JP3853184B2 - ヨモギエダシャクの交信撹乱剤及びこれを用いた交信撹乱方法 - Google Patents
ヨモギエダシャクの交信撹乱剤及びこれを用いた交信撹乱方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3853184B2 JP3853184B2 JP2001279144A JP2001279144A JP3853184B2 JP 3853184 B2 JP3853184 B2 JP 3853184B2 JP 2001279144 A JP2001279144 A JP 2001279144A JP 2001279144 A JP2001279144 A JP 2001279144A JP 3853184 B2 JP3853184 B2 JP 3853184B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- compound
- communication
- artemisia
- weight
- disruptor
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Landscapes
- Catching Or Destruction (AREA)
- Agricultural Chemicals And Associated Chemicals (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シャクガ科害虫であるヨモギエダシャクの性フェロモン交信を撹乱して交尾率を下げ増殖を抑制し防除するヨモギエダシャクの交信撹乱剤及びこれを用いた交信撹乱方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
交信撹乱による害虫防除は、交信撹乱剤である合成性フェロモンを害虫の発生場所の空気中に大量に放出し、雌雄間の交信を撹乱させて交尾率を下げ、次世代の幼虫密度を抑制するものである。交信撹乱剤に使用されている合成性フェロモンは、毒性が極めて低く環境汚染の心配がほとんど無い等、クリーンな害虫防除手段として注目されている。
【0003】
現在、交信撹乱剤は蛾類のハマキガ科、スガ科、ヤガ科、ホソガ科、ハモグリガ科、ドクガ科等で実用化されているが、蛾類最大の種数を有するシャクガ科では交信撹乱に関する研究は手付かずであり、当然の結果として実用化もなされていない。
【0004】
シャクガ科害虫の交信撹乱剤が開発されてこなかった原因として、シャクガ科の性フェロモン成分がエポキシド化合物であることが挙げられる。
ハマキガ類をはじめとするこれまで同定されてきた多くの蛾類性フェロモン成分は、直鎖不飽和の酢酸エステルやアルコールやアルデヒドである。これら性フェロモンの化学合成は研究が進み、比較的高純度の化合物でも安価な合成が可能となっている。しかし、シャクガ科の性フェロモンであるエポキシド化合物は、光学活性を有するため高純度の合成品を低コストで大量に得ることが難しく、合成サンプルを大量に必要とする交信撹乱の技術には馴染まないと考えられてきた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、シャクガ科害虫には広食性の害虫が多く、その防除に大量の殺虫剤が使用されている現状から、シャクガ科害虫に対する交信撹乱剤の開発が要望されている。
そこで、本発明者らは、シャクガ科害虫であり、チャや果樹の重要害虫であるヨモギエダシャクに注目し、本害虫を防除するために有効な交信撹乱剤を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる課題を解決するために、ヨモギエダシャクの性フェロモンに関して鋭意研究を重ねた結果、シス−3,4−エポキシ−(6Z,9Z)−ノナデカジエン(cis-3,4-epoxy-(6Z,9Z)-nonadecadiene)(以下、「化合物A」と略す。)と、シス−6,7−エポキシ−(3Z,9Z)−ノナデカジエン(cis-6,7-epoxy-(3Z,9Z)-nonadecadiene)(以下、「化合物B」と略す。)と、シス−9,10−エポキシ−(3Z,6Z)−ノナデカジエン(cis-9,10-epoxy-(3Z,6Z)-nonadecadiene)(以下、「化合物C」と略す。)とを含み、好ましくは(3Z,6Z,9Z)−ノナデカトリエン((3Z,6Z,9Z)-nonadecatriene)(化合物Dと略す。)を含むことにより、本種の防除に非常に有効であることを知見し、本発明をなすに至ったものである。各化合物の構造式を以下に示す。
【0007】
【化1】
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
ヨモギエダシャクの性フェロモンは、化合物Aと同定された(Ando et.al.Journal of Chemical Ecology 1997,23,2413〜2423)。また、同時に、本種の処女雌の性フェロモン腺には化合物Dが検出され、性フェロモンの前駆体としてのみならず性フェロモンとしても作用している可能性が示唆された。
【0009】
化合物Aの合成には、化合物Dを経由し、これをメタクロロ過安息香酸(MCPBA)にて酸化する経路が一般的である(Ando et.al.Journal of Chemical Ecology 1993,19,787〜798)。この酸化反応では、化合物Aは選択的に生成せず、化合物Aと化合物Bと化合物Cが同時に生成する。これら各位置異性体は蒸留等の簡便な精製法ではほとんど分離しないため、ローバーカラムを備えた中圧液体クロマトグラフィー(MPLC)での分離等、高コストな方法が必要となる。さらに、光学異性体を分離するには、キラルカラムを用いた高圧液体クロマトグラフィーが必要となり、以上の手法で作られた合成品は、農業用目的で使用することは困難なほど高価なものとなる。
【0010】
本発明者らは、ヨモギエダシャクの交信撹乱に関して検討した結果、化合物Dの酸化反応により得られる化合物Aと化合物Bと化合物Cとの混合物を交信撹乱剤として用いることにより、ヨモギエダシャクの性フェロモンそのものを交信撹乱剤とするよりも防除効果が高いことを見いだし、さらに、上記混合物に対して化合物Dが1〜10.0重量%添加されている場合さらに防除効果が高いことを見い出し本発明の完成に至った。
【0011】
本発明の交信撹乱剤として用いられる3種のエポキシド化合物の混合比率は、化合物Dを経由して得られる合成過程ではほぼ1:1:1の割合(重量比)で生成するが、その割合は厳密ではなく任意で構わない。実際に交信撹乱剤として使用する場合、化合物Aと化合物Bと化合物Cとの総重量に対する化合物Aの重量が、10〜90重量%、特に20〜60重量%が好ましい。
これらエポキシド化合物は、ラセミ体で十分効果を発揮するが、光学純度の高い合成品でも良い。また、化合物Dからの酸化反応条件により、ジエポキシド化合物やトリエポキシド化合物が生成されるが、これらの不純物は、好ましくは10重量%以内であれば、交信撹乱効果に大きな影響を及ぼさない。
【0012】
さらに、本発明における交信撹乱剤は、ヨモギエダシャク以外の昆虫であっても、(Z)−体の二重結合を3−位、6−位、9−位に有する炭素数19の直鎖不飽和のモノエポキシド化合物を性フェロモンとして利用している昆虫であれば、高い交信撹乱活性を有することが容易に推測される。このような昆虫は、表1に示すように、シャクガ科で21種、ヤガ科で3種すでに報告されている。
【0013】
【表1】
【0014】
本発明の交信撹乱剤は、有効成分として含有する上記合成性フェロモン物質を長期間にわたって徐々に放出させるために、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニール共重合体等の放出量制御機能を有するプラスチックからなる細管、ラミネート製の袋、アンプル等の容器に充填して用いられる。さらに、製剤化にあたっては、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ビタミンE等の抗酸化剤や紫外線吸収剤を適当量加えてもよい。本発明の交信撹乱剤の好ましい使用量は、害虫の発生量や気象又は地形等の諸条件により異なるが、通常10〜200g/haである。
【0015】
以下、本発明の具体的態様を実施例及び比較例によって説明するが、本発明はこの記述に限定されるものではない。
【実施例】
参考例1〜2及び比較例1〜3
参考例1〜2及び比較例1〜3の各例において、表2に示すように、化合物Aと化合物Bと化合物Cの混合物(重量比1:1:1)又は化合物Aを調製し、これに安定剤としてBHTと2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロヘンゾトリアゾール(住友化学社製スミソーブ300)を各3重量%添加し、外径1.41mm、内径0.81mm、長さ20cmのポリエチレンチューブに封じ込め、徐放性の交信撹乱剤とした。各チューブには、約80mgを充填した。
それぞれの化合物は、ラセミ体を使用し、不純物としてジエポシ化合物とトリエポキシド化合物は、合計10重量%未満である。
【0016】
【表2】
【0017】
これら交信撹乱剤を、各0.1haのチャ園に表2の交信撹乱剤を10aあたり100本及び300本処理し、性フェロモントラップを用いた交信撹乱率調査と幼虫調査により防除効果判を行った。その結果を表3に示した。なお、比較例3は、交信撹乱剤処理を行わなかった慣行防除による対照区である。
【0018】
交信撹乱率は、交信撹乱剤を処理した圃場と無処理圃場に、それぞれ設置したフェロモントラップの誘殺数から、以下の式により求めた。
【式1】
【0019】
また、幼虫調査は、各圃場において任意に50カ所を選び、そのポイントを中心として50cm×50cmの範囲のチャ葉に寄生している幼虫数を数えることにより行い、1m3当たりの幼虫数として表記した。
【0020】
【表3】
【0021】
参考例1や参考例2では、高い交信撹乱率を示し、また、1m3あたりの幼虫数も0.8頭と0.2頭と非常に少なかった。しかし、比較例1や比較例2では、交信撹乱剤を無処理の比較例3に比べ、幼虫数が少なかったものの、4.5頭と2.8頭の幼虫が認められた。交信撹乱率も最大で90.3%とそれほど高くなかった。
【0022】
実施例3〜5及び参考例6
化合物Aと化合物Bと化合物Cの混合物(重量比1:1:1)に対して、化合物Dを1%(実施例3)、5%(実施例4)、10%(実施例5)、20%(参考例6)を添加したものを前述のポリエチレンチューブにそれぞれ封入し、各0.1haのチャ園に、10aあたり100本の割合で処理した。そして、交信撹乱率と幼虫数を前述の方法により調べた。それらの結果を表4に示す。なお、表4には、対照として参考例1の結果と、交信撹乱剤処理を行わなかった慣行防除による対照区に関する比較例3の結果も示す。
【0023】
【表4】
【0024】
参考例1では、99.1%の交信撹乱率と幼虫数も0.8頭と、比較的高い防除効果を示しているものの、実施例3〜5ではさらに高い交信撹乱率と防除効果を示していることがわかる。また、化合物Dを20重量%添加した参考例6では、交信撹乱率、防除効果ともに実施例3〜5に比べるとやや劣るが、比較例に比べると防除効果を示していることがわかる。
【0025】
【発明の効果】
本発明による交信撹乱剤によれば、ヨモギエダシャクに対して極めて強力に作用するので、その防除に有効である。
Claims (2)
- シス−3,4−エポキシ−(6Z,9Z)−ノナデカジエン(以下、化合物Aと略す)と、シス−6,7−エポキシ−(3Z,9Z)−ノナデカジエン(以下、化合物Bと略す)と、シス−9,10−エポキシ−(3Z,6Z)−ノナデカジエン(以下、化合物Cと略す)と、(3Z,6Z,9Z)−ノナデカトリエン(以下、化合物Dと略す)を含むヨモギエダシャクの交信撹乱剤であって、化合物Aと化合物Bと化合物Cとの総重量に対する化合物Aの重量が20〜60重量%であり、化合物Aと化合物Bと化合物Cとの総重量に対する化合物Dの重量が1〜10.0重量%であるヨモギエダシャクの交信撹乱剤。
- 請求項1に記載の交信撹乱剤を用いたヨモギエダシャクの交信撹乱方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001279144A JP3853184B2 (ja) | 2001-09-14 | 2001-09-14 | ヨモギエダシャクの交信撹乱剤及びこれを用いた交信撹乱方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001279144A JP3853184B2 (ja) | 2001-09-14 | 2001-09-14 | ヨモギエダシャクの交信撹乱剤及びこれを用いた交信撹乱方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2003081718A JP2003081718A (ja) | 2003-03-19 |
JP3853184B2 true JP3853184B2 (ja) | 2006-12-06 |
Family
ID=19103392
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2001279144A Expired - Fee Related JP3853184B2 (ja) | 2001-09-14 | 2001-09-14 | ヨモギエダシャクの交信撹乱剤及びこれを用いた交信撹乱方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3853184B2 (ja) |
-
2001
- 2001-09-14 JP JP2001279144A patent/JP3853184B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2003081718A (ja) | 2003-03-19 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US5905072A (en) | Adjuvants for systemic fungicides, fungicidal compositions which contain them and their use | |
RU2614063C1 (ru) | Упаковка для противомикробной обработки растений | |
KR101775399B1 (ko) | 유해생물 방제 조성물 | |
JPH06507399A (ja) | 確立された植物感染を抑制するための脂肪酸基盤の組成物 | |
KR101641927B1 (ko) | 소나무재선충병 매개충 유인제 조성물 및 이를 이용한 소나무재선충병의 방제방법 | |
CA2712601A1 (en) | Use of surfactants for mitigating damage to plants from pests | |
EP2349293B1 (en) | Cinnamaldehyde-allicin compositions and their method of use | |
WO2009091564A1 (en) | Use of bio-derived surfactants for mitigating damage to plants from pests | |
EA008064B1 (ru) | Фунгицидная композиция, содержащая масло чайного дерева | |
JP6233205B2 (ja) | 害虫防除用水性組成物 | |
US20160157479A1 (en) | Antifungal composition and method | |
CA1338817C (en) | Control of fungal diseases in the production of mushrooms | |
WO2019164344A1 (ko) | 온도 안정성을 갖는 해충 방제용 조성물 및 이를 이용한 해충 방제 방법 | |
JP3853184B2 (ja) | ヨモギエダシャクの交信撹乱剤及びこれを用いた交信撹乱方法 | |
US11737459B2 (en) | Use of nootkatone to kill sap-sucking insects | |
TW200913893A (en) | Cinnamaldehyde formulations and methods of use | |
JPS63198603A (ja) | 交信かく乱剤 | |
EP2914572A1 (en) | Method of monitoring and/or controlling thysanoptera | |
JP6800139B2 (ja) | San Jose Scale(サンホゼスケール)の性フェロモン活性組成物、誘引剤、交信撹乱剤、誘引方法及び交信撹乱方法 | |
JP6670232B2 (ja) | 重水素富化アルデヒド | |
JP5563994B2 (ja) | チャノホソガの交信撹乱剤 | |
JP6108548B2 (ja) | 害虫抵抗性誘導剤、及び植物の害虫防除方法 | |
JP7429968B2 (ja) | 害虫抵抗性誘導剤及び植物の害虫防除方法 | |
JP4320224B2 (ja) | スモモヒメシンクイの性フェロモン組成物 | |
AU741375B2 (en) | Pesticidal compositions containing ethoxylated fatty amines for increasing the effectiveness of endothall and salts thereof |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20060427 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20060516 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20060714 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821 Effective date: 20060714 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20060811 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20060905 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120915 Year of fee payment: 6 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150915 Year of fee payment: 9 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |