JP3855350B2 - 芳香族ポリカルボジイミド及びそのフィルム - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の背景】
本発明は新規なポリカルボジイミドに関する。本発明のポリカルボジイミドは高耐熱性など種々の優れた特性を有するフィルムや接着剤、成形物を提供する。
【0002】
芳香族ポリカルボジイミドには、従来ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)やトリレンジイソシアネート(TDI)などをモノマーとし、これを重合したものが知られている。このようなポリカルボジイミドは、その優れた耐熱性により耐炎化フィルムや耐熱性接着剤として使用されている。
【0003】
これらのポリカルボジイミドフィルムは、溶解性に乏しく、分子量の増大につれゲル化したり、固体となって析出したりして、充分な高分子量ポリマーは得られない。また400℃以上の高温にさらしても揮発性ガスや分解モノマーを生成しないという点では耐熱性を有するが、200℃以上で熱処理すると自己保持性がなく、脆くなり実用に耐えない。また、銅箔などの被着体へ加熱圧着した場合の接着力に関しても十分とは言えない。
【0004】
【発明の目的及び概要】
本発明者らは、このような従来のポリカルボジイミドの欠点を解消すべく種々の芳香族ポリマーについて検討を重ねた結果、本発明の新規芳香族ポリカルボジイミドを創製するに至った。即ち、本発明は下式(I):
【化4】
(式中、Rは水素又はアルキル基、nは3〜600の整数を表す。)
で表される構成単位を有する芳香族ポリカルボジイミドを提供するものである。また、本発明は、その有機溶媒溶液及びフィルムを提供するものである。なお、本明細書においてフィルムはポリマーの成膜された形状のものを意味し、いわゆるシートと呼ばれるものも含む。本発明のポリマーは新規な高分子化合物であり、優れた溶解性と共に非常に高い耐熱性を有し、また接着性、低温加工性及び耐湿性にも優れる。
【0005】
【発明の詳細な開示】
本発明のポリカルボジイミドは、下式(II):
【化5】
(式中、Rは前記に同じ)
で表される対応するジイソシアネートをモノマーとし、これをリン系触媒の存在下、それ自体は公知の方法で重合することにより得られる。
【0006】
このようなジイソシアネートの代表的なものとしては、下式(IIa)及び(IIb)で表されるものが挙げられる。
【0007】
【化6】
【0008】
【化7】
【0009】
なお、前記化合物(IIb)は新規物質である。また、前記化合物(IIa)は既知の物質であり、その製造法に関する文献やこれを用いたポリウレタンの製造法に関する文献(Andrianov,et.al.,Vysokomol.Soedin.,Ser.B,20(6),471.(1978))などもあるが、これらには化合物(IIa)からポリカルボジイミドを製造することについての記載は全くない。
【0010】
(モノマー)
本発明ポリカルボジイミドの原料であるイソシアネート化合物(前記式(II))は、その前駆体である下記(III):
【化8】
(式中、Rは前記に同じ)
で表される対応するジアミンを、それ自体は公知の種々の方法でイソシアネート化することにより製造することができる。
【0011】
かかるジアミン化合物のイソシアネート化法としては、ホスゲン、ジフェニルカーボネート、又はカルボニルジイミダゾールを作用させる方法が挙げられる。また、別法としてジアミン化合物をハロゲン化アルキルホーメートを用いて一旦ウレタンとし、これをクロロシラン、カテコールボラン等の触媒存在下にイソシアネート化してもよい。
【0012】
さらに、他の方法ではジイソシアネートの前駆体として、下式(IV):
【化9】
(式中、Rは前記に同じ。)
で表されるカルボン酸を用い、これをクルチウス分解によりイソシアネート化する方法などを用いてもよい。
【0013】
これら製造方法のうち、ジアミン化合物をハロゲン化アルキルホーメートまたはハロゲン化アリールホーメートを用いて一旦ウレタンとし、これに触媒としてクロロシランを用いてイソシアネート化する方法(G.Greber.et.al.,Angew.Chem.Int.Ed.,Vo.l7,No.12,941(1968))や、あるいはカテコールボランを用いてイソシアネート化する方法(V.L.K.Valli.et.al.,J.Org.Chem.,Vol.60,257(1995))が収率及び安全性の点から好ましいので、以下に詳しく述べる。
【0014】
(ウレタン合成)
まず対応するジアミン化合物(式III)にメチルクロロホルメート、エチルクロロホルメート、フェニルクロロホルメート、p−ニトロフェニルクロロホルメートなどを作用させてウレタンを合成する。原料として用いることのできるジアミン化合物としては、具体的には下記式(IIIa):
【化10】
で示される2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、あるいは、下記式(IIIb):
【0015】
【化11】
で示される2,2−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパンなどが挙げられる。
【0016】
また、イソシアネート化を円滑に進行させるためにはフェニルクロロホルメートまたはp−ニトロフェニルクロロホルメートが適しているが、p−ニトロフェニルクロロホルメートは活性が高すぎ、副反応が多く起こる恐れがあるのでフェニルクロロホルメートが最も好ましい。これらクロロホルメート類の使用量はジアミンのモル数の1.5〜4.0倍モル、好ましくは1.6〜3.8倍モル、最適には1.8〜3.6倍モルがよい。
【0017】
これら反応に用いられる溶媒はジアミンを溶解させるものであればよい。例えばTHF、ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル系化合物、トルエン、キシレン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素系化合物、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系化合物、酢酸エチルなどのエステル系化合物などが挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0018】
反応温度は−40〜100℃、好ましくは−20〜80℃、最も好ましくは0〜60℃である。−40℃未満では反応が進行しにくく、100℃を越える高温では縮合などの副反応が起こる可能性がある。
【0019】
反応により生成する塩化水素をトラップする塩基としては、用いた溶媒に溶解し反応を阻害しないものであればよく、例えばトリエチルアミン、水酸化ナトリウム、ピリジン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)などが挙げられる。塩基の使用量は用いたジアミンのモル数の1.5〜4.0倍であり、好ましくは1.8〜3.5倍である。
【0020】
得られたウレタンを精製するには、再結晶、カラムなど従来公知の方法を用いることができる。また、必要に応じて蒸留を行ってもよい。
【0021】
(a)クロロシランを用いたイソシアネート化
前記ウレタンをクロロシランを用いてイソシアネート化するには、ウレタンのモル量の1.5〜4.6倍、好ましくは1.6〜4.0倍、 最も好ましくは1.8〜3.5倍のクロロシランを触媒とし熱分解を行う。
【0022】
クロロシラン類としては、トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、トリメトキシクロロシラン、或いはこれらのジクロロ体、トリクロロ体、ジクロロシラン、トリクロロシラン、テトラクロロシランなどが用いられるが、中でも扱いやすさや価格の面から、トリメチルクロロシランが好適である。
【0023】
用いられる溶媒はウレタンを溶解または懸濁するものであればよく、前記のエーテル系化合物、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。また、場合によっては反応途中でその一部ないし全部を置換することにより反応温度を変化させることもできる。
【0024】
反応温度は0℃から用いた溶媒の沸点まで、好ましくは室温から沸点までである。反応温度が低すぎると反応が全く進行しない場合がある。逆に反応温度を上げすぎたり長く加熱し過ぎたりすると、生成物が分解する場合があるので、IRなどで反応をトレースしながら徐々に温度を上昇させて進めるのがよい。
【0025】
反応の際に生成する塩化水素をトラップする塩基としては、上記ウレタン化と同じ物が用いられ、使用量も同様である。
【0026】
(b)ハロゲン化カテコールボランを用いたイソシアネート化
ウレタンのイソシアネート化には、前記クロロシランの替わりにハロゲン化カテコールボランを触媒として用いた方法を採用してもよい。ハロゲン化カテコールボランとしては、クロロカテコールボラン、ブロモカテコールボランなどが挙げられるが、扱いやすさ、価格の点から、クロロカテコールボランが好ましい。また、その使用量は前記クロロシランの場合と同様である。カテコールボラン類はクロロシラン類よりもウレタンの熱分解に対してより高い活性を有するので、フェニルウレタン以外のウレタンも用いることができる。
【0027】
反応溶媒はウレタンを溶解または懸濁するものであればよく、上記クロロシランを用いたイソシアネート化と同じ物を用いてよい。これらの溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。また、場合によっては反応途中でその一部ないし全部を置換することにより反応温度を変化させることもできる。反応温度は一般に−50〜80℃、好ましくは−20〜60℃、さらに好ましくは0〜40℃であり、用いるウレタンによって異なる。反応温度が低すぎると反応が全く進行しない場合がある。逆に反応温度をあげ過ぎたり長く加熱し過ぎたりすると、生成物が分解する場合があるので、IRなどで反応をトレースしながら徐々に温度を上昇させて進めるのがよい。反応の際に生成する塩化水素をトラップするには、前記と同様にして塩基を用いる。
【0028】
得られたイソシアネートモノマーは、反応後、溶媒を除去し、フラッシュカラムもしくは再結晶または減圧蒸留を行なって精製することができる。
【0029】
(ポリカルボジイミドの製造)
前記ジイソシアネートを用いてポリカルボジイミドを製造するには、ジイソシアネートモノマーを単独で用いてもよく、又その性質を損なわない範囲、即ち50モル%以下で他の有機ジイソシアネート、例えば4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、1-メトキシフェニル-2,4-ジイソシアネート、3,3'−ジメトキシ−4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3'-ジメチル-4,4'-ジフェニルエーテルジイソシアネート、o-トリレンジイソシアネートなどと共重合してもよい。
【0030】
重合温度は40〜150℃が好ましく、50〜140℃がより好ましい。反応温度が40℃より低いと反応時間が長くなりすぎ実用的でない。また150℃を越える反応温度は溶媒の選択が困難である。
【0031】
ポリカルボジイミド合成におけるジイソシアネートモノマーの濃度は2〜50重量%(以下、単に%という)、好ましくは5〜45%、最も好ましくは15〜40%である。濃度が2%より低いとカルボジイミド化が進行しない場合がある。また50%を越えると反応の制御が困難になる可能性がある。
【0032】
ポリカルボジイミドの合成時及びポリカルボジイミド溶液において用いられる有機溶媒は、かかる反応において従来公知のものであってよい。具体的にはテトラクロロエチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、反応の途中でその一部又は全部を置換してもよい。
【0033】
カルボジイミド化に用いる触媒としては、公知のリン系触媒がいずれも好適に用いられ、例えば1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、あるいはこれらの3−ホスホレン異性体などのホスホレンオキシドが挙げられる。
【0034】
また重合反応の末期、中期、初期のいずれか、もしくは全般にわたり、モノイソシアネートを加えて末端封鎖処理をしてもよい。このようなモノイソシアネートとしては、フェニルイソシアネート、p−ニトロフェニルイソシアネート、p−またはm−トリルイソシアネート、p−ホルミルフェニルイソシアネートなどの芳香族モノイソシアネートをいずれも用いることができる。このようにして得られたポリカルボジイミド溶液は、溶液の保存安定性に優れている。
【0035】
また、反応終了後にメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサンなどの貧溶媒に反応液を投入し、ポリカルボジイミドを沈殿として析出させ、未反応のモノマーや触媒を取り除いてもよい。このような操作を行うことにより、ポリカルボジイミドの溶液安定性を向上させることができる。
【0036】
ポリカルボジイミドの溶液を調製するには、ポリマーを沈殿として析出させた後、所定の操作により洗浄、乾燥を行い、再度有機溶媒に溶解する。
【0037】
また、ポリマー溶液中に含まれる副生成物を適当な吸着剤などに吸着させ、精製してもよい。吸着剤としては例えばアルミナゲル、シリカゲル、活性炭、ゼオライト、活性酸化マグネシウム、活性ボーキサイト、フラースアース、活性白土、分子ふるいカーボンなどを単独もしくは併用して用いることができる。
【0038】
本発明のポリカルボジイミドの分子量は、数平均分子量にして1,000〜200,000、好ましくは2,000〜100,000である。すなわち、式(I)においてnは3〜600の整数、好ましくは6〜300の整数である。ポリカルボジイミドの分子量がこれより高すぎると、常温での放置においても数分から数時間で容易にゲル化するため、実用上好ましくない。また、分子量が低すぎると、皮膜の信頼性に欠けるので好ましくない。
【0039】
(フィルム及び接着シートの製造)
本発明のポリカルボジイミドフィルム(又はシート)は、ポリカルボジイミドワニスを公知の方法(キャスティング、スピンコーティング、ロールコーティングなど)を用いて適当な厚さに製膜することにより得られる。このフィルムは、通常、溶媒の除去に必要な温度で乾燥すればよく、例えば30〜300℃で乾燥することができる。特に硬化反応をあまり進行させずに乾燥させるためには50〜250℃が好ましい。乾燥温度が30℃より低いと、フィルム中に溶剤が残存し、フィルムの信頼性が乏しくなり好ましくない。また、乾燥温度が300℃より高いと、ポリカルボジイミド樹脂の架橋が進行し、強度などの点で実用上不適当となる可能性があり好ましくない。
【0040】
本発明のポリカルボジイミド樹脂組成物には、その加工性、耐熱性を損なわない範囲で微細な無機充填剤を配合してよい。また表面平滑性を得るために平滑剤、レベリング剤、脱泡剤などの各種添加剤を必要に応じて添加してもよい。
【0041】
本発明のポリマーをフィルム状に成形した成形物は、耐熱性接着シートとして用いることができる。フィルム、又は接着シートに成形することができるシート厚としては、一般には1〜2000μmであるが、これに限定されるものではなく目的に応じて適宜選択することができる。またシートの形状や大きさについても、リードフレームや半導体チップなど、被着体に応じて適宜に選択することができる。
【0042】
接着シートを製造する場合、導電性の付与や伝熱性の向上、弾性率の調節、特に高弾性率化などをはかるため、例えばアルミニウム、銅、銀、金、ニッケル、クロム、鉛、錫、亜鉛、パラジウム、半田などの金属、あるいは合金、アルミナ、シリカ、マグネシア、窒化ケイ素などのセラミック、その他カーボンなどからなる種々の無機粉末を必要に応じ1種または2種以上配合してもよい。
【0043】
さらに、これらのフィルムを支持体上に形成して多層の接着シートとしてもよい。このような構成の接着シートを製造するには、支持体上にワニスを塗工してもよく、あらかじめフィルムを形成し、これををプレスなどによりラミネートして製造してもよい。
【0044】
ここで用いられる支持体としては、金属箔、絶縁性フィルムなどが挙げられる。金属箔としてはアルミニウム、銅、銀、金、ニッケル、インジウム、クロム、鉛、錫、亜鉛、パラジウム等がいずれも用いられてよく、これらを単独で、あるいは合金として用いてもよい。また、絶縁性フィルムとしては、ポリイミド、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレートなど、耐熱性や耐薬品性を有するフィルムであればいずれも用いられてよい。
【0045】
また金属箔と絶縁性フィルムは、それぞれ単独で用いてもよく、また両者を2層以上積層した、例えば金属箔/絶縁性フィルムなどの二層基材としてもよい。このような二層基材としては、例えば銅/ポリイミド二層基材などが挙げられる。
【0046】
本発明のシート状接着剤は、加熱処理により熱硬化して強固な接着力を発現すると共に、低吸湿性の硬化物となる。加熱処理を行うには、例えばヒーター、超音波、高周波、紫外線などの適宜な方法が用いられてよい。従って本発明の接着シートは、種々の材料の接着処理に好ましく、特に高信頼性の固着処理が要求され、そのため低吸湿性であることを要する半導体チップやリードフレームなどで代表される電気・電子部品の固着処理に好ましい。本発明の接着シートは低吸湿性であること、可撓性に富み取り扱いやすいこと、半導体素子に対して接着性がよいこと、保存安定性がよいことなどの点で優れている。
【0047】
なお、前記のジアミンのウレタン化、イソシアネート化及びカルボジイミド化は、それぞれの工程で単離、精製を行い、段階的に進めてもよく、1つの反応器中でこれらの工程を続けて一連の反応として行ってもよい。
【0048】
【実施例】
つぎに本発明を実施例及び比較例によりさらに具体的に説明する。なお、得られたポリカルボジイミドの特性は次のようにして測定した。
【0049】
分子量
東ソー製HLC8020を用い、THFを展開溶媒として測定し、ポリスチレンスタンダード換算で算出した。
【0050】
IR
日本電子製FT/IR−230を用いて測定した。
【0051】
熱硬化温度
DSC−200((株)セイコー電子工業製)を用いて測定し、三量体化の発熱ピークを熱硬化温度とした。
【0052】
ガラス転移点(Tg)
TMA/SS100((株)セイコー電子工業製)を用いて室温から10℃/minで400℃まで昇温し、測定した。
【0053】
熱分解開始温度 ( Td )
TG/DTA300((株)セイコー電子工業製)を用いて測定した。
【0054】
[実施例1]
三つ口フラスコ(300mL)に、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0g(15.0mmol)とジクロロメタン120mL、トリエチルアミン3.0g(30.0mmol)を仕込んだ。フラスコを氷冷し、窒素雰囲気下でフェニルクロロホルメート4.7g(30.0mmol)を投入した。15分間撹拌した後、系を室温に戻し、一晩撹拌した。
【0055】
室温でトリエチルアミン3.0g(30.0mmol)、次いでトリメチルクロロシラン3.3g(30.0mmol)をフラスコに入れ、45分間撹拌した。トルエン100mLを加え、反応温度を徐々に80℃まで上昇させながら5.5時間撹拌した。この間にジクロロメタンをほぼ留去した。反応により生成したトリエチルアミン塩酸塩を濾別した後、カルボジイミド化触媒(3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド)540mg(2.8mmol)を加えて80℃で3時間撹拌した。IRによりカルボジイミド化を確認した後(図1)、ポリマー溶液をヘキサン3Lに投入し、析出した固体を集めて減圧下、30℃で12時間乾燥し、Mn=2,400のポリマーを収率89%で得た。
【0056】
このポリマーをシクロヘキサノンに再溶解し、35μm銅箔にキャスティングし、200℃で20分間乾燥して接着シートを作成した。シートの銅箔を塩化鉄水溶液でエッチングして厚さ20μm、熱硬化温度400℃以上、Tg=220℃、Td=490℃のフィルムを得た。このフィルムをさらに200℃で60分間乾燥しても可撓性を有していた。
【0057】
[実施例2]
実施例1にて得られた銅/ポリカルボジイミド接着シートを42アロイ板に貼り付け、350℃、50kg/cm2の圧力で1秒間プレスして貼り合わせた。接着力を測定したところ1200g/cmの接着力を示した。これを80℃/90%RHの恒温恒湿機に168時間投入した後の接着力は1000g/cmであった。
【0058】
[実施例3]
三つ口フラスコ(300mL)に、2,2−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0g(13.7mmol)とトルエン100mL、トリエチルアミン2.8g(27.5mmol)を仕込んだ。フラスコを氷冷し、窒素雰囲気下でフェニルクロロホルメート4.3g(27.5mmol)を投入した。30分間撹拌した後、系を室温に戻し、一昼夜撹拌した。
【0059】
室温でトリエチルアミン2.8g(27.5mmol)、次いでトリメチルクロロシラン3.0g(27.5mmol)をフラスコに入れ、1時間撹拌した。反応温度を徐々に80℃まで上昇させながら5時間撹拌した。ついで、カルボジイミド化触媒(3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド)500mg(2.6mmol)を加えて80℃で2時間撹拌した。IRによりカルボジイミド化を確認した後(図2)、生成したトリエチルアミン塩酸塩を濾過により取り除いた。つぎに、ポリマー溶液をヘキサン4Lに投入し、析出した固体を集めて減圧下、30℃で12時間乾燥し、Mn=4,600のポリマーを収率70%で得た。
【0060】
このポリマーをトルエンに再溶解し、35μm銅箔にキャスティングし、200℃で20分間乾燥して接着シートを作成した。シートの銅箔を塩化鉄水溶液でエッチングして厚さ17μm、熱硬化温度400℃以上、Tg=160℃、Td=460℃のフィルムを得た。このフィルムをさらに200℃で60分間乾燥しても可撓性を有していた。
【0061】
[実施例4]
実施例3にて得られた銅/ポリカルボジイミド接着シートを42アロイ板に貼り付け、350℃、50kg/cm2の圧力で1秒間プレスして貼り合わせた。接着力を測定したところ980g/cmの接着力を示した。これを80℃/90%RHの恒温恒湿機に168時間投入した後の接着力は860g/cmであった。
【0062】
[比較例1]
モノマーとしてTDIを用いた以外は実施例1及び実施例3と同様の手順で重合を行なった。すなわち、ナスフラスコ(100mL)にTDI5.0g(29mmol)とTHF25mL、カルボジイミド化触媒(1−フェニル−3−メチルホスホレンオキシド)43.0mg(0.22mmol)を仕込んだ。60℃で15時間撹拌するとMn=6,700のポリカルボジイミド溶液が得られた。ワニスをガラス板上にキャスティングし、90℃で30分間乾燥してフィルムを作成した。このフィルムの熱硬化温度は350℃で、200℃で1時間の熱処理を行うと変色し、可撓性が無くなり、自己保持性を失った。
【0063】
[比較例2]
比較例1で作成したワニスを35μm銅箔上に塗工し、90℃で30分間乾燥して接着シートを作成した。これを用いて実施例2と同様にして接着力を測定したところ、初期は600g/cmの接着力を示したが、80℃/90%RHの恒温恒湿機に168時間投入すると剥離した。
【0064】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物は一般の有機溶剤に溶解しやすく、成型加工が容易である。またガラス転移点が低く、低温加工性が向上する。さらに半導体素子などの被着体に対して接着性がよく、低吸湿性で保存安定性に優れ、常温での長期保存が可能である。また、200℃以上で熱処理を行った場合も可撓性を有するなど、耐熱性にも優れている。また、ポリマー鎖がm−位で結合したポリマーの場合はよりガラス転移点が低く、低温加工性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1にて得られた重合体の赤外吸収スペクトルである。
【図2】 実施例3にて得られた重合体の赤外吸収スペクトルである。
【発明の背景】
本発明は新規なポリカルボジイミドに関する。本発明のポリカルボジイミドは高耐熱性など種々の優れた特性を有するフィルムや接着剤、成形物を提供する。
【0002】
芳香族ポリカルボジイミドには、従来ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)やトリレンジイソシアネート(TDI)などをモノマーとし、これを重合したものが知られている。このようなポリカルボジイミドは、その優れた耐熱性により耐炎化フィルムや耐熱性接着剤として使用されている。
【0003】
これらのポリカルボジイミドフィルムは、溶解性に乏しく、分子量の増大につれゲル化したり、固体となって析出したりして、充分な高分子量ポリマーは得られない。また400℃以上の高温にさらしても揮発性ガスや分解モノマーを生成しないという点では耐熱性を有するが、200℃以上で熱処理すると自己保持性がなく、脆くなり実用に耐えない。また、銅箔などの被着体へ加熱圧着した場合の接着力に関しても十分とは言えない。
【0004】
【発明の目的及び概要】
本発明者らは、このような従来のポリカルボジイミドの欠点を解消すべく種々の芳香族ポリマーについて検討を重ねた結果、本発明の新規芳香族ポリカルボジイミドを創製するに至った。即ち、本発明は下式(I):
【化4】
(式中、Rは水素又はアルキル基、nは3〜600の整数を表す。)
で表される構成単位を有する芳香族ポリカルボジイミドを提供するものである。また、本発明は、その有機溶媒溶液及びフィルムを提供するものである。なお、本明細書においてフィルムはポリマーの成膜された形状のものを意味し、いわゆるシートと呼ばれるものも含む。本発明のポリマーは新規な高分子化合物であり、優れた溶解性と共に非常に高い耐熱性を有し、また接着性、低温加工性及び耐湿性にも優れる。
【0005】
【発明の詳細な開示】
本発明のポリカルボジイミドは、下式(II):
【化5】
(式中、Rは前記に同じ)
で表される対応するジイソシアネートをモノマーとし、これをリン系触媒の存在下、それ自体は公知の方法で重合することにより得られる。
【0006】
このようなジイソシアネートの代表的なものとしては、下式(IIa)及び(IIb)で表されるものが挙げられる。
【0007】
【化6】
【0008】
【化7】
【0009】
なお、前記化合物(IIb)は新規物質である。また、前記化合物(IIa)は既知の物質であり、その製造法に関する文献やこれを用いたポリウレタンの製造法に関する文献(Andrianov,et.al.,Vysokomol.Soedin.,Ser.B,20(6),471.(1978))などもあるが、これらには化合物(IIa)からポリカルボジイミドを製造することについての記載は全くない。
【0010】
(モノマー)
本発明ポリカルボジイミドの原料であるイソシアネート化合物(前記式(II))は、その前駆体である下記(III):
【化8】
(式中、Rは前記に同じ)
で表される対応するジアミンを、それ自体は公知の種々の方法でイソシアネート化することにより製造することができる。
【0011】
かかるジアミン化合物のイソシアネート化法としては、ホスゲン、ジフェニルカーボネート、又はカルボニルジイミダゾールを作用させる方法が挙げられる。また、別法としてジアミン化合物をハロゲン化アルキルホーメートを用いて一旦ウレタンとし、これをクロロシラン、カテコールボラン等の触媒存在下にイソシアネート化してもよい。
【0012】
さらに、他の方法ではジイソシアネートの前駆体として、下式(IV):
【化9】
(式中、Rは前記に同じ。)
で表されるカルボン酸を用い、これをクルチウス分解によりイソシアネート化する方法などを用いてもよい。
【0013】
これら製造方法のうち、ジアミン化合物をハロゲン化アルキルホーメートまたはハロゲン化アリールホーメートを用いて一旦ウレタンとし、これに触媒としてクロロシランを用いてイソシアネート化する方法(G.Greber.et.al.,Angew.Chem.Int.Ed.,Vo.l7,No.12,941(1968))や、あるいはカテコールボランを用いてイソシアネート化する方法(V.L.K.Valli.et.al.,J.Org.Chem.,Vol.60,257(1995))が収率及び安全性の点から好ましいので、以下に詳しく述べる。
【0014】
(ウレタン合成)
まず対応するジアミン化合物(式III)にメチルクロロホルメート、エチルクロロホルメート、フェニルクロロホルメート、p−ニトロフェニルクロロホルメートなどを作用させてウレタンを合成する。原料として用いることのできるジアミン化合物としては、具体的には下記式(IIIa):
【化10】
で示される2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、あるいは、下記式(IIIb):
【0015】
【化11】
で示される2,2−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパンなどが挙げられる。
【0016】
また、イソシアネート化を円滑に進行させるためにはフェニルクロロホルメートまたはp−ニトロフェニルクロロホルメートが適しているが、p−ニトロフェニルクロロホルメートは活性が高すぎ、副反応が多く起こる恐れがあるのでフェニルクロロホルメートが最も好ましい。これらクロロホルメート類の使用量はジアミンのモル数の1.5〜4.0倍モル、好ましくは1.6〜3.8倍モル、最適には1.8〜3.6倍モルがよい。
【0017】
これら反応に用いられる溶媒はジアミンを溶解させるものであればよい。例えばTHF、ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル系化合物、トルエン、キシレン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素系化合物、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系化合物、酢酸エチルなどのエステル系化合物などが挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0018】
反応温度は−40〜100℃、好ましくは−20〜80℃、最も好ましくは0〜60℃である。−40℃未満では反応が進行しにくく、100℃を越える高温では縮合などの副反応が起こる可能性がある。
【0019】
反応により生成する塩化水素をトラップする塩基としては、用いた溶媒に溶解し反応を阻害しないものであればよく、例えばトリエチルアミン、水酸化ナトリウム、ピリジン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)などが挙げられる。塩基の使用量は用いたジアミンのモル数の1.5〜4.0倍であり、好ましくは1.8〜3.5倍である。
【0020】
得られたウレタンを精製するには、再結晶、カラムなど従来公知の方法を用いることができる。また、必要に応じて蒸留を行ってもよい。
【0021】
(a)クロロシランを用いたイソシアネート化
前記ウレタンをクロロシランを用いてイソシアネート化するには、ウレタンのモル量の1.5〜4.6倍、好ましくは1.6〜4.0倍、 最も好ましくは1.8〜3.5倍のクロロシランを触媒とし熱分解を行う。
【0022】
クロロシラン類としては、トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、トリメトキシクロロシラン、或いはこれらのジクロロ体、トリクロロ体、ジクロロシラン、トリクロロシラン、テトラクロロシランなどが用いられるが、中でも扱いやすさや価格の面から、トリメチルクロロシランが好適である。
【0023】
用いられる溶媒はウレタンを溶解または懸濁するものであればよく、前記のエーテル系化合物、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。また、場合によっては反応途中でその一部ないし全部を置換することにより反応温度を変化させることもできる。
【0024】
反応温度は0℃から用いた溶媒の沸点まで、好ましくは室温から沸点までである。反応温度が低すぎると反応が全く進行しない場合がある。逆に反応温度を上げすぎたり長く加熱し過ぎたりすると、生成物が分解する場合があるので、IRなどで反応をトレースしながら徐々に温度を上昇させて進めるのがよい。
【0025】
反応の際に生成する塩化水素をトラップする塩基としては、上記ウレタン化と同じ物が用いられ、使用量も同様である。
【0026】
(b)ハロゲン化カテコールボランを用いたイソシアネート化
ウレタンのイソシアネート化には、前記クロロシランの替わりにハロゲン化カテコールボランを触媒として用いた方法を採用してもよい。ハロゲン化カテコールボランとしては、クロロカテコールボラン、ブロモカテコールボランなどが挙げられるが、扱いやすさ、価格の点から、クロロカテコールボランが好ましい。また、その使用量は前記クロロシランの場合と同様である。カテコールボラン類はクロロシラン類よりもウレタンの熱分解に対してより高い活性を有するので、フェニルウレタン以外のウレタンも用いることができる。
【0027】
反応溶媒はウレタンを溶解または懸濁するものであればよく、上記クロロシランを用いたイソシアネート化と同じ物を用いてよい。これらの溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。また、場合によっては反応途中でその一部ないし全部を置換することにより反応温度を変化させることもできる。反応温度は一般に−50〜80℃、好ましくは−20〜60℃、さらに好ましくは0〜40℃であり、用いるウレタンによって異なる。反応温度が低すぎると反応が全く進行しない場合がある。逆に反応温度をあげ過ぎたり長く加熱し過ぎたりすると、生成物が分解する場合があるので、IRなどで反応をトレースしながら徐々に温度を上昇させて進めるのがよい。反応の際に生成する塩化水素をトラップするには、前記と同様にして塩基を用いる。
【0028】
得られたイソシアネートモノマーは、反応後、溶媒を除去し、フラッシュカラムもしくは再結晶または減圧蒸留を行なって精製することができる。
【0029】
(ポリカルボジイミドの製造)
前記ジイソシアネートを用いてポリカルボジイミドを製造するには、ジイソシアネートモノマーを単独で用いてもよく、又その性質を損なわない範囲、即ち50モル%以下で他の有機ジイソシアネート、例えば4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、1-メトキシフェニル-2,4-ジイソシアネート、3,3'−ジメトキシ−4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3'-ジメチル-4,4'-ジフェニルエーテルジイソシアネート、o-トリレンジイソシアネートなどと共重合してもよい。
【0030】
重合温度は40〜150℃が好ましく、50〜140℃がより好ましい。反応温度が40℃より低いと反応時間が長くなりすぎ実用的でない。また150℃を越える反応温度は溶媒の選択が困難である。
【0031】
ポリカルボジイミド合成におけるジイソシアネートモノマーの濃度は2〜50重量%(以下、単に%という)、好ましくは5〜45%、最も好ましくは15〜40%である。濃度が2%より低いとカルボジイミド化が進行しない場合がある。また50%を越えると反応の制御が困難になる可能性がある。
【0032】
ポリカルボジイミドの合成時及びポリカルボジイミド溶液において用いられる有機溶媒は、かかる反応において従来公知のものであってよい。具体的にはテトラクロロエチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、反応の途中でその一部又は全部を置換してもよい。
【0033】
カルボジイミド化に用いる触媒としては、公知のリン系触媒がいずれも好適に用いられ、例えば1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、あるいはこれらの3−ホスホレン異性体などのホスホレンオキシドが挙げられる。
【0034】
また重合反応の末期、中期、初期のいずれか、もしくは全般にわたり、モノイソシアネートを加えて末端封鎖処理をしてもよい。このようなモノイソシアネートとしては、フェニルイソシアネート、p−ニトロフェニルイソシアネート、p−またはm−トリルイソシアネート、p−ホルミルフェニルイソシアネートなどの芳香族モノイソシアネートをいずれも用いることができる。このようにして得られたポリカルボジイミド溶液は、溶液の保存安定性に優れている。
【0035】
また、反応終了後にメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサンなどの貧溶媒に反応液を投入し、ポリカルボジイミドを沈殿として析出させ、未反応のモノマーや触媒を取り除いてもよい。このような操作を行うことにより、ポリカルボジイミドの溶液安定性を向上させることができる。
【0036】
ポリカルボジイミドの溶液を調製するには、ポリマーを沈殿として析出させた後、所定の操作により洗浄、乾燥を行い、再度有機溶媒に溶解する。
【0037】
また、ポリマー溶液中に含まれる副生成物を適当な吸着剤などに吸着させ、精製してもよい。吸着剤としては例えばアルミナゲル、シリカゲル、活性炭、ゼオライト、活性酸化マグネシウム、活性ボーキサイト、フラースアース、活性白土、分子ふるいカーボンなどを単独もしくは併用して用いることができる。
【0038】
本発明のポリカルボジイミドの分子量は、数平均分子量にして1,000〜200,000、好ましくは2,000〜100,000である。すなわち、式(I)においてnは3〜600の整数、好ましくは6〜300の整数である。ポリカルボジイミドの分子量がこれより高すぎると、常温での放置においても数分から数時間で容易にゲル化するため、実用上好ましくない。また、分子量が低すぎると、皮膜の信頼性に欠けるので好ましくない。
【0039】
(フィルム及び接着シートの製造)
本発明のポリカルボジイミドフィルム(又はシート)は、ポリカルボジイミドワニスを公知の方法(キャスティング、スピンコーティング、ロールコーティングなど)を用いて適当な厚さに製膜することにより得られる。このフィルムは、通常、溶媒の除去に必要な温度で乾燥すればよく、例えば30〜300℃で乾燥することができる。特に硬化反応をあまり進行させずに乾燥させるためには50〜250℃が好ましい。乾燥温度が30℃より低いと、フィルム中に溶剤が残存し、フィルムの信頼性が乏しくなり好ましくない。また、乾燥温度が300℃より高いと、ポリカルボジイミド樹脂の架橋が進行し、強度などの点で実用上不適当となる可能性があり好ましくない。
【0040】
本発明のポリカルボジイミド樹脂組成物には、その加工性、耐熱性を損なわない範囲で微細な無機充填剤を配合してよい。また表面平滑性を得るために平滑剤、レベリング剤、脱泡剤などの各種添加剤を必要に応じて添加してもよい。
【0041】
本発明のポリマーをフィルム状に成形した成形物は、耐熱性接着シートとして用いることができる。フィルム、又は接着シートに成形することができるシート厚としては、一般には1〜2000μmであるが、これに限定されるものではなく目的に応じて適宜選択することができる。またシートの形状や大きさについても、リードフレームや半導体チップなど、被着体に応じて適宜に選択することができる。
【0042】
接着シートを製造する場合、導電性の付与や伝熱性の向上、弾性率の調節、特に高弾性率化などをはかるため、例えばアルミニウム、銅、銀、金、ニッケル、クロム、鉛、錫、亜鉛、パラジウム、半田などの金属、あるいは合金、アルミナ、シリカ、マグネシア、窒化ケイ素などのセラミック、その他カーボンなどからなる種々の無機粉末を必要に応じ1種または2種以上配合してもよい。
【0043】
さらに、これらのフィルムを支持体上に形成して多層の接着シートとしてもよい。このような構成の接着シートを製造するには、支持体上にワニスを塗工してもよく、あらかじめフィルムを形成し、これををプレスなどによりラミネートして製造してもよい。
【0044】
ここで用いられる支持体としては、金属箔、絶縁性フィルムなどが挙げられる。金属箔としてはアルミニウム、銅、銀、金、ニッケル、インジウム、クロム、鉛、錫、亜鉛、パラジウム等がいずれも用いられてよく、これらを単独で、あるいは合金として用いてもよい。また、絶縁性フィルムとしては、ポリイミド、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレートなど、耐熱性や耐薬品性を有するフィルムであればいずれも用いられてよい。
【0045】
また金属箔と絶縁性フィルムは、それぞれ単独で用いてもよく、また両者を2層以上積層した、例えば金属箔/絶縁性フィルムなどの二層基材としてもよい。このような二層基材としては、例えば銅/ポリイミド二層基材などが挙げられる。
【0046】
本発明のシート状接着剤は、加熱処理により熱硬化して強固な接着力を発現すると共に、低吸湿性の硬化物となる。加熱処理を行うには、例えばヒーター、超音波、高周波、紫外線などの適宜な方法が用いられてよい。従って本発明の接着シートは、種々の材料の接着処理に好ましく、特に高信頼性の固着処理が要求され、そのため低吸湿性であることを要する半導体チップやリードフレームなどで代表される電気・電子部品の固着処理に好ましい。本発明の接着シートは低吸湿性であること、可撓性に富み取り扱いやすいこと、半導体素子に対して接着性がよいこと、保存安定性がよいことなどの点で優れている。
【0047】
なお、前記のジアミンのウレタン化、イソシアネート化及びカルボジイミド化は、それぞれの工程で単離、精製を行い、段階的に進めてもよく、1つの反応器中でこれらの工程を続けて一連の反応として行ってもよい。
【0048】
【実施例】
つぎに本発明を実施例及び比較例によりさらに具体的に説明する。なお、得られたポリカルボジイミドの特性は次のようにして測定した。
【0049】
分子量
東ソー製HLC8020を用い、THFを展開溶媒として測定し、ポリスチレンスタンダード換算で算出した。
【0050】
IR
日本電子製FT/IR−230を用いて測定した。
【0051】
熱硬化温度
DSC−200((株)セイコー電子工業製)を用いて測定し、三量体化の発熱ピークを熱硬化温度とした。
【0052】
ガラス転移点(Tg)
TMA/SS100((株)セイコー電子工業製)を用いて室温から10℃/minで400℃まで昇温し、測定した。
【0053】
熱分解開始温度 ( Td )
TG/DTA300((株)セイコー電子工業製)を用いて測定した。
【0054】
[実施例1]
三つ口フラスコ(300mL)に、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0g(15.0mmol)とジクロロメタン120mL、トリエチルアミン3.0g(30.0mmol)を仕込んだ。フラスコを氷冷し、窒素雰囲気下でフェニルクロロホルメート4.7g(30.0mmol)を投入した。15分間撹拌した後、系を室温に戻し、一晩撹拌した。
【0055】
室温でトリエチルアミン3.0g(30.0mmol)、次いでトリメチルクロロシラン3.3g(30.0mmol)をフラスコに入れ、45分間撹拌した。トルエン100mLを加え、反応温度を徐々に80℃まで上昇させながら5.5時間撹拌した。この間にジクロロメタンをほぼ留去した。反応により生成したトリエチルアミン塩酸塩を濾別した後、カルボジイミド化触媒(3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド)540mg(2.8mmol)を加えて80℃で3時間撹拌した。IRによりカルボジイミド化を確認した後(図1)、ポリマー溶液をヘキサン3Lに投入し、析出した固体を集めて減圧下、30℃で12時間乾燥し、Mn=2,400のポリマーを収率89%で得た。
【0056】
このポリマーをシクロヘキサノンに再溶解し、35μm銅箔にキャスティングし、200℃で20分間乾燥して接着シートを作成した。シートの銅箔を塩化鉄水溶液でエッチングして厚さ20μm、熱硬化温度400℃以上、Tg=220℃、Td=490℃のフィルムを得た。このフィルムをさらに200℃で60分間乾燥しても可撓性を有していた。
【0057】
[実施例2]
実施例1にて得られた銅/ポリカルボジイミド接着シートを42アロイ板に貼り付け、350℃、50kg/cm2の圧力で1秒間プレスして貼り合わせた。接着力を測定したところ1200g/cmの接着力を示した。これを80℃/90%RHの恒温恒湿機に168時間投入した後の接着力は1000g/cmであった。
【0058】
[実施例3]
三つ口フラスコ(300mL)に、2,2−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0g(13.7mmol)とトルエン100mL、トリエチルアミン2.8g(27.5mmol)を仕込んだ。フラスコを氷冷し、窒素雰囲気下でフェニルクロロホルメート4.3g(27.5mmol)を投入した。30分間撹拌した後、系を室温に戻し、一昼夜撹拌した。
【0059】
室温でトリエチルアミン2.8g(27.5mmol)、次いでトリメチルクロロシラン3.0g(27.5mmol)をフラスコに入れ、1時間撹拌した。反応温度を徐々に80℃まで上昇させながら5時間撹拌した。ついで、カルボジイミド化触媒(3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド)500mg(2.6mmol)を加えて80℃で2時間撹拌した。IRによりカルボジイミド化を確認した後(図2)、生成したトリエチルアミン塩酸塩を濾過により取り除いた。つぎに、ポリマー溶液をヘキサン4Lに投入し、析出した固体を集めて減圧下、30℃で12時間乾燥し、Mn=4,600のポリマーを収率70%で得た。
【0060】
このポリマーをトルエンに再溶解し、35μm銅箔にキャスティングし、200℃で20分間乾燥して接着シートを作成した。シートの銅箔を塩化鉄水溶液でエッチングして厚さ17μm、熱硬化温度400℃以上、Tg=160℃、Td=460℃のフィルムを得た。このフィルムをさらに200℃で60分間乾燥しても可撓性を有していた。
【0061】
[実施例4]
実施例3にて得られた銅/ポリカルボジイミド接着シートを42アロイ板に貼り付け、350℃、50kg/cm2の圧力で1秒間プレスして貼り合わせた。接着力を測定したところ980g/cmの接着力を示した。これを80℃/90%RHの恒温恒湿機に168時間投入した後の接着力は860g/cmであった。
【0062】
[比較例1]
モノマーとしてTDIを用いた以外は実施例1及び実施例3と同様の手順で重合を行なった。すなわち、ナスフラスコ(100mL)にTDI5.0g(29mmol)とTHF25mL、カルボジイミド化触媒(1−フェニル−3−メチルホスホレンオキシド)43.0mg(0.22mmol)を仕込んだ。60℃で15時間撹拌するとMn=6,700のポリカルボジイミド溶液が得られた。ワニスをガラス板上にキャスティングし、90℃で30分間乾燥してフィルムを作成した。このフィルムの熱硬化温度は350℃で、200℃で1時間の熱処理を行うと変色し、可撓性が無くなり、自己保持性を失った。
【0063】
[比較例2]
比較例1で作成したワニスを35μm銅箔上に塗工し、90℃で30分間乾燥して接着シートを作成した。これを用いて実施例2と同様にして接着力を測定したところ、初期は600g/cmの接着力を示したが、80℃/90%RHの恒温恒湿機に168時間投入すると剥離した。
【0064】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物は一般の有機溶剤に溶解しやすく、成型加工が容易である。またガラス転移点が低く、低温加工性が向上する。さらに半導体素子などの被着体に対して接着性がよく、低吸湿性で保存安定性に優れ、常温での長期保存が可能である。また、200℃以上で熱処理を行った場合も可撓性を有するなど、耐熱性にも優れている。また、ポリマー鎖がm−位で結合したポリマーの場合はよりガラス転移点が低く、低温加工性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1にて得られた重合体の赤外吸収スペクトルである。
【図2】 実施例3にて得られた重合体の赤外吸収スペクトルである。
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