JP3858945B2 - ハイブリドーマの選抜方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマの選抜方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
モノクローナル抗体は分子量、約150,000のタンパク質であり、その高い抗原認識能と抗原結合能により、医学分野の診断、治療、研究において多く用いられている。モノクローナル抗体は、主に目的の抗原で予め感作された抗体産生細胞とマウス形質細胞腫細胞とのハイブリドーマから分泌され、培養上清またはマウス腹水より精製されて用いられる。このモノクローナル抗体は、単一クローンの抗体産生細胞が産生する抗体と同様に、一次構造が均一である。
【0003】
しかし、いくつかのモノクローナル抗体の混合物を分泌するハイブリドーマが認められている。例えばマウス形質細胞腫細胞NSー1は、自ら抗体のL鎖を合成する能力を持っており、これをハイブリドーマ作製の細胞融合に用いた場合、NSー1由来の抗体のL鎖と抗体産生細胞由来のH鎖とが組合わされたモノクローナル抗体、抗体産生細胞由来のH鎖とL鎖が組み合わされたモノクローナル抗体、およびNSー1由来のL鎖(1本)と抗体産生細胞由来のH鎖(2本)とL鎖(1本)とが組み合わされたモノクローナル抗体が分泌される可能性がある。即ち、3種のモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマが得られることがある。
【0004】
しかし、このようなハイブリドーマばかり得られるわけではなく、抗体産生細胞由来のH鎖とL鎖が組み合わされたモノクローナル抗体だけを分泌するハイブリドーマや、NSー1由来のL鎖と抗体産生細胞由来のH鎖とが組合わされたモノクローナル抗体だけを分泌するハイブリドーマも、同時に得られる。このようにNSー1を細胞融合に用いた場合、種々の抗体を分泌するハイブリドーマが得られ、これらのハイブリドーマを分離するには、通常のクローニングおよび抗体活性の測定では困難であった。
【0005】
また本発明者らが新たに見出だした知見によれば、上述のような3種のモノクローナル抗体を分泌する単一のハイブリドーマを継代培養したところ、培養中に、ハイブリドーマの遺伝子の脱離などが生じ、種々のハイブリドーマの混合物となることが観察された。即ち単一ハイブリドーマの継代培養により、上述の3種のモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ、抗体産生細胞由来のH鎖とL鎖が組み合わされたモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ、およびNSー1由来のL鎖と抗体産生細胞由来のH鎖とが組合わされたモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマの混合物が得られることが判明した。これらのハイブリドーマを分離することも、通常のクローニングおよび抗体活性の測定では困難である。
【0006】
またSP2/0のような自ら抗体を合成する能力を持たないマウス形質細胞腫細胞を用いてハイブリドーマを作製した場合でも、1つのマウス形質細胞腫細胞に多数の抗体産生細胞が融合した場合などには、上述の場合と同様に複数種のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ、および種々のモノクローナル抗体を産生する種々のハイブリドーマが得られると考えられ、それらの分離をすることも、通常のクローニングおよび抗体活性の測定では困難であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
通常、NSー1由来のL鎖と抗体産生細胞由来のH鎖とが組合わされてできたモノクローナル抗体は、抗体産生細胞由来のH鎖とL鎖が組み合わされてできたモノクローナル抗体に比べて抗原結合能が低く、臨床診断などの超微量定量が必要とされる領域や、免疫学などにおける高度な特異性を要する分析試薬としては適当ではない。また複数種のモノクローナル抗体を産生する1つのハイブリドーマから、1種のモノクローナル抗体だけを分泌させる方法はなく、精製する段階で僅かに異なる抗体の分子量や電気的性質、疎水性などを利用して分離し、均一化していた。しかし、このような方法で抗体を均一化するためには熟練を要し、また、完全に均一化することは事実上困難である。
【0008】
従って本発明は、各種のハイブリドーマを分離・選抜する方法を提供することを目的とし、それにより均一なモノクローナル抗体を得ることを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。即ち本発明は、ハイブリドーマをクローニングし、次いでそのハイブリドーマが分泌する抗体を電気泳動および/またはクロマトグラフィーにかけることによりハイブリドーマをスクリーニングすることを特徴とする、ハイブリドーマの選抜方法である。以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0010】
本発明では、クローニングは通常行われているハイブリドーマのクローニング方法でよく、例えば限界希釈法などがあげられる。具体的にはハイブリドーマを通常用いられている動物細胞培養用培地で培養し、限界希釈法にて1ウェルに1個のハイブリドーマが入るように、通常用いられる96ウェルイムノプレートに分注する方法などがあげられる。
【0011】
次いでクローニングされたハイブリドーマが分泌する抗体を、電気泳動および/またはクロマトグラフィーにかけることにより、ハイブリドーマをスクリーニングすればよい。ハイブリドーマが分泌する抗体は、ハイブリドーマをマウス腹水または培養液中で培養し、腹水または培養上清を回収することによって得ることができる。例えばイムノプレートでクローニングされたハイブリドーマを37℃、95%空気、5%CO2の雰囲気下で培養を続け、細胞が増殖してコロニーを形成する頃に、培養上清を採取すればよい。この培養上清に含まれる抗体は、単一のモノクローナル抗体とは限らず、前述のようにモノクローナル抗体の混合物の可能性がある。従って、それらを判別し、目的とする抗体を産生するハイブリドーマを選抜すべくスクリーニングを行う。
【0012】
スクリーニングは、ハイブリドーマが分泌する抗体を電気泳動および/又はクロマトグラフィーにかけることによって行い、混在する可能性のある複数種のモノクローナル抗体が分離されるような条件下で行う。このときの抗体は、インタクトでも、またはFab、F(ab)´2、Fab´、L鎖、H鎖などフラグメント化したものでもかまわない。
【0013】
電気泳動を用いる場合は、通常行われている方法により行えばよく、特に限定はない。混在する可能性のある複数種のモノクローナル抗体が分離されるような条件で泳動を行えばよく、特に還元系での電気泳動を行うことにより、混在するモノクローナル抗体のL鎖、H鎖の違いを認識することができる。例えば、SDSを用いたポリアクリルアミド電気泳動、アガロース電気泳動、等電点電気泳動などにより電気泳動を行えばよい。電気泳動を用いれば、多数の試料を同時に簡便に扱うことができる。
【0014】
またクロマトグラフィーは、電気泳動と比較してより厳密に抗体の性質を認識することができるので、分離すべき複数の抗体のインタクトまたはフラグメントの分子量が互いに近いときには、特に好ましい方法である。クロマトグラフィーとしては、混在する種々のモノクローナル抗体が分離されるような条件で行えばよく、分離すべきモノクローナル抗体の性質に応じて適宜選択すればよい。例えば、分離すべきモノクローナル抗体に応じて、疎水クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィーなどにかけれはばよい。充填剤としては、具体的には、例えばPhenyl・5PW、DEAE・5PW、G3000SWXL(いずれも東ソー株式会社製)などがあげられる。
【0015】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように本発明によれば、種々のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの混合物からから短期間で、遺伝子操作など必要なく簡便に、目的とするモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを選抜できる。このことにより、臨床診断などの超微量定量が必要とされる領域や、免疫学などにおける高度な特異性を要する研究のための分析試薬として、該モノクローナル抗体が果たす役割は非常に重要であると考えられる。
【0016】
【実施例】
以下に本発明を実施例により詳細に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0017】
実施例1
(A)ハイブリドーマのクローニング
マウス形質細胞腫細胞NSー1とフェリチンに対する抗体産生細胞とを融合して得たハイブリドーマを、限界希釈法にてクローニングし、単一クローンのハイブリドーマSG11を得た。ハイブリドーマSG11は、3種のモノクローナル抗体を分泌する事が確認された。即ちSG11は、(1)NS−1由来のL鎖 (2本)と抗体産生細胞由来のH鎖(2本)とからなるモノクローナル抗体、 (2)抗体産生細胞由来のH鎖とL鎖とからなるモノクローナル抗体、(3)NS−1由来のL鎖(1本)と、抗体産生細胞由来のH鎖(2本)とL鎖(1本)とからなるモノクローナル抗体、の3種のモノクローナル抗体を分泌することが確認された。
【0018】
このハイブリドーマSG11を100日間継代培養した後、10%牛胎児血清を含むRDF培地(極東製薬社製)(以下、10%FCSRDFと省略する)で培養し、血球計算盤で細胞数を計算した。細胞数を1ウェルあたり1個/100μLとなるように10%FCSRDFで希釈し、96ウェルイムノプレート(インターメッド社製)に100μLずつ分注した。培養10日目前後から細胞コロニーが認められたウェルについて、細胞を直径3cmの培養用ディッシュ(Falcon社製)に移し、さらに10%FCSRDFを2mL加えた。培養を続け、細胞数が5×106個以上に増殖したら、培養上清を採取した。
【0019】
(B)培養上清の電気泳動
上記培養上清2mLにProtein−A,TOYOPEARL(東ソー株式会社製)懸濁液100μLを加え、2時間、室温で振盪し、抗体を吸着させた。5分間静置してProtein−A,TOYOPEARLを沈澱させた後、上清を除去した。これにリン酸緩衝化生理食塩水(0. 85%NaCl含有0. 01Mリン酸緩衝液、pH7. 2;以下PBSと略す)2mLを加えてProtein−A,TOYOPEARLを懸濁し、5分間静置した後上清を除去した。この洗浄操作を3回繰り返した。
【0020】
洗浄後のProtein−A,TOYOPEARLに20μLの試料溶解液 (0. 125MTris−HCl,4%ドデシル硫酸ナトリウム、10%βメルカプトエタノール、20%シュークロース、0. 004%ブロムフェノールブルー、pH6. 8)を加えて3分間煮沸した。試料溶液を5分間静置してProtein−A,TOYOPEARLを沈澱させた後、上清を12%SDS−ポリアクリルアミド電気泳動にかけた。
【0021】
また継代培養後クローニングする前のハイブリドーマSG11の培養上清も同様に処理し、電気泳動を行った。
【0022】
(C)結果
結果を図1に示す。図からも明らかなように、ハイブリドーマSG11の分泌するモノクローナル抗体には2本のL鎖が認められた。また継代培養後のSG11をクローニングして得たハイブリドーマ5H6、5G3には、それぞれ5H6には低分子側に1本の、5G3については高分子側に1本のL鎖だけが認められた。従って、種々のハイブリドーマの混合物となった継代培養後のSG11から、単一のL鎖を持つモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ5H6、5G3を選抜することができた。
【0023】
実施例2
(A)試料調製
実施例1のクローニングして得たハイブリドーマ5H6、5G3および実施例1で得た継代培養後のハイブリドーマSG11の培養上清10mLを、予め吸着緩衝液(0. 2Mグリシン、0. 8M酒石酸ナトリウム、pH9. 0)で平衡化しておいた直径1cm、長さ2cmのProtein−A,TOYOPEARLカラムに1mL/minの流速でかけ、抗体を吸着させた。吸着緩衝液を20mL流してカラムを洗浄後、溶出緩衝液(0. 1Mクエン酸ナトリウム、0. 15M塩化ナトリウム、pH3. 5)5mLでProtein−Aに結合したモノクローナル抗体を溶出した。溶出されたモノクローナル抗体に直ちに3MTrisを加えてpHを7. 2にした。
【0024】
(B)疎水クロマトグラフィーによる分析
(A)で精製された培養上清中のモノクローナル抗体に等容量の2M硫酸アンモニウムを含むPBSを加えた。これをPhenyl・5PW(7. 5mmID×7. 5cm、東ソー(株)社製)に0分から5分まで1M硫酸アンモニウムを含むPBS、pH7. 4を用いて1mL/minの流速で吸着させ、次に5分から35分まで1M硫酸アンモニウムを含むPBSに対するPBSの比率が0%から100%のリニアグラジェントでモノクローナル抗体を溶出させた。
【0025】
(C)結果
結果を図2〜4に示す。図中、横軸は溶出時間、縦軸は280nmにおける吸光度を示す。図2からも明らかなように、ハイブリドーマSG11には3本のピークが溶出されており、3種類のモノクローナル抗体が分泌されることが認められた。また図3からハイブリドーマ5H6についてはピーク1のみ、図4からハイブリドーマ5G3についてはピーク3のみが認められ、それぞれ単一のモノクローナル抗体を産生することが明らかとなり、単一モノクローナル抗体を産生するそれらハイブリドーマを選択することができた。
【0026】
以上の結果から、本発明によりハイブリドーマの混合物から、必要な均一なモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを選抜することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で行った電気泳動(SDS−PAGE)の結果を示す図である。
【図2】実施例2で継代培養後のハイブリドーマSG11の培養上清を疎水クロマトグラフィーにかけたときの溶出図である。
【図3】実施例2でハイブリドーマ5H6の培養上清を疎水クロマトグラフィーにかけたときの溶出図である。
【図4】実施例2でハイブリドーマ5G3の培養上清を疎水クロマトグラフィーにかけたときの溶出図である。
【産業上の利用分野】
本発明は、モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマの選抜方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
モノクローナル抗体は分子量、約150,000のタンパク質であり、その高い抗原認識能と抗原結合能により、医学分野の診断、治療、研究において多く用いられている。モノクローナル抗体は、主に目的の抗原で予め感作された抗体産生細胞とマウス形質細胞腫細胞とのハイブリドーマから分泌され、培養上清またはマウス腹水より精製されて用いられる。このモノクローナル抗体は、単一クローンの抗体産生細胞が産生する抗体と同様に、一次構造が均一である。
【0003】
しかし、いくつかのモノクローナル抗体の混合物を分泌するハイブリドーマが認められている。例えばマウス形質細胞腫細胞NSー1は、自ら抗体のL鎖を合成する能力を持っており、これをハイブリドーマ作製の細胞融合に用いた場合、NSー1由来の抗体のL鎖と抗体産生細胞由来のH鎖とが組合わされたモノクローナル抗体、抗体産生細胞由来のH鎖とL鎖が組み合わされたモノクローナル抗体、およびNSー1由来のL鎖(1本)と抗体産生細胞由来のH鎖(2本)とL鎖(1本)とが組み合わされたモノクローナル抗体が分泌される可能性がある。即ち、3種のモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマが得られることがある。
【0004】
しかし、このようなハイブリドーマばかり得られるわけではなく、抗体産生細胞由来のH鎖とL鎖が組み合わされたモノクローナル抗体だけを分泌するハイブリドーマや、NSー1由来のL鎖と抗体産生細胞由来のH鎖とが組合わされたモノクローナル抗体だけを分泌するハイブリドーマも、同時に得られる。このようにNSー1を細胞融合に用いた場合、種々の抗体を分泌するハイブリドーマが得られ、これらのハイブリドーマを分離するには、通常のクローニングおよび抗体活性の測定では困難であった。
【0005】
また本発明者らが新たに見出だした知見によれば、上述のような3種のモノクローナル抗体を分泌する単一のハイブリドーマを継代培養したところ、培養中に、ハイブリドーマの遺伝子の脱離などが生じ、種々のハイブリドーマの混合物となることが観察された。即ち単一ハイブリドーマの継代培養により、上述の3種のモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ、抗体産生細胞由来のH鎖とL鎖が組み合わされたモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ、およびNSー1由来のL鎖と抗体産生細胞由来のH鎖とが組合わされたモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマの混合物が得られることが判明した。これらのハイブリドーマを分離することも、通常のクローニングおよび抗体活性の測定では困難である。
【0006】
またSP2/0のような自ら抗体を合成する能力を持たないマウス形質細胞腫細胞を用いてハイブリドーマを作製した場合でも、1つのマウス形質細胞腫細胞に多数の抗体産生細胞が融合した場合などには、上述の場合と同様に複数種のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ、および種々のモノクローナル抗体を産生する種々のハイブリドーマが得られると考えられ、それらの分離をすることも、通常のクローニングおよび抗体活性の測定では困難であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
通常、NSー1由来のL鎖と抗体産生細胞由来のH鎖とが組合わされてできたモノクローナル抗体は、抗体産生細胞由来のH鎖とL鎖が組み合わされてできたモノクローナル抗体に比べて抗原結合能が低く、臨床診断などの超微量定量が必要とされる領域や、免疫学などにおける高度な特異性を要する分析試薬としては適当ではない。また複数種のモノクローナル抗体を産生する1つのハイブリドーマから、1種のモノクローナル抗体だけを分泌させる方法はなく、精製する段階で僅かに異なる抗体の分子量や電気的性質、疎水性などを利用して分離し、均一化していた。しかし、このような方法で抗体を均一化するためには熟練を要し、また、完全に均一化することは事実上困難である。
【0008】
従って本発明は、各種のハイブリドーマを分離・選抜する方法を提供することを目的とし、それにより均一なモノクローナル抗体を得ることを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。即ち本発明は、ハイブリドーマをクローニングし、次いでそのハイブリドーマが分泌する抗体を電気泳動および/またはクロマトグラフィーにかけることによりハイブリドーマをスクリーニングすることを特徴とする、ハイブリドーマの選抜方法である。以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0010】
本発明では、クローニングは通常行われているハイブリドーマのクローニング方法でよく、例えば限界希釈法などがあげられる。具体的にはハイブリドーマを通常用いられている動物細胞培養用培地で培養し、限界希釈法にて1ウェルに1個のハイブリドーマが入るように、通常用いられる96ウェルイムノプレートに分注する方法などがあげられる。
【0011】
次いでクローニングされたハイブリドーマが分泌する抗体を、電気泳動および/またはクロマトグラフィーにかけることにより、ハイブリドーマをスクリーニングすればよい。ハイブリドーマが分泌する抗体は、ハイブリドーマをマウス腹水または培養液中で培養し、腹水または培養上清を回収することによって得ることができる。例えばイムノプレートでクローニングされたハイブリドーマを37℃、95%空気、5%CO2の雰囲気下で培養を続け、細胞が増殖してコロニーを形成する頃に、培養上清を採取すればよい。この培養上清に含まれる抗体は、単一のモノクローナル抗体とは限らず、前述のようにモノクローナル抗体の混合物の可能性がある。従って、それらを判別し、目的とする抗体を産生するハイブリドーマを選抜すべくスクリーニングを行う。
【0012】
スクリーニングは、ハイブリドーマが分泌する抗体を電気泳動および/又はクロマトグラフィーにかけることによって行い、混在する可能性のある複数種のモノクローナル抗体が分離されるような条件下で行う。このときの抗体は、インタクトでも、またはFab、F(ab)´2、Fab´、L鎖、H鎖などフラグメント化したものでもかまわない。
【0013】
電気泳動を用いる場合は、通常行われている方法により行えばよく、特に限定はない。混在する可能性のある複数種のモノクローナル抗体が分離されるような条件で泳動を行えばよく、特に還元系での電気泳動を行うことにより、混在するモノクローナル抗体のL鎖、H鎖の違いを認識することができる。例えば、SDSを用いたポリアクリルアミド電気泳動、アガロース電気泳動、等電点電気泳動などにより電気泳動を行えばよい。電気泳動を用いれば、多数の試料を同時に簡便に扱うことができる。
【0014】
またクロマトグラフィーは、電気泳動と比較してより厳密に抗体の性質を認識することができるので、分離すべき複数の抗体のインタクトまたはフラグメントの分子量が互いに近いときには、特に好ましい方法である。クロマトグラフィーとしては、混在する種々のモノクローナル抗体が分離されるような条件で行えばよく、分離すべきモノクローナル抗体の性質に応じて適宜選択すればよい。例えば、分離すべきモノクローナル抗体に応じて、疎水クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィーなどにかけれはばよい。充填剤としては、具体的には、例えばPhenyl・5PW、DEAE・5PW、G3000SWXL(いずれも東ソー株式会社製)などがあげられる。
【0015】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように本発明によれば、種々のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの混合物からから短期間で、遺伝子操作など必要なく簡便に、目的とするモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを選抜できる。このことにより、臨床診断などの超微量定量が必要とされる領域や、免疫学などにおける高度な特異性を要する研究のための分析試薬として、該モノクローナル抗体が果たす役割は非常に重要であると考えられる。
【0016】
【実施例】
以下に本発明を実施例により詳細に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0017】
実施例1
(A)ハイブリドーマのクローニング
マウス形質細胞腫細胞NSー1とフェリチンに対する抗体産生細胞とを融合して得たハイブリドーマを、限界希釈法にてクローニングし、単一クローンのハイブリドーマSG11を得た。ハイブリドーマSG11は、3種のモノクローナル抗体を分泌する事が確認された。即ちSG11は、(1)NS−1由来のL鎖 (2本)と抗体産生細胞由来のH鎖(2本)とからなるモノクローナル抗体、 (2)抗体産生細胞由来のH鎖とL鎖とからなるモノクローナル抗体、(3)NS−1由来のL鎖(1本)と、抗体産生細胞由来のH鎖(2本)とL鎖(1本)とからなるモノクローナル抗体、の3種のモノクローナル抗体を分泌することが確認された。
【0018】
このハイブリドーマSG11を100日間継代培養した後、10%牛胎児血清を含むRDF培地(極東製薬社製)(以下、10%FCSRDFと省略する)で培養し、血球計算盤で細胞数を計算した。細胞数を1ウェルあたり1個/100μLとなるように10%FCSRDFで希釈し、96ウェルイムノプレート(インターメッド社製)に100μLずつ分注した。培養10日目前後から細胞コロニーが認められたウェルについて、細胞を直径3cmの培養用ディッシュ(Falcon社製)に移し、さらに10%FCSRDFを2mL加えた。培養を続け、細胞数が5×106個以上に増殖したら、培養上清を採取した。
【0019】
(B)培養上清の電気泳動
上記培養上清2mLにProtein−A,TOYOPEARL(東ソー株式会社製)懸濁液100μLを加え、2時間、室温で振盪し、抗体を吸着させた。5分間静置してProtein−A,TOYOPEARLを沈澱させた後、上清を除去した。これにリン酸緩衝化生理食塩水(0. 85%NaCl含有0. 01Mリン酸緩衝液、pH7. 2;以下PBSと略す)2mLを加えてProtein−A,TOYOPEARLを懸濁し、5分間静置した後上清を除去した。この洗浄操作を3回繰り返した。
【0020】
洗浄後のProtein−A,TOYOPEARLに20μLの試料溶解液 (0. 125MTris−HCl,4%ドデシル硫酸ナトリウム、10%βメルカプトエタノール、20%シュークロース、0. 004%ブロムフェノールブルー、pH6. 8)を加えて3分間煮沸した。試料溶液を5分間静置してProtein−A,TOYOPEARLを沈澱させた後、上清を12%SDS−ポリアクリルアミド電気泳動にかけた。
【0021】
また継代培養後クローニングする前のハイブリドーマSG11の培養上清も同様に処理し、電気泳動を行った。
【0022】
(C)結果
結果を図1に示す。図からも明らかなように、ハイブリドーマSG11の分泌するモノクローナル抗体には2本のL鎖が認められた。また継代培養後のSG11をクローニングして得たハイブリドーマ5H6、5G3には、それぞれ5H6には低分子側に1本の、5G3については高分子側に1本のL鎖だけが認められた。従って、種々のハイブリドーマの混合物となった継代培養後のSG11から、単一のL鎖を持つモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ5H6、5G3を選抜することができた。
【0023】
実施例2
(A)試料調製
実施例1のクローニングして得たハイブリドーマ5H6、5G3および実施例1で得た継代培養後のハイブリドーマSG11の培養上清10mLを、予め吸着緩衝液(0. 2Mグリシン、0. 8M酒石酸ナトリウム、pH9. 0)で平衡化しておいた直径1cm、長さ2cmのProtein−A,TOYOPEARLカラムに1mL/minの流速でかけ、抗体を吸着させた。吸着緩衝液を20mL流してカラムを洗浄後、溶出緩衝液(0. 1Mクエン酸ナトリウム、0. 15M塩化ナトリウム、pH3. 5)5mLでProtein−Aに結合したモノクローナル抗体を溶出した。溶出されたモノクローナル抗体に直ちに3MTrisを加えてpHを7. 2にした。
【0024】
(B)疎水クロマトグラフィーによる分析
(A)で精製された培養上清中のモノクローナル抗体に等容量の2M硫酸アンモニウムを含むPBSを加えた。これをPhenyl・5PW(7. 5mmID×7. 5cm、東ソー(株)社製)に0分から5分まで1M硫酸アンモニウムを含むPBS、pH7. 4を用いて1mL/minの流速で吸着させ、次に5分から35分まで1M硫酸アンモニウムを含むPBSに対するPBSの比率が0%から100%のリニアグラジェントでモノクローナル抗体を溶出させた。
【0025】
(C)結果
結果を図2〜4に示す。図中、横軸は溶出時間、縦軸は280nmにおける吸光度を示す。図2からも明らかなように、ハイブリドーマSG11には3本のピークが溶出されており、3種類のモノクローナル抗体が分泌されることが認められた。また図3からハイブリドーマ5H6についてはピーク1のみ、図4からハイブリドーマ5G3についてはピーク3のみが認められ、それぞれ単一のモノクローナル抗体を産生することが明らかとなり、単一モノクローナル抗体を産生するそれらハイブリドーマを選択することができた。
【0026】
以上の結果から、本発明によりハイブリドーマの混合物から、必要な均一なモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを選抜することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で行った電気泳動(SDS−PAGE)の結果を示す図である。
【図2】実施例2で継代培養後のハイブリドーマSG11の培養上清を疎水クロマトグラフィーにかけたときの溶出図である。
【図3】実施例2でハイブリドーマ5H6の培養上清を疎水クロマトグラフィーにかけたときの溶出図である。
【図4】実施例2でハイブリドーマ5G3の培養上清を疎水クロマトグラフィーにかけたときの溶出図である。
Claims (1)
- 複数種の抗体を産生する単一のハイブリドーマを継代培養して複数種のハイブリドーマの混合物を得、各ハイブリドーマをクローニングし、次いでそのハイブリドーマが分泌する抗体を、電気泳動および/またはクロマトグラフィーにかけることにより、均一なモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマをスクリーニングすることを特徴とする、ハイブリドーマの選抜方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP01662693A JP3858945B2 (ja) | 1993-02-03 | 1993-02-03 | ハイブリドーマの選抜方法 |
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