JP3855285B2 - ジメチロール化トリフェノール系化合物およびその製法 - Google Patents

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  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
  • Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば半導体微細加工用レジストにおけるある種の成分の中間体として有用な、新規な化合物およびその製法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体微細加工用レジストの成分として、4個以上のベンゼン核をメチレン系の基でつないだ化合物が、特開平 6-167805 号公報(=EP-A-573,056) などにより知られている。かかる化合物の製造には、合成しやすい1個または2個のベンゼン核を持つ化合物のメチロール体が使用されている。しかしながら、このような1個または2個のベンゼン核を持つ化合物のメチロール体を使用して、特に5個以上のベンゼン核を持つ化合物を、上記公報の合成例に開示される一段の反応で製造しようとすると、副生物が増加し、目的物の精製が複雑化するなどの問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、半導体微細加工用レジストの成分、特に添加剤および/または感光剤原料の幅を広げる意味で、より高次の多核体化合物のメチロール化が必要となった。本発明者らは鋭意研究を行った結果、特定構造のジメチロール化トリフェノール系化合物を見出し、またこの化合物が簡単な方法により、高純度、高収率で得られることを見出し、本発明を完成した。
【0004】
したがって本発明の目的は、半導体微細加工用レジストの添加剤および/または感光剤の各中間体として有用な、新規なジメチロール化トリフェノール系化合物を製造し、提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、2,6−ビス(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−2,5−ジメチルベンジル)−4−メチルフェノールを提供するものである。また本発明は、この2,6−ビス(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−2,5−ジメチルベンジル)−4−メチルフェノールの製法として、 2,6−ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルベンジル)−4−メチルフェノールとホルムアルデヒドを、1:2〜10のモル比でアルカリ触媒の存在下に反応させる方法をも提供するものである。
【0006】
本発明に係る2,6−ビス(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−2,5−ジメチルベンジル)−4−メチルフェノールは、次式(I)の構造を有し、以下、簡単のため、化合物(I)と呼ぶことがある。
【0007】
Figure 0003855285
【0008】
【発明の実施の形態】
化合物(I)は前述のとおり、2,6−ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルベンジル)−4−メチルフェノールとホルムアルデヒドとの反応により製造できる。この反応の原料となる2,6−ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルベンジル)−4−メチルフェノールは、例えば、p−クレゾールをホルムアルデヒドでジメチロール化して2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−4−メチルフェノールとし、これを2,5−キシレノールと縮合反応させることにより、製造できる。
【0009】
2,6−ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルベンジル)−4−メチルフェノールとホルムアルデヒドとの反応により化合物(I)を製造するにあたり、両者は、1:2〜10、好ましくは1:4〜8、さらに好ましくは1:5〜6のモル比で用いられる。2,6−ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルベンジル)−4−メチルフェノールに対するホルムアルデヒドのモル比が高すぎても低すぎても、反応の選択性が低下する。
【0010】
2,6−ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルベンジル)−4−メチルフェノールとホルムアルデヒドとの反応に用いるアルカリ触媒は、無機塩基および有機塩基のいずれでもよいが、特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの無機塩基が好ましく、なかでも水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。アルカリ触媒は、2,6−ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルベンジル)−4−メチルフェノールに対して、好ましくは0.5〜5モル倍、より好ましくは1〜4モル倍、さらに好ましくは2〜3モル倍の範囲で使用される。触媒量があまり少ないと、反応時間が長くなり、また多すぎると、反応の選択性がやや低下する傾向にある。
【0011】
この反応は、溶媒中で行うのが好ましい。反応溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、水、メタノールなどの極性溶媒が好ましく、なかでも、テトラヒドロフランと水の混合溶媒が好ましく使用される。溶媒を用いる場合、その量は、2,6−ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルベンジル)−4−メチルフェノールに対して、好ましくは1〜10重量倍、より好ましくは3〜6重量倍、さらに好ましくは4〜5重量倍の範囲である。また、テトラヒドロフランと水の混合溶媒を用いる場合は、水に対してテトラヒドロフランの量が0.05〜1重量倍の範囲となるようにするのが好ましく、さらには、その量が0.1〜0.5重量倍、とりわけ0.1〜0.2重量倍の範囲となるようにするのが一層好ましい。水に対するテトラヒドロフランの量が多すぎると、反応終了後に中和しても結晶が析出してこず、オイル状のままになることがあり、またテトラヒドロフランの量が少なすぎると、反応マスが固化することがある。
【0012】
この反応は、10〜60℃の範囲の温度で行うのが好ましく、さらには30〜50℃、とりわけ35〜45℃の範囲の温度で行うのが一層好ましい。反応温度が高すぎると、反応の選択性が悪くなる傾向にあり、また温度が低すぎると、反応が遅くなる。
【0013】
反応の仕込みは、 2,6−ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルベンジル)−4−メチルフェノール、アルカリ触媒および溶媒の混合物中に、ホルムアルデヒドを添加していく方法が好ましい。この際ホルムアルデヒドは、0.1〜4時間かけて添加するのが好ましく、さらには0.5〜2時間、とりわけ0.5〜1時間で、ホルムアルデヒドの添加を終了するのが好ましい。ホルムアルデヒドを急激に添加すると、発熱が激しく、また反応の選択性が悪くなる傾向にあり、一方ホルムアルデヒドの添加時間が長すぎると、副生物が多くなる傾向にある。ホルムアルデヒドの添加は、好ましくはその水溶液を滴下していく方法により行われる。
【0014】
反応終了後は、例えば、酸で中和して結晶を析出させ、濾過するなどの方法により、目的物である化合物(I)を、高純度、高収率で得ることができる。こうして得られる化合物(I)は、例えば、フェノール、オルソクレゾール、パラクレゾール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノールなどのフェノール系化合物と縮合反応させることにより、ベンゼン核を5個有する化合物に導くことができ、この化合物は、半導体微細加工用レジストの添加剤および/または感光剤原料として用いることができる。
【0015】
【実施例】
次に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す%および部は、特にことわらないかぎり重量基準である。
【0016】
実施例1
3リットルの四つ口フラスコに、2,6−ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルベンジル)−4−メチルフェノール263.6g、水酸化ナトリウム67.2g、水1169.3g、およびテトラヒドロフラン107.5gを仕込んで溶解し、40℃に調温した。そこへ37%ホルマリン340.9gを1時間かけて滴下し、その後、同温度で2時間攪拌した。反応終了後、90%酢酸水溶液134.4gで中和してから25℃に冷却した。析出した結晶を濾過し、イオン交換水1000gでリンスした。得られた濾過物を45℃で一昼夜減圧乾燥して、2,6−ビス(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−2,5−ジメチルベンジル)−4−メチルフェノール265g(純度80%)を得た。収率69.4%。
【0017】
質量分析値: MS 436
1H−NMR(ジメチルスルホキシド) δ(ppm) :
1.95 (s, 3H); 2.05 (s, 6H); 2.10 (s, 6H);
3.78 (s, 4H); 4.65 (s, 4H); 5.23 (brs, 2H);
6.31 (s, 2H); 6.70 (s, 2H); 8.18 (brs, 1H);
8.60 (brs, 2H).
【0018】
参考例1: 2,6−ビス〔4−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−2,5−ジメチルベンジル〕−4−メチルフェノールの製造
1リットルの四つ口フラスコに、パラトルエンスルホン酸1.90g、パラクレゾール86.51gおよびトルエン176.83gを仕込んで30℃に調温した。そこへ、実施例1で得られた純度80%の2,6−ビス(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−2,5−ジメチルベンジル)−4−メチルフェノール21.83gを10分割して、1時間30分で投入し、その後同温度でさらに3時間攪拌した。反応終了後、濾過し、トルエン200gでリンスした。得られた濾過物を、トルエン200gと酢酸エチル400gの混合液に60℃で仕込んで溶解させ、さらにイオン交換水400gを加えて攪拌し、分液した。その後、1%シュウ酸水溶液400gを仕込んで攪拌し、分液することにより脱金属を行った。次にイオン交換水400gでの洗浄を4回行ったあと、オイル層を濃縮した。濃縮マスにトルエン200gを加えて20℃まで冷却し、濾過後、トルエン200gでリンスした。 得られた濾過物を45℃で一昼夜減圧乾燥して、2,6−ビス〔4−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−2,5−ジメチルベンジル〕−4−メチルフェノールを22.87g(定量純度94.6%)得た。2,6−ビス(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−2,5−ジメチルベンジル)−4−メチルフェノール基準の収率は87.7%であった。
【0019】
参考例2: キノンジアジドスルホン酸エステル化
100mlの四つ口フラスコに、2,6−ビス〔4−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−2,5−ジメチルベンジル〕−4−メチルフェノールを1.85g、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニルクロライドを1.61g、および1,4−ジオキサンを17.33g仕込んで、25℃に調温した。そこへトリエチルアミン0.73gを1時間かけて滴下し、その後さらに3時間反応させた。反応終了後、酢酸0.18gで中和し、濾過した。その濾液を酢酸0.8gおよびイオン交換水80gの混合液に加えて1時間攪拌し、析出した結晶を濾過し、洗浄した。得られた濾過物を45℃で一昼夜減圧乾燥して、3.23gの感光剤を得た。
【0020】
参考例3: ノボラック樹脂の製造
四つ口フラスコに、メタクレゾール148.5部、パラクレゾール121.5部、メチルイソブチルケトン252部、10%シュウ酸水溶液37.0部および90%酢酸水溶液84.8部を仕込み、100℃の油浴で加熱攪拌しながら、37%ホルマリン129.5部を40分かけて滴下し、その後さらに15時間反応させた。次に水洗、脱水して、ノボラック樹脂を42.3%含有するメチルイソブチルケトン溶液466部を得た。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は4300であった。
【0021】
この溶液450部を、底抜きセパラブルフラスコに仕込み、さらにメチルイソブチルケトン909.6部およびn−ヘプタン996.1部を加えて、60℃で30分間攪拌したあと、静置し、分液した。分液で得られた下層のマスに、2−ヘプタノンを380部加え、メチルイソブチルケトンおよびn−ヘプタンをエバポレーターにより除去して、ノボラック樹脂の2−ヘプタノン溶液を得た。GPCによるポリスチレン換算重量平均分子量は9000であり、ポリスチレン換算分子量で900以下の範囲の面積比は、全パターン面積に対して14%であった。
【0022】
参考例4
参考例3で得たノボラック樹脂の2−ヘプタノン溶液を固形分換算で15部、添加剤としての1,3−ビス〔1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル〕ベンゼンを3.9部、参考例2で得られた感光剤を5部、別の感光剤としての1,2,3−トリヒドロキシ−4−(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルベンジル)ベンゼンと1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホンニルクロライドとのモル比1:4の縮合物を1部、および2−ヘプタノンを、2−ヘプタノンが合計で50部となるように混合し、溶解した。この液を孔径0.2μm のフッ素樹脂製フィルターで濾過して、レジスト液を調製した。
【0023】
常法により洗浄したシリコンウェハーに、回転塗布機を用いて上記レジスト液を、乾燥後の膜厚が1.1μm となるように塗布し、ホットプレートにて90℃で1分間ベークした。次いで、365nm(i線)の露光波長を有する縮小投影露光器〔(株)ニコン製品、NSR 1755i 7A、NA=0.5〕を用いて、露光量を段階的に変化させて露光した。次にこのウェハーを、ホットプレートにて110℃で1分間ベークした。 これを現像液“SOPD"〔住友化学工業(株)製品〕で1分間現像して、ポジ型パターンを得た。それぞれのポジ型パターンについて、以下のようにして評価し、それぞれの結果を得た。
【0024】
実効感度: 0.50μm のラインアンドスペースパターンが1:1になる露光量(実効感度)を測定したところ、230msecであった。
【0025】
解像度: ラインアンドスペースパターンが1:1になる露光量(実効感度)で、膜減りなく分離するラインアンドスペースパターンの寸法を、走査型電子顕微鏡で測定したところ、0.375μm であった。
【0026】
プロファイル: 実効感度における0.45μm ラインアンドスペースパターンの断面形状を走査型電子顕微鏡で観察したところ、 パターンが垂直に切れていた。
【0027】
フォーカス(焦点深度): 実効感度において0.40μm ラインアンドスペースパターンが膜減りなく分離する焦点の幅を、走査型電子顕微鏡で観察し、測定したところ、1.5μm であった。
【0028】
スカム: 走査型電子顕微鏡でスカム(現像残渣)の有無を観察したところ、スカムは認められなかった。
【0029】
γ値: 露光量の対数に対する規格化膜厚(=残膜厚/初期膜厚)をプロットし、その傾きθを求め、tan θをγ値として、このγ値は6.82であった。
【0030】
【発明の効果】
本発明による式(I)で示される2,6−ビス(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−2,5−ジメチルベンジル)−4−メチルフェノールは、半導体微細加工用レジストの添加剤および/または感光剤の各中間体として有用であり、しかも本発明によれば、この化合物が、簡単な方法で、純度よくかつ高い収率で製造することができる。

Claims (3)

  1. 2,6−ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルベンジル)−4−メチルフェノールとホルムアルデヒドを、1:2〜10のモル比でアルカリ触媒の存在下の溶媒中において、ホルムアルデヒドを0.1〜4時間かけて添加して反応させ、ここで該溶媒としてはテトラヒドロフランと水の混合物であり、水に対するテトラヒドロフランの量が0.05〜1重量倍の範囲である溶媒を、2,6−ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルベンジル)−4−メチルフェノールに対して1〜10重量倍用いることを特徴とする、2,6−ビス(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−2,5−ジメチルベンジル)−4−メチルフェノールの製造方法。
  2. アルカリ触媒が無機塩基である請求項1記載の方法。
  3. 2,6−ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルベンジル)−4−メチルフェノールに対して0.5〜5モル倍のアルカリ触媒を用いる請求項1または2記載の方法。
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