℃)で液状であり、水溶性と耐熱性も兼ね備え、熱媒体、潤滑剤などの用途に適したポリエーテル系共重合体の安定且つ効率的な製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に鑑み、室温付近で液状を示すポリエーテル系共重合体を得るための製造条件について鋭意検討した結果、1,3 −ジオキソランとトリオキサンを共重合する上で、重合時の温度コントロールが極めて重要な要因であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち本発明は、(A) 1,3 −ジオキソラン75〜95モル%及び(B) トリオキサン25〜5モル%を共重合させてポリエーテル系共重合体を製造するにあたり、カチオン重合触媒を使用し、25 〜 60 ℃の温度に保持されたモノマー溶液を用いて重合を開始すると共に、重合中の反応系内の最高温度を50〜80℃の間に保持するように制御しながら共重合させることを特徴とするポリエーテル系共重合体の製造法に関するものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のポリエーテル系共重合体の製造法について詳細に説明する。尚、本発明において、ポリエーテル系共重合体が室温で液状であるとは、その融点が25℃以下であることを指し、その粘度や流動性の程度は特に限定されない。
【0016】
先ず、本発明において用いられる(A) 1,3 −ジオキソランとは、エチレングリコール又はエチレンオキサイドとホルムアルデヒド又はその水溶液を、酸性触媒の存在下で反応させることにより得られる環状ホルマール化合物であり、蒸留等の方法で精製して用いられる。
【0017】
また、(B) トリオキサンとは、ホルムアルデヒドの環状三量体であり、一般的には酸性触媒の存在下でホルムアルデヒド水溶液を反応させることによって得られ、これを蒸留等の方法で精製して用いられる。
【0018】
重合に用いられる(A) 1,3 −ジオキソラン及び(B) トリオキサンは、水、メタノール、蟻酸、過酸化物などの不純物を極力含まないものが好ましい。
【0019】
本発明で目的とするポリエーテル系共重合体は、かかる(A) 1,3 −ジオキソラン75〜95モル%と(B) トリオキサン25〜5モル%を共重合させて得られるものである。室温付近で液状を示すポリエーテル系共重合体のためには、この(A) 1,3 −ジオキソランと(B) トリオキサンの共重合割合が非常に重要である。即ち、(A) 1,3 −ジオキソランの共重合割合が75モル%より過少であると、ポリエーテル系共重合体の結晶化温度が室温以上になり、本発明の目的とする液状性能が得られない。また、(A) 1,3 −ジオキソランの共重合割合が95モル%を超えてもポリエーテル系共重合体の融点が室温を大幅に超えることになり、目的とする液状の性質から外れたものになる。このように、(A) 1,3 −ジオキソランと(B) トリオキサンの共重合により室温付近で液状を示すポリエーテル系共重合体を得るためには、その共重合割合に最適な範囲が存在するのである。特に好ましい共重合比率は、(A) 1,3 −ジオキソラン75〜85モル%及び(B) トリオキサン25〜15モル%である。
【0020】
本発明は、上記の如きポリエーテル系共重合体を製造するにあたり、カチオン重合触媒を使用し、重合中の反応系内の最高温度を50〜80℃の間に保持するように制御しながら(A) 1,3 −ジオキソランと(B) トリオキサンを共重合させることを特徴とする。この重合中の反応系内の温度制御条件は、(B) トリオキサンの反応挙動に対する温度の影響及び(A) 1,3 −ジオキソランを含む反応液の沸騰挙動等を考慮しながら、本発明者が最適反応条件を検討した結果見出したものであり、本発明を特徴付ける極めて重要な要件である。反応系内の温度が低く、反応系内の最高温度が50℃未満の状態で重合を継続した場合、(B) トリオキサンはカチオン重合を開始しないか若しくは反応速度が極めて遅いものになり、生成する共重合体は(A) 1,3 −ジオキソランの共重合割合が本願規定の範囲を超えたものとなって、室温で液状を示さないポリマーとなる。一方、反応系内の最高温度が80℃を超えるような条件では、未反応の1,3 −ジオキソランを含む反応溶液が系内で激しく沸騰・発泡して重合が制御困難となり、所望する共重合体を安定して製造することができない。特に好ましくは、反応系内の最高温度を60〜70℃の範囲に保持するように制御しながら共重合を行うことである。
【0021】
このような反応系内の最高温度の制御は、次のようにして行うことができる。即ち、(A) 1,3 −ジオキソランと(B) トリオキサンの共重合は発熱反応であり、発熱と除熱を適切にバランスさせることにより制御することができる。発熱は、主として触媒の使用量の調節による反応速度の制御により、また除熱は、反応系からの自然放熱或いは必要ならば冷媒を用いた強制冷却により行えばよい。このような反応系内の温度制御により、ほぼ仕込みモノマー組成と同じ共重合割合の共重合体が得られるため、反応に供する(A) 1,3 −ジオキソラン量と(B) トリオキサン量の調整が極めて容易である。
【0022】
尚、上述した低温下での(B) トリオキサンの反応挙動を利用すれば、反応系に供する仕込みモノマーが(B) トリオキサンに富み、(A) 1,3 −ジオキソラン量が75モル%を下回る場合であっても、反応系内の温度を低温側に保つことによって(B) トリオキサンの反応を遅延させ、(A) 1,3 −ジオキソランの反応を促進させることによって、所望の共重合割合の共重合体を得ることも可能である。この場合、得られる共重合体中に未反応の(B) トリオキサンが多量に残存することになるため、その精製工程が必要となり、また共重合割合の制御が複雑になる。
【0023】
本発明において、上記の如き(A) 1,3 −ジオキソランと(B) トリオキサンを共重合させてポリエーテル系共重合体を製造するにあたり、触媒としてはカチオン重合触媒が用いられる。その中でも好ましい触媒としては、ヘテロポリ酸、イソポリ酸、パーフルオロアルキルスルホン酸及びこれらの誘導体から選ばれる1種もしくは2種以上である。
【0024】
ヘテロポリ酸とは、異種の酸素酸が脱水縮合して生成するポリ酸の総称であり、中心に特定の異種元素が存在し、酸素原子を介して縮合酸基が縮合してできる単核又は複核の錯イオンを有している。このような異核縮合酸は、一般には下記一般式(1) で表すことができる。
【0025】
Hx [Mm ・M’n Or ]・yH2 O (1)
(但し、MはP、Siより選ばれる一種又は二種の元素から成る中心元素を表す。M’はW、Mo、Vより選ばれる一種以上の配位元素を表す。rは10〜100 の数、mは1〜10の数、nは6〜40の数、xは1以上の整数、yは0〜50の数を示す。)
本発明の重合触媒として特に有効なヘテロポリ酸は、上記組成式中の中心元素(M)がP及びSiより選ばれる少なくとも一種の元素から構成され、また配位元素(M’)がW、Mo、Vより選ばれる少なくとも一種の元素(特に好ましくはW、Mo)から構成される場合である。更に(1) 式におけるHx が各種金属等に一部置き換わった形の酸性塩も本発明の触媒として用いることができる。
【0026】
これらヘテロポリ酸の具体例としては、リンモリブデン酸、リンタングステン酸、リンモリブドタングステン酸、リンモリブドバナジン酸、リンモリブドタングストバナジン酸、リンタングストバナジン酸、ケイモリブデン酸、ケイタングステン酸、ケイモリブドタングステン酸、ケイモリブドタングストバナジン酸等である。中でも好ましいのは、リンモリブデン酸、リンタングステン酸、ケイモリブデン酸、ケイタングステン酸等である。また、ヘテロポリ酸は、一般にα0型、βII型、βIV型が知られているが、重合活性の点でα0型、βIV型が好ましく、特に好ましくはα0型である。
【0027】
次に、イソポリ酸は、別名イソ多重酸、同核縮合酸、同種多重酸とも称し、下記一般式(2) 又は(3) で表されるV価又はVI価の単一種類の金属を有する無機酸素酸の縮合体からなる高分子量の無機酸素酸である。
【0028】
aMI 2 O・pMV 2 O5 ・bH2 O (2)
aMI 2 O・pMVIO3 ・bH2 O (3)
(但し、MI は水素であり、その一部が金属で置換されていてもよい。MV は周期律表V族のV、Nb又はTa、MVIは周期律表VI族のCr、Mo、W又はU、pは1以上の整数、aは1以上の整数、bは0〜50の数を示す。)
イソポリ酸は、上記(2) 、(3) 式に対応するイソポリ酸塩、例えばイソポリモリブデン酸塩、イソポリタングステン酸塩、イソポリバナジウム酸塩等の塩溶液をイオン交換樹脂で処理する方法や、濃縮した溶液に鉱酸を加えてエーテル抽出する方法等、各種の方法により調製されるプロトン酸である。更に、これらの酸のプロトン(MI ;水素)が各種金属等に一部置き換わった形の酸性塩も本発明の触媒として用いることができる。特に(3) 式のイソポリ酸塩又はその酸性塩が好ましい。これらイソポリ酸の具体例としては、例えばパラタングステン酸、メタタングステン酸等の如きイソポリタングステン酸、パラモリブデン酸、メタモリブデン酸等の如きイソポリモリブデン酸、メタポリバナジウム酸、イソポリバナジウム酸等が挙げられる。中でもイソポリタングステン酸が好ましい。
【0029】
次に、パーフルオロアルキルスルホン酸とは、下記一般式(4) で示される化合物であり、これらの酸の無水物又は他の誘導体、置換体であってもよい。
【0030】
F3 C−(CF2 )q −SO3 H (4)
(但し、qは0〜18の数を示し、好ましくは0〜4、特に好ましくは0である。)
パーフルオロアルキルスルホン酸としては、例えばトリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ウンデカンフルオロペンタンスルホン酸、パーフルオロヘプタンスルホン酸等、またパーフルオロアルキルスルホン酸無水物の具体例としては、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、ペンタフルオロエタンスルホン酸無水物、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸無水物等、またパーフルオロアルキルスルホン酸誘導体の具体例としては、トリフルオロメタンスルホン酸メチル、トリフルオロメタンスルホン酸エチル、ペンタフルオロエタンスルホン酸メチル、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸メチル等である。中でも好ましいのは、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸メチル等である。
【0031】
本発明において使用するカチオン重合触媒の添加量は、重合中の反応溶液内の最高温度が50〜80℃の範囲となるように、触媒の種類によって適宜調節される。但し、重合速度や重合効率、および得られる液状ポリマーの分子量を考慮して(A) 1,3 −ジオキソラン及び(B) トリオキサンの合計重量に対し1〜100ppmの範囲であることが好ましい。
【0032】
尚、上記の触媒は、それぞれ重合に悪影響のない溶剤で希釈して上記原料モノマーに添加し使用するのが反応を均一に行う上で望ましい。希釈剤としては、触媒が可溶の不活性有機溶媒であるエーテル類、エステル類等が使用可能であるが、これに限定されるものではない。例えば、分子量調節のため連鎖移動剤として用いる低分子量アセタール化合物(例えばメチラール等)、アルコール(例えばメタノール等)も希釈剤として用いることができる。これら希釈剤はその使用量が原料モノマーに対し極めて僅少であるため大して支障なく使用することができる。また、原料モノマーの一部又は全部に触媒を予め溶解させて添加することも可能である。
【0033】
本発明のポリエーテル系共重合体は、その製造において、上記成分の他に分子量を調節する成分を併用し、末端基量を調整することも可能である。分子量を調節する成分としては、不安定末端を形成することのない連鎖移動剤、即ちメチラール、メトキシメチラール、ジメトキシメチラール、トリメトキシメチラール、オキシメチレンジ−n−ブチルエーテルの如きアルコキシ基を有する低分子量アセタール化合物が例示される。
【0034】
また、本発明のポリエーテル系共重合体は、目的とする性質を阻害しない範囲で、(A) 1,3 −ジオキソラン及び(B) トリオキサンの他に、更にグリシジルエーテル化合物、エポキシ化合物、1,3 −ジオキソラン以外の環状ホルマール化合物及びオキセパン化合物から選ばれた化合物を共重合することにより製造されるものでもよい。かかる化合物としては、脂肪族アルキルグリシジルエーテル、1,4 −ブタンジオールホルマール、1,4 −ブタンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルが特に好ましい。この他に使用可能な化合物としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、スチレンオキシド、3,3 −ビス(クロルメチル)トリオキサン、テトラヒドロフラン、トリオキセパン、プロピレングリコールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、トリエチレングリコールホルマール、1,5 −ペンタンジオールホルマール、1,6 −ヘキサンジオールホルマール等が挙げられる。
【0035】
かかる化合物の共重合割合は、(A) 成分と(B) 成分の合計量100 モルに対して0.01〜5モル%が好ましく、これにより得られる共重合体は結晶化温度が一層低いものとなり、本発明の目的の一つである液状性能の観点から、より有効な材料になる。
【0036】
上記のような重合反応が終了した後、触媒の活性を停止させるために所定の触媒失活化処理を行う。触媒の失活は、重合反応後、重合機より排出される生成反応物あるいは重合機中の反応生成物に、塩基性化合物あるいはその水溶液等を加えて行う。重合触媒を中和し失活するための塩基性化合物としては、アンモニア、或いはトリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、トリブタノールアミン等のアミン類、或いはアルカリ又はアルカリ土類金属の水酸化物や塩類、その他公知の触媒失活剤が用いられる。また、重合反応後、生成物にこれらの水溶液を速やかに加え、失活させることが好ましい。かかる重合方法及び失活方法の後、必要に応じて更に洗浄、未反応モノマーの分離回収、乾燥等を従来公知の方法にて行う。更に、必要に応じて不安定末端部の分解除去または安定物質による不安定末端の封止等の末端安定化処理を行い、必要なら各種安定剤を配合する。ここで用いられる安定剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、窒素含有化合物、アルカリ或いはアルカリ土類金属の水酸化物、無機塩、カルボン酸塩等のいずれか1種または2種以上を挙げることができる。
【0037】
本発明において、上記のようなポリエーテル系共重合体の製造に用いる重合装置は特に限定されるものではなく、バッチ式、連続式等の公知の各種装置が利用可能である。
【0038】
また、重合を円滑に開始させると共に、前述した如く反応系内の最高温度を50〜80℃の範囲に効率的に制御するためには、重合開始前のモノマー溶液温度を25〜60℃、さらには30〜50℃の範囲に保持した状態で重合を開始することが好ましい。これは(B) トリオキサンが重合前に固化・析出するのを避ける意味でも望ましい設定である。
【0039】
また、重合は酸化分解などによるヘミホルマール末端の生成を避けるべく、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0040】
上記製造法により得られる本発明のポリエーテル系共重合体は、その重量平均分子量が10000 〜500000であるのが良く、さらには20000 〜150000であるのがより好ましい。また、ポリエーテル系共重合体の熱安定性を考慮すると、 1H−NMRにより検出されるヘミホルマール末端基量が80mmol/kg 以下であることが望ましい。ヘミホルマール末端基量を上記数値以下に制御するためには、重合に供するモノマー、コモノマー総量中の不純物、特に水分および過酸化物の量が極力少ないものを用いることが望ましい。
【0041】
上記のようにして得られる本発明のポリエーテル系共重合体には、水0.1 〜20重量%を配合することにより、更に安定した液状状態を維持することができる。これは、分子レベルで混合している水分子により、共重合体の結晶化が阻害されるためと考えられる。添加する水分量は、少なすぎると効果がなく、多すぎると高分子融体としての特徴である耐熱性を損ない、100 ℃以上で突沸が起こるようになるためである。好ましくは0.2 〜10重量%が有効である。
【0042】
本発明のポリエーテル系共重合体には、必要に応じて相溶性のある他の液状あるいは固体状の物質を添加し、耐熱性、流動性等を改善することができる。また、その使用目的や用途によっては、一般的な添加剤、例えば染料、顔料等の着色剤、界面活性剤或いは有機高分子材料等を1種又は2種以上添加することができる。
【0043】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、評価は次の方法で行った。
〔重合体の分析〕
重合により得たポリマーを、ヘキサフルオロイソプロパノールd2 に溶解し、 1H−NMR測定を行った。主鎖を構成する単位に対応するピーク面積および各末端に対応するピーク面積を定量し、ポリエーテル系共重合体中の1,3 −ジオキソランに由来する単位とトリオキサンに由来する単位のモル分率(モル%)を算出すると共に、総末端数から数平均分子量(Mn)を算出した。
〔融点・結晶化温度の測定〕
DSCを使用し、評価用試料(重合体)を50℃に保持した後、10℃/分の降温速度で50℃から−30℃まで降温して、結晶化温度に相当する発熱ピークを測定した。次に、−30℃から50℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して、融点に相当する発熱ピークを測定した。
実施例1
SUS製の重合反応容器に、撹拌用の羽根(アジテーター)ならびに重合系内の液温が検知できるような熱電対をセットし、系内を密閉して窒素置換を行った後、モノマーとして(A) 1,3 −ジオキソラン162.7g、(B) トリオキサン32.2g ((A) と(B) のモノマー比で86モル%:14モル%)を順に反応容器内に注いだ。重合釜の温度を60℃にセットし、撹拌を開始した後、モノマー溶液温度が所定の設定温度(60℃)に達したところで、触媒として(C) ヘテロポリ酸(リンタングステン酸(以下、同じ))の蟻酸メチル溶液をヘテロポリ酸換算で10ppm (モノマー全量に対し)添加して重合を開始した。重合反応の進行に伴って系内の温度は徐々に上昇し、最高温度(この例では77℃)に達した後、系内温度は徐々に下降した。重合反応は、系内温度が最高温度に達し下降開始して10分後に終了した。反応の停止は、トリエチルアミンの1,3 −ジオキソラン5%溶液を9cc加えて10分以上撹拌することによって行った。次いで、系内を真空にし、未反応のモノマーを除去した後、重合釜からポリマーを排出し、得られたポリマーをさらに終夜で真空乾燥した。
【0044】
得られたポリマーの性状を目視観察すると共に、上記分析法及び測定法により、融点・結晶化温度、ポリマーを構成するモノマーユニット組成(モル%)及び数平均分子量(Mn)を測定した。
実施例2
実施例1におけるモノマー仕込みを(A) 1,3 −ジオキソラン151.3g、(B) トリオキサン46.0g ((A) と(B) のモノマー比で80モル%:20モル%)に変えた以外は、実施例1に従って操作を行った。
実施例3〜6
重合開始前のモノマー溶液の温度及び(C) ヘテロポリ酸触媒の添加量を表1に示すように変えた以外は、実施例2と同様にして操作を行った。
実施例7
重合反応容器として冷却用ジャケット付きの反応装置を用い、モノマーとして(A) 1,3 −ジオキソラン151.3g、(B) トリオキサン46.0g ((A) と(B) のモノマー比で80モル%:20モル%)を反応容器内に供給し、30℃に保持した。次に、(C) ヘテロポリ酸触媒を表1に示す割合で添加し、反応が開始した段階(重合系内の温度上昇が確認された段階)で、ジャケットに20℃の冷却水を流して反応装置を外部から冷却しながら重合を行い、系内温度が最高温度(70℃)に達し下降を開始して10分後に反応を停止した。重合体の後処理等は実施例1に準じて行った。
実施例8
触媒として(D) トリフルオロメタンスルホン酸の蟻酸メチル溶液を用い、トリフルオロメタンスルホン酸換算で20ppm となる量を添加したこと以外は、実施例4と同様にして操作を行った。
実施例9
モノマー仕込みを(A) 1,3 −ジオキソラン136.2g、(B) トリオキサン55.2g ((A) と(B) のモノマー比で75モル%:25モル%)に変えた以外は、実施例4と同様にして操作を行った。
実施例10
モノマー仕込みを(A) 1,3 −ジオキソラン128.0g、(B) トリオキサン66.7g ((A) と(B) のモノマー比で70モル%:30モル%)とし、重合開始前のモノマー溶液の温度及び(C) ヘテロポリ酸触媒の添加量を表1に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして操作を行った。
比較例1
実施例1におけるモノマー仕込みを(A) 1,3 −ジオキソラン106.4g、(B) トリオキサン86.3g ((A) と(B) のモノマー比で60モル%:40モル%)に変えた以外は、実施例1に従って操作を行った。
比較例2
モノマー仕込みを(A) 1,3 −ジオキソラン200gのみとし、初期重合開始温度を30℃、(C) ヘテロポリ酸触媒の添加量を100ppmとして操作を行った。
比較例3〜7
モノマー仕込みを(A) 1,3 −ジオキソラン151.3g、(B) トリオキサン46.0g ((A) と(B) のモノマー比で80モル%:20モル%)とし、重合開始前のモノマー溶液の温度及び(C) ヘテロポリ酸触媒の添加量を表2に示すように変えて操作を行った。
【0045】
重合開始前のモノマー溶液の温度を0℃とした比較例3では、触媒量を400ppmに増やしても重合しなかった。系内最高温度が80℃を超えた比較例4及び5では、反応溶液が激しく突沸したため、重合を継続することができなかった。また、系内最高温度が50℃に達しない比較例6及び7では、室温で液状を示す重合体を得ることができなかった。
【0046】
上記評価結果を表1及び2に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
Claims (4)
- (A) 1,3 −ジオキソラン75〜95モル%及び(B) トリオキサン25〜5モル%を共重合させてポリエーテル系共重合体を製造するにあたり、カチオン重合触媒を使用し、25 〜 60 ℃の温度に保持されたモノマー溶液を用いて重合を開始すると共に、重合中の反応系内の最高温度を50〜80℃の間に保持するように制御しながら共重合させることを特徴とするポリエーテル系共重合体の製造法。
- ポリエーテル系共重合体が、(A) 1,3 −ジオキソラン75〜85モル%及び(B) トリオキサン25〜15モル%を共重合させてなるものである請求項1記載のポリエーテル系共重合体の製造法。
- カチオン重合触媒が、ヘテロポリ酸、イソポリ酸、パーフルオロアルキルスルホン酸及びこれらの誘導体から選ばれる1種もしくは2種以上である請求項1又は2記載のポリエーテル系共重合体の製造法。
- カチオン重合触媒の添加量が、 (A) 1,3 −ジオキソラン及び (B) トリオキサンの合計に対し1〜 100ppm (重量基準)である請求項1〜3の何れか1項記載のポリエーテル系共重合体の製造法。
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