JP3855431B2 - 短波長光源および、それを用いた光記録装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体レーザと波長変換デバイスから構成される短波長光源と、その短波長光源を搭載した記録再生装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、情報の記録再生消去が可能な光記録媒体の商品化や、さらに高画質の動画を記録することが可能な高密度の書換型の光記録媒体の研究や開発が活発に行われている。
【0003】
書換型の光記録媒体としては、ディスク形状をした基板上に、例えばGeSbTe、GeSnTe、InSe等のTe、Seをベースとするカルコゲナイド薄膜、あるいはInSb等の半金属薄膜を記録層として備えた相変化光記録媒体が知られている。また、TbFeCo等の金属薄膜を記録層として備えた光磁気記録媒体が知られている。また、色素材料を用いた追記型の光記録媒体もある。
【0004】
相変化光記録媒体では、上記相変化材料からなる記録薄膜層に、集光したレーザビームを瞬時照射し、照射部を局部的に所定の温度に加熱する。照射部分は、到達温度が結晶化温度以上になれば結晶の状態に転換し、融点を越え溶融した後急冷すればアモルファス状態に転換する。アモルファス状態、結晶状態のいずれかを記録状態、消去状態(未記録状態)と定義し、情報信号に対応させたパターンで形成することで、可逆的な情報の記録または消去が行なわれることになる。結晶状態とアモルファス状態とでは光学的な特性が異なり、これによる差を利用して、反射率変化、あるいは透過率変化として光学的に検出することで信号を再生することができる。
【0005】
光磁気記録媒体では、集光したレーザビームを照射し、局部的に所定の温度に加熱する。加熱と同時に磁界を加え、光磁気記録薄膜の磁化方向を情報に応じて反転させることによって、情報の記録または消去が行われる。
【0006】
次に、相変化光記録媒体や光磁気記録媒体に情報を記録するときに用いられる変調方法について述べる。相変化光記録媒体では、図13に示すような変調ストラテジが用いられる。再生レベル、消去レベル、記録レベル、冷却レベルの4値変調が行われる。まず、再生レベルでアドレス信号を再生し、その後レーザ出力は消去レベルに切り替えられる。前に記録されていた情報は消去され、情報を記録するところでレーザ出力は記録レベルに切り替えられる。
【0007】
図13では、一例として3T信号と5T信号が示されている。3T信号は、1.5Tの単一パルスと0.5Tのクーリングパルスから構成されている。また、4T信号は、1.0Tの始端パルスと0.5Tの中間パルスと1.0Tの終端パルスと0.5Tのクーリングパルスから構成されていて、4T以上のパルスは中間パルスが繰り返された構成になっている。
【0008】
光磁気記録媒体では、磁界やレーザ出力を変調することにより、多種の記録方式が提案されている。(1)パルス磁界+DC出力、(2)パルス磁界+パルス出力、(3)DC磁界+パルス出力などがある。図14では、一例として(2)パルス磁界+パルス出力の方式について説明する。
【0009】
図14(a)は磁界電流、(b)は半導体レーザの駆動電流を示している。1Tのマークを記録する場合、磁界電流は1Tで反転する。このとき、レーザ駆動電流は、常に周期Tの単一周期で変調する。磁界電流の周期を変化することにより、2Tや3Tなどのマークを記録することができる。
【0010】
光ディスクの高密度化を実現するための技術として、ブルー・グリーン領域の短波長光源が注目されている。短波長化技術として、半導体レーザーと擬似位相整合(以下、QPMと記す。)方式の光導波路型波長変換(山本他、Optics Letters Vol.16, No.15, 1156 (1991))デバイスを用いた第2高調波発生(以下、SHGと記す)がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
相変化光ディスクにランダム信号を記録する場合、熱的に結晶状態を変化させるため、3T〜11Tの長さのパルス信号を形成し、3T〜11Tのマーク記録を行うと、各マークは歪んでしまう。そのため、通常は、図13に示すようなマルチパルスにより、マーク記録を行う。
【0012】
波長変換デバイスとDBR半導体レーザから構成される短波長光源では、単一周波数でのパルス出力を得ることは容易であるが、多種のマルチパルスや記録補償を行うためにパルス幅やピーク出力を変化させることは困難であった。
【0013】
そこで、本発明は、上記の課題を解決し、波長変換デバイスと波長可変DBR半導体レーザから構成される短波長光源を用いて、相変化光ディスクや光磁気ディスクに高密度情報を記録できる光記録再生装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の短波長光源は、
(1)少なくとも分布ブラッグ反射型半導体レーザと波長変換デバイスから構成され、分布ブラッグ反射型半導体レーザの駆動電流または電圧を変調することにより半導体レーザ出力を強度変調し、波長変換により得られる高調波光出力を強度変調する際、分布ブラッグ反射型半導体レーザの平均レーザ出力または平均動作電流(電圧)が±20%以内の変動になるように強度変調するものである。
【0015】
また、本発明の光記録装置は、
(2)少なくとも半導体レーザと波長変換デバイスから構成される短波長光源と、磁界変調を行うための磁界変調器を有するものであって、短波長光源から出射される短波長光出力がPaとPbとPcの3値(Pa>Pb>Pc)に変調され、短波長光出力をPbに設定してアドレス領域の信号を再生し、且つ短波長光出力をPaとPbで強度変調している時に磁界変調を行い、マークの消去および記録を行うものである。
【0016】
さらに、本発明の光記録装置は、
(3)半導体レーザと波長変換デバイスから構成されるものであって、波長変換デバイス上には光変調器が形成され、半導体レーザの駆動電流を変調することにより短波長光出力PaおよびPb(Pa>Pb)を得、かつ光変調器への印加電圧を変調することにより短波長光出力PcおよびPd(Pa>Pc>Pd)を得、Pdにより再生、Pcにより消去、Paにより記録するものである。
【0017】
また、本発明の短波長光源は、
(4)分布ブラッグ反射型半導体レーザと波長変換デバイスがサブマウント上にジャンクション側および光導波路側が形成されている面が接するように実装されているものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
光導波路型波長変換デバイスとして、最も注目されるデバイスが擬似位相整合方式の波長変換デバイスである。基板として用いられるMgドープのLiNbO3は非線形光学定数も大きく、光誘起屈折率変化も小さく、高出力の短波長光を得るには有望な基板である。しかしながら、波長変換を高効率に実現するためには、基本波である半導体レーザの波長を、波長変換デバイスの位相整合波長に一致される必要があり、その波長許容幅は0.1nmと小さい。
【0019】
一方、基本波である半導体レーザとして用いられる波長可変DBR半導体レーザは、波長を固定し可変するためのDBR領域が形成されていて、DBR領域へ電流注入を行うことにより2nm程度の波長可変範囲を実現できる。しかしながら、発振波長は活性層温度、DBR領域温度や活性層内のキャリア密度などによっても変化するため、いかなる状態において絶対波長を維持することは困難である。特に、レーザ出力を強度変調する場合には、半導体レーザのチップ温度やキャリア密度が大きく変化するため、発振波長がシフトし、結果としてマルチモード発振や縦モードシフトを生じやすくなる(DBR領域を有しないファブリペロー半導体レーザでは2nm程度に波長が広がるが、波長可変DBR半導体レーザでは広がっても0.3nm程度である)。
【0020】
発振波長のマルチモード化や縦モードシフトは、変調波形の劣化や変換効率の劣化も生じる。特に、変調時のピーク電流を多値変調したり、連続動作から変調動作に切り替える場合には、半導体レーザチップ温度やキャリア密度の変化などが大きいため安定な変調特性を得ることが困難である。
【0021】
また、波長可変DBR半導体レーザは、半導体レーザチップ温度やキャリア密度などの変化により発振波長が変化するため、変調時の平均出力が変化すると、位相整合が可能なDBR電流も変化してしう。
【0022】
光ディスクに応用するための光源に要求される仕様は、立ち上がりおよび立ち下がり時間が数ns以下(矩形波)の変調特性である。本発明では、波長可変DBR半導体レーザのチップ温度やキャリア密度を均一化することで変調時の発振波長シフトを抑制したり、半導体レーザを出力一定で動作させ波長変換デバイス上に形成した変調機能により強度変調を行ったりして、光ディスクの仕様を満足する変調特性を実現しようとするものである。
【0023】
以下、図面に基づいて説明する。
(実施の形態1)
本実施の形態では、光導波路型波長変換デバイスと半導体レーザから構成されるSHGブルーレーザにおいて、変調動作時の平均パワーと連続動作時のパワーを同じにすることにより、安定な変調ブルー光を得る方法について説明する。本実施の形態では半導体レーザとして、波長可変DBR半導体レーザが用いられる。
【0024】
図1は、波長可変DBR半導体レーザと光導波路型波長変換デバイスから構成されるSHGブルーレーザの概略構成図を示している。光導波路型波長変換デバイス1は、MgドープのLiNbO3基板2上に周期的分極反転領域3とプロトン交換光導波路4が形成されている。周期的分極反転領域3は、2次元電界印加法により形成された。周期3.2μmの櫛形電極と平行電極を+X基板表面に形成し、またーX基板表面にはボトム電極としてTaを蒸着した。基板の表裏間に4Vの電圧を印加しながら、パルス幅100mS、0.4Vのパルス電圧を+X表面に印加し、分極反転領域を形成した。
【0025】
次に、電極をエッチング除去した後、ストライプ状のマスクを形成し、ピロリン酸中でプロトン交換し光導波路4を形成した。光導波路4は、幅4μm、深さ2μm、長さ10mmである。光導波路4の端面には無反射コートが施されている。
【0026】
波長変換特性および変調特性を評価した。波長可変DBR半導体レーザ5は、活性領域6とDBR領域7から構成され、波長851nm、レーザ出力100mWのAlGaAs系半導体レーザである。DBR領域7への電流注入により、DBR領域7の屈折率変化が生じ、発振波長を可変することができる。100mWのレーザ出力に対して、レンズ8を用いて70mWのレーザ光が光導波路4に結合した。波長可変DBR半導体レーザ5のDBR領域6への注入電流量を制御し、発振波長を光導波路型波長変換デバイス1の位相整合波長許容度内に固定することにより、波長426nmのブルー光が10mW程度得られた。
【0027】
波長可変DBR半導体レーザを直接変調したときのブルー出力変調特性について説明する。一般に、半導体レーザの寿命は平均出力に関係するため、変調動作(パルス駆動)することにより高いピーク出力を得ることができる。また、SHGによる波長変換は2次の非線形効果を用いているため、得られる高調波出力(ブルー出力)は基本波である半導体レーザ出力の2乗に比例する。そのため、半導体レーザをパルス駆動して高出力を得る効果は、SHGブルーレーザの場合特に大きい。本実施の形態で用いられている波長可変DBR半導体レーザは、しきい値20mA、100mWの動作電流150mAである。ピーク電流300mW時のピーク出力は200mWである。
【0028】
図2(a)は変調時の半導体レーザの平均出力(130mW)が、連続動作時のバイアス出力(Pb=130mW、Ib=200mA)と同じになるようにして駆動電流を変調した時と、(b)変調時の半導体レーザの平均出力(130mW)がバイアス出力(Pb=70mW、Ib=110mA)よりも大きい状態で駆動電流を変調した時とが得られたブルー出力波形である。
【0029】
半導体レーザの強度変調は、Pa=200mW(Ia=300mA)とPc=60mW(Ic=100mA)間で行った。このとき得られたブルー出力は、Paに対して30mW、Pcに対して3mWで、変調周波数は10MHzである。
【0030】
図2(b)では、連続動作(Pb)時から変調動作時への立ち上がり特性において縦モードシフトが生じたため、ブルー出力の変動が起きた。この出力変動の要因は、連続動作時(バイアス電流)と変調駆動時とにおいて半導体レーザの平均出力が異なり、立ち上がり時に活性層内のキャリア密度およびチップ温度が大きく変化したことによると思われる。
【0031】
図3(a)は、変調周波数10MHz、duty50%で変調動作したときのピーク電流と波長可変DBR半導体レーザの発振波長との関係を示している。ピーク電流の増加に伴い、発振波長が長波長側に縦モードシフトを起こす。Ip=300mAに対して、半導体レーザの発振波長は0.2nmシフトし、この値は光導波路型波長変換デバイスの位相整合波長許容幅よりおおきな値である。この現象も、半導体レーザチップ温度や活性層内キャリア密度に起因している。そのため、連続動作時と変調動作時で位相整合が実現されるDBR電流が異なり、ピーク変換効率が得られない。
【0032】
一方、図2(a)では連続動作(バイアス電流)時と変調動作時との平均出力が一定であるため縦モードシフトが起こらず、また位相整合波長に対するDBR電流も変化しないため、連続動作から変調動作への立ち上がり時においても出力変動は観測されず、安定な出力特性が得られた。
【0033】
図3(b)は、半導体レーザ変調時の平均出力と発振波長の関係を示している。平均出力の変動時が20%以内であるとき、発振波長の変動は0.05nm以下である。長さ10mmの光導波路型擬似位相整合方式波長変換デバイスの位相整合波長許容幅は0.1nmであり、この値はブルー出力がピークの半値になる幅である。いろいろな分野に利用しようとした場合、出力が半分に変動することは許容されない。そのため、発振波長の変動は0.05nm以下に抑制することが必要とされ、平均出力の変動も20%以内の範囲にすることが不可欠である。本実施の形態では、半導体レーザの平均出力が一定になるように変調を行ったが、平均出力の変動を20%以内の範囲に設定することにより、図2(a)と同様、安定なブルー出力波形を実現することができる。
【0034】
また、素子長を短くしたり、周期的分極反転領域を分割構造(水内他、IEEE Journal of Quantum Electronics, vol. 30. No.7,(1994))にすることにより、変換効率は低下するが、位相整合波長に対する波長許容幅を拡大することが可能である。これにより、変調時の半導体レーザの平均出力の変動を20%以内にすることにより、さらに安定な出力波形および立ち上がり特性を実現できる。
【0035】
さらに、本実施の形態の波長可変DBR半導体レーザは、ジャンクションダウン部と反対側の面が接するように(ジャンクションアップ)サブマウントに固定されているが、ジャンクションダウンにすることにより、活性層部の放熱状態が改善されるため、変調時の縦モードシフトは低減される。そのため、変調時の半導体レーザの平均出力の変動を20%以内にすることにより、さらに安定な出力波形および立ち上がり特性を実現できる。
【0036】
本実施の形態のように、連続動作時と変調動作時の基本波である半導体レーザの平均出力を同じにすることにより、半導体レーザチップ温度や活性層内の平均キャリア密度を一定にすることができ、波長可変DBR半導体レーザの発振波長も一定に維持できるため、安定なブルー光の変調特性を実現できる。特に安定な立ち上げ特性を実現できる。
【0037】
本実施の形態では、Ia=300mA、Ic=100mAで変調動作を行ったが、図4(a)のようにPa=250mW(Ia=400mA)、Pc=10mW(Ic=25mA)で変調動作を行っても、平均半導体レーザ出力を一定にして変調しているので、安定なブルー出力変調特性が実現できた。これにより、ピークブルー出力を30mWと45mWの2値得ることができ、多値変調が可能となる。
【0038】
また、図4(b)に示すように、変調のdutyを変化することにより、PaとPcをPbに対して非対称にして、平均出力を一定にすることもできる。例えば、Pb=130mW、Pc=60mW、duty=33%のとき、Pa=270mWに設定することができ、より高いピークのブルー出力が実現できる。
【0039】
本実施の形態では、半導体レーザの平均出力が一定になるように変調を行ったが、平均動作電流または電圧が一定になるように変調してもほぼ同じ効果が得られ、安定なブルー変調波形が得られる。
【0040】
このように、変調時の平均出力を一定にし、ピーク出力のみを変化させることにより多値変調が可能になり、光ディスクやレーザプリンター用光源として多岐の分野へ応用することが可能となる。
【0041】
(実施の形態2)
実施の形態1の変調方式を用いた光磁気ディスクへの記録について説明する。光磁気ディスクシステムでは、磁界変調を行わない状態では、記録されたマークは消去されない。そのため、本実施の形態では図5に示すような変調ストラテジによりマーク記録する(パルス出力・パルス磁界方式)。図5(a)は形成されたマーク形状、同図(b)磁界電流、同図(c)ブルー出力をそれぞれ示している。
【0042】
実施の形態1で説明したように、波長可変DBR半導体レーザと光導波路型波長変換デバイスから構成されるSHGブルーレーザでは、大きな動作電流変化に対し、ブルー光の変調出力が追従しない。そのため、実施の形態1では、基本波である半導体レーザの変調動作時の平均出力を連続動作時の出力と同じにすることで、発振波長の安定化を図り、安定に変調されたブルー光を実現してきた。
【0043】
図5の方式では、Ia=300mA、Ib=200mA、Ic=100mAであり、Ibを中心にIaとIc間で変調される。このとき得られるブルー出力は、Pa=30mW、Pb=15mW、Pc=3mWであった。光ピックアップの伝達効率は40%程度であり、対物レンズ後から得られるピークのブルー出力は約12mWであった。Ibでの対物レンズ後のブルー出力は6mWであった。
【0044】
SHGブルーレーザを搭載した光磁気ディスク用光ピックアップの構成について説明する。図6は、光ピックアップの概略構成図である。SHGブルーレーザ9から出射されたブルー光は、コリメートレンズ10で平行化され、整形プリズム11で整形後、PBS12、反射ミラー13を透過し、対物レンズ14により光ディスク15上に集光される。
【0045】
光ディスク15は、基板上に記録層としてTbFeCoが積層された光磁気ディスクであり、磁界変調により記録されるように膜設計されている。
【0046】
光ディスク15での反射光は、PBS12でサーボ用検出器と信号再生用検出器とに分けられる。サーボ用検出器は4分割のPINフォトダイオード25から構成され、非点収差法およびプッシュプル法によりフォーカスおよびトラッキングが検出される。信号再生は、λ/2板18で偏向方向が45度回転され、PBS20により2つのPINフォトダイオード21、22に導かれ、差動をとることにより光ディスク上のカー回転角を検出する。
【0047】
光磁気ディスク上にはアドレス領域と記録領域が形成され、アドレス信号を再生した後、光出力を記録出力以上にし、基板の反対側にある磁気ヘッドを変調することによりマークを記録する。本実施の形態では、記録時のレーザ出力を12mW、アドレス信号再生時の出力を6mWに設定した。実施の形態1に示すように、アドレス再生時と記録時の半導体レーザの平均出力を一定にしているため、安定なブルー光変調波形が得られ、マーク長0.1μmの高密度記録が実現できた。
【0048】
相変化光ディスクシステムにおいては、Pbレベルが融点を越えると記録マークが消去されるため、Pbレベルでアドレス信号を再生しようとするとアドレス領域以外の記録マークが消去されてしまう。しかしながら、光磁気ディスクシステムでは、記録領域を比較的高い出力で再生しても記録膜の温度がキュリー点温度以下であれば信号の劣化が起こらない(本実施の形態では、記録膜のキュリー点温度になるパワーが8mWに設計してある)。そのため本実施の形態の変調方法を用いた記録方法は光磁気ディスクシステムには適していて、その効果は大きい。
【0049】
(実施の形態3)
本実施の形態では、光導波路上に変調用の平面電極が形成された波長変換デバイスと波長可変DBR半導体レーザから構成されるSHGブルーレーザにおいて、動作電流の直接変調と光導波路上変調器を用いて多値変調を行う例について説明する。
【0050】
図7に、本発明の平面電極が付加された光導波路型波長変換デバイスの構成を示している。実施の形態1と同様、MgドープのLiNbO3基板26上に周期的分極反転領域27とプロトン交換光導波路28が形成されている。実施の形態1とは異なり、光導波路28を形成するために用いられたマスクは除去せず、変調用電極29として用いた。光導波路28は、幅4μm、深さ2μm、長さ10mmである。光導波路28の端面には無反射コートが施されている。波長可変DBR半導体レーザを用いて、波長変換特性および変調特性を評価した。100mWのレーザ出力に対して70mWのレーザ光が光導波路28に結合した。
【0051】
波長可変DBR半導体レーザのDBR領域への注入電流量を制御し、発振波長を光導波路型波長変換デバイスの位相整合波長許容度内に固定することにより、波長426nmのブルー光が10mW程度得られた。
【0052】
次に、変調用電極29に電界印加した時の変調特性について説明する。変調用電極29に電圧を印加すると、Z方向(矢印方向)に電界が印加されるため、電気光学効果により光導波路28内の屈折率が変化し、結果として位相整合波長が変化するため、波長変換により得られるブルー出力を強度変調することができる。
【0053】
図8は、印加電圧と得られるブルー出力との関係を示している。印加電圧が0Vの時、10mWのブルー出力が得られ、印加電圧が5Vの時、ブルー出力は5mWに減少した。応答速度は、電源に依存し5nsであった。
【0054】
次に、実施の形態1で説明した半導体レーザの平均出力を変調動作時と連続動作時で同じにして、波長可変DBR半導体レーザの駆動電流を直接変調し、SHGブルーレーザのブルー出力を変調する方式と、上記で説明した光導波路型波長変換デバイス上の変調器によるブルー出力変調の組み合わせにより、多値のブルー出力レベルを実現する。
【0055】
図9は、相変化光ディスクにランダム記録を行う場合の変調ストラテジの一例である。再生レベルPr、消去レベルPb、記録レベルPw、冷却レベルPcの4値で変調される。この場合、消去時と記録時は、実施の形態1で説明されたような平均出力一定で変調することが可能であるため、SHGブルーレーザにおいても、実施の形態1の変調方式を用いることにより安定な変調波形を得ることができる。しかしながら、再生レベルや冷却レベルを得ようとすると平均出力が変化するため、活性層内のキャリア密度や温度が変化し、縦モードシフトが起き、立ち上がり特性において出力変動を生じる。
【0056】
図10は、図9の変調ストラテジを実現するための本発明の変調方式を示している。図10(a)は波長可変DBR半導体レーザの動作電流、同図(b)は光導波路型波長変換デバイスへの印加電圧、同図(c)はブルー出力のそれぞれタイムチャートを表している。再生レベルPr、消去レベルPb及び冷却レベルPcの出力切り替えは、光導波路型波長変換デバイス上の変調器への印加電圧を変化させて行う。また、記録レベルPwでのマルチパルス変調は、波長可変DBR半導体レーザの動作電流変調により行う。
【0057】
まず、再生レベル(Pr=3mW)は、動作電流200mA(レーザ出力:130mW)で駆動し、このとき光導波路型波長変換デバイス上の変調器への印加電圧は8Vであった。次に、印加電圧を0Vに切り替え、ブルー出力は消去レベル(Pb=15mW)に変化する。次に、光導波路型波長変換デバイス上の電極への印加電圧を0Vで一定に保持しながら、動作電流を300mAと100mAの間で変調する。このとき、ピークブルー出力すなわち記録レベル(Pw=30mW)が得られる。冷却レベル(Pc=0mW)は、動作電流を200mAに戻し、光導波路型波長変換デバイス上の変調器への印加電圧を変化することにより得られる。本実施の形態では、印加電圧を0Vから10Vに変化して得た。動作電流の変調パルスを変化することにより、マルチパルスから構成される変調波形(3T〜11T)を得ることができた。
【0058】
以上の結果、記録レベル30mW、消去レベル15mW、再生レベル3mW、冷却レベル0mWのブルー出力(Pw>Pb>Pr)が得られた。
【0059】
このSHGブルーレーザを光ピックアップに搭載し、相変化光ディスクへの記録実験を行った。光ピックアップの伝達効率は40%程度であり、対物レンズ後から得られる記録時のブルー出力は約12mWであった。消去レベル、再生レベル、冷却レベルでのブルー出力はそれぞれ6mW、1.2mW、0mWであった。
【0060】
本実施の形態では、光導波路デバイスの上の電極に電圧を印加し、再生レベルを実現した。しかしながら、動作電流が200mA、レーザ出力130mAで半導体レーザを駆動する必要があるため、長時間再生を行うには半導体レーザの信頼性上望ましくない。そのため、電極に電圧を印加して得た再生レベルは、記録時のアドレス信号を再生するときのみに利用し、通常のデータ再生を行うときには、動作電流を100mAに設定して再生レベルを得る方が実用上好ましい。
【0061】
記録再生方法について図11を用いて説明する。SHGブルーレーザ30から出射されたブルー光は、コリメートレンズ31によりコリメートされ、整形プリズムによりビーム整形される。ビーム整形されたブルー光は、偏光ビームスプリッタ(PBS)33を透過し、λ/4板34と開口数(NA)0.6の対物レンズ35に導かれる。対物レンズ35は基材厚0.6mm用の開口数0.6の非球面レンズである。
【0062】
相変化光ディスク39で反射したビームは、PBS33で反射し、レンズ36とシリンドリカルレンズ37とを透過後、PINフォトディテクター38上に導かれる。PINフォトディテクター表面には、青色領域に最適化した無反射コートが形成され、4分割になっている。
【0063】
フォーカスサーボ信号は非点収差法で、トラッキングサーボ信号はプッシュプル法で検出した。
【0064】
実験に用いた相変化光ディスク39の基板には、DVDと同じ0.6mm厚のポリカーボネート基板を用い、基板上にはスペース間隔が0.35μmのランド・グルーブが形成された。また、基板上に誘電体層(ZnS)により挟まれた記録層(GeSbTe)を形成し、反射層としてはAuが用いた。記録層の組成比は、吸収特性および結晶とアモルファスの反射率差が青色領域で最適になるように設計した。
【0065】
図10に示す変調ストラテジにより相変化光ディスクにランダムマーク記録を行ったところ、エッジのシャープなランダムマークが形成できた。同じSHGブルーレーザの光ピックアップでランダム信号を再生したところ、data to clockで8%程度のジッタが得られた。
【0066】
以上のように、光導波路上の変調器を用いた場合、多値の出力レベルを容易に実現できるが、100mWの波長可変DBR半導体レーザを基本波として用いても連続光として動作させているため、10mW程度のピークブルー出力しか得られない。多岐の分野に応用するためには(特に記録再生可能な光ディスクシステムなど)、20mW以上のピーク出力が必要とされる。本実施の形態のように、半導体レーザの直接変調と組み合わせることにより、立ち上がり特性も良好で安定な多値の変調波形を実現でき、光ディスクなどの分野に応用できる。
【0067】
なお、本実施の形態では、平面電極により構成された変調器を用いた例について説明したが、図12に示す方向性結合器型変調器を用いても同様の効果が得られる。図7の構成では、光導波路に屈折率変化を与え、位相整合波長をずらすことでブルー光出力を変調した。方向性結合器型変調器では、半導体レーザ光出力自身を変調し波長変換によりブルー光を得る。方向性結合器型変調器は、光導波路40内に結合した半導体レーザ光が2つに分岐される。電極41に電圧を印加すると光導波路内の屈折率が変化し位相差が生じる。位相差が0の時には、再び結合した半導体レーザ光の出力は最大出力が得られるが、位相差がπずれると打ち消し合って最小出力となる。方向性結合器型変調器を通過した光は、周期的分極反転領域42が形成された波長変換部を伝搬し、ブルー光に変換される。以上より、半導体レーザの直接変調と方向性結合器型変調器を組み合わせることにより、図9の変調ストラテジを実現することができる。
【0068】
なお、実施の形態1〜3においては、短波長光源を構成する半導体レーザとして波長可変DBR半導体レーザを用いたが、反射型グレーティングを外部に有する波長可変半導体レーザにより構成される短波長光源や、光導波路型波長変換デバイス上にDBR部を形成した短波長光源などにおいても、同様に変調時の縦モードシフトは観測され、実施の形態1〜3に示された変調方法を用いることにより、安定な変調波形を実現することができる。
【0069】
また、実施の形態1〜3では、波長変換デバイスとして擬似位相整合方式の光導波路型波長変換デバイスを用いたが、バルク型の擬似位相整合方式波長変換デバイスや波長許容幅の小さな他の波長変換デバイスを用いた短波長光源に対しても、実施の形態1〜3の変調方式により、安定な変調波形が実現される。
【0070】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、半導体レーザと波長変換デバイスから構成せれる短波長光源において、変調動作時の平均出力の変動を20%以内、または連続動作時に対して変動が20%以内に設定することにより、連続動作と変調動作ともに安定した高調波が得られるため、特に変調動作時への立ち上がり部において瞬時の安定化が実現できるため、光ディスクなどの良好な記録特性を実現できる。この変調方式を用いた短波長光源を光磁気ディスクシステムに応用することにより、安定な記録再生システムが実現される。さらに、変調機能が集積化された光導波路型波長変換デバイスを用いることにより、多値レベルの変調特性を実現でき、多岐の分野に応用できるのでその効果は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の波長可変DBR半導体レーザと光導波路型波長変換デバイスから構成されるSHGブルーレーザの概略構成図
【図2】 (a)本発明の変調時の半導体レーザの平均出力が連続動作時のバイアス電流と同じになるようにして駆動電流を変調した時のブルー出力波形を示す図
(b)変調時の半導体レーザの平均出力がバイアス出力よりも大きい状態で駆動電流を変調した時のブルー出力波形を示す図
【図3】 (a)波長可変DBR半導体レーザのピーク電流と発振波長の関係を示す図
(b)波長可変DBR半導体レーザの平均出力と発振波長の関係を示す図
【図4】本発明の変調時の半導体レーザの平均出力が連続動作時のバイアス電流と同じになるようにして駆動電流を変調した時のブルー出力波形を示す図
【図5】本発明の変調ストラテジを示す図
(a)マーク形状を表す図
(b)磁気ヘッドの磁界電流を表す図
(c)得られたブルー出力を表す図
【図6】光磁気ディスク用記録再生装置の概略構成図
【図7】本発明の変調器が集積化された光導波路型波長変換デバイスの概略構成図
【図8】本発明の変調器が集積化された光導波路型波長変換デバイスの印加電圧と得られるブルー光出力の関係を示す図
【図9】相変化光ディスクにランダム記録を行う場合の変調ストラテジを示す図
【図10】 (a)波長可変DBR半導体レーザの動作電流のタイムチャート
(b)光導波路型波長変換デバイスへの印加電圧のタイムチャート
(c)得られたブルー出力を表す図
【図11】相変化光ディスク用記録再生装置の概略構成図
【図12】本発明の方向性結合器型変調器が集積化された光導波路型波長変換デバイスの概略構成図
【図13】相変化光ディスクに記録するときの変調ストラテジを示す図
【図14】光磁気ディスクにパルス出力・パルス磁界で記録するときの(a)磁界電流と(b)半導体レーザの駆動電流を示す図
【符号の説明】
1 光導波路型波長変換デバイス
2 LiNbO3基板
3 周期的分極反転領域
4 光導波路
5 波長可変DBR半導体レーザ
6 活性領域
7 DBR領域
8 レンズ
9 SHGブルーレーザ
10 コリメートレンズ
11 整形プリズム
12 PBS
13 反射ミラー
14 対物レンズ
15 光ディスク
16 磁気ヘッド
17 PBS
18 λ/2板
19 レンズ
20 PBS
21 PINフォトダイオード
22 PINフォトダイオード
23 レンズ
24 シリンドリカルレンズ
25 PINフォトダイオード
26 LiNbO3基板
27 分極反転領域
28 光導波路
29 変調用電極
30 SHGブルーレーザ
31 コリメートレンズ
32 整形プリズム
33 PBS
34 λ/4板
35 対物レンズ
36 レンズ
37 シリンドリカルレンズ
38 PINフォトダイオート
39 相変化光ディスク
40 光導波路
41 電極
42 分極反転領域
Claims (13)
- 半導体レーザと波長変換デバイスから構成され、前記半導体レーザの駆動電流または電圧を変調することにより前記半導体レーザ出力を強度変調し、同時に波長変換により得られる高調波光出力を強度変調する際、前記半導体レーザの平均レーザ出力が±20%以内の変動になるように強度変調することを特徴とする短波長光源。
- 半導体レーザと波長変換デバイスから構成され、前記半導体レーザの駆動電流または電圧を変調することにより前記半導体レーザ出力を強度変調し、同時に波長変換により得られる高調波光出力を強度変調する際、前記半導体レーザの電流または電圧の平均値が±20%以内の変動になるように強度変調することを特徴とする短波長光源。
- 半導体レーザと波長変換デバイスから構成され、前記半導体レーザの駆動電流または電圧を変調することにより前記半導体レーザ出力を強度変調し、同時に波長変換により得られる高調波光出力を強度変調する際、前記半導体レーザの平均レーザ出力が連続動作時のレーザ出力に対して±20%以内になるように、連続動作と変調動作を切り替えながら高調波光出力を強度変調することを特徴とする短波長光源。
- 半導体レーザと波長変換デバイスから構成され、前記半導体レーザの駆動電流または電圧を変調することにより前記半導体レーザ出力を強度変調し、同時に波長変換により得られる高調波光出力を強度変調する際、前記半導体レーザの平均動作電流または電圧が連続動作時の動作電流または電圧に対して±20%以内になるように、連続動作と変調動作を切り替えながら高調波光出力を強度変調することを特徴とする短波長光源。
- 少なくとも半導体レーザと波長変換デバイスから構成される短波長光源と、磁界変調を行うための磁界変調器を有し、前記短波長光源から出射される短波長光出力がPaとPbとPcの3値に変調され、Pa>Pb>Pcの関係にあり、短波長光出力をPbに設定してアドレス領域の信号を再生し、且つ短波長光出力をPaとPcで強度変調している時に磁界変調を行い、記録媒体の記録層に記録マークの消去および記録を行うことを特徴とする光記録装置。
- 短波長光出力をPaとPcで強度変調する際、変調時の前記半導体レーザの平均レーザ出力が連続動作時(Pb時)のレーザ出力に対して±20%以内になることを特徴とする請求項5記載の光記録装置。
- 少なくとも半導体レーザと波長変換デバイスから構成され、前記波長変換デバイス上には光変調器が形成され、前記半導体レーザの駆動電流を多値変調し、かつ前記光変調器への印加電圧を多値変調することにより、前記短波長光源から出射される短波長光出力を多値変調することを特徴とする短波長光源。
- 少なくとも半導体レーザと波長変換デバイスから構成される短波長光源を有し、前記波長変換デバイス上には光変調器が形成され、前記半導体レーザの駆動電流を変調することにより短波長光出力PaおよびPb(Pa>Pc>Pb)を得、かつ前記光変調器への印加電圧を変調することにより短波長光出力PcおよびPd(Pa>Pc>Pd)を得、Pdにより記録媒体の記録層の記録マークの再生、Pcにより前記記録層の記録マークの消去、Paにより前記記録層に記録を行うことを特徴とする光記録装置。
- 前記波長変換デバイスが光導波路型波長変換デバイスであることを特徴とする請求項1〜4、または6何れかに記載の短波長光源。
- 前記半導体レーザが分布ブラッグ反射型半導体レーザであることを特徴とする請求項1〜4、または6何れかに記載の短波長光源。
- 前記波長変換デバイスが光導波路型波長変換デバイスであることを特徴とする請求項5または8何れかに記載の短波長光源。
- 前記半導体レーザが分布ブラッグ反射型半導体レーザであることを特徴とする請求項5または8何れかに記載の光記録装置。
- 分布ブラッグ反射型半導体レーザと波長変換デバイスとがサブマウント上にジャンクション側および光導波路側が形成されている面が接するように実装されていることを特徴とする短波長光源。
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