JP3849434B2 - 電気光学装置及び投射型表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アクティブマトリクス駆動方式の電気光学装置及び投射型表示装置の技術分野に属し、特に画素スイッチング用の薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下適宜、TFTと称す)を、基板上の積層構造中に備えた形式の電気光学装置及びそのような電気光学装置を備えた投射型表示装置の技術分野に属する。
【0002】
【背景技術】
TFTアクティブマトリクス駆動形式の電気光学装置では、各画素に設けられた画素スイッチング用TFTのチャネル領域に入射光が照射されると光による励起で光リーク電流が発生してTFTの特性が変化する。特に、プロジェクタのライトバルブ用の電気光学装置の場合には、入射光の強度が高いため、TFTのチャネル領域やその周辺領域に対する入射光の遮光を行うことは重要となる。
【0003】
そこで従来は、対向基板に設けられた各画素の開口領域を規定する遮光膜により、或いはTFTの上を通過すると共にAl(アルミニウム)等の金属膜からなるデータ線により、係るチャネル領域やその周辺領域を遮光するように構成されている。更に、TFTアレイ基板上において画素スイッチング用TFTに対向する位置(即ち、TFTの下側)にも、例えば高融点金属からなる遮光膜を設けることがある。このようにTFTの下側にも遮光膜を設ければ、TFTアレイ基板側からの裏面反射光や、複数の電気光学装置をプリズム等を介して組み合わせて一つの光学系を構成する場合に他の電気光学装置からプリズム等を突き抜けてくる投射光などの戻り光が、当該電気光学装置のTFTに入射するのを未然に防ぐことができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した各種遮光技術によれば、以下の問題点がある。
【0005】
即ち、先ず対向基板上やTFTアレイ基板上に遮光膜を形成する技術によれば、遮光膜とチャネル領域との間は、3次元的に見て例えば液晶層、電極、層間絶縁膜等を介してかなり離間しており、両者間へ斜めに入射する光に対する遮光が十分ではない。特にプロジェクタのライトバルブとして用いられる小型の電気光学装置においては、入射光は光源からの光をレンズで絞った光束であり、斜めに入射する成分を無視し得ない程に(例えば、基板に垂直な方向から10度から15度程度傾いた成分を10%程度)含んでいるので、このような斜めの入射光に対する遮光が十分でないことは実践上問題となる。
【0006】
加えて、遮光膜のない領域から電気光学装置内に侵入した光が、基板の上面或いは基板の上面に形成された遮光膜の上面やデータ線のチャネル領域に面する側の内面で反射された後に、係る反射光或いはこれが更に基板の上面或いは遮光膜やデータ線の内面で反射された多重反射光が最終的にTFTのチャネル領域に到達してしまう場合もある。
【0007】
特に近年の表示画像の高品位化という一般的要請に沿うべく電気光学装置の高精細化或いは画素ピッチの微細化を図るに連れて、更に明るい画像を表示すべく入射光の光強度を高めるに連れて、上述した従来の各種遮光技術によれば、十分な遮光を施すのがより困難となり、TFTのトランジスタ特性の変化により、フリッカ等が生じて、表示画像の品位が低下してしまうという問題点がある。
【0008】
尚、このような耐光性を高めるためには、遮光膜の形成領域を広げればよいようにも考えられるが、遮光膜の形成領域を広げてしまったのでは、表示画像の明るさを向上させるべく各画素の開口率を高めることが根本的に困難になるという問題点が生じる。更にTFTの下側の遮光膜やデータ線等からなるTFTの上側の遮光膜等の存在により、斜め光に起因した内面反射や多重反射光が発生することに鑑みればむやみに遮光膜の形成領域を広げたのでは、このような内面反射光や多重反射光の増大を招くという解決困難な問題点もある。
【0009】
本発明は上述の問題点に鑑みなされたものであり、耐光性に優れており、明るく高品位の画像表示が可能な電気光学装置及びそのような電気光学装置を備えた投射型表示装置を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の電気光学装置は上記課題を解決するために、基板上に、画素電極と、該画素電極に接続された薄膜トランジスタと、該薄膜トランジスタの上側に配置されており前記薄膜トランジスタの少なくともチャネル領域を上側から覆う上側遮光膜と、前記薄膜トランジスタの下側に配置されており前記薄膜トランジスタの少なくとも前記チャネル領域を下側から覆う下側遮光膜とを備えており、前記基板は、前記チャネル領域に対向する領域に凸部を有し、前記下側遮光膜は、該凸部上に形成されている。
【0011】
本発明の電気光学装置によれば、画素電極をこれに接続された薄膜トランジスタによりスイッチング制御することにより、アクティブマトリクス駆動方式による駆動を行なえる。そして、薄膜トランジスタの少なくともチャネル領域は、上側から上側遮光膜により覆われているので、基板に垂直な方向からの入射光に対する遮光は、上側遮光膜により十分に高めることができる。更に、薄膜トランジスタの少なくともチャネル領域は、下側から下側遮光膜により覆われているので、基板の裏面反射光や、複数の電気光学装置をライトバルブとして用いた複板式のプロジェクタにおける他の電気光学装置から出射され合成光学系を突き抜けてくる光等の戻り光に対する遮光は、下側遮光膜により十分に高めることができる。ここで入射光は、基板に対して斜め方向から入射する成分(以下、斜め光と称す)を含んでおり、この斜め光が、基板上に形成された下側遮光膜の上面、即ち薄膜トランジスタに面する側の表面で反射されて、当該電気光学装置内に、斜めの内面反射光が生成される。更にこのような斜めの内面反射光が当該電気光学装置内の他の界面で反射されて斜めの多重反射光が生成される。
【0012】
特に入射光は戻り光に比べて遥かに強力であるために、仮にこのような斜め光に起因した内面反射光や多重反射光が薄膜トランジスタのチャネル領域に到達すると、光リーク電流が発生し、薄膜トランジスタの特性が変化してしまう。しかも、このような光リーク電流の発生は、表示画像を明るくするために入射光強度を強めれば強める程顕著になる。
【0013】
しかるに本発明の電気光学装置では、基板は、チャネル領域に対向する領域に凸部を有し、下側遮光膜は、この凸部上に形成されているので、上述の如き内面反射光や多重反射光が生成される際に、即ち基板上に形成された下側遮光膜の上面で反射される際に、基板の上面が平坦である場合と比べて、反射光がチャネル領域の周り或いは側方に拡散される傾向が強くなる。このため、内面反射光や多重反射光における最終的にチャネル領域に到達する成分を低減できる。この結果、基板に垂直な方向の入射光や戻り光に対する遮光性能のみならず、斜め光に対する遮光性能を向上させることができ、最終的に良好なトランジスタ特性を有する薄膜トランジスタにより高品位の画像を表示可能となり、特に高い光強度の入射光を用いて明るい画像を表示する際に有利となる。
【0014】
本発明の電気光学装置の一態様では、前記下側遮光膜は、少なくとも前記凸部の上面及び側面上に形成されている。
【0015】
この態様によれば、凸部の上面及び側面に形成された下側遮光膜により、内面反射光や多重反射光における最終的にチャネル領域に到達する成分を低減できる。
【0016】
尚、下側遮光膜は、凸部の上面から側面を経てその周囲にまで形成されてもよい。いずれの場合にも、上述の如き内面反射光や多重反射光では、凸部を中央として外側に拡散する傾向が増加するため、最終的にチャネル領域に到達する成分を低減できる。
【0017】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記凸部は、前記チャネル領域毎に島状に形成されている。
【0018】
この態様によれば、各チャネル領域毎に島状に形成された凸部上に形成された下側遮光膜により、四方からの斜め光或いはこれに起因する内面反射光や多重反射光を、チャネル領域を中心として四方に拡散するので、係る内面反射光や多重反射光における最終的にチャネル領域に到達する成分を低減できる。
【0019】
この態様では、前記凸部は、平面的に見て格子状の非画素開口領域における交点に位置するように構成してもよい。
【0020】
このように構成すれば、画素電極の下地面に、凸部並びにその上に積層形成される他の配線や電極等の存在に起因して生じる段差は、非画素開口領域における交点に位置することになる。ここに、「画素開口領域」とは、複数の画素電極が配列されてなる画像表示領域内で、各画素において表示に寄与する光が実際に透過或いは反射する領域を指す。他方、「非画素開口領域」とは、画像表示領域内で、各画素において表示に寄与する光が実際に透過或いは反射しない領域を指し、この領域を利用して、データ線、走査線、容量線等の配線や、容量電極、薄膜トランジスタ、中継層などの各種素子、電極、配線等が画像表示領域内に配置される。従って、凸部等に起因した段差が大きくても、該段差により生じる液晶の配向不良等の電気光学物質が動作不良を起こす領域を画素開口領域から外すことができ、表示不良を起こさないようにできる。
【0021】
或いは本発明の電気光学装置の他の態様では、前記凸部は、ストライプ状に形成されている。
【0022】
この態様によれば、ストライプ状に形成された凸部上に形成された下側遮光膜により、その長手方向に交わる方向からの斜め光或いはこれに起因する内面反射光や多重反射光を、チャネル領域を中心として拡散するので、係る内面反射光や多重反射光における最終的にチャネル領域に到達する成分を低減できる。
【0023】
特に、走査線毎に画素電極の印加電圧の極性を反転して駆動する走査線反転駆動方式を採用する場合に、走査線に交わる方向に相隣接する画素電極間に生じる横電界の悪影響を、ストライプ状の凸部によって画素電極の縁を走査線に沿って盛り上げることで該横電界が生じる領域における縦電界を強めることにより、低減することも可能となる。
【0024】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記凸部は、前記チャネル領域に加えて、前記薄膜トランジスタの半導体層における前記チャネル領域に隣接する領域に対向する領域にも形成されている。
【0025】
この態様によれば、凸部は、LDD(Lightly Doped Drain)領域、オフセット領域などのチャネル領域に隣接する領域にも形成されており、下側遮光膜は、この凸部上に形成されている。このため、内面反射光や多重反射光における最終的にチャネル領域及びそれに隣接する領域に到達する成分を低減できる。この結果、チャネル領域のみならず、LDD領域、オフセット領域などにおける光リーク電流の発生をも低減できるので、より良好なトランジスタ特性を有する薄膜トランジスタにより高品位の画像を表示可能となり、特に高い光強度の入射光を用いて明るい画像を表示する際に非常に有利となる。
【0026】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記凸部は、前記基板上の前記凸部を除く領域がエッチングされてなる。
【0027】
この態様によれば、基板をエッチングして凹部を形成することで相対的に凸部を形成するので、基板上における積層構造及び製造プロセスの単純化を図れる。特に、所望の深さ及び平面パターンを有する凸部が比較的簡単に得られる。
【0028】
或いは本発明の電気光学装置の他の態様では、前記凸部は、前記基板上に形成された凸部形成用部材からなる。
【0029】
この態様によれば、基板上に、凸部形成用部材を島状、ストライプ状などに形成することで、凸部を形成するので、基板上における積層構造及び製造プロセスの単純化を図れる。特に、所望の深さ及び平面パターンを有する凸部が比較的簡単に得られる。
【0030】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記下側遮光膜は、高融点金属を含む膜からなる。
【0031】
この態様によれば、高融点金属を含む膜からなる下側遮光膜により、薄膜トランジスタの下側における戻り光に対する遮光を良好に行なえる。この際特に、内面反射光や多重反射光については凸部により低減できるので、反射率が高い金属を含む膜を採用可能となる。高融点金属を含む膜としては、例えば、Ti(チタン)、Cr(クロム)、W(タングステン)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)、Pb(鉛)等の高融点金属のうち少なくとも一つを含む、金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、これらを積層したもの等が挙げられる。
【0032】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記基板には、格子状の非画素開口領域に沿って溝が掘られており、前記凸部は、前記溝内で盛り上げられてなる。
【0033】
この態様によれば、基板に掘られた溝内に、走査線、データ線、容量線等の配線や、容量電極、薄膜トランジスタなどの各種素子、配線、電極等を少なくとも部分的に埋め込むことにより、これらの存在による画素電極の下地面を概ね平坦化することができる。このため、段差による液晶の配向不良等の電気光学物質の動作不良を低減できる。そして、このような溝内で盛り上げられてなる凸部上に形成された下側遮光膜により、斜め光或いはこれに起因する内面反射光や多重反射光を、チャネル領域を中心として拡散できる。
【0034】
或いは本発明の電気光学装置の他の態様では、前記基板上に、前記薄膜トランジスタに接続された配線を更に備えており、前記基板には、前記配線に対向する領域に溝が掘られており、前記凸部は、前記溝内で盛り上げられてなる。
【0035】
この態様によれば、基板に掘られた溝内に、走査線、データ線、容量線等の配線を少なくとも部分的に埋め込むことにより、これらの存在による画素電極の下地面を概ね平坦化することができる。このため、段差による電気光学物質の動作不良を低減できる。そして、このような溝内で盛り上げられてなる凸部上に形成された下側遮光膜により、斜め光或いはこれに起因する内面反射光や多重反射光を、チャネル領域を中心として拡散できる。
【0036】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記凸部は、側面にテーパが付けられている。
【0037】
この態様によれば、テーパが付けられた凸部の側面上に形成された下側遮光膜により、斜め光或いはこれに起因する内面反射光や多重反射光を、チャネル領域を中心として拡散できる。
【0038】
この態様では、前記テーパは、前記側面に対向する前記上側遮光膜の縁と前記側面とを結んだ線に対して前記側面が略垂直になるように付けられてもよい。
【0039】
このように構成すれば、上方から入射される斜め光のうち上側遮光膜の脇から凸部の側面上にある下側遮光膜に至る成分は、上側遮光膜の縁と側面とを結んだ線に対して略垂直とされた側面上に形成された下側遮光膜により、ほぼ垂直に反射される。従って、凸部上に形成された下側遮光膜により、斜め光或いはこれに起因する内面反射光や多重反射光を、チャネル領域を中心として確実に拡散できる。
【0040】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記上側遮光膜は、前記凸部の盛り上がりに応じて前記チャネル領域を帽子状に覆うように傾斜する部分を含む。
【0041】
この態様によれば、上側遮光膜の傾斜する部分により包囲する空間内に位置するチャネル領域に、上方からの斜め光が到達する可能性を、傾斜する部分の傾斜の大きさ及びチャネル領域から上側遮光膜までの近さに応じて低減できる。
【0042】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記基板に対して電気光学物質を介して対向配置された対向基板を更に備えており、前記上側遮光膜に代えて又は加えて、前記対向基板上に、少なくとも前記チャネル領域を上方から覆う他の遮光膜を備える。
【0043】
この態様によれば、薄膜トランジスタの少なくともチャネル領域は、上側から上側遮光膜に加えて又は代えて、対向基板上に形成された他の遮光膜により覆われているので、基板に垂直な方向からの入射光に対する遮光は、十分に高めることができる。そして、凸部上に形成された下側遮光膜により、このように対向基板上に形成された他の遮光膜の脇を抜けて最終的にチャネル領域に到達する成分を低減できる。
【0044】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記上側遮光膜は、少なくとも部分的に容量線或いは容量電極からなる。
【0045】
この態様によれば、上側遮光膜としても機能する容量線或いは容量電極を用いて画素電極に蓄積容量を付加できるので、全体として基板上における積層構造及び製造プロセスの単純化を図れる。
【0046】
尚、上側遮光膜は少なくとも部分的に、薄膜トランジスタに接続されたデータ線からなってもよいし、薄膜トランジスタと画素電極とを中継接続する中間導電層からなってもよい。
【0047】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記上側遮光膜における前記チャネル領域に対向する側は光吸収層からなる。
【0048】
この態様によれば、戻り光や下側遮光膜で反射した内面反射光或いは多重反射光のうち、上側遮光膜の内面、即ちチャネル領域に対向する側の表面での反射を経てチャネル領域に至る成分の光量を、当該上側遮光膜の光吸収層により低減できる。特に、戻り光が下側遮光膜の脇をすり抜けて上側遮光膜の内面に至っても、戻り光は入射光と比較して光強度が基本的に低いので、このような光吸収層による光吸収によっても十分に除去可能である。尚、係る光吸収層は、例えばポリシリコン膜から構成すればよい。
【0049】
本発明の投射型表示装置は上記課題を解決するために、上述した本発明の電気光学装置(その各種態様を含む)と、該電気光学装置に光を入射する光源と、前記電気光学装置から出射される光を画像として投射する投射光学系とを備える。
【0050】
本発明の投射型表示装置によれば、ライトバルブとして機能する電気光学装置に光源からの光が入射され、この電気光学装置から出射される光は、投射光学系により、スクリーン等に画像として投射される。この際、当該電気光学装置は、上述した本発明の電気光学装置であるので、光源からの光の強度を高めても、前述の如く優れた遮光性能によって光リーク電流の低減された薄膜トランジスタにより画素電極を良好にスイッチング制御できる。この結果、最終的には高品位の画像を表示可能となる。
【0051】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施の形態から明らかにされる。
【0052】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態は、本発明の電気光学装置を液晶装置に適用したものである。
【0053】
(第1実施形態)
先ず本発明の実施形態における電気光学装置の画素部における構成について、図1から図3を参照して説明する。図1は、電気光学装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路である。図2は、データ線、走査線、画素電極等が形成されたTFTアレイ基板の相隣接する複数の画素群の平面図である。図3は、図2のA−A’断面図である。尚、図3においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。
【0054】
図1において、本実施形態における電気光学装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素には夫々、画素電極9aと当該画素電極9aをスイッチング制御するためのTFT30とが形成されており、画像信号が供給されるデータ線6aが当該TFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしても良い。また、TFT30のゲートに走査線3aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9aは、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、…、Snを所定のタイミングで書き込む。画素電極9aを介して電気光学物質の一例としての液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、対向基板(後述する)に形成された対向電極(後述する)との間で一定期間保持される。液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能にする。ノーマリーホワイトモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加され、全体として電気光学装置からは画像信号に応じたコントラストを持つ光が出射する。ここで、保持された画像信号がリークするのを防ぐために、画素電極9aと対向電極との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70を付加する。
【0055】
図2において、電気光学装置のTFTアレイ基板上には、マトリクス状に複数の透明な画素電極9a(点線部9a’により輪郭が示されている)が設けられており、画素電極9aの縦横の境界に各々沿ってデータ線6a及び走査線3aが設けられている。
【0056】
また、半導体層1aのうち図中右上がりの細かい斜線領域で示したチャネル領域1a’に対向するように走査線3aが配置されており、走査線3aはゲート電極として機能する。特に本実施形態では、走査線3aは、当該ゲート電極となる部分において幅広に形成されている。このように、走査線3aとデータ線6aとの交差する個所には夫々、チャネル領域1a’に走査線3aがゲート電極として対向配置された画素スイッチング用のTFT30が設けられている。
【0057】
図2及び図3に示すように、容量線300は、走査線3a上に形成されている。容量線300は、平面的に見て走査線3aに沿ってストライプ状に伸びる本線部と、走査線3a及びデータ線6の交点における該本線部からデータ線6aに沿って図2中上下に突出した突出部とを含んでなる。容量線300は、例えば高融点金属を含む金属シリサイド膜等からなる。但し、容量線300は、導電性のポリシリコン膜等からなる第1膜と高融点金属を含む金属シリサイド膜等からなる第2膜とが積層された多層構造を持つように構成してもよい。容量線300は、容量線本来の機能の他、蓄積容量70の固定電位側容量電極としての機能を持ち、更に、TFT30の上側において入射光からTFT30を遮光する上側遮光膜としての機能を持つ。
【0058】
他方、容量線300に対して、誘電体膜75を介して対向配置される中継層71は、蓄積容量70の画素電位側容量電極としての機能を持ち、更に、画素電極9aとTFT30の高濃度ドレイン領域1eとを中継接続する中間導電層としての機能を持つ。
【0059】
このように本実施形態では、蓄積容量70は、TFT30の高濃度ドレイン領域1e及び画素電極9aに接続された画素電位側容量電極としての中継層71と、固定電位側容量電極としての容量線300の一部とが、誘電体膜75を介して対向配置されることにより構築されている。
【0060】
そして、図2中縦方向に夫々伸びるデータ線6aと図2中横方向に夫々伸びる容量線300とが相交差して形成されることにより、TFTアレイ基板10上におけるTFT30の上側に、平面的に見て格子状の上側遮光膜が構成されており、各画素の開口領域を規定している。
【0061】
他方、TFTアレイ基板10上におけるTFT30の下側には、下側遮光膜11aが格子状に設けられている。
【0062】
これらの上側遮光膜の一例を構成する容量線300及び下側遮光膜11aは夫々、例えば、Ti、Cr、W、Ta、Mo、Pb等の高融点金属のうちの少なくとも一つを含む、金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、これらを積層したもの等からなる。
【0063】
また図3において、容量電極としての中継層71と容量線300との間に配置される誘電体膜75は、例えば膜厚5〜200nm程度の比較的薄いHTO膜、LTO膜等の酸化シリコン膜、あるいは窒化シリコン膜等から構成される。蓄積容量70を増大させる観点からは、膜の信頼性が十分に得られる限りにおいて、誘電体膜75は薄い程良い。
【0064】
図2及び図3に示すように、画素電極9aは、中継層71を中継することにより、コンタクトホール83及び85を介して半導体層1aのうち高濃度ドレイン領域1eに電気的に接続されている。このように中継層71を利用して中継接続すれば、層間距離が例えば2000nm程度に長くても、両者間を一つのコンタクトホールで接続する技術的困難性を回避しつつ比較的小径の二つ以上の直列なコンタクトホールで両者間を良好に接続でき、画素開口率を高めること可能となり、コンタクトホール開孔時におけるエッチングの突き抜け防止にも役立つ。
【0065】
他方、データ線6aは、コンタクトホール81を介して、例えばポリシリコン膜からなる半導体層1aのうち高濃度ソース領域1dに電気的に接続されている。尚、データ線6aと高濃度ソース領域1aとを中継層により中継接続することも可能である。
【0066】
容量線300は、画素電極9aが配置された画像表示領域からその周囲に延設され、定電位源と電気的に接続されて、固定電位とされる。係る定電位源としては、TFT30を駆動するための走査信号を走査線3aに供給するための走査線駆動回路(後述する)や画像信号をデータ線6aに供給するサンプリング回路を制御するデータ線駆動回路(後述する)に供給される正電源や負電源の定電位源でもよいし、対向基板20の対向電極21に供給される定電位でも構わない。更に、下側遮光膜11aについても、その電位変動がTFT30に対して悪影響を及ぼすことを避けるために、容量線300と同様に、画像表示領域からその周囲に延設して定電位源に接続するとよい。
【0067】
図2及び図3において、電気光学装置は、透明なTFTアレイ基板10と、これに対向配置される透明な対向基板20とを備えている。TFTアレイ基板10は、例えば石英基板、ガラス基板、シリコン基板からなり、対向基板20は、例えばガラス基板や石英基板からなる。
【0068】
TFTアレイ基板10には、図2では省略されているが、図3に示すように、平面的に見て下側遮光膜より一回り大きい格子状の溝10cvが掘られている。走査線3a、データ線6a、TFT30等の配線や素子等は、この溝10cv内に埋め込まれている。これにより、配線、素子等が存在する領域と存在しない領域との間における段差が緩和されており、最終的には段差に起因した液晶の配向不良等の画像不良を低減できる。
【0069】
本実施形態では特に、溝10cvの底面には、チャネル領域1a’及びその隣接領域に対向する位置に島状の凸部401が形成されている。このような凸部401の構成及び作用効果については遮光機能と共に図4から図6を参照して後に詳述する。
【0070】
図3に示すように、TFTアレイ基板10には、画素電極9aが設けられており、その上側には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜16が設けられている。画素電極9aは例えば、ITO(Indium Tin Oxide)膜などの透明導電性膜からなる。また配向膜16は例えば、ポリイミド膜などの有機膜からなる。
【0071】
他方、対向基板20には、その全面に渡って対向電極21が設けられており、その下側には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜22が設けられている。対向電極21は例えば、ITO膜などの透明導電性膜からなる。また配向膜22は、ポリイミド膜などの有機膜からなる。
【0072】
このように構成された、画素電極9aと対向電極21とが対面するように配置されたTFTアレイ基板10と対向基板20との間には、後述のシール材により囲まれた空間に電気光学物質の一例である液晶が封入され、液晶層50が形成される。液晶層50は、画素電極9aからの電界が印加されていない状態で配向膜16及び22により所定の配向状態をとる。液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなる。シール材は、TFTアレイ基板10及び対向基板20をそれらの周辺で貼り合わせるための、例えば光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂からなる接着剤であり、両基板間の距離を所定値とするためのグラスファイバー或いはガラスビーズ等のギャップ材が混入されている。
【0073】
更に、画素スイッチング用TFT30の下には、下地絶縁膜12が設けられている。下地絶縁膜12は、下側遮光膜11aからTFT30を層間絶縁する機能の他、TFTアレイ基板10の全面に形成されることにより、TFTアレイ基板10の表面の研磨時における荒れや、洗浄後に残る汚れ等で画素スイッチング用TFT30の特性の変化を防止する機能を有する。
【0074】
図3において、画素スイッチング用TFT30は、LDD構造を有しており、走査線3a、当該走査線3aからの電界によりチャネルが形成される半導体層1aのチャネル領域1a’、走査線3aと半導体層1aとを絶縁するゲート絶縁膜を含む絶縁膜2、半導体層1aの低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1c、半導体層1aの高濃度ソース領域1d並びに高濃度ドレイン領域1eを備えている。
【0075】
走査線3a上には、高濃度ソース領域1dへ通じるコンタクトホール81及び高濃度ドレイン領域1eへ通じるコンタクトホール83が各々開孔された第1層間絶縁膜41が形成されている。
【0076】
第1層間絶縁膜41上には中継層71及び容量線300が形成されており、これらの上には、コンタクトホール81及びコンタクトホール85が各々開孔された第2層間絶縁膜42が形成されている。
【0077】
第2層間絶縁膜42上にはデータ線6aが形成されており、これらの上には、中継層71へ通じるコンタクトホール85が形成された第3層間絶縁膜43が形成されている。画素電極9aは、このように構成された第3層間絶縁膜43の上面に設けられている。
【0078】
次に、図4から図6を参照して、本実施形態におけるTFTアレイ基板10の上面に形成された凸部401に係る構成及び遮光機能について詳述する。ここに図4は、凸部401上にある下地絶縁膜12及びこの上に配置された半導体層1aを示す部分拡大斜視図である。図5は、溝10cv及び凸部401が形成されたTFTアレイ基板10の上面を示す部分拡大斜視図である。また、図6は、上述した実施形態の基本構成の中で、TFT30のチャネル領域1a’の上下における上側遮光膜(容量線300及びデータ線6a)及び下側遮光膜11aによる遮光の様子を2次元的に示す図式的な擬似断面図である。尚、図6における実際の各膜や凸部の形状や配置は、3次元的であり図6に示したものより複雑となるが、ここではチャネル領域1a’付近における入射光及び戻り光に対する、遮光の関係を図式的に示すこととする。また図6では、TFTアレイ基板10上の積層構造の中からチャネル領域1a’とその上下遮光膜とを抽出して、これらと入射光及び戻り光との関係を示すようにしている。
【0079】
図4及び図5並びに前述した図2及び図3に示すように、本実施形態では特に、各半導体層1aのうち少なくともチャネル領域1a’に対向する領域において、TFTアレイ基板10に凸部401が島状に設けられている。そして、このような凸部401は、走査線3a及びデータ線6aに沿って格子状に掘られた溝10cv内に設けられており、且つ走査線3a及びデータ線6aの交点に位置している。更に、図6及び前述した図3に示すように、本実施形態では特に、凸部401に応じて、容量線300を含む上側遮光膜は、チャネル領域1a’を帽子状に覆うように構成されている。
【0080】
本実施形態によれば、チャネル領域1a’並びにこれに隣接する低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1c(図3参照)は、上側から上側遮光膜たる容量線300及びデータ線6aにより覆われているので、図6に示すように、入射光L1のうちTFTアレイ基板10に垂直な方向からの入射光L1sに対する遮光は、上側遮光膜たる容量線300及びデータ線6aにより十分に高めることができる。他方、チャネル領域1a’並びにこれに隣接する低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1c(図3参照)は、下側から下側遮光膜11aにより覆われているので、図6に示すように、TFTアレイ基板10の裏面反射光や、複数の電気光学装置をライトバルブとして用いた複板式のプロジェクタにおける他の電気光学装置から出射され合成光学系を突き抜けてくる光等の、戻り光L2に対する遮光は、下側遮光膜11aにより十分に高めることができる。
【0081】
ここで図6に示すように、入射光L1は、TFTアレイ基板10に対して斜め方向から入射する斜め光L1iを含んでいる。例えば、入射角が垂直から10度〜15度位までずれる成分を10%程度含んでいる。このような斜め光L1iが、TFTアレイ基板10上に形成された下側遮光膜11aの上面で反射されて、当該電気光学装置内に、斜めの内面反射光が生成される。更にこのような斜めの内面反射光が当該電気光学装置内の他の界面で反射されて斜めの多重反射光が生成される。特に入射光L1は、戻り光L2に比べて遥かに強力であり、このような入射光に基づく斜めの内面反射光や多重反射光も強力である。
【0082】
しかるに、本実施形態では、このような内面反射光や多重反射光は、凸部401におけるテーパが付けられた側面上に形成された下側遮光膜11aでの反射により、チャネル領域1a’の四方に拡散される傾向が強くなる。このため、内面反射光や多重反射光における最終的にチャネル領域1a’に到達する成分を低減できる。
【0083】
このような凸部401は、TFTアレイ基板10上に溝10cvをエッチングで形成する際に同時に形成できるので、溝10cvを形成する工程を含む製造プロセスの場合と比べると、追加工程が無くて済むので有利である。
【0084】
このような観点から、凸部401の高さは、例えば、700〜800nm程度とされる。そして、上側遮光膜の形成領域及び光源の種類に応じて、凸部401の斜面上に形成された下側遮光膜11aに到達する斜め光L1iがチャネル領域1a’から外れた方向に反射するように、凸部401の側面にテーパをつけるとよい。特に凸部401の側面におけるテーパは、側面に対向する上側遮光膜の縁と側面とを結んだ線に対して側面が略垂直になるように付けられるのが好ましい。このように構成すれば、図6に示したように、上側遮光膜の脇から凸部401の側面上にある下側遮光膜11aに至る斜め光L1iは、下側遮光膜11aにより、ほぼ垂直に反射される。従って、凸部401上に形成された下側遮光膜11aにより、斜め光L1i或いはこれに起因する内面反射光や多重反射光を、チャネル領域1a’を中心として確実に拡散できる。
【0085】
尚、このように上側遮光膜の脇から凸部401の側面上の下側遮光膜11aに至る成分は、TFTアレイ基板10面の法線に対して、例えば20度或いは30度位傾いている。即ち、図6において、角度θだけ法線から傾いた斜め光L1iは、下側遮光膜11aによる反射によって、チャネル領域1a’に到達することは殆どない。他方、このような角度θよりも法線方向に近い斜め光或いは垂直な入射光L1sは、上側遮光膜により遮光されるので、やはりチャネル領域1a’に到達することは殆どない。
【0086】
加えて、図6に示すように本実施形態では、上側遮光膜は、凸部401の盛り上がりに応じてチャネル領域1a’を帽子状に覆うように傾斜する部分を含むので、当該上側遮光膜の傾斜する部分により包囲する空間内に位置するチャネル領域1a’に、上方からの斜め光Liが到達する可能性を低減できる。尚、このように上側遮光膜を帽子状に形成すると、斜めの戻り光L1iが、上側遮光膜の内面で反射して、チャネル領域1a’に到達する可能性が生じるが、戻り光強度は入射光強度と比較すると遥かに低いのであまり問題とはならない。更に、上側遮光膜たる容量線300の内面に配置された中継層71が光吸収層としても機能するので、このような上側遮光膜の内面における斜めの戻り光の反射は根本的に低減可能である。
【0087】
以上説明した実施形態では、図3に示したように多数の導電層を積層することにより、画素電極9aの下地面(即ち、第3層間絶縁膜43の表面)におけるデータ線6aや走査線3aに沿った領域に段差が生じるのを、TFTアレイ基板10に溝10cvを掘ることで緩和しているが、これに変えて又は加えて、下地絶縁膜12、第1層間絶縁膜41、第2層間絶縁膜42、第3層間絶縁膜43に溝を掘って、データ線6a等の配線やTFT30等を埋め込むことにより平坦化処理を行ってもよいし、第3層間絶縁膜43や第2層間絶縁膜42の上面の段差をCMP(Chemical Mechanical Polishing)処理等で研磨すること
により、或いは有機SOG(Spin On Glass)を用いて平らに形成することにより、当該平坦化処理を行ってもよい。
【0088】
尚、凸部401の存在により、画素電極9aの下地面たる第3層間絶縁膜43の表面には段差が生じる。しかしながら、凸部401は、走査線3a及びデータ線6aの交点に位置しているので、このような段差によって液晶の配向不良等が生じる領域を非画素開口領域内にほぼ止めることができ、最終的に表示画像に悪影響を及ぼすことは殆どない。特に、走査線3a又はデータ線6aに沿って配向膜16をラビングすれば、液晶の配向不良等が生じる領域を非画素開口領域内に止める上で一層有利となる。
【0089】
更に以上説明した実施形態では、画素スイッチング用TFT30は、好ましくは図3に示したようにLDD構造を持つが、低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1cに不純物の打ち込みを行わないオフセット構造を持ってよいし、走査線3aの一部からなるゲート電極をマスクとして高濃度で不純物を打ち込み、自己整合的に高濃度ソース及びドレイン領域を形成するセルフアライン型のTFTであってもよい。また本実施形態では、画素スイッチング用TFT30のゲート電極を高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1e間に1個のみ配置したシングルゲート構造としたが、これらの間に2個以上のゲート電極を配置してもよい。このようにデュアルゲート或いはトリプルゲート以上でTFTを構成すれば、チャネルとソース及びドレイン領域との接合部のリーク電流を防止でき、オフ時の電流を低減することができる。
【0090】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態の電気光学装置について図7を参照して説明する。ここに、図7は、第2実施形態における溝10cv’及び凸部401が形成されたTFTアレイ基板10の上面を示す部分拡大斜視図である。図7においては、図5に示した第1実施形態の場合と同様の構成要素には同様の参照符号を付し、その説明は省略する。
【0091】
図7に示すように、第2実施形態では、第1実施形態の場合と異なり、溝10cv’が、データ線6aに沿ってのみ掘られており、走査線3aに沿っては掘られていない。その他の構成については、図1から図6に示した第1実施形態の場合と同様である。
【0092】
従って第2実施形態によれば、走査線3a毎に画素電極9aの印加電圧の極性を反転して駆動する走査線反転駆動方式を採用する場合に、データ線方向に相隣接する画素電極9a間に生じる横電界の悪影響を、走査線3aに沿って画素電極9aの縁を盛り上げることで該横電界が生じる領域における縦電界を強めることにより、低減することも可能となる。
【0093】
同様に、データ線6a毎に画素電極9aの印加電圧の極性を反転して駆動するデータ線反転駆動方式を採用する場合には、溝を走査線3aに沿ってストライプ状に掘ることにより、走査線方向に相隣接する画素電極9a間に生じる横電界の悪影響を、データ線6aに沿って画素電極9aの縁を盛り上げることで該横電界が生じる領域における縦電界を強めることにより、低減することも可能となる。
【0094】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態の電気光学装置について図8を参照して説明する。ここに、図8は、第3実施形態の基本構成の中で、対向基板20上に形成された遮光膜及び下側遮光膜11aによる遮光の様子を2次元的に示す図式的な擬似断面図である。尚、図8における実際の各膜や凸部の形状や配置は、3次元的であり図8に示したものより複雑となるが、ここではチャネル領域1a’付近における入射光及び戻り光に対する、遮光の関係を図式的に示すこととする。また図8では、TFTアレイ基板10上の積層構造の中からチャネル領域1a’と遮光膜とを抽出して、これらと入射光及び戻り光との関係を示すようにしている。図8においては、図6に示した第1実施形態の場合と同様の構成要素には同様の参照符号を付し、その説明は省略する。
【0095】
図8に示すように、第3実施形態では、第1実施形態の場合と異なり、上側遮光膜に代えて又は加えて、対向基板20上に遮光膜23が設けられている。遮光膜23は、平面的に見てTFT30の少なくともチャネル領域1a’を覆う格子状又はストライプ状に形成されている。その他の構成については、図1から図6に示した第1実施形態の場合と同様である。
【0096】
従って第3実施形態によれば、TFTアレイ基板10に垂直な方向からの入射光L1sに対する遮光は、遮光膜23により十分に高めることができる。そして、凸部401上に形成された下側遮光膜11aにより、遮光膜23の脇を抜けて下側遮光膜11aに至る斜めL1iにおける最終的にチャネル領域1a’に到達する成分を低減できる。
【0097】
更に、対向基板20上に遮光膜23における、少なくとも入射光が照射される上面を、高反射な膜で形成することにより、電気光学装置の温度上昇を防ぐことも可能となる。加えて、このように対向基板20上の遮光膜23は好ましくは、平面的に見て容量線300とデータ線6aとからなる遮光層の内側に位置するように形成する。これにより、対向基板20上の遮光膜23により、各画素の開口率を低めることなく、このような遮光及び温度上昇防止の効果が得られる。
【0098】
(変形形態)
以上説明した実施形態には各種の変形形態が考えられる。
【0099】
一の変形形態としては、凸部401は、島状でなく、走査線3a又はデータ線6aに沿って伸びるストライプ状に形成される。このように構成しても、凸部の長手方向に交わる方向からの斜め光或いはこれに起因する内面反射光や多重反射光を、チャネル領域1a’を中心として拡散するので、係る内面反射光や多重反射光における最終的にチャネル領域1a’に到達する成分を低減できる。特に、前述した走査線反転駆動方式やデータ線反転駆動方式を採用する場合に、該横電界が生じる領域における縦電界を強めることで低減可能となる。
【0100】
他の変形形態としては、凸部401は、TFTアレイ基板10がエッチングされてなるのではなく、TFTアレイ基板10上に形成された絶縁膜片、導電膜片等の凸部形成用部材からなる。このように構成しても、TFTアレイ基板10上に凸部を形成できるので、凸部上の下側遮光膜11a等の存在により、第1実施形態の場合と同様の高い遮光効果が得られる。
【0101】
(電気光学装置の全体構成)
以上のように構成された各実施形態における電気光学装置の全体構成を図9及び図10を参照して説明する。尚、図9は、TFTアレイ基板10をその上に形成された各構成要素と共に対向基板20の側から見た平面図であり、図10は、図9のH−H’断面図である。
【0102】
図9において、TFTアレイ基板10の上には、シール材52がその縁に沿って設けられており、その内側に並行して、画像表示領域10aの周辺を規定する額縁としての遮光膜53が設けられている。シール材52の外側の領域には、データ線6aに画像信号を所定タイミングで供給することによりデータ線6aを駆動するデータ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられており、走査線3aに走査信号を所定タイミングで供給することにより走査線3aを駆動する走査線駆動回路104が、この一辺に隣接する2辺に沿って設けられている。走査線3aに供給される走査信号遅延が問題にならないのならば、走査線駆動回路104は片側だけでも良いことは言うまでもない。また、データ線駆動回路101を画像表示領域10aの辺に沿って両側に配列してもよい。更にTFTアレイ基板10の残る一辺には、画像表示領域10aの両側に設けられた走査線駆動回路104間をつなぐための複数の配線105が設けられている。また、対向基板20のコーナー部の少なくとも1箇所においては、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的に導通をとるための導通材106が設けられている。そして、図10に示すように、図9に示したシール材52とほぼ同じ輪郭を持つ対向基板20が当該シール材52によりTFTアレイ基板10に固着されている。
【0103】
尚、TFTアレイ基板10上には、これらのデータ線駆動回路101、走査線駆動回路104等に加えて、複数のデータ線6aに画像信号を所定のタイミングで印加するサンプリング回路、複数のデータ線6aに所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該電気光学装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。
【0104】
以上図1から図10を参照して説明した実施形態では、データ線駆動回路101及び走査線駆動回路104をTFTアレイ基板10の上に設ける代わりに、例えばTAB(Tape Automated bonding)基板上に実装された駆動用LSIに、TFTアレイ基板10の周辺部に設けられた異方性導電フィルムを介して電気的及び機械的に接続するようにしてもよい。また、対向基板20の投射光が入射する側及びTFTアレイ基板10の出射光が出射する側には各々、例えば、TN(Twisted Nematic)モード、VA(Vertically Aligned)モード、PDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)モード等の動作モードや、ノーマリーホワイトモード/ノーマリーブラックモードの別に応じて、偏光フィルム、位相差フィルム、偏光板などが所定の方向で配置される。
【0105】
以上説明した実施形態における電気光学装置は、プロジェクタに適用されるため、3枚の電気光学装置がRGB用のライトバルブとして各々用いられ、各ライトバルブには各々RGB色分解用のダイクロイックミラーを介して分解された各色の光が投射光として各々入射されることになる。従って、各実施形態では、対向基板20に、カラーフィルタは設けられていない。しかしながら、画素電極9aに対向する所定領域にRGBのカラーフィルタをその保護膜と共に、対向基板20上に形成してもよい。このようにすれば、プロジェクタ以外の直視型や反射型のカラー電気光学装置について、各実施形態における電気光学装置を適用できる。また、対向基板20上に1画素1個対応するようにマイクロレンズを形成してもよい。あるいは、TFTアレイ基板10上のRGBに対向する画素電極9a下にカラーレジスト等でカラーフィルタ層を形成することも可能である。このようにすれば、入射光の集光効率を向上することで、明るい電気光学装置が実現できる。更にまた、対向基板20上に、何層もの屈折率の相違する干渉層を堆積することで、光の干渉を利用して、RGB色を作り出すダイクロイックフィルタを形成してもよい。このダイクロイックフィルタ付き対向基板によれば、より明るいカラー電気光学装置が実現できる。
【0106】
(投射型表示装置の実施形態)
次に、以上詳細に説明した液晶装置をライトバルブとして用いた投射型表示装置の実施形態について図11及び図12を参照して説明する。
【0107】
先ず、本実施形態の投射型表示装置の回路構成について図11のブロック図を参照して説明する。尚、図11は、投射型表示装置をカラー表示させるための3枚のライトバルブのうちの1枚に係る回路構成を示したものである。これら3枚のライトバルブは、基本的にどれも同じ構成を持つので、ここでは1枚の回路構成に係る部分について説明を加えるものである。但し厳密には、3枚のライトバルブでは、入力信号が夫々異なり(即ち、R用、G用、B用の信号で夫々駆動され)、更にG用のライトバルブに係る回路構成では、R用及びB用の場合と比べて、画像を反転して表示するように画像信号の順番を各フィールド又はフレーム内で逆転させるか又は水平或いは垂直走査方向を逆転させる点も異なる。
【0108】
図11において、投射型表示装置は、表示情報出力源1000、表示情報処理回路1002、駆動回路1004、液晶装置100、クロック発生回路1008並びに電源回路1010を備えて構成されている。表示情報出力源1000は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、光ディスク装置などのメモリ、画像信号を同調して出力する同調回路等を含み、クロック発生回路1008からのクロック信号に基づいて、所定フォーマットの画像信号などの表示情報を表示情報処理回路1002に出力する。表示情報処理回路1002は、増幅・極性反転回路、シリアル−パラレル変換回路、ローテーション回路、ガンマ補正回路、クランプ回路等の周知の各種処理回路を含んで構成されており、クロック信号に基づいて入力された表示情報からデジタル信号を順次生成し、クロック信号CLKと共に駆動回路1004に出力する。駆動回路1004は、液晶装置100を駆動する。電源回路1010は、上述の各回路に所定電源を供給する。尚、液晶装置100を構成するTFTアレイ基板10の上に、駆動回路1004を搭載してもよく、これに加えて表示情報処理回路1002を搭載してもよい。
【0109】
次に図12を参照して、本実施形態の投射型表示装置の全体構成、特に光学的な構成について説明する。ここに図12は、投射型表示装置の図式的断面図である。
【0110】
図12において、本実施形態における投射型表示装置の一例たる液晶プロジェクタ1100は、上述した駆動回路1004がTFTアレイ基板10上に搭載された液晶装置100を含む液晶モジュールを3個用意し、夫々RGB用のライトバルブ100R、100G及び100Bとして用いたプロジェクタとして構成されている。液晶プロジェクタ1100では、メタルハライドランプ等の白色光源のランプユニット1102から投射光が発せられると、3枚のミラー1106及び2枚のダイクロイックミラー1108によって、RGBの3原色に対応する光成分R、G、Bに分けられ、各色に対応するライトバルブ100R、100G及び100Bに夫々導かれる。この際特にB光は、長い光路による光損失を防ぐために、入射レンズ1122、リレーレンズ1123及び出射レンズ1124からなるリレーレンズ系1121を介して導かれる。そして、ライトバルブ100R、100G及び100Bにより夫々変調された3原色に対応する光成分は、ダイクロイックプリズム1112により再度合成された後、投射レンズ1114を介してスクリーン1120にカラー画像として投射される。
【0111】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴なう電気光学装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の電気光学装置における画像表示領域を構成するマトリクス状の複数の画素に設けられた各種素子、配線等の等価回路である。
【図2】第1実施形態の電気光学装置におけるデータ線、走査線、画素電極等が形成されたTFTアレイ基板の相隣接する複数の画素群の平面図である。
【図3】図2のA−A’断面図である。
【図4】第1実施形態における凸部上にある下地絶縁膜及びこの上に配置された半導体層を示す部分拡大斜視図である。
【図5】第1実施形態における溝及び凸部が形成された基板の上面を示す部分拡大斜視図である。
【図6】第1実施形態における、上下遮光膜及び基板の凸部を2次元的に示す図式的な擬似断面図である。
【図7】第2実施形態における溝及び凸部が形成された基板の上面を示す部分拡大斜視図である。
【図8】第3実施形態における、対向基板上の遮光膜及び基板の凸部を2次元的に示す図式的な擬似断面図である。
【図9】実施形態の電気光学装置におけるTFTアレイ基板をその上に形成された各構成要素と共に対向基板の側から見た平面図である。
【図10】図9のH−H’断面図である。
【図11】本発明の投射型表示装置の実施形態におけるライトバルブに係る回路構成を示したブロック図である。
【図12】本発明の投射型表示装置の実施形態の一例たるカラー液晶プロジェクタを示す図式的断面図である。
【符号の説明】
1a…半導体層
1a’…チャネル領域
1b…低濃度ソース領域
1c…低濃度ドレイン領域
1d…高濃度ソース領域
1e…高濃度ドレイン領域
2…絶縁膜
3a…走査線
6a…データ線
9a…画素電極
10…TFTアレイ基板
10cv…溝
11a…下側遮光膜
12…下地絶縁膜
16…配向膜
20…対向基板
21…対向電極
22…配向膜
30…TFT
50…液晶層
70…蓄積容量
71…中継層
75…誘電体膜
81、83、85…コンタクトホール
300…容量線
401…凸部
Claims (16)
- 基板上に、
画素電極と、
該画素電極に接続された薄膜トランジスタと、
該薄膜トランジスタの上側に配置されており前記薄膜トランジスタの少なくともチャネル領域を上側から覆う上側遮光膜と、
前記薄膜トランジスタの下側に配置されており前記薄膜トランジスタの少なくとも前記チャネル領域を下側から覆う下側遮光膜と
を備えており、
前記基板は、前記チャネル領域に対向する領域を含む範囲の領域に溝が設けられており、前記溝内の前記チャネル領域に対向する領域に盛り上げられた凸部を有し、前記下側遮光膜は、該凸部上に形成されていることを特徴とする電気光学装置。 - 前記下側遮光膜は、少なくとも前記凸部の上面及び側面上に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
- 前記凸部は、前記チャネル領域毎に島状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気光学装置。
- 前記凸部は、ストライプ状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気光学装置。
- 前記凸部は、前記チャネル領域に加えて、前記薄膜トランジスタの半導体層における前記チャネル領域に隣接する領域に対向する領域にも形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電気光学装置。
- 前記凸部は、前記基板上の前記凸部を除く領域がエッチングされてなることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の電気光学装置。
- 前記凸部は、前記基板上に形成された凸部形成用部材からなることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の電気光学装置。
- 前記下側遮光膜は、高融点金属を含む膜からなることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の電気光学装置。
- 前記基板に設けられた溝は、格子状の非画素開口領域に沿って掘られてなることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の電気光学装置。
- 前記基板上に、前記薄膜トランジスタに接続された配線を更に備えており、
前記基板に設けられた溝は、前記配線に対向する領域に掘られてなることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の電気光学装置。 - 前記凸部は、側面にテーパが付けられていることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の電気光学装置。
- 前記上側遮光膜は、前記凸部の盛り上がりに応じて前記チャネル領域を帽子状に覆うように傾斜する部分を含むことを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の電気光学装置。
- 前記基板に対して電気光学物質を介して対向配置された対向基板を更に備えており、
前記上側遮光膜に代えて又は加えて、前記対向基板上に、少なくとも前記チャネル領域を上方から覆う他の遮光膜を備えたことを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の電気光学装置。 - 前記上側遮光膜は、少なくとも部分的に容量線或いは容量電極からなることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の電気光学装置。
- 前記上側遮光膜における前記チャネル領域に対向する側は光吸収層からなることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載の電気光学装置。
- 請求項1から15のいずれか一項に記載の電気光学装置と、
該電気光学装置に光を入射する光源と、
前記電気光学装置から出射される光を画像として投射する投射光学系と
を備えたことを特徴とする投射型表示装置。
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