JP3849489B2 - 化粧材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、住宅等の建築物における壁材、天井材、床材、建具類等の建築内装材や、車両内装材、家具、家電製品の表面材等に用いられる化粧材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、天然木や突板を家具や扉などの表面材に使用するために、天然木や突板の表面に透明又は着色透明の塗料を塗装して、木の風合いを活かしつつ、表面物性や耐久性を向上させる手法が広く使われてきた。しかし、この手法の場合、塗装ムラを発生することなく塗装するための高度な塗装技術(職人技)や、大規模な塗装設備が必要であり、また塗料に含まれる大量の溶剤を揮発蒸散させるための大規模な乾燥設備や、塗料を十分に乾燥固化させるための養生期間などを必要し、しかも塗装に使用する廃溶剤の処理や溶剤臭の発生など環境に対する問題もあった。
【0003】
上記湿式塗装法の問題点を解決するために、合板やファイバーボード等の木質系基材の表面に、透明又は半透明の接着剤層を介して、透明又は半透明の合成樹脂シートに透明又は半透明の木目模様を印刷により施してなる、透明又は半透明の化粧シートを貼着することにより得られる木目化粧材が既に提案されている(特開2001−232720号)。しかし、この手法で作製された化粧材は、木質系基材の虫食い、腐食といった物性上の問題があるほか、木質系基材と合成樹脂からなる化粧シートという異質な材料の積層体であることから、これをリサイクルするには木質系基材と化粧シートとの分離が必要となり、事実上リサイクル利用が困難であるという問題があった。
【0004】
一方、近年建築内装材、床材、建具、家電品の表面材等の用途に熱可塑性樹脂と木質系充填材とを含有する木質樹脂成形体を供する試みが数多くなされている。これらの成形体に天然突き板や化粧紙、化粧シート等の表面材を貼り合わせることも考えられるが、成形体と表面材との分離が困難であるために、折角の成形体のリサイクル性が十分に活かされないという問題が発生する懸念があった。そこで本発明者らは既に、熱可塑性樹脂と木質系充填剤を含有する木質樹脂成形体の表面に、前記木質樹脂成形体に含有される熱可塑性樹脂と同系の熱可塑性樹脂を主体とする化粧シートが積層されてなることを特徴とする化粧材を提案した(特願2000−178362号)。この化粧材は、木質樹脂成形体と化粧シートとを分離しなくても、そのまま粉砕してリサイクルできる利点がある。しかし、こうして得られた化粧材は、天然木や突板に塗装を施した塗装化粧材と比較すると、その意匠が印刷による木目だけであるので、看者に対して平面的且つ人工的な印象を与え、意匠性に劣るという問題点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が課題とするところは、従来の天然木材の塗装品である塗装化粧材に特徴的な自然な意匠性や塗装感を備えつつ、塗装化粧材の問題点である高度な塗装技術や大規模な塗装設備を必要とせず、しかもリサイクル性にも優れた化粧材を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明者等は第1の発明として、少なくともホモポリプロピレン樹脂とマレイン酸変性ホモポリプロピレン樹脂とからなる色調の異なる2種以上の熱可塑性樹脂組成物、木質系充填剤および発泡剤を含有し、全体若しくは一部が発泡した該熱可塑性樹脂組成物の色調差による木目模様を有する木質樹脂成形体の表面に、透明ホモポリプロピレン樹脂を主体とする、又は、透明ホモポリプロピレン樹脂および透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂とを主体とする透明又は半透明の樹木導管凹凸模様を有する化粧シートが貼着されてなる化粧材であって、且つ、該透明又は半透明の化粧シートがウレタン系透明印刷インキよりなる木目模様を透明又は半透明の熱可塑性樹脂で狭持した構成を有することを特徴とする化粧材を提供する。
【0011】
また第2の発明として、上記第1の発明の化粧材において、前記化粧シートが、表面に塗膜厚が3〜10μmの透明又は半透明の塗膜層を有することを特徴とする化粧材を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の化粧材は、図1に示す様に、熱可塑性樹脂と木質系充填剤を含有する木質樹脂成形体1の表面に、透明又は半透明の化粧シート2が積層された構成をなしている。そして、上記化粧シート3は、木質樹脂成形体1の主成分である熱可塑性樹脂と同系の熱可塑性樹脂を主体として構成されている。木質樹脂成形体1と化粧シート3との間には、必要に応じて、透明又は半透明の接着剤層3が設けられていても良い。この様に、本発明の化粧材は、木質樹脂成形体1と化粧シート3とが同系の熱可塑性樹脂を主体としているため、化粧材の端材や廃材等のリサイクル時には木質樹脂成形体1と化粧シート3を分離する必要なく、再度木質樹脂成形体1の材料として利用することが可能であり、こうして得られるリサイクル品も木質感を損なわない。また、木質樹脂成形体1は木質系充填材を含有しているために木質感を呈し、それが透明又は半透明の化粧シート3を透して視覚されることにより、化粧シート3が貼着された化粧材も木質感溢れる意匠感を呈する。さらに、化粧シート3の有する絵柄が木目意匠であると、切削や溝きり等で見える木口にも木質感があるので、該木口に別途化粧シートの貼着や塗装などの化粧処理を施さなくても、外観意匠上の違和感が少ない。またさらに、例えば鋸や錐、鑿等による切削性、釘打ち性や螺子止め性等、従来最も一般的な建築材料である木材と同等の加工性が得られることや、熱可塑性樹脂単体と比較して熱伝導率が低下することから、木材に近似した暖かみのある触感が得られることなどの利点もある。
【0013】
本発明において、木質樹脂成形体1の主成分として用いられる熱可塑性樹脂の種類には特に制限はなく、目的物である化粧材の用途に応じて任意の熱可塑性樹脂を適宜選択すればよい。具体的には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体金属中和物(いわゆるアイオノマー樹脂)等のオレフィン系共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール等のポリビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル等のアクリル系樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、6−ナイロン、6,6−ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン−テトラフロロエチレン共重合体、テトラフロロエチレン−パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素系樹脂等、或いはそれらの複数種の混合物、共重合体等を使用することができる。また、多層押出成形法等により、同種又は異種の熱可塑性樹脂からなる複数層の積層体によって構成することもできる。
【0014】
中でも、特に住宅等の建築物における壁材、天井材、床材等の建築材料として使用する場合には、その優れた強度や物理化学的安定性、経済性、成形加工性などの面で、ポリプロピレン系樹脂を主体として構成することが最も望ましい。ここで用いられるポリプロピレン系樹脂としては、一般のホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体等を主体としつつ、必要に応じてポリブテン、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体やそれらの酸変性物、アイオノマー樹脂等から選ばれる1種又は2種以上を適宜添加混合した樹脂組成物などを使用することができる。但し、複数種の樹脂を混合して使用する場合には、リサイクル後の物性を確保するために、出来るだけ相溶性の良い樹脂の組合せを選択するか、若しくは予め相溶化剤を添加しておく等の配慮が求められる。相溶化剤としては主材樹脂の種類にもよるが、具体的には例えばポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂との混合であればエチレン−プロピレン共重合体等が使用される。
【0015】
上記熱可塑性樹脂に添加される木質系充填剤の素材としては特に制限されることなく任意に選択が可能であるが、一般的には木材をカッターミルなどによって破断し、これをボールミルやインペラーミルなどにより粉砕して微粉状にしたもの(木粉)などを用いる。また、配合量が熱可塑性樹脂100重量部に対して100重量部を超えるような高配合とする場合には、特に樹脂中での分散性が重要で、比較的繊毛の少ない粒状の木質系充填剤を使用することが好ましい。繊毛の少ない木質系充填剤としては、主にパーティクルボードなどを研磨して得る研磨粉などが用いられる。木質系充填剤の平均粒径は、大きすぎると分散性が悪く成形性や強度が悪化し、小さすぎると取扱いが困難な上に添加の効果も乏しくなるので、一般的には1〜200μm、より好ましくは5〜100μm程度が良い。添加量は熱可塑性樹脂100重量部当たり10〜500重量部程度の範囲で適宜設計される。なお、熱可塑性樹脂に木質系充填剤を添加する際の、熱可塑性樹脂と木質系充填剤との混練方法は特に問わないが、ヘンシェルミキサーによって混練し、ペレタイザーでペレット化する方法や、2軸押出混練機によって混合、ペレット化する方法などが一般的である。また、本発明の化粧材をリサイクルする場合には、破砕した成形体に必要に応じて木質系充填剤、熱可塑性樹脂、後述する各種添加剤などを添加して利用することもできる。その際の混練方法やペレット化方法も上記と同様であり、特に問わない。
【0016】
木質樹脂成形体1を構成する熱可塑性樹脂には上記した木質系充填剤の他、必要に応じて例えば熱安定剤、酸中和剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤(染料、顔料等)、有機又は無機充填剤、帯電防止剤、滑剤、造核剤、難燃剤、ブロッキング防止剤、艶調整剤等の各種添加剤を適宜添加することもできる。熱安定剤としてはヒンダードフェノール系、硫黄系、リン系等、酸中和剤としてはステアリン酸金属塩、ハイドロタルサイト等、紫外線吸収剤としてはベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、トリアジン系等、光安定剤としてはヒンダードアミン系等、難燃剤としてはハロゲン系、リン系、塩素系等、充填剤としては無機系(炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、アルミナ、タルク、クレー、珪酸マグネシウム、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化鉄、カーボンブラック、金属粉、炭素繊維、ガラス繊維等)又は有機系(ナイロン系、ポリカーボネート系、ポリウレタン系、アクリル系、紙粉等)等、滑剤としては炭化水素系、脂肪酸系、高級アルコール系、脂肪酸アマイド系、金属石鹸系、エステル系等、造核剤としてはカルボン酸金属塩系、ソルビトール系、リン酸エステル金属塩系等、顔料としては有機顔料(縮合アゾ系、不溶性アゾ系、キナクリドン系、イソインドリノン系、アンスラキノン系、イミダゾロン系、フタロシアニン系等)、無機顔料(カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄系、コバルトブルー、パール顔料(酸化チタン被覆雲母等))等があり、これらの各種の添加剤を任意の組み合わせで用いることができる。
【0017】
木質樹脂成形体1は、発泡剤の添加等によりその全体又は一部が発泡していても良い。この発泡のために添加される発泡剤の種類にも特に制限はなく、従来公知の発泡剤から適宜選択すればよい。具体的には、従来公知の熱可塑性樹脂の発泡法としては、一般的には、熱分解や化学反応によってガスを発生する性質を有する化学物質(化学発泡剤)を利用する化学発泡法と、低沸点の液体又は高圧下で液化した気体(物理発泡剤)が熱の作用により気化する現象を利用する物理発泡法とに分類することができる。前者に用いられる化学発泡剤としては、例えば重炭酸ナトリウム(重曹)、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、ホウ化水素ナトリウム、軽金属(アルミニウム、マグネシウム等)、アジド化合物(アジ化ナトリウム等)等の無機発泡剤や、アゾ系(アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等)、ニトロソ系(ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ジメチルジニトロソテレフタルアミド等)、ヒドラジド系(p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルヒドラジド等)等の有機発泡剤などを、それぞれ単独若しくは任意の複数種の組み合わせで使用することができる。また、特に発泡倍率が2倍を超える高発泡化を必要とする場合には、物理発泡法が好適であり、その際に用いられる物理発泡剤としては、炭酸ガス(二酸化炭素)や脂肪族炭化水素(プロパン、ブタン、イソブタン、イソペンタン等)、クロロフルオロカーボン類(いわゆるフロンガス)等の不活性気体が主に用いられている。また、物理発泡法による発泡押出成形に際しても、発泡体のセル形状を整えるため等の目的で、化学発泡剤を併用することもできる。この様にして木質樹脂成形体1を発泡させると、見掛けの密度が低下することによる軽量化や、熱伝導度の低下による暖かい触感、切削や溝切り等の加工性の向上、ガスの逃げ道が出来ることにより揮発成分を含む接着剤による接着が容易に可能となること等の種々の利点がある。
【0018】
木質樹脂成形体1は、上述した様に木質系充填剤を含有するしていること自体によっても、木材に近似した色調や木質繊維による光の方向性ある乱反射(照り)等による木質感を呈するものであるが、全体が均一な色調や照り感を呈しているのであっては、その意匠感は天然木材には程遠い。但し一般的には全体が完全に均一ということは少なく、成形時の樹脂の流動痕によって若干の木目状紋様を呈する場合が多いが、それでも天然木材には遥かに及ばないものである。そこで、熱可塑性樹脂に添加する木質系充填剤及び/又は顔料等の着色剤の種類及び/又は配合比率を異ならせるなどして、色調を相互に異ならせた2種以上の熱可塑性樹脂組成物を使用し、それらを相互に完全には混合させずに一定方向に筋状ないし層状に配列させた状態に成形することにより、それらの色調差による木目様の模様を表面に現出させると、さらに天然木材に近似した自然感溢れる化粧材を得ることができる。なお、上記2種以上の熱可塑性樹脂組成物を相互に完全には混合させずに成形するためには、成形温度における流動特性が相互に異なる熱可塑性樹脂組成物を組み合わせて使用するのが良い。例えば、成形温度における溶融粘度の異なる複数種の熱可塑性樹脂組成物のペレットを混合して押出成形機に供給し、溶融粘度の最も低い樹脂組成物に合わせた温度条件で押出成形を行うと、溶融粘度の高い樹脂組成物は流動性が不十分であるために他の樹脂組成物と均一に混合せず、一定しない幅や長さで成形方向に沿って筋状に引き延ばされた形で、溶融粘度の低い樹脂組成物中に分散された構造の成形体が得られ、この成形体の表面に不規則に現出した溶融粘度の高い樹脂組成物からなる筋の、周囲の溶融粘度の低い樹脂組成物との色調差が、天然木材の木目を彷彿とさせる自然な木目模様を呈するのである。ここで、上記熱可塑性樹脂組成物の流動特定を異ならせるには、平均分子量や分子量分布、側鎖密度等の差により溶融粘度の異なる樹脂を組み合わせても良いし、添加する木質系充填剤及び/又は顔料等の着色剤の種類や量を変えることで溶融粘度を異ならせても良く、両者を併用して適宜調節することも勿論可能である。
【0019】
木質樹脂成形体1の成形方法としては、押出成形法若しくは異形押出成形法が最も一般的なものであるが、その他例えば射出成形法、注型成形法、中空成形法、圧縮成形法、熱成形法、延伸成形法、切削加工法等、或いはそれらの組合せ等、従来公知の任意の樹脂成形方法から適宜選択して適用することができる。
【0020】
上記木質樹脂成形体1の表面に貼着される化粧シート3は本発明においては、少なくともその貼着後に木質樹脂成形体1の表面が透視可能な程度の透明性を備えた透明又は半透明のものであること、及び、木質樹脂成形体1の主成分である熱可塑性樹脂と同系の熱可塑性樹脂を主体として構成されるものであることが必要であるが、その他の点に関しては何ら制約を受けるものではない。なお、上記同系の熱可塑性樹脂とは、互いに混合しても大きな物性変化を伴わずにリサイクルが可能であることが重要であり、その限りにおいて同系であれば同種であっても異種であっても良い。具体的には、例えばポリオレフィン系樹脂であれば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体やそれらの酸変性物、アイオノマー等から適宜選択が可能であり、これらの中から選ばれる同種又は異種の樹脂を、木質樹脂成形体1用及び化粧シート3用として使用することができる。なお、異種の樹脂を組み合わせる場合には、互いに良く相溶又は接着する樹脂を組み合わせるか、若しくは、両者を相溶又は接着させる相溶化剤又は接着剤を一方又は両方の樹脂に予め添加しておくことが望ましい。
【0021】
上記化粧シート3の具体的構成について詳述すれば、基本的には上記した如き熱可塑性樹脂からなる無色透明、着色透明、無色半透明又は着色半透明等の少なくとも裏面を透視可能な透明性を有するフィルム乃至シート状体からなる熱可塑性樹脂層31を主体として構成されるものであり、この熱可塑性樹脂層31のみから構成されるものでも良ければ、裏面を透視可能な透明性を妨げない限りにおいて他の層が積層されたものであっても良い。例えば図2に示す例では、透明又は半透明の熱可塑性樹脂層31の表面に透明又は半透明の樹脂組成物からなる塗膜層32が設けられて化粧シート3が構成されている。この塗膜層32は、熱可塑性樹脂層31の表面を保護し物性を向上させると共に、表面の艶状態を調整し、従来の塗装化粧材に近似した表面質感を付与するために設けられるもので、これを形成するための塗料としては例えば2液硬化型ポリウレタン塗料等、従来の塗装化粧材における塗装用塗料と同一又は類似した塗料が用いられ、厚み3〜10μm程度に設けられる。特に、溶剤濃度10〜50重量%、粘度50〜300cps程度の合成樹脂系塗料を塗布して形成すると、木質系基材の表面に溶剤型の合成樹脂系塗料を直接スプレー塗装等により塗装した際と同様の樹脂のレベリング性が再現され、しかも溶剤分が塗装用合成樹脂系塗料と同等である為に、樹脂が固化する際の溶剤の蒸発による塗膜面の表面粗さやうねりが塗装化粧材と同等の状態となるので、塗装化粧材に匹敵する表面光沢感や深み感、塗装感を有する化粧材を容易に得ることができる。
【0022】
本発明の化粧材において、木質樹脂成形体1は木質系充填剤の含有により全体としての色調や繊維感、照り感等による木質感は十分に有しているものの、天然木材の切断面に見られる木目の様な色彩模様は全く有していないか、或いは、前述した色調の異なる2種以上の熱可塑性樹脂組成物による木目模様を有していても、その形状は木目に類似してはいてもその形成が全く偶然に支配されることから天然の木目の様な整然とした規則性までは現出していない場合が多く、しかも同一形状の木目模様を有する製品を多数人工的に作り出すことは事実上不可能であるので、製品の意匠品質及びその安定性に欠ける嫌いがある。そこでこの欠点を補うために、化粧シート3にその裏面透視性を妨げない範囲において印刷等による木目模様を予め付与しておくと良い。その一例を示したのが図3であり、この例では化粧シート3は、透明又は半透明の熱可塑性樹脂層34の表面に透明又は半透明の木目模様35が形成され、該木目模様35上に前記とは別の透明又は半透明の熱可塑性樹脂層31が積層されて構成されている。この様に、化粧シート3における木目模様35を2層の透明又は半透明の熱可塑性樹脂層34、31で挟持した構成とすると、化粧シート3の取扱中に木目模様35が傷付き等により損なわれることがないと共に、木質樹脂成形体1との接着時に接着剤層2に含まれる溶剤によって木目模様35の印刷印刷インキが侵される心配もなく、また製品状態では木目模様35が透明樹脂層31によって保護されるので溶剤の付着や磨耗等による木目模様35の消失が起こりにくい耐久性に優れた化粧材が得られる利点がある。
【0023】
上記態様において、木目模様35を透明又は半透明とするためには、着色剤として透明性の高い顔料又は染料を使用した透明性の高い印刷インキを使用して印刷形成するか、若しくは透明性の低い印刷インキであっても例えば微細なドット状、網状、ストライプ状等の様な不連続パターンによって印刷層を形成すればよい。木目模様等の階調性画像は一般に網点と称される微細な不連続パターンによって印刷表現されているから、隠蔽性の高いインキを使用した下地ベタ印刷等を避けさえすれば、下地を透視可能な程度の透明性を有する木目模様35の形成は通常の印刷技術により容易に可能である。この木目模様35の印刷に用いる印刷インキは、バインダーとしては硝化綿、セルロース、塩化ビニルー酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、アクリル、ポリエステル系等の単独もしくは各変性物の中から適宜選定すればよい。これらは水性、溶剤系、エマルジョンタイプのいずれでも問題なく、また1液タイプでも硬化剤を使用した2液タイプでも任意に選定可能である。さらに紫外線や電子線等の照射によりインキを硬化させることも可能である。中でも最も一般的な方法はウレタン系のインキを用い、イソシアネートで硬化させる方法である。これらバインダー以外には通常のインキに含まれている顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、各種添加剤が添加されている。特によく用いられる顔料には縮合アゾ、不溶性アゾ、キナクリドン、イソインドリン、アンスラキノン、イミダゾロン、コバルト、フタロシアニン、カーボン、酸化チタン、酸化鉄、雲母等のパール顔料等がある。
【0024】
上記の様に複数の熱可塑性樹脂層34、31からなる化粧シート3における熱可塑性樹脂層34、31相互間の積層手法としては、適宜の接着剤層36を介したウェットラミネート法又はドライラミネート法、接着剤層36を介するか又は介さない熱ラミネート法、サンドラミネート法、エクストルージョンラミネート法等、従来公知の積層手法を任意に採用することができる。また、木質樹脂成形体1と化粧シート3との積層手法についても同様に任意であり、図3に示す例の様に接着剤層2を介して積層しても良い(この場合、化粧シート3の裏面に予め汎用接着剤との接着性に優れたプライマー層37を設けておくと良い)し、図4に示す様に接着剤層2を介さずに直接積層しても良い。本発明においては基本的に化粧シート3を構成する熱可塑性樹脂層34、31と木質樹脂成形体1とは同系の熱可塑性樹脂を主体として構成されているのであるから、両者の親和性は基本的に良好であり例えば熱ラミネート法や超音波ラミネート法、高周波ラミネート法等により容易に接着可能である。中でも木質樹脂成形体1を押出成形法又は射出成形法等によって成形すると同時にその原料樹脂組成物の溶融状態又は高温の不完全固化状態において予め用意した化粧シート3を積層する手法によると、接着剤層2を介する必要なく容易に強固な接着が得られしかも生産性にも優れる利点がある。
【0025】
前述した様に木質樹脂成形体1には成形時の樹脂の流動痕や色調の異なる樹脂組成物の組合せ等により多少とも木目に近似した模様を現出させることは可能であるが、意匠性に優れた高級材である楢材(オーク)等の広葉樹材に特有の導管溝を通常の樹脂成形により再現することはかなりの困難を伴う。そこで、木質樹脂成形体1の表面に貼着する化粧シート3に、予め広葉樹材の導管溝を模した表面加工を施しておくことが望ましい。その具体的手法には種々あり本発明において特に限定されるものではないが、最も一般的なのは図3に示した様に広葉樹材の導管溝の凹凸形状を模した樹木導管凹凸模様33を化粧シート3の表面に設ける手法である。この樹木導管凹凸模様33は、広葉樹材の切断面における導管溝の凹凸形状を型取り電鋳法又は写真製版法等により反転した凹凸形状を有するエンボス版を使用して、化粧シート3の熱可塑性樹脂層31の表面に熱圧エンボス法等により賦形して形成するのが一般的である。この凹部にワイピング法等により着色剤を充填すれば凹凸と同調した着色により更に意匠性を向上することができる。他の手法として図5に示す様に広葉樹材の導管溝に相当する箇所に黒色又は黒褐色等の不透明な樹木導管模様38を形成する手法もある。この手法では天然の導管溝の凹凸形状そのものは再現することができないが、周囲より暗色とすることで目の錯覚により天然の導管溝の様な凹所として認識される。さらにこの樹木導管模様38をシリカ粉末等の艶消剤の添加により艶消状態とした印刷インキによって形成すれば、周囲との艶状態の差により上記した目の錯覚がさらに助長され、恰も現実に色彩差と同調した凹所が表面に形成されているかの如き、天然の導管溝に近似した外観を得ることができる。
【0026】
本発明において化粧シート3に木目模様35を形成する場合の化粧シート3の構成は必ずしも複数層の熱可塑性樹脂層34、31の積層構成に限定されるものではなく、例えば図6に示す様に1層の熱可塑性樹脂層31の裏面に木目模様35を設けた構成としても勿論構わない。また、係る如く1層の熱可塑性樹脂層31を主体として構成される化粧シート3を用いる場合にあっても、前述した塗膜層32の形成や樹木導管凹凸模様33又は樹木導管模様38等の表面加工を施しても良いことも勿論である。
【0027】
【実施例】
<実施例1>
[木質樹脂成形体の作製]
ホモポリプロピレン樹脂(230℃におけるメルトフローレート20g/10分)90重量部、マレイン酸変性ホモポリプロピレン樹脂10重量部、平均粒径20μmの木粉200重量部、発泡剤(炭酸水素ナトリウム系)5重量部、着色顔料(酸化鉄系等)3重量部からなる木質樹脂組成物を異形押出発泡成形法により断面10mm×300mmの長尺形状に成形し、流れ方向に1800mm毎に切断して木質樹脂成形体を作製した。
【0028】
[化粧シートの作製]
厚さ100μmの透明無延伸ランダムポリプロピレン樹脂シートの片面に、透明有機顔料を使用したウレタン系透明印刷インキを使用して透明な木目模様を印刷形成し、該印刷面に透明な2液硬化型ウレタン樹脂系アンカーコート層を介して、厚さ20μmの透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂層と厚さ80μmの透明ホモポリプロピレン樹脂層とを共押出法により積層すると同時に、その表面に凹凸形状付チルロールにより樹木導管凹凸模様を施し、さらに該表面に透明な2液硬化型ウレタン系樹脂による厚さ5μmの透明塗膜層を、裏面に透明なウレタン系樹脂によるプライマー層をそれぞれ施して、透明な木目模様を有する透明な化粧シートを作製した。
【0029】
[化粧材の作製]
上記木質樹脂成形体の表面に、乾燥固化後に透明となる変性エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン系接着剤を、乾燥後の塗布量30g/m2に塗布し、流動性を失う程度に乾燥後、該接着剤層面に上記化粧シートのプライマー層面を重ねて貼着して、本発明の化粧材を作製した。
【0030】
<実施例2>
[化粧シートの作製]
厚さ100μmの透明無延伸ランダムポリプロピレン樹脂シートの片面に、透明有機顔料を使用したウレタン系透明印刷インキを使用して透明な木目模様を印刷形成し、該印刷面に透明な2液硬化型ウレタン樹脂系ドライラミネート用接着剤を介して、厚さ100μmの透明ホモポリプロピレン樹脂シート積層し、その表面に透明な2液硬化型ウレタン系樹脂による厚さ5μmの透明塗膜層と該塗膜層上にシリカ系艶消剤を含有する黒褐色インキによる不透明な樹木導管模様とを、裏面に透明なウレタン系樹脂によるプライマー層をそれぞれ施して、透明な木目模様を有する透明な化粧シートを作製した。
【0031】
[化粧材の作製]
上記化粧シートを、前記実施例1におけると同一の木質樹脂成形体の表面に、前記実施例1におけると同一の要領にて貼着して、本発明の化粧材を作製した。
【0032】
<実施例3>
[木質樹脂成形体の作製]
ホモポリプロピレン樹脂(230℃におけるメルトフローレート25g/10分)90重量部、マレイン酸変性ホモポリプロピレン樹脂10重量部、平均粒径20μmの木粉100重量部、発泡剤(炭酸水素ナトリウム系)5重量部、着色顔料(酸化鉄系等)1重量部からなる淡褐色の木質樹脂組成物のペレットと、ホモポリプロピレン樹脂(230℃におけるメルトフローレート10g/10分)90重量部、マレイン酸変性ホモポリプロピレン樹脂10重量部、平均粒径20μmの木粉300重量部、発泡剤(炭酸水素ナトリウム系)5重量部、着色顔料(酸化鉄系等)6重量部からなる濃褐色の木質樹脂組成物のペレットとを3対1の重量比で混合したものを原料樹脂として使用し、前記実施例1におけると同一の要領にて、流れ方向に筋状の木目模様を有する木質樹脂成形体を作製した。
【0033】
[化粧材の作製]
上記木質樹脂成形体の表面に、前記実施例1におけると同一の化粧シートを、前記実施例1におけると同一の要領にて貼着して、本発明の化粧材を作製した。
【0034】
<実施例4>
[化粧シートの作製]
前記実施例2における化粧シートにおいて、裏面のプライマー層の形成を省略し、その他は前記実施例2におけると同一の要領にて化粧シートを作製した。
【0035】
[木質樹脂成形体の作製及び化粧材の作製]
前記実施例3における2種の木質樹脂組成物のペレットを混合した原料樹脂を使用して、異形押出発泡成形法により流れ方向に筋状の木目模様を現出させつつ断面10mm×300mmの長尺形状に成形し、その冷却固化前に表面に上記化粧シートを積層して成形樹脂の余熱により両者を熱融着させ、冷却固化後流れ方向に1800mm毎に切断して、木質樹脂成形体の表面に化粧シートが貼着された本発明の化粧材を作製した。
【0036】
【発明の効果】
本発明の化粧材は叙上の構成により、従来の塗装化粧材の問題点である高度な塗装技術や大規模な塗装設備を必要とせずに塗装感に優れた製品を安定的に大量生産可能であり、しかも印刷による平面的な意匠のみに止まらない自然な木質感に富む意匠感を有しており、また基材である木質樹脂成形体と表面装飾材である化粧シートとを分離する必要なくリサイクル可能な化粧材である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の化粧材の実施の形態を示す断面図。
【図2】本発明の化粧材の実施の形態を示す断面図。
【図3】本発明の化粧材の実施の形態を示す断面図。
【図4】本発明の化粧材の実施の形態を示す断面図。
【図5】本発明の化粧材の実施の形態を示す断面図。
【図6】本発明の化粧材の実施の形態を示す断面図。
【符号の説明】
1 木質樹脂成形体
2 接着剤層
3 化粧シート
31 熱可塑性樹脂層
32 塗膜層
33 樹木導管凹凸模様
34 熱可塑性樹脂層
35 木目模様
36 接着剤層
37 プライマー層
38 樹木導管模様

Claims (2)

  1. 少なくともホモポリプロピレン樹脂とマレイン酸変性ホモポリプロピレン樹脂とからなる色調の異なる2種以上の熱可塑性樹脂組成物、木質系充填剤および発泡剤を含有し、全体若しくは一部が発泡した該熱可塑性樹脂組成物の色調差による木目模様を有する木質樹脂成形体の表面に、透明ホモポリプロピレン樹脂を主体とする、又は、透明ホモポリプロピレン樹脂および透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂とを主体とする透明又は半透明の樹木導管凹凸模様を有する化粧シートが貼着されてなる化粧材であって、且つ、該透明又は半透明の化粧シートがウレタン系透明印刷インキよりなる木目模様を透明又は半透明の熱可塑性樹脂で狭持した構成を有することを特徴とする化粧材。
  2. 前記化粧シートは、表面に塗膜厚が3〜10μmの透明又は半透明の塗膜層を有することを特徴とする請求項1に記載の化粧材。
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