JP3852651B2 - 回路遮断器の可動接触子装置 - Google Patents

回路遮断器の可動接触子装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、短絡電流などの大電流が流れたときに、接点の突き合わせによる電磁反発力を利用して可動接触子を駆動し、開閉機構が動作するより早く開極させる回路遮断器に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記した電磁反発式の回路遮断器において、電磁反発力により開極した接点間にはアークが発生する。アークの温度は一般に5000〜6000℃といわれ、接点は高温に曝されるため融点に達する。一方、近時、通電容量の増大による接点の温度上昇を抑制するために接点に接触圧力を与える接触スプリングを強力にし、また高遮断容量を持たせるために消弧性能を高める傾向にある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
その結果として、電磁反発力により可動接触子が開極した後、消弧によって電流が抑制されて電磁反発力が減少するタイミングが早まる一方、この電磁反発力に対抗する接触スプリングの復帰力が大きいため、引き続いて開閉機構がトリップ動作を開始する前に電磁反発力が減少した可動接触子が接触スプリングに押されて可動接点が固定接点に再接触し、高温の接点同士が互いに溶着することがあった。この溶着の改善策として、接点の材質を変更する方法や少ない通電電流でも可動接触子を開極状態に維持する電磁機構を設ける方法などがあるが、いずれもコストが高いという問題がある。
そこで、この発明の課題は、簡単な構成で接点の再接触による溶着を防止することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、この発明は、電磁反発力で開極駆動される可動接触子の開極経路を挟んで弾性変形可能な一対の突起を互いに対向させて設け、前記可動接触子が電磁反発力で開極駆動されたときに、前記可動接触子は前記突起を弾性変形させながら乗り越え、次いで前記突起で前記接触スプリングのばね力に抗して係止されるようにするものである(請求項1及び請求項2)。これにより、可動接触子は電磁反発力を失っても前記突起に係止されて開極位置に留まり、接点同士が再接触することがない。電磁反発力により前記突起を乗り越えた可動接触子は開閉機構のトリップ動作により再び前記突起を逆方向に乗り越えて原位置に復帰するようにするのがよい(請求項3)。
【0005】
【発明の実施の形態】
図1及び図2は請求項1に係るこの発明の実施の形態を示すもので、図1は回路遮断器の閉極状態の縦断面図、図2は図1のII−II線に沿う要部断面図である。図1において、一端に可動接点1aを有する可動接触子1は、両側に側壁を有する絶縁物の可動接触子ホルダ2にピン3を介して回動可能に支持されている。一方、固定接触子4はケース5に固定され、一端に可動接点1aと対応して固定接点4aを有し、他端には電源側端子6が一体形成されている。可動接触子1と可動接触子ホルダ2との間には捩じりばねからなる接触スプリング7が挿入され、可動接触子1は接触スプリング7により固定接触子4に対してばね力を受けて、可動接点1aが固定接点4aに押圧されている。
【0006】
可動接触子ホルダ2は一体形成された図示しない開閉軸を介してケース5に回動自在に支持され、ピン10を介して連結された開閉機構8における操作ハンドル9の開閉操作により開閉駆動され、また後述するトリップ動作により開極駆動される。可動接触子1はリード線11を介して、ケース5に固定された接続導体12の一端に接続され、接続導体12の他端は過電流引外し装置13のヒータ導体14の一端に接続され、ヒータ導体14の他端は負荷側端子15に接続されている。過電流引外し装置13はヒータ導体14に固定されたバイメタル16とケース5に回動自在に支持された可動鉄片17とを有し、バイメタル16及び可動鉄片17の上端部は開閉機構8のトリップクロスバー18に対面している。
【0007】
図1の回路遮断器において、電流は矢印で示すように、電源側端子6→固定接触子4→固定接点4a→可動接点1a→可動接触子1→リード線11→接続導体12→ヒータ導体14→負荷側端子15の経路で流れる。その場合、突き合わせ接触する可動接点1aと固定接点4aとの間には、電磁反発力Fが発生する。通電電流I[kA]とすると、電磁反発力F[kg]は一般に、F=4〜5I2 ×10-2で表される。そのため、短絡電流のような大電流(例えば50kA) が流れると、可動接触子1には大きな電磁反発力Fが作用し、接触スプリング7に抗して二点鎖線で示す位置まで開極方向に駆動される。その際、すでに述べたように接点1a,4a間にアーク19が発生するが、このアーク19は速やかに消弧室20に引き込まれて消弧が図られる。
【0008】
一方、短絡電流が過電流引外し装置13を通過すると、可動鉄片17が吸引され、その上端部が図1の左方向に移動してトリップクロスバー18を押す。これにより、詳細な説明は省略するが、開閉機構8はラッチ21の鎖錠が外され、開閉スプリング22に蓄積されたエネルギを放出して可動接触子ホルダ2を開極方向に駆動する(トリップ動作)。この開閉機構8による開極動作は機械的な動作伝達の所要時間の関係から、電磁反発力による開極動作よりも遅れる。すなわち、大電流通流時には、まず電磁反発力により可動接触子ホルダ2が停止した状態で可動接触子1のみが開極方向に駆動され、次いで開閉機構8の動作により可動接触子ホルダ2が開極方向に駆動される。
【0009】
その場合、電磁反発力で可動接触子1が駆動された段階でアーク19の消滅が速やかに行われて電流が急速に減少し、それに伴って電磁反発力も急減する一方、可動接点1aでの接触圧力を高めて通電容量を増やすために接触スプリング7のばね力の増大が行われていると、早い時期に接触スプリング7のばね力と電磁反発力との力関係が逆転し、すでに述べたように可動接触子ホルダ2の開極駆動の前に可動接触子1が閉極方向に押し戻されて可動接点1aが固定接点4aに再接触し、アーク熱により融点にまで加熱されていた接点1a,4a同士の融着が起こることになる。
【0010】
そこで、図1の可動接触子においては、電磁反発力で開極した可動接触子1を開極位置に保持する手段が設けられている。すなわち、図1及び図2において、可動接触子ホルダ2の側壁内側に、弾性変形可能な一対の突起23が互いに対向するように、例えば一体成形により設けられている。図2(A)に示すように、可動接触子1は閉極状態で突起23の下方に位置しているが、電磁反発力で開極駆動されると突起23及び可動接触子ホルダ2の側壁を弾性変形させながら乗り越え、図2(B)に示すように突起23の上方に位置するようになる。次いで、電磁反発力が減少し、可動接触子1が接触スプリング7で戻されようとすると、この可動接触子1は突起23で接触スプリング7のばね力に抗して係止され開極位置に保持される。その後、そのままの状態で可動接触子ホルダ2の開極駆動が行われる。
【0011】
突起23に係止されたまま可動接触子ホルダ2と一体に開極した可動接触子1は、可動接触子ホルダ2の開極ストロークの最終位置で、図示の場合はラッチ21を支持する軸24に衝突し、突起23を再び逆方向に乗り越えて、図2(A)に示す状態に復帰する。可動接触子1は可動接触子ホルダ2の開極ストロークの最終位置で、カバー25の一部に衝突させるようにしてもよい。
【0012】
次に、図3及び図4は請求項2に係るこの発明の実施の形態を示すもので、図3は回路遮断器の閉極状態の縦断面図、図4(A)は図3の要部の拡大図、図4(B)はそのB−B線に沿う断面図である。図3において、ケース31内には前後一対の固定接触子32及び33が対向して配置され、それぞれの対向端部に固定接点32a及び33aがそれぞれ取り付けられるとともに、固定接触子32には電源側端子34が一体形成されている。固定接触子33の上方にはバイメタルからなるサーマルリレー35及び電磁式の引外し装置36が配置され、固定接触子33はサーマルリレー35の一端に接続されている。また、サーマルリレー35の他端は引外し装置36の一端に接続され、引外し装置36の他端は負荷側端子37に接続されている。
【0013】
固定接触子32,33の下方には可動接触子38が配置され、図3の閉路状態において、固定接触子32,33間は両端の可動接点38a,38aが固定接点32a,33aに接触する可動接触子38により橋絡されている。可動接触子38は中空角柱状の可動接触子ホルダ39の前後側壁間に渡る開口内に挿入保持され、可動接触子ホルダ39は各極別の固定ケージ40内で可動接触子38の開閉方向(図3の上下方向)に移動自在に案内されている。図4に示すように、固定ケージ40は左右一対の側壁40aとこれらを一体的に結合する底付き中空角柱状のばね受部40b及びリブ40cを備え、側壁40aの内壁面の溝で可動接触子ホルダ39を案内するとともに、ばね受部40bと可動接触子38との間に挿入された接触スプリング41により可動接触子38を閉極方向に付勢している。
【0014】
可動接触子ホルダ39は、開閉レバー42により開閉操作される。開閉レバー42は開閉軸43を支点としてケース31に回動自在に支持され、開閉軸43は開閉機構44により開閉駆動される。45及び46はそれぞれ電源側及び負荷側の消弧室、47は消弧室45,46間に渡る転流板である。
【0015】
図3において、電流は電源側端子34→固定接触子32→固定接点32a→可動接点38a→可動接触子38→可動接点38a→固定接点33a→固定接触子33→サーマルリレー35→引外し装置36→負荷側端子37の経路で流れる。ここで、短絡電流のような大電流が流れると、図1の場合と同様に突き合わせ接触する固定・可動接点32a,33a・38a間に大きな電磁反発力が発生し、可動接触子38は接触スプリング41に抗して鎖線で示すように開極方向に駆動される。その際、アーク48が発生し、このアーク48は速やかに消弧室46,47に引き込まれて消弧される。
【0016】
一方、短絡電流が電磁引外し装置36を通過すると、図示しない可動鉄片が吸引され、図示しない伝動機構を介して開閉機構44の鎖錠が外されて開閉レバー42は図3の時計方向に回転駆動される。その結果、可動接触子ホルダ39が接触スプリング41に抗して押し下げられる(トリップ動作)。この開閉機構44による開極動作は、図1の場合と同様に電磁反発力による開極動作よりも遅れる。そのため、電磁反発力で可動接触子1が駆動された段階でアーク48の消滅が速やかに行われ電磁反発力が急減する一方、接触スプリング41の大きなばね力により、早い時期に接触スプリング41のばね力と電磁反発力との力関係が逆転すると、図1の場合と同様に開閉機構44による可動接触子ホルダ39の開極駆動の前に可動接点38aが固定接点32a,33aに再接触する。
【0017】
そこで、図3の回路遮断器においては、電磁反発力で開極した可動接触子38を開極位置に保持する手段が設けられている。すなわち、図3及び図4において、固定ケージ40の側壁40aの両端内側に、弾性変形可能な各一対の突起49及び50が互いに対向するように、例えば一体成形により設けられている。図3に示すように、可動接触子38は閉極状態で突起49,50の上方に位置しているが、電磁反発力で下向きに開極駆動されると、突起49,50及び固定ケージ40の側壁40aを弾性変形させながら乗り越え、図4に示すように突起49,50の下方に位置するようになる。次いで、電磁反発力が減少し、可動接触子38が接触スプリング41のばね力で戻されようとすると、この可動接触子38は突起49,50で係止され開極位置に保持される。その後、そのままの状態で可動接触子ホルダ39の開極駆動が行われる。
【0018】
突起49,50に係止されたまま可動接触子ホルダ39と一体に開極した可動接触子38は、可動接触子ホルダ39の開極ストロークの最終位置でばね受部40bの上方に延びる前後壁の上端部に当接し、図4(A)に鎖線で示すようにV字状に変形させられて突起49,50を再び逆方向に乗り越え、その後、開閉機構44のリセットに伴って図3の状態に復帰する。
【0019】
【発明の効果】
以上の通り、この発明によれば、電磁反発力で開極した可動接触子を突起で係止して開極位置に保持するようにしたことにより、消弧性能や接点接触圧力を高めて高性能化を図った回路遮断器においても、開閉機構の動作前に可動接触子が復帰して接点が溶着する危険がなく、また可動接触子ホルダや固定ケージに突起を設けるだけの簡単な構成なのでコスト負担もほとんど生じない。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態を示す回路遮断器の縦断面図である。
【図2】図1のII−IIに沿う要部断面図で、(A)は可動接触子が開極する前の状態を示し、(B)は可動接触子が電磁反発力で開極した状態を示す。
【図3】この発明の異なる実施の形態を示す回路遮断器の縦断面図である。
【図4】(A)は図3の要部を示す側面図、(B)は(A)のB−B線に沿う断面図である。
【符号の説明】
1 可動接触子
1a 可動接点
2 可動接触子ホルダ
4 固定接触子
4a 固定接点
5 ケース
7 接触スプリング
8 開閉機構
17 アーク
23 突起
32 固定接触子
32a 固定接点
33 固定接触子
33a 固定接点
38 可動接触子
38a 可動接点
39 可動接触子ホルダ
40 ケース
41 接触スプリング
44 開閉機構
48 アーク
49 突起
50 突起

Claims (3)

  1. 一端に可動接点を有する可動接触子が両側に側壁を有する絶縁物の可動接触子ホルダに回動可能に支持され、前記可動接触子は前記可動接触子ホルダとの間に挿入された接触スプリングにより、ケースに固定された固定接触子に対して付勢される一方、前記可動接触子ホルダは前記ケースに回動自在に支持されるとともに開閉機構に連結され、閉極状態において電路に短絡電流が流れると、前記固定接触子に設けられた固定接点と、この固定接点に前記接触スプリングのばね力で押圧される前記可動接点との間に働く電磁反発力により、前記可動接触子が前記接触スプリングに抗して開極方向に駆動され、次いで前記開閉機構がトリップ動作して前記可動接触子ホルダが開極方向に駆動される回路遮断器において、
    前記可動接触子ホルダの側壁内側に、弾性変形可能な一対の突起を互いに対向させて設け、前記可動接触子が電磁反発力で開極駆動されたときに、前記可動接触子は前記突起を弾性変形させながら乗り越え、次いで前記突起で前記接触スプリングのばね力に抗して係止されることを特徴とする回路遮断器の可動接触子装置。
  2. 両端に可動接点を有する可動接触子が絶縁物の可動接触子ホルダに保持され、前記可動接点に対応する固定接点を有する前後一対の固定接触子に跨がるように配置されるとともに、ケースとの間に挿入された接触スプリングにより前記固定接触子に対して付勢される一方、前記可動接触子ホルダは前記可動接触子の両側に側壁を有する絶縁物の固定ケージ内で直線運動可能に案内されるととともに頭部が開閉機構の操作レバーと相対し、閉極状態において電路に短絡電流が流れると、前記固定接点と可動接点との間に働く電磁反発力により、前記可動接触子が前記接触スプリングに抗して開極方向に駆動され、次いで前記開閉機構がトリップ動作して前記可動接触子ホルダが開極方向に駆動される回路遮断器において、
    前記固定ケージの側壁の両端内側に、弾性変形可能な各一対の突起を互いに対向させて設け、前記可動接触子が電磁反発力で開極駆動されたときに、前記可動接触子は前記突起を弾性変形させながら乗り越え、次いで前記突起で前記接触スプリングのばね力に抗して係止されることを特徴とする回路遮断器の可動接触子装置。
  3. 電磁反発力により前記突起を乗り越えた可動接触子は前記開閉機構のトリップ動作により再び前記突起を逆方向に乗り越えて原位置に復帰するようにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の回路遮断器の可動接触子装置。
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