JP3858934B2 - 水性塗料用樹脂組成物、水性塗料及び水性塗料用樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

水性塗料用樹脂組成物、水性塗料及び水性塗料用樹脂組成物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、水性塗料用樹脂組成物、水性塗料及び水性塗料用樹脂組成物の製造方法に関するものである。
塗料は、各種製品の基材の保護や美感の向上等を目的として使用されるものである。なかでも、基材の保護は、塗料の重要な役割であることから、塗料には、各種用途に応じた様々な物性を有する塗膜を形成できることが求められている。例えば自動車部品等の金属製品に塗装する塗料には、水等により、金属基材が腐食するのを防止する為に、耐水性及び耐食性に優れた塗膜を形成できることが求められている。
耐食性に優れた塗膜を形成できる塗料としては、ビニル変性エポキシエステル樹脂及び有機溶剤を含有してなる塗料が、金属基材との密着性に優れ、金属基材の腐食を防止できることが知られている。
しかし、前記ビニル変性エポキシエステル樹脂及び有機溶剤を含有してなる塗料は、有機溶剤を多量に含有するものであり、昨今の自然環境保護の観点から、有機溶剤の使用量が少ない、又は、有機溶剤を使用しない環境対応型の水性塗料の開発が進められている。
水性塗料は、樹脂が水性媒体中に溶解又は分散したものである。かかる樹脂を水性媒体中に分散させる方法としては、例えば乳化剤を使用する方法が挙げられる。しかし、乳化剤を多量に使用した水性塗料は、得られる塗膜の耐水性及び耐食性が不十分であるという問題がある。
また、前記樹脂中にカルボキシル基などの親水性基を多量に導入する方法が挙げられる。しかし、樹脂を水中に十分に分散させる為には、多くの親水性基を樹脂に導入し、例えば50以上の高酸価にする必要があるが、この場合、耐食性に優れた塗膜を形成することができないという問題がある。
また、水性塗料中に一定量の有機溶剤を併用すれば、親水性基の導入量や乳化剤の使用量を抑制しても、樹脂の水性媒体中における分散安定性を維持でき、且つ、耐水性及び耐食性に優れた塗膜を形成できることが報告されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、産業界から求められている環境対応型の水性塗料は、有機溶剤の使用量がゼロ又は極めて少量のものであるのに対し、前記水性塗料は、10重量%以上の有機溶剤を使用しないと、顔料の分散安定性が大きく低下すると共に、水分散粒子間で凝集し、沈降等を引き起こすという問題を有していた。
そこで、後記する一般式(I)で示される長鎖のカルボキシル基含有構造を有するアクリル単量体を中和して乳化剤として用い、共重合しうるα,β−エチレン性不飽和化合物と共に水性媒体中で乳化重合して得られる乳化重合体が、有機溶剤や大量の乳化剤を使用せずとも水分散安定性に優れることが報告されている(例えば、特許文献2参照。)。しかし、前記乳化重合体では、得られる塗膜の耐水性及び耐食性は不十分である。また、前記乳化重合体と顔料とを含有する塗料は、顔料の分散安定性が十分でなく、顔料が経時的に沈降するという問題がある。
以上のように、耐食性に優れた塗膜を形成でき、且つ、有機溶剤等の使用量が極めて少なくても水分散安定性に優れた樹脂組成物が各種検討されているものの、産業界から求められているレベルの、有機溶剤の含有量がゼロ又は極めて少量であっても、顔料及び樹脂の分散安定性に優れ、且つ、優れた耐水性及び耐食性を有する塗膜を形成できる環境対応型の水性塗料用樹脂組成物や水性塗料は、未だ見出されていない。
特開2003−119245号公報 特開平6−345825号公報
本発明が解決しようとする課題は、耐食性及び耐水性に優れ、有機溶剤の含有量がゼロ又は極めて少量であっても、顔料の分散安定性とビニル変性エポキシエステル樹脂の分散安定性に優れる水性塗料用樹脂組成物と、この水性塗料用樹脂組成物を用いてなる水性塗料を提供することである。
本発明者らは、
(1)ビニル重合体部分が結合した脂肪酸鎖を有するビニル変性エポキシエステル樹脂であって、ビニル重合体部分が下記一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造を有し、且つ、下記一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造の一部又は全部が塩基性化合物で中和されているビニル変性エポキシエステル樹脂(A)と、水を含有してなる水性塗料用樹脂組成物であれば、中和前の樹脂の酸価が15〜40程度の比較的低酸価で、且つ、有機溶剤の含有量がゼロ又は極めて少量であっても、顔料及びビニル変性エポキシエステル樹脂の分散安定性に優れるし、耐水性及び耐食性に優れた塗膜を形成できる水性塗料が得られること、及び、
(2)この水性塗料用樹脂組成物は、エポキシ樹脂の有するエポキシ基、又はエポキシ基及び水酸基と、不飽和脂肪酸の有するカルボキシル基とを反応させて得られる不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂の有する不飽和結合の一部又は全部に、下記一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造を有するビニル単量体(a1)とその他のビニル単量体(a2)を重合させて得られるビニル変性エポキシエステル樹脂(A1)の有機溶剤溶液と、塩基性化合物と、水を用い、前記有機溶剤溶液中のビニル変性エポキシエステル樹脂(A1)に含有されているカルボキシル基の一部又は全部の塩基性化合物による中和と、ビニル変性エポキシエステル樹脂(A1)の中和物〔=ビニル変性エポキシエステル樹脂(A)〕の有機溶剤溶液と水との混合によるビニル変性エポキシエステル樹脂(A1)の中和物の水中への転相乳化を行った後、有機溶剤の一部又は全部を除去することにより容易に製造できること
を見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、ビニル重合体部分が結合した脂肪酸鎖を有するビニル変性エポキシエステル樹脂(A)及び水を含有してなり、前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A)が、前記ビニル重合体部分に下記一般式(I)
Figure 0003858934
(nは1〜10、Rは炭素数2〜18のアルキレン基を示す。)
で示される末端カルボキシル基含有構造を有し、且つ、前記一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造の一部又は全部が塩基性化合物で中和されていることを特徴とする水性塗料用樹脂組成物を提供するものである。
また、本発明は、前記水性塗料用樹脂組成物と顔料を含有してなることを特徴とする水性塗料を提供するものである。
更に、本発明は、エポキシ樹脂の有するエポキシ基、又はエポキシ基及び水酸基と、不飽和脂肪酸の有するカルボキシル基とを反応させて得られる不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂の有する不飽和結合の一部又は全部に、下記一般式(I)
Figure 0003858934
(nは1〜10、Rは炭素数2〜18のアルキレン基を示す。)
で示される末端カルボキシル基含有構造を有するビニル単量体(a1)とその他のビニル単量体(a2)を重合させて得られるビニル変性エポキシエステル樹脂(A1)の有機溶剤溶液と、塩基性化合物と、水を用い、前記有機溶剤溶液中のビニル変性エポキシエステル樹脂(A1)に含有されているカルボキシル基の一部又は全部の塩基性化合物による中和と、ビニル変性エポキシエステル樹脂(A1)の中和物の有機溶剤溶液と水との混合によるビニル変性エポキシエステル樹脂(A1)の中和物の水中への転相乳化を行った後、有機溶剤の一部又は全部を除去することを特徴とする水性塗料用樹脂組成物の製造方法を提供するものである。
本発明の水性塗料用樹脂組成物及び本発明の製造方法で得られる水性塗料用樹脂組成物は、水性塗料とした場合に、有機溶剤の含有量がゼロ又は極めて少量であっても顔料及びビニル変性エポキシエステル樹脂の分散安定性に優れ、耐水性及び耐食性に優れた塗膜を形成できる。
はじめに、ビニル重合体部分が結合した脂肪酸鎖を有するビニル変性エポキシエステル樹脂であって、ビニル重合体部分が前記一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造を有し、且つ、前記一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造の一部又は全部が塩基性化合物で中和されているビニル変性エポキシエステル樹脂(A)(以下、「ビニル変性エポキシエステル樹脂(A)」と略記する。)について説明する。
本発明で使用するビニル変性エポキシエステル樹脂(A)において、前記一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造は、その一部又は全部が塩基性化合物で中和されていることにより顔料及びビニル変性エポキシエステル樹脂(A)を水中に安定して分散させることができ、且つ、得られる塗膜の優れた耐水性及び耐食性を維持する上で必要である。
一般には、アクリル酸などを用いてビニル変性エポキシエステル樹脂に親水性基を導入し、例えば酸価を50以上程度に調整すれば、有機溶剤の含有量が極めて少ない水性媒体中に安定して分散させることができることが知られている。しかし、かかるビニル変性エポキシエステル樹脂は高酸価であるが故に親水性基を多量に有しているため、得られる塗膜の耐食性等が低下してしまう。
一方、本発明で使用するビニル変性エポキシエステル樹脂(A)は、例えば、塩基性化合物によるカルボキシル基の中和前の酸価が15〜40(mgKOH/g)の比較的低酸価であっても、中和により水中に安定して分散させることができ、顔料の分散安定性も優れるものとなる。また、このような低酸価のビニル変性エポキシエステル樹脂を含有する水性塗料を用いて得られる塗膜は、耐水性及び耐食性のより優れた塗膜を形成できる。
本発明で使用するビニル変性エポキシエステル樹脂(A)は、ビニル重合体部分が結合した脂肪酸鎖を有するビニル変性エポキシエステル樹脂であって、前記ビニル重合体部分に前記一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造を有し、且つ、前記一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造の一部又は全部が塩基性化合物で中和されているものであれば良く、その製造方法等に限定はないが、例えば、エポキシ樹脂の有するエポキシ基、又はエポキシ基及び水酸基と、不飽和脂肪酸の有するカルボキシル基とを反応させて得られる不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂の有する不飽和結合の一部又は全部に、前記一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造を有するビニル単量体(a1)とその他のビニル単量体(a2)を重合させてビニル変性エポキシエステル樹脂(A1)を得、次いで得られたビニル変性エポキシエステル樹脂(A1)に含有されているカルボキシル基の一部又は全部を塩基性化合物で中和することで製造することが好ましい。
前記エポキシ樹脂として使用できるものとしては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ポリエチレングリコール系エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン樹脂などが挙げられ、これらを単独又は2種以上併用できる。前記エポキシ樹脂のなかでも、ビスフェノール型エポキシ樹脂を使用することが、耐食性に優れる塗膜を形成できることから好ましい。
前記ビスフェノール型エポキシ樹脂として使用できるものとしては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂が挙げられ、なかでもビスフェノールA型エポキシ樹脂を使用することが、耐食性に優れる塗膜を形成する観点から好ましい。
前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えばエピクロン850、1050、3050、4050、7050、HM−091、HM−101(以上、何れも大日本インキ化学工業株式会社製)等が挙げられる。
前記ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、例えば、エピクロン830(大日本インキ化学工業株式会社製)等が挙げられる。
前記脂環式エポキシ樹脂としては、例えば、ユノックス201、289(以上、何れも米国ユニオンカーバイド社製)等が挙げられる。
前記フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、エピクロンN−740、775(以上、何れも大日本インキ化学工業株式会社製)等が挙げられる。
前記ポリエチレングリコール系エポキシ樹脂としては、例えば、エピコート812(オランダ国シェル社製)、エポライト40E、200E、400E(以上、何れも株式会社共栄社製)等が挙げられる。
前記エポキシ化ポリブタジエン樹脂としては、例えば、BF−1000(アデカアーガス社製)等が挙げられる。
前記エポキシ樹脂としては、常温での造膜性に優れる水性塗料が得られる観点から、400〜1000(g/当量)の範囲のエポキシ当量を有するものを使用することが好ましく、400〜800の範囲のエポキシ当量を有するものを使用することがより好ましく、400〜600の範囲のエポキシ当量を有するものを使用することが更に好ましい。
前記エポキシ樹脂由来の構造は、本発明で使用するビニル変性エポキシエステル樹脂(A)中に15〜75重量%の範囲内で含まれることが好ましく、なかでも20〜70重量%の範囲内で含まれることがより好ましく、25〜60重量%の範囲内で含まれることが更に好ましい。かかる範囲に調整することで、造膜性に優れ、耐食性に優れた塗膜を形成できる。
次に前記エポキシ樹脂の有するエポキシ基や水酸基と反応する不飽和脂肪酸について説明する。
前記エポキシ樹脂と反応する不飽和脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、リシノール酸等や、桐油脂肪酸、亜麻仁油脂肪酸、脱水ひまし油脂肪酸、ひまし油脂肪酸、トール油脂肪酸、綿実油脂肪酸、大豆油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、米糠油脂肪酸等の脂肪酸などが挙げられる。なかでも、ヨウ素価120〜200の大豆油脂肪酸、脱水ひまし油脂肪酸などの半乾性油、乾性油を使用することが、後述するビニル単量体を、不飽和脂肪酸の有する不飽和結合に効率よくグラフト重合させることができるため好ましい。
前記不飽和脂肪酸由来の構造は、本発明で使用するビニル変性エポキシエステル樹脂(A)中に15〜50重量%の範囲内だけ含まれていることが好ましく、なかでも15〜40重量%の範囲内だけ含まれていることがより好ましく、20〜35重量%の範囲内で含まれることが更に好ましい。かかる範囲に調整することで、常温における塗膜の乾燥性、顔料分散性及び得られる塗膜の耐食性を向上させることができる。
前記不飽和脂肪酸には、本発明の目的を達成する範囲内でその他のカルボン酸を併用することができる。
その他のカルボン酸として使用できるものは、例えば、オクチル酸、ウラリル酸、ステアリン酸等や、水添ヤシ油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸等の飽和脂肪酸や、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、テトラクロル(無水)フタル酸、1,1−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロ(無水)フタル酸、(無水)ヘット酸、(無水)ハイミック酸〔日立化成化学工業(株)の登録商標〕、水添(無水)トリメリット酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、オクテン酸、イソノナン酸、安息香酸、p−tert−安息香酸、イソオクタン酸、イソデカン酸、シクロヘキサン酸、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
前記不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂は、例えば、前記エポキシ樹脂と前記不飽和脂肪酸とを、必要に応じてエステル化触媒の存在下で、150〜250℃に加熱して脱水し、前記エポキシ樹脂の有するエポキシ基や2級の水酸基と前記不飽和脂肪酸の有するカルボキシル基とをエステル化反応させることで製造できる。
前記エステル化反応で使用できるエステル化触媒としては、例えば、チタン、ジルコン、ハフミウム、アルミニウム、スズ、亜鉛、マグネシウム等の金属化合物、好ましくはチタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド等が挙げられる。エステル化触媒の使用量は、前記エポキシ樹脂と前記不飽和脂肪酸との全量に対し、好ましくは10〜800ppmの範囲であり、より好ましくは20〜500ppmの範囲であり、更に好ましくは30〜300ppmの範囲である。
また、前記不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂を製造する際に、エーテル下反応などの副反応を抑制したい場合は、例えば、ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミンなどを用いることが好ましい。
本発明では、前記エポキシ樹脂と前記不飽和脂肪酸とを反応させる際に、多価アルコールを併用することができる。
前記多価アルコールとして使用できるものは、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。
前記多価アルコールを使用する場合は、前記エポキシ樹脂と前記不飽和脂肪酸と前記多価アルコールとを混合しエステル化反応させることで、不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂を製造することができる。
本発明で使用するビニル変性エポキシエステル樹脂(A)は、中和される前では、前記一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造中のカルボキシル基等の酸基を有するものであり、その結果、前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A)の酸価が、15〜40(mgKOH/g)程度と、従来の50以上の酸価と比較してより低い場合でも、有機溶剤の含有量が極めて少ない、又は、全く含まない水性媒体中に安定して分散することができるし、顔料も安定して分散させることができる。なお、中和前の前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A)の酸価は必要に応じて選択できる。場合によっては15〜40以外の酸価であっても良い。好ましい酸価は10〜60、より好ましい酸価は10〜40、最も好ましい酸化は20〜30である。
前記一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造の一部又は全部は、前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A)を水中に分散した際に、塩基性化合物で中和されているものである。中和に用いる前記塩基性化合物としては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、2−アミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムハイドロオキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムハイドロオキサイドなどが挙げられる。これら塩基性化合物は、アンモニア水等のように水溶液として使用することもできる。また、前記塩基性化合物としては、ビニル変性エポキシエステル樹脂(A)を含有する水性塗料が塗膜を形成した際に揮発して塗膜中に残留せず、耐水性及び耐食性に優れた塗膜を形成ができることから、揮発性の塩基性化合物やその水溶液、例えばアンモニア水、トリエチルアミン、2−ジメチルアミノエタノール等が好ましい。
前記一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造を有するビニル単量体(a1)としては、例えば、2−メタクリロキシエチルサクシニクアシッド、2−メタクリロキシエチルヘキサハイドロフタレート、2−メタクリロキシエチルグルタレート、ω−カルボキシポリカプロラクトンメタクリレート等が挙げられる。
前記一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造を有するビニル単量体(a1)は、例えば,(a)ヒドロキシカルボン酸とカルボキシル基を有するラジカル重合性不飽和化合物とを反応させる方法、(b)カルボキシル基を有するラジカル重合性不飽和化合物とε−カプロラクトンとを酸触媒の存在下で反応させる方法等により製造できるが、副生成物を抑制できる等の観点から(b)の方法で製造することが好ましい。
前記(b)の方法は、例えば、カルボキシル基を有するラジカル重合性不飽和化合物とε−カプロラクトンとを、酸触媒の存在下で混合、撹拌し、40〜150℃で反応させる方法である。
前記(b)の方法で使用できるカルボキシル基を有するラジカル重合性不飽和化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等が挙げられる。酸触媒としては、例えば、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、塩化アルミニウム、塩化第二錫等が挙げられる。酸性触媒は、前記カルボキシル基を有するラジカル重合性不飽和化合物100重量部に対して、1〜20重量部の範囲で使用することが好ましい。
前記方法で得られる、一般式(I)で示される官能基を有するビニル単量体は、得られる塗膜の乾燥性が良好なことから、1分子中にε−カプロラクトン由来の構造単位を平均1〜10個の範囲で有することが好ましく、平均1〜5個の範囲で有することがより好ましい。具体的には、1分子中のε−カプロラクトン単位の平均数が2である、商品名アロニクスM−5300〔東亜合成化学工業(株)〕が挙げられる。
本発明で使用するビニル変性エポキシエステル樹脂(A)中における前記一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造であって、一部又は全部が塩基性化合物で中和されている構造の重量割合は、0.5〜30重量%であることが好ましく、0.5〜22重量%であることよりが好ましく、2〜17重量%であることが更に好ましい。この範囲であれば、ビニル変性エポキシエステル樹脂(A)と顔料の分散安定性に優れ、良好な耐食性を有する水性塗料用樹脂組成物を得ることができる。
本発明で使用するビニル変性エポキシエステル樹脂(A)は、前記ビニル重合体部分に、前記一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造であって、一部又は全部が塩基性化合物で中和されている構造の他に、下記一般式(II)
下記一般式(II)
Figure 0003858934
(mは3〜90、Rは炭素数2〜4のアルキレン基、Rは水素原子またはメチル基である。)
で示されるポリアルキレンオキサイド構造を有するものが好ましい。
前記一般式(II)で示されるポリアルキレンオキサイド構造は、前記不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂の有する不飽和結合の一部又は全部に、前記一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造を有するビニル単量体(a1)とその他のビニル単量体(a2)を重合させる際に、前記その他のビニル単量体(a2)の一部又は全部として一般式(II)で示されるポリアルキレンオキサイド構造を有するビニル単量体(a21)を用いることで、前記ビニル重合体部分に導入することができる。
前記一般式(II)で示されるポリアルキレンオキサイド構造を有するビニル単量体(a21)としては、例えば、水酸基含有ビニル単量体にエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加反応させて得られるものが挙げられ、具体的には、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
前記一般式(II)で示されるポリアルキレンオキサイド構造は、ビニル変性エポキシエステル樹脂(A)と顔料の分散安定性に優れ、耐食性の良好な塗膜が得られることから、前記一般式(II)中のmが10〜100の範囲内であることが好ましく、10〜60の範囲内であることがより好ましく、10〜30の範囲内であることが更に好ましい。
本発明で使用するビニル変性エポキシエステル樹脂(A)中における前記一般式(II)で示される官能基の重量割合は、0.5〜10重量%の範囲内が好ましく、1〜8重量%の範囲内がより好ましく、2〜5重量%が更に好ましい。かかる範囲内に調整することで、ビニル変性エポキシエステル樹脂(A)と顔料の分散安定性に優れ、耐食性の良好な塗膜を形成できる水性塗料用樹脂組成物を得ることができる。
前記その他のビニル単量体(a2)としては、前記一般式(II)で示されるポリアルキレンオキサイド構造を有するビニル単量体(a21)以外に、例えば、(メタ)アクリル酸、2−カルボキシエチルアクリレート、クロトン酸、ビニル酢酸、アジピン酸モノビニル、セバシン酸モノビニル、イタコン酸モノメチル、マレイン酸モノメチル、フマル酸モノメチル、コハク酸モノ[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]、フタル酸モノ[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]、ヘキサヒドロフタル酸モノ[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]、ソルビン酸等の不飽和二重結合を有するモノカルボン酸類;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和二重結合を有するジカルボン酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ドコサニル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;スチレン、p−tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、4−メトキシブチル(メタ)アクリレート等のω−アルコキシアルキル(メタ)アクリレート;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の3級アミド基含有ビニル系単量体類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基を含有する(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル等の水酸基含有ビニルエーテル;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、;N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の二級アミノ基含有ビニル系単量体;ビニルアセトアセテート、2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等の活性メチレン基を有するビニル単量体;ビニルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の加水分解性シリル基を有するビニル系単量体;トリメチルシリル(メタ)アクリレート等等のシリルエステル基を含有するビニル系単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基を含有するビニル系単量体;2−イソシアナートプロペン、2−イソシアナートエチルビニルエーテル、2−イソシアナートエチルメタアクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等のイソシアネート基を含有するビニル系単量体等が挙げられ、これらを単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。
また、前記その他のビニル単量体(a2)としては、例えば前記水酸基を有するビニル単量体とε−カプロラクトンとを付加反応させたものも使用することができる。
本発明で使用するビニル変性エポキシエステル樹脂(A)は、前記したように製造方法等に限定はないが、例えば、前記不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂に前記一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造を有するビニル単量体(a1)とその他のビニル単量体(a2)を重合させてビニル変性エポキシエステル樹脂(A1)を得、次いで得られたビニル変性エポキシエステル樹脂(A1)中の前記一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造に含有されているカルボキシル基の一部又は全部を塩基性化合物で中和することで製造することができ、重合方法としては溶液重合法が好ましい。
溶液重合法によれば、例えば、有機溶剤、ラジカル重合開始剤及び前記不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂の存在下において、前記一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造を有するビニル単量体(a1)とその他のビニル単量体(a2)を連続滴下又は一括添加し、1〜100kg/cm、好ましくは1〜10kg/cmの圧力で50〜150℃、好ましくは80〜150℃に3〜20時間、好ましくは4〜10時間保持することで前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A1)を製造することができる。前記溶液重合をする際の反応容器中の不揮発分は、30〜90重量%であることが好ましく、70〜90重量%であることがより好ましい。
前記溶液重合法等による前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A1)の合成で使用できるラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルブチロニトリル)、アゾビスシアノ吉草酸等のアゾ化合物;tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物が挙げられ、これらを単独又は2種以上併用できる。前記ラジカル重合開始剤は、前記ビニル単量体(a1)とその他のビニル単量体(a2)の合計量100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲内で使用することが好ましい。
前記溶液重合法で使用できる有機溶剤としては、例えば、n−ヘキサン、ヘプタン、n−オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂肪族又は脂環族炭化水素溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素溶剤;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−アミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、3−メトキシ−3−メチルブタノール等のアルコール系溶剤;四塩化炭素、メチレンジクロリド、ヘキサフルオロイソプロパノール等のフロン系溶剤;N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドまたはエチレンカーボネートなどが挙げられる。
前記溶液重合法の際には、必要に応じて連鎖移動剤等を使用することができ、例えば、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン;ベンジルメルカプタン、ドデシルベンジルメルカプタン等の芳香族メルカプタン;チオリンゴ酸等のチオカルボン酸又はそれらの塩、アルキルエステル類が挙げられる。
本発明で使用するビニル変性エポキシエステル樹脂(A)は、1,000〜100,000の数平均分子量を有するものが好ましく、2,000〜50,000の数平均分子量を有するものがより好ましく、3,000〜10,000の数平均分子量を有するものが更に好ましい。かかる範囲内の数平均分子量を有するビニル変性エポキシエステル樹脂(A)は、水中に安定して分散でき、且つ、耐水性及び耐食性に優れた塗膜を形成できる。なお、ビニル変性エポキシエステル樹脂(A)の軟化点やガラス転移点は特に限定されず必要に応じて選択できる。好ましい軟化点は−20〜100℃、より好ましくは−20〜70℃、更に好ましくは−10〜40℃である。好ましいガラス転移点は−20〜100℃、より好ましくは−10〜60℃、更に好ましくは0〜40℃である。
本発明で使用するビニル変性エポキシエステル樹脂(A)としては、例えば、5〜100の酸価を有するものが挙げられるが、なかでも15〜40の酸価を有するものが好ましく、20〜35の酸価を有するものがより好ましい。これにより、顔料分散性、耐食性及び耐水性に優れた塗膜を形成できる。
前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A)を水中への分散させる方法としては、特に限定はないが、例えば、ビニル変性エポキシエステル樹脂(A1)の有機溶剤溶液を用いて、ビニル変性エポキシエステル樹脂(A1)に含有されているカルボキシル基の一部又は全部の塩基性化合物による中和と、ビニル変性エポキシエステル樹脂(A1)の中和物〔=ビニル変性エポキシエステル樹脂(A)。以下同様。〕の有機溶剤溶液と水との混合によるビニル変性エポキシエステル樹脂(A1)の中和物の水中への転相乳化を行う転相乳化法が好ましい方法として挙げられる。
前記転相乳化法では、ビニル変性エポキシエステル樹脂(A1)に含有されているカルボキシル基の一部又は全部の塩基性化合物による中和を行ってビニル変性エポキシエステル樹脂(A1)の中和物の有機溶剤溶液とした後、水と混合してビニル変性エポキシエステル樹脂(A1)の中和物の水中への転相乳化を行うことが好ましいが、ビニル変性エポキシエステル樹脂(A1)の有機溶剤溶液と塩基性化合物と水を混合することにより、又はビニル変性エポキシエステル樹脂(A1)の有機溶剤溶液と塩基性化合物を含有した水を混合することにより、カルボキシル基の一部又は全部の塩基性化合物による中和と、ビニル変性エポキシエステル樹脂(A1)の中和物の水中への転相乳化を同時に行っても良い。
前記転相乳化法で用いる塩基性化合物としては、前記した通りであり、なかでも塗膜を形成した際に揮発して塗膜中に残留せず、耐水性及び耐食性に優れた塗膜を形成ができることから、揮発性の塩基性化合物やその水溶液、例えばアンモニア水、トリエチルアミン、2−ジメチルアミノエタノール等が好ましく、アンモニア水がより好ましい。
前記転相乳化法により、前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A)を水中に分散させる際には、必要に応じてディスパー、ホモミキサーなどの装置を使用することが好ましい。
前記転相乳化法により得られる前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A)の水性分散体は、有機溶剤を含有しているため、含有されている有機溶剤の一部又は全部を除去することが好ましい。前記水性分散体から有機溶剤の一部又は全部を除去する方法としては、特に限定はないが、例えば、減圧下で留去する方法等が好ましい。前記有機溶剤の除去は、通常有機溶剤の含有率が10重量%未満となるまで行うであるが、なかでも0〜8重量%となるまで行うことが好ましく、環境負荷低減の観点から0〜5重量%となるまで行うことがより好ましく、0〜3重量%となるまで行うことが更に好ましい。なお、前記転相乳化法で得られた水性分散体中の有機溶剤の含有率が10重量%未満である場合は、必ずしも必要ではないが、この場合も有機溶剤の一部又は全部を除去することが好ましい。
前記転相乳化以外のビニル変性エポキシエステル樹脂(A)の水中への分散方法としては、例えば、ビニル変性エポキシエステル樹脂(A1)の中和物を溶融させたものと加圧加熱された水を機械的に攪拌混合することにより、又はビニル変性エポキシエステル樹脂(A1)と塩基性化合物を含有する加圧加熱した水を機械的に攪拌混合することにより、ビニル変性エポキシエステル樹脂(A1)の中和物を水中へ分散させる方法等が挙げられる。
また、前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A)の水中への分散に際しては、前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A)や顔料の分散安定性を向上させる為に、本発明の目的を達成する範囲内で乳化剤を使用することができる。
前記乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体などのノニオン系乳化剤、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩などのアニオン系乳化剤、4級アンモニウム塩等のカチオン系乳化剤などが挙げられる。乳化剤は、得られる塗膜の耐水性及び耐食性を低下させない為にも、できるだけ使用しないことが好ましい。
得られた本発明の水性塗料用樹脂組成物は、水性媒体中に前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A)の粒子が分散したものであり、かかる粒子の粒子径は40〜200nmであることが好ましく、60〜175nmであることがより好ましく、80〜150nmであることが更に好ましい。なお、本発明でいう粒子径は、マイクロトラック粒度分析計(マイクロトラック9340−UPA、日機装株式会社製)で求めた値である。
かくして得られる本発明の水性塗料用樹脂組成物には、成膜性や塗れ性を向上させる為に有機溶剤を添加することができる。その添加量は、通常有機溶剤の合計の含有率が10重量%未満、好ましくは0〜8重量%、より好ましくは0〜5重量%、更に好ましくは0〜3重量%となる範囲内である。前記有機溶剤としては、前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A1)の溶液重合の際に使用できるものとして例示した有機溶剤と同様のものが挙げられる。
本発明の水性塗料用樹脂組成物は、金属基材用塗料として有用であり、なかでも優れた耐水性及び耐食性が求められている金属基材の防錆用塗料として有用である。
次に、本発明の水性塗料について説明する。
本発明の水性塗料は、前記した本発明の水性塗料用樹脂組成物と顔料を含有してなる水性塗料であれば良く、例えば、本発明の水性塗料用樹脂組成物に、顔料を添加し、ボールミル、サンドミル、高速インペラー、3本ロール等の練肉装置で練肉させ、必要に応じて金属ドライヤー、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の添加剤や、その他の樹脂類等を添加、混合してなる水性塗料が挙げられる。
前記した顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄などの金属酸化物や、アルミフレーク、雲母、ケイ酸塩類、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなどの無機顔料や、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドン、ベンズイシダゾロン、スレン、ペリレンなどの有機顔料等が挙げられ、これらを単独又は2種以上を任意に組み合わせて使用するこができる。
また、本発明の水性塗料を防錆用塗料として使用する場合には、防錆顔料を使用することが好ましい。防錆顔料としては、例えば、塩基性クロム酸鉛、クロム酸亜鉛、クロム酸ストロンチウム、クロム酸バリウム等のクロム酸塩化合物;鉛酸カルシウム、鉛丹、鉛シアナミド等の鉛系化合物;リン酸亜鉛、トリポリ燐酸アルミニウム、亜リン酸亜鉛等の燐酸塩系化合物;塩基性モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム等のモリブデン酸塩系化合物;メタホウ酸バリウム、メタホウ酸カルシウム、カルシウムボロシリケート等のホウ酸塩系化合物;雲母状酸化鉄、一般式MeO・Fe(但し、式中のMeは、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、マグネシウム、亜鉛又はマンガンなる2価の金属原子を表す。)で示される鉄酸化物系化合物;タングステン酸亜鉛、タングステン酸カルシウム等の塩基性タングステン酸塩系化合物などが挙げられる。
前記顔料は、顔料重量濃度(PWC)65重量%以下で使用することが好ましく、0.1〜50重量%で使用することがより好ましく、1〜40重量%で使用することが更に好ましい。これにより、得られる塗膜の耐食性の低下を抑制できる。
なお、前記防錆顔料を使用する場合は、PWCが40重量%以下であることが好ましく、0.1〜35重量%で使用することがより好ましく、0.1〜30重量%で使用することが更に好ましい。これにより得られる塗膜の耐水性の低下を抑制できる。
前記紫外線吸収剤として使用できるものは、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、シュウ酸アニリド系、ヒドロキシベンゾフェノン系等が挙げられる。前記酸化防止剤として使用できるものは、例えば、ヒンダードアミン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、燐系化合物等が挙げられる。前記紫外線吸収剤や酸化防止剤は、本発明の水性塗料の不揮発分100重量部に対して、0.5〜5重量部使用することが好ましい。
前記その他の水性樹脂類として使用できるものは、例えば、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、スチレン−アクリロニトリル系樹脂、アクリル系樹脂、フルオロオレフィン系樹脂、シリコン変性ビニル系重合体、ポリビニルアルコール、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、アルキド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル樹脂、シリコン系樹脂、動物性たんぱく質、でんぷん、セルロース誘導体、デキストリン、アラビアゴムが挙げられる。
本発明の水性塗料において、前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A)が不飽和で二重結合を有している場合は、硬化触媒として金属ドライヤーを使用することができる。これにより、更に耐水性及び耐食性に優れた塗膜を形成することができる。
前記金属ドライヤーとしては、例えば、テトライソプロピルチタネート、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫アセテート、ジブチル錫ジオクテート、ナフテン酸コバルト等の金属化合物類等が挙げられる。
前記金属ドライヤーの使用量は、前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A)100重量部に対して、0.1〜10重量部となる範囲内が好ましく、1〜10重量部となる範囲がより好ましい。これにより、耐食性及び耐水性に優れた塗膜を形成することができる。
本発明の水性塗料の粘度は、フォードカップNo.4を使用して測定した場合、温度条件25℃で20〜200秒であることが好ましく、35〜170秒であることがより好ましく、50〜150秒であることが更に好ましい。
本発明の水性塗料は、例えば、基材に本発明の水性塗料を塗装し、次いで乾燥させることで塗膜を形成することができる。
本発明の水性塗料を基材に塗装する方法としては、例えば、スプレー法、静電法、電着法等の方法を適用することができ、所望の乾燥硬化膜厚が得られるように、適宜、塗装し硬化させればよい。
塗装後の乾燥方法としては、常温で1〜10日間乾燥させる方法や、40〜250℃で30秒〜3時間加熱乾燥する方法が挙げられる。
本発明の水性塗料を塗装できる基材としては、例えば、金属基材、ガラス基材、スレート基材、プラスチック基材、紙、ゴムなどが挙げられ、これらの表面に、めっき等の表面処理が施されていても良い。
前記金属基材として使用できるものは、例えば、鉄、ニッケル、アルミニウム、銅、鉛、クロム、亜鉛、錫、マグネシウム、チタン、これらの合金、ステンレススチール、真鍮等が挙げられ、これらの表面が、めっきなどの表面処理がなされていても良い。
前記無機質基材として使用できるものは、例えば、コンクリート、モルタル、石綿スレート、軽量気泡コンクリート(ALC)、ドロマイトプラスター、石膏プラスター、けい酸カルシウム板、アルミナ、シリカ、ジルコニア等の金属酸化物を焼結して得られるセラミック、ガラス等が挙げられる。
前記プラスチック基材として使用できるものは、例えば、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ABS樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂からなるものや;不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、架橋型ポリウレタン、架橋型のアクリル樹脂、架橋型の飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂からなるものが挙げられる。
前記基材は、例えば、板状、球状、フィルム状等の各種の形状であってもよい。
本発明の水性塗料を塗装して得られる塗装物は、耐食性等に優れた塗膜を有するものである。かかる塗装物としては、例えば、自動車、自動二輪車、電車、自転車、船舶、飛行機やテレビ、ラジオ、冷蔵庫、洗濯機、クーラー、クーラー室外機、コンピュータ等及びそれらに使用できる金属やプラスチックからなる部品、瓦、屋根材、壁材、窓枠、ドア、道路、道路標識、ガードレール、橋梁、タンク、煙突、ビルディング等が挙げられる。
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1
攪拌機、温度計、温度調節装置及び窒素導入管を装備した4つ口のフラスコに、脱水ひまし油脂肪酸の160重量部、大豆油脂肪酸の161重量部、エピクロン1050(大日本インキ化学工業株式会社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂)の322重量部、無水マレイン酸の7重量部及びトリエチルアミンの0.3重量部を仕込み、攪拌しながら180℃まで昇温した。次いで、脱水状態を見ながら230℃まで昇温させてエステル化させた。樹脂の酸価が10(mgKOH/g)以下になったところで100℃まで冷却し、メチルイソブチルケトンの293重量部を加えて、不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂溶液を得た。
次に、内温を120℃に維持し、反応容器中にスチレンの95重量部、イソブチルメタクリレートの95重量部、アロニクスM5300〔東亜合成株式会社製、前記一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造のうちn=2で、Rが炭素数5のアルキレン基であるアクリル単量体〕の160重量部、t−ブチルパーオキシベンゾネートの20重量部及びメチルイソブチルケトンの20重量部を3時間かけて添加し、更に同温度で5時間反応させて、酸価34(mgKOH/g)のビニル変性エポキシエステル樹脂(A1)の溶液を得た。次に、40℃まで冷却し、反応容器に25重量%アンモニア水溶液の88重量部を加えてビニル変性エポキシエステル樹脂(A1)を中和し、ビニル変性エポキシエステル樹脂(A)の溶液とした後、攪拌しながらイオン交換水の2377.8重量部を少量ずつ添加して、転相乳化させた。転相乳化終了後、減圧下でメチルイソブチルケトン及び水939重量部を除去し、メチルイソブチルケトンが除去された褐色乳濁液を得た。25重量%アンモニア水でpH8.7に調整した後、200メッシュで濾過し、本発明の水性塗料用樹脂組成物(p−1)〔不揮発分36重量%、酸価34(mgKOH/g)、pH8.7〕を得た。
得られた本発明の水性塗料用樹脂組成物(p−1)の水分散性及び有機溶剤含有量の評価と、不揮発分の数平均分子量の測定を以下のように行った。
(水分散性の評価方法)
水性塗料用樹脂組成物を40℃で1ヶ月間貯蔵した後の外観観察と、粘度測定結果から、以下の基準で評価した。
○:沈殿物なし、粘度上昇なし又は初期粘度に対して粘度上昇が2倍未満。
△:沈殿物なし、初期粘度に対して2倍以上の粘度上昇あり。
×:沈殿物あり。
(有機溶剤含有量の評価方法)
水性塗料用樹脂組成物中に含まれる有機溶剤を、ガスクロマトグラム(島津製作所製のQP−5050A)で測定し、以下の基準で評価した。
◎:0.1重量%未満。
○:0.1重量%〜3.0重量%未満。
△:3.0重量%〜10重量%未満。
×:10重量%以上。
(数平均分子量の測定方法)
高速ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー株式会社製、HLC−8220GPC)を用い、温度40℃、流速1ml/minの条件下で、水性塗料用樹脂組成物中の不揮発分の数平均分子量を測定した。結果を第1表に示す。
実施例2
使用するビニル単量体、有機溶剤及び塩基性化合物等を下記第1表に記載のものに変更した以外は、実施例1と同様の方法で転相乳化まで行った。転相乳化後、減圧下でメチルイソブチルケトン及び水939重量部を除去し、メチルイソブチルケトンが除去された褐色乳濁液を得た。25重量%アンモニア水でpH8.5に調整した後、200メッシュで濾過し、本発明の水性塗料用樹脂組成物(p−2)〔不揮発分:36重量%、中和前のビニル変性エポキシエステル樹脂(A1)の酸価:23(mgKOH/g)、pH8.5〕を得た。
得られた本発明の水性塗料用樹脂組成物(p−2)を用いた以外は実施例1と同様にして、水分散性及び有機溶剤含有量の評価と、不揮発分の数平均分子量の測定を行った。結果を第1表に示す。
実施例3
使用するビニル単量体、有機溶剤及び塩基性化合物等を下記第1表に記載のものに変更した以外は、実施例1と同様の方法で転相乳化まで行った。転相乳化後、減圧下でメチルイソブチルケトン及び水939重量部を除去し、メチルイソブチルケトンが除去された褐色乳濁液を得た。25重量%アンモニア水でpH8.5に調整した後、200メッシュで濾過し、本発明の水性塗料用樹脂組成物(p−3)〔不揮発分:36重量%、中和前のビニル変性エポキシエステル樹脂(A1)の酸価:34(mgKOH/g)、pH8.5〕を得た。
得られた本発明の水性塗料用樹脂組成物(p−3)を用いた以外は実施例1と同様にして、水分散性及び有機溶剤含有量の評価と、不揮発分の数平均分子量の測定を行った。結果を第1表に示す。
比較例1
使用するビニル単量体、有機溶剤及び塩基性化合物等を、下記第1表に記載のものに変更した以外は、実施例1と同様の方法で転相乳化を行い、有機溶剤としてプロピレングリコールモノイソプロピルエーテルを12.9重量%含有する褐色乳濁液を得た。ジメチルエタノールアミンでpH8.7に調整した後、攪拌しながらイオン交換水の1468.5重量部を少量ずつ添加して、転相乳化させて褐色乳濁液を得た。200メッシュで濾過し、比較用の水性塗料用樹脂組成物(p−4)〔不揮発分:36重量%、中和前のビニル変性エポキシエステル樹脂の酸価:35(mgKOH/g)、pH8.7〕を得た。なお、本比較例1は、特許文献1に準拠して製造した水性塗料用樹脂組成物の製造例である。
得られた比較用の水性塗料用樹脂組成物(p−4)を用いた以外は実施例1と同様にして、水分散性及び有機溶剤含有量の評価と、不揮発分の数平均分子量の測定を行った。結果を第1表に示す。
比較例2
使用するビニル単量体、有機溶剤及び塩基性化合物等を、下記第1表に記載のものに変更した以外は、実施例1と同様の方法で転相乳化まで行った。転相乳化後、減圧下でメチルイソブチルケトン及び水939重量部を除去し、メチルイソブチルケトンが除去された凝集物が観察される白色液体を得た。25重量%アンモニア水でpH8.7に調整した後、200メッシュで濾過し、比較用の水性塗料用樹脂組成物(p−5)〔不揮発分36重量%、中和前のビニル変性エポキシエステル樹脂の酸価:35(mgKOH/g)、pH:凝集物が観察される液体であり、正確な測定は不能であった。〕を得た。なお、本比較例2は、特許文献1に準拠して製造した水性塗料用樹脂組成物中のメチルイソブチルケトンを減圧下に除去した場合の製造例である。
得られた比較用の水性塗料用樹脂組成物(p−5)を用いた以外は実施例1と同様にして、水分散性及び有機溶剤含有量の評価と、不揮発分の数平均分子量の測定を行った。結果を第1表に示す。
比較例3
使用するビニル単量体、有機溶剤及び塩基性化合物等を、下記第1表に記載のものに変更した以外は、実施例1と同様の方法で転相乳化まで行った。転相乳化後、減圧下でメチルイソブチルケトン及び水939重量部を除去し、メチルイソブチルケトンのほとんどが除去された褐色乳濁液を得た。25重量%アンモニア水でpH8.5に調整した後、200メッシュで濾過し、比較用の水性塗料用樹脂組成物(p−6)〔不揮発分36重量%、中和前のビニル変性エポキシエステル樹脂の酸価:60(mgKOH/g)、pH8.5〕を得た。なお、本比較例3は、前記比較例2の水性塗料用樹脂組成物の水分散性の向上を目的とした、酸価の高い水性塗料用樹脂組成物の製造例である。
得られた比較用の水性塗料用樹脂組成物(p−6)を用いた以外は実施例1と同様にして、水分散性及び有機溶剤含有量の評価と、不揮発分の数平均分子量の測定を行った。結果を第1表に示す。
比較例4
攪拌機、温度計、温度調節装置、窒素導入管を装備した、4つ口のフラスコに、イオン交換水185重量部を仕込み80℃まで昇温した。滴下ロートからアロニクスM530020重量部、ジメチルエタノールアミン5.9重量部およびスチレン80重量部のモノマー溶液を2時間にわたり滴下した。次いで、4,4−アゾビス−4−シアノバレリック酸1部をジメチルエタノールアミン0.55重量部で中和し、40重量部のイオン交換水に溶解した開始剤溶液をモノマー溶液と同時に滴下した。80℃で5時間攪拌を継続した後冷却し、水性塗料用樹脂組成物(p−7)を得た。なお、本比較例4は、特許文献2に準拠して製造した水性塗料用樹脂組成物の製造例である。
得られた比較用の水性塗料用樹脂組成物(p−7)を用いた以外は実施例1と同様にして、水分散性及び有機溶剤含有量の評価と、不揮発分の数平均分子量の測定を行った。結果を第2表に示す。
比較例5
使用するビニル単量体、有機溶剤及び塩基性化合物等を、下記第2表に記載のものに変更した以外は、比較例4と同様の方法で水性塗料用樹脂組成物(p−8)を得た。なお、本比較例5は、前記比較例4の水性塗料用樹脂組成物が常温で造膜できるようにすること目的とした、ガラス転移点のより低い水性塗料用樹脂組成物の製造例である。
得られた比較用の水性塗料用樹脂組成物(p−8)を用いた以外は実施例1と同様にして、水分散性及び有機溶剤含有量の評価と、不揮発分の数平均分子量の測定を行った。結果を第2表に示す。
比較例6
使用するビニル単量体、有機溶剤及び塩基性化合物等を、下記第2表に記載のものに変更した以外は、比較例4と同様の方法で水性塗料用樹脂組成物(p−9)を得た。なお、本比較例6は、前記比較例5の水性塗料用樹脂組成物中の樹脂成分の分子量が測定可能となること目的とした、分子量のより低い水性塗料用樹脂組成物の製造例である。
得られた比較用の水性塗料用樹脂組成物(p−9)を用いた以外は実施例1と同様にして、水分散性及び有機溶剤含有量の評価と、不揮発分の数平均分子量の測定を行った。結果を第2表に示す。
Figure 0003858934
Figure 0003858934
エピクロン1050は、大日本インキ化学工業株式会社製のエポキシ当量475g/当量のビスフェノールA型エポキシ樹脂を示す。
*アロニクスM5300は、東亜合成株式会社製、前記一般式(I)で示される官能基のうちn=2でRが炭素数5のアルキレン基であるアクリル単量体を示す。
*M−230Gは、新中村化学工業株式会社製のメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレンオキサイド構造の平均繰返し数:23)を示す。
実施例4
実施例1で得られた水性塗料用樹脂組成物(p−1)69.4重量部に、酸化チタン(石原産業株式会社製、タイペークR930)20重量部、炭酸カルシウム(白石産業株式会社製、ホモカルD)30重量部及び消泡剤(サンノプコ株式会社製、SNデフォーマー77)0.5重量部を混合し、サンドミルで30分間練肉して練肉ベースを得た。次いで、この練肉ベースに、水性塗料用樹脂組成物(p−1)69.4重量部、レベリング剤(BYK社製、BYK−346)0.5重量部、レベリング剤(BYK社製、BYK−381)0.5重量部及びドライヤー(大日本インキ化学工業株式会社製、ディックネート3111)0.8重量部をホモディスパーで混合して、水性塗料を調製した。
次いで、得られた水性塗料の顔料分散性と、この水性塗料からなる塗膜の耐水性及び耐食性を下記のように評価した。結果を第3表に示す。
(顔料分散性の評価方法)
水性塗料を25℃ので7日間放置した後の水性塗料の顔料沈降状態を観察すると共に、顔料再分散性の有無を調べ、以下の基準で評価した。
◎:顔料の沈降なし。
○:塗料の最上部にクリヤー層発生。
△:顔料の下部に顔料の沈降があるものの、手攪拌により顔料再分散可能。
×:顔料の下部に顔料の沈降があり、手攪拌では顔料再分散不能。
(塗膜の耐水性の評価方法)
水性塗料を、脱脂した鉄板(日本テストパネル製、SPCC−SD板)上に、乾燥塗膜の膜厚が30μmとなるようにバーコーターで塗装し、常温で7日乾燥して、試験用の塗板を得、得られた塗板を、常温の水中に3日間浸漬した後の外観を観察し、以下の基準で評価した。
◎:塗膜に異常が認められない。
○:塗膜に極僅かに膨れが認められる。
△:塗膜に膨れが認められる。
×:塗膜に膨れ、ハガレが認められる。
(耐食性の評価方法)
前記塗板を、カッターナイフの刃先で、塗膜の上から基材に達するように、交差する2本の切れ目を入れた。35℃における濃度が5重量%の塩化ナトリウム水溶液を、JIS Z2371に規定する噴霧装置を用いて、前記方法で切れ目を入れた塗板に125時間噴霧した。噴霧後、塗板を水洗いし、2時間乾燥させた後、セロハン粘着テープを塗膜に貼付し、セロハン粘着テープを剥がしたときの、塗膜の剥離の程度を下記の基準で評価した。なお、下記評価における剥離幅とは、カッターナイフで入れた切れ目を中心としたときの、塗膜が剥離した幅を示す。
◎:剥離試験の剥離幅が、1mm未満。
○:剥離試験の剥離幅が、1mm以上〜2mm未満。
△:剥離試験の剥離幅が、2mm以上〜4mm未満。
×:剥離試験の剥離幅が、4mm以上。
実施例5〜6及び比較例4〜8
水性塗料用樹脂組成物(p−1)の代わりに水性塗料用樹脂組成物(p−2)〜(p−4)、(p−6)〜(p−9)のうち第3表及び第4表に示すものをそれぞれ使用する以外は、実施例4と同様の方法で水性塗料を調製した。なお、水性塗料用樹脂組成物(p−5)は、水分散性に劣るため、水性塗料の調製は行わなかった。
次いで、得られた水性塗料をそれぞれ用いた以外は実施例4と同様にして、水性塗料の顔料分散性と、この水性塗料からなる塗膜の耐水性及び耐食性を評価した。結果を第3表と第4表に示す。
Figure 0003858934
Figure 0003858934
*タイペークR930は、石原産業株式会社製の酸化チタンを示す。
*ホモカルDは、白石産業株式会社製の炭酸カルシウムを示す。
*SNデフォーマー777は、サンノプコ株式会社製の消泡剤を示す。
*BYK−346は、BYK社製のレベリング剤を示す。
*BYK−381は、BYK社製のレベリング剤を示す。
*ディックネート3111は、大日本インキ化学工業株式会社製のドライヤーを示す。

Claims (18)

  1. ビニル重合体部分が結合した脂肪酸鎖を有するビニル変性エポキシエステル樹脂(A)及び水を含有してなり、前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A)が、前記ビニル重合体部分に下記一般式(I)
    Figure 0003858934
    (nは1〜10、Rは炭素数2〜18のアルキレン基を示す。)
    で示される末端カルボキシル基含有構造を有し、且つ、前記一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造の一部又は全部が塩基性化合物で中和されていることを特徴とする水性塗料用樹脂組成物。
  2. 前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A)が、15〜40の酸価を有するビニル変性エポキシエステル樹脂を塩基性化合物で中和してなる樹脂である請求項1に記載の水性塗料用樹脂組成物。
  3. 前記一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造が、n=2でRが炭素数5のアルキレン基である請求項1に記載の水性塗料用樹脂組成物。
  4. 前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A)が、前記ビニル重合体部分に下記一般式(II)
    Figure 0003858934
    (mは3〜90、Rは炭素数2〜4のアルキレン基、Rは水素原子又はメチル基を示す。)
    で示されるポリアルキレンオキサイド構造を有するものである、請求項1に記載の水性塗料用樹脂組成物。
  5. 前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A)中における前記一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造であって、一部又は全部が塩基性化合物で中和されている構造の重量割合が、0.5〜22重量%である請求項1に記載の水性塗料用樹脂組成物。
  6. 前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A)中における前記一般式(II)で示されるポリアルキレンオキサイド構造の重量割合が、1〜10重量%である、請求項4に記載の水性塗料用樹脂組成物。
  7. 前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A)が、1,000〜10,000の数平均分子量を有する樹脂である請求項1に記載の水性塗料用樹脂組成物。
  8. ビニル変性エポキシエステル樹脂(A)及び水と共に有機溶剤を含有し、有機溶剤の含有率が0〜3重量%である請求項1〜7のいずれか1項に記載の水性塗料用樹脂組成物。
  9. 前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A)が、エポキシ樹脂の有するエポキシ基又は水酸基と、不飽和脂肪酸の有するカルボキシル基とを反応して得られる不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂の有する不飽和結合の一部又は全部に、前記一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造を有するビニル単量体とその他のビニル単量体を重合させて得られる樹脂を塩基性化合物で中和してなる樹脂である請求項1〜7のいずれか1項に記載の水性塗料用樹脂組成物。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の水性塗料用樹脂組成物と顔料を含有してなることを特徴とする水性塗料。
  11. エポキシ樹脂の有するエポキシ基、又はエポキシ基及び水酸基と、不飽和脂肪酸の有するカルボキシル基とを反応させて得られる不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂の有する不飽和結合の一部又は全部に、下記一般式(I)
    Figure 0003858934
    (nは1〜10、Rは炭素数2〜18のアルキレン基を示す。)
    で示される末端カルボキシル基含有構造を有するビニル単量体(a1)とその他のビニル単量体(a2)を重合させて得られるビニル変性エポキシエステル樹脂(A1)の有機溶剤溶液と、塩基性化合物と、水を用い、前記有機溶剤溶液中のビニル変性エポキシエステル樹脂(A1)に含有されているカルボキシル基の一部又は全部の塩基性化合物による中和と、ビニル変性エポキシエステル樹脂(A1)の中和物の有機溶剤溶液と水との混合によるビニル変性エポキシエステル樹脂(A1)の中和物の水中への転相乳化を行った後、有機溶剤の一部又は全部を除去することを特徴とする水性塗料用樹脂組成物の製造方法。
  12. 前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A1)の有機溶剤溶液が、前記不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂の有する不飽和結合の一部又は全部に、前記一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造を有するビニル単量体(a1)とその他のビニル単量体(a2)を、有機溶剤中で重合させて得られる有機溶剤溶液
    である請求項11に記載の水性塗料用樹脂組成物の製造方法。
  13. 前記塩基性化合物がアンモニア水である請求項11に記載の水性塗料用樹脂組成物の製造方法。
  14. 前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A1)が、15〜40の酸価を有する樹脂である請求項11に記載の水性塗料用樹脂組成物の製造方法。
  15. 前記一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造が、n=2でRが炭素数5のアルキレン基である請求項11に記載の水性塗料用樹脂組成物の製造方法。
  16. 前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A1)が、その他のビニル単量体(a2)の一部又は全部として、下記一般式(II)
    Figure 0003858934
    (mは3〜90、Rは炭素数2〜4のアルキレン基、Rは水素原子又はメチル基を示す。)
    で示されるポリアルキレンオキサイド構造を有するビニル単量体を用いて重合させて得られる樹脂である請求項11に記載の水性塗料用樹脂組成物の製造方法。
  17. 前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A1)中における前記一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造であって、一部又は全部が塩基性化合物で中和されている構造の重量割合が、0.5〜22重量%である請求項11に記載の水性塗料用樹脂組成物の製造方法。
  18. 有機溶剤の含有率が0〜3重量%となるまで有機溶剤を除去する請求項11〜17のいずれか1項に記載の水性塗料用樹脂組成物の製造方法。

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