JP3851788B2 - 人工芝および人工芝競技場 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、下地上に置き敷きされる人工芝および人工芝競技場に関し、さらに詳しく言えば、外力による人工芝の伸びを抑えるとともに、ジョイント部での強度低下を防止する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
テニスコートを初めとして、近年ではサッカーや野球などスパイクシューズを使用する競技のサーフェイスにも砂入り人工芝が採用されている。砂入り人工芝は、図8に模式的に示されているように、基布1にパイル2を植設して製造した人工芝3を施工現場において下地5上に敷設し、そのパイル2間の芝目内に砂やゴムチップなどの粒状物6を充填することにより構築される。
【0003】
工場において、人工芝3は例えば3.6m幅として製造される関係上、施工現場で幅方向や長さ方向に隣接する人工芝3,3同士が、接着剤7aが塗布されたジョイントテープ7を介して適宜つなぎ合わされて1枚ものとされる。砂入り人工芝は、充填される粒状物6の重さでその動きが抑えられることから、施工が簡単であるとともに、剥がすのも容易であるため補修にも手間がかからないなどの利点を備えている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、人工芝3は単に下地5上に置き敷きされ、下地5とは接着されていないため、過度の外力が繰り返し加えられるとずれが生ずる。特に、サッカー場や野球場においては、そのプレー性確保のため下地5がゴムチップ舗装などの弾性層とされる場合があるが、下地5が弾性を有していると人工芝3の動きはさらに大きくなる。
【0005】
また、他の用途の場合、砂入り人工芝は、通常、アスコン舗装上に敷設されるが、これ以外に砕石などを転圧舗装した上に敷設されることもある。一般に、砕石層はアスコン舗装に比べて弾力性があるため、このような場合においても、人工芝3が動きやすくなる。
【0006】
ところで、上記したように人工芝3,3同士は、接着剤7aを有するジョイントテープ7を介して一体的に接合されているため、そのジョイント部は他の部分(非ジョイント部)よりもその動きが拘束されることになる。非ジョイント部は単なる置き敷きであるため動きに対する拘束力が小さい。
【0007】
解決すべき課題の理解を容易とするため、図9に複数枚の人工芝3を敷き詰め砂入りとしたサッカー場のゴールポストG付近を示す。図中の鎖線が人工芝3のジョイントテープ7によるジョイント部Jであり、ジョイント部Jの間が単に置き敷きされている非ジョイント部Hである。
【0008】
サッカー競技においては、練習時はもとより実際の試合でもゴールポストGに向かって多人数のプレーヤが動く。このときの外力による非ジョイント部Hの伸びをf1とし、ジョイント部Jの伸びをf2とすると、ジョイント部Jは拘束力が大きいためf1>f2となり、その結果、非ジョイント部Hに矢印Fで示す斜め方向の伸びが発生し、これが原因で図9に示されているようにラインIが曲がってしまうことになる。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、砂入り人工芝において、外力がかけられることによる人工芝の伸びが効果的に抑えられ、ライン曲がりを防止することができる。
【0010】
そのため、請求項1に記載の発明は、基布にパイルを植設し、そのパイル間に粒状物を充填することにより下地上に置き敷きされる人工芝において、パイル植設後における上記基布のパイル植設方向に対する45°方向の伸びが、JIS L−1096に規定される引張試験(チャック間300mm,引っ張り速度100mm/min)による測定値で、196N/50mm幅(20kgf/50mm幅)の負荷時の伸びが25%以下であり、上記基布には上下2枚の基布が含まれ、植設された上記パイルの裏止め材が設けられている状態で、JIS L−1096に規定される引張試験(チャック間200mm,引っ張り速度100mm/min)における縦方向および横方向の強伸度曲線上での最大強度が、588N/50mm幅(60kgf/50mm幅)以上であるとともに、その最大強度時の伸びと破断時の伸びとの差が10%未満であることを特徴としている。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、基布にパイルを植設し、そのパイル間に粒状物を充填することにより下地上に置き敷きされる人工芝において、パイル植設後における上記基布のパイル植設方向に対する45°方向の伸びが、JIS L−1096に規定される引張試験(チャック間300mm,引っ張り速度100mm/min)による測定値で、196N/50mm幅(20kgf/50mm幅)の負荷時の伸びが25%以下であり、上記基布には上基布と下基布の上下2枚の基布が含まれ、植設された上記パイルの裏止め材が設けられている状態で、上記上基布のJIS L−1096に規定される引張試験(チャック間200mm,引っ張り速度100mm/min)による縦方向および横方向の最大強度が490N/50mm幅(50kgf/50mm幅)以上で、かつ、伸びが18%以下であり、上記下基布には合成樹脂の綿状物が1平方m当たり30〜70g付着されており、上記下基布のJIS L−1096に規定された引張試験(チャック間200mm,引っ張り速度100mm/min)による縦方向および横方向の最大強度が196N/50mm幅(20kgf/50mm幅)以上であることを特徴としている。
【0012】
本発明の人工芝において、上記パイルは上記基布にタフティングにより植設されてよいが、そのゲージは10mm以上であることが好ましい。これによれば、芝目内に充填される粒状物に例えばゴムチップなどの粒径の比較的大きな弾性粒状物が含まれている場合でも容易に充填することができる。したがって、本発明には、充填される粒状物内に弾性粒状物が含まれている態様も含まれる。
【0013】
また、本発明には、これら人工芝生を敷設した人工芝競技場も含まれる。すなわち、本発明は、テニスコート、サッカー競技場、野球場、陸上競技場など種々の人工芝競技施設に適用可能である。
【0014】
【発明の実施の形態】
まず、基布のパイル植設方向に対する45°方向について説明する。(なお、人工芝の構成については先に説明した図8を参照。)図1には、基布1にパイル2をタフトする際のステッチ方向(図1において縦方向)とゲージ方向(図1において横方向)とが示されているが、基布1のパイル植設方向に対して45°方向とは、ステッチ方向およびゲージ方向のいずれに対しも45°方向となる。
【0015】
したがって、JIS L−1096に規定される引張試験(チャック間300mm,引っ張り速度100mm/min)にかけられる試料Dは、基布1(パイル2を植設後のもの)から、図1に示されているように、ステッチ方向およびゲージ方向のいずれに対しも45°方向で例えば幅50mmとして裁断したものが用いられる。長さはチャック間の距離よりも長ければよい。
【0016】
本発明において、パイル2は砂入り人工芝に用いられる一般的なものであってよい。すなわち、材質はポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロンなどの合成樹脂で、スプリットヤーン、モノフィラメントヤーンのいずれであってもよい。また、太さについても5000〜11000デシテックス程度であってよい。
【0017】
外力による人工芝の斜め方向(45゜方向)の伸びを抑制するには、縦横方向の寸法安定性を維持する第1基布と、斜め方向の寸法安定性を維持する第2基布とを重ね合わせた基布積層体とすることが効果的である。その組み合わせとしては、次の第1実施形態と第2実施形態が例示される。
【0018】
〔第1実施形態〕
第1基布;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどの織り布。
単糸;フラットヤーン、モノフィラメント、スパンテックスなど。
単糸デシテックス;500〜1100デシテックス。
打ち込み本数;縦・横ともに各10〜30本/インチ。
重量;50〜200g/m2程度。
第2基布;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどの短繊維からなる不織布。
単糸;モノフィラメント、スパンテックスなど。
単糸デシテックス;5〜50デシテックス。
繊維長;50〜150mm。
重量;50〜200g/m2程度。
【0019】
〔第2実施形態〕
第1基布;上記第1実施形態と同じく、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどの織り布。
単糸;フラットヤーン、モノフィラメント、スパンテックスなど。
単糸デシテックス;500〜1100デシテックス。
打ち込み本数;縦・横ともに各10〜30本/インチ。
重量;50〜200g/m2程度。
第2基布;上記第1基布と性能的に同程度(全く同じでなくてよい)の織り布に、ポリプロピレンやポリエチレンテレフタレートなどを綿状にしたものを均一に付着させたもの。
単糸;フラットヤーン、モノフィラメント、スパンテックスなど。
単糸デシテックス;5〜50デシテックス。
繊維長;50〜150mm。
付着量;30〜70g/m2。
付着方法;パンチング加工、融着加工など。
【0020】
好ましくは、第1基布が上基布で、第2基布が下基布として用いられる。また、第2実施形態の第2基布は、付着した綿状物が第1基布に対向するようにして積層される。
【0021】
上記第1および第2実施形態ともに、第1基布は従来の砂入り人工芝で用いられている一般的なもので、人工芝の縦・横方向の寸法安定性を確保するうえで必要とされる。斜め方向の寸法安定性は第2基布により求められる。第2基布は不織布もしくは短繊維の綿を備えているため、縦・横それに斜め方向の伸び縮みが均一である。
【0022】
上記基布積層体に裏止め材を含浸することにより、伸びの抑制がより効果的に達成される。裏止め材は、人工芝製造時にバッキング材として用いられているものでよい。例えば、SBRラテックス、ウレタン、アクリルなどの樹脂で、加熱または常温で材料自体が架橋または材料内の水分が蒸発して硬化するものなどが例示される。
【0023】
裏止め材の含浸は、パイル植設後に行なわれる。なお、ウレタン樹脂によっては、架橋性が高いために基布が1枚の場合でも人工芝の伸びを抑制することができる場合がある。
【0024】
また、第2基布に、第1基布と性能的に同程度のポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどの織り布を打ち込み方向に対して45゜の方向で裁断したバイアス状の基布を重ね合わせることでも同様な寸法安定性を得ることができる。
【0025】
また、第1基布と性能的に同程度のポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどの織り布を作成した後、加熱して縦糸および横糸を融着させることにより、1枚基布であっても縦・横それに斜め方向の寸法安定性を向上させることができる。
【0026】
なお、2枚の基布を単に重ね合わせただけでは、上記引張試験での強伸度曲線における最大強度時の伸びと破断時の伸びとの差が10%未満にならないような基布の組み合わせであっても、その2枚の基布を例えば融着、接着またはニードルパンチなどによって一体化するなどの接合条件を操作することにより、所望の伸びの抑制効果や寸法安定性を得るようにすることができる。
【0027】
上記の各基布を用いた人工芝で砂入り人工芝を構築すれば、斜め方向(図9の矢印F参照)の寸法安定性が向上しているため、外力による人工芝の伸びが抑制され、ラインの曲がりが生ずるおそれはない。
【0028】
ところで、斜め方向の寸法安定性確保のために、上記のように基布を2枚重ねて用いる場合、注意すべき点がある。図2を参照して、単に置き敷きされる非ジョイント部Hは、外力により人工芝3が引っ張られても、全体が伸びるため外力に対して柔軟に対応し得るが、ジョイント部Jではジョイントテープ7の接着剤7aにより固定された部分は伸びが拘束される。
【0029】
したがって、ジョイント部Jの付近では外力により伸びる部分、すなわち応力を受ける範囲JNが狭くなる。このことは、範囲JNに応力が集中することを意味し、その結果、ジョイント部Jでは接着部分に隣接する部分j点で破断するおそれがある。
【0030】
よって、強度的に上基布(第1基布)と下基布(第2基布)のバランスが重要となる。すなわち、上下の基布に破断時の強度、伸びに大きな差があると、一方の基布に応力が集中し、その結果、非ジョイント部Hでは十分な強度、例えばJIS L−1096に規定される引張試験(チャック間300mm,引っ張り速度100mm/min)における最大強度が490N/50mm幅(50kgf/50mm幅)であっても、ジョイント部Jの接着部分に隣接する部分j点では十分な強度が保証されない。
【0031】
実験によると、基布を2枚重ねにしてパイルをタフトし裏止め加工した人工芝において、その接着部分(上記j点)で十分な強度を得るには、次の条件を満足すればよいことが分かった。
【0032】
すなわち、基布を2枚重ねにしてパイルをタフトし裏止め加工した人工芝において、その基布積層体のJIS L−1096に規定される引張試験(チャック間200mm,引っ張り速度100mm/min)における縦方向および横方向の強伸度曲線上での最大強度が、588N/50mm幅(60kgf/50mm幅)以上であるとともに、その最大強度時の伸びと破断時の伸びとの差が10%未満とすればよい。
【0033】
この条件を満足するように基布を選定することにより、ジョイント部Jでの強度が十分に得られる。最適な選定方法としては、2枚の基布がともに上記の条件に当てはまるようにすればよい。
【0034】
なお参考までに、図3にJIS L−1096に規定される引張試験(チャック間200mm,引っ張り速度100mm/min)による強伸度曲線を示す。最大強度とは実質的に弾性を失う降伏点であり、破断時強度とは最大強度からさらに引っ張り力を加えたときに破断に至る破断点の強度である。本発明においては、上記のように最大強度時の伸びと破断時の伸びとの差が10%未満であることが重要である。
【0035】
また、特に上記第2実施形態で説明した第1基布を上基布とし、第2基布を下基布とした組み合わせでタフトした後、ラテックスで裏止めした人工芝においては、その上基布と下基布を次の条件とすることにより、図4に示すような最大強度時の伸びと破断時の伸びとの差がきわめて小さく、破断時のピークがほとんど生じない強伸度曲線が得られる。
【0036】
すなわち、上基布については、上記JIS L−1096に規定される引張試験(チャック間200mm,引っ張り速度100mm/min)による縦方向および横方向の最大強度が490N/50mm幅(50kgf/50mm幅)以上で、かつ、伸びが18%以下であることが好ましい。
【0037】
また、下基布については、合成樹脂の綿状物の付着量が30〜70g/m2であるとともに、同下基布のJIS L−1096に規定された引張試験(チャック間200mm,引っ張り速度100mm/min)による縦方向および横方向の最大強度が196N/50mm幅(20kgf/50mm幅)以上であることが好ましい。なお、綿状物の付着方法はパンチング加工が好ましい。
【0038】
この組み合わせによれば、下基布に付着させた裏止め材が、上基布と下基布との間の綿状物に含浸して両基布が一体となるため、JIS L−1096に規定された引張試験(チャック間200mm,引っ張り速度100mm/min)での強伸度曲線における最大強度時と破断時の伸びの差が小さくなる。その結果、ジョイント部においても応力配分が均等化され、接着強度が高くなる。
【0039】
下基布に対する綿状物の付着量が30g/m2未満であると裏止め材の含浸量が十分でなく、上基布と下基布の一体化が難しくなる。これに対して、綿状物の付着量が70g/m2を超えると、裏止め材の含浸量は十分であるが、綿量が多すぎるため、上基布との付着が不十分になるので好ましくない。
【0040】
砂入り用の人工芝は一般的にタフトにより製造される。従来ではタフト方向に対して直交する方向の間隔(ゲージ)は5/16インチ(約8mm)とされているが、最近ではサッカー場や野球場の用途の場合、粒状物にゴムチップなどの弾性粒状物を含ませることが行なわれている。
【0041】
一般に、弾性粒状物の粒径は0.5〜3mmで、砂の粒径0.6〜1.0mmよりも大きい。そこで、本発明ではゲージを10mm以上とすることにより、弾性粒状物を含む粒状物の芝目内への充填作業を容易に行えるようにしている。
【0042】
なお、ゲージを大きくすると、下地やジョンイトテープの接着剤に対するアンカー効果が低下するため、その分、人工芝の寸法安定性は悪くなる。しかしながら、特に上記第2実施形態による人工芝においては、上基布と下基布とが一体化され寸法安定性がよく斜め方向の伸びも少ないため、ゲージを大きくしても支障は生じない。
【0043】
また、上記第2実施形態によれば、バックステッチ(タフトにより下基布裏面側にできるアンカー効果を有するパイルの凸部分)のほかに、下基布の裏面には裏止め材による凹凸が形成されるため、この部分でもアンカー効果が期待でき、ジョンイトテープの接着剤に対する接着強度の増強が図られる。
【0044】
【実施例】
本発明の実施例およびその比較例について説明する。まず、実施例1〜3および比較例1〜5として、それぞれ人工芝を200m2の大きさに試作した。各例ともに、パイルおよびタフトの仕様は次のとおり。
パイル;ナイロンスプリットヤーン 8000デシテックス(dtex)
タフト;パイル高さ50mm,ゲージ5/8インチ(約16mm),
目付量1200g/m2
【0045】
《実施例1》
上基布;ポリプロピレン平織り布
(縦550dtex×25本,横1100dtex×15本)
下基布;上記上基布に綿状物を付着した綿付き基布
(綿;30dtex,繊維長100mm,綿量100g/m2)
裏止め材;SBRラテックス 塗布量800g(DRY)
【0046】
《実施例2》
上基布;上記実施例1と同じくポリプロピレン平織り布
下基布;不織布
(綿;40dtex,繊維長100mm,重量150g/m2)
裏止め材;上記実施例1と同じくSBRラテックス 塗布量800g(DRY)
【0047】
《実施例3》
上基布;上記実施例1と同じくポリプロピレン平織り布
下基布;上記実施例1の上基布に綿状物を付着した綿付き基布
(綿;30dtex,繊維長100mm,綿量150g/m2)
裏止め材;上記実施例1と同じくSBRラテックス 塗布量800g(DRY)
【0048】
〈比較例1〉
上基布;上記実施例1と同じくポリプロピレン平織り布
下基布;上記実施例1の上基布に綿状物を付着した綿付き基布
(綿;15dtex,繊維長80mm,綿量100g/m2)
裏止め材;上記実施例1と同じくSBRラテックス 塗布量800g(DRY)
【0049】
〈比較例2〉
上基布;上記実施例1と同じくポリプロピレン平織り布
下基布;上記実施例1の上基布に綿状物を付着した綿付き基布
(綿;15dtex,繊維長80mm,綿量20g/m2)
裏止め材;上記実施例1と同じくSBRラテックス 塗布量800g(DRY)
【0050】
〈比較例3〉
上基布;上記実施例1と同じくポリプロピレン平織り布
下基布;不織布
(綿;30dtex,繊維長80mm,重量150g/m2)
裏止め材;上記実施例1と同じくSBRラテックス 塗布量800g(DRY)
【0051】
〈比較例4〉
上基布;上記実施例1と同じくポリプロピレン平織り布
下基布;使用せず
裏止め材;上記実施例1と同じくSBRラテックス 塗布量800g(DRY)
【0052】
〈比較例5〉
上基布;上記実施例1と同じくポリプロピレン平織り布
下基布;上記実施例1の上基布に綿状物を付着した綿付き基布
(綿;30dtex,繊維長100mm,綿量50g/m2)
裏止め材;SBRラテックス 塗布量900g(DRY)
【0053】
次に、上記各実施例1〜3および比較例1〜5の各人工芝から、幅50mm,長さ300mmの試料を縦方向および横方向に沿って各1片をそれぞれ切り出して、上記JIS L−1096に規定される引張試験(チャック間200mm,引っ張り速度100mm/min)により、
(1)縦方向の最大強度およびそのときの伸び、
(2)縦方向の破断強度およびそのときの伸び、
(3)横方向の最大強度およびそのときの伸び、
(4)横方向の破断強度およびそのときの伸び、
を測定した。
【0054】
また、上記各実施例1〜3および比較例1〜5の各人工芝から、幅50mm,長さ200mmの試料を縦方向および横方向に沿って各2片をそれぞれ切り出し、図5のように、それら2片の人工芝3,3を接着剤7aを有するジョイントテープ7で接合した。(ジョイントテープ7;ポリエステルテープ0.4mm厚,幅50,長さ300mm。接着剤7a;ウレタン系一液,幅50mm,長さ250mm,塗布量800g/m2。)
そして、1週間常温で養生後、同じくJIS L−1096に規定される引張試験(チャック間200mm,引っ張り速度100mm/min)により、ジョイント部の(5)縦方向強度および(6)横方向強度を測定した。その結果は次のとおり。
【0055】
《実施例1》
(1)縦方向の最大強度;833N/50mm幅(85kgf/50mm幅)、そのときの伸び12%
(2)縦方向の破断強度;245N/50mm幅(25kgf/50mm幅)、そのときの伸び20%(縦方向での最大強度時と破断強度時の伸びの差8%)
(3)横方向の最大強度;784N/50mm幅(80kgf/50mm幅)、そのときの伸び9%
(4)横方向の破断強度;294N/50mm幅(30kgf/50mm幅)、そのときの伸び17%(横方向での最大強度時と破断強度時の伸びの差8%)
ジョイント部の
(5)縦方向強度;666.4N/50mm幅(68kgf/50mm幅)
(6)横方向強度;637N/50mm幅(65kgf/50mm幅)
【0056】
《実施例2》
(1)縦方向の最大強度;852.6N/50mm幅(87kgf/50mm幅)、そのときの伸び10%
(2)縦方向の破断強度;364.6N/50mm幅(27kgf/50mm幅)、そのときの伸び17%(縦方向での最大強度時と破断強度時の伸びの差7%)
(3)横方向の最大強度;764.4N/50mm幅(78kgf/50mm幅)、そのときの伸び6%
(4)横方向の破断強度;245N/50mm幅(25kgf/50mm幅)、そのときの伸び15%(横方向での最大強度時と破断強度時の伸びの差9%)
ジョイント部の
(5)縦方向強度;607.6N/50mm幅(62kgf/50mm幅)
(6)横方向強度;627.2N/50mm幅(64kgf/50mm幅)
【0057】
《実施例3》
(1)縦方向の最大強度;950.6N/50mm幅(97kgf/50mm幅)、そのときの伸び14%
(2)縦方向の破断強度;上記最大強度時点で破断(したがって、縦方向での最大強度時と破断強度時の伸びの差0%)
(3)横方向の最大強度;940.8N/50mm幅(96kgf/50mm幅)、そのときの伸び9%
(4)横方向の破断強度;上記最大強度時点で破断(したがって、横方向での最大強度時と破断強度時の伸びの差も0%)
ジョイント部の
(5)縦方向強度;803.6/50mm幅(82kgf/50mm幅)
(6)横方向強度;774.2N/50mm幅(79kgf/50mm幅)
【0058】
〈比較例1〉
(1)縦方向の最大強度;823.2N/50mm幅(84kgf/50mm幅)、そのときの伸び14%
(2)縦方向の破断強度;245N/50mm幅(25kgf/50mm幅)、そのときの伸び24%(縦方向での最大強度時と破断強度時の伸びの差10%)
(3)横方向の最大強度;764.4N/50mm幅(78kgf/50mm幅)、そのときの伸び9%
(4)横方向の破断強度;235.2N/50mm幅(24kgf/50mm幅)、そのときの伸び20%(横方向での最大強度時と破断強度時の伸びの差11%)
ジョイント部の
(5)縦方向強度;460.6N/50mm幅(47kgf/50mm幅)
(6)横方向強度;441N/50mm幅(45kgf/50mm幅)
【0059】
〈比較例2〉
(1)縦方向の最大強度;803.6N/50mm幅(82kgf/50mm幅)、そのときの伸び15%
(2)縦方向の破断強度;284.2N/50mm幅(29kgf/50mm幅)、そのときの伸び27%(縦方向での最大強度時と破断強度時の伸びの差12%)
(3)横方向の最大強度;744.8N/50mm幅(76kgf/50mm幅)、そのときの伸び8%
(4)横方向の破断強度;294N/50mm幅(30kgf/50mm幅)、そのときの伸び19%(横方向での最大強度時と破断強度時の伸びの差11%)
ジョイント部の
(5)縦方向強度;450.8N/50mm幅(46kgf/50mm幅)
(6)横方向強度;470.4N/50mm幅(48kgf/50mm幅)
【0060】
〈比較例3〉
(1)縦方向の最大強度;872.2N/50mm幅(89kgf/50mm幅)、そのときの伸び12%
(2)縦方向の破断強度;215.6N/50mm幅(22kgf/50mm幅)、そのときの伸び24%(縦方向での最大強度時と破断強度時の伸びの差12%)
(3)横方向の最大強度;803.6N/50mm幅(82kgf/50mm幅)、そのときの伸び7%
(4)横方向の破断強度;323.4N/50mm幅(33kgf/50mm幅)、そのときの伸び21%(横方向での最大強度時と破断強度時の伸びの差14%)
ジョイント部の
(5)縦方向強度;401.8N/50mm幅(41kgf/50mm幅)
(6)横方向強度;441N/50mm幅(45kgf/50mm幅)
【0061】
〈比較例4〉
(1)縦方向の最大強度;921.2N/50mm幅(94kgf/50mm幅)、そのときの伸び14%
(2)縦方向の破断強度;上記最大強度時点で破断(したがって、縦方向での最大強度時と破断強度時の伸びの差0%)
(3)横方向の最大強度;852.6N/50mm幅(87kgf/50mm幅)、そのときの伸び9%
(4)横方向の破断強度;上記最大強度時点で破断(したがって、横方向での最大強度時と破断強度時の伸びの差も0%)
ジョイント部の
(5)縦方向強度;490/50mm幅(50kgf/50mm幅)
(6)横方向強度;509.6N/50mm幅(52kgf/50mm幅)
【0062】
〈比較例5〉
(1)縦方向の最大強度;940.8N/50mm幅(96kgf/50mm幅)、そのときの伸び16%
(2)縦方向の破断強度;上記最大強度時点で破断(したがって、縦方向での最大強度時と破断強度時の伸びの差0%)
(3)横方向の最大強度;921.2N/50mm幅(94kgf/50mm幅)、そのときの伸び8%
(4)横方向の破断強度;上記最大強度時点で破断(したがって、横方向での最大強度時と破断強度時の伸びの差も0%)
ジョイント部の
(5)縦方向強度;490/50mm幅(50kgf/50mm幅)
(6)横方向強度;509.6N/50mm幅(52kgf/50mm幅)
【0063】
上記各例の結果をまとめて表1に示すが、実施例1,2は最大強度と破断強度における伸びの差が小さいため、ジョイント部の接着強度も490N/50mm幅(50kgf/50mm幅)以上ある。比較例1〜3は最大強度と破断強度における伸びの差が大きいため、ジョイント部の接着強度も低い。実施例3および比較例5は最大強度で破断しており、上下の基布が一体化している。比較例4は下基布がなく、上基布である織り布に裏止め材が塗布されているものの、他の例よりも凹凸が少ないため、ジョイント部でのアンカー効果が少なく強度が落ちる。比較例5はラテックスの塗布量が多く裏面にラテックスが多く残っており、その結果、基布部(非ジョイント部)でのアンカー効果が小さく接着強度が若干低くなる。
【表1】
【0064】
次に、上記上記各実施例1〜3および比較例1〜5の各人工芝から、図1に示すように、タフト方向に対して45゜方向で幅50mm,長さ400mmの試料を切り出し、上記JIS L−1096に規定される引張試験(チャック間300mm,引っ張り速度100mm/min)により、196N(20kgf)まで負荷をかけてその伸び(寸法安定性)を測定した。その結果は次のとおり。
【0065】
《実施例1》 伸び24%
《実施例2》 伸び8%
《実施例3》 伸び20%
〈比較例1〉 伸び19%
〈比較例2〉 伸び21%
〈比較例3〉 伸び7%
〈比較例4〉 伸び30%
〈比較例5〉 伸び17%
【0066】
上記の伸び試験を行なったのち、上記実施例1〜3および上記比較例3,4の各人工芝を実際に敷設して図6に示すフットサルコートを構築した。このフットサルコートの一部断面を図7に示す。下地5は砕石C40で厚さは150mm、パイル2はナイロンスプリットヤーン8000dtexで長さ50mm、充填した粒状物6は2層で下層6aを珪砂(粒径0.6〜1.0mm,厚さ15mm)とし、上層6bをゴムチップ(粒径1〜3mm,厚さ15mm)とした。
敷設については、上記実施例1〜3および上記比較例3,4の人工芝を長さ40m,幅2mとしてそれぞれ2枚用意し、隣り合わせで敷設した後、先に説明した図4の方法により、すべてをジョイントして1枚ものとした。
【0067】
このフットサルコートを1年間使用した後に、図6に示すT部でジョイント部の破損状況を確認し、また、ゴールラインGLでラインの曲がりを観察した。
実施例2(寸法安定性8%)および実施例3(寸法安定性20%)についてはライン曲がりが全く見られなかった。
実施例1(寸法安定性24%)は若干のライン曲がりが見られた。
比較例3(寸法安定性7%)はラインは曲がっていないが、ジョイントパンクが多発していた。
比較例4(寸法安定性30%)はラインが大きく曲がり、また、一部でジョイントパンクも観察された。
【0068】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、基布にパイルを植設し、そのパイル間に粒状物を充填することにより下地上に置き敷きされる人工芝において、基布のパイル植設方向に対する45°方向における伸びが、JIS L−1096に規定される引張試験(チャック間300mm,引っ張り速度100mm/min)による測定値で、196N/50mm幅(20kgf/50mm幅)の負荷時の伸びが25%以下となるようにしたことにより、外力がかけられることによる人工芝の伸びが効果的に抑えられ、ライン曲がりを防止することができる。
【0069】
また、基布を上下2枚の基布積層体とする場合、その基布積層体のJIS L−1096に規定される引張試験(チャック間200mm,引っ張り速度100mm/min)における縦方向および横方向の強伸度曲線上での最大強度を588N/50mm幅(60kgf/50mm幅)以上とするとともに、その最大強度時の伸びと破断時の伸びとの差を10%未満としたことにより、ジョイント部の強度低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で言うタフト方向に対する45゜方向を示した説明図。
【図2】本発明が解決すべき課題を説明するための人工芝の要部断面図。
【図3】JIS L−1096に規定される引張試験の強伸度曲線の一例を示したグラフ。
【図4】上基布と下基布との間の綿状物にバッキング材を含浸して得られた人工芝の強伸度曲線を示したグラフ。
【図5】本発明の実施例を示した人工芝の要部断面図。
【図6】本発明の実施例および比較例の各人工芝で構築したフットサルコートを模式的示した平面図。
【図7】上記フットサルコートの構造を説明するための一部断面図。
【図8】従来の人工芝の一般的なジョイント部を示した断面図。
【図9】サッカー場を例にして従来の人工芝で生じていたライン曲がりを説明するための説明図。
【符号の説明】
1 基布
2 パイル
3 人工芝
5 下地
6 粒状物
7 ジョイントテープ
7a 接着剤
Claims (5)
- 基布にパイルを植設し、そのパイル間に粒状物を充填することにより下地上に置き敷きされる人工芝において、
パイル植設後における上記基布のパイル植設方向に対する45°方向の伸びが、JIS L−1096に規定される引張試験(チャック間300mm,引っ張り速度100mm/min)による測定値で、196N/50mm幅(20kgf/50mm幅)の負荷時の伸びが25%以下であり、上記基布には上下2枚の基布が含まれ、植設された上記パイルの裏止め材が設けられている状態で、JIS L−1096に規定される引張試験(チャック間200mm,引っ張り速度100mm/min)における縦方向および横方向の強伸度曲線上での最大強度が、588N/50mm幅(60kgf/50mm幅)以上であるとともに、その最大強度時の伸びと破断時の伸びとの差が10%未満であることを特徴とする人工芝。 - 基布にパイルを植設し、そのパイル間に粒状物を充填することにより下地上に置き敷きされる人工芝において、
パイル植設後における上記基布のパイル植設方向に対する45°方向の伸びが、JIS L−1096に規定される引張試験(チャック間300mm,引っ張り速度100mm/min)による測定値で、196N/50mm幅(20kgf/50mm幅)の負荷時の伸びが25%以下であり、上記基布には上基布と下基布の上下2枚の基布が含まれ、植設された上記パイルの裏止め材が設けられている状態で、上記上基布のJIS L−1096に規定される引張試験(チャック間200mm,引っ張り速度100mm/min)による縦方向および横方向の最大強度が490N/50mm幅(50kgf/50mm幅)以上で、かつ、伸びが18%以下であり、上記下基布には合成樹脂の綿状物が1平方m当たり30〜70g付着されており、上記下基布のJIS L−1096に規定された引張試験(チャック間200mm,引っ張り速度100mm/min)による縦方向および横方向の最大強度が196N/50mm幅(20kgf/50mm幅)以上であることを特徴とする人工芝。 - 上記パイルは上記基布にタフティングにより植設されており、そのゲージが10mm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の人工芝。
- 上記粒状物には軟質粒状物が含まれていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の人工芝。
- 上記請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載された人工芝を敷設したことを特徴とする人工芝競技場。
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