JP4485617B2 - 光波長変換素子並びにそれを使用したコヒーレント光発生装置及び光情報処理装置 - Google Patents

光波長変換素子並びにそれを使用したコヒーレント光発生装置及び光情報処理装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コヒーレント光源を応用した光情報処理或いは光応用計測分野に使用される波長変換素子、並びにそれを使用したコヒーレント光発生装置、及びそのコヒーレント光発生装置を用いた光情報処理装置に関する。
【0002】
本発明はまた、半導体レーザと光波長変換素子とが組み合わされて構成されている短波長光源、並びにそのような短波長光源を使用する光ディスクシステムに関する。
【0003】
【従来の技術】
非線形光学効果を利用した光波長変換素子は、波長変換により光の波長を変換することでレーザ光源の使用波長の拡大が図れるため、多くの分野で利用されている。例えば、第2高調波を利用した波長変換では、レーザ光を、半分の波長の第2高調波に波長変換し、従来は難しかった短波長の光の実現を可能にする。更に、パラメトリック発振を利用すると、単一波長の光源から連続的に波長の異なる光を発生することが可能となり、波長可変光源を実現できる。また、和周波数を利用すれば、波長の異なる2つの光を第3の波長の光に変換することができる。
【0004】
このような非線形光学効果を利用した光の波長変換には、変換する前の基本波と変換後の高調波との間で、位相整合条件が成立する必要がある。このための手法としては、例えば、結晶の複屈折を利用して基本波と高調波との間で結晶中の伝搬速度を揃える複屈折率法、非線形グレーティングを利用して位相整合をとる擬似位相整合法などがある。
【0005】
ところが、実際には、これらの位相整合条件を満足する波長の許容度が極端に狭いため、基本波の波長を非常に高い精度で制御する必要があり、出力を安定させることが困難である。
【0006】
そこで、これらの波長許容度を広げて、光波長変換の安定性を増す検討が行われた。図33には、波長許容度の拡大を目的とした従来の光波長変換素子の構成図を示す(特願平3−16198号参照)。以下には、0.84μmの波長の基本波P1に対する波長0.42μmの2次高調波P2の発生について、図33を参照して詳しく述べる。
【0007】
図33の構成では、LiNbO3基板1101に光導波路1102が形成され、更に光導波路1102には、周期的に分極の反転した層1103(分極反転層)が形成されている。基本波P1と発生する高調波P2との伝搬定数の不整合を分極反転層1103の周期構造で補償することにより、高効率に第2高調波P2を発生することができる。
【0008】
このように周期的な分極反転層1103により波長変換を行う光波長変換素子は、高い変換効率を持つ反面で、波長変換が可能となる位相整合波長許容度が非常に狭い。そこで、図33の構成では、光導波路1102の伝搬定数を部分的に変えることにより、光波長変換素子の波長許容度の拡大を図っている。光導波路1102の伝搬定数を変えると、光導波路1102における位相整合波長が変化する。位相整合条件とは、波長変換素子において波長変換が可能となる条件のことで、この条件が成立する入射光の波長のことを位相整合波長という。そこで、光導波路1102の幅を領域A,B,C,Dと部分的に変化させると、それぞれの領域における光導波路1102の幅に応じて、位相整合波長が異なってくる。そのため、入射光の波長が変わっても、異なる光導波路幅を有する領域A〜Dの何れかで位相整合条件が成立するため、素子全体の位相整合波長が増大する。その結果、光波長変換素子の波長許容度が増加し、安定な波長変換素子が作製できる。各領域A〜Dの間の位相整合条件は、各領域A〜Dのにおける光導波路1102の深さ、或いは、各領域A〜Dの間の分極反転層1103の周期を変えても実現できて、これらの場合でも同様に、波長許容度の大きな光波長変換素子が得られる。
【0009】
更に、周期状の分極反転構造と位相制御部とを組み合わせた構成についても、報告されている(特願平4−070726号)。図34には、そのような手法によって許容度拡大を実現した従来の光波長変換素子の構成を示す。
【0010】
図34に示された光波長変換素子は、非線形光学結晶1101の上に、複数の分極反転領域1105と、分極反転領域1105の間に形成された位相制御部1106と、を備える。各分極反転領域1105における位相整合条件の差を利用し、位相整合波長許容度の拡大を図るとともに、各分極反転領域1105の間で発生する位相不整合を位相制御部1106により調整することで、基本波P1の波長変動に対する高調波P2の出力変動の低減を図っている。
【0011】
更に、分極反転領域1105の数を増大させることで、更に広い波長範囲に渡って、位相整合波長許容度の拡大が可能である。例えば、分極反転領域1105が3分割構造(n=3)及び4分割構造(n=4)を有する場合の基本波波長と第2高調波(SHG)出力との関係を示したチューニングカーブを、図35(a)及び(b)にそれぞれ示す。これより、分割数を増すことで、波長許容度を大幅に拡大できることがわかる。
【0012】
更に、分極反転の周期構造を変調することで位相整合波長許容度の拡大を可能にする試みも、報告されている。
【0013】
例えば、栖原らによりIEEE Journal of Quantum Electronics、vol.26、pp.1265−1276、1990に報告されているように、分極反転の周期構造をチャープ状に変化させることで、位相整合波長の許容度を拡大する方法が報告されている。具体的には、ここでは、分極反転の周期を距離に比例して増大させる線形チャープ構造による位相整合波長許容度の拡大方法が、提案されている。この場合には、位相ズレが線形に変化する分極反転構造により、位相整合カーブの大幅な増大が可能である。
【0014】
一方、近年、波長780nm帯の近赤外半導体レーザや波長670nmの赤色半導体レーザを用いた光ディスクシステムの開発が活発である。光ディスクの高密度化を実現するためには、小さなスポット形状を再生することが望まれる。そのためには、集光レンズの高NA(開口数)化や光源の短波長化が必要となる。
【0015】
光源の短波長化技術として、近赤外半導体レーザと擬似位相整合(以下、「QPM」と記す)方式の分極反転型光導波路デバイス(山本、他:Optics Letters、Vol.16、No.15、第1156頁、1991)とを用いた第2高調波発生(以下、「SHG」と記す)技術がある。
【0016】
分極反転型光波長変換素子を用いた短波長光源(SHGブルーレーザ)の概略構成図を、図15に示す。
【0017】
図15において、38は、0.85μm帯の100mW級AlGaAs系波長可変型DBR(分布ブラッグ反射型:distributed Bragg reflector)半導体レーザ、39は、NA=0.5のコリメートレンズ、40は、NA=0.5のフォーカシングレンズ、41は光波長変換素子である。波長可変型DBR半導体レーザ38は、発振波長を固定するためのDBR部と実際にレーザ発振を起こす活性部とを含み、DBR部には、発振波長を可変するために内部ヒータが形成されている。DBR部に対する電流注入を行うことにより、発振波長を可変することができる。典型的には、注入電流100mAに対して2nmの波長可変領域が得られる。
【0018】
次に、光波長変換素子41の構成について説明する。
【0019】
光波長変換素子41は、xカットMgドープLiNbO3基板42の上に形成されたプロトン交換光導波路43と、2次元電界印加法により作製された周期的分極反転領域44とを含む。周期的分極反転領域44を形成するためには、まず周期3.2μmの櫛形電極及び平行電極を+X基板42の上面に形成し、また、+X基板42の裏面にボトム電極としてTa膜を蒸着する。そして、基板42の上面及び裏面の間に4Vの電圧を印加しながら、パルス幅100msで0.4Vのパルス電圧を+X基板42の上面に印加し、これによって周期的分極反転領域44を形成する。
【0020】
次に、電極をエッチング除去した後にストライプ状のマスクを形成し、ピロリン酸中でプロトン交換して光導波路43を形成する。光導波路43は、典型的には幅4μm、深さ2μm、長さ10mmである。光導波路43の端面には、無反射コートが施されている。
【0021】
上記の構成を有する光導波路素子41の基本波波長に対する波長変換特性を評価したところ、典型的には、ブルー光(高調波光)の出力レベルが半分になる半値全幅が0.08nmとなる。
【0022】
波長可変型DBR半導体レーザ38から出射されたレーザ光は、コリメートレンズ39とフォーカシングレンズ40とにより、光波長変換素子41の光導波路43に結合される。典型的には、100mWのレーザ出力に対して、70mWのレーザ光が光導波路43に結合する。波長可変型DBR半導体レーザ38のDBR部への注入電流量を制御し、発振波長を光波長変換素子41の位相整合波長の許容波長範囲内に固定することにより、約15mWのブルー光(高調波光)が得られる。
【0023】
ブルー光(高調波光)出力を安定化させるために、上記の構成に更に制御回路を付加することがある。その場合には、まず、出力されるレーザ光強度が設定値(例えば100mW)になるように、制御回路から活性部に対して電流注入を行う。その後に、波長変換により得られた高調波光出力を光検出器により検出し、高調波光出力を安定化する。光検出器としては、Si−PINフォトダイオードが用いられ得る。
【0024】
より具体的には、DBR部へ注入する電流を変化させて波長可変型DBR半導体レーザの発振波長を可変すると、その発振波長は、モードホップを繰り返しながら注入電流の増加に対して長波長側に波長シフトする。そこで、注入電流を0mA〜100mAの範囲で可変して発振波長をスキャンしながら、光検出器から出力される信号を検出し、ブルー光(高調波光)出力が最大になるDBR注入電流Idbrを制御回路に記憶する。例えば、注入電流Idbr=50mAであるときに高調波光の最大出力5mWが得られたとすると、次に、注入電流Idbrを50mAよりも10mA低い40mAまで下げた後に、再び記憶された電流値(50mA)までDBR電流Idbrを上昇させて、レーザ光の発振波長を波長変換素子の位相整合波長に固定する。
【0025】
以上のような操作によって、5mWの最大ブルー光(高調波光)出力5mWが安定して得られる。
【0026】
このように、半導体レーザから出力されるレーザ光を基本波光として光波長変換素子に入力して高調波光に波長変換する短波長光源では、高効率波長変換を実現するためには位相整合条件を満たす必要があり、一般にその許容波長幅は小さい。そのため、半導体レーザと光波長変換素子とを組み合わせて構成されている短波長光源においては、基本波を供給する半導体レーザとして、波長可変型DBR半導体レーザが用いられる。波長可変型DBR半導体レーザには、波長を固定して可変するためのDBR領域が形成されており、このDBR領域へ電流注入を行うことにより、2nm程度の波長可変範囲を実現できる。
【0027】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、分極反転層を基本とした光波長変換素子において、素子を2つ以上の領域に分割し、各領域間の位相整合条件を変えることにより波長変換素子変換素子の波長許容度を増大させる方法では、各領域における位相整合波長が異なるため、広い波長範囲において第2高調波が発生する。しかし、従来の光波長変換素子では、比較的広い範囲に波長許容範囲を拡大するのは容易であるが、それに伴う波長変換素子の変換効率の低下が激しい。例えば、位相整合波長許容度を10倍に拡大すれば、変換効率は1/10に低下し、高効率の出力特性を有したまま安定な高調波出力を得ることができない。
【0028】
また、従来の光波長変換素子における光導波路全体に電圧を印加する構成においては、高効率の変換特性を実現するには、印加電圧分布に高い均一性が要求される。このため、高効率な変換特性を達成したままで、位相整合波長を変化させることが難しい。更に、光波長変換素子の全体を一定の温度にするには、広い面積の温度を制御する必要があり、消費電力が大きくなる。
【0029】
更に、光波長変換素子の位相整合波長を可変して安定な出力を得るには、印加電圧により波長を制御し、特定の波長を選択した後に、印加電圧を固定する必要がある。ところが、LiNbO3やLiTaO3などの電気光学効果を有する材料においては、DCドリフトの問題があり、一定の電圧を印加すると電極間に印加電圧を打ち消す電荷が発生して、印加電圧が徐々に変化するという問題が発生する。このため、一定のDC電圧を導波路全体に安定に印加するのが難しいとともに、均一な電界分布を光導波路全体に渡って形成することも困難である。
【0030】
更に、電気光学効果により変化可能な屈折率は10-4程度であるために、これによって得られる変調可能な位相整合波長の範囲が、0.1nm程度以下に限定される。
【0031】
一方、短波長光源に関して、波長可変型DBR半導体レーザ及び分極反転型光波長変換素子が組み合わされている短波長光源において、波長可変型DBR半導体レーザは、モードホップ(モード間隔:0.11nm)を繰り返しながら長波長側に発振波長が変化する。一方、分極反転型光波長変換素子は、10nmの素子長に対して、その動作特性(チューニングカーブ特性)における位相整合波長の許容波長幅が、半値全幅で0.08nmであり、出力レベルがピーク出力レベルの95%となる波長幅が0.02nmと小さい。
【0032】
図16(a)及び(b)では、このような波長可変型DBR半導体レーザの各モードの発振波長Aと分極反転型光波長変換素子のチューニングカーブ特性Bとの関係を、横軸に波長、縦軸に高調波光出力をとった図に模式的に示している。
【0033】
図16(a)のように、波長可変型DBR半導体レーザのある発振モードの波長が分極反転型光波長変換素子のチューニングカーブ特性のピークの近傍にある場合には、DBR領域への注入電流を制御することにより、波長可変型DBR半導体レーザの発振波長を、最大変換効率が得られる位相整合波長(図中の特性Bのピークに相当する)に固定することが可能である。しかし、図16(b)のように両者が大きくずれている場合には、波長可変型DBR半導体レーザの縦モード間隔が例えば0.11nmであるために、最大変換効率の50%程度の変換効率しか得られない。このような場合には、何らかの方法で、波長可変型DBR半導体レーザの発振波長を最大変換効率が得られる位相整合波長に調整する必要がある。
【0034】
上記の目的のための一つの方法として、波長可変型DBR半導体レーザにおける駆動電流(活性部への注入電流)を変換させると、その発振波長は0.01nmオーダで変化する。例えば、AlGaAs系の波長可変型DBR半導体レーザでは、0.02nm/10mAで変化する。
【0035】
しかし、図16(a)及び(b)を参照して上記で説明したように、従来の光波長変換素子では、出力レベルがピーク出力の95%となる波長幅が±0.01nmであるので、基本波光や高調波光の出力を一定にするために駆動電流を定出力駆動(Auto Power Control:APC駆動)させると、発振波長も変化する。すなわち、制御ループは発散方向にあって、収束できない。例えば、基本波光出力を5%変化させることによって高調波光出力を10%程度変化させようとすると、発振波長は0.02nm程度変化して、変換効率が20%程度低下する。その結果として、波長可変型DBR半導体レーザと分極反転型光波長変換素子との組合せとして構成される従来の短波長光源においては、APC駆動による制御の実施は、実際には非常に困難である。
【0036】
或いは、電子冷却素子などにより、波長可変型DBR半導体レーザ及び分極反転型光波長変換素子が搭載されているモジュール全体の温度を制御して、波長可変型DBR半導体レーザの発振波長を最大変換効率が得られる位相整合波長に調整することも可能である。
【0037】
これに関して、図17には、波長可変型DBR半導体レーザ及び分極反転型光波長変換素子の動作特性の温度依存性を示す。典型的には、温度上昇と共に波長可変型DBR半導体レーザの発振波長は0.068nm/℃で長波長側にシフトし、一方、Mg:LiNbO3基板の上の分極反転型光波長変換素子の位相整合波長は、0.055nm/℃で長波長側にシフトする。そのため、モジュールの温度を変化させると、発振波長と位相整合波長との相対関係は0.013nm/℃の関係で変化する。この関係を利用すると、波長可変型DBR半導体レーザの発振波長と分極反転型光波長変換素子の位相整合波長とが図16(b)のような関係にあるときであっても、モジュール温度を例えば3℃程度上昇させることにより、波長可変型DBR半導体レーザの発振波長を分極反転型光波長変換素子の位相整合波長のピークに固定することが可能となる。
【0038】
しかし、DBR領域への電流注入による波長可変速度がミリ秒オーダであるのに対して、上記のようなペルチエ素子による温度制御速度は、秒オーダである。光ディスクやディスプレイなどの機器への応用時に、光源の立ち上げ時間は短いことが望まれることを考慮すれば、上記の応答速度特性は満足いくものではない。更に、ペルチエ素子を動作させるためには数Vオーダ及び数Aオーダのパワー印加する必要であり、光源の消費電力が大きくなる。これも、民生での応用を考えると望ましいことではない。
【0039】
また、分極反転型光波長変換デバイスの基本波波長に対する高調波光出力の関係(位相整合波長カーブ、すなわちチューニングカーブ)は、一般にsinc関数の形状を有しており、位相整合波長のピーク近傍においても、そのチューニングカーブ特性には平坦部が存在しない。このため、モジュールの僅かな温度変化に対して高調波の出力変動が生じるので、常にモジュール温度を制御する必要がある。
【0040】
このように、光波長変換素子と波長可変型DBR半導体レーザとを組み合わせて構成されている短波長光源において、一般の波長可変型DBR半導体レーザではその波長可変特性が不連続であり、0.1nm程度のモードホップを繰り返しながら波長可変することから、得られる高調波光出力を常時安定化することは極めて困難である。特に、APC駆動により高調波光出力光を安定化することは、非常に困難である。
【0041】
これに対して、位相部を形成した3電極(活性部、位相部、DBR部)タイプの波長可変型DBR半導体レーザも開発されているが、その出力と波長を安定に制御することも、やはり困難である。
【0042】
更に、光波長変換素子の素子長を短くすることによる位相整合の許容波長幅の拡大も検討されているが、半導体レーザのモードホップ間隔まで許容波長幅を拡大するためには素子長を数mm程度まで短くする必要があり、変換効率の大幅な低減につながることから、実用的ではない。
【0043】
上記に加えて、更に、出力安定化におけるもう一つの課題として、基本波波長及び位相整合波長の安定化の問題がある。
【0044】
具体的には、温度変化等の変動要因に対して基本波の波長及び光波長変換素子の位相整合波長が変動する場合、この変動量をモニターし、基本波の波長にフィードバックをかけて出力を安定化する必要がある。しかし、従来の光波長変換素子には、位相整合状態を最適化するためのモニター機能を搭載するという概念が与えられていなかった。また、従来の構造では、この機能を搭載することが難しいという構造上の問題があった。
【0045】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、(1)チューニングカーブの最大値近傍に広い平坦部を有する位相整合特性(ピークフラットな位相整合特性)を有する光波長変換素子を提供すること、(2)位相整合波長の波長許容度を広い範囲に渡って安定して可変できる光波長変換素子を提供すること、(3)上記のような光波長変換素子と半導体レーザとを用いてコヒーレント光発生装置を構成することで、半導体レーザにおける発振波長の変動を安定化し、安定な出力特性を有するコヒーレント光発生装置を提供すること、(4)光ディスクシステムやディスプレイシステムなどの機器に応用可能な、任意の環境温度或いは動作状態において安定した高調波光出力特性を実現する、波長可変型DBR半導体レーザと分極反転型光波長変換素子とを組み合わせて構成される短波長光源を提供すること、並びに、(5)上記のようなコヒーレント光発生装置或いは短波長光源を用いた光情報処理装置を提供すること、を目的とする。
【0046】
【課題を解決するための手段】
本発明の短波長光源は、少なくとも光波長変換素子と波長可変型半導体レーザとを含み、該光波長変換素子は、該波長可変型半導体レーザの出力光を基本波光として受け取り、該基本波光の波長に対する波長変換によって得られる高調波光を出力し、且つ、該光波長変換素子の該高調波光の出力特性は、最大出力の近傍で平坦部を有しており、該波長可変型半導体レーザの発振波長が、該光波長変換素子の該出力特性の該平坦部に固定されていて、そのことによって、上記の目的が達成される。
【0047】
ある実施形態では、前記波長可変型半導体レーザの前記発振波長が前記光波長変換素子の前記出力特性の前記平坦部に固定されている間は、前記高調波光の出力レベルが一定値になるように、該波長可変型半導体レーザの駆動電流が制御される。
【0048】
ある実施形態では、上記の短波長光源は、前記波長可変型半導体レーザの前記発振波長を制御する制御回路と、前記高調波光の出力を検出する光検出器と、を更に備えており、該制御回路は、該光検出器が検出する該高調波光の出力が前記出力特性における前記平坦部での出力レベルに保持されるように、該波長可変型半導体レーザの該発振波長を制御する。
【0049】
ある実施形態では、上記の短波長光源は、前記波長可変型半導体レーザの前記発振波長を制御する制御回路と、前記高調波光の出力を検出する第1の光検出器と、前記波長可変型半導体レーザの出力光を検出する第2の光検出器と、を更に備えており、該制御回路は、該第2の光検出器が検出する該波長可変型半導体レーザの出力光が所定の一定値に保持されるように、該波長可変型半導体レーザの駆動電流を制御し、且つ、該第1の光検出器が検出する該高調波光の出力が前記出力特性における前記平坦部での出力レベルに保持されるように、該波長可変型半導体レーザの該発振波長を制御する。
【0050】
ある実施形態では、上記の短波長光源は、前記波長可変型半導体レーザの前記発振波長を制御する制御回路と、前記高調波光の出力を検出する光検出器と、を更に備えており、該波長可変型半導体レーザは、所定の値の電流によって定電流駆動され、該光検出器が検出する前記高調波光の出力が、前記出力特性における前記平坦部での出力レベルに保持され、且つ、該高調波光の出力が所定の一定値に保持されるように、該波長可変型半導体レーザの駆動電流が制御される。
【0051】
ある実施形態では、前記出力特性における前記平坦部が、前記波長可変型半導体レーザの前記駆動電流の増加時には前記高調波光の出力が増加し、且つ該波長可変型半導体レーザの該駆動電流の減少時には該高調波光の出力が減少する範囲である。
【0052】
例えば、前記波長可変型半導体レーザの前記発振波長の制御のために注入される注入電流の異なるレベルIN及びIN+1(但し、IN+1>IN)に対して、波長変換により得られる前記高調波光の出力をそれぞれPN及びPN+1とすれば、前記制御回路は、該注入電流の増加時に、(PN+1−PN)>0であり且つ(PN+1−PN)の絶対値が最大値となる該注入電流の異なるレベルIN及びIN+1に対して、該注入電流をIdbr=IN+1+ΔIとなる値に設定し得て、これによって該波長可変型半導体レーザの該発振波長を所定の値に固定することができる。或いは、前記制御回路は、該注入電流の減少時に、(PN+1−PN)<0であり且つ(PN+1−PN)の絶対値が最大値となる該注入電流の異なるレベルIN及びIN+1に対して、該注入電流をIdbr=IN−ΔIとなる値に設定し得て、これによって該波長可変型半導体レーザの該発振波長を所定の値に固定することができる。
【0053】
好ましくは、前記光波長変換素子は、2つ以上の非線形光学結晶と、隣接する該非線形光学結晶の間に配置された位相調整部と、を備える。その場合には、前記基本波光が、該光波長変換素子の該非線形光学結晶により前記高調波光に波長変換され、該非線形光学結晶の各々の位相整合条件が互いにほぼ等しい。
【0054】
ある実施形態では、前記光波長変換素子には、2つの前記非線形光学結晶と1つの前記位相調整部とが設けられており、該位相調整部の長さtが、
t=(2n+α)π/(β2ω−2・βω)
但し、α=0.5〜1.5
n=0、1、2、……、
β2ω:該位相調整部における前記高調波光の伝搬定数
βω :該位相調整部における前記基本波の伝搬定数
なる関係を満足している。
【0055】
他の実施形態では、前記光波長変換素子には、3つの前記非線形光学結晶と2つの前記位相調整部とが設けられており、該位相調整部の各々の長さt1及びt2が、
t1=(2n+α1)π/(β2ω−2・βω)
t2=(2m+α2)π/(β2ω−2・βω)
但し、α1+α2=2
n=0、1、2、3、……、
m=0、1、2、3、……、
t1+t2=2Jπ/(β2ω−2・βω)
J=0、1、2、3、……、
β2ω:該位相調整部における前記高調波光の伝搬定数
βω :該位相調整部における前記基本波の伝搬定数
なる関係を満足している。
【0056】
好ましくは、前記出力特性の前記平坦部の波長幅が、前記波長可変型半導体レーザの前記発振波長の縦モード間隔よりも広い。
【0057】
前記波長可変型半導体レーザは、少なくとも活性領域と分布ブラッグ反射(distributed Bragg reflector:DBR)領域とを含み、該活性領域及び該DBR領域の各々に独立した電極が設けられている半導体レーザであり得る。
【0058】
例えば、前記光波長変換素子が、周期的分極反転構造を有する擬似位相整合方式の光波長変換素子であり得る。
【0059】
前記光波長変換素子は、光導波路を有し得る。
【0060】
前記光波長変換素子は、LiTaxNb1-x3基板(0≦x≦1)の上に作製され得る。
【0061】
前記波長可変型半導体レーザの駆動電流が変調されていてもよい。
【0062】
前記波長可変型半導体レーザは、外部反射鏡から特定波長の光が光帰還するように構成され得て、該特定波長の光を可変することによって、該波長可変型半導体レーザの発振波長が可変されてもよい。
【0063】
本発明の他の局面によれば、上記のような本発明の短波長光源と、集光光学系と、を備え、該短波長光源から出射されるコヒーレント光を該集光光学系により集光している光情報処理装置が、提供される。
【0064】
本発明の光波長変換素子は、基本波と高調波とに対してほぼ等しい位相整合条件を有する2つ以上の非線形光学結晶と、各々の該非線形光学結晶の間に配置された位相調整部と、を備え、該位相調整部は、該非線形光学結晶とは異なる分散特性を有し、且つその屈折率或いは長さの少なくとも一方が変調可能であるように構成されていて、そのことによって、前述の目的が達成される。
【0065】
本発明の他の光波長変換素子は、非線形光学結晶と、該非線形光学結晶の一部に形成した屈折率変調部と、を備え、該屈折率変調部は、該非線形光学結晶の全長の1/2以下の長さの領域に形成されていて、そのことによって、前述の目的が達成される。
【0066】
ある実施形態では、前記屈折率変調部とその他の部分の境界近傍に設けられた位相調整部を更に有し、該屈折率変調部の長さが前記非線形光学結晶の全長の15%〜40%である。
【0067】
ある実施形態では、前記非線形光学結晶として2つ以上の非線形光学結晶を有し、該2つ以上の非線形光学結晶の間に位相調整部が配置されており、前記屈折率変調部は該2つ以上の非線形光学結晶の何れかに設けられていて、該2つ以上の非線形光学結晶が互いにほぼ等しい位相整合条件を満足している。
【0068】
前記非線形光学結晶が周期状の分極反転構造を有していてもよい。
【0069】
例えば、前期非線形光学結晶の個数が3つ以上であって、該3つ以上の非線形光学結晶の互いの長さの差が40%以下である。
【0070】
前記位相調整部が液晶から構成されていてもよい。
【0071】
或いは、前記位相調整部が可塑性の材料により形成されており、該位相調整部の長さが微動台により調整されていてもよい。
【0072】
前記非線形光学結晶が光導波路を有し、該光導波路内で前記光の波長が変換されていてもよい。
【0073】
前記非線形光学結晶が共振器構造内に配置されていてもよい。
【0074】
本発明の他の局面によれば、上記のような本発明の光波長変換素子と、レーザ光源と、を備え、該レーザ光源の光が該光波長変換素子により波長変換されているコヒーレント光発生装置が、提供される。
【0075】
前記レーザ光源は波長可変機能を有していてもよい。
【0076】
好ましくは、前記光波長変換素子の位相整合波長の可変範囲が、前記レーザ光源の縦モード間隔より広い。
【0077】
例えば、前記レーザ光源は半導体レーザである。
【0078】
本発明の他の局面によれば、上記のような本発明のコヒーレント光発生装置と、集光光学系と、を備え、該コヒーレント光発生装置から出射されるコヒーレント光を該集光光学系により集光している光情報処理装置が、提供される。
【0079】
本発明の光波長変換素子は、2つ以上の非線形光学結晶と、隣接する該非線形光学結晶の間に配置された位相調整部と、を備えており、該非線形光学結晶の各々の位相整合条件が互いにほぼ等しく、そのことによって、前述の目的が達成される。
【0080】
好ましくは、前記非線形光学結晶の内部で基本波が高調波に変換され、該基本波の波長と該高調波の出力との間の関係を示す特性曲線において、該高調波の出力の最大値近傍で、該特性曲線が平坦部を有している。
【0081】
ある実施形態では、前記非線形光学結晶の内部で波長λの基本波が波長λ/2の高調波に変換され、前記位相調整部の長さtが、
t=(2n+α)π/(β2ω−2・βω)
但し、α=0.5〜1.5
n=0、1、2、……、
β2ω:該位相調整部における該高調波の伝搬定数
βω :該位相調整部における該基本波の伝搬定数
なる関係を満足している。
【0082】
ある実施形態では、前記非線形光学結晶の内部で波長λ1の第1の光及び波長λ2の第2の光と波長λ3の第3の光との間での波長変換が行われ、該各々の波長は、
1/λ3=1/λ1+1/λ2
なる関係を満たし、且つ、前記位相調整部の長さtが、
t=(2n+α)π/(β3−β2−β1)
但し、α=0.5〜1.5
n=0、1、2、……、
β1:該位相調整部における該第1の光の伝搬定数
β2:該位相調整部における該第2の光の伝搬定数
β3:該位相調整部における該第3の光の伝搬定数
なる関係を満足している。
【0083】
例えば、前記非線形光学結晶の数が2つで、前記αの値がα=0.9〜1.1の範囲にある。
【0084】
好ましくは、記非線形光学結晶の数が2つで、前記αの値がα=0.95〜1.05の範囲にある。
【0085】
ある実施形態では、3つの前記非線形光学結晶と2つの前記位相調整部とが設けられており、該位相調整部の各々の長さt1及びt2が、
t1+t2=(2n+α)π/(β3−β2−β1)
n=0、1、2、……、
なる関係を満足している。
【0086】
ある実施形態では、3つの前記非線形光学結晶と2つの前記位相調整部とが設けられており、該位相調整部の各々の長さt1及びt2が、
t1+t2=2nπ/(β2ω−2・βω)
n=0、1、2、……、
なる関係を満足している。
【0087】
例えば、前記位相調整部の各々の長さt1及びt2が、
t1=(2n+α1)π/(β2ω−2・βω)
t2=(2n+α2)π/(β2ω−2・βω)
但し、α1+α2=2
n=0、1、2、3、……、
なる関係を満足している。
【0088】
好ましくは、前記α1の値がα1=0.7〜1.3の範囲である。
【0089】
ある実施形態では、前記位相調整部の各々の長さt1及びt2が、
t1=(2n+α1)π/(β3−β2−β1)
t2=(2n+α2)π/(β3−β2−β1)
但し、α1+α2=2
n=0、1、2、3、……、
なる関係を満足している。
【0090】
好ましくは、前記α1の値がα1=0.7〜1.3の範囲である。
【0091】
前記非線形光学結晶が単一の結晶からなっており、前記位相調整部が該結晶の内部に設けられていてもよい。
【0092】
或いは、前記非線形光学結晶と前記位相調整部とがお互いに接着されていてもよい。
【0093】
本発明の光波長変換素子は、非線形光学結晶と、該非線形光学結晶に形成され且つ2つ以上の領域に分割されている周期状分極反転構造と、該周期状分極反転構造の該分割された領域の間に配置されている位相調整部と、を備えており、
該周期状分極反転構造の周期が、該分割された領域の間でお互いにほぼ等しく、そのことによって、前述の目的が達成される。
【0094】
好ましくは、前記周期状分極反転構造の内部で基本波が高調波に変換され、該基本波の波長と該高調波の出力との間の関係を示す特性曲線において、該高調波の出力の最大値近傍で、該特性曲線が平坦部を有している。
【0095】
ある実施形態では、前記非線形光学結晶の内部で波長λの基本波が波長λ/2の高調波に変換され、前記周期状分極反転構造の前記周期Λが、
Λ=2mπ/(β2ω−2・βω)
m=1、2、3、……、
なる関係をほぼ満たし、前記位相調整部の長さtが、
t=(2n+α)π/(β2ω−2・βω)
但し、α=0.5〜1.5
n=0、1、2、……、
β2ω:該位相調整部における該高調波の伝搬定数
βω :該位相調整部における該基本波の伝搬定数
なる関係を満足している。
【0096】
ある実施形態では、前記非線形光学結晶の内部で波長λ1の第1の光及び波長λ2の第2の光と波長λ3の第3の光との間での波長変換が行われ、該各々の波長は、
1/λ3=1/λ1+1/λ2
なる関係を満たし、且つ、前記周期状分極反転構造の前記周期Λが、
Λ=2mπ/(β2ω−2・βω)
m=1、2、3、……、
なる関係をほぼ満たし、且つ、前記位相調整部の長さtが、
t=(2n+α)π/(β3−β2−β1)
但し、α=0.5〜1.5
n=0、1、2、……、
β1:該位相調整部における該第1の光の伝搬定数
β2:該位相調整部における該第2の光の伝搬定数
β3:該位相調整部における該第3の光の伝搬定数
なる関係を満足している。
【0097】
例えば、前記非線形光学結晶の数が2つで、前記αの値がα=0.9〜1.1の範囲にある。
【0098】
ある実施形態では、3つの前記非線形光学結晶と2つの前記位相調整部とが設けられており、該位相調整部の各々の長さt1及びt2が、
t1+t2=(2n+α)π/(β3−β2−β1)
n=0、1、2、……、
なる関係を満足している。
【0099】
ある実施形態では、3つの前記非線形光学結晶と2つの前記位相調整部とが設けられており、
該位相調整部の各々の長さt1及びt2が、
t1+t2=2nπ/(β2ω−2・βω)
n=0、1、2、……、
なる関係を満足している。
【0100】
例えば、前記位相調整部の各々の長さt1及びt2が、
t1=(2n+α1)π/(β2ω−2・βω)
t2=(2n+α2)π/(β2ω−2・βω)
但し、α1+α2=2
n=0、1、2、3、……、
なる関係を満足している。
【0101】
好ましくは、前記α1の値がα1=0.7〜1.3の範囲である。
【0102】
ある実施形態では、前記位相調整部の各々の長さt1及びt2が、
t1=(2n+α1)π/(β3−β2−β1)
t2=(2n+α2)π/(β3−β2−β1)
但し、α1+α2=2
n=0、1、2、3、……、
なる関係を満足している。
【0103】
好ましくは、前記α1の値がα1=0.7〜1.3の範囲である。
【0104】
前記基本波の伝搬損失が前記高調波の伝搬損失のほぼ半分であってもよい。
【0105】
前記第1、第2、及び第3の光の伝搬損失がお互いにほぼ等しくてもよい。
【0106】
前記非線形光学結晶が光導波路を有し、該光導波路内で光の波長変換が行われてもよい。
【0107】
本発明の光波長変換素子は、非線形光学結晶を有し、該非線形光学結晶の内部で、波長λの基本波が波長λ/2の高調波に変換され、該非線形光学結晶における該基本波の伝搬損失が該高調波の伝搬損失のほぼ半分であって、そのことによって、前述の目的が達成される。
【0108】
ある実施形態では、前記非線形光学結晶が光導波路を有し、該光導波路内で前記基本波から前記高調波への波長変換が行われ、前記伝搬損失は、該光導波路内における伝搬損失である。
【0109】
本発明の光波長変換素子は、非線形光学結晶を有し、該非線形光学結晶の内部で、波長λ1の第1の光及び波長λ2の第2の光と波長λ3の第3の光との間での波長変換が行われ、該各々の波長は、
1/λ3=1/λ1+1/λ2
なる関係を満たし、且つ、該非線形光学結晶における該第1、第2、及び第3の光の伝搬損失がお互いにほぼ等しく、そのことによって、前述の目的が達成される。
【0110】
ある実施形態では、前記非線形光学結晶が光導波路を有し、該光導波路内で前記波長変換が行われ、前記伝搬損失は、該光導波路内における伝搬損失である。
【0111】
前記非線形光学結晶が光入射部と光出射部とを有しており、該光入射部及び光出射部の少なくとも一方に反射防止膜が設けられていてもよい。
【0112】
本発明のコヒーレント光発生装置は、発振波長を可変する機能を有する半導体レーザと、該半導体レーザの出射光を基本波として受け取って、該基本波に対する波長変換を行って高調波を出力する光波長変換素子と、を備え、該基本波の波長と該高調波の出力との間の関係を示す特性曲線において、該高調波の出力の最大値近傍で該特性曲線が平坦部を有し、該平坦部の幅が、該半導体レーザの縦モード間隔よりも広く設定されていて、そのことによって、前述の目的が達成される。
【0113】
或いは、本発明のコヒーレント光発生装置は、発振波長を可変する機能を有する半導体レーザと、該半導体レーザの出射光を基本波として受け取って、該基本波に対する波長変換を行って高調波を出力する、本発明による光波長変換素子と、を備え、該基本波の波長と該高調波の出力との間の関係を示す特性曲線において、該高調波の出力の最大値近傍で該特性曲線が平坦部を有し、該平坦部の幅が、該半導体レーザの縦モード間隔よりも広く設定されていて、そのことによって、前述の目的が達成される。
【0114】
或いは、本発明のコヒーレント光発生装置は、本発明の光波長変換素子と、レーザ光源と、を備え、該レーザ光源の出射光が該光波長変換素子によって波長変換されるように構成されていて、そのことによって、前述の目的が達成される。
【0115】
前記レーザ光源が、発振波長を可変する機能を有する半導体レーザであってもよい。
【0116】
前記半導体レーザが高周波重畳されていてもよい。
【0117】
好ましくは、前記光波長変換素子の位相整合波長許容度が、前記レーザ光源の縦モード間隔よりも広く設定されている。
【0118】
本発明のコヒーレント光発生装置は、非線形光学結晶と、波長可変レーザ光源と、第1及び第2の光検出器と、を備え、該非線形光学結晶の内部で、該波長可変レーザ光源からの第1の光が第2の光に波長変換され、該第1の光検出器は、該第1或いは第2の光のうちの選択された光について、該非線形光学結晶から散乱される散乱光の強度を測定し、該第2の光検出器は、該非線形光学結晶の出射部近傍における該選択された光の強度を測定し、該第1及び第2の光検出器の測定結果に基づいて、該波長可変レーザ光源の発振波長を制御し、そのことによって、前述の目的が達成される。
【0119】
ある実施形態では、前記非線形光学結晶は光波長変換素子に含まれており、該光波長変換素子には位相調整部が設けられていて、前記第1の光検出器が該位相調整部の近傍に設けられている。
【0120】
本発明の光情報処理装置は、本発明によるコヒーレント光発生装置と、集光光学系と、備え、該コヒーレント光発生装置から出射されるコヒーレント光を、該集光光学系により集光しており、そのことによって、前述の目的が達成される。
【0121】
【発明の実施の形態】
非線形光学結晶を用いて光波長変換を行う場合、結晶の複屈折率を利用する複屈折位相整合以外に、非線形分極の方向を周期的に反転させた周期的分極反転を利用して、非線形グレーティングにより基本波と高調波との間の位相速度の差を擬似的に補償する方法がある。この方法を擬似位相整合方式という。擬似位相整合は、分極反転周期により、位相整合条件を任意に制御できる。
【0122】
本発明では、この分極反転型光波長変換素子の一部分に位相調整部を形成することで、基本波波長に対する高調波光出力特性(チューニングカーブ特性)において、ピーク出力レベルの近傍が平坦である(すなわち、平坦部を有する)特性を実現する。
【0123】
光導波路型擬似位相整合方式の分極反転型光波長変換素子の特徴として、
(1)光導波路型であるので、長い相互作用長を実現でき、分割構造の光波長変換に有効である。
(2)分極反転領域は、半導体プロセスにより均一且つ高精度に形成できるとともに、同時に位相調整部も形成できるので、デバイスの設計及び形成が容易に達成される。
などの点が挙げられる。
【0124】
(第1の実施形態)
本実施形態では、基本波波長に対する高調波光出力特性(チューニングカーブ特性)においてピーク出力近傍が平坦部を有する光波長変換素子と、2電極(活性部及びDBR部)を有する波長可変型DBR半導体レーザを組み合わせて構成される短波長光源について、その構成と動作方法を説明する。
【0125】
まずはじめに、基本波波長に対する高調波光出力特性(チューニングカーブ特性)においてピーク出力近傍が平坦部を有する光波長変換素子の構成、及びその作製方法について説明する。
【0126】
非線形光学効果による光波長変換では、基本波を波長変換して高調波を発生する。基本波から高調波への高効率の波長変換を可能にするには、2つの光の位相速度が一致する位相整合条件を満足する必要がある。ところが、位相整合条件を満足する基本波波長の許容範囲は、一般に非常に狭い。
【0127】
これを解決する方法として、本実施形態の光波長変換素子では、同一の位相整合条件を有する非線形光学結晶の間に位相調整部を設けることで、位相整合波長の許容度を拡大する構造を有している。これによって、広い許容波長幅を有し、且つチューニングカーブ特性においてピーク出力近傍で平坦部を有することができる。更に、許容波長幅の拡大による波長変換効率の低下を最小限に抑え、許容波長幅の拡大と高効率特性とを同時に達成できる。
【0128】
本実施形態の光波長変換素子100の具体的な構造を、図1を参照して説明する。
【0129】
図1に示すように、光波長変換素子100は、互いにほぼ等しい位相整合条件を満足する複数の非線形光学結晶、ここでは例えば3つの非線形光学結晶1、2、及び3を含む。更に、各々の非線形光学結晶1、2、及び3の間には、位相調整部4及び5が挿入されている。
【0130】
このような構造を有する光波長変換素子100に基本波光6を入射すると、光波長変換素子100により波長変換されて高調波光7が出射する。非線形光学結晶1、2、及び3の内部で基本波光6と高調波光7との位相整合条件が成立している場合には、
β2ω=2・βω
(但し、β2ω:高調波の伝搬定数、βω:基本波の伝搬定数)となり、基本波光6と高調波光7とは等しい位相速度で伝搬している。
【0131】
光波長変換素子が、従来のように、位相整合条件を満足する単一の非線形光学結晶から構成される場合、すなわち位相調整部を有さない場合には、基本波光波長に対する高調波光(SHG)出力特性は、図2(a)に示されるようになる。具体的には、光波長変換素子の位相整合状態を示すチューニングカーブ特性はsinc関数となり、そのピーク部分はかなり狭く、許容波長幅が極端に狭い。
【0132】
これに対して、図1に示す本発明の光波長変換素子100の基本波光波長に対する高調波(SHG)光出力特性は、図2(b)に示されるようになる。これより、チューニングカーブ特性の最大値近傍のピークにおいて、高調波(SHG)光の出力強度は非常に平坦で、その出力変動は数%以内である。なお、図2(b)の縦軸に示す高調波(SHG)光の出力強度の目盛りは、図2(a)における従来例での高調波(SHG)光のピーク出力強度を1として、規格化されている。
【0133】
更に、基本波光波長に対する高調波光出力レベルがピークレベルから5%低下する波長範囲(許容波長幅)は、図2(a)に比べて図2(b)では約6倍に拡大されている。また、図2(b)において、許容波長幅拡大に伴って変換効率が低下するものの、依然として図2(a)で得られる変換効率の29%のレベルが達成可能であり、高効率波長変換が実現される。
【0134】
このように、光波長変換素子において、互いに等しい位相整合条件を有する非線形光学結晶1、2及び3の間に位相調整部4及び5を設けることで、平坦なピークを有するチューニングカーブ特性が得られ、且つ比較的高い変換効率を実現することができる。
【0135】
具体的には、本発明によれば、基本波波長に対する高調波光出力特性(チューニングカーブ特性)におけるピーク出力近傍に平坦部を有する光波長変換素子として、2分割及び3分割の光導波路型擬似位相整合方式光波長変換素子とを形成する。図3(a)には、2分割構造の光波長変換素子110、図3(b)には3分割構造の光波長変換素子120を示す。
【0136】
図3(a)の2分割構造の光波長変換素子110においては、基板内に分極反転領域8及び9が形成されており、分極反転領域8及び9の間には位相調整部10が形成されている。一方、図3(b)の3分割構造の光波長変換素子120においては、基板内に分極反転領域11、12、及び13が形成されており、分極反転領域11、12、及び13の間には位相調整部14及び15が形成されている。なお、ここでいう分極反転領域8〜13とは、複数の個別の分極反転領域が所定の間隔(分極反転周期Λ)で周期的に形成されている領域を、総称的に指すものとする。
【0137】
それぞれの場合において、分極反転周期Λは、
Λ=2mπ/(β2ω−2・βω) (1)
なる関係を満足している。但し、m=0、1、2、3、……、であり、β2ωは位相調整部における高調波光の伝搬定数、βωは位相調整部における基本波光の伝搬定数である。
【0138】
各分極反転領域8〜13における位相整合条件を等しくするためには、各領域8〜13における分極反転周期を同じに設定する。
【0139】
更に、位相調整部の距離tは、図3(a)に含まれる2分割構造の光波長変換素子110においては式(2)で表される関係を満足するように設定する。
【0140】
t=(2n+1)π/(β2ω−2・βω) (2)
但し、n=0、1、2、3、……、である。
【0141】
式(2)において、チューニングカーブ特性の対称性が5%以内に収まるのはα=0.95〜1.05の範囲であり、αがこの範囲に設定されている限りは、使用上は問題ない。好ましくは、α=1とする。αが上記の範囲を外れてチューニングカーブ特性の対称性が劣化すると、そのピーク近傍における平坦部が傾きを有するようになり、APC動作が不可能になったり高調波光出力の変動が大きくなったりするなど、好ましくない影響が発生する。
【0142】
また、位相調整部10の両側に位置する分極反転領域8及び9の長さを、分極反転領域8の長さL1の素子全体長Lに対する比率L1/L(%)が約17%になるように設定する(従って、分極反転領域9の長さはL−L1−tに設定される)場合に、チューニングカーブ特性におけるピーク出力近傍の平坦部が、最もフラットになる。
【0143】
一方、図3(b)に含まれる3分割構造の光波長変換素子120においては、各位相調整部14及び15の距離t1及びt2は、式(3)及び式(4)で表される関係を満足するように設定する。
【0144】
t1=(2n+α1)π/(β2ω−2・βω) (3)
t2=(2m+α2)π/(β2ω−2・βω) (4)
但し、n及びm=0、1、2、3、……、である。
【0145】
ここで、α1+α2=2であるので、上記の式(3)及び式(4)は、J=0、1、2、3、……、とすれば、
t1+t2=2Jπ/(β2ω−2・βω) (5)
となる。
【0146】
α1=0.79及びα2=1.21近傍で、チューニングカーブ特性におけるピーク出力近傍の平坦部が、ほぼフラットな特性を示す。また、対称性が5%以内に収まるのは、α1=0.7〜0.9の範囲であり、このときα2=2−α1に設定する。
【0147】
また、上記の条件が満たされる場合に、分極反転領域11及び13が同じ長さL1を有するようにし、更に素子全体長Lに対する比率L1/L(%)が約13.8%である場合に、チューニングカーブ特性におけるピーク出力近傍の平坦部が、最もフラットになる。
【0148】
以上の設計指針に基づいて、実際に光波長変換素子を設計・作成した。
【0149】
素子全体長はL=10mmに設定し、位相整合波長の中心波長は852nmに設定した。また、分極反転周期は3.2μmとした。2分割構造に関しては、t=1.6μm及びL1=1.7mmとし、3分割構造に関しては、t1=1.3μm、t2=1.9μm、及びL2=1.38mmとした。
【0150】
上記の設計値を有する2分割構造及び3分割構造の光波長変換素子110及び120における、基本波光波長に対する高調波光出力特性(チューニングカーブ特性)のシミュレーション結果を、図4(a)及び(b)に示す。但し、図4(a)及び(b)における縦軸の高調波光出力の目盛りは、位相調整部を有さない従来の光波長変換素子で得られる高調波光出力のピーク強度の値を1として、規格化されている。
【0151】
位相調整部を有さない従来の光波長変換素子では、チューニングカーブ特性における平坦部の許容波長幅(ピーク出力レベルから出力レベルが5%低下する波長幅)が、典型的には0.02nmであるのに対して、2分割構造では、図4(a)に示すように、チューニングカーブ特性における平坦部の許容波長幅が0.06nmであり、ピーク出力は、位相調整部がない場合と同じ10mm長の光波長変換素子で得られる値の45%の値が得られた。また、3分割構造では、図4(b)に示すように、チューニングカーブ特性における平坦部の許容波長幅が0.12nmであり、ピーク出力は、位相調整部がない場合と同じ10mm長の光波長変換素子で得られる値の29%の値が得られた。なお、上記では、高調波光出力特性(チューニングカーブ特性)における平坦部を、「出力レベルがピーク出力レベルから5%低下する波長幅」と定義しているが、これは、一般的な光ディスクシステムなどの応用を考えた場合に光源に許されるパワー変動が数%以内、大きく見積もっても5%以内であるためである。
【0152】
本実施形態における光波長変換素子は、従来の分極反転型光波長変換素子と同様の方法で作製される。
【0153】
具体的には、図5に示される構成を有する短波長光源に含まれる光波長変換素子18は、xカットMgドープLiNbO3基板の上に形成されたプロトン交換光導波路と、2次元電界印加法により作製された周期的分極反転領域とを含む。周期的分極反転領域を形成するためには、周期3.2μmの櫛形電極及び平行電極を+X基板の上面に形成し、また、+X基板の裏面にボトム電極としてTa膜を蒸着する。そして、基板の上面と裏面との間に4Vの電圧を印加しながら、パルス幅100msで0.4Vのパルス電圧を+X基板の上面に印加し、分極反転領域を形成する。次に、電極をエッチング除去した後にストライプ状のマスクを形成し、ピロリン酸中でプロトン交換して光導波路を形成する。光導波路は、典型的には幅4μm、深さ2μm、長さ10mmである。光導波路の端面には、無反射コートが施されている。
【0154】
このようにして作製された光波長変換素子18について、基本波波長に対する高調波光出力特性(チューニングカーブ特性)をTi:Al23レーザを用いて測定したところ、高調波光出力特性(チューニングカーブ特性)におけるピーク近傍の平坦部の波長幅は、2分割構造では0.06nm、3分割構造では0.13nmであり、図4(a)及び(b)を参照して説明したシミュレーション結果にほぼ一致する結果が得られた。また、光導波路への入射パワー50mWに対して、2分割構造では2.5mW、3分割構造では1.5mWの高調波光(波長:426nm)の出力が、それぞれが得られた。
【0155】
次に、高調波光出力特性(チューニングカーブ特性)における平坦部の波長幅が0.13nmであるような上記の位相調整部を有する3分割の分極反転型光波長変換素子と、2電極タイプ(活性部とDBR部)の波長可変型DBR半導体レーザとを組み合わせて構成される短波長光源について、図5を参照して説明する。図5は、そのような短波長光源150の概略構成図である。
【0156】
光波長変換素子18と波長可変型DBR半導体レーザ19とは、電子冷却素子20とサーミスタ201とにより一定温度に保持されたモジュール21に固定されている。波長可変型DBR半導体レーザ19から出射されたレーザ光は、コリメートレンズ22とフォーカスレンズ23とにより、光波長変換素子18の上の光導波路に結合される。光波長変換素子18はxカット基板上に形成されているため、半導体レーザ19と同じTEモードの光を伝搬することができるので、半波長板を使用せずに光結合することができる。
【0157】
光波長変換素子18に結合されたレーザ光は、周期的分極反転領域により高調波光に波長変換され、光導波路の出射端面より高調波(SHG)光が出射される。具体的には、波長851nmで出力100mWの波長可変半導体レーザ19に対して、70mWの光が光導波路内に結合した。
【0158】
動作時には、波長可変型DBR半導体レーザ19のDBR部に電流注入を行って、波長可変型DBR半導体レーザ19の発振波長を、光波長変換素子18の位相整合波長852nmに一致させる。具体的には、DBR部への注入電流が50mAの場合に、発振波長は852nmに可変されて、5mWのブルー光(426nm)が得られた。
【0159】
波長可変型DBR半導体レーザの波長可変特性は、一般に不連続である。例えば、本実施形態で用いられた波長可変型DBR半導体レーザ19では、その活性領域の長さが約1mm程度あることから、その発振波長は、0.11nmの間隔でモードホップを繰り返しながら変化する。
【0160】
ここで、DBR部への注入電流と発振波長との関係を、図6に示す。具体的には、DBR部への注入電流が増加するにつれて、波長幅0.01nmに相当する連続部と波長幅0.1nmに相当する不連続部とを繰り返しながら、長波長側にシフトしていく。更に、DBR部への注入電流の増加時と減少時とでは、異なる波長特性(ヒステリシス特性)を示す。
【0161】
次に、図7(a)及び(b)、並びに図8(a)及び(b)を参照して、波長可変型DBR半導体レーザの発振波長と光波長変換素子の基本波光波長に対する高調波光出力特性(チューニングカーブ特性)との関係を説明する。
【0162】
図7(a)及び(b)は従来の光波長変換素子における特性を示す図であり、図8(a)及び(b)は本発明の光波長変換素子における特性を示す図である。各図は、横軸に波長、縦軸に高調波光出力をとって特性を模式的に示している。
【0163】
従来の光波長変換素子では、チューニングカーブ特性のピーク出力近傍での平坦部の幅が0.02nmと小さい。このため、図7(a)のように、波長可変型DBR半導体レーザのある発振モードの波長が分極反転型光波長変換素子の位相整合波長範囲のピークの近傍にある場合には、ピーク出力15mWが得られるが、図7(b)のように両者が大きくずれている場合には、例えば8mWの出力しか得られず、同じ基本波光出力(半導体レーザ出力)に対して常に同じ高調波光出力を安定に得ることは、困難である。安定してピーク出力を得るためには、モジュール全体の温度或いは活性部への注入電流を制御する必要があり、その結果として、制御系の複雑化や、温度制御に伴う応答速度(立ち上がり速度)の遅れが発生して、実用上の大きな問題となる。
【0164】
一方、本実施形態による3分割構造の分極反転型光波長変換素子では、チューニングカーブ特性において、出力レベルがピークレベルから5%だけ低下する平坦部の波長幅が約0.13nmであって、この幅は、組み合わせて使用される波長可変型DBR半導体レーザの縦モード間隔よりも大きい。従って、図8(a)のように波長可変型DBR半導体レーザのある発振モードの波長が分極反転型光波長変換素子の位相整合波長範囲のピークの近傍にある場合だけではなく、図8(b)のように両者が大きくずれている場合においても、ほぼ同じ5mWの高調波光出力が得られる。
【0165】
これにより、本発明によれば、波長可変型DBR半導体レーザの出力が一定になるように定電流駆動(Auto Current Control:ACC駆動)させてDBR部への注入電流を制御するだけで、基本波の波長を光波長変換素子のピーク位相整合波長に固定することが可能となり、高調波光出力の安定化制御を著しく簡素化することができる。また、温度制御による出力制御を必要としないので、高速の立ち上がり制御が可能となる。
【0166】
次に、制御方法について簡単に説明する。
【0167】
図9は、短波長光源24に制御回路26が付加された構成のブロック図であり、図10は、図9の構成に対する制御方法のフローチャート図である。
【0168】
図9において、短波長光源24から出射された高調波光P2ωは、光検出器25により検出され、制御回路26にフィードバックされる。制御回路26は、短波長光源24に含まれる波長可変型DBR半導体レーザの活性部及びDBR部への注入電流(Idbr及びIop)を制御する。
【0169】
まず、波長可変型DBR半導体レーザの活性部への注入電流(すなわち駆動電流)Iopを、一定の値に設定する。次に、DBR部への注入電流Idbrを0〜100mAの範囲でスキャニングする。このとき、同時にブルー光出力(高調波光出力)P2ωを光検出器で検出して、最大のブルー光(高調波光)出力が得られる注入電流値I’dbrが得られたら、その値を制御回路中のメモリ部に記憶する。次に、再びDBR部への注入電流Idbrを0mAに戻し、この後にDBR部への注入電流Idbrを、先に得られたI’dbrの値に設定する。
【0170】
これにより、波長可変型DBR半導体レーザの発振波長を、光波長変換素子の高調波光出力特性(チューニングカーブ特性)における出力ピーク近傍の平坦部に安定に固定することができて、100mWの半導体レーザ出力に対して安定に高調波光出力5mWを得ることができる。なお、DBR部への注入電流を0mAに戻すのは、波長可変型DBR半導体レーザの波長可変時のヒステリシス特性を回避するためである。
【0171】
或いは、波長可変型DBR半導体レーザの出力が一定になるようにACC駆動させる代わりに、波長可変型DBR半導体レーザの後部にフォトダイオードを設置してAPC駆動させることにより、更に高調波光出力を安定化することができる。この点を、以下に更に説明する。
【0172】
一般に、波長可変型DBR半導体レーザは、活性部への注入電流の変化に対して発振波長が0.02nm/10mAで波長シフトする。そのため、従来の短波長光源の構成では、波長可変型DBR半導体レーザをAPC駆動することが不可能である。これに対して、本実施形態のようにチューニングカーブ特性におけるピーク出力近傍の平坦部が0.13nmの波長幅を有する光波長変換素子を用いる場合には、波長可変型DBR半導体レーザをAPC駆動しても、その発振波長は光波長変換素子の出力特性(チューニングカーブ特性)の平坦部に存在する。従って、波長可変型DBR半導体レーザのAPC駆動が可能となり、高調波光出力を安定化できる。
【0173】
更に、波長可変型DBR半導体レーザの発振波長が光波長変換素子の出力特性(チューニングカーブ特性)の平坦部に固定されているときには、高調波光出力に対するAPC駆動も可能である。
【0174】
第2高調波発生時には、位相整合関係が維持されていれば、基本波光出力の2乗の関係で高調波光出力が変化する。本実施形態では、チューニングカーブ特性の平坦部を、ピーク出力からの出力レベルの低下が5%である波長幅と定義したが、波長可変型DBR半導体レーザの発振波長が光波長変換素子のチューニングカーブ特性の平坦部に存在する状態では、基本波光出力の増加に対して高調波光出力が増加する一方で、基本波出力の低下に対しては高調波光出力が低下する。従って、基本波光となるレーザ光を出射する波長可変型DBR半導体レーザの駆動電流(活性領域への注入電流)を制御することによって、高調波光出力が一定値になるように制御できる。これにより、高調波光出力が更に安定化される。
【0175】
高調波光出力をAPC駆動できるのは、光波長変換素子のチューニングカーブ特性の平坦部の波長幅が、半導体レーザの発振波長における縦モード間隔よりも大きいことによるものであり、本発明の大きな効果の一つである。これは、特に光ディスクなどのシステムへの応用時には、サーボシステムなどを安定に動作させることが可能になるために非常に都合がよく、その実用的効果は大きい。
【0176】
本実施形態によれば、短波長光源を構成する分極反転型光波長変換素子が、その基本波波長に対する高調波光出力特性(チューニングカーブ特性)のピーク出力近傍において平坦部を有し、その出力レベルがピーク出力レベルに対して95%以上である部分の波長幅(許容波長幅)が、典型的には0.13nmである。この値は、短波長光源を構成する波長可変型DBR半導体レーザのモードホップ間隔(典型的には0.11nm)より大きいため、DBR部への注入電流量を調整することにより、波長可変型DBR半導体レーザの発振波長を常に上記平坦部に固定することが可能である。従って、あらゆる条件においても安定した高調波光出力を得ることができ、その実用的効果は大きい。
【0177】
上記では、2つの位相調整部を有する3分割構造の分極反転型光波長変換素子を用いたケースを説明してきたが、1つの位相調整部を有する2分割構造の分極反転型光波長変換素子を用いる場合には、チューニングカーブ特性の平坦部において、出力レベルがピーク出力レベルから5%低下する波長幅(許容波長幅)が0.06nmである。しかし、先述のように、活性領域長が約1mmである波長可変型DBR半導体レーザでは、発振縦モードの間隔が約0.11nmあり、発振波長を常に0.06nmの許容波長幅内に固定することは、困難である。
【0178】
そのような場合には、チューニングカーブ特性におけるピーク出力近傍の平坦部の定義を、上記のように「出力レベルがピーク出力レベルから5%低下する部分」とする代わりに、システムの要求条件に応じて適切に変更すればよい。例えば、システムが20%程度の出力変動を許容する場合には、上記の特性の平坦部を、「出力レベルがピーク出力レベルから20%低下する部分」とすればよい。或いは、トレランスを考慮して、出力レベルの低下分をやや小さい値に設定し、例えば「出力レベルがピーク出力レベルから15%低下する部分」と、上記の特性の平坦部を定義してもよい。2分割構造の分極反転型光波長変換素子の高調波光出力特性(チューニングカーブ特性)において、ピーク出力に対して出力レベルが15%程度低下する平坦部の波長幅(許容波長幅)は0.11nm以上あり、先述の発振縦モードの間隔よりも大きいので、出力変動が比較的大きくてもよいシステムに対しては有効に利用することができる。
【0179】
或いは、活性領域の長さを長くすることにより、縦モード間隔を小さくすることができる。例えば、活性領域の長さが1.5mmである波長可変型DBR半導体レーザでは、その縦モード間隔が0.07nmとなり、分極反転型光波長変換素子の出力特性において、ピーク出力に対して出力レベルが5%低下する許容波長幅0.06nmとほぼ同程度となる。これにより、高調波光出力を安定化することができる。
【0180】
(第2の実施形態)
本実施形態では、より安定に高調波光出力を得るための制御回路による制御方法について説明する。
【0181】
前述のように、活性領域の長さが1mmである波長可変型DBR半導体レーザでは、図6に実線で示すように、DBR部への注入電流の増加に伴って、その発振波長が波長幅0.01nmの連続部と波長幅0.1nmの不連続部とを繰り返しながら、長波長側にシフトしていく。また、注入電流の減少時には、図6に点線で示すように、発振波長は同様の繰り返しを含みながら短波長側にシフトし、結果として、図6に示すようなヒステリシス特性を生じる。この場合、例えば図6の中のA点(DBR部への注入電流の増加時及び減少時にモードホップが生じた直後の点)がモードホップを生じ難い安定点となり、電流増加時のB点や電流減少時のC点が、モードホップを生じ易い不安定点となる。上記の点を、図11(a)〜(d)に示すような波長可変型DBR半導体レーザのDBR部への注入電流Idbrに対する高調波光出力の変化を示す図で考察する。
【0182】
図11(a)〜(d)は、注入電流Idbrを変化させたときの高調波光出力の変化を示す。図中の点線部は、モードホップが生じる注入電流Idbrの値を示す。また、隣接する点線の間隔は、注入電流Idbrの可変時に連続的に変化する波長変化分に相当し、具体的には0.01nmである。
【0183】
モードホップ後の注入電流Idbrの値が安定点になるので、注入電流Idbrの上昇時には、図中のA点、C点、E点、及びG点が安定点となり、注入電流Idbrの下降時には、図中のB点、D点、F点、及びH点が安定点となる。
【0184】
安定動作を実現するDBR部への注入電流Idbrの設定は、具体的には以下のように行う。すなわち、DBR部への注入電流Idbrの異なるレベルIN及びIN+1(但し、IN+1>IN)に対して、異なるレベルの高調波光出力PN及びPN+1が得られるものとして、注入電流の増加時及び減少時の各々について、以下の条件を満足する注入電流Idbrを求める。
【0185】
まず、電流上昇時においては、
(1)PN+1−PN>0
(2)PN+1−PNが最大
(3)Idbr=IN+1+ΔI
の3つの条件を満たすように、注入電流Idbrを設定する。このとき、実際には、図11(a)ではA’点、図11(b)ではC’点、図11(c)ではE’点、図11(d)ではG’点に、注入電流Idbrが固定される。
【0186】
一方、電流上昇時においては、
(1)PN+1−PN<0
(2)PN−PN+1が最大
(3)Idbr=IN−ΔI
の3つの条件を満たすように、注入電流Idbrを設定する。このとき、実際には、図11(a)ではB’点、図11(b)ではD’点、図11(c)ではF’点、図11(d)ではH’点に、注入電流Idbrが固定される。
【0187】
ここで、上記の関係に含まれるΔIは、図11(a)〜(d)に示されているように、本来の安定点(例えば点A)と実際に注入電流Idbrが固定される点(例えば点A’)との間の間隔を示す。この間隔ΔIは、確実な動作を実現するために設けられるものであって、モードホップを生じる電流値の半分以下に設定されることが望ましい。例えば、本実施形態では5mA毎にモードホップを繰り返すので、ΔI=2mA程度のときに安定な動作が実現される。
【0188】
安定な動作を可能にする注入電流Idbrの値が求められた後には、ヒステリシスを回避するために、注入電流Idbrを、注入電流上昇時には0mAに、注入電流減少時には100mAに一旦戻し、その後に再び求められた値まで注入電流Idbrの値を増加或いは減少させて、最終的に安定点に固定する。
【0189】
波長可変型DBR半導体レーザと光波長変換素子とが組み合わされて構成されている短波長光源において、光波長変換素子の出力特性におけるピーク出力近傍の平坦部の波長幅(許容波長幅)が波長可変型DBR半導体レーザの縦モード間隔と同程度であるような場合に上記の制御を行うことにより、高調波光出力の安定化が図れて、より実用的な短波長光源が供給される。
【0190】
(第3の実施形態)
本実施形態では、基本波波長に対する高調波光出力特性(チューニングカーブ特性)においてピーク出力近傍が平坦部を有する3分割構造の分極反転型光波長変換素子と、2電極(活性部及びDBR部)を有する波長可変型DBR半導体レーザを組み合わせて構成され、モジュール温度を一定にするための電子冷却素子を必要としない短波長光源について、その構成と動作方法を説明する。
【0191】
MgドープLiNbO3基板の上に形成された分極反転型光波長変換素子と長さ約1mmのAlGaAs系活性領域を有する波長可変型DBR半導体レーザとを組み合わせて構成される短波長光源は、一般に先に図17に示したような動作特性の温度依存性を示し、モジュール温度の上昇に伴って、波長可変型DBR半導体レーザの発振波長と分極反転型光波長変換素子の位相整合波長とが、何れも長波長側にシフトする。従って、一般には、電子冷却素子によりモジュール温度を一定に保持していない場合には、環境温度変化に伴って位相整合波長と発振波長との間にずれが発生して、波長変換により得られる高調波光出力も大きく変動する。
【0192】
これに対して本実施形態では、高調波光出力を検出し、波長可変型DBR半導体レーザの発振波長が光波長変換素子の高調波光出力特性(チューニングカーブ特性)における平坦部に固定されるように、波長可変型DBR半導体レーザの発振波長を制御して、高調波光出力を安定化する。
【0193】
図12Aには、本実施形態における電子冷却素子を有しない短波長光源300の概略構成図を示す。
【0194】
光波長変換素子28と波長可変型DBR半導体レーザ27とは、モジュール29に固定されている。モジュール29には、更に温度検出用のサーミスタ37が設置されている。光波長変換素子28は、3分割構造の分極反転領域と光導波路とを有しており、AlGaAs系(発振波長:851nm及び出力100mW)の波長可変型DBR半導体レーザ27から出射されたレーザ光は、コリメートレンズ30とフォーカスレンズ31とにより、基本波光として光波長変換素子28の上の光導波路に結合される。光波長変換素子28はxカット基板上に形成されているため、半導体レーザ27と同じTEモードの光を伝搬することができるので、半波長板を使用せずに光結合することができる。
【0195】
光波長変換素子28に結合されたレーザ光(基本波光)は、周期的分極反転領域により高調波光に波長変換されて、光導波路の出射端面から出射される。
【0196】
出射された高調波光P2ωは、ビームスプリッタ33で反射して光検出器35に導かれる。光検出器35からは、高調波光成分P2ωの検出レベルを示す信号が、制御回路36にフィードバックされる。制御回路36は、この光検出器35からの信号に基づいて、波長可変型DBR半導体レーザ27の発振波長を制御する目的で、波長可変型DBR半導体レーザ27の活性部及びDBR部への注入電流(Iop及びIdbr)を制御する。
【0197】
上記のような構成を有する本実施形態の短波長光源200では、具体的には、波長851nmで出力100mWの波長可変半導体レーザ28に対して、70mWの光が光導波路内に結合した。
【0198】
動作時には、波長可変型DBR半導体レーザ27のDBR部に電流注入を行って、波長可変型DBR半導体レーザ27の発振波長を、光波長変換素子28の位相整合波長852nmに一致させる。具体的には、DBR部への注入電流が50mAの場合に、波長可変型DBR半導体レーザ27の発振波長は852nmに可変されて、光波長変換素子28の高調波光出力特性(チューニングカーブ特性)の平坦部に固定され、5mWのブルー光(426nm)が得られた。
【0199】
図13は、本実施形態の短波長光源300の構成について、サーミスタ29にて温度をモニタしながら高調波光出力を安定化する制御方法のフローチャートを示す図である。
【0200】
まず、第2の実施形態と同様の制御方法により、波長可変型DBR半導体レーザ27の発振波長を、光波長変換素子28の高調波光出力特性(チューニングカーブ特性)の平坦部(出力レベルがピーク出力レベルから5%だけ低下する波長幅=許容波長幅)に固定する。その後に環境温度変化によって発振波長と位相整合波長との関係がずれると、高調波光出力が低下する。このとき、環境温度(モジュール温度)の変化(例えばTからT’への変化)を検出すれば、DBR部への注入電流を増加させるべきか或いは減少させるべきかが判定できる。例えば、温度が上昇した場合(すなわち、T<T’)には、波長可変型DBR半導体レーザの発振波長が長波長側にシフトし、発振波長が平坦部の許容波長幅から外れた時点で高調波光出力が低下する。そこで、DBR部の温度を低下させるようにDBR部への注入電流を減少することにより、発振波長を再び平坦部に位置するように制御することが可能となる。一方、温度が低下した場合(すなわち、T>T’)には、DBR部の温度を増加させるようにDBR部への注入電流を増加させればよい。
【0201】
光波長変換素子の高調波光出力特性における平坦部の波長幅が0.13nmである場合には、波長可変型DBR半導体レーザの発振波長が平坦部に固定されている温度範囲は±5℃程度である。このような関係を予測するとともに、更に環境温度を検出することにより、発振波長を出力特性の平坦部に固定することができる。例えば、環境温度が増加した場合には発振波長が位相整合波長よりも大きくなるが、DBR部への注入電流Idbrを減少させると、再び特性の平坦部に発振波長を固定することができる。
【0202】
これにより、0℃〜60℃の環境温度範囲において、出力変動±10%以内で高調波光出力5mWを得ることができた。なお、本実施形態では、図6のモードホップ間隔に相当する注入電流Idbrの値が5mAであるので、図11(a)〜(d)を参照して先に説明した△Iに相当する△I'を、5mAに設定している。
【0203】
或いは、温度モニタが設けられていない場合においても、第2の実施形態と同様の制御方法を高調波光出力の低下時に繰り返すことにより、高調波光出力の安定化が同様に実現できる。この場合には、図13に示すフローチャートに従った制御方法と比較して、高調波光出力の低下時に制御によって再び特性の平坦部に発振波長を固定するまでに必要とする時間が長くなるが、制御回路の簡素化が図れる。従って、この制御方法は、出力変動時の調整時間を比較的長くしても問題が生じないようなシステムに含まれる装置に対して、適している。
【0204】
上記では、2つの位相調整部を有する3分割構造の分極反転型光波長変換素子を用いたケースを説明してきたが、1つの位相調整部を有する2分割構造の分極反転型光波長変換素子を用いても、光波長変換素子の高調波光出力特性(チューニングカーブ特性)のピーク出力近傍の平坦部を「出力レベルがピーク出力レベルから20%低下する部分」と考えた上で図13に示した制御方法を適用することによって、上記で説明したものと同様に高調波光出力の安定化を図ることができる。この制御方法は、出力変動が比較的大きくてもよいシステムに対して、有効に利用することができる。
【0205】
或いは、活性領域の長さを長くすることにより、波長可変型DBR半導体レーザの発振縦モード間隔を小さくすることができる。例えば、活性領域の長さが1.5mmである波長可変型DBR半導体レーザでは、その縦モード間隔が0.07nmとなり、分極反転型光波長変換素子の出力特性において、ピーク出力に対して出力レベルが5%低下する許容波長幅0.06nmとほぼ同程度となる。これにより、高調波光出力を安定化することができる。
【0206】
本実施形態では、波長可変型DBR半導体レーザの出力が一定になるようにACC駆動させているが、その代わりに、波長可変型DBR半導体レーザの後部にフォトダイオードを設置してAPC駆動させることにより、更に高調波光出力を安定化することができる。すなわち、波長可変型DBR半導体レーザの発振波長が光波長変換素子の高調波光出力特性の平坦部に固定されて高調波光出力が安定化されているときに、更に高調波光出力を安定化するために、ある一定値に収束するように半導体レーザの駆動電流をAPC駆動すれば、高調波光出力のより一層の安定化が達成される。第2高調波の発生では、基本波光出力変動の2乗の関係で高調波光出力を制御することができ、基本波光出力が変動しても発振波長は上記特性の平坦部に存在するため、高調波光出力が一定になるように基本波光出力を制御できる。これにより、高調波光出力が更に安定化される。
【0207】
高調波光出力をAPC駆動できるのは、光波長変換素子のチューニングカーブ特性の平坦部の波長幅が、半導体レーザの発振波長における縦モード間隔よりも大きいことによるものであり、本発明の大きな効果の一つである。これは、特に光ディスクなどのシステムへの応用時には、サーボシステムなどを安定に動作させることが可能になるために非常に都合がよく、その実用的効果は大きい。
【0208】
(第4の実施形態)
上記で説明した本発明の第1及び第2の実施形態では、波長可変型DBR半導体レーザ及び光波長変換素子が搭載されているモジュールの温度が電子冷却素子により一定に保持されているので、半導体レーザをACC駆動する場合でも、基本波である半導体レーザ出力はほぼ一定に保持される。これに対して、本発明の第3の実施形態のように、モジュール温度の制御が行われずに環境温度の変化に伴って変化する場合には、半導体レーザ出力も環境温度の変化に伴って大きく変化する。このような場合に半導体レーザをACC駆動すると、高温では半導体レーザ出力が低下する一方で、低温ではその出力が向上する。更に、温度変化に伴ってモジュールの形状が変化することの影響で、半導体レーザから光波長変換素子の光導波路への光結合効率が変化する。
【0209】
本実施形態では、上記のようなモジュール温度の制御を行わない場合における課題を解決するために、光波長変換素子において変換されず光導波路から出射される基本波光成分を光検出器で検出して、その検出レベルが一定になるように、波長可変型DBR半導体レーザをAPC駆動させる。更に、これにあわせて、波長可変型DBR半導体レーザのDBR部への注入電流を制御することによって、その発振波長を分極反転型光波長変換素子の位相整合波長内に固定して、高調波光出力を安定化させる。
【0210】
本実施形態で用いられる波長可変型DBR半導体レーザは、活性部への注入電流の変化に対して、発振波長が0.02nm/10mAでシフトする。そのため、従来はAPC駆動することが不可能であった。これに対して、本実施形態では、チューニングカーブ特性におけるピーク出力近傍の平坦部が0.13nmの波長幅を有する光波長変換素子を用いる。この場合には、波長可変型DBR半導体レーザをAPC駆動しても、その発振波長は光波長変換素子の出力特性(チューニングカーブ特性)の平坦部に存在する。従って、波長可変型DBR半導体レーザのAPC駆動が可能となり、高調波光出力を安定化できる。
【0211】
更に、波長可変型DBR半導体レーザの発振波長が光波長変換素子の高調波光出力特性の平坦部に固定されて高調波光出力が安定化されているときに、更に高調波光出力を安定化するために、ある一定値に収束するように半導体レーザの駆動電流をAPC駆動すれば、高調波光出力のより一層の安定化が達成される。第2高調波の発生では、基本波光出力変動の2乗の関係で高調波光出力を制御することができ、基本波光出力が変動しても発振波長は上記特性の平坦部に存在するため、高調波光出力が一定になるように基本波光出力を制御できる。これにより、高調波光出力が更に安定化される。
【0212】
高調波光出力をAPC駆動できるのは、光波長変換素子のチューニングカーブ特性の平坦部の波長幅が、半導体レーザの発振波長における縦モード間隔よりも大きいことによるものであり、本発明の大きな効果の一つである。これは、特に光ディスクなどのシステムへの応用時には、サーボシステムなどを安定に動作させることが可能になるために非常に都合がよく、その実用的効果は大きい。
【0213】
図12Bには、本実施形態における短波長光源400の概略構成図を示す。
【0214】
光波長変換素子28と波長可変型DBR半導体レーザ27とは、モジュール29に固定されている。光波長変換素子28は、3分割構造の分極反転領域と光導波路とを有しており、AlGaAs系(発振波長:851nm及び出力100mW)の波長可変型DBR半導体レーザ27から出射されたレーザ光は、コリメートレンズ30とフォーカスレンズ31とにより、基本波光として光波長変換素子28の上の光導波路に結合される。光波長変換素子28はxカット基板上に形成されているため、半導体レーザ27と同じTEモードの光を伝搬することができるので、半波長板を使用せずに光結合することができる。
【0215】
光波長変換素子28に結合されたレーザ光(基本波光)は、周期的分極反転領域により高調波光に波長変換される。変換された高調波(SHG)光P2ωは、光導波路の出射端面から、変換されなかった基本波光成分Pωと共に出射される。
【0216】
出射された基本波光Pω及び高調波光P2ωは、誘電体多層膜から構成される波長選択ミラー32によって、分離される。これにより、基本波光成分Pωは光検出器34に導かれ、光検出器34からは、基本波光成分Pωの検出レベルを示す信号が、制御回路36にフィードバックされる。一方、高調波光成分P2ωは、ビームスプリッタ33で反射して光検出器35に導かれる。光検出器35からは、高調波光成分P2ωの検出レベルを示す信号が、制御回路36にフィードバックされる。制御回路36は、これらの光検出器34及び35からの信号に基づいて、波長可変型DBR半導体レーザ27の発振波長を制御する目的で、波長可変型DBR半導体レーザ27の活性部及びDBR部への注入電流(Iop及びIdbr)を制御する。
【0217】
但し、本実施形態では、上記の制御にあたってサーミスタ37からの信号は使用しない。
【0218】
図14は、本実施形態の短波長光源400の構成について、高調波光出力を安定化する制御方法のフローチャートを、波長可変型DBR半導体レーザの出力(基本波光の出力)を50mWに設定した場合を例にとって示す図である。
【0219】
まず、光波長変換素子の光導波路に結合する波長可変型DBR半導体レーザの出力を一定にするために、光導波路からの基本波光出力Pωを検出する光検出器34での検出信号が一定レベルに維持されるように、波長可変型DBR半導体レーザの活性部への注入電流(すなわち駆動電流)Iopを制御する。この制御は、一般にミリ秒オーダで行われる。
【0220】
次に、波長可変型DBR半導体レーザの発振波長を、光波長変換素子の高調波光出力特性(チューニングカーブ特性)における出力ピーク近傍の平坦部に固定するために、DBR部への注入電流Idbrを制御する。具体的には、注入電流Idbrを0〜100mAの範囲でスキャニングする。このとき、同時にブルー光(高調波光)出力P2ωを光検出器35で検出して、最大のブルー光(高調波光)出力が得られる注入電流値I’dbrが得られたら、その値を制御回路中のメモリ部に記憶する。次に、再びDBR部への注入電流Idbrを0mAに戻し、この後にDBR部への注入電流Idbrを、先に得られたI’dbrの値に設定する。
【0221】
これにより、波長可変型DBR半導体レーザの発振波長を、光波長変換素子の高調波光出力特性(チューニングカーブ特性)における出力ピーク近傍の平坦部に安定に固定することができて、50mWの半導体レーザ出力に対して安定に高調波光出力1.5mWを得ることができる。なお、DBR部への注入電流を0mAに戻すのは、波長可変型DBR半導体レーザの波長可変時のヒステリシス特性を回避するためである。
【0222】
本実施形態の短波長光源400で使用している波長可変型DBR半導体レーザ27では、その発振縦モードの間隔は典型的には0.11nmである。これに対して、光波長変換素子28の高調波光出力特性(チューニングカーブ特性)の平坦部の波長幅は、典型的には0.13nmである。この点を考慮して、波長可変型DBR半導体レーザ27の発振波長を、光波長変換素子28の高調波光出力特性(チューニングカーブ特性)における出力ピーク近傍の平坦部に固定するためのDBR部への注入電流Idbrの制御にあたっては、基本波光の検出周期よりも長い周期で(具体的には数秒毎に)高調波光出力を検出して、高調波光出力のレベルがピーク出力よりも3%低下したときに、実施する。
【0223】
以上のような制御方法によって、0〜60℃までの温度範囲に対して、安定して1.5mWのブルー光(高調波光)出力を得ることができる。
【0224】
本実施形態のように、光波長変換素子28の光導波路に結合する波長可変型DBR半導体レーザ27からの出力光(基本波光)を一定に制御することにより、環境温度変化に伴って半導体レーザ27の出力光のレベルやその光導波路への結合効率が変化しても、光波長変換素子28から得られる高調波光出力を一定に保持することが可能であり、その実用的効果は大きい。
【0225】
本実施形態において、電子冷却素子などを使用したモジュール29の温度制御を行わない短波長光源400にて光波長変換素子28からの高調波光出力を安定化できるのは、光波長変換素子28として、その高調波光出力特性(チューニングカーブ特性)のピーク近傍の平坦部の波長幅が波長可変型DBR半導体レーザ27の発振縦モードの間隔よりも大きい光波長変換素子を使用しているためであり、本発明の大きな効果の一つである。
【0226】
更に、波長可変型DBR半導体レーザ27の発振波長が光波長変換素子28の出力特性(チューニングカーブ特性)の平坦部に固定されているときには、高調波光出力に対するAPC駆動も可能である。
【0227】
図14のフローチャートで(I)として示している箇所では、高調波光出力P2ωを検出している。第2高調波発生時には、基本波光出力の2乗の関係で高調波光出力を制御することが可能で、基本波光出力が変動しても発振波長は上記特性の平坦部に存在するため、高調波光出力が一定になるように基本波光出力を制御できる。これにより、高調波光出力が更に安定化される。高調波光出力をAPC駆動できることは、特に光ディスクなどのシステムへの応用時に、サーボシステムなどを安定に動作させることが可能になるために非常に都合がよく、その実用的効果は大きい。
【0228】
なお、本実施形態の上記の説明では、波長可変型DBR半導体レーザ27の発振波長を光波長変換素子28の高調波光出力特性(チューニングカーブ特性)における出力ピーク近傍の平坦部に固定するためのDBR部への注入電流Idbrの制御を、高調波光出力のレベルがピーク出力よりも3%低下したときに実施しているが、このしきいレベルはシステム上の条件を考慮して設定すればよい、例えば、10%程度までの出力変動が許されるシステムにおいては、高調波光出力のレベルがピーク出力よりも10%低下したときに上記の制御を実施するように設定しても、上記で説明したものと同様の出力安定化が実施できる。
【0229】
また、DBR部への注入電流Idbrの制御を、第2の実施形態にて説明した制御方法を用いて実施することによって、波長可変型DBR半導体レーザ28の発振波長を光波長変換素子28の高調波光出力特性(チューニングカーブ特性)の平坦部に固定しても、上記と同様の出力安定化が実現できる。
【0230】
以上の各実施形態では、周期的分極反転領域と光導波路とを有する分極反転型光波長変換素子と波長可変型DBR半導体レーザとを組み合わせて構成されている短波長光源を例にとって、本発明を説明してきている。分極反転型光波長変換素子では、半導体プロセスによって、位相調整部を精度良く設計且つ作製できる。また、光導波路内の素子長方向において、均一な位相整合条件を容易に維持できる。これらより、高調波光出力特性におけるチューニングカーブのピーク出力近傍に平坦部を有する本発明の光波長変換素子を、容易に精度良く作製することができる。また、LiNbO3やLiTaO3などの誘電体結晶(これらは、LiTaxNb1-x3(0≦x≦1)と総称的に表記され得る)は、直径が2インチや3インチである結晶がCZ法により容易に作製できることから、上記の半導体プロセスによって本発明の光波長変換素子を形成するために適した材料である。
【0231】
また、以上の各実施形態では、光導波路型擬似位相整合方式の分極反転型光波長変換素子を例にとって本発明を説明してきている。しかしながら、更に高出力の高調波光出力光を得る目的で、出力がワット級である半導体レーザの出力を基本波として光導波路型光波長変換素子に結合させると、結合される光のパワー密度が大きすぎるために素子の光学的損傷が生じる可能性がある。これに対して、バルク型擬似位相整合方式の分極反転型光波長変換素子を使用すれば、上記のような場合でもパワー密度を低減することができて、ワット級の高調波光出力の発生を実現できる。バルク型擬似位相整合方式の分極反転型光波長変換素子においても、上記の各実施形態での設計と同様に、高調波光出力特性(チューニングカーブ特性)におけるピーク出力近傍に平坦部を有するような光波長変換素子を設計・作製することが可能であり、上記の各実施形態で説明したような制御を行うことにより、高調波光出力の安定化が実現できる。
【0232】
また、屈折率分散を有する膜を非線形光学結晶の間に形成することで位相調整部を形成しても、高調波光出力特性(チューニングカーブ特性)のピーク出力近傍に平坦部を有する光波長変換素子を実現することができる。この場合には、KTP結晶やKNbO3結晶など屈折率分散を利用して位相整合を実現する結晶を用いて光波長変換素子を作製しても、上記で説明した本発明の効果が得られる。これより、波長可変半導体レーザの出力を基本波光として利用する、安定な短波長光源を実現できる。
【0233】
(第5の実施形態)
第1〜第4の実施形態で説明したような、高調波出力が一定になるようにAPC駆動される短波長光源(青色光源)は、光源が変調動作される場合においても、上記と同様の効果を奏する。本実施形態では、この点を、基本波波長に対する高調波出力特性がピークフラットな特性を示す3分割構造の分極反転型光波長変換素子と、2電極型(活性部及びDBR部を有する)の波長可変型DBR半導体レーザとから構成される短波長光源を例にとって、以下に説明する。
【0234】
図18には、図12Bに示した本実施形態の短波長光源400の構成について、上記の手法に従って高調波光出力を安定化する制御方法のフローチャートを、波長可変型DBR半導体レーザの出力(基本波光の出力)を100mWに設定した場合を例にとって示す。
【0235】
まず、光波長変換素子の光導波路に結合する波長可変型DBR半導体レーザの出力を一定にするために、光導波路からの基本波光出力Pωを検出する光検出器34での検出信号が一定レベルに維持されるように、波長可変型DBR半導体レーザの活性部への注入電流(すなわち駆動電流)Iopを制御する(第1の制御)。この制御は、一般にミリ秒オーダで行われて、光導波路からの基本波光出力Pωが一定になるように調整される。これによって、基本波出力に対するAPC駆動を行う。
【0236】
次に、波長可変型DBR半導体レーザの発振波長を、光波長変換素子の高調波光出力特性(チューニングカーブ特性)における出力ピーク近傍の平坦部に固定するために、DBR部への注入電流Idbrを制御する(第2の制御)。具体的には、注入電流Idbrを0〜100mAの範囲でスキャニングする。このとき、同時にブルー光(高調波光)出力P2ωを光検出器35で検出して、最大のブルー光(高調波光)出力が得られる注入電流値I’dbrが得られたら、その値を制御回路中のメモリ部に記憶する。次に、再びDBR部への注入電流Idbrを0mAに戻し、この後にDBR部への注入電流Idbrを、先に得られたI’dbrの値に設定する。
【0237】
これにより、波長可変型DBR半導体レーザの発振波長を、光波長変換素子の高調波光出力特性(チューニングカーブ特性)における出力ピーク近傍の平坦部に安定に固定することができて、例えば、100mWの半導体レーザ出力に対して、安定に高調波光ピーク出力14mW(duty%=33%、平均光出力4.7mW)を得ることができる。なお、DBR部への注入電流を0mAに戻すのは、波長可変型DBR半導体レーザの波長可変時のヒステリシス特性を回避するためである。なお、本実施形態の短波長光源400で使用している波長可変型DBR半導体レーザ27では、その発振縦モードの間隔は典型的には0.11nmである。
【0238】
次に、ブルー光(高調波光)出力P2ωが所望の設定値P2ω(0)になるように、駆動電流Iopを再び調整する(第3の制御)。先に述べた第1の制御では、基本波光出力Pωを光検出器34で検出したが、この第3の制御では、ブルー光(高調波光)出力P2ωを光検出器34で検出し、フィードバックして出力制御を行う。なお、図18のフローチャートで(II)として示している箇所では、高調波光出力の検出値を設定値P2ω(0)と比較している。設定値P2ω(0)としては、例えば、高調波光ピーク出力が15mW(duty%=33%、平均光出力5mW)になるように、APC制御を行う。
【0239】
上記の制御方法によっても、光波長変換素子28の光導波路に結合する波長可変型DBR半導体レーザ27の発振波長が、光波長変換素子28の波長整合特性カーブにおけるピーク近傍の平坦部に固定されているので、動作電流の増加に対してブルー光(高調波光)出力も増加し、APC動作が実現される。以上のような制御の結果、ブルー光(高調波光)の平均出力を5mWに制御し、そのピーク出力を15mWに安定して制御できる。
【0240】
このように、基本波波長に対する高調波出力特性がピークフラットな特性を示す光波長変換素子と波長可変型DBR半導体レーザとから構成される短波長光源は、変調動作時であってもブルー光(高調波光)のピーク出力を安定化させることが可能であり、その実用的効果は大きい。
【0241】
なお、本実施形態では、第3の制御として、ブルー光(高調波光)出力に対するAPC駆動を行っているが、ピーク出力を高精度に制御する必要がない場合には、第1及び第2の制御によってピーク出力を安定化させても良い。但し、この場合には、基本波光出力がどの程度のレベルであるかを、あらかじめ認識しておく必要がある。
【0242】
上記で説明したように変調ピーク光出力が制御された短波長光源は、光ディスクドライブやフォトプリンタなどの光情報処理装置に搭載されると、特に大きな効果を発揮する。
【0243】
図19には、本実施形態の短波長光源を利用して構成された、相変化型光ディスクを用いた情報記録再生システムの構成を、模式的に示す。
【0244】
図19の構成では、本実施形態の特徴を有する短波長光源45から出た光は、レンズ46によってコリメートされ、偏光ビームスプリッタ47及びλ/4板57を透過後に、対物レンズ49により、光ディスク50の上に集光される。光ディスク50からの反射光は、対物レンズ49でコリメートされ、更にλ/4板57を透過後に、偏光ビームスプリッタ47反射されて光検出器48に導かれて、ここで信号が読みとられる。
【0245】
相変化型光ディスクでは、記録層を構成する材料のアモルファス状態と結晶状態との屈折率の差によって、情報(マーク)を記録する。このとき、記録マークは、結晶状態の記録層をレーザで照射して、照射部分の温度を融点以上に上昇させ、その後に急冷することによってアモルファス状態に変化させて、形成される。また、記録マークの消去は、レーザ照射によって、アモルファス部が結晶状態に変化する温度(融点以下)まで記録層の温度を上昇させて、行われる。
【0246】
このように、相変化型光ディスクでは記録層の熱現象によって記録マークの形成が行われるので、均一な記録マークを形成するためには、記録時及び消去時に照射されるレーザ出力を高精度に制御する必要がある。図18に示すフローチャートに従ってブルー光ピーク出力が制御された本実施形態の短波長光源を用いれば、均一な記録マークの形成及び消去が可能になって、安定した記録再生システムを実現することができる。
【0247】
これに対して、高調波光出力特性がピークフラットな特性を有さない光波長変換素子を用いて構成される短波長光源では、変調時のピーク出力を制御することが困難であり、20dB以上の信号強度でマーク消去を行うことができないが、本実施形態の短波長光源を使用すれば、マーク長0.3μmの単一信号記録において、約30dBの消去率、及び50dB以上の信号強度での均一なマーク形成を、実現できる。
【0248】
一方、図20には、本実施形態の短波長光源を利用して構成された、フォトプリンタシステムの構成を、模式的に示す。
【0249】
この構成では、赤色レーザ光源51、緑色コヒーレント光源52、及び本実施形態に従って変調時の出力が安定化されたブルー光源(短波長光源)53が、光源として使用されている。各光源51〜53から出射された光は、ポリゴンミラー54によって、その方向が制御され、更にFθレンズ55によってカラーペーパ56の上に集光される。これによって、デジタル画像データが、カラーペーパ56の上に描かれる。このとき、各光源51〜53の出力は、高精度に制御される必要があるが、図18に示すフローチャートに従ってブルー光ピーク出力が安定化された本実施形態の短波長光源をブルー光源53として用いれば、高精細の画像をカラーペーパ56の上に描くことができる。
【0250】
なお、以上の本実施形態の説明では、光源変調時に得られる効果を説明しているが、第1〜第4の実施形態で説明したように連続光において出力安定化制御が行われている短波長光源は、光源を変調する必要がない用途、例えば、光ディスクの再生や外部変調器を用いて構成されているフォトプリンタにおいて、大きな実用的効果を発揮する。
【0251】
上記の第1〜第5の実施形態では、波長可変型半導体レーザとして、2電極を有する波長可変型DBR半導体レーザを例にとって説明しているが、これに代えて、ある特定波長の光を外部共振器ミラーから帰還させるように構成されている波長可変型半導体レーザの出射光を基本波光として用いて、短波長光源を構成する場合においても、上記と同様の効果を得ることができる。その場合には、反射型グレーティング、狭帯域バンドパスフィルタ、或いはエタロンなどが、波長選択性光学素子として、用いられる。
【0252】
更に本発明は、非線形光学効果を利用した光波長変換素子における出力の安定化を目的とし、高効率特性を維持したまま位相整合波長を安定に可変する素子構造を提案するものである。ポイントは等しい位相整合条件を有する非線形光学結晶間に位相調整部を設け、位相調整部の屈折率或いは長さを可変することで位相整合波長を安定に変化させる機能を持たせた点である。実施の形態を用いてそれぞれ説明する。
【0253】
(第6の実施形態)
まず最初に、波長変換素子における位相整合波長可変の原理について、説明する。
【0254】
図21(a)に、本発明の光波長変換素子の構成を示す。図21(b)は、本発明の光波長変換素子の位相整合特性を表している。
【0255】
本発明の光波長変換素子は、位相整合条件の等しい2つの結晶1001及び1002とこれらの2つの結晶1001及び1002の間に設けた位相調整部1003とから、構成される。非線形光学結晶1001の側から入射された基本波P1は、非線形光学結晶1001、位相調整部1003、及び非線形光学結晶1002の順に通過し、この間に高調波P2に変換される。
【0256】
ここで、基本波P1と高調波P2との波長をそれぞれλ及びλ/2とし、第2高調波P2の発生を例にとって考える。
【0257】
位相整合条件が成立している場合、非線形光学結晶1001及び1002の内部において、基本波及び高調波が感じる屈折率Nw及びN2wは等しい。位相調整部1003において、同様にNw=N2wの関係が満足された場合は、位相調整部1003の存在に関係なく、結晶1001で発生した基本波と高調波の関係が維持されたまま、非線形光学結晶1002内でも位相整合し、位相整合波長の可変は発生しない。ところが、位相調整部1003に非線形光学結晶1001及び1002とは異なる分散関係を有する材料を設けると、非線形光学結晶1002で発生する基本波と高調波の位相関係は、非線形光学結晶1001におけるものとは異なり、干渉効果を生じる。
【0258】
このときの位相整合特性の計算結果を、図22に示す。位相調整部1003における位相関係Ph=λ/2(N2w−Nw)の変化量をΔPhとしたとき、ΔPhの変化とともに、図22に示されるように、位相整合特性(位相整合カーブ)のピーク値が変化(シフト)する。ΔPh/Phの変化が約0.5で、変換効率は約半分に低下する。
【0259】
これより、本願発明者らは、位相調整部1003のΔPhを可変することで、変換効率は低下するが、位相整合波長を変化させることができることを、新たに見出した。
【0260】
なお、非線形光学結晶として周期状分極反転構造を有する、擬似位相整合型の光波長変換素子を用いることも可能である。このような場合には、位相整合条件の等しい条件は、分極反転構造の周期を等しくすることで達成できる。
【0261】
次に、位相整合波長の可変範囲の拡大について検討した。
【0262】
前述したように、位相調整部1003のΔPhを可変することで位相整合波長を変化させることができるが、得られる位相整合波長の変化量が限られている。これに関して、変化量の拡大について検討した結果、光波長変換素子の波長可変範囲は、位相調整部1003の数を増やすことで拡大可能なことを見出した。この点を、LiNbO3結晶に周期状分極反転構造を形成した光波長変換素子を例にとって、説明する。
【0263】
図23に、本発明の光波長変換素子の構成図を示す。
【0264】
この素子では、LiNbO3結晶に周期状の分極反転構造を形成した結晶1001及び1002の間に、位相調整部として液晶1006を設けている。液晶1006に電圧を印加することで、その屈折率を可変することができる。分極反転構造の周期は約3.2μmで、位相整合波長の中心は約852.5nmである。液晶1006の屈折率を変化させることにより、ΔPhが生じて、位相整合波長を可変することができる。
【0265】
更に、非線形光学結晶の分割数を増やして位相調整部を複数設けて、位相整合波長可変の範囲と結晶の分割数との関係について、検討した。図24は、位相調整部を複数設けた場合の、位相整合波長と変換効率との関係である。
【0266】
これより、分割数を増加させると、波長可変な位相整合波長範囲が拡大する。素子長が10mmの場合、波長可変な範囲(半値全幅)は、2分割構造で約0.14nm、3分割構造で約0.2nm、5分割構造で約0.34nmとなり、結晶の分割数に比例して増大する。
【0267】
LiNbO3結晶の場合、波長可変範囲は、以上の結果より容易に決定できる。すなわち、LiNbO3結晶を用いた素子長10mmの素子において、波長可変範囲として半値全幅でΔλだけ必要な場合、分割数をΔλ/0.07nmとすればよい。また、素子長がLの場合には、分割数は(Δλ/0.07nm)×(10mm/L)で概算できる。このように、分割数を増加させることで、容易に波長可変範囲が増大できる。
【0268】
また、MgOをドープしたLiNbO3結晶の場合も、ほぼ同様の結果が得られた。
【0269】
次に、複数の結晶のそれぞれの長さについて検討した。
【0270】
2分割構造において、位相調整部の両端の結晶長の長さが異なる場合の波長可変特性について検討したところ、位相調整部に位置は、あまり波長可変特性に影響を与えないことが分かった。一方、位相調整部の数が増大すると、各結晶長の長さの差が、位相整合波長の可変特性に影響を与えることが分かった。具体的には、3分割以上の構造においては、各結晶の長さのバラツキが増大すると、位相整合波長の可変範囲が縮小する。例えば、各結晶の長さのバラツキが10%以内ならば、位相整合波長の可変特性に影響を与えないが、40%以上のバラツキがあると、位相整合波長の可変範囲が10%程度減少することが分かった。更にバラツキが増大すると、波長可変範囲は、より小さくなる。
【0271】
これより、分割された各結晶の長さのバラツキは、40%以内に抑制することが望ましい。更に高効率な特性を達成するには、上記のバラツキを10%以内に抑制することが、より好ましい。
【0272】
また、位相整合波長可変な波長変換素子の構成として、微動ステージを用いた構成も可能である。
【0273】
ピエゾ素子を用いた微動台を用いて結晶間距離を精密に制御したところ、位相整合波長を精密にコントロールできた。このときに重要な点は、結晶間に、分散特性を有する材料を挿入することである。気体中では基本波と高調波との間の分散の差がほとんどないため、位相調整部の距離を変えても、ΔPhが発生しない。これに対して、マッチングオイル等の液体や可塑性の材料を用いれば、ΔPhを生じさせて位相整合波長を可変することができる。
【0274】
分割数を増加させたときのΔPhと変換効率との関係を求めると、分割数に関係なく、ΔPh/Phの値が約0.5程度になると、変換効率は約50%まで低下する。これより、位相調整部によるΔPhの値の可変範囲は、ΔPh/Phの値が約0.5程度までの範囲になるようにすることが好ましい。位相調整部における可変範囲がこの値を越えると、変換効率の低下が激しくなる。
【0275】
このように、位相調整部の可変範囲を増大させることは、変換効率の低下を招くので、好ましくない。従って、波長可変範囲の増大は、結晶の分割数を増やして位相調整部の数を多くすることによって達成することが好ましい。
【0276】
位相整合波長可変な波長変換素子は、第2高調波発生のほか、パラメトリック発生等に応用可能である。周期状分極反転構造によりパラメトリック発生を行う波長変換素子は波長可変光源として応用されているが、従来は、発生波長を可変するために異なる分極反転周期構造の素子が必要であり、連続的な波長可変を行うことが難しい。第2高調波は、パラメトリック発生の一種であり、同様の素子構造で位相整合波長を可変できる。本発明をパラメトリック発生に利用すると、連続波長可変の素子が構成できるため、有用である。更に、本発明は、パラメトリック発生の応用として、和周波発生や差周波発生などの波長変換にも、同様に適用可能である。
【0277】
なお、本実施形態では、光波長変換が、基本波のシングルパス(単一通過)の場合について説明したが、共振器内に光波長変換素子を挿入して高効率化を図る場合に、より効果的である。
【0278】
例えば、2つの共振器ミラーにより構成された共振器内に、非線形光学結晶或いは周期状の分極反転構造を有する非線形光学結晶を挿入し、共振器内で基本波を共振させることで共振器内の基本波のパワーを増大させて、変換効率の向上が図れる。しかし、この構成において、基本波の共振条件と位相整合条件とを同時に満足するように、共振器長、結晶の長さ、結晶の位置、屈折率などを制御することは難しい。これに対して、本実施形態の構造を用いた光波長変換素子を共振器内に挿入すれば、これらの問題が解決できる。具体的には、基本波の共振条件を満足させるように共振器のミラー間隔を調整した状態で、位相整合条件が満たされるように位相調整部を調整することで、高効率の波長変換が容易に実現できる。
【0279】
更に、共振器内で基本波と高調波とを同時に共振させるダブル共振構造も、容易に実現できる。ダブル共振構造では、共振器内で基本波及び高調波が同時に共振条件を満足し、且つ位相整合条件も達成しなければならない。このため、非常に厳しい屈折率、共振器長、波長安定性が要求される。本発明の光波長変換素子を用いれば、共振器内で基本波と高調波の位相関係を制御できるため、ダブル共振条件も容易に満足することが可能である。
【0280】
このように、共振器構造内に本発明の光波長変換素子を挿入することは、実用上、効果的である。
【0281】
なお、位相調整部は、屈折率分散の異なる材料から構成されていればよいが、更に光波長変換素子の特性を高めるためには、その屈折率、特に基本波に対する屈折率が、非線形光学材料にほぼ等しい材料を用いることが望まれる。結晶間に屈折率の異なる材料を挿入すると、その屈折率差からフレネル反射が生じ、基本波或いは第2高調波の伝搬損失となる。従って、屈折率の近い材料を用いることで、位相制御におけるフレネル損失を低減することができる。
【0282】
なお、位相調整部を非線形光学材料と等しい屈折率を有する材料で構成することが難しい場合(適当な材料が無い場合)には、位相調整部と非線形光学結晶との界面に、反射防止膜を堆積することが望ましい。
【0283】
例えば、LiNbO3やLiTaO3などの高非線形材料は、屈折率が2以上と高い値を有する。このため、位相調整部を、これらと等しい屈折率を有する材料で構成することが難しい。そこで、反射防止膜として、厚さ約140nmのSiO2膜を堆積することで、界面における基本波の反射率を0.1%以下に抑えることが可能となる。このような反射防止膜を用いれば、位相調整部におけるフレネル損失を低減し、光波長変換素子の変換効率を増大することができる。
【0284】
反射防止膜として単層膜を用いる場合は、基本波或いは高調波の一方にしか機能しない。フレネル反射による損失の影響は、基本波の減衰による影響が、高調波による影響より大きいため、単層の反射膜を用いる場合は、基本波に対する反射防止膜を形成することが好ましい。一方、多層膜の反射防止膜を用いれば、基本波及び高調波の両方に反射防止膜機能を有することが可能である。従って、反射防止膜として多層膜を用いて、基本波及び高調波の両方に対する反射防止機能を有する方が、好ましい。
【0285】
なお、上記の説明では、バルク状の結晶における波長変換素子について述べたが、非線形光学結晶に光導波路を構成する場合も、同様の構成が実現できる。光導波路は、導波光間で光波長変換を行うことで光の閉じ込めを強化し且つ長い相互作用長を実現できるため、高効率の波長変換が可能であり、有効である。
【0286】
次に、分極反転周期が各領域間で異なる場合に、位相整合波長の可変特性に与える影響について解析した。
【0287】
位相調整部で隔てられた第1の分極反転領域と第2の分極反転領域との間で分極反転周期がわずかに異なる場合を仮定して、計算を行った。その結果、0.02%以上の分極反転周期の差がある場合には、波長可変範囲はあまり変化しないが、変換効率の最大値が低下する事が分かった。これより、変換効率を高めるには、分極反転周期の差を0.02%以下に抑える必要がある。
【0288】
これと同様に、位相整合条件の等しい2つの結晶における位相整合波長の差が与える影響についても、同様の精度が要求される。すなわち、位相整合波長がほぼ等しい結晶としては、位相整合波長の差が0.02%以下であることが望ましい。
【0289】
(第7の実施形態)
本実施形態では、本発明の光波長変換素子を用いた位相整合波長の許容度拡大について、述べる。
【0290】
位相整合波長のほぼ等しい結晶間に位相調整部を挿入する構造により、位相整合波長の許容幅を大幅に拡大することができる。例えば、結晶を3分割して位相調整部を2カ所に挿入するとき、各々の位相調整部の厚みをt1及びt2とし、位相調整部における基本波と高調波の伝搬定数をそれぞれβω及びβ2ωとすると、位相調整部の厚みがt1+t2=2nπ/(β2ω−2・βω)、(但し、n=0、1、2、3、...)の値をほぼ満足するときに、波長変換素子の位相整合特性は、図25に示すように、ピークフラットな特性(ピークフラットな位相整合カーブ)を示す。位相整合波長がピークフラット化すれば、基本波の波長変動が生じても、安定な出力特性が得られる。
【0291】
しかし、設計に従って実際に分極反転構造を形成し、光波長変換素子の位相整合特性を測定すると、図25に示すようなピークフラットな位相整合特性を有する光波長変換素子を得ることが非常に難しく、歩留まりが悪いことが判明した。実際に光波長変換素子を作製すると、図26(a)及び(b)に示すように、ピークフラットな部分が傾いたり、複数のピークが存在したりするなど、設計と異なる特性が得られる場合がほとんどであり、歩留まりは数%であった。この原因は、設計通りの位相整合特性を実現するには、伝搬定数の均一性及び分極反転周期の均一性に対して、非常に高い値が、素子長全域に渡って要求されるからである。設計値に近い値を実現するには、屈折率変動で0.01%以下の均一性が必要であり。例えば、導波路型の素子でこの条件を実現しようとすると、光導波路の線幅を0.05μm以下の精度で、光導波路の厚みに換算すると数オングストローム以下の精度で制御する必要である。素子長10mmに渡ってこの精度を達成することは、現実的に難しい。
【0292】
そこで、本願発明者らは、位相調整部における基本波と高調波の位相関係を調整することで、この問題の解決を図った。即ち、作製誤差による位相整合特性の位相整合カーブ(チューニングカーブ)の不均一性を、位相調整部によって調整することで補償した。その結果、ピークフラットな位相整合特性を有する素子の歩留まりを、数%から50%以上に大幅に向上させることに成功した。位相調整部の特性が固定されている場合には、作製精度のみで歩留まりが決定してしまうが、位相調整部の屈折率或いは長さを変化させることで、チューニングカーブを制御することが可能であり、歩留まりが向上した。
【0293】
更に、位相調整部により、出力変調も可能になる。具体的には、チューニングカーブの形を変えることが可能であるから、基本波の波長を固定した状態で位相調整部を変化させることで、出力を100%〜0%まで、自由に調整することができる。
【0294】
なお、本実施形態では、非線形光学結晶について説明したが、非線形光学結晶に光導波路を形成した場合も、同様の効果が得られる。光導波路を用いれば、更なる高効率化が可能であるとともに、位相調整部を光導波路上に集積化できる。この場合には、電気光学効果を利用して印加電界により位相調整部の屈折率を変化させたり、温度により位相調整部の屈折率を変化させたりすることが、可能である。また、液晶を光導波路の一部のクラッド層として用いて、この部分を位相調整部とし、液晶の屈折率を変えることで、位相調整部の実効屈折率を変化させることも可能である。
【0295】
更に、本実施形態では、位相整合条件を満足する非線形光学結晶を用いているが、周期状の分極反転構造を有する結晶、或いは光導波路も、同様に使用できる。分極反転構造を用いる場合、位相整合条件は擬似位相整合条件になるが、上記と同様の特性を得ることができる。分極反転を用いれば、任意の波長に位相整合可能であり、高効率の特性を実現できるため、有用である。
【0296】
(第8の実施形態)
ここでは、光波長変換素子の位相整合状態を制御する方法として、非線形光学結晶の一部の位相整合状態を変化させる方法について、説明する。
【0297】
本実施形態における光波長変換素子の構成を、図27に示す。基板1007は、XカットのMgO:LiNbO3基板であり、周期3.2μmの分極反転構造1008が、素子長10mmに渡って形成されている。更に、プロトン交換処理及びアニール処理により、分極反転構造1008の上に光導波路1009が形成されている。例えば、光導波路1009の幅は5μm、深さは2.5μmである。位相整合波長は850nmであり、高調波として、第2高調波の光(波長425nm)を出射する。変換効率は、1000%/Wであった。
【0298】
更に、図27の構成では、光導波路1009の入射部の近傍に、長さ3.3mmに渡って薄膜ヒータ1010を形成し、屈折率変調部としている。ヒータ1010により、光導波路1009の温度分布を変えて、屈折率を変化させることが可能となる。
【0299】
温度を変えたときの位相整合特性の変化を、図28(a)及び(b)を参照して説明すると、図28(a)は、ヒータ1010に電流を流さない場合、即ち温度を変化させない場合の位相整合特性であり、図28(b)は、ヒータ1010の温度を約10℃変えた時の位相整合特性である。このように温度を変えることで、変換効率は400%/W程度に低下したが、位相整合波長の許容度が増大して、ピークフラットな位相整合特性が実現できた。
【0300】
次に、ヒータ1010の長さを変えて、位相整合特性とヒータ1010の長さとの関係を観測したところ、位相整合波長許容度を拡大するには、ヒータ1010の長さを素子全長の15%〜40%にする必要があった。更に、ピークフラットな位相整合波長特性を実現するには、ヒータ1010の長さを素子全長の約30%とし、これを±5%程度の精度で実現する必要である。
【0301】
また、ヒータ1010の作製位置に注意する必要がある。具体的には、ヒータ1010は、素子の両端近傍に形成する必要がある。ヒータ1010を素子の中心近傍に形成しても、位相整合波長許容度の拡大は効率よく行われない。但し、ヒータ1010は、光導波路1009の端面近傍からは、数μm程度離す必要がある。ヒータ1010を光導波路1009の端面に形成すると、光導波路1009に光を結合する際に、ヒータ1010を構成する端面近傍の金属部分に基本波が吸収されて、温度上昇により端面が破壊される。従って、ヒータ1010は、端面から僅かに離れた部分に形成しなければならない。
【0302】
次に、屈折率変調を用いた他の光波長変換素子の構成について述べる。
【0303】
第7の実施形態で述べたように、位相整合特性の等しい結晶と位相調整部とにより光波長変換素子の波長許容度の拡大が可能であるが、その作製には、高い精度が要求される。これを解決する方法として、位相調整部を変調することで位相整合特性をコントロールする方法を述べたが、それに代えて、結晶の一部に屈折率変調部を形成することで、同様に位相整合特性を制御できる。
【0304】
図29は、上記の手法に従って構成される本発明の光波長変換素子の構成を示す斜視図である。具体的には、2分割構造によって波長許容度が拡大された素子を形成している。
【0305】
図29の構成では、MgOドープしたX板のLiNbO3基板1007の上に、周期3.2μmの分極反転構造1008が、10mmに渡って形成されている。素子端部から約1.6mm離れた部分には、1.6μmに渡って分極反転構造1008を設けずに、ここを位相調整部1011とする。更に、端部と位相調整部1011との間の基板表面には、長さ約1.6mmの薄膜ヒータ10が形成されている。
【0306】
このような構成で、ヒータ1010の温度を上げないときの位相整合特性は、僅かにピークフラットな特性からずれているが、ヒータ1010の温度を約3℃程度上昇させると、理想的なピークフラットな特性を実現できる。これより、位相調整部1011を有さない構造に比べて、約1/3の温度変化で、所望の制御が可能である。このように、位相調整部1011を有する構造は、屈折率の僅かな変化でピークフラットな位相整合特性に制御できるため、有効である。
【0307】
上記のように、薄膜ヒータ等による屈折率変調により光波長変換素子の位相整合特性を変調する構成は、半導体レーザと光波長変換素子の直接結合により短波長光源を実現した場合に、特に有効である。この場合には、基台上にて、光導波路型の光波長変換素子と半導体レーザとを直接結合させて固定することで、小型のコヒーレント光源が実現できる。更に、本発明に従って光波長変換素子の波長許容度を拡大することで、安定な出力特性が実現できる。
【0308】
但し、光源として高出力の半導体レーザを用いると、基台を通じて半導体レーザからの熱が光波長変換素子に伝わり、光波長変換素子の入射部近傍に熱の分布が形成される。この熱分布により、光波長変換素子の位相整合特性が変化して、設計した位相整合特性が得られないことがある。
【0309】
この問題を解決するために、光波長変換素子の入射部近傍に光導波路の屈折率を調整するヒータ(調整ヒータ)を堆積し、これを用いて位相整合特性を調整した結果、半導体レーザから熱が伝達される場合でも、上記の調整ヒータの温度を調整することで、ピークフラットな波長許容度特性が実現されて、安定な出力特性が得られた。また、形成した調整ヒータは、光波長変換素子の1/2以下の領域を占める程度の小さいものであり、占有面積が小さいために、消費電力を従来の1/2以下に低減できる。
【0310】
上記のようなヒータを用いる方法を、位相調整部の屈折率を変化させる方法と併用しても、位相整合特性を変調できる。
【0311】
なお、本実施形態では、屈折率変調部として薄膜ヒータ1010を用いているが、他に、液晶を用いたクラッド層も利用できる。液晶によりクラッド部を形成し、電界により液晶部の屈折率を変化させることで、光導波路の実効屈折率を変えることができる。液晶を用いると、消費電力が少なくなるので有効である。その他に、電気光学効果を利用して結晶に電界を印加することで、光導波路の実効屈折率を変えることができる。
【0312】
なお、上記では、非線形光学結晶の分割数が2である光波長変換素子を用いたが、更に分割数の多い素子にも、本発明は適用できる。分割数を増やせば、許容度のより広い素子が形成できるため、有効である。
【0313】
(第9の実施形態)
ここでは、半導体レーザと光波長変換素子からなるコヒーレント光発生装置(コヒーレント光源とも称する)において、常に安定な出力特性の実現が可能な構造について述べる。
【0314】
具体的には、本実施形態では、半導体レーザと光波長変換素子によりコヒーレント光源を構成する場合に、光波長変換素子から出射する高調波出力を安定化させるために、最低不可欠な光波長変換素子の位相整合波長の可変範囲を明らかにしている。
【0315】
図30に、本実施形態によるコヒーレント光源の構造を示す。この構成は、光波長変換素子1021と半導体レーザ1022とから構成されて、光波長変換素子1021は、本発明による位相調整部1003で分離された入射部1023と出射部1024とを有する。半導体レーザ1022は、出射波長を可変できる機能を有しており、光波長変換素子1021の位相整合条件を満足する波長に出射波長を合わせることで、出力の安定化を図っている。
【0316】
この様な構成において、光波長変換素子1021から出射される高調波の出力安定化のために必要な特性について、検討した。
【0317】
半導体レーザの発振波長は、グレーティングフィードバックや波長フィルターを利用した光フィードバックにより、可変できる。また、半導体レーザにおける光導波路の一部にDBRグレーティングを集積化し、DBRグレーティングの反射波長を温度やプラズマ効果を利用して可変することによっても、半導体レーザの発振波長を可変することが可能である。しかし、半導体レーザは、半導体レーザの共振器構造に起因する縦モード間隔でしか発振しないため、その発振波長は、飛び飛びの発振波長でのみ可変となる。例えば、0.1nm程度の間隔で、発振波長を制御できる。
【0318】
一方、光波長変換素子は、通常、波長許容度の非常に狭い特性を有する。例えば、素子長10mmのLiNbO3で作製した導波路型光波長変換素子などでは、0.1nm以下の半値全幅を有する。このときの光波長変換素子の位相整合特性と、半導体レーザの発振波長との関係を、図31(a)及び(b)に模式的に示す。図31(a)及び(b)において、1625は半導体レーザの発振モード(縦モード)であり、1626が光波長変換素子のチューニングカーブである。
【0319】
図31(a)においては、チューニングカーブ1626のピークと半導体レーザの発振モード1625が重なっている。この場合、半導体レーザの縦モード1625をチューニングカーブ1626のピークの位置に調整することで、最大の高調波出力が得られる。ところが、図31(b)に示すように、チューニングカーブ1626のピークが半導体レーザの縦モード1625の中央近傍に位置する場合、半導体レーザの発振波長を調整しても、高調波の出力を最大にすることができなくなる。従って、このようなコヒーレント光源においては、半導体レーザの波長を調整しても、安定な高調波出力が得られない。
【0320】
これを解決するには、光波長変換素子の位相整合波長をチューニングして、半導体レーザの発振波長の中心に、位相整合波長を調整する必要がある。即ち、光波長変換素子には、用いる半導体レーザの発振波長の縦モード間隔より広い波長範囲に渡って、位相整合波長を可変できる特性が要求される。
【0321】
この点を、周期状分極反転構造を有するLiNbO3結晶を5分割した構造(位相調整部を4ヶ所有する構造)からなる光波長変換素子で、確認した。この構造における位相整合波長の可変範囲は、半値全幅で0.34nmであるが、半導体レーザの縦モード間隔である0.1nmの範囲で位相整合波長を可変させた場合は、中心の位相整合波長から±0.05nmだけ位相整合波長が変化しても、出力の低下は5%程度であった。従って、環境温度の変化により位相整合波長が大きく変化した場合においても、半導体レーザの発振波長と光波長変換素子の位相整合波長とを同時に制御することで、出力を5%の変動以内に安定化させることができる。この結果、出力の安定なコヒーレント光源が実現できる。
【0322】
更に、パラメトリック発振を利用しても、波長可変レーザの可変波長領域の拡大が可能である。
【0323】
周期状の分極反転構造を有する光波長変換素子とレーザ光源を用いれば、パラメトリック発振が可能である。パラメトリック発振によれば、波長λ3の基本波を入力すると、1/λ3=1/λ1+1/λ2の関係を満足する波長λ2のシグナル光及び波長λ1のアイドラー光を発生することが可能である。これより、波長λ3の基本波を用いて、上記の条件を満足する波長を有する光を、波長可変しながら出力することができて、波長可変なレーザ光源が実現できる。
【0324】
このようなパラメトリック発振を可能にする構成としては、従来より、周期状分極反転構造を有する光波長変換素子によって高効率の波長変換が可能であり、例えばLiNbO3を用いた光波長変換素子が商品化されている。しかし、従来のパラメトリック発生を利用したコヒーレント光源では、周期の異なる分極反転構造を複数形成し、分極反転周期を変えることで発振波長を可変しているために、発振波長は離散的に可変であり、連続的に波長変換を行うことは難しかった。これに対して、本発明の光波長変換素子を用いれば、位相整合波長を連続的に可変させることが可能となるため、連続的に発振波長を変えることが可能なコヒーレント光源を実現できる。更に、周期の異なる複数の分極反転構造と組み合わせることにより、広い範囲に渡って連続的に位相整合波長を連続可変できるコヒーレント光源が実現できる。また、高効率で且つ変換効率の変動が小さい安定な出力特性も、実現できる。
【0325】
(第10の実施形態)
ここでは、本発明によって構成される光情報処理装置について、説明を行う。
【0326】
図32に、本発明の光情報処理装置の構成を示す。図32において、第9の実施形態に示した特徴を有するコヒーレント光発生装置1640から出た出力10mWのビームは、ビームスプリッタ1641を透過し、レンズ1642により、情報再生媒体である光ディスク1643に照射される。光ディスク1643からの反射光は、逆にレンズ1642によりコリメートされ、ビームスプリッタ1641で反射されて、光検出器1644で信号が読みとられる。更に、コヒーレント光発生装置1640の出力を強度変調することで、光ディスク1643に情報を書き込むことができる。
【0327】
本発明によれば、コヒーレント光発生装置1640を構成する光波長変換素子の位相整合波長を安定して可変することで、出力の安定化が図れて、外部の温度変化に対しても5%以下の出力変動に抑えることができる。
【0328】
更に、高出力の青色光の発生が可能となるため、読み取りだけでなく、上記のように、光ディスク1643へ情報を書き込むことも可能となる。また、半導体レーザを基本波光源として用いることで、非常に小型になるため、民生用の小型の光ディスク読み取り/記録装置にも利用できる。
【0329】
続いて、以下では、本発明に従って構成される、非線形光学効果を利用した光波長変換素子における出力の安定化を目的とした素子構造、並びにそれを用いたコヒーレント光源及び光情報処理装置を説明する。
【0330】
(第11の実施形態)
以下ではまず、広い波長領域において第2高調波の発生が可能な本発明による光波長変換素子の構造を、説明する。
【0331】
第1の実施形態で説明したように、本発明の光波長変換素子は、広い許容波長幅を有し、且つチューニングカーブ特性においてピーク出力近傍で平坦部を有する。これによって、基本波の波長変動に対する出力変化が非常に小さい。更に、許容波長幅の拡大による波長変換効率の低下を最小限に抑え、許容波長幅の拡大と高効率特性とを同時に達成できる。
【0332】
本発明による光波長変換素子の具体的な構造を、図36を参照して説明する。ここに示される構成は、第1の実施形態の構成(図1参照)と同じであり、対応する構成要素には同じ参照符号を付しているので、その詳細な説明は、ここでは省略することがある。
【0333】
図36に示すように、光波長変換素子は、互いにほぼ等しい位相整合条件を満足する複数の非線形光学結晶、例えば3つの非線形光学結晶1、2、及び3を含み、各々の非線形光学結晶1、2、及び3の間には、厚さがそれぞれt1及びt2である位相調整部4及び5が挿入されている。
【0334】
従来技術において、位相整合条件の異なる結晶を組み合わせる方法が提案されている。これは、位相整合条件の異なる結晶を組み合わせて、それぞれの結晶における位相整合波長を足し合わせて、波長許容度の拡大を図る方法である。しかし、位相整合条件の異なる結晶を組み合わせると、互いに異なる位相整合条件をそれぞれの結晶が有しているため、結晶の長さや光の波長がわずかに変動した場合に、それぞれの結晶で発生した基本波と高調波の位相関係が大きく変動する。これが干渉効果となって、高調波の出力が基本波の波長変化により大きく変動する。これを解決するには、各結晶における基本波と高調波の位相関係が、等しく変化する構成が望まれる。すなわち、位相整合条件の等しい結晶を用いて、位相整合波長許容度を拡大する必要がある。
【0335】
そこで、本願発明者らは、位相整合条件の等しい結晶からなる構造で位相整合波長を拡大する方法について種々検討した結果、各結晶長の長さを最適化し、同時に結晶間に位相調整部を設ける構成により、これを実現できることを見出した。
【0336】
同一の位相整合条件を有する結晶において、位相調整部が無い場合には、結晶内で全域にわたり基本波と高調波の位相は整合しているが、位相整合波長許容度は極端に狭くなる。これに対して、結晶間に位相調整部を設けると、この部分で基本波と高調波の間に位相差が生じる。しかし、位相調整部で発生した基本波と高調波の位相差は、次の結晶を伝搬する間に、大きさが保たれる。更に、基本波の波長変動に対しても、それぞれの結晶における位相整合状態は等しく変化し、位相調整部における位相差もほとんど変化しない。これは、位相調整部の前後の結晶において位相整合条件が等しく、基本波と高調波間の位相速度の関係が等しいからである。従って、位相調整部で発生した位相差は、結晶の長さに関係なく保たれ、基本波の波長変動に対する位相整合条件のズレも同時に起こる。これより、各結晶で発生した高調波には、それぞれ位相調整部により位相差が生じているが、その関係は基本波の波長が変化しても常に一定となり、それぞれの結晶で発生する高調波間の干渉効果の変動が、端に低減される。その結果、基本波の波長に対する高調波の出力変動を大幅に低減でき、位相整合特性を非常に平坦な特性にすることが可能となる。
【0337】
以上の説明は、本願の第1の実施形態の構成にも適用される。
【0338】
図37(a)は、図2(a)としても示した、位相調整部を有さない従来の構成における位相整合特性(チューニングカーブ特性)、すなわち、基本波光の波長に対する高調波光(SHG)の出力特性であり、第1の実施形態で図2(a)を参照して説明した特徴を有する。
【0339】
次に、図37(b)は、位相整合条件が異なる結晶を複数組み合わせて位相整合波長の許容度を拡大を図った従来の光波長変換素子におけるチューニングカーブ特性である。これは3つの位相整合波長の異なる結晶を組み合わせた場合であり、波長許容度は図37(a)に比べかなり広がっているものの、高調波出力が基本波の波長変動に対して大きく変動する。特に、出力のピーク近傍での出力変動が大きく、ピークの最大値に比較して10%以上の出力変動が見られる。これは、各結晶の位相整合波長が異なるためである。
【0340】
これに対して、図37(c)は、本発明の光波長変換素子で得られる位相整合特性(チューニングカーブ特性)であり、第1の実施形態で説明した図2(b)と同じ特徴を有する特性である。第1の実施形態でも説明したように、本発明の構成によれば、チューニングカーブ特性の最大値近傍のピークにおいて、高調波(SHG)光の出力強度は非常に平坦で、その出力変動は数%以内である。更に、基本波光波長に対する高調波光出力レベルがピークレベルから5%低下する波長範囲(許容波長幅)は、図37(a)に比べて図37(c)では約6倍に拡大されている。また、図37(c)においても、許容波長幅拡大に伴って変換効率が低下するものの、依然として図2(a)で得られる変換効率の29%のレベルが達成可能である(図37(b)では約12%のレベルまで低下する)。
【0341】
このように、本発明によれば、互いに等しい位相整合条件を有する結晶間に位相調整部を設けることで、平坦なピークを有するチューニングカーブが得られ、かつ従来より高い波長変換効率を実現することができる。
【0342】
次に、光波長変換素子を構成する非線形光学結晶の位相整合条件について述べる。
【0343】
図1や図36に示す本発明の光波長変換素子は、位相整合条件の等しい非線形光学結晶を、位相調整部を介して接合することで構成されている。そこで、各結晶の位相整合条件の差がどれほど許容されるか、検討した。
【0344】
各結晶間の位相整合条件の差は、各結晶における位相整合波長の差で表せる。そこで、位相整合条件の異なる結晶を組み合わせた場合のチューニングカーブの変化を、観測した。その結果、位相整合波長が0.1%異なる結晶を組み合わせて光波長変換素子を作製すると、チューニングカーブの対称性が得られず、ピークフラットなチューニングカーブを得るのは困難になった。位相整合波長の差が増大するに従って、この傾向は顕著になった。
【0345】
上記のような検討の結果、ピークフラットなチューニングカーブが実現できる位相整合波長の誤差は、各結晶間で0.02%以下と非常に厳しいことが明らかになった。すなわち、広い波長許容度を有し且つピークフラットなチューニングカーブを実現するには、非線形光学結晶間の位相整合波長の誤差は、0.02%以下に低減することが望ましい。
【0346】
次に、本発明の光波長変換素子の設計について、あらためて説明する。
【0347】
結晶内で基本波と第2高調波に対する伝搬損失が無視できるほど小さく、2つの伝搬ビームがほぼ等しい形状で伝搬していると仮定したときに、図38(a)に示される2分割構造の光波長変換素子における位相調整部の距離tが、第1の実施形態に関連して説明した以下の式(2)を満たすとき、チューニングカーブ特性がピークフラットな特性を有する。
【0348】
t=(2n+1)π/(β2ω−2・βω) (2)
但し、β2ωは位相調整部における高調波光の伝搬定数、βωは位相調整部における基本波光の伝搬定数、n=0、1、2、3、……、である。
【0349】
上記の式(2)をより一般的に表せば、
t=(2n+α)π/(β2ω−2・βω) (2a)
となる。図38(b)には、上記の式(2a)におけるαの値を変化させた場合のチューニングカーブを描いている。これより、2分割構造の場合にはα=1が最適であり、αの値がこれより増加しても減少しても、位相整合特性の波長依存性の対称性が崩れていく。第1の実施形態において説明したように、チューニングカーブの対称性の差が5%以内に収まるのはα=0.95〜1.05の範囲であり、この範囲であれば使用上、問題無い。更に、位相調整部の長さを最適化すると、α=0.9〜1.1の範囲でチューニングカーブの対称性が5%以内におさまり、ほぼフラットなピークを有するようになる。
【0350】
次に、結晶の長さについて検討した。
【0351】
2つの結晶の長さについて、全長に対する一方の長さを変えた場合の位相整合特性の関係を、図39(a)及び(b)を参照して説明すると、図39(a)は、素子全長に対する一方の結晶の長さの割合とチューニングカーブのピーク近傍部分の凹部の大きさ及び波長許容度(チューニングカーブにおいて、SHG出力が最大値から5%低下する波長の幅に設定する)の関係を示す。結晶長の値が素子全長の約17%より大きくなると、凹部が増大し始め、波長許容度も、この近傍で大きく増大する。従って、チューニングカーブのピーク近傍での凹部の発生を極力抑えるには、結晶長の長さを素子全長の約17%程度以下にする必要がある。その一方で、許容度を2倍以上に拡大するには、結晶長の長さを素子全長の13%以上にする必要がある。
【0352】
これより、結晶長の長さを素子全長の約13%〜約17%に設定して、チューニングカーブのピーク近傍での凹部の発生を抑えることが好ましい。この範囲を外れると、チューニングカーブにピークが2つ以上存在することになるが、この場合、出力特性をフィードバックして基本波波長を制御し第2高調波の安定化を図る場合のピーク検出において、2つのピーク間での位相整合波長の特定が難しくなり、出力の安定化が難しくなる場合が有るからである。
【0353】
更に、ピークの凹部の影響を考えない場合には、第2高調波の最大値が95%以下に低下しないように、図39(b)から、結晶長の長さを全体の約13%〜約18%に設定することが好ましい。
【0354】
図39(b)には、素子全長に対する素子長の割合をパラメータとして、幾つかのチューニングカーブを描いている。これより、結晶長が増大すると、ピーク近傍の凹部が増大する。結晶長が素子全長の17%になると、チューニングカーブのピーク近傍がほぼフラットになり、安定で広い位相整合特性が実現できることが示されている。2分割構造において、伝搬損失が無視できる場合には、位相調整部の位置は、短い結晶と長い結晶との位置関係には依存せず、良好なチューニングカーブが得られる。
【0355】
以上の結果、互いに位相整合条件のほぼ等しい2つ以上の結晶を位相調整部を介して接合して位相整合波長許容度の拡大を図るにあたっては、それぞれの結晶の長さの一方が、素子全長の13〜18%にすることが好ましい。
【0356】
但し、上記の検討は、基本波と高調波の伝搬損失があまり大きくないとの仮定の下に計算した値であり、実際の素子に適用して伝搬損失が大きい場合の実験を行った結果、結晶の長さが素子全長に対して5〜30%の間の値を取るときに、ピークフラットなチューニングカーブが得られた。従って、一方の結晶長の長さは、素子全長の5〜30%の範囲に設定することが好ましい。
【0357】
以上の結果、2分割構造では、結晶間に設ける位相調整部の厚さtが、
t=(2n+α)π/(β2ω−2・βω) (2a)
の関係を満足し、且つα=0.9〜1.1の範囲であるときに、ピークフラットな位相整合特性を有する構造が実現できる。但し、上記のαの範囲は、結晶における伝搬損失の値が比較的小さい場合に適用できる範囲であり、結晶の伝搬損失が大きい場合、或いは伝搬光のパワー密度が場所により異なる場合には、α=0.5〜1.5の範囲が有効である。
【0358】
次に、3つの非線形光学結晶と2つの位相調整部(厚さt1及びt2)とが組み合わされている3分割構造では、各位相調整部の距離t1及びt2が、先に第1の実施形態に関連して説明した以下の式(3)及び式(4):
t1=(2n+α1)π/(β2ω−2・βω) (3)
t2=(2m+α2)π/(β2ω−2・βω) (4)
但し、n及びm=0、1、2、3、……、
を満たし、更にα1+α2=2であるのでJ=0、1、2、3、……、としたときに、
t1+t2=2Jπ/(β2ω−2・βω) (5)
が成立するときに、チューニングカーブ特性がピークフラットな特性を有する。
【0359】
上記の式(3)〜式(5)の関係から外れると、チューニングカーブが左右非対称になり、ピークフラット部の傾斜がきつくなって、平坦な出力特性を得るのが難しい。また、第1の実施形態にて説明したように、α1=0.79及びα2=1.21近傍で、チューニングカーブ特性におけるピーク出力近傍の平坦部が、ほぼフラットな特性を示す。また、対称性が5%以内に収まるのは、α1=0.7〜0.9の範囲であり、このときα2=2−α1に設定する。α1及びα2の値が入れ替わっても、同様の特性を示す。
【0360】
次に、結晶の長さについて検討した。
【0361】
3分割構造では、ピークフラットなチューニングカーブが得られるのは、中心の結晶に対して、両側の結晶の長さが等しい場合であった。そこで、結晶の全長に対する両側の結晶の長さの割合と位相整合特性との関係を図40(a)及び(b)を参照して説明すると、図40(a)は、素子全長に対する一方の結晶の長さの割合とチューニングカーブのピーク近傍部分の凹部の大きさ及び波長許容度の関係を示す。結晶長の値が素子全長の約13%より大きくなると、凹部が増大し始め、波長許容度も、この近傍で大きく増大する。従って、チューニングカーブのピーク近傍での凹部の発生を極力抑えるには、結晶長の長さを素子全長の約14%程度以下にする必要がある。その一方で、許容度を2倍以上に拡大するには、結晶長の長さを素子全長の10%以上にする必要がある。
【0362】
これより、結晶長の長さを素子全長の約10%〜約14%に設定して、チューニングカーブのピーク近傍での凹部の発生を抑えることが好ましい。この範囲を外れると、チューニングカーブにピークが2つ以上存在することになるが、これに伴う問題点は2分割構造に関して前述した通りである。
【0363】
更に、ピークの凹部の影響を考えない場合には、第2高調波の最大値が95%以下に低下しないように、図40(b)から、結晶長の長さを全体の約13%〜約15%に設定することが好ましい。
【0364】
図40(b)には、素子全長に対する素子長の割合をパラメータとして、幾つかのチューニングカーブを描いている。これより、結晶長が増大すると、ピーク近傍の凹部が増大する。結晶長が素子全長の13.8%になると、チューニングカーブのピーク近傍がほぼフラットになり、安定で広い位相整合特性が実現できることが示されている。
【0365】
以上の結果、3分割構造では、結晶間に設ける位相調整部の厚さt1及びt2が前述の式(3)〜式(5)の関係を満たし、且つα1=0.7〜0.9の範囲の位相調整部を介した接合として、両端の各結晶の長さが素子全長の約13%〜約15%であるときに、ピークフラットな位相整合特性を有する構造が実現できる。
【0366】
但し、上記の検討は、基本波と高調波の伝搬損失があまり大きくないとの仮定の下に計算した値であり、実際の素子に適用して伝搬損失が大きい場合の実験を行った結果、結晶の長さが素子全長に対して8〜25%の間の値を取るときに、ピークフラットなチューニングカーブが得られた。従って、一方の結晶長の長さは、素子全長の8〜25%の範囲に設定することが好ましい。また、上記のα1の範囲は、結晶における伝搬損失の値が比較的小さい場合に適用できる範囲であり、結晶の伝搬損失が大きい場合、或いは伝搬光のパワー密度が場所により異なる場合には、α1=0.5〜1.5の範囲が有効である。
【0367】
以上の検討により得られた、本発明によって2分割構造及び3分割構造を用いて光波長変換素子を形成した場合の位相整合特性、具体的にはSHG出力の大きさ及び位相整合波長許容度を、分割なしの場合の値を1として、以下の表1にまとめる(非線形光学素子の全長が等しいとする)。
【0368】
【表1】
Figure 0004485617
【0369】
このように、本発明の構成により、SHG出力の低下を抑えながら、位相整合波長許容度を大幅に拡大できる。
【0370】
以上、非線形光学効果による第2高調波の場合の位相調整部による波長許容度の設計について述べたが、上記の設計は、第2高調波以外の高調波発生、例えば、和周波を発生する場合やパラメトリック発振の場合にも、同様の設計が適用できる。第2高調波発生が和周波発生及びパラメトリック発振の一種であることは、これまでの実施形態に関連して説明した通りであり、第2高調波における関係は、和周波及びパラメトリック発振に適用可能である。
【0371】
従って、第2高調波の発生における位相調整部の厚みtの式:
t=(2n+α)π/(β2ω−2・βω) (2a)
において、β2ωの代わりにβ3、βωの代わりにβ1、βωの代わりにβ2を代入すると、上記の式(2a)は、
t=(2n+α)π/(β3−β1−β2) (2b)
となり、この式(2b)を式(2)と同じ条件で満足することで、同様の波長許容度拡大特性が得られる。但し、n=0、1、2、3、・・・、であり、β1は位相調整部における波長λ1の光の伝搬定数、β2は位相調整部における波長λ2の光の伝搬定数、β3は位相調整部における波長λ3の光の伝搬定数である。
【0372】
αの値及び結晶の長さtが満たすべき条件も、第2高調波の場合に関して上述した条件と全く同じであり、同様の設計により、位相整合波長許容度の拡大が可能となる。これによって、和周波発生或いはパラメトリック発振における波長許容度の拡大が可能な光波長変換素子の構造が、実現される。
【0373】
また、差周波発生にも、本発明の同様の構造が適用できる。差周波発生においては、λ3の波長の光とλ2の波長の光とを非線形光学結晶に入射して、λ1の波長の光を出射する。このときのλ1、λ2、λ3の関係は、和周波発生での光の波長の関係と等しく、従って、上記に示した位相調整部の設計を適用して、位相整合波長許容度を拡大することができる。
【0374】
なお、位相調整部は、先述の、
t=(2n+α)π/(β2ω−2・βω) (2a)
なる関係を満足する厚さ及び屈折率分散を有する膜であればよいが、更に光波長変換素子の特性を高めるためには、非線形光学材料の屈折率にほぼ等しい屈折率を有する材料を用いることが望ましい。すなわち、結晶間に屈折率の異なる材料を挿入すると、その屈折率差から界面でフレネル反射が生じて、基本波或いは第2高調波の伝搬損失となる。従って、位相調整部を、非線形光学結晶に近い屈折率を有する材料で構成すれば、位相調整部におけるフレネル損失を低減することができる。
【0375】
更に、位相調整部と非線形光学結晶とは、接着固定することが望ましい。非線形光学結晶を波長変換素子に用いるには、高い精度の安定性が必要であり、温度や振動による変動が発生すると、結晶間での光の位相状態が変化して、特性が劣化する。非線形光学結晶と位相調整部とを接着固定することで、これらの問題を回避できる。
【0376】
また、同一の結晶内に位相調整部を形成することが、更に望ましい。従来の構造は、位相整合条件の異なる結晶を組み合わせて形成されているため、同一の結晶上に位相整合条件の異なる部分を形成することは困難であるが、本発明の構成では、位相調整部を部分的に形成することで、光波長変換素子を構成することができる。例えば、拡散やイオン変換によって結晶の一部の組成を変えて、位相調整部を形成することができる。
【0377】
更に、非線形光学結晶上に光導波路を形成し、その光導波路の一部にイオン交換、金属拡散、或いはクラッド部の付加などによって、位相調整部を容易に形成することができる。光導波路は基板表面に存在するために、位相調整部の形成が容易であるとともに、光導波路内の光パワー密度が高いので、高効率の波長変換が実現できる。
【0378】
なお、位相調整部を、非線形光学材料と等しい屈折率を有する材料で構成することが困難である場合に、位相調整部と非線形光学材料との界面に反射防止膜を堆積することが望ましいことは、第6の実施形態に関連して既に説明したが、このように反射防止膜を挿入する場合は、反射防止膜における基本波と第2高調波の伝搬定数の差を、考慮する必要がある。具体的には、位相調整部の両側に反射防止膜を堆積する場合、反射防止膜の厚みをt12、そこにおける基本波と第2高調波の伝搬定数をβa及びβ2a、位相調整部の厚さをt11、そこにおける基本波と第2高調波の伝搬定数をβω及びβ2ωとすると、
2×t12×(β2a−2×βa)+t1(β2ω−2×βω)
=(2n+α)×π
なる関係を満足しなければならない。反射防止膜が多層膜からなる場合には、上記のβa及びβ2aの値は、各膜の平均値でよい。
【0379】
上記の説明では、バルク状の結晶における波長変換素子について述べたが、非線形光学結晶に光導波路を構成する場合も、同様の構成が実現できる。光導波路では、導波光間で光波長変換を行うことで光の閉じ込めを強化し、かつ長い相互作用長を実現できるため、高効率の波長変換が可能であり、有効である。
【0380】
なお、以上の説明では、分割構造の設計として2分割構造及び3分割構造における最適化について詳細に述べたが、分割数を更に増やすと、許容度をさらに拡大することが可能となる。但し、位相整合波長許容度を拡大すると、許容度の拡大に比例して変換効率が低下する結果となるので、高効率で且つ広い許容度を得るには、2分割構造或いは3分割構造が適当である。
【0381】
更に、本願発明者らは、前述した位相調整部の概念を、擬似位相整合に適用できることを見出した。
【0382】
すなわち、図41に示すように、基板内に分極反転領域11、12、及び13が形成され、分極反転領域11、12、及び13の間に位相調整部14及び15が形成されている構成において、分極反転周期Λが、
Λ=2mπ/(β2ω−2・βω) (1)
なる関係を満足するように構成する。但し、m=0、1、2、3、……、であり、β2ωは位相調整部における高調波光の伝搬定数、βωは位相調整部における基本波光の伝搬定数である。
【0383】
各分極反転構造における位相整合条件を等しくするため、分極反転周期を等しく設定する。更に、位相調整部の距離tの設計には、結晶を組み合わせた構造と同じく、式(2)で表される関係を満たすような設計の適用が可能である。
【0384】
擬似位相整合では、分極反転構造及び位相調整部が、分極反転周期構造を変えるだけで容易に実現できる。すなわち、フォトリソグラフィ法によるパターニング技術を利用して周期状分極反転構造が製造できて、分極反転周期構造の間に位相調整部を有する構造を、容易に作製できる。更に、位相調整部の距離についても、精確に制御が可能である等の利点を有する。加えて、位相調整部における伝搬損失がほとんど発生しないため、高効率の光波長変換素子の作製が容易である。結晶を組み合わせて光波長変換素子を構成する場合、位相整合特性の異なる材料を位相調整部として結晶間に設ける必要があるため、位相調整部の厚みを精密に制御する必要があり、結晶接合間での損失が生じる。ところが、擬似位相整合の場合、位相調整部も分極反転部も同じ結晶からなるため、接合による損失や屈折率の違いからくるフレネル反射が全くない。
【0385】
次に、分極反転周期が各領域間で異なる場合に、チューニングカーブに与える影響について解析した。
【0386】
第1の分極反転領域と第2の分極反転領域の間で分極反転周期がわずかに異なる場合を仮定し、計算を行った結果、0.02%以上の分極反転周期の差がある場合は、チューニングカーブの対称性は大きく崩れ、ピーク近傍での平坦性が得られない事が分かった。ピークが平坦なチューニングカーブを実現するには、分極反転周期の差を0.02%以下に抑える必要がある。
【0387】
以上のように本実施形態では、等しい分極反転周期構造を有する複数の分極反転領域の間に位相調整部を設けることで、従来の光波長変換素子と異なり、基本波の波長変動に対する高調波の出力変動が極端に小さく、かつ広い波長許容度を有する特性が実現できた。更に、実際の分極反転領域の長さの関係、及び位相調整部の距離等の最適設計の値についても、明らかになった。
【0388】
(第12の実施形態)
ここでは、光波長変換素子内部における欠陥、或いは位相整合を利用したチューニング等に対して、安定な位相整合波長特性を有する光波長変換素子の構造を、説明する。
【0389】
具体的には、本願発明者は、光波長変換素子内部における基本波と高調波の伝搬損失が光波長変換素子の特性に大きな影響を与えることを発見し、基本波と高調波の伝搬損失が適当な関係を有するときに、この影響を飛躍的に低減できることを見出した。
【0390】
まず最初に、伝搬損失がある場合の光波長変換素子の位相整合特性について、検討した。
【0391】
これまでに示した検討では、光波長変換素子における基本波及び高調波の伝搬損失がほとんど無視できる程小さい場合を想定しているが、実際の光波長変換素子の構成、特に光導波路を利用する構成では、比較的に大きな伝搬損失が存在する。そこで、伝搬損失が存在する場合における光波長変換素子のチューニングカーブについて検討を行った。
【0392】
図42(a)には、基本波の伝搬損失のみが存在する場合の計算結果、図42(b)には、高調波の伝搬損失のみが存在する場合の計算結果を、それぞれ示す。これより、基本波の伝搬損失に対しては右肩下がりのチューニングカーブになり、高調波の伝搬損失に対しては右肩上がりのチューニングカーブになる。
【0393】
更に、基本波の伝搬損失が多いと、出射部の近傍における位相調整部の影響が小さくなってくる。これは、伝搬するに従って基本波が減衰し、出射部近傍において発生する高調波の強度が小さくなるためである。例えば、2分割構造では、一方の結晶の長さが素子全長の約17%である場合が適切であり、位相調整部は、出射部或いは入射部の何れかの近傍に形成される。例えば、基本波の伝搬損失が多い場合には、位相調整部を入射部の近傍に形成することが、伝搬損失の影響をうけ難いために、望ましい。
【0394】
本願発明者らは、図42(a)及び(b)に示すように、基本波の伝搬損失b1によるチューニングカーブの非対称性の発生と、高調波の伝搬損失b2によるチューニングカーブの非対称性の発生とが、逆の効果を示すことに着目した。すなわち、伝搬損失を基本は及び高調波の間で最適化すれば、チューニングカーブの対称性を補正できると考えた。そこで、基本波及び高調波の伝搬損失とチューニングカーブとの関係を様々に検討した結果を、図43に示す。これより、基本波及び高調波の伝搬損失b1及びb2がb2=2×b1なる関係を満足するときに、基本波及び高調波の伝搬損失に関係なく、基本波の波長に対して対称な形状を有するチューニングカーブが実現できることを見いだした。このように、基本波及び高調波の伝搬損失の関係を最適化することで、伝搬損失に起因して発生するチューニングカーブの非対称性を、ほとんど無視し得る程度まで小さくすることができる。
【0395】
実際には、高調波の伝搬損失b2が6dB/cm以下と小さい場合には、b2=0.5×b1〜1.5×b1の範囲で、ほぼ対称なチューニングカーブが得られることが確認され、この範囲の伝搬損失を有する光波長変換素子を製作することが好ましいことが分かった。
【0396】
更に、上述したb2=2×b1なる関係は、光波長変換素子における位相整合波長許容度の拡大を目的としてピークフラットなチューニングカーブを得るために見いだした条件であるが、位相整合条件を満足する光波長変換素子においては、非常に重要な意味がある。
【0397】
光波長変換素子の位相整合特性は、伝搬損失によって大きな影響を受け、変換効率の低下の他に、チューニングカーブの非対称性の発生など、素子設計が複雑化する。例えば、上記の位相整合波長許容度の拡大においても、設けるべき位相調整部の位置や大きさが、伝搬損失の影響を受ける。その他に、光波長変換素子において、光の伝搬方向に機能素子を集積化する場合、例えば、電極を集積化して光の強度を変調する場合やグレーティング素子を集積化して高調波或いは基本波の一部の回折を利用する場合には、得られる集積化素子の特性は、基本波及び高調波の伝搬損失の影響を受ける。これは、光波長変換素子のどの位置に他の素子を集積化するかによって、伝搬損失による基本波及び高調波の光強度の関係が異なるからである。
【0398】
また、結晶欠陥や屈折率の不均一性が存在して伝搬定数が部分的に異なる部分が存在する場合や、疑似位相整合型の素子において分極反転周期の欠陥や乱れが存在する場合には、チューニングカーブが理論的な形状を外れるが、この場合に見、基本波を入射部側から入れる場合と出射部側から入れる場合とで、位相整合特性が大きく異なる。この非可逆的な特性により、逆伝搬時の素子特性は、性伝搬時の素子特性から大きく異なる。例えば、共振構造内に光波長変換素子を挿入して高効率の波長変換を行う共振器型の光波長変換素子や反射型の光波長変換素子では、正方向と逆方向とでチューニングカーブ特性が異なるために、変換効率の低下の大きな原因となっていた。
【0399】
これに対して、本発明に従って、光波長変換素子の基本波及び高調波の伝搬損失b1及びb2が、前述のb2=b1×2なる関係を満たせば、光波長変換素子に機能素子を集積化する際に伝搬損失の影響を無視することが可能になり、素子設計が非常に容易になる。これは、基本波の伝搬損失が光波長変換特性に与える入射光伝搬方向に沿った変化と、高調波の伝搬損失による変化とが、お互いに相殺するためである。これによって、光波長変換素子は、入射光の伝搬方向に対して可逆的な特性を有して、逆方向の伝搬光を利用する場合でも、欠陥や不均一性の影響をほとんど受けない光波長変換素子が実現される。
【0400】
以上の説明では、波長λの基本波を波長λ/2の第2高調波に波長変換する構成において、伝搬損失の最適関係を説明したが、同様に、3つの波長λ1、λ2、及びλ3の光が関与するパラメトリック変換、和周波発生や差周波発生においても、光の伝搬損失に最適な関係が存在する。具体的には、各波長λ1、λ2、及びλ3の伝搬損失がお互いに等しい場合に、伝搬損失による素子特性の伝搬距離依存性が無視できる。従って、3波長間の波長変換時には、各波長における伝搬損失を等しくすることが好ましい。但し、各伝搬損失が6dB/cm以下と比較的小さい場合には、各伝搬損失の間の差が20%以内であれば、良好な特性が得られる。
【0401】
(第13の実施形態)
ここでは、半導体レーザと光波長変換素子からなるコヒーレント光発生装置(コヒーレント光源とも称する)において、常に安定な出力特性の実現が可能な構造について述べる。
【0402】
具体的には、本実施形態では、半導体レーザと光波長変換素子によりコヒーレント光源を構成する場合に、光波長変換素子から出射する高調波出力を安定化させるために、最低不可欠な光波長変換素子の波長許容度及びチューニングカーブ特性を明らかにしている。
【0403】
図44に、本実施形態によるコヒーレント光源の構造を示す。この構成は、光波長変換素子621と半導体レーザ622とから構成されて、光波長変換素子621は、入射部623と出射部624を有する。半導体レーザ622は、出射波長を可変できる機能を有しており、光波長変換素子621の位相整合条件を満足する波長に出射波長を合わせることで、出力の安定化を図っている。
【0404】
この様な構成において、光波長変換素子621から出射される高調波の出力安定化のために必要な特性について、検討した。
【0405】
半導体レーザの発振波長は、グレーティングフィードバックや波長フィルターを利用した光フィードバックにより、可変できる。また、半導体レーザにおける光導波路の一部にDBRグレーティングを集積化し、DBRグレーティングの反射波長を温度やプラズマ効果を利用して可変することによっても、半導体レーザの発振波長を可変することが可能である。しかし、半導体レーザは、半導体レーザの共振器構造に起因する縦モード間隔でしか発振しないため、その発振波長は、飛び飛びの発振波長でのみ可変となる。例えば、0.1nm程度の間隔で、発振波長を制御できる。
【0406】
一方、光波長変換素子は、通常、波長許容度の非常に狭い特性を有する。例えば、素子長10mmのLiNbO3で作製した導波路型光波長変換素子などでは、0.1nm以下の半値全幅を有する。このときの光波長変換素子の位相整合特性と、半導体レーザの発振波長との関係を、図45(a)及び(b)に模式的に示す。図45(a)及び(b)において、625は半導体レーザの発振モード(縦モード)であり、626が光波長変換素子のチューニングカーブである。
【0407】
図45(a)においては、チューニングカーブ626のピークと半導体レーザの発振モード625が重なっている。この場合、半導体レーザの縦モード625をチューニングカーブ626のピークの位置に調整することで、最大の高調波出力が得られる。ところが、図45(b)に示すように、チューニングカーブ626のピークが半導体レーザの縦モード625の中央近傍に位置する場合、半導体レーザの発振波長を調整しても、高調波の出力を最大にすることができなくなる。従って、このようなコヒーレント光源においては、半導体レーザの波長を調整しても、安定な高調波出力が得られない。
【0408】
これを解決するには、光波長変換素子のチューニングカーブの平坦部分が、少なくとも半導体レーザの縦モード625の間隔より広いことが要求される。チューニングカーブの平坦部分が半導体レーザの縦モード625の間隔より広い場合、すなわち、図46(a)及び(b)に示すチューニングカーブ636の場合には、チューニングカーブ636のピークと半導体レーザの縦モード625との位置関係に関わらず、高調波の最大出力が得られる。これによって、半導体レーザの波長を可変することで、出力の安定化を図ることができる。
【0409】
次に、半導体レーザからの出力を変調し、コヒーレント光源から出射する高調波出力を変調することを試みた。その結果、半導体レーザの発振波長のチャーピングの問題が明らかになった。半導体レーザのチャーピングとは、半導体レーザの出力を変調すると、出力強度に比例して半導体レーザの活性層の温度が変化し、これによって、半導体レーザの発振波長が変動する現象である。
【0410】
例えば、図47(a)に示すように、半導体レーザの出力を一定の状態Aから特定の周波数で変調する状態Bにすると、状態Aと状態Bでは、平均の光強度が異なる。これによって、状態A及びBで、半導体レーザ活性層の温度が異なり、発振波長は、状態Aから状態Bに変わった瞬間に、数10μsオーダで変化する。このときのコヒーレント光源からの高調波出力をモニターすると、図47(b)に示すように、出力が徐々に変化する。
【0411】
これに対して、先に図46(b)に示したように半導体レーザの縦モード間隔より広い波長許容度を有する光波長変換素子を用いて半導体レーザの変調特性を測定したところ、図47(c)に示すように、安定な変調特性が得られた。この特性を更に分析すると、半導体レーザの発振波長のチャーピング波長は、最大で、半導体レーザの縦モード間隔だけ変化することを見出した。すなわち、光フィードバックで半導体レーザの発振波長を安定化させても、半導体レーザの活性層の温度が変化することで、発振モードの波長が変動する。このために、発振波長が、最大で縦モード間隔だけ変動する。これを安定化させるためには、光波長変換素子のチューニングカーブがピーク近傍で平坦部を有し、かつ平坦部が半導体レーザの縦モード間隔より大きいことが重要であることが分かった。
【0412】
ここで注意しなければならないのは、光波長変換素子における波長許容度と変換効率とが、トレードオフの関係にあることである。すなわち、波長許容度を増大させるに従って、光波長変換素子の変換効率は低下する。従って、光波長変換素子の波長許容度の拡大は、必要最小限にとどめる必要がある。
【0413】
以上の結果、半導体レーザの波長を制御してコヒーレント光源を安定化させるには、光波長変換素子のチューニングカーブがピーク近傍で平坦であり、かつ平坦な部分が半導体レーザの縦モード間隔より大きい必要がある。チューニングカーブの平坦性は、コヒーレント光源に要求される出力変動の範囲に依存する。通常のレーザ光源では5%程度の出力変動が許されるが、このような場合には、半導体レーザの縦モード間隔に相当する波長範囲におけるチューニングカーブの平坦度は、5%以下であればよい。一方、更に厳しい特性が要求される用途においては、より平坦なチューニングカーブが要求される。
【0414】
上記の検討結果に基づいて、先の実施形態に示した光波長変換素子と半導体レーザによりコヒーレント光源を構成し、出力の安定化実験を行った。しかし、半導体レーザの波長調整することで光波長変換素子の位相整合波長に一致させ、高調波出力の安定化を図ったところ、出力が大きく変動し、設計通りの安定化が得られない場合があることが明らかになった。そこで、高調波出力変動の要因について更に検討を行うため、図48に示すように、基本波の波長を連続的に変化させて、高調波出力の変化を観測した。
【0415】
その結果、光波長変換素子の許容度の範囲で、高調波出力が細かく変動していることが明らかになった。この原因を検討したところ、基本波及び高調波が光波長変換素子の入射部端面及び出射部端面でフレネル反射し、この光が互いに干渉することで、高調波出力を不安定にしていることが明らかになった。すなわち、入射部及び出射部における端面反射光が互いに干渉し、かつ波長の変化により光波長変換素子の光路長が変化することで、端面反射光の干渉度合いが変化して、出力を不安定にしている。更に、基本波出力を変調して高調波の出力を変調する場合にも、同様の出力変動が観測された。
【0416】
このように、半導体レーザを変調すると、半導体レーザの波長が変化するため、波長許容度を拡大した光波長変換素子を用いても出力の安定化が難しく、高調波の雑音レベルを大幅に増大させる。この問題を解決するためには、端面反射による干渉を防止する方法として、入射部または出射部の少なくとも何れか一方に、高調波及び基本波に対する反射防止膜を形成する。端面に反射防止膜を堆積することでフレネル反射を防止し、端面反射による干渉効果を低減できる。その結果、非常に安定な出力特性を有するコヒーレント光源を実現できる。
【0417】
更に、基本波に対する反射防止膜は、入射部及び出射部ともに形成するのが望ましい。半導体レーザでは、外部に出射した光が再び活性層内に戻ることで、雑音の増大や出力の変動などの問題が発生する。これを防止するために、基本波に対する反射防止膜は、出射部及び入射部の両方に形成することが望ましい。一方、高調波に対する反射防止膜は、入射部または出射部のどちらか一方でよいが、出射部に形成するのが望ましい。これは、出射部に高調波の反射防止膜を形成することで、端面のフレネル反射による損失を防止し、より高出力の高調波を得ることができるためである。
【0418】
従って、望ましい構成としては、出射部には、基本波及び高調波ともに反射防止効果を有する反射防止膜を形成し、入射部には、基本波に対する反射防止膜を形成する。
【0419】
入射部及び出射部における端面反射の干渉効果により高調波出力が不安定になる問題を解決する他の方法として、半導体レーザの駆動電流に高周波を重畳する方法がある。
【0420】
端面反射光が干渉を起こす原因として、光のコヒーレンスが高いために、互いに光が干渉しあうことがある。そこで、この点を克服するために、コヒーレンスを低下させて、干渉度を低減させることが考えられる。これは、半導体レーザの駆動電流を高い周波数で変調することでコヒーレンスを低下させる方法であって、数100MHz以上の高い周波数で変調を加える。このとき、半導体レーザの発振波長がシングルモードからマルチモードになって広がるが、このようなマルチモード化は、DBRグレーティング等を用いて強い光フィードバックを活性層内に帰還することで、防止できる。
【0421】
このように、半導体レーザに高周波を重畳することで、端面干渉を低減して、高調波出力の安定性を確保することができる。
【0422】
更に、高周波重畳には、光波長変換素子の効率を大幅に増大させるという特徴がある。光波長変換素子の効率は、基本波のパワーに比例して増大する。半導体レーザを高周波重畳で駆動すると、尖塔値の高いパルス列発振となり、各ピークの値が数倍から10倍以上に増加する。このため、高強度のパルス光の波長変換となり、変換効率が大幅に増大する。実験では、2〜3倍以上の変換効率向上が観測された。この点からも、高周波重畳した半導体レーザを用いることは、有効である。
【0423】
更に、高周波重畳によって半導体レーザの発振波長の幅がわずかに広がる場合にも、波長許容度を拡大した光波長変換素子においては、半導体レーザの発振波長より広い波長許容度を実現することができるため、全ての光を効率よく波長変換することが可能となり、高効率で光波長変換が行える。
【0424】
(第14の実施形態)
ここでは、半導体レーザと光波長変換素子とから構成されるコヒーレント光源において、半導体レーザの発振波長と光波長変換素子の位相整合波長との間のずれを検出するための構成を説明する。具体的には、光波長変換素子からの高調波出力の散乱光を検出して、光波長変換素子の位相整合状態を検出する。
【0425】
波長可変型半導体レーザと光波長変換素子とを用いてコヒーレント光源を構成し、安定した出力を得るためには、半導体レーザの発振波長が、光波長変換素子の位相整合波長に一致している必要がある。更に、出力の安定化のためには、半導体レーザの発振波長と光波長変換素子の位相整合波長との間のずれを常にモニタして、検出結果を半導体レーザの発振波長にフィードバックし、ずれを低減する必要がある。更に、両者のずれが大きくなって高調波出力がほとんど0になった場合には、位相整合波長を探して、半導体レーザの発振波長を再び位相整合波長に固定する必要がある。本実施形態では、上記のような半導体レーザの発振波長と光波長変換素子の位相整合波長との間のずれを検出する構成を、説明する。
【0426】
図49には、本発明によるコヒーレント光源の構成を示す。波長可変半導体レーザ631の光(基本波)606は光波長変換素子632に入射して、高調波633に変換される。高調波633の出力の強度は、出射部近傍に配置された光検出器634で検出され、一方、光波長変換素子632からの高調波の散乱光は、フィルタ635を介して光検出器639で検出される。
【0427】
光波長変換素子の内部における光伝搬距離と高調波強度との関係を図50を、参照して説明する。図50の曲線aは、半導体レーザの発振波長と光波長変換素子の位相整合波長とが一致している場合、曲線bは、両者がわずかにずれた場合、曲線cは、両者が大きくずれた場合の特性である。図49の構成では、光検出器634及び639のそれぞれにおける検出レベルの差分から、光波長変換素子の位相整合状態を知ることできる。更に、光波長変換素子632からの高調波の散乱光を検出する光検出器639を複数設ければ、位相整合状態を更に正確に精確に測定できる。位相整合状態を測定して、その結果を半導体レーザの発振波長にフィードバックすることで、図50に曲線aにて示される最適な位相整合状態を常に実現して、コヒーレント光源の出力の安定化を実現することができる。
【0428】
次に、先の実施形態で説明した位相調整部を有する光波長変換素子の用いたコヒーレント光源において、出力安定化を達成できる構成について、図51を参照して説明する。図51の構成では、半導体レーザの発振波長と光波長変換素子の位相整合波長との間のずれの大きさと方向とを、同時に検出することができる。
【0429】
この構成では、波長可変半導体レーザ631の光(基本波)606は光波長変換素子632に入射して、高調波633に変換される。高調波633の出力の強度は、出射部近傍に配置された光検出器634で検出され、一方、光波長変換素子632からの高調波の散乱光は、フィルタ635を介して光検出器639で検出される。
【0430】
図51の構成が、図49の構成から異なっている点は、光波長変換素子632が位相調整部637を有し、散乱光を検出するための光検出器639が位相調整部637の近傍に配置されている点である。
【0431】
図49の構成では、図50に曲線bで示されるように、半導体レーザの発振波長と光波長変換素子の位相整合波長とが最適状態(曲線a)からわずかにずれたときに、最適状態(曲線a)に戻すために、半導体レーザの発振波長を長波長側に調整すればよいのか或いは短波長側に調整すればよいのかが、決定できない。このため、ずれが発生したときに瞬時に調整することができないので、半導体レーザの発振波長を長波長側及び短波長側の両方に変化させて、得られる高調波出力が大きくなる方を選択して調整していく必要があり、調整に時間を有するという問題点がある。
【0432】
これに対して、図51の構成に含まれる光波長変換素子の位相整合特性(チューニングカーブ)を図52(a)に、また、図52(a)にA〜Eとして示した各波長における光伝搬距離と高調波強度との関係を、図52(b)に示す。これより、チューニングカーブのピークフラット部分においても、図52(b)の特性が大きく異なっている。そこで、例えば出射端近傍での高調波強度P21と、それより手前に位置する位相調整部近傍での高調波強度P22とを測定し、両者を比較すれば、位相整合波長ではP21=P22となり、P21>P22であれば基本波波長>高調波波長であり、P21<P22であれば基本波波長<高調波波長である。これより、位相調整部に光検出器を接地することによって、半導体レーザの発振波長と光波長変換素子の位相整合波長との間のずれの大きさと、その方向(どちらが大きくなっているか)とを、同時に且つ精確に検出することができる。従って、この結果を半導体レーザにフィードバックして、その発振波長(出射光の波長)を制御すれば、常に最適な位相整合状態を保つことができる。
【0433】
なお、上記の説明における出射部近傍での光検出器634での高調波の検出は、光波長変換素子から出射される高調波を直接に測定しても、或いはその散乱光を検出しても、どちらでも良い。
【0434】
また、上記の説明では、高調波成分に関する測定(散乱光の検出)を行っているが、これに代えて基本波成分に関する測定を行っても、位相整合状態を同様に観察することができる。基本波成分による測定時には、上記の高調波成分に関する場合とは逆の傾向が見られ、高調波出力が増大する部分では基本波は減衰し、高調波出力が減衰する部分では基本波は増大する。基本波は高調波に比べて出力レベルが大きいので、観測が容易である。
【0435】
なお、上記の説明では、バルク型光学結晶を使用して光波長変換素子を構成しているが、周期状分極反転構造が形成されている光波長変換素子を用いても、同様の特性が得られる。
【0436】
(第15の実施形態)
ここでは、光波長変換素子を用いたコヒーレント光発生装置について述べる。
【0437】
前述した実施形態による光波長変換素子の構成により、高効率で安定な光波長変換素子の実現が可能となる。そこで、本光波長変換素子を用いたコヒーレント光発生装置として、短波長光源の作製を試みた。この短波長光源は、波長850nm帯の半導体レーザと、集光光学系と、光波長変換素子より構成され、半導体レーザから出射された光を、集光光学系により光波長変換素子の導波路端面に集光し、導波モードを励起する。光波長変換素子の他の導波路端面より、波長変換されたSHG光が出射する。
【0438】
本発明によって変換効率が高い光波長変換素子が実現したため、上記のような構成を有する本実施形態の短波長光源(コヒーレント光発生装置)では、出力100mW程度の半導体レーザを用いて、10mWの青色SHG光が得られた。
また、用いた波長変換素子は波長許容度が拡大されており、かつフラットなチューニング特性を有するため、波長変動に対して安定な出力特性が得られる。この結果、出力変動を5%以下に抑えることができる。
【0439】
400nm帯の波長は、印刷製版、バイオエンジニアリング、蛍光分光特性などの特殊計測分野や、光ディスク分野など、広い応用分野において望まれている。本発明の光波長変換素子を用いた短波長光源は、出力特性及び動作安定性の両面から、これらの応用分野での実用化が可能である。
【0440】
なお、本実施の形態では、半導体レーザの光を集光光学系を用いて光導波路に結合させたが、半導体レーザと光導波路を直接結合させることも可能である。具体的には、TEモード伝搬の光導波路を用いると、光導波路内の電界分布を、半導体レーザの導波モードと等しくすることが可能となるため、集光レンズなしでも高効率で結合できる。実験では、結合効率80%で直接結合が可能であり、レンズ結合とほぼ同等の結合特性が得られることを確認した。直接結合を用いると、小型で低価格の光源が実現でき、有望である。
【0441】
更に、パラメトリック発振を利用しても、波長可変レーザの可変波長領域の拡大が可能である。
【0442】
周期状の分極反転構造を有する光波長変換素子とレーザ光源を用いれば、パラメトリック発振が可能である。パラメトリック発振によれば、波長λ3の基本波を入力すると、1/λ3=1/λ1+1/λ2の関係を満足する波長λ2のシグナル光及び波長λ1のアイドラー光を発生することが可能である。これより、波長λ3の基本波を用いて、上記の条件を満足する波長を有する光を、波長可変しながら出力することができて、波長可変なレーザ光源が実現できる。
【0443】
このようなパラメトリック発振を可能にする構成において、本発明の光波長変換素子を用いれば、広い波長許容度を有する光波長変換素子が実現できるため、安定な出力を得ることができる。
【0444】
更に、従来のパラメトリック発振で問題となっていた波長可変範囲の拡大を、実現できる。
【0445】
周期Λの分極反転構造を用いてパラメトリック発振を行った場合、Λ=2mπ/(β3−β1−β2)の関係を満足する波長λ1の光と波長λ2の光が発生可能である。しかし、従来技術では、Λの条件を満足する波長許容度が狭いため、同一の周期構造内で発生条件を満足する波長の条件が狭く、波長可変の範囲が極端に狭いという問題があった。これに対して、本発明の光波長変換素子を用いると、位相整合波長許容度の拡大が、ピークフラットなチューニングカーブで実現する。これによって基本波の波長変動に対する許容度が拡大されるが、パラメトリック発振の場合は、シグナル光及びアイドラー光に対する波長許容をも、拡大することが可能となる。従って、従来の光波長変換素子では難しかった出力波長の可変波長範囲を、大幅に拡大できる。
【0446】
更に、ピークフラットなチューニングカーブを有しているため、出力強度をほぼ一定に保ったままで、発振波長を可変できる。
【0447】
(第16の実施形態)
ここでは、本発明によって構成される光情報処理装置について、説明を行う。
【0448】
図53に、本発明の光情報処理装置の構成を示す。図53において、先の実施形態に示した特徴を有するコヒーレント光発生装置640から出た出力10mWのビームは、ビームスプリッタ641を透過し、レンズ642により、情報再生媒体である光ディスク643に照射される。光ディスク643からの反射光は、逆にレンズ642によりコリメートされ、ビームスプリッタ641で反射されて、光検出器644で信号が読みとられる。更に、コヒーレント光発生装置640の出力を強度変調することで、光ディスク643に情報を書き込むことができる。
【0449】
本発明によれば、コヒーレント光発生装置640を構成する光波長変換素子の許容度が拡大されているので、出力の安定化が図れて、外部の温度変化に対しても5%以下の出力変動に抑えることができる。
【0450】
更に、高出力の青色光の発生が可能となるため、読み取りだけでなく、上記のように、光ディスク643へ情報を書き込むことも可能となる。また、半導体レーザを基本波光源として用いることで、非常に小型になるため、民生用の小型の光ディスク読み取り/記録装置にも利用できる。
【0451】
光ディスク643への書き込みには出力を変調する必要があるが、本発明の光情報処理装置では、半導体レーザの出力強度を変調することで、コヒーレント光発生装置640からの出力変調を行っている。半導体レーザの波長を変調すると発振波長が変動するが、前述のように、光波長変換素子がフラットピークな位相整合特性を有するために、半導体レーザの変調による高調波出力の不安定性は発生しない。その結果、安定な変調出力特性が得られて、低ノイズの特性が実現される。
【0452】
更に、光波長変換素子の光導波路幅を最適化することで、出力ビームのアスペクト比の最適化が行える。例えば、光導波路上に光導波路幅より狭い高屈折率層を有する導波路構造を設けることで、出射ビームのアスペクト比を1:1に近づけることが可能となる。これによって、ビーム成形プリズムなどを用いずに光ピックアップの集光特性を向上させることが可能になって、高い伝達効率、優れた集光特性、低価格化が実現できる。更に、ビーム成形時に発生する散乱光のノイズが低減できて、ピックアップの簡素化が実現される。
【0453】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、光波長変換素子と波長可変型半導体レーザとを組み合わせて構成される短波長光源において、光波長変換素子は波長可変型半導体レーザの出力光を基本波光として受け取り、基本波光の波長に対する波長変換によって得られる高調波光を出力し、且つ、光波長変換素子の高調波光の出力特性は、最大出力の近傍で平坦部を有しており、波長可変型半導体レーザの発振波長が光波長変換素子の該出力特性の平坦部に固定されるように、波長可変型半導体レーザの発振波長を可変するための注入電流を制御する。これによって、得られる高調波光出力を一定に保持することができる。
【0454】
また、波長可変半導体レーザの発振波長が上記特性の平坦部に固定されているので、高調波光出力が一定になるように波長可変型半導体レーザの駆動電流を制御する定出力駆動(APC駆動)が可能となる。
【0455】
更に、光導波路に結合する基本波光出力を一定になるように制御し、且つ波長可変型半導体レーザの発振波長が上記特性の平坦部に固定されるように波長可変するための注入電流を制御することにより、環境温度の変化に伴う温度変化を補償するための温度制御が実施されない場合でも安定な高調波光出力が得られる短波長光源が実現される。これによって、様々な分野への適用が可能になり、大きな実用的効果が得られる。
【0456】
また、本発明によれば、複数の非線形光学結晶と各結晶間に設けた位相調整部とからなる光波長変換素子において、位相調整部における基本波と高調波との間の位相差を変調することで、変換効率の低下を抑えて、広い波長範囲において位相整合波長を可変することが可能となる。これによって、光波長変換素子の出力安定化を図ることができるため、その実用効果は大きい。
【0457】
また、本発明によれば、複数の非線形光学結晶と各結晶間に設けた位相調整部とからなる光波長変換素子において、各非線形光学結晶の位相整合条件をお互いに等しくすることで、光波長変換素子の位相整合波長許容度を大幅に拡大し、且つピークフラットな位相整合特性(チューニングカーブ)を実現できる。これによって、光波長変換素子の出力安定化を図ることができるため、その実用効果は大きい。
【0458】
光波長変換素子が周期状分極反転構造を有する場合には、周期状分極反転構造をお互いに等しい周期を有する複数の領域に分割し、その分割された領域の間に位相調整部を挿入することで、光波長変換素子の位相整合波長許容度を大幅に拡大し、且つピークフラットな位相整合特性(チューニングカーブ)を実現できる。これによって、光波長変換素子の出力安定化を図ることができるため、その実用効果は大きい。
【0459】
また、本願発明では、光波長変換素子における基本波の伝搬損失と高調波の伝搬損失との関係を最適化することで、伝搬損失によって発生していた伝搬長に対する光波長変換素子の位相整合特性(チューニングカーブ)の変動を、大幅に低減できることを見いだした。これによって、光波長変換素子の設計が容易になるとともに、光波長変換素子に集積化される機能素子の特性に対する伝搬損失の影響を、大きく低減させる。更に、光波長変換素子の入出力特性における伝搬方向可逆性が実現されるので、可逆特性を利用した共振器型光波長変換素子や反射型光波長変換素子における効率を、大きく改善することができる。
【0460】
更に、光波長変換素子と半導体レーザとにより構成するコヒーレント光発生装置(コヒーレント光源)における出力安定化が、実現される。光波長変換素子の位相整合波長を可変して、半導体レーザの発振波長に合わせることが可能となるので、高出力のコヒーレント光源が得られて、その実用効果は大きい。
【0461】
或いは、光波長変換素子の位相整合波長許容度を半導体レーザの縦モード間隔よりも広く設定し、且つ位相整合波長許容度内でチューニングカーブがピークフラットな形状を有するように構成することで、半導体レーザの発振波長を光波長変換素子の位相整合波長許容度内に常に安定して設定することが可能になる。この結果、コヒーレント光の出力変動が抑制されて、安定して出力特性を有するコヒーレント光源が提供される。
【0462】
また、本発明によれば、光波長変換素子と半導体レーザとにより構成するコヒーレント光発生装置(コヒーレント光源)において、光波長変換素子による高調波の散乱光を検出して、これに基づいて、半導体レーザの発振波長と光波長変換素子の位相整合波長との間のずれを検出することができる。この検出されたずれを半導体レーザにフィードバックして、半導体レーザの発振波長を光波長変換素子の位相整合波長に一致させることで、コヒーレント光源の出力を常に安定させることが可能になる。
【0463】
更に、本発明に従って構成される位相調整部を有する光波長変換素子を用いれば、半導体レーザの発振波長と光波長変換素子の位相整合波長との間のずれの大きさ及び方向を、同時に検出できる。従って、フィードバックによる波長安定化が更に容易になって、短時間での波長安定化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態における光波長変換素子の構成を模式的に示す図である。
【図2】(a)は、位相調整部を有さない従来の光波長変換素子における高調波光出力特性のシミュレーション結果を示す図であり、(b)は、図1に示す本発明の光波長変換素子における高調波光出力特性のシミュレーション結果を示す図である。
【図3】(a)は、2分割構造を有する本発明の分極反転型光波長変換素子の構成を模式的に示す図であり、(b)は、3分割構造を有する本発明の分極反転型光波長変換素子の構成を模式的に示す図である。
【図4】(a)は、2分割構造を有する本発明の分極反転型光波長変換素子における高調波光出力特性のある測定結果を示す図であり、(b)は、3分割構造を有する本発明の分極反転型光波長変換素子における高調波光出力特性のある測定結果を図である。
【図5】本発明の第1の実施形態における短波長光源の構成を模式的に示す図である。
【図6】波長可変型DBR半導体レーザのDBR部への注入電流と発振波長との関係を示す図である。
【図7】(a)及び(b)は、波長可変型DBR半導体レーザの発振波長と従来の光波長変換素子の高調波光出力特性との関係を示す図である。
【図8】(a)及び(b)は、波長可変型DBR半導体レーザの発振波長と本発明の光波長変換素子の高調波光出力特性との関係を示す図である。
【図9】制御回路が付加された本発明の短波長光源の構成を説明するためのブロック図である。
【図10】図9の構成に対して高調波光出力の安定化のために実施される制御方法を説明するフローチャート図である。
【図11】(a)〜(d)は、波長可変型DBR半導体レーザのDBR部への注入電流に対する高調波光出力特性を示す図である。
【図12A】本発明の第3の実施形態における短波長光源の構成を模式的に示す図である。
【図12B】本発明の第4の実施形態における短波長光源の構成を模式的に示す図である。
【図13】図12Aの構成に対して高調波光出力の安定化のために実施される制御方法を説明するフローチャート図である。
【図14】図12Bの構成に対して高調波光出力の安定化のために実施される制御方法を説明するフローチャート図である。
【図15】従来のある短波長光源の構成を模式的に示す図である。
【図16】(a)及び(b)は、従来技術における波長可変型DBR半導体レーザの発振波長と光波長変換素子の高調波光出力特性との関係を示す図である。
【図17】波長可変型DBR半導体レーザの発振波長及び光波長変換素子の位相整合波長の温度依存性を表す図である。
【図18】本発明の第5の実施形態において、図12Bの構成に対して高調波光出力の安定化のために実施される制御方法を説明するフローチャート図である。
【図19】本発明の第5の実施形態の短波長光源を利用して構成された、相変化型光ディスクを用いた情報記録再生システムの構成を模式的に示す図である。
【図20】本発明の第5の実施形態の短波長光源を利用して構成された、フォトプリンタシステムの構成を模式的に示す図である。
【図21】(a)は、本発明の第6の実施形態における光波長変換素子の構成を示す斜視図であり、(b)は、(a)の光波長変換素子における位相整合特性を表す図である。
【図22】図21(a)の光波長変換素子における位相整合特性の変化を示す図である。
【図23】本発明の第6の実施形態における光波長変換素子の構成を示す斜視図である。
【図24】本発明の第6の実施形態の光波長変換素子における、位相調整部の数の変化に伴う位相整合特性の変化を示す図である。
【図25】位相シフト構造の光波長変換素子における位相整合特性を表す図である。
【図26】(a)は、位相シフト構造の光波長変換素子における不均一な位相整合特性として、ピークフラット部が傾いている場合を表す図であり、(b)は、位相シフト構造の光波長変換素子における不均一な位相整合特性として、ピークフラット部に2つのピークが存在している場合を表す図である。
【図27】本発明の第8の実施形態における光波長変換素子の構成を示す斜視図である。
【図28】(a)は、図27の構成でヒータに温度を加えない場合の位相整合特性を表す図であり、(b)は、図27の構成でヒータの温度を調節する場合の位相整合特性を表す図である。
【図29】本発明の第8の実施形態における他の光波長変換素子の構成を示す斜視図である。
【図30】本発明のコヒーレント光発生装置の構造を示す図である。
【図31】(a)は、光波長変換素子のチューニングカーブの最大値と半導体レーザの発振波長とが一致している場合の、半導体レーザの発振波長と位相整合特性の関係を表す図であり、(b)は、発振波長がチューニングカーブの最大値近傍からずれた場合における、半導体レーザの発振波長と位相整合特性の関係を表す図である。
【図32】本発明の光情報処理装置の構成図である。
【図33】従来の光波長変換素子の構成図である。
【図34】従来の光波長変換素子の構成図である。
【図35】(a)は、従来の2分割構造光波長変換素子における位相整合特性を表す図であり、(b)は、従来の3分割構造光波長変換素子における位相整合特性を表す図である。
【図36】本発明による光波長変換素子の具体的な構造を示す図である。
【図37】(a)は、位相調整部を有さない従来の光波長変換素子における高調波光出力特性のシミュレーション結果を示す図であり、(b)は、位相整合条件が異なる結晶を組み合わせて構成した従来の光波長変換素子における高調波光出力特性のシミュレーション結果を示す図であり、(c)は、図36に示す本発明の光波長変換素子における高調波光出力特性のシミュレーション結果を示す図である。
【図38】(a)は、2分割構造の光波長変換素子を示す図であり、(b)は、(a)の素子で得られるチューニングカーブを描いた図である。
【図39】(a)は、2分割構造の光波長変換素子における素子全長に対する一方の結晶の長さの割合とチューニングカーブのピーク近傍部分の凹部の大きさ及び波長許容度の関係を示し、(b)は、2分割構造の光波長変換素子における素子全長に対する素子長の割合をパラメータとした幾つかのチューニングカーブを示す図である。
【図40】(a)は、3分割構造の光波長変換素子における素子全長に対する一方の結晶の長さの割合とチューニングカーブのピーク近傍部分の凹部の大きさ及び波長許容度の関係を示し、(b)は、3分割構造の光波長変換素子における素子全長に対する素子長の割合をパラメータとした幾つかのチューニングカーブを示す図である。
【図41】疑似位相整合型の本発明の光波長変換素子の構成を示す図である。
【図42】(a)は、基本波の伝搬損失のみが存在する場合の光波長変換素子のチューニングカーブの計算結果を示す図であり、(b)は、高調波の伝搬損失のみが存在する場合の光波長変換素子のチューニングカーブの計算結果を示す図である。
【図43】基本波及び高調波の伝搬損失とチューニングカーブとの関係を示す図である。
【図44】本発明のコヒーレント光発生装置の構造図である。
【図45】(a)は、光波長変換素子のチューニングカーブの最大値と半導体レーザの発振波長とが一致している場合の、半導体レーザの発振波長と位相整合特性の関係を表す図であり、(b)は、発振波長がチューニングカーブの最大値近傍からずれた場合における、半導体レーザの発振波長と位相整合特性の関係を表す図である。
【図46】(a)は、本発明のコヒーレント光発生装置において、光波長変換素子のチューニングカーブの最大値と半導体レーザの発振波長とが一致している場合の、半導体レーザの発振波長と位相整合特性の関係を表す図であり、(b)は、本発明のコヒーレント光発生装置において、発振波長がチューニングカーブの最大値近傍からずれた場合における、半導体レーザの発振波長と位相整合特性の関係を表す図である。
【図47】(a)は、コヒーレント光発生装置における基本波の変調出力を示す図であり、(b)は、従来の光波長変換素子を用いたコヒーレント光発生装置の出力変動を示す図であり、(c)は、本発明の光波長変換素子を用いたコヒーレント光発生装置の出力変動を示す図である。
【図48】コヒーレント光発生装置の基本波波長を変化させた場合の出力特性を表す図である。
【図49】本発明の第14の実施形態におけるコヒーレント光源の構成を示す図である。
【図50】光波長変換素子の内部における光伝搬距離と高調波強度との関係を示す図である。
【図51】本発明の第14の実施形態におけるコヒーレント光源の他の構成を示す図である。
【図52】(a)は、図51の構成に含まれる光波長変換素子の位相整合特性を示す図であり、(b)は、(a)に示す複数の波長における光伝搬距離と高調波強度との関係を示す図である。
【図53】本発明の光情報処理装置の構成図である。
【符号の説明】
1、2、3 非線形光学結晶
4、5 位相調整部
6 基本波光
7 高調波光
100 光波長変換素子
8、9 分極反転領域
10 位相調整部
11、12、13 分極反転領域
14、15 位相調整部
16、17 光導波路
110、120 光波長変換素子
18 光波長変換素子
19 波長可変型DBR半導体レーザ
20 電子冷却素子
21 モジュール
22 コリメートレンズ
23 フォーカスレンズ
201 サーミスタ
150 短波長光源
24 短波長光源
25 光検出器
26 制御回路
27 波長可変型DBR半導体レーザ
28 光波長変換素子
29 モジュール
30 コリメートレンズ
31 フォーカスレンズ
32 波長選択ミラー
33 ビームスプリッタ
34 光検出器
35 光検出器
36 制御回路
37 サーミスタ
300、400 短波長光源
38 波長可変型DBR半導体レーザ
39 コリメートレンズ
40 フォーカシングレンズ
41 光波長変換素子
42 MgドープLiNbO3基板
43 プロトン交換光導波路
44 周期的分極反転領域
45 短波長光源
46 レンズ
47 偏光ビームスプリッタ
48 光検出器
49 対物レンズ
50 光ディスク
57 λ/4板
51 赤色レーザ光源
52 緑色コヒーレント光源
53 短波長ブルー光源
54 ポリゴンミラー
55 Fθレンズ
56 カラーペーパ
621 光波長変換素子
622 半導体レーザ
623 入射部
624 出射部
625 半導体レーザの発振モード(縦モード)
626 光波長変換素子のチューニングカーブ
636 本発明による光波長変換素子のチューニングカーブ
606 基本波
631 半導体レーザ
632 光波長変換素子
633 高調波
634 光検出器
635 フィルタ
639 光検出器
640 コヒーレント光発生装置
641 ビームスプリッタ
642 レンズ
643 光ディスク
644 光検出器
1001 非線形光学結晶
1002 非線形光学結晶
1003 位相調整部
1006 液晶
1007 MgO:LiNbO3基板
1008 分極反転構造
1009 光導波路
1010 ヒータ
1011 位相調整部
1021 光波長変換素子
1022 半導体レーザ
1023 入射部
1024 出射部
1025 半導体レーザの縦モード
1026 光波長変換素子のチューニングカーブ
1640 コヒーレント光発生装置
1641 ビームスプリッタ
1642 レンズ
1643 光ディスク
1644 光検出器
1101 LiNbO3基板(非線形光学結晶)
1102 光導波路
1103 分極反転層
1105 分極反転領域
1106 位相調整部

Claims (15)

  1. 基本波光と高調波光とに対してほぼ等しい位相整合条件を有する少なくとも2つの非線形光学結晶と、
    前記2つの非線形光学結晶の間に、前記2つの非線形光学結晶に隣接して配置された位相調整部と、を備え、
    前記一方の非線形光学結晶の長さをL1、他方の非線形光学結晶の長さをL2としたとき、
    L1/(L1+L2)が13%〜17%であり、
    該位相調整部の長さtが、
    t=(2n+α)π/(β2ω−2・βω)
    但し、α=0.9〜1.1
    n=0、1、2、……、
    β2ω:該位相調整部における前記高調波光の伝搬定数
    βω :該位相調整部における前記基本波光の伝搬定数
    なる関係を満足している光波長変換素子。
  2. 基本波と高調波とに対してほぼ等しい位相整合条件を有する少なくとも第1ないし第3の3つの非線形光学結晶と、
    前記3つの非線形光学結晶における隣接する非線形光学結晶の間にそれぞれ配置された2つの位相調整部と、を備え、
    前記第1の非線形光学結晶の長さをL1、該第1の非線形光学結晶と第3の非線形光学結晶との間に配された前記第2の非線形光学結晶の長さをL2、前記第3の非線形光学結晶の長さをL3としたとき、
    L1≒L3
    L1/(L1+L2+L3)が13%〜15%であり、
    前記位相調整部の長さtが、
    t=(2n+α)π/(β2ω−2・βω)
    但し、α=0.7〜0.9
    n=0、1、2、……、
    β2ω:該位相調整部における前記高調波光の伝搬定数
    βω :該位相調整部における前記基本波光の伝搬定数
    なる関係を満足している光波長変換素子。
  3. 前記位相調整部の両端は、それぞれ前記非線形光学結晶と接合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光波長変換素子。
  4. 前記各非線形光学結晶が、ほぼ等しい分極反転周期構造を有することを特徴とする請求
    項1または2に記載の光波長変換素子
  5. 前記位相調整部は、該非線形光学結晶とは異なる分散特性を有し、且つその屈折率または長さの少なくとも一方が変調可能であるように構成されている、請求項1または2に記載の光波長変換素子
  6. 前記非線形光学結晶が光導波路を有し、該光導波路内で前記基本波光の波長が変換されている、請求項1または2に記載の光波長変換素子
  7. 前記非線形光学結晶が共振器構造内に配置されている、請求項1または2に記載の光波長変換素子
  8. 少なくとも請求項1または請求項2に記載の光波長変換素子と、
    波長可変型半導体レーザと、を含み、
    前記光波長変換素子は、該波長可変型半導体レーザの出力光を基本波光として受け取り、該基本波光の波長に対する波長変換によって得られる高調波光を出力し、且つ、該光波長変換素子の該高調波光の出力特性は、最大出力の近傍で平坦部を有しており、該波長可変型半導体レーザの発振波長が、該光波長変換素子の該出力特性の該平坦部に固定されている短波長光源
  9. 前記波長可変型半導体レーザの前記発振波長が前記光波長変換素子の前記出力特性の前記平坦部に固定されている間は、前記高調波光の出力レベルが一定値になるように、該波長可変型半導体レーザの駆動電流が制御される、請求項8に記載の短波長光源
  10. 前記波長可変型半導体レーザの前記発振波長を制御する制御回路と、前記高調波光の出力を検出する光検出器と、を更に備え、
    前記制御回路は、該光検出器が検出する該高調波光の出力が前記出力特性における前記平坦部での出力レベルに保持されるように、該波長可変型半導体レーザの該発振波長を制御する、請求項8に記載の短波長光源
  11. 前記波長可変型半導体レーザの前記発振波長を制御する制御回路と、前記高調波光の出力を検出する第1の光検出器と、前記波長可変型半導体レーザの出力光を検出する第2の光検出器と、を更に備え、
    前記制御回路は、該第2の光検出器が検出する該波長可変型半導体レーザの出力光が所定の一定値に保持されるように、該波長可変型半導体レーザの駆動電流を制御し、且つ、該第1の光検出器が検出する該高調波光の出力が前記出力特性における前記平坦部での出力レベルに保持されるように、該波長可変型半導体レーザの該発振波長を制御する、請求項8に記載の短波長光源
  12. 前記波長可変型半導体レーザは、活性領域と分布ブラッグ反射領域とを含み、
    前記高調波光の出力を検出する光検出器と、
    前記活性領域及び分布ブラッグ反射領域への各注入電流を制御することによって、前記波長可変型半導体レーザの前記発振波長を制御する制御回路と、を更に備え、
    前記制御回路は、前記活性領域を、所定の値の電流によって定電流駆動すると共に、前記分布ブラッグ反射領域への注入電流を、前記光検出器が検出する前記高調波光の出力が前記出力特性における前記平坦部での出力レベルに保持され、且つ、該高調波光の出力が所定の一定値に保持されるように、制御する、請求項8に記載の短波長光源
  13. 前記波長可変型半導体レーザの前記発振波長が前記光波長変換素子の前記出力特性の前記平坦部に固定されている間は、前記波長可変型半導体レーザの前記駆動電流の増加時には前記高調波光の出力が増加し、且つ該波長可変型半導体レーザの該駆動電流の減少時には該高調波光の出力が減少する、請求項8に記載の短波長光源
  14. 前記波長可変型半導体レーザの前記発振波長の制御のために注入される注入電流の異なるレベルI N 及びI N+1 (但し、I N+1 >I N )に対して、波長変換により得られる前記高調波光の出力をそれぞれP N 及びP N+1 とすれば、前記制御回路は、該注入電流の増加時に、
    (P N+1 −P N )>0であり且つ(P N+1 −P N )の絶対値が最大値となる該注入電流の異なるレベルI N 及びI N+1 に対して、該注入電流をIdbr=I N+1 +ΔIとなる値に設定し、これによって該波長可変型半導体レーザの該発振波長を所定の値に固定する、請求項9に記載の短波長光源
  15. 前記波長可変型半導体レーザの前記発振波長の制御のために注入される注入電流の異なるレベルI N 及びI N+1 (但し、I N+1 >I N )に対して、波長変換により得られる前記高調波光の出力をそれぞれP N 及びP N+1 とすれば、前記制御回路は、該注入電流の減少時に、(P N+1 −P N )<0であり且つ(P N+1 −P N )の絶対値が最大値となる該注入電流の異なるレベルI N 及びI N+1 に対して、該注入電流をIdbr=I N −ΔIとなる値に設定し、これによって該波長可変型半導体レーザの該発振波長を所定の値に固定する、請求項9に記載の短波長光源
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