JP3854165B2 - 製紙用表面サイズ剤および印刷用紙 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は製紙用表面サイズ剤およびこれを用いて表面サイジングした印刷用紙に関し、より詳しくは特に表面サイジング時の塗工液の発泡を抑制し、低pHでも安定な塗工液を与え、上質紙、新聞用紙、中質紙はもちろん、インクジェット用印刷用紙として用いても優れたサイズ性能が得られるアニオン性製紙用表面サイズ剤および印刷用紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から紙の表面サイズとしては、スチレン−マレイン酸共重合体、オレフィン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体等をアルカリで中和した水溶性樹脂の水溶液が多く用いられてきた。しかし、近時、紙の中性紙化により、または内添サイズ剤を減少あるいはなくした紙にサイズ性を付与するために、表面サイズ剤の塗工量を増加させることが多くなってきている。この結果、塗工液中の表面サイズ剤濃度が高くなっている。
【0003】
ところが、通常使用される水溶液タイプの表面サイズ剤では、表面サイジング時に、サイズプレス等のサイズ剤塗布機とタンクとの間を循環する塗工液がタンク内等で発泡して操業性が悪化するという問題がある。
また、最近はインクジェットプリンターを用いることも多く、しかも顔料コートをしていない普通紙にカラーインクジェット印字を行うことが多くなっているため、インクジェット印字を行う印刷用紙には高いサイズ性が要求される。
【0004】
このため、従来からサイズ性を改善した表面サイズ剤は種々提案されている。例えば、(1)特公昭57−24363号公報ではスチレン系単量体とα,β不飽和多塩基酸系単量体と(メタ)アクリル酸エステル等の単量体からなる3元バルク重合体のアルカリ塩水溶液にビニル単量体を加えて乳化重合して得られる表面サイズ剤が提案されている。また(2)特開平8−246391号公報ではカルボキシル基含有不飽和単量体および疎水性不飽和単量体を含有する水溶性共重合体を含む水溶液中で疎水性不飽和単量体を乳化重合して得られる表面サイズ剤が提案されている。
【0005】
(3)特開平9−324394号公報では疎水性不飽和単量体とアニオン性不飽和単量体と反応性乳化剤を主要構成成分とする水溶性共重合体を含む水溶液中で疎水性不飽和単量体を乳化重合して得られるエマルションを表面サイズ剤とする方法が提案されている。(4)特開平10−53995号公報では低分子量の疎水性単量体とカルボン酸基を有する両親媒性共重合体水溶液中で疎水性単量体を乳化重合したラテックス分散液を表面サイズ剤とする方法が提案されている。(5)特開2000−297241にはスチレンとαメチルスチレンとカルボキシル基含有アニオン性単量体を有す乳化重合の共重合物のアルカリ中和物中で疎水性単量体含む単量体を乳化重合して得られる重合体を含有した表面塗工剤(表面サイズ剤)が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの表面サイズ剤では、操業時における塗工液の発泡抑制効果は殆どないか、あるいは満足できるものではなかった。特に、最近のように内添サイズ剤を減少し、表面サイズ剤でサイズ性を確保する方向にある新聞用紙や中質紙、さらには上質紙等では、表面サイズ剤の塗工液濃度を高めた場合に、上記のような水溶液系の表面サイズ剤では塗工液の発泡性が高く、操業に支障をきたしていたのが実情である。
【0007】
一般に、微アニオン性やノニオン性のエマルションからなる表面サイズ剤では、塗工液の発泡は少ないがサイズ効果が劣り、特に中性紙や新聞用紙では使用に耐えられないのが現状である。これに対して、スチレン−アクリル酸共重合体のアルカリ塩水溶液のように疎水基含有ポリカルボン酸型のアニオン性表面サイズ剤は中性紙や新聞用紙でも高サイズ度が得られるが、前記したように塗工液の発泡性が高く、カラーインクジェット印字特性が劣る。
【0008】
すなわち、アニオン系表面サイズ剤では水溶性カルボン酸基含有ポリマーのカルボン酸基含有量は塗工液の発泡性に大きく影響し、カルボン酸含有量が多いものほど発泡性が高い傾向にある。またサイズ性においては、酸性紙では硫酸アルミニウムを多く内添しているため、カルボン酸基含有量の多い表面サイズ剤が比較的サイズ性が高い。
【0009】
このため水溶性カルボン酸基含有ポリマー部を減少して発泡性を減少し、水溶性カルボン酸基含有ポリマー部が減少して低下するサイズ性を疎水性重合体で補強することで高サイズ性と低発泡性とを両立させることが最近多くなってきている。
また、アニオン性単量体と疎水性単量体との共重合体のアルカリ塩水溶液中で疎水性単量体を乳化重合したものは、酸性紙ではサイズ性が高いが、中性紙や硫酸バンド添加量の少ない原紙ではサイズ効果が低い。また、このような表面サイズ剤では、疎水性重合体からなるエマルション粒子が多量に存在するため、得られた塗工紙は微視的には紙表面上に強い疎水部とやや低い疎水部の不均一な分布が起こり、紙表面への均質な疎水性を要求する高速インクジェット印字方法では不具合を起こしやすい。
【0010】
特に、カラーインクジェット印字や大面積画像印字では、サイズ性はほどほどでも紙表面のインク吸収の均質さが必要になってきており、ポリカルボン酸水溶液中で疎水単量体を乳化重合したエマルションタイプの様な不均質表面サイズ剤よりも従来のポリカルボン酸の均質水溶液の方が比較的良いカラー印字のできることが多い。
【0011】
一方、疎水基含有ポリカルボン酸水溶液やエマルションにシリコーン系などの消泡剤を添加して発泡を減少させることが考えられる。しかし、実際の使用では塗工液として澱粉溶液に表面サイズ剤を混合するため、澱粉の腐敗などによりpHも下がり、しかも粘性のある塗工液であることから、表面サイズ剤に市販の消泡剤を数千ppm内添しても塗工液の操業中の抑泡性はごくわずかしか発揮しない。また、市販の消泡剤は、発泡した塗工液に添加しての破泡には効果的であるが、あらかじめ表面サイズ剤に内添している消泡剤の塗工液抑泡効果はごく低いという問題がある。
【0012】
従って、このような問題を解決するためには、表面サイズ剤自身で発泡性が低くなるようにすることが必要であり、サイズ剤の組成中に抑泡性の部分を含有させることで高サイズ性およびインクジェット適性と低発泡性とを両立させることが可能になると考えられる。
【0013】
本発明は、このような実情に鑑みて完成されたものであって、高濃度塗工液でも発泡が少なく、しかもサイズ性にも優れたアニオン性表面サイズ剤およびこれを用いて得られる印刷用紙を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、疎水性低分子化合物および/または疎水性オリゴマーの存在下に重合反応を行って得られる疎水基含有ポリカルボン酸型アニオン性表面サイズ剤は、塗工液の発泡を抑制することができ、さらに高サイズ度で塗工できるためカラーインクジェット適性にも優れているという新たな事実を見出し本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明の表面サイズ剤および印刷用紙は以下の構成からなる。
(1)単量体総量に対して0.5〜10重量%の疎水性低分子化合物および/または疎水性オリゴマーの存在下にカルボン酸基含有単量体と疎水性単量体とを共重合させて得られる疎水基含有ポリカルボン酸型のアニオン性製紙用表面サイズ剤。
(2)前記疎水性低分子化合物が、アルキルケテンダイマーおよび炭素数8〜22の高級アルコールから選ばれる上記(1)記載の製紙用表面サイズ剤。
(3)前記疎水性オリゴマーが、オレフィンオリゴマーまたは官能基を持たない炭化水素オリゴマーであって、分子量が200〜2000、流動点が30℃以下の液状疎水性オリゴマーである上記(1)記載の製紙用表面サイズ剤
(4)疎水基含有ポリカルボン酸型ポリマーが水溶性樹脂タイプである上記(1)〜()のいずれかに記載の製紙用表面サイズ剤。
)上記(1)〜()のいずれかに記載の製紙用表面サイズ剤を用いて表面サイジングしたことを特徴とする印刷用紙。
)インクジェット用である上記()記載の印刷用紙。
【0016】
本発明では、前記重合反応を疎水性低分子化合物および/または疎水性オリゴマーの存在下で行うことが必要であって、これらの疎水性物質を重合後に混合した場合には、疎水性物質の方が表面サイズ剤より比重が小さく、超微粒化も困難であることから疎水性物質が塗工液の表面に分離しやすくなり、実用的ではない。
【0017】
本発明において、疎水性低分子化合物および/または疎水性オリゴマーが表面サイズ剤液から分離しない理由としては、疎水基含有ポリカルボン酸のポリマー生成中に該ポリマーの分子に上記低分子化合物または疎水性オリゴマーが絡み合うか、またはこれらの疎水性物質が超微粒子となってサイズ剤ポリマーの周囲に存在するためではないかと推定される。さらに、本発明における発泡抑制作用は、疎水基含有ポリカルボン酸が本来有する界面活性剤としての機能、つまり泡生成機能を上記疎水性物質により阻害しているためではないかと推測される。
【0018】
以上のような原因で、疎水基含有ポリカルボン酸が水溶化された水溶性ポリマーで有りながら発泡を抑制できるのではないかと考えられる。ポリマーを生成した後にこれら疎水性化合物を添加すると塗工液の抑泡性は発揮しても短時間で浮遊分離し実用に耐えない。
また上記疎水性物質は少量でかつ超微粒子であるため、このような疎水性物質を含有するサイズ剤をインクジェット用紙に塗工しても、ムラになるほど分布が不均一にならず、サイズ剤ポリマーの均一分布も阻害しないためインクジェット印刷への悪影響も少なくなるものと考えられる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明にかかる疎水基含有ポリカルボン酸型のアニオン性製紙用表面サイズ剤とは、主に疎水基含有ポリカルボン酸をアルカリ中和により水溶化したポリマー(すなわちアルカリ塩またはアルカリ中和物)を含有した表面サイズ剤をいい、具体的には上記ポリマーを溶解させた水溶液をいう。また、本発明における重合反応とは、主として疎水基含有ポリカルボン酸を得る重合反応をいう。
【0020】
本発明では、疎水基含有ポリカルボン酸の重合反応は疎水性低分子化合物および/または疎水性オリゴマーの存在下で行われる。上記疎水性低分子化合物としては、例えばアルキルケテンダイマー、高級アルコールなどが挙げられる。上記疎水性オリゴマーとしては、例えばオレフィンオリゴマー、官能基を持たない炭化水素オリゴマーなどの分子量が200〜2000、流動点が30℃以下の液状疎水性オリゴマーが挙げられる。
【0021】
アルキルケテンダイマー(AKD)としては、通常のアルキルケテンダイマー系サイズ剤の原料として用いられるもので良く、例えば炭素数12〜18程度の脂肪酸を出発原料とする混合AKDが用いられる。このようなアルキルケテンダイマーは、通常、融点が45〜60℃程度の疎水性のワックス状物である。
【0022】
高級アルコールとしては、炭素数8〜22の天然系高級アルコールおよび合成分岐高級アルコールのどちらでも良く、とりわけ炭素数12〜16の高級アルコールを使用するのがより好ましい。
【0023】
疎水性オリゴマーとしてのオレフィンオリゴマーにはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブチレン等のオリゴマーが挙げられ、官能基を持たない炭化水素オリゴマーとしてはC4、C5留分からなる石油樹脂等のオリゴマーが挙げられる。このオリゴマーの残存不飽和基を水素添加して安定性を高めたものも使用可能であり、特に分子量が200〜2000、流動点が30℃以下の液状疎水性オリゴマー(例えばポリブテン、ポリイソブチレン等)を使用するのが最も好ましい。
【0024】
疎水性低分子化合物および/または疎水性オリゴマーは、重合反応に使用する単量体合計量に対し0.5〜10重量%の割合で使用するのが良く、疎水性低分子化合物および/または疎水性オリゴマーが単量体合計量に対し0.5重量%未満である場合には、得られたアニオン性表面サイズ剤を塗工液として用いたときの発泡抑制の効果が低くなるおそれがあり、また少量であるため、製造した表面サイズ剤に後から添加する消泡剤と変わりがない。
また、疎水性低分子化合物および/または疎水性オリゴマーが単量体合計量に対し10重量%を越えて使用される場合には、得られた表面サイズ剤の発泡抑制効果は高いものの、表面サイズ剤の貯蔵中に疎水性低分子化合物および/または疎水性オリゴマーが浮遊分離するおそれがある。
【0025】
本発明における疎水基含有ポリカルボン酸は、カルボン酸基含有単量体と疎水性単量体とを共重合させた共重合体である。カルボン酸基含有単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸と各種低級アルコールのハーフエステル等及びそれらの塩が挙げられる。
【0026】
疎水性単量体としては、例えばスチレン、αメチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ノルマルブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸タシャリーブチル、(メタ)アクリル酸2エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、αオレフィン類、ジイソブチレン等のオレフィン類、マレイン酸およびフマル酸ジアルキルエステル類が挙げられる。
【0027】
カルボン酸基含有単量体の添加量は、単量体総量に対して約20〜70重量%、好ましくは約30〜60重量%の割合であるのがよい。また、上記の単量体に、共重合可能な他の単量体を加えてもよい。共重合可能な他の単量体類としては、例えばスチレンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸等の不飽和スルホン酸及びそれらの塩などや、その他の表面サイズ剤としての性能を阻害しないラジカル共重合性単量体を挙げることができる。このような他の単量体はカルボン酸基含有単量体と疎水性単量体との総量に対して20重量%以下であるのがよい。
【0028】
疎水性低分子化合物および/または疎水性オリゴマーの存在下に重合反応を行うには、通常の疎水基含有ポリカルボン酸の重合反応に使用されている溶液重合、乳化重合などの重合方法を採用することができる。
【0029】
溶液重合の場合、有機溶剤としては、特に限定されるものではなく、例えばトルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、酢酸ブチルなどのエステル類、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール等のアルコール系溶剤などを、使用する単量体の種類に合わせて用いることができる。
【0030】
重合開始剤としては、例えば油溶性のラウロイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ2エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物やアゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系開始剤を用いることができる。
【0031】
溶液重合方法としては、前記した各重合性単量体の所定量と疎水性低分子化合物および/または疎水性オリゴマーとを有機溶媒に溶解し、加熱下、重合開始剤を添加して重合するなど、一般の溶液重合法が採用可能である。溶液重合で得られたポリマー溶液は、有機溶媒を蒸留にて除去した後、アンモニア、苛性ソーダ、苛性カリ、低分子量有機アミンなどのアルカリで中和水溶化するか、あるいは重合後のポリマー溶液にアルカリを加えて水溶化した後、有機溶媒を蒸留にて除去するなどの方法で疎水基含有ポリカルボン酸が得られる。ついで、これを水に溶解させて水溶化疎水基含有ポリカルボン酸を10〜40重量%、好ましくは20〜30重量%含有するアニオン性表面サイズ剤が得られる。この表面サイズ剤は粘度が2000cps(25℃)以下、好ましくは20〜1000cps(25℃)であるのが適当である。
【0032】
一方、乳化重合法では、一般のアニオン性またはノニオン性の界面活性剤、高分子界面活性剤や水溶性樹脂(例えば後述する合成例8に示すように、溶液重合し、ついでけん化して得た水溶性樹脂等)を水に溶解し、疎水性低分子化合物および/または疎水性オリゴマーを溶解した重合性単量体を加え、加熱後、水溶性の過硫酸塩や水溶性アゾ化合物などの重合開始剤を添加して乳化重合を行う方法や、加温した水中に、疎水性低分子化合物および/または疎水性オリゴマーを溶解した重合性単量体と界面活性剤と水をプレ乳化した乳化混合液と、水溶性ラジカル重合用開始剤とを各々滴下して乳化重合していく方法などがある。重合後、重合液にアンモニア、苛性ソーダ、苛性カリや低分子量有機アミン等のアルカリを加えて中和水溶化し、これを水に溶解させて水溶化疎水基含有ポリカルボン酸を10〜40重量%含有するアニオン性表面サイズ剤を得る。
なお、後述する合成例8に示すように、乳化重合法と溶液重合法とを併用し、いずれか一方で重合後、得られたポリマーを用いて他方の重合法にてさらに重合を行ってもよい。
【0033】
本発明の表面サイズ剤は、単独で使用してもよく、あるいは酸化澱粉、アルギン酸ソーダ、カルボキシメチルセルロース、アクリルアミド系ポリマー、ポリビニルアルコール等と併用してもよい。本発明の表面サイズ剤は、塗工時の発泡が抑制されているので、特にサイズ剤固形分が0.2重量%以上の高濃度塗工液に使用するのに好適である。
【0034】
また、本発明の表面サイズ剤は、各種の紙に対して、例えば含浸法、サイズプレス法、ゲートロール法、バーコータ法、カレンダ法、スプレー法などの従来公知の塗布方法によって塗工することができる。その際、本発明の表面サイズ剤は塗工時の発泡が抑制されているので、操業性が向上する。本発明の表面サイズ剤の塗布量は通常固形分換算で約0.01〜2g/cm2、好ましくは約0.05〜0.5g/cm2であるのがよい。
【0035】
本発明の表面サイズ剤が適用される紙は特に限定されず、表面サイジングが要求される各種の印刷用紙に適用可能である。このような印刷用紙としては、例えば新聞用紙、筆記・図画用紙(ノート、便箋など)、書籍用紙、フォーム用紙、PPC用紙、インクジェット用紙、感熱記録紙、感圧記録紙、コート紙(キャストコート紙、上質コート紙など)、微塗工印刷用紙、アート紙、などの印刷用紙が挙げられ、さらにクラフト紙、純白ロール紙などの包装用紙などにも適用可能である。
【0036】
特に本発明の表面サイズ剤は水溶性樹脂タイプで、発泡性の低い均質な組成であるので、カラーインクジェット適性に優れており、インク吸収の均質さによる鮮明なカラー印字が可能となり、フェザリング現象、インクの裏抜けを防止することができる。従って、本発明の表面サイズ剤はインクジェット用印刷用紙に適用するのに好適である。
【0037】
【実施例】
次に合成例、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明する。
【0038】
<疎水基含有ポリカルボン酸型アニオン性表面サイズ剤の作成>合成例1
攪拌機、温度計のついた1Lの4つ口フラスコにジイソプロピルケトン162gとNドデシルメルカプタン1.6g、スチレン64g、メタクリル酸32g、アクリル酸32g、アクリル酸2エチルヘキシル32gおよびアルキルケテンダイマー13g(ニューペルハード76G:日本油脂(株)製、融点約50℃、炭素数が18と16の脂肪酸を主な出発原料とする。)を仕込み、攪拌下で還流温度まで昇温した。 別に滴下ロートにラウロイルパーオキシド10重量%のジイソプロピルケトン溶液32gを1.5時間を要して反応容器中に滴下し、さらに還流温度で4時間熟成した。冷却し、48%水酸化カリウム85.9g、水400gを滴下しケン化溶解した。次に還流温度まで加熱し、ジイソプロピルケトンを水と共沸蒸留し留去した。ついで、冷却して水で希釈し、固形分20%のアニオン性表面サイズ剤を得た。この表面サイズ剤のポリマー中、カルボン酸基含有単量体は40重量%である。
【0039】
合成例2
攪拌機、温度計のついた1Lの4つ口フラスコに水550gとドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.6gを仕込み90℃まで昇温した。1つの滴下ロートにメタクリル酸80gとスチレン24g、メタクリル酸t−ブチル56gとNドデシルメルカプタン1.6g、ポリブテン(日石ポリブテンHV−35:日石石油化学(株)製:平均分子量750、流動点−12.5℃)5gを仕込み混合均一化した。別の滴下ロートに過硫酸アンモニウム5%水溶液48gを用意し、両者をフラスコ中に2時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成して冷却した。ついで、25%アンモニア水63.2gを加え中和水溶化して、固形分20%のアニオン性表面サイズ剤を得た。この表面サイズ剤のポリマー中、カルボン酸基含有単量体は50重量%である。
【0040】
合成例3
攪拌機、温度計のついた1Lの4つ口フラスコに水550gとドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.6gを仕込み85℃まで昇温した。1つの滴下ロートにアクリル酸56gとスチレン64g、アクリル酸N−ブチル40gとNドデシルメルカプタン4.8g、ラウリルアルコール12.8gを仕込み混合均一化した。別の滴下ロートには過硫酸アンモニウム5%水溶液48gを用意し、両者をフラスコ中に4時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成して冷却した。20%水酸化カリウム109g、25%アンモニア水26.4gを加え中和水溶化して固形分20%のアニオン性表面サイズ剤を得た。この表面サイズ剤のポリマー中、カルボン酸基含有単量体は35重量%である。
【0041】
合成例4
アルキルケテンダイマーを用いない以外は合成例1と同様にして得たアニオン性ポリマー水溶液にシリコーン系消泡剤SNデフォーマー777(サンノプコ(株)製)を固形分20%品の有姿に対し0.4%添加混合し、表面サイズ剤を得た。
【0042】
合成例5
ポリブテンを用いない以外は合成例2と同様して得たアニオン性ポリマー水溶液にシリコーン系消泡剤DK Q1−1056(ダウコーニング アジア(株)製)を固形分20%品の有姿に対し0.4%添加混合し、表面サイズ剤を得た。
【0043】
合成例6
ポリブテンを用いない以外は合成例2と同様して得たアニオン性ポリマー水溶液にポリブテンを固形分20%品の有姿に対し1.0%添加して60℃で1時間撹拌混合し、表面サイズ剤を得た。
【0044】
合成例7
ラウリルアルコールを用いない以外は合成例2と同様して得たアニオン性ポリマー水溶液にシリコーン系消泡剤SNデフォーマー777(サンノプコ(株)製)を固形分20%品の有姿に対し0.4%添加混合し、表面サイズ剤を得た。
【0045】
合成例8
攪拌機、温度計のついた1Lの4つ口フラスコにトルエン30gを仕込み、攪拌下で還流温度まで昇温した。 2つの別々の滴下ロートに無水マレイン酸32gとトルエン30g溶解保温したもの、スチレン67g、アゾイソブチロニトリル1.5g、Nドデシルメルカプタン0.6gを溶解したものを用意し、2時間を要して別々に反応容器中に滴下し、さらに還流温度で4時間熟成した。冷却し、48%水酸化カリウム61.1g、水300gを滴下しケン化溶解する。次に還流温度まで加熱し、トルエンを留去した。冷却して水で希釈し固形分20%の水溶性樹脂を得た。この水溶性樹脂中、カルボン酸基含有単量体は21重量%である。
【0046】
上記で得られた水溶性樹脂400gと水180g、低分子量アニオン性界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.2gを仕込み90℃まで加熱した。4%過硫酸カリウム水溶液25gとスチレン78g、アクリル酸ー2-エチルヘキシル12g、アクリル酸 n-ブチル30gの単量体混合物を別々に3時間を要して滴下供給し乳化重合を行い、なおも2時間熟成の後、冷却しアンモニア水を添加してpHを9に調整し、水希釈して固形分濃度25%の水系ポリマーを得た。この水系ポリマーにシリコーン系消泡剤DK Q1−1056(ダウコーニング アジア(株)製)を固形分25%品の有姿に対し0.5%添加混合し、表面サイズ剤を得た。この表面サイズ剤のポリマー中、カルボン酸基含有単量体は11.5重量%である。
【0047】
実施例1
<中性上質紙への表面サイズ剤塗工試験>
合成例1の表面サイズ剤を酸化澱粉(MS−3800:日本食品化工製)糊化溶液に溶解し、酸化澱粉5%、表面サイズ剤0.2%含有の塗工液を調製した。未塗工中性上質原紙(坪量65g/m2、内添サイズ剤AKD系、填料軽質炭酸カルシウム、ステキヒトサイズ度10秒)にサイズプレスにて塗工液温度50℃、吸液量30g/m2で塗工し、90℃の回転式ドラムドライヤーに90秒間通して乾燥し塗工紙を作成した。
【0048】
実施例2〜3
合成例2〜3の表面サイズ剤を用いた他は実施例1と同様にして実施例2〜3の塗工紙を作成した。
【0049】
比較例1〜5
合成例4〜8の表面サイズ剤を用いた他は実施例1と同様にして各比較例1〜4の塗工紙を作成した。
各実施例および比較例で使用したサイズ剤を表1に示す。
【表1】
Figure 0003854165
【0050】
<塗工紙の性能試験>
ステキヒトサイズ度:JIS P 8122に基づき紙のステキヒトサイズ度(耐水度)を測定した。数値(秒)が高いほど、耐水度が高いことを示している。
Figure 0003854165
【0051】
<塗工液の発泡性試験>
各表面サイズ剤を酸化澱粉(MS−3800:日本食品化工製)糊化溶液に溶解し、酸化澱粉5%、表面サイズ剤0.2%含有の塗工液をつくった。50℃に加温した塗工液400gを800ml家庭用ミキサーに入れ1分間ミキシングし、停止5秒後、60秒後、120秒後の撹拌前の液面からの泡高さを記録した。
【0052】
中性上質紙への塗工性能、発泡性試験結果を表2に示す。
【表2】
Figure 0003854165
【0053】
【発明の効果】
本発明の表面サイズ剤は塗工時の液発泡性が低いため、操業性が改善でき、また疎水性低分子化合物および/または疎水性オリゴマーが浮遊分離してくるのが抑制されているため、安定性にもすぐれている。さらに、新聞用紙などの各種印刷用紙に適用したときは高サイズ度が得られ、上質紙などに塗工した場合のカラーインクジェット印字でのインクジェット適性にも優れる。

Claims (6)

  1. 単量体総量に対して0.5〜10重量%の疎水性低分子化合物および/または疎水性オリゴマーの存在下にカルボン酸基含有単量体と疎水性単量体とを共重合させて得られる疎水基含有ポリカルボン酸型のアニオン性製紙用表面サイズ剤。
  2. 前記疎水性低分子化合物が、アルキルケテンダイマーおよび炭素数8〜22の高級アルコールから選ばれる請求項1記載の製紙用表面サイズ剤。
  3. 前記疎水性オリゴマーが、オレフィンオリゴマーまたは官能基を持たない炭化水素オリゴマーであって、分子量が200〜2000、流動点が30℃以下の液状疎水性オリゴマーである請求項1記載の製紙用表面サイズ剤。
  4. 疎水基含有ポリカルボン酸型ポリマーが水溶性樹脂タイプである請求項1〜のいずれかに記載の製紙用表面サイズ剤。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載の製紙用表面サイズ剤を用いて表面サイジングしたことを特徴とする印刷用紙。
  6. インクジェット用である請求項記載の印刷用紙。
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