JP3857149B2 - 環状金属体加熱装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ベアリング等の環状金属体の内径にI型コアを差し込んで、そのI型コアを加熱用U型コアの先端に衝合させ、加熱用U型コアに巻いたコイルに通電して生じる交流磁界の作用でベアリング等の環状金属体を加熱させる環状金属体加熱装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の環状金属体加熱装置のU型コア及びI型コアは、無方向性珪素鋼板を使用することによって、U型コアとI型コアが衝合することによって起こる鉄損の増大を抑制していた。U型コアの並行に伸びる部分の先端にI型コアの両端が衝合することによって、環状金属体を加熱するための磁気回路を形成していた。よって、I型コアの両端部分では、磁路がI型コアの長手方向に沿う方向から、U型コアに向かってターンしなければならない。このため、無方向性珪素鋼板よりも所定の方向に優れた磁気特性を持つ方向性珪素鋼板を用いると、I型コアの両端で磁気特性の悪い方向に磁路がターンすることとなるため、方向性珪素鋼板を用いることができなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、従来のこれらの問題を解消し、鉄損を減少させ、エネルギー効率の良い環状金属体加熱装置を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) 環状金属体の内径にI型コアを差し込み、同I型コアを加熱用U型コアの先端に脱着自在に衝合させ、加熱用U型コアに巻いたコイルに通電し、磁気的に環状金属体を加熱する環状金属体加熱装置において、I型コアをU型コアとの衝合側の面のI型コア長手方向の長さがその反対側の面の長手方向の長さより短くなるように両端に傾斜面を形成したコア中央部と、同コア中央部の両端の傾斜面に接合された三角形状のコア端部とから構成し、前記コア中央部と前記コア端部は方向性電磁鋼板を積層した構造とし、前記コア中央部の方向性電磁鋼板の磁化容易方向が長手方向に沿った方向にし、前記コア端部の方向性電磁鋼板の磁化容易方向がコア中央部の方向性電磁鋼板の磁化容易方向と略直角方向となるようにしたことを特徴とする環状金属体加熱装置
2) U型コアが、長手方向の一端に傾斜面を形成したアーム部を並行に配置し、長手方向の両端に傾斜面を形成した連結部で傾斜面と傾斜面を接合するようにしてアーム部と連結部が略直角となるよう連結し、前記アーム部と前記連結部が方向性電磁鋼板を積層した構造とし、前記アーム部と前記連結部の方向性電磁鋼板の磁化容易方向がそれぞれ長手方向となるようにした前記1)記載の環状金属体加熱装置
3) U型コアが、U型の無方向性電磁鋼板を積層した構造である前記1)又は2)記載の環状金属体加熱装置
4) I型コアのコア中央部とコア端部の連結する傾斜面が凹凸形状となるように積層した方向性電磁鋼板を交互に突出させ、凹凸を噛み合わせて連結するようにした前記1)又は2)記載の環状金属体加熱装置
5) U型コアのアーム部と連結部の連結する傾斜面が凹凸形状となるように積層した方向性電磁鋼板を交互に突出させ、凹凸を噛み合わせて連結するようにした前記2)記載の環状金属体加熱装置
にある。
【0005】
【作用】
本発明では、I型コアを両端に傾斜面を形成したコア中央部と三角形状のコア端部とし、コア中央部の方向性電磁鋼板の磁化容易方向とコア端部の方向性電磁鋼板の磁化容易方向を略直角方向にする。I型コアを環状金属体の内穴に貫通させた状態でU型コアとI型コアを衝合させ、U型コアに巻いたコイルに通電すると、U型コア及びI型コアに磁束が流れる。また、コア中央部及びコア端部は方向性電磁鋼板を用いているので、良好な磁気特性を得る。さらに、コア中央部の両端には傾斜面を設けて三角形状のコア端部と連結することにより、磁束の流れがコア中央部とコア端部の方向性電磁鋼板の磁化容易方向から大きくはずれることなくターンでき、U型コアに向かうようにできる。
U型コアが、連結部とアーム部からなり、連結部とアーム部が方向性電磁鋼板を積層した構造にしたものは、それぞれ長手方向を磁化容易方向とした連結部とアーム部をそれぞれの傾斜面で連結し、連結部とアーム部との連結部分でターンする磁束が方向性電磁鋼板の磁化容易方向から大きくはずれることなくターンできるようにする。
U型コアが、U型の無方向性電磁鋼板を積層したものは、U型の1枚物の無方向性電磁鋼板にすることでコストを抑制し、積層により応答性を確保したU型コアにする。
コア中央部とコア端部の連結面及び連結部とアーム部の連結面が凹凸形状となるように積層した方向性電磁鋼板を交互に突出させたものは、連結面の凹凸を噛み合わせるようにして連結することにより、連結する方向性電磁鋼板の重なる部分を形成して、磁気抵抗を抑制した連結部分にすることができ、また、連結部分の強度を高めることができる。
【0006】
【発明の実施の形態】
方向性電磁鋼板としては方向性珪素鋼板が一般的に用いられる。
無方向性電磁鋼板としては珪素鋼板や鉄−アルミ合金板等があり、コスト,磁気特性から決めればよい。
環状金属体としては主にベアリングが用いられる。
I型コアの長手方向と直交する方向の幅は、環状金属体の内穴に合わせるように対応させて変えるようにするのが好ましく、U型コアの磁路に対する幅寸法は、一定にしてもよいし、I型コアの幅に対応させて変えるようにしてもよい。
【0007】
【実施例】
本発明の各実施例について図面を参照して具体的に説明する。
実施例1(図1〜4参照)
図1〜4に示す実施例1は、I型コアがコア中央部とコア端部からなり、コア中央部とコア端部が方向性電磁鋼板を積層した構造にし、U型コアが連結部とアーム部からなり、連結部とアーム部が方向性電磁鋼板を積層した構造にし、コア中央部とコア端部の連結面及び連結部とアーム部の連結面が凹凸形状となるように積層した方向性電磁鋼板を交互に突出させた環状金属体加熱装置の例である。
図1は実施例1の環状金属体加熱装置の説明図である。図2は実施例1の環状金属体加熱装置のI型コアとU型コアの説明図である。図3は実施例1の環状金属体加熱装置のI型コアの説明図である。図4は実施例1の環状金属体加熱装置のU型コアの説明図である。
図中、1は環状金属体加熱装置、1aは装置本体、2はI型コア、2aはコア中央部、2bはコア端部、2dはカバー、3はU型コア、3aは連結部、3bはアーム部、4は電源部、5はコイル、6はI型ホルダー、7はリニアモータ、8は駆動バー、9はレール、10は断面L形台、20はベアリング、21は磁化容易方向を示す矢印である。
【0008】
本実施例1の環状金属体加熱装置1は、図1〜4に示すように、I型コア2を、両端に傾斜面を設けたコア中央部2aと三角形状のコア端部2bで形成する。コア中央部2aは、長手方向の両端を傾斜させた台形形状で、長手方向が磁化容易方向となる方向性珪素鋼板を積層して形成する。コア中央部2aの両端の傾斜面は、規則的な凹凸形状となるように交互に方向性珪素鋼板を突出させる。
コア中央部2aとともにI型コア2を形成するコア端部2bは略直角三角形形状で直角を構成しない辺をコア中央部2aへの連結部分とする方向性珪素鋼板を積層して形成する。コア端部2bの方向性珪素鋼板の磁化容易方向は、コア端部2bをコア中央部2aに取り付けた際にコア中央部2aの磁化容易方向と略直角な方向にする。さらにコア端部2bのコア中央部2aとの連結面は、規則的な凹凸形状となるように交互に方向性珪素鋼板を突出させる。
このコア中央部2aとコア端部2bを凹凸の連結面を噛み合わせるように連結してI型コア2とし、コア端部2bの一辺がコア中央部2aの両側に露出するようにカバー2dに取り付ける。
U型コア3は、連結部3aとアーム部3bで構成する。連結部3aは、長手方向の両端を傾斜させた台形形状で、長手方向が磁化容易方向となる方向性珪素鋼板を積層して形成する。連結部3aの両端の傾斜面は、規則的な凹凸形状となるように交互に方向性珪素鋼板を突出させる。
一方、アーム部3bは、長手方向の一端を傾斜させた形状で長手方向が磁化容易方向となる方向性珪素鋼板を積層して形成する。また、傾斜面は規則的な凹凸形状となるように交互に方向性珪素鋼板を突出させる。
次に連結部3aの両端の傾斜面に、傾斜面の凹凸を噛み合わせるようにしてアーム部3bを連結し、U型コア3を形成する。
【0009】
U型コア3は、装置本体1aの所定高さにU型の開口が側方を向くように取り付け、上下に並行に位置することとなるアーム部3bには、それぞれコイル5を巻き付けるようにして取り付け、コイル5に通電するための電源部4を設ける。
次に、U型コア3の上下のアーム部3bの先端の間に、内穴が上下に向くようベアリング20を保持する断面がL字状の断面L字台10を設ける。
このU型コア3、断面L字台10の下方に上下に長いレール9を設け、このレール9に沿って上下に移動可能となるようI型ホルダー6を取り付ける。さらに、I型ホルダー6の下方には下方に長い駆動バー8を設け、駆動バー8を上下動させるリニアモータ7を設ける。
【0010】
本実施例1の環状金属体加熱装置1を使用するには、U型コア3のアーム部3bの間に位置するようベアリング20を断面L形台に取り付け、リニアモータ7を作動させてI型コア2をレール9に沿って上昇させ、ベアリング20の内穴を貫通させてU型コア3のアーム部3bの端面とI型コア2のコア端部2bの一面が向き合うようにする。この状態で電源部4によってコイル5に通電することにより、I型コア2とU型コア3を磁気的な力によって衝合させ、I型コア2とU型コア3に発生させた磁界によってベアリング20に電界を発生させ、ベアリング20の電気抵抗分によって熱を発生させてベアリング20を加熱する。I型コア2は方向性珪素鋼板で構成しているのでI型コア2のコア中央部2aの長手方向に向って効率よく磁束を発生させることができる。I型コア2のコア中央部2aを流れる磁束は、コア中央部2aの長手方向である方向性珪素鋼板の磁化容易方向に流れる。方向性珪素鋼板の磁化容易方向への優れた磁気特性から、コア中央部2aの端の傾斜面まで長手方向に沿って磁束が流れる。このコア中央部2aの傾斜面には、コア端部2bが接合されている。コア端部2bの方向性珪素鋼板の磁化容易方向は、コア中央部2aの磁化容易方向と略直角にしているので傾斜面と接合した傾斜面に微細な距離で移るようにして又は、この連結部分において重なり合う方向性珪素鋼板に移るようにして磁束が略直角にターンすることとなり、そのターン部において磁束は、大きなエアギャップを通らないため非常に効率よくターンでき、しかも全体のI型コア2の形状は長方形のI型なため、ベアリング20の内穴を十分に使用する大きさにして、さらに効率がよくなるため、非常に処理時間短く加熱が行える。
【0011】
さらに本実施例1の環状金属加熱装置1では、U型コア3の連結部3aとアーム部3bも方向性珪素鋼板を積層した構成にし、傾斜面で磁束をターンさせ、且つ連結部3aとアーム部3bの連結部を交互に突出させた方向性珪素鋼板を噛み合わせるようにして重なり合うようにしているので磁気的な損失を非常に小さくし、さらに効率よく用いることができるようにしている。
【0012】
図5に示すのは、実施例1の環状金属体加熱装置1の他の例である。
図中、12はU型コアである。
図5に示す実施例1の他の例では、U型コアをU型の無方向性珪素鋼板を積層した構造にしている。このようにU型の1枚物を積層する構造にしてコストを抑制し、磁気特性に優れた珪素鋼板を積層することによって効率よく加熱ができるようにしている。
【0013】
図6に示すのは実施例1の環状金属体加熱装置の他の例である。
図6は実施例1の他の例では、異る内穴径のベアリングに対し、U型コア3は同じものを使用し、I型コアの幅のみ変更したものを用いるようにして対応している。この場合には、コア中央部2a及びコア端部2bの傾斜面の角度を変えるようにして対応するのが磁束をスムーズにターンさせるので好ましい
【0014】
【発明の効果】
本発明によれば、鉄損を減少させ、エネルギー効率の良い環状金属体加熱装置にできる。
U型コアが、連結部とアーム部からなり、連結部とアーム部が方向性電磁鋼板を積層したものは、さらに効率よく金属環状物の加熱ができる。
U型コアが、U型の無方向性電磁鋼板を積層したものは、良好な磁気特性とコストの抑制を両立させるU型コアにできる。
コア中央部とコア端部の連結面及び連結部とアーム部の連結面が凹凸形状となるように積層した方向性電磁鋼板を交互に突出させたものは、より損失少なく、磁束を効率的に利用して金属環状物の効率よい加熱ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1の環状金属体加熱装置の説明図である。
【図2】 実施例1の環状金属体加熱装置のI型コアとU型コアの説明図である。
【図3】 実施例1の環状金属体加熱装置のI型コアの説明図である。
【図4】 実施例の環状金属体加熱装置のU型コアの説明図である。
【図5】 実施例1の環状金属体加熱装置の他の例のI型コアとU型コアの説明図である。
【図6】 実施例1の環状金属体加熱装置の他の例のI型コアとU型コアの説明図である
【符号の説明】
1 環状金属体加熱装置
1a 装置本体
2 I型コア
2a コア中央部
2b コア端部
2d カバー
3 U型コア
3a 連結部
3b アーム部
4 電源部
5 コイル
6 I型ホルダー
7 リニアモータ
8 駆動バー
9 レール
10 断面L形台
12 U型コ
20 ベアリング
21 (磁化容易方向を示す)矢印

Claims (5)

  1. 環状金属体の内径にI型コアを差し込み、同I型コアを加熱用U型コアの先端に脱着自在に衝合させ、加熱用U型コアに巻いたコイルに通電し、磁気的に環状金属体を加熱する環状金属体加熱装置において、I型コアをU型コアとの衝合側の面のI型コア長手方向の長さがその反対側の面の長手方向の長さより短くなるように両端に傾斜面を形成したコア中央部と、同コア中央部の両端の傾斜面に接合された三角形状のコア端部とから構成し、前記コア中央部と前記コア端部は方向性電磁鋼板を積層した構造とし、前記コア中央部の方向性電磁鋼板の磁化容易方向が長手方向に沿った方向にし、前記コア端部の方向性電磁鋼板の磁化容易方向がコア中央部の方向性電磁鋼板の磁化容易方向と略直角方向となるようにしたことを特徴とする環状金属体加熱装置。
  2. U型コアが、長手方向の一端に傾斜面を形成したアーム部を並行に配置し、長手方向の両端に傾斜面を形成した連結部で傾斜面と傾斜面を接合するようにしてアーム部と連結部が略直角となるよう連結し、前記アーム部と前記連結部が方向性電磁鋼板を積層した構造とし、前記アーム部と前記連結部の方向性電磁鋼板の磁化容易方向がそれぞれ長手方向となるようにした請求項1記載の環状金属体加熱装置。
  3. U型コアが、U型の無方向性電磁鋼板を積層した構造である請求項1又は2記載の環状金属体加熱装置。
  4. I型コアのコア中央部とコア端部の連結する傾斜面が凹凸形状となるように積層した方向性電磁鋼板を交互に突出させ、凹凸を噛み合わせて連結するようにした請求項1又は2記載の環状金属体加熱装置。
  5. U型コアのアーム部と連結部の連結する傾斜面が凹凸形状となるように積層した方向性電磁鋼板を交互に突出させ、凹凸を噛み合わせて連結するようにした請求項2記載の環状金属体加熱装置。
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