JP3849788B2 - 二重管式掘削装置 - Google Patents

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本発明は、二重管式掘削装置に関する。
従来、地面や法面あるいはトンネル内壁等の様々な地盤を掘削する装置として、削孔の崩壊を防ぎながら掘削を進めることができる二重管式掘削装置が広く用いられている。
二重管式掘削装置は、前面に掘削刃(掘削チップ、掘削用突起等)を具備するインナービットと、前面または側面に掘削刃を具備する筒状のリングビットとによって掘削ビットを構成し、インナービットをリングビットに挿入して着脱自在に一体化し、該一体化された掘削ビットに回転および打撃を加えながら掘削するものである。
すなわち、掘削が進むに従って、インナービットには回転力および打撃力を伝達する駆動ロッドを、また、リングビットには掘削中の孔壁の崩壊を防止するためのケーシングを順次連結して所定の深さまで掘削する。そして掘削終了後、インナービットをリングビットから離して駆動ロッドを順次地上に引き上げ、最後にインナービットを回収する。一方、ケーシングとリングビットは地盤中に残置したり、順次地上に引き上げて回収したりする(例えば、特許文献1参照)。
特許第2992344号公報(第5−7頁、図1)
前記二重管式掘削装置は、リングビットの内周面に形成された略矩形の突起部と、インナービットの外周面に突出して形成された円周方向の一方側にのみ開口した略コ字状の係止部とを有し、該係止部に前記突起部がいわゆるバヨネット原理によって嵌合するものであるため以下の問題がある。すなわち、
係止部は略コ字状であるため、打撃力(掘削反力に同じ)が作用しない時、たとえば、既に掘削されている削孔にインナービットを挿入する時等、インナービットが掘削時の回転方向と反対の方向に回転すると、前記突起部が係止部から容易に脱落する。このため、リングビットがインナービットから外れて、既に掘削されている削孔にリングビットが落下することがある。
また、係止部が略コ字状であって、回転力および打撃力の両方を伝達するものであるため、前記突起部または係止部の摩耗や変形によって、あるいは係止部に取り込まれた摩耗粉、破損片や土砂類によって、突起部と係止部とが噛み合って分離困難になることがある。このため、掘削終了後に、インナービットが回収できなくなることがある。
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、掘削力が作用しない時に、不用意にリングビットがインナービットから外れることがなく、また、インナービットを回収する時は、インナービットをリングビットから確実に外すことができる二重管式掘削装置を提供することを目的とする。
(1)本発明に係る二重管式掘削装置は、前面に掘削刃を具備するインナービットと、前面または側面に掘削刃を具備し、前記インナービットに着脱自在なリングビットとを有し、前記インナービットに付与された回転力および打撃力を前記リングビットに伝達しながら地盤を掘削する二重管式掘削装置であって、
前記インナービットの外周面に設置され、外周側に突出する一部に切欠部を有する略円環状の打撃付与部と、
前記インナービットの外周面で前記打撃付与部の後面側の前記切欠部を除く範囲に設置され、外周側に突出する回転付与部と、
前記リングビットの内周面に設置され、内周側に突出する略円環状の打撃受け部と、
前記リングビットの内周面で前記打撃受け部の後面側に設置され、前記着脱の際、前記インナービットの切欠部を通過自在な内周側に突出する回転受け部と、
前記インナービットの外周面で前記打撃付与部と前記回転付与部との間に設置され、前記リングビットの回転受け部の一部が侵入自在または当接自在な回転拘束部とを有し、
前記打撃付与部の後面と前記回転付与部の前面との間に、円周方向の溝が形成されていることを特徴とする。
(4)さらに、前面インナービットに回転力および打撃力を付与するための駆動機構が設置され、前記リングビットに筒状のトップジョイントが設置され、さらに該トップジョイントに筒状のケーシングが設置されていることを特徴とする。
本発明に係る二重管式掘削装置は以上であるから、掘削時にはリングビットに回転力および打撃力が確実に伝達され、掘削しない時にリングビットがインナービットから不用意に脱落することがなく、さらに、必要に応じて両者を容易且つ確実に分離することができる。
図1は本発明の実施形態に係る二重管式掘削装置の構成部材を示すものであって、(a)および(b)はインナービットの側面図および平面視の断面図、(c)および(d)はリングビットの側面視および平面視の断面図である。
図1において、二重管式掘削装置1はインナービット10およびリングビット20を有している。なお、側面視の断面図において、右方向を前面または前面側と、左方向を後面または後面側と、前後方向を軸方向と、軸方向に直角の方向を円周方向と定義する。
図1の(a)および(b)において、インナービット10の外周部11の前面に近い範囲に外周側に突出した略円環状の打撃付与部12が設置され、打撃付与部12の前面が打撃付与面12aを形成し、後面12bに前面側に陥没した回転拘束部13が設けられている。回転拘束部13は前面方向の突き当たり面13bと円周方向の回転拘束面13c、13dとからなる略コ字状である。なお、外周部11および打撃付与部12は、軸方向に設けられた4条の切欠溝14によって分断されている。なお、前面に具備する掘削刃(掘削チップ、掘削用突起等)の記載を省略している。
また、インナービット10の外周部11の回転拘束部13の後面側には外周側に突出した回転付与部15が設置され、回転付与部15の掘削時の回転方向側の側面が回転付与面15cを、掘削時の回転方向とは反対の側面が回収用側面15dを形成している。
さらに、回転付与部15の前面15aと打撃付与部12の後面12bとの間に逃げ溝16が形成され、回転付与部15と回転拘束部13との間に穴17(インナービット10の図示しない内周部から外周に向けて水や空気等の流体を流出する)が設られている。
さらに、インナービット10の外周部11の後面に近い範囲には外周側に突出したトップジョイント案内部18とケーシング案内部19が設置され、後面には駆動機構30が接続されている。なお、駆動機構30は、削孔に挿入されてインナービット10に直接接続されるものと、地上に設置されて接続ロッドを介して間接的に接続されるものとがある。
図1の(c)および(d)において、リングビット20の前面には掘削刃21(掘削チップ等)が設置され、前面に近い範囲に内周側および外周側に突出した略円環状の打撃受け部22が設置され、打撃受け部22の内周側の後面が打撃受け面22bを形成している。なお、掘削刃21は一体的に形成された掘削用突起等であってもよい。
また、リングビット20の後面に近い範囲に内周側に突出した回転受け部25が設置され、回転受け部25の円周方向の側面(掘削時の回転方向とは反対の側面)が回転受け面25dを、回転受け面25dと反対の側面(掘削時の回転方向の側面)が逆転停止面25cを、回転受け部25の前面が引き戻し面25aをそれぞれ形成している。
さらに、リングビット20の後面側の外周面23に設置されたトップジョイント40が、リング状溝24(外周面23に形成されている)に挿入された連結ワイヤまたは連結リング41によって連結されている。また、トップジョイント40の後面にはケーシング50が接合されている。
図2、3は本発明の実施形態に係る二重管式掘削装置の構成部材の組立状況を示す側面視の一部断面図、および図4は同平面視の断面図である。なお、図1と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
図2の(a)において、インナービット10がケーシング50に挿入され、リングビット20の直前に到達している。このとき、インナービット10の切欠溝14とリングビット20の回転受け部25とが略同一位相になっているから、インナービット10をリングビット20に挿入すること(図中、右方向に移動すること)が可能である。
図2の(b)において、インナービット10がリングビット20に挿入され、インナービット10の打撃付与面12aがリングビット20の打撃受け面22bに当接して行き止まっている。このとき、トップジョイント案内部18およびケーシング案内部19は、それぞれトップジョイント40およびケーシング50に所定の隙間を介して対峙している。なお、図2の(a)において記載したリングビット20の回転受け部25はインナービット10によって隠されるため、これと回転対称の位置にある手前の回転受け部25を斜線を付して表示している。
図3の(a)において、インナービット10の打撃付与面12aをリングビット20の打撃受け面22bに当接したまま、インナービット10を回転しているから、インナービット10の回転付与面15cがリングビット20の回転受け面25dに当接している。したがって、この状態において、インナービット10の回転力および打撃力がリングビット20に伝達されることになる。すなわち、掘削状態を示している。
なお、回転付与面15cと回転受け面25dとの当接部およびその周囲に土砂等が侵入した場合であっても、該土砂等は穴17から流出する流体によって流されるから停留することがない。特に、逃げ溝16を経由して該土砂等の流逸が促進されるものである。
図3の(b)および図4の(a)において、インナービット10の打撃付与面12aはリングビット20の打撃受け面22bから離れ、インナービット10の回転拘束部13にリングビット20の回転受け部25が侵入している。該状況は、あらかじめ掘削されている削孔に二重管式掘削装置1を下降させる時や、掘削の途中で二重管式掘削装置1を上昇させる時に相当するから、インナービット10には、リングビット20、トップジョイント40およびケーシング50の荷重が掛かっている(図中、斜線にて示すリングビット20が右方向に、インナービット10は左方向に移動しようとしている)。このとき、リングビット20の回転受け部25の引き戻し面25aはインナービット10の回転拘束部13の突き当たり面13bに当接し、前記荷重を伝えている。
したがって、インナービット10が掘削時とは反対の方向に回転した場合であっても、リングビット20の回転受け部25の逆転停止面25cが、インナービット10の回転拘束部13の回転拘束面13dに当接し、回転受け部25が回転拘束部13から離脱することがない。すなわち、不用意にリングビット20がインナービット10から離脱して、落下することがない。
図4の(b)は、掘削後、リングビット20、トップジョイント40およびケーシング50を地中に残置して、インナービット10を地上に回収する様子を示している。すなわち、インナービット10をリングビット20に押しつけてながら(図3の(a)参照)、インナービット10を掘削時とは反対の方向に回転して、インナービット10の回転付与部15の回収用側面15dを、リングビット20の回転受け部25の逆転停止面25cに当接している。
そして、回収用側面15dは切欠溝14に滑らかに連なる面を有するから、このまま、インナービット10を後面側に移動すれば(地上側に引き上げれば)、リングビット20の回転受け部25は切欠溝14を容易に通過し、インナービット10はリングビット20から外れることになる。
なお、インナービット10の回収用側面15dがリングビット20の逆転停止面25cに当接する前であっても、インナービット10の切欠溝14をリングビット20の回転受け部25と同一位相にすれば、インナービット10をリングビット20から分離することができる(図2の(b)参照)。
以上、実施形態として、切欠溝14が4条で、回転付与部15および回転受け部25がそれぞれ一対の場合について説明しているが、本発明はこれに限定するものではなく、たとえば、3条の切欠溝14を円周方向に配置し、回転付与部15および回転受け部25を3箇所に設置する等、それぞれの数量や配置形態は限定するものではない。
また、インナービット10の回転拘束部13は打撃付与部12と一体的に設置するものに限定するものではなく、回転拘束部13の後面を平坦にして、回転拘束部13の後面の後方に、回転付与面15cに対峙する回転拘束面を有する突起(回転付与部15よりも軸方向の長さが短い)を設けてもよい。その他、掘削土砂の排出を容易にするための土砂排出路等は適宜設置してもよい。
本発明は、軟弱土砂、砂礫層、岩盤層等の各種地盤や、コンクリート等の各種構造物を掘削する二重管式掘削装置に広く利用することができる。
本発明に係る二重管式掘削装置の構成部材を示す側面図および断面図。 図1に示す構成部材の組立状況を示す側面視の一部断面図。 図1に示す構成部材の組立状況を示す側面視の一部断面図。 図1に示す構成部材の組立状況を示す平面視の断面図。
符号の説明
1 二重管式掘削装置 10 インナービット、 11 外周部、
12 打撃付与部、 13 回転拘束部、 14 切欠溝、
15 回転付与部、 16 逃げ溝、 17 穴、
18 トップジョイント案内部、 19 ケーシング案内部、 20 リングビット、
21 掘削刃、 22 打撃受け部、 25 回転受け部、
30 駆動機構、 40 トップジョイント、 50 ケーシング。

Claims (2)

  1. 前面に掘削刃を具備するインナービットと、前面または側面に掘削刃を具備し、前記インナービットに着脱自在なリングビットとを有し、前記インナービットに付与された回転力および打撃力を前記リングビットに伝達しながら地盤を掘削する二重管式掘削装置であって、
    前記インナービットの外周面に設置され、外周側に突出する一部に切欠部を有する略円環状の打撃付与部と、
    前記インナービットの外周面で前記打撃付与部の後面側の前記切欠部を除く範囲に設置され、外周側に突出する回転付与部と、
    前記リングビットの内周面に設置され、内周側に突出する略円環状の打撃受け部と、
    前記リングビットの内周面で前記打撃受け部の後面側に設置され、前記着脱の際、前記インナービットの切欠部を通過自在な内周側に突出する回転受け部と、
    前記インナービットの外周面で前記打撃付与部と前記回転付与部との間に設置され、前記リングビットの回転受け部の一部が侵入自在または当接自在な回転拘束部とを有し、
    前記打撃付与部の後面と前記回転付与部の前面との間に、円周方向の溝が形成されていることを特徴とする二重管式掘削装置。
  2. 前面インナービットに回転力および打撃力を付与するための駆動機構が設置され、
    前記リングビットに筒状のトップジョイントが設置され、さらに該トップジョイントに筒状のケーシングが設置されていることを特徴とする請求項1記載の二重管式掘削装置。
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