JP3859356B2 - 窒化物半導体素子の製造方法 - Google Patents

窒化物半導体素子の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は窒化物半導体(InXAlYGa1-X-YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)からなる発光ダイオード(LED)、レーザダイオード(LD)、スーパールミネッセントダイオード(SLD)等の発光素子、光センサー、太陽電池等の受光素子、あるいはトランジスタ、パワーデバイス等の電子デバイスに使用される窒化物半導体素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
我々はGaN基板の上に、活性層を含む窒化物半導体レーザ素子を作製して、世界で初めて室温での連続発振1万時間以上を達成したことを発表した(ICNS'97 予稿集,October 27-31,1997,P444-446、及びJpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997)pp.L1568-1571、Part2,No.12A,1 December 1997)。さらに、前記レーザ素子よりサファイアを除去してGaN単独とすることにより、5mW出力でも1万時間以上の連続発振に成功したことを発表した。(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.37(1998)pp.L309-L312、及びAppl.Phys.Lett.Vol.72(1998)No.16,2014-2016)
【0003】
以上のレーザ素子は、アンドープGaN基板のキャリア濃度が不十分であるため、そのGaN裏面側からn電極を取り出さずに、窒化物半導体面側からn電極、及びp電極を取り出した構造となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
同一面側からp電極とn電極とを取り出す構造とすると、上下から電極を取り出したものに比較してチップサイズが大きくなる欠点がある。また窒化物半導体層側にp、n両電極がある構造は、チップ製造工程においても、電極の形状、チップ形状等にも数々の制約を受けやすく製造しにくい傾向にある。
【0005】
またGaN基板のキャリア濃度を稼ぐために、GaN基板成長中にn型不純物をドープすることも考えられる。しかしGaN基板は窒化物半導体の異なる材料よりなる基板上に成長された後、異種基板を何らかの方法を用いて除去することによって形成されることが多い。この場合、基板除去面に、直接n電極を形成するとオーミック性が悪くなる可能性がある。
【0006】
従って、本発明はこのような事情を鑑みて成されたものであって、窒化物半導体基板を用いた素子を実現するに際し、基板裏面側からn電極を取り出すための新規な窒化物半導体素子の構造を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本件発明の窒化物半導体素子の製造方法は、窒化物半導体と異なる材料よりなる異種基板の上に、n型不純物がドープされた窒化物半導体を横方向成長により形成し、
前記異種基板を除去することにより、前記窒化物半導体が成長した側にある第1の主面と、前記異種基板が除去された側にある第2の主面とを有し、前記第1の主面が素子構造の形成面となる窒化物半導体基板を形成し、
前記窒化物半導体基板の第2の主面側にn型不純物がドープされた窒化物半導体をn側コンタクト層として成長して、前記異種基板の除去により前記第2の主面に生じたダメージを回復し、前記n側コンタクト層にn電極を形成することを特徴とする。n型不純物としてはSi、Ge、Sn、S、Ti、Zr等が挙げられるが、最も好ましくはSiを用いる。
【0009】
前記窒化物半導体基板の平均的なn型不純物濃度は5×1016/cm3以上、5×1018/cm3以下に調整されていることが望ましい。さらに好ましくは1×1018/cm3以下、最も好ましくは5×1017/cm3以下に調整される。前記n側コンタクト層のn型不純物濃度が、窒化物半導体基板の第2の主面表面近傍のn型不純物濃度よりも大きいことを特徴とする。コンタクト層の好ましい不純物濃度としては5×1017/cm3以上、好ましくは1×1018/cm3以上、さらに好ましくは3×1018/cm3以上に調整する。上限については1×1020/cm3以下が望ましい。前記窒化物半導体基板の平均的なn型不純物濃度が5×1016/cm3以上、5×1018/cm3以下であり、且つ前記コンタクト層のn型不純物濃度は、1×1018/cm3以上、1×1020/cm3以下であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の素子では、前記n側コンタクト層と第2の主面との間に、アンドープ若しくはn型不純物濃度がn側コンタクト層よりも少ない窒化物半導体を有するバッファ層が形成されていることを特徴とする。このバッファ層の膜厚はは0.1μm以下、好ましくは500オングストローム以下、さらに好ましくは300オングストローム以下にする。下限については50オングストローム以上あることが望ましい。
【0011】
さらに、本発明では窒化物半導体基板、バッファ層、n側コンタクト層の内の少なくとも2種類が同一組成を有することを特徴とする。最も好ましくは、全て実質的にAl、Inを含まないGaNとする。
【0012】
またn側コンタクト層、バッファ層の少なくとも一方が、窒化物半導体層が積層された多層膜構造を有することを特徴とする。多層膜構造は好ましくは超格子構造とする。超格子構造とは、例えば膜厚100オングストローム以下、好ましくは70オングストローム以下、最も好ましくは50オングストローム以下の、異なる組成を有する窒化物半導体層を積層した積層構造を指す。
【0013】
多層膜の組み合わせとしては、InXGa1-XN(0≦X≦1)とAlYGa1-YN(0≦Y≦1、但しX=Y=0の場合は、GaN層中の不純物濃度が異なる。)とを交互に積層することが望ましい。本発明ではアンドープGaNとn型不純物ドープGaNとの組み合わせ、若しくはn型不純物少量ドープGaNとn型不純物多量ドープGaNが好ましい組み合わせである。
【0014】
【発明の実施の形態】
窒化物半導体基板は、例えば窒化物半導体と異なる材料よりなる異種基板上に、基板となるような膜厚で窒化物半導体を成長させた後、その異種基板を除去することによって得られる。具体的な好ましい窒化物半導体基板の製造方法としては、例えば次のような方法がある。
【0015】
まずサファイア、SiCのような窒化物半導体と異なる材料よりなる異種基板を用い、この異種基板上に第1の窒化物半導体を成長させる。そしてその第1の窒化物半導体の上に、例えばSiO2、TiO2のような、窒化物半導体が表面に成長しないか若しくは成長しない保護膜を部分的に設ける。保護膜を設ける前に第1の窒化物半導体をエッチングしてその表面に凹凸を設けても良い。凹凸を設けた場合、前記保護膜は少なくともその凸部表面に形成する。次に保護膜を部分的に設けた状態において、その保護膜の上から基板となる第2の窒化物半導体を成長させる。第2の窒化物半導体は最初保護膜の上には成長せず、第1の窒化物半導体の露出面から成長し始める。第2の窒化物半導体の成長を続けると、保護膜上部において、第2の窒化物半導体は横方向に成長し、そして保護膜上部において繋がる。保護膜上で繋がった第2の窒化物半導体の成長を続けると、異種基板と窒化物半導体との格子定数不整、熱膨張係数差に起因する結晶欠陥が成長途中で止まり、結晶欠陥が非常に少ない窒化物半導体基板が得られる。後は、異種基板、保護膜、第1の窒化物半導体を、例えば研磨して除去することにより、第1の主面(as-grown側)と第2の主面(除去側)を有する窒化物半導体基板が得られる。
【0016】
窒化物半導体基板のアズグロウン(as-grown)側には素子構造となる窒化物半導体が成長される。一方、異種基板除去側の窒化物半導体基板面にn電極が形成されるのであるが、除去側の窒化物半導体基板は面方位が不均一であることが多い。窒化物半導体基板の面方位が不均一であると、この面に直接n電極を形成すると、オーミック性が不安定になりやすい傾向にある。そこで本発明では、この異種基板除去側に、n電極形成層となる窒化物半導体層を成長させることにより、窒化物半導体の面方位を整えることができ、さらに成長面を鏡面状とすることができるようになるので、n電極を形成するためのコンタクト層として、安定してn電極と良好なオーミック接触が得られるのである。
【0017】
窒化物半導体基板の平均的なn型不純物濃度は5×1016/cm3以上、5×1018/cm3以下に調整されていることが望ましい。5×1018/cm3よりもn型不純物濃度が多いと、窒化物半導体の結晶性が悪くなり、素子自体の出力が低下し、また寿命も短くなる傾向にある。従って好ましいn型不純物濃度としては、1×1018/cm3以下、最も好ましくは5×1017/cm3以下に調整する。下限については5×1016/cm3以上が望ましい。5×1016/cm3よりも少ないと、基板自体の抵抗率が高く、キャリア濃度が不十分となり、素子のVf、閾値における電圧が高くなる。なおn型不純物を窒化物半導体基板全体に均一にドープすることもできるし、また、連続状の濃度勾配、若しくはステップ状の濃度勾配をつけることもできる。濃度勾配をつける場合、第1の主面(as-grown)側に接近するに従って不純物濃度を小さくすることが望ましい。
【0018】
さらに、n側コンタクト層のn型不純物濃度を、窒化物半導体基板の第2の主面表面近傍のn型不純物濃度よりも大きくすることが望ましい。表面近傍の不純物濃度とは、表面から5μm以内の範囲のn型不純物濃度を指すものとする。n型不純物濃度を表面近傍よりも大きくすることにより、n電極とコンタクト層とのオーミック接触が得やすくなり、また、キャリアが基板内において拡散しやすくなるため素子の出力が向上する。コンタクト層の好ましい不純物濃度としては5×1017/cm3以上に調整する。上限については1×1020/cm3以下が望ましい。1×1020/cm3よりも多いとコンタクト層自体の結晶性が悪くなって、逆に良好なオーミックが得にくくなる。
【0019】
好ましい態様として、n側コンタクト層と第2の主面との間に、アンドープ若しくはn型不純物濃度がn側コンタクト層よりも少ない窒化物半導体を有するバッファ層を形成する。バッファ層は結晶性の良いコンタクト層を成長させるための層である。つまり、n型不純物がドープされた窒化物半導体基板の第2の主面に直接n側コンタクト層を成長させると、n側コンタクト層の結晶性が悪くなる恐れがある。そのためn型不純物濃度が少ないバッファ層を成長させることにより、窒化物半導体基板の第2の主面側の表面状態を整えると共に、結晶性の良いn側コンタクト層を成長させやすくするのである。バッファ層の膜厚は0.1μm以下に調整することが望ましい。バッファ層はアンドープ若しくはn型不純物が少ない層であるので一般に抵抗率が高く、キャリア濃度が低い。そのため0.1μmよりも厚いと、動作電圧が上昇する傾向にある。一方、下限については、結晶性を整えるためのバッファ層の下限として、50オングストローム以上あることが望ましい。
【0020】
さらに、窒化物半導体基板、バッファ層、n側コンタクト層の内の少なくとも2種類を同一組成とすることが望ましい。同一組成にすることにより格子定数が完全に一致し、バッファ層、n側コンタクト層が結晶性良く成長できる。同一組成とする場合、全て実質的にAl、Inを含まないGaNとすると最も結晶性がよい層が成長できる。なおバッファ層、n側コンタクト層を多層膜層とする場合には特に同一組成でなくてもよい。
【0021】
n側コンタクト層、バッファ層の少なくとも一方を好ましくは超格子構造とする。超格子構造とする作用として、AlGaN、InGaN、AlInN、InAlGaN等、単一層を厚膜で成長させることが難しい3元混晶、4元混晶の窒化物半導体を成長させる際に、その単一膜厚を100オングストローム以下にすると、その層が臨界膜厚以下になり、結晶性が良くなる。そのため結晶性の良い薄膜層を積層することにより、全体として結晶性の良いバッファ層、コンタクト層が成長できる。なお、互いにn型不純物濃度が異なるn型GaNを積層する場合には、厚膜でも結晶性の良いものが得られるため、その膜厚は100オングストローム以下にする必要はなく、単一層の膜厚は特に限定しない。
【0022】
多層膜の組み合わせとしては、InXGa1-XN(0≦X≦1)とAlYGa1-YN(0≦Y≦1、但しX=Y=0の場合は、GaN層中の不純物濃度が異なる。)とを交互に積層することが望ましい。組成が異なる場合は超格子とすることが望ましい。X=Y=0では、アンドープGaNとn型不純物ドープGaNとの組み合わせ、若しくはn型不純物少量ドープGaNとn型不純物多量ドープGaNとの組み合わせが好ましい。GaNとGaNとの組み合わせでは、先にも述べたようにGaN層の膜厚は問わない。不純物を多量ドープする場合、n型不純物濃度は1×1018/cm3〜1×1020/cm3の範囲、少量ではアンドープ〜5×1018/cm3の範囲に調整することが望ましい。なお本発明でアンドープとは意図的に不純物をドープしない状態を指すが、隣接する他の層からの不純物の拡散、あるいは反応中における意図しない不純物の混入等によりn型不純物が含まれる場合も、本発明ではアンドープと定義する。
【0023】
【実施例】
図1は本発明の一実施例に係るレーザ素子の構造を示す模式的な断面図であり、共振面に平行な方向で素子を切断した際の図を示すものである。以下、この図を元に実施例1について説明する。なお本発明の素子はレーザ素子に限定されるものではない。
【0024】
[実施例1]
1インチ角のSiドープGaNよりなる窒化物半導体基板1を用意する。この窒化物半導体基板1は、以下のようにして成長させたものである。
【0025】
(窒化物半導体基板1)
2インチφ、C面を主面とするサファイアよりなる異種基板1をMOVPE反応容器内にセットし、500℃で、トリメチルガリウム(TMG)、アンモニア(NH3)を用い、GaNよりなる低温バッファ層を200オングストロームの膜厚で成長させる。低温バッファ層成長後、1050℃で同じくGaNよりなる下地層を4μmの膜厚で成長させる。
【0026】
下地層成長後、ウェーハを反応容器から取り出し、この下地層の表面に、ストライプ幅10μm、ストライプ間隔(窓部)2μmのSiO2よりなる保護膜を形成する。保護膜形成後、ウェーハを再度MOVPEの反応容器内にセットし、温度を1050℃にして、TMG、アンモニアを用い、アンドープGaN層を5μm成長させ、SiO2の表面を覆う。成長後、ウェーハをMOVPE装置からHVPE装置に移送しGaメタルと、アンモニア、HCl、不純物ガスとしてシランガスを用い、Siを3×1017/cm3ドープしたn型GaN層を200μmの膜厚で成長させる。成長後、サファイア基板側から研磨して、サファイア基板、バッファ層、下地層、保護膜を除去することにより、総膜厚170μmのSiドープGaNからなる窒化物半導体基板1を作製する。
【0027】
(バッファ層32)
以上のようにして作製した窒化物半導体基板1をMOVPE装置に移送し、研磨側の基板を表にして、1050℃で、アンドープGaNよりなるバッファ層32を500オングストロームの膜厚で成長させる。
【0028】
(n側コンタクト層31)
続いて、1050℃で不純物ガスにシランガスを加え、Siを3×1018/cm3ドープしたGaN層を5μmの膜厚で成長させる。
【0029】
(第2のバッファ層2)
n側コンタクト層31成長後、窒化物半導体基板1をひっくり返し、AS-GROWN側の窒化物半導体基板1面に、1050℃でSiを1×1018/cm3ドープしたGaNよりなる第2のバッファ層2を2μmの膜厚で成長させる。このように窒化物半導体と異なる材料よりなる異種基板上に、100μm以上の膜厚で基板となるような窒化物半導体を成長させ、その後異種基板を除去して窒化物半導体基板を作製した場合、その窒化物半導体基板のas-grown面にn型不純物濃度が5×1016/cm3以上、1×1019/cm3以下のGaNを10μm以下の膜厚で成長させて、as-GROWN側の第2のバッファ層とすると、次に成長させる窒化物半導体の結晶性が良くなる傾向にある。
【0030】
(n側クラッド層3)
続いて、1050℃にてアンドープAl0.16Ga0.84Nよりなる層を25オングストロームの膜厚で成長させ、続いてTMAを止めて、シランガスを流し、Siを1×1019/cm3ドープしたn型GaNよりなる層を25オングストロームの膜厚で成長させる。それらの層を交互に積層して超格子層を構成し、総膜厚1.2μmの超格子よりなるn側クラッド層3を成長させる。なお、発振波長が長波長の430〜550nmのレーザ素子ではこのクラッド層はn型不純物をドープしたGaNでも良い。
【0031】
(n側光ガイド層4)
続いて、シランガスを止め、1050℃でアンドープGaNよりなるn側光ガイド層4を0.1μmの膜厚で成長させる。n側光ガイド層4はGaN、InGaNで成長できる。またこのn側光ガイド層にn型不純物をドープしても良い。なお、発振波長が長波長の430〜550nmのレーザ素子ではこのガイド層はInGaNを含む超格子層としても良い。
【0032】
(活性層5)
次に、800℃で、SiドープIn0.02Ga0.98Nよりなる障壁層を100オングストロームの膜厚で成長させ、続いて同一温度で、アンドープIn0.15Ga0.85Nよりなる井戸層を40オングストロームの膜厚で成長させる。障壁層と井戸層とを2回交互に積層し、最後に障壁層で終わり、総膜厚380オングストロームの多重量子井戸構造よりなる(MQW)の活性層5を成長させる。活性層は本実施例のようにアンドープでもよいし、またn型不純物及び/又はp型不純物をドープしても良い。不純物は井戸層、障壁層両方にドープしても良く、いずれか一方にドープしてもよい。なお障壁層にのみn型不純物をドープすると閾値が低下しやすい。
【0033】
(p側キャップ層6)
次に1050℃で、Mgを1×1020/cm3ドープしたp型Al0.3Ga0.7Nよりなるp側キャップ層6を300オングストロームの膜厚で成長させる。
【0034】
(p側光ガイド層7)
続いて1050℃で、アンドープGaNよりなるp側光ガイド層7を0.1μmの膜厚で成長させる。p側光ガイド層9もGaN、InGaNで成長できる。またこのp側光ガイド層にp型不純物をドープしても良い。なお、発振波長が長波長の430〜550nmのレーザ素子ではこのガイド層はInGaNを含む超格子層としても良い。
【0035】
(p側クラッド層8)
続いて1050℃でMgドープAl0.16Ga0.84Nよりなる層を25オングストロームの膜厚で成長させ、続いてアンドープGaNよりなる層を25オングストロームの膜厚で成長させ、総膜厚0.6μmの超格子層よりなるp側クラッド層8を成長させる。発振波長が長波長の430〜550nmのレーザ素子ではこのクラッド層はp型不純物をドープしたGaNでも良い。
【0036】
(p側コンタクト層9)
最後に、1050℃で、Mgを1×1020/cm3ドープしたp型GaNよりなるp側コンタクト層9を150オングストロームの膜厚で成長させる。このコンタクト層のキャリア濃度は、1×1017/cm3以上とすることが望ましい。1×1017/cm3よりも低いと電極と好ましいオーミックを得るのが難しくなる傾向にある。さらにコンタクト層の組成をGaN、InGaN、若しくはGaN、InGaNを含む超格子とすると、電極材料と好ましいオーミックが得られやすくなる。
【0037】
以上のようにして窒化物半導体を成長させたウェーハを反応容器から取り出し、最上層のp側コンタクト層9の表面に、所定の形状のマスクを介して、幅1.5μmのストライプからなるSiO2よりなる保護膜を形成する。保護膜形成後、RIE(反応性イオンエッチング)を用い、図1に示すように、p側クラッド層8とp側光ガイド層7との界面付近までエッチングを行い、幅1.5μmのストライプ状の導波路を形成する。
【0038】
ストライプ導波路形成後、SiO2マスクをつけたまま、窒化物半導体層の表面にZrO2よりなる絶縁膜100を形成する。絶縁膜100形成後、バッファードフッ酸に浸漬して、p側コンタクト層の上に形成したSiO2を溶解除去し、リフトオフ法によりSiO2と共に、p側コンタクト層の上にあるZrO2を除去する。
【0039】
絶縁膜100形成後、Ni/Auからなるp電極20を図1に示すように、絶縁膜100を介してp側コンタクト層9と良好なオーミックが得られるように形成する。一方、n側コンタクト層31の表面にはTi/Alよりなるn電極21をほぼ全面に形成する。
【0040】
p、n両電極形成後、窒化物半導体基板1のM面(窒化物半導体を六角柱で表した場合にその六角柱の側面に相当する面)で基板1を劈開して、ウェーハをバー(bar)状と成し、そのバーの劈開面に共振面を作製する。
【0041】
レーザチップ作製後、GaN基板のn電極21側をメタライズされたヒートシンクに設置して、図1に示すようにp電極20のストライプの直上部にない位置にAu線をワイヤーボンディングしてレーザ素子とする。このレーザ素子に室温でレーザ発振を試みたところ、発振波長408.5nm、閾値電流密度2kA/cm2において室温連続発振を示し、閾値における電圧は従来のものに比較して、約10%低下した。さらに電流値を上げて出力を上げ、40mWとしても、素子自体にショートは発生せず、50時間以上の連続発振を続けた。
【0042】
[実施例2]
実施例1において、バッファ層32を成長させず、研磨側の窒化物半導体基板1の上に直接、Siを1×1018/cm3ドープしたn側コンタクト層31を形成する他は同様にしてレーザ素子を作製したところ、実施例1のものに比較して、若干閾値が上昇する傾向にあったが、寿命は実施例1のものとほぼ同じであった。なおn側コンタクト層は直接窒化物半導体基板に成長させるため、そのSi濃度は実施例1のものに比較して少なくしてある。
【0043】
[実施例3]
実施例2において、n側コンタクト層31を成長させる際、アンドープGaN層を50オングストローム、Siを3×1018/cm3ドープしたGaN層を200オングストローム成長させ、これらの層を交互に積層して多層膜を構成し、総膜厚3μmとする他は実施例2と同様にしてレーザ素子を作製したところ、実施例1のものとほぼ同等の特性を有するレーザ素子が得られた。なおn電極形成層はSiドープGaN層とした。なおSiドープGaN層の膜厚を50オングストロームとしても同様の効果が得られる。
【0044】
[実施例4]
実施例1において、n側コンタクト層31を成長させる際に、アンドープAl0.05Ga0.95N層を50オングストローム、Siを5×1018/cm3ドープしたGaN層を50オングストローム成長させ、これらの層を交互に積層して超格子層を形成し、総膜厚3μmとする他は実施例1と同様にしてレーザ素子を作製したところ、実施例1のものとほぼ同等の特性を有するレーザ素子が得られた。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の素子では研磨側のGaN基板にダメージ回復層および、電極形成層として、n側コンタクト層を設けていることにより、発光素子では発光開始電圧を低下させて、発光効率に優れた素子を実現できる。また本実施例は主として、レーザ素子について説明したが、LED素子についても本発明を適用することによりVf(順方向電圧)を低下させることができる。しかもGaN基板を用いているために、サファイアを用いたものよりも、素子自体の結晶欠陥が少なくなり、信頼性に優れた素子を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例に係るレーザ素子の構造を示す模式断面図。
【符号の説明】
31・・・n側コンタクト層
32・・・バッファ層
1・・・窒化物半導体基板
2・・・第2のバッファ層
3・・・n側クラッド層
4・・・n側光ガイド層
5・・・活性層
6・・・p側キャップ層
7・・・p側光ガイド層
8・・・p側クラッド層
9・・・p側コンタクト層
20・・・p電極
21・・・n電極
22・・・ワイヤー
100・・・絶縁膜

Claims (10)

  1. 窒化物半導体と異なる材料よりなる異種基板の上に、n型不純物がドープされた窒化物半導体を横方向成長により形成し、
    前記異種基板を除去することにより、前記窒化物半導体が成長した側にある第1の主面と、前記異種基板が除去された側にある第2の主面とを有し、前記第1の主面が素子構造の形成面となる窒化物半導体基板を形成し、
    前記窒化物半導体基板の第2の主面側にn型不純物がドープされた窒化物半導体をn側コンタクト層として成長して、前記異種基板の除去により前記第2の主面に生じたダメージを回復し、前記n側コンタクト層にn電極を形成することを特徴とする窒化物半導体素子の製造方法。
  2. 前記窒化物半導体基板は、窒化物半導体と異なる材料よりなる異種基板の上に、第1の窒化物半導体を形成した後、該第1の窒化物半導体上に保護膜を部分的に形成し、該保護膜上において、第2の窒化物半導体を横方向成長により形成し、その後、前記異種基板と第1の窒化物半導体と保護膜とを除去することによって得られることを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体素子の製造方法。
  3. 前記n側コンタクト層のn型不純物濃度が、前記窒化物半導体基板の第2の主面表面近傍のn型不純物濃度よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体素子の製造方法。
  4. 前記窒化物半導体基板のn型不純物の濃度は、連続状の濃度勾配、若しくはステップ状の濃度勾配を有することを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体素子の製造方法。
  5. 前記窒化物半導体基板の平均的なn型不純物濃度が5×1016/cm3以上、5×1018/cm3以下であり、且つ前記n側コンタクト層のn型不純物濃度は、1×1018/cm3以上、1×1020/cm3以下であることを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体素子の製造方法。
  6. 前記n側コンタクト層と前記第2の主面との間に、アンドープ若しくはn型不純物濃度が前記n側コンタクト層よりも少ない窒化物半導体を有するバッファ層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5の内のいずれか1項に記載の窒化物半導体素子の製造方法。
  7. 前記バッファ層の膜厚が、0.1μm以下であることを特徴とする請求項6に記載の窒化物半導体素子の製造方法。
  8. 前記窒化物半導体基板、バッファ層、n側コンタクト層の内の少なくとも2種類が同一組成を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の窒化物半導体素子の製造方法。
  9. 前記n側コンタクト層、バッファ層の少なくとも一方が、窒化物半導体層が積層された多層膜であって、超格子構造を有することを特徴とする請求項1乃至8の内のいずれか1項に記載の窒化物半導体素子の製造方法。
  10. 前記多層膜はInXGa1-XN(0≦X≦1)とAlYGa1-YN(0≦Y≦1、但しX=Y=0の場合は、GaN層中の不純物濃度が異なる)とが積層されていることを特徴とする請求項1乃至9に記載の窒化物半導体素子の製造方法。
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