JP3855854B2 - 熱電材料への無電解メッキ方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱電モジュールの熱電素子における電極との接合面に、Ni等を無電解メッキする熱電材料への無電解メッキ方法に関し、特に、メッキ工程の処理時間の短縮を可能とする熱電材料への無電解メッキ方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図7は、従来の熱電モジュール40を示す図である。上基板42と下基板43との間に、複数個のP型及びN型の熱電素子41が、一方向について交互に配置されている。上基板42の下面には複数個の上部電極44が形成されており、下基板43の上面には複数個の下部電極45が形成されている。そして、1個の下部電極45上にP型の熱電素子41とN型の熱電素子41とが配置され、一の下部電極45上のP型熱電素子41と、前記一の下部電極45に隣接する下部電極45上に配置された隣接するN型熱電素子41とを、その上部で、1個の上部電極44により接続するというような態様で、各熱電素子41と上部電極44及び下部電極45とを配置し、各熱電素子41と上部電極44及び下部電極45とを夫々はんだ46,47により接合して、熱電モジュール40が組み立てられている。これにより、P型及びN型の熱電素子41が、上部電極44及び下部電極45により交互に直列に接続されている。なお、熱電素子41の上部電極44及び下部電極45との接合端面には、はんだ成分が熱電素子に拡散することを防止し、長時間の使用による熱電素子の劣化を防止すると共に、熱電素子のはんだ付け性を向上させるために、Niメッキ膜48,49が形成されている(特開2001−196646号公報)。このNiメッキ膜48,49は、一般的に、リン含有ニッケル合金又はボロン含有ニッケル合金を無電解メッキすることにより、形成されている。
【0003】
このP型及びN型の熱電素子が交互に直列に接続された熱電モジュールに、電流を流すと、異種金属の接続部でペルチェ効果により発熱又は吸熱が生じ、例えば、上基板42が発熱側、下基板43が吸熱側となる熱電モジュール40が構成される。
【0004】
この熱電素子41の接合端面にNiメッキ膜48,49を無電解メッキ法により形成する方法として、通常、触媒付与法が使用されている。図5はこの触媒付与法の工程を示すフローチャート図である。この触媒付与法においては、先ず、熱電材料のウエハを、脱脂、エッチング、及び酸洗して前処理する(ステップ21)。次いで、ウエハを、塩化スズ(SnCl2)と塩化パラジウム(PdCl2)の塩酸溶液等の触媒に浸漬して触媒を付与する(ステップ22)。次いで、触媒付与によりウエハ表面に付着したSnをエッチングして除去し、Pdのみをウエハの表面に残すアクセレータ処理をする(ステップ23)。その後、硫酸ニッケル(NiSO4)及び次亜リン酸ナトリウム(Na2PO3)を主成分とする無電解メッキ浴中にウエハを浸漬して無電解メッキ処理する(ステップ24)。この無電解メッキ処理において、ウエハの表面に付着したPdを核に無電解メッキ浴中のNiが析出して、ウエハの表面にNiメッキ膜が形成される。なお、このウエハは、Niメッキ膜を形成した後、ダイシング加工により各熱電素子に分断される。
【0005】
一方、無電解Niメッキ膜は、上述の触媒付与法の他に、ストライク法により形成することもできる。図6はこのストライク法を示すフローチャート図である。このストライク法は、ウエハを脱脂、エッチング、酸洗して前処理する(ステップ31)。次いで、このウエハを塩化ニッケル(NiCl2)の塩酸溶液に浸し、この溶液を貯留した槽とウエハとの間に通電して、Niの核を形成する、そして、硫酸ニッケル(NiSO4)及び次亜リン酸ナトリウム(Na3PO4)を主成分とする無電解メッキ浴中にウエハを浸漬して無電解メッキ処理する(ステップ24)。これにより、前記Niの核を中心として無電解メッキ浴中のNiが析出して、ウエハの表面にNiのメッキ皮膜が形成される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、触媒付与法は、工程数が多く、処理コストが高いという問題点がある。また、触媒付与法により形成された無電解メッキ膜は熱電素子(ウエハ)との密着性が低いという難点もある。このように、密着強度が低いと、後工程でウエハをダイシング加工した際に、Niメッキ膜の剥がれが生じてしまう。
【0007】
一方、ストライク法では、触媒付与法と比較して工程数を少なくできるが、ストライク処理での金属(ニッケル)の析出量が多いと、熱電素子(ウエハ)との密着性が弱くなり、また、ストライク処理での金属の析出量が少ないと、その後の無電解メッキ反応が発生しないという問題点がある。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、熱電素子の接合端面に形成されるNi無電解メッキ膜を、密着性良く、且つ少ない工程で低コストで形成することができる熱電材料への無電解メッキ方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る熱電材料への無電解メッキ方法は、メッキ対象の熱電材料をメッキ槽内の硫酸ニッケル及び次亜リン酸ナトリウムを主成分とする無電解メッキ液中に浸漬し、前記メッキ槽を陽極、前記熱電材料を陰極にして前記メッキ槽と前記熱電材料との間に通電し、前記熱電材料と前記メッキ液との間で反応が開始された後、通電を停止する工程と、前記熱電材料を無電解メッキする工程とを有し、前記通電の条件は、前記熱電材料と前記メッキ槽との間の印加電圧が1乃至4V、通電時間が前記反応の開始後1乃至210秒間経過するまでであることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について添付の図面を参照して説明する。図1は本発明の実施形態に係る熱電材料の無電解メッキ方法を示すフローチャート図、図2は無電解メッキ装置を示す図である。本実施形態においては、先ず、例えばNiTe系の熱電材料であって、例えば直径が50mm、厚さが1mmのウエハ12を脱脂し、水洗し、超音波洗浄し、水洗し、酸洗し、水洗して前処理する(ステップ1)。
【0012】
その後、図2に示す無電解メッキ浴11中にウエハ12を浸漬する。無電解メッキ浴11はステンレス製のメッキ槽10内に貯留されており、この無電解メッキ浴11内に治具13を介してウエハ12が浸漬される。無電解メッキ浴11は例えば硫酸ニッケル(NiSO 4 )と次亜リン酸ナトリウム(NaH2PO2)を主成分とするものである。治具13は導電性材料により形成されており、この治具13(ウエハ12)とメッキ槽10との間に、メッキ槽10が正極、治具13(ウエハ12)が負極となるように直流電源14を接続し、ウエハ12とメッキ槽10との間に0.1乃至10Vの電圧を印加して直流電流を通電する。
【0013】
この通電は、ウエハ12と無電解メッキ浴11とが反応を開始した後、1乃至210秒間が経過するまでである。この反応の開始は、無電解メッキ浴11から水素の泡が発生することにより検知することができる。つまり、ウエハ12を無電解メッキ浴11に浸漬し、通電を開始し、その後、気泡の発生により反応の開始を検知し、この反応開始後、1乃至210秒間内の適宜時間が経過した時点で、通電を停止する。
【0014】
通電停止後、ウエハ12の無電解メッキ浴11内への浸漬を継続し、通常のNiの無電解メッキ処理を行い、ウエハ12の表面にNi無電解メッキ膜を形成する。その後、水洗し、Sn等の金属をメッキし、水洗し、乾燥する。そして、ダイシングにより、ウエハを熱電素子の形状に切断分離する。
【0015】
本実施形態においては、無電解メッキ浴中でストライク処理していることと同様であり、浴槽を変えずに、1つの浴中でストライク処理と無電解メッキ処理とを実行する。このため、工程間のウエハの移動がなく、また水洗等の洗浄処理も不要であり、迅速に無電解メッキ処理できると共に、得られるNiメッキ膜は熱電素子(ウエハ)に対する密着力が優れている。
【0016】
図3及び図4は本発明のNiメッキ膜の密着強度を従来のNiメッキ膜の密着強度と比較して示すグラフ図である。図3は横軸にストライク処理における印加電圧をとり、縦軸に密着強度をとって、両者の関係を示すグラフ図である。この図3において、図中、各プロットについて示した数値は、通電時間(秒)である。また、図4は横軸にストライク処理における通電時間(気泡発生後(反応開始後)の通電時間)をとり、縦軸に密着強度をとって両者の関係を示すグラフ図である。この図4において、図中、各プロットについて示した数値は、印加電圧(V)である。また、測定試料はBiTe系熱電材料である。更に、図3及び図4に従来方法として示したものは、図6に示すように、酸洗し、水洗し、ストライクメッキ浴中でNiのストライクメッキを施し、水洗し、その後無電解メッキ浴中でNiの無電解メッキを施し、その後水洗し、乾燥したものである。
【0017】
密着強度の評価方法は以下のとおりである。先ず、メッキ膜にカッターで1辺長が1mm角の正方形のます目を切り、リード線をハンダで1mm角のメッキ膜に固定し、メッキ膜がウエハから剥がれるまで、リード線を引っ張り、そのメッキ膜が剥がれるときの引張り力を密着強度とする。
【0018】
図3に示すように、無電解メッキ液中のストライク処理における印加電圧が10V以下の場合には、密着強度が1.2kg/mm2以上であるが、印加電圧が10Vを超えると、密着強度は0.8kg/mm2以下にまで低下してしまう。なお、従来のストライク法で得られる密着強度は、1.16kg/mm2であるので、印加電圧が10V以下であれば、従来のストライク法を上回る密着強度を得られる。また、印加電圧が0.1V未満であれば、Niの核が十分に生成されず、ストライク処理を実施しない場合と同様であり、Niメッキ膜とウエハとの間に十分な密着強度を得ることができない。このため、印加電圧は0.1乃至10Vとすることが好ましい。
【0019】
一方、図4に示すように、通電時間が反応開始後210秒を経過するまでの場合は、密着強度が1.2kg/mm2以上であるが、210秒を超えて通電すると、密着強度は0.8kg/mm2以下にまで低下してしまう。よって、従来のストライク法で得られる密着強度1.16kg/mm2よりも、高い密着強度を得るためには、通電時間は反応開始後210秒後までとすることにより、従来のストライク法を上回る密着強度を得ることができる。なお、反応開始後の通電時間が1秒未満であると、反応が停止する場合がある。このため、反応開始後の通電時間は1乃至210秒であることが好ましい。
【0020】
このように、本発明においては、従来の触媒付与法に比して工程数を削減することができると共に、従来のストライク法のように、ストライク処理と無電解メッキ処理とで浴槽を変える必要がなく、浴槽を移る工程及びその間の洗浄工程が不要であり、同様に工程数を削減できる。このため、Ni無電解メッキ処理のスループットを向上させることができると共に、処理コストを低減することができる。また、本願請求項2のようにストライク処理条件を規定することにより、従来のストライク法により形成したNi無電解メッキ膜よりもウエハとの密着性を向上させることができる。
【0021】
なお、本発明は、ビスマス−テルル(Bi−Te)系の熱電素子の他、鉄−シリコン(Fe−Si)系の熱電素子等、種々の熱電材料に対して同様の条件で適用することができる。但し、印加電圧及び通電時間に関しては、その熱電材料に応じて適切に設定することが好ましい。
【0022】
【発明の効果】
以上、詳述したように、本発明によれば、熱電材料(のウエハ)を無電解メッキ浴中に浸漬した状態で、ストライク処理及び無電解メッキ処理を行うので、従来に比して工程数を削減することができ、処理のスループットを向上させ、処理コストを低減することができる。また、印加電圧を0.1乃至10V、通電時間を反応開始後、1乃至210秒が経過するまでとすることにより、形成される無電解メッキ膜の密着強度を、従来のストライク法によるものより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る熱電材料の無電解メッキ方法を示すフローチャート図である。
【図2】本実施形態において使用する無電解メッキ槽を示す模式図である。
【図3】本実施形態における印加電圧と無電解メッキ膜の密着強度との関係を示すグラフ図である。
【図4】本実施形態における通電時間と無電解メッキ膜の密着強度との関係を示すグラフ図である。
【図5】従来の触媒付与法による無電解メッキ方法を示すフローチャート図である。
【図6】従来のストライク法による無電解メッキ方法を示すフローチャート図である。
【図7】熱電モジュールにおける熱電素子の構造を示す正面図である。
【符号の説明】
1、2,21〜24、31〜34;ステップ、10;メッキ浴槽、11;メッキ浴、12;ウエハ、13;治具、14;直流電源
Claims (1)
- メッキ対象の熱電材料をメッキ槽内の硫酸ニッケル及び次亜リン酸ナトリウムを主成分とする無電解メッキ液中に浸漬し、前記メッキ槽を陽極、前記熱電材料を陰極にして前記メッキ槽と前記熱電材料との間に通電し、前記熱電材料と前記メッキ液との間で反応が開始された後、通電を停止する工程と、前記熱電材料を無電解メッキする工程とを有し、前記通電の条件は、前記熱電材料と前記メッキ槽との間の印加電圧が1乃至4V、通電時間が前記反応の開始後1乃至210秒間経過するまでであることを特徴とする熱電材料への無電解メッキ方法。
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