しかしながら、従来におけるデータ線を通じた画像信号の供給については、次のような問題点があった。すなわち、上で例示した画像信号の供給方法のうち、グループ毎に同時に画像信号の供給を行う方法を例として説明すると、この場合、画像信号の供給を現に受けているグループ(以下、「供給グループ」という。)と、それに隣接するグループ(以下、「非供給グループ」という。)との間において、当該位置に延在するデータ線にほぼ沿った形で、画像上に表示ムラが現れるという不具合があったのである。
これは、前記供給グループと前記非供給グループとのちょうど端境に存在する画素電極において、画像信号に正確に対応した電界が結果的に印加されないことによる。より詳しくは、この場合、当該画素電極の一方の端には、画像信号が供給されるデータ線が存在し、他方の端には画像信号が供給されないデータ線が存在するということになるから、当該画素電極に対して、画像信号に対応した正確な電界を印加したとしても、当該画素電極と前記画像信号が供給されないデータ線との間における容量カップリングの影響で、その電位に変動が生じるのである。ちなみに、供給グループ内にあって、前記端境に位置しない画素電極における電位については、そのような不都合は生じないことになる。
このような問題に対処するため、画素電極とデータ線との間に位置する層間絶縁膜の厚さを大きくするという試みが考えられる。これによれば、画素電極及びデータ線間で生じる寄生容量を小さくすることが可能となるからである。しかしながら、層間絶縁膜の厚さを大きくすると、例えば、画素電極及びTFT間を接続するコンタクトホールの形成が困難となる。また、厚さを大きくして容量カップリングの影響をなくすためには、そもそも当該厚さを一般に非常に大きくしなければならない。これでは、電気光学装置一般について、小型化・高精細化が望まれている現状に対して逆行することとなる。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、画素電極及びデータ線間等に生じる容量カップリングの影響を排除して、表示ムラ等のない高品位な画像の表示が可能となる電気光学装置及び電子機器を提供することを課題とする。
本発明の一実施形態に係る電気光学装置は、基板の一方の面側に、第1方向に延在するデータ線と、前記データ線と電気的に接続された画素電極と、前記画素電極に対応して設けられた薄膜トランジスタと、前記基板と前記薄膜トランジスタとの間に配置され、少なくとも前記データ線に交差する第2方向に延在する遮光膜と、が備えられた電気光学装置であって、前記基板の前記一方の面側には、更に、前記データ線と前記基板との間に配置され、前記薄膜トランジスタ及び前記画素電極に電気的に接続された蓄積容量と、前記データ線と前記画素電極との間に配置され、固定電位とされたシールド層と、前記データ線と同一層として形成され、前記シールド層と前記蓄積容量構成する一対の電極の一方とを電気的に接続する第1中継層と、前記データ線と同一層として形成され、前記蓄積容量構成する一対の電極の他方と電気的に接続する第2中継層と、前記シールド層と同一層として形成され、前記画素電極と前記第2中継層とを電気的に接続する第3中継層と、が備えられてなり、前記画素電極と前記第3中継層とを電気的に接続する第1コンタクトホールと、前記第3中継層と前記第2中継層とを電気的に接続する第2コンタクトホールと、前記第2中継層と前記蓄積容量構成する一対の電極の他方とを電気的に接続する第3コンタクトホールと、前記シールド層と前記第1中継層とを電気的に接続する第4コンタクトホールと、前記1中継層と前記蓄積容量構成する一対の電極の一方とを電気的に接続する第5コンタクトホールと、は前記遮光膜と平面視において重なる領域に形成されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施形態に係る電気光学装置は、前記蓄積容量は、前記第1方向に沿って延在する第1部分と、前記第2方向に沿って延在する第2部分とを有することを特徴とする。
また、本発明の一実施形態に係る電気光学装置は、前記シールド層は、アルミニウムからなる膜を含むことを特徴とする。
また、本発明の一実施形態に係る電気光学装置は、前記シールド層は、アルミニウムからなる膜及び高融点金属を含む膜の積層体を構成することを特徴とする。
また、本発明の一実施形態に係る電気光学装置は、前記データ線は、アルミニウムからなる膜を含むことを特徴とする。
また、本発明の一実施形態に係る電気光学装置は、前記データ線は、高融点金属を含む膜を更に含み、前記アルミニウムからなる膜とともに積層体を構成することを特徴とする。
また、本発明の一実施形態に係る電気光学装置は、前記シールド層は、前記データ線に沿って形成された領域において、該データ線よりも幅広に形成されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施形態に係る電子機器は、上記に記載の電気光学装置を具備してなることを特徴とする。
また、本発明の参考例に係る電気光学装置は、基板上に、第1方向に延在するデータ線及び該データ線に交差する第2方向に延在する走査線、並びに、前記データ線及び前記走査線の交差領域に対応するように配置された画素電極及び薄膜トランジスタが積層構造の一部をなして備えられた電気光学装置であって、前記基板上には更に、前記薄膜トランジスタ及び前記画素電極に電気的に接続された蓄積容量と、前記データ線及び前記画素電極間に配置され固定電位とされたシールド層とが、前記積層構造の一部をなして備えられてなり、前記シールド層又はこれに接続若しくは延設された導電層の少なくとも一部は、前記蓄積容量を構成する一対の電極の一方を含む。
本発明の電気光学装置によれば、まず、走査線及びデータ線並びに画素電極及び薄膜トランジスタが備えられていることにより、アクティブマトリクス駆動可能である。また、当該電気光学装置では、前記の各種構成要素が積層構造の一部をなしていることにより、装置全体の小型化等を達成することができ、また、各種構成要素の適当な配置を実現することにより、画素開口率の向上を図ることもできる。
そして、本態様では特に、上述の各種構成要素のほか、積層構造を構成するものとして、蓄積容量及びシールド層が備えられている。
第一に、蓄積容量が備えられていることにより、画素電極における電位保持特性を向上させることができる。これにより、高コントラストの画像を表示することが可能となる。第二に、シールド層が、データ線及び画素電極間に備えられているとともに固定電位とされていることにより、両者間で容量カップリングが生じることを未然に防止することが可能となる。すなわち、データ線の通電によって、画素電極における電位変動等が生じる可能性を低減することが可能となり、より高品質な画像を表示することが可能となる。なお、このシールド層を固定電位とするためには、例えば、前記画素電極、走査線及びデータ線等が備えられた画像表示領域外に、該シールド層を延設し、又は、該シールド層に電気的に接続若しくは延設された導電材を延設するとともに、当該延設部分に対して固定電位電源を接続するなどという態様を採ればよい。
また、本発明では特に、シールド層又はこれに接続若しくは延設された導電層の少なくとも一部が、蓄積容量を構成する一対の電極の一方(以下、簡単のため「一方電極」ということがある。)を含む。これによれば、シールド層又は導電層の一部が蓄積容量の一部を構成する(逆も然りである。)というように、両構成要素の各一部分が相互に利用し合う関係にあるから、シールド層はシールド層、蓄積容量は蓄積容量というように別々に形成する場合に比べて、構造の簡易化・簡略化を実現することができる。また、同じ理由により、本発明においては、積層構造中におけるシールド層及び蓄積容量の配置を、よりコンパクトに、あるいはより好適に実現することができる。
本発明の電気光学装置の一態様では、前記蓄積容量を構成する一対の電極の他方は、前記データ線と同一層として形成された独立的導電層に含まれる。
この態様によれば、蓄積容量を構成する一対の電極の他方(以下、簡単のため「他方電極」ということがある。)が、独立的導電層の少なくとも一部として、データ線と同一層、より好ましくは同一膜として(すなわち、製造工程段階において他方電極とデータ線とが同時に)形成されているから、積層構造の多層化防止、製造工程の簡略化、製造コストの低廉化等を図ることができる。
そして、本態様では特に、蓄積容量は、シールド層と、前記のデータ線と同一層として形成されている独立的導電層とが、その一対の電極に該当することにより構成されることになる。すなわち、データ線とシールド層との電気的絶縁を図る層間絶縁膜と、蓄積容量を構成する誘電体膜とは同じになる。また、これと同時に、シールド層は、前述のようにデータ線及び画素電極間の寄生容量の影響排除という役割を担うとともに、蓄積容量の一方電極の役割を担うことになる。このように、該層間絶縁膜、あるいは該シールド層は、本態様において両義的な存在になるから、これによっても、積層構造の簡易化、あるいは製造工程の簡略化等の作用効果が導かれる。
なお、本態様にいう「独立的導電層」、とりわけ「独立的」というのは、該独立的導電層がデータ線と同一層として形成されるため、該データ線との間において同一平面内で電気的絶縁が図られている必要があることを意味し、より具体的には、該独立的導電層と該データ線とは、例えば、パターニング上、相互に分断されていなければならないという意味合いを含ませる目的で使用されている。
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記基板上には、前記シールド層及び前記独立的導電層を一対の電極とする蓄積容量のほか、他の蓄積容量が、前記積層構造の一部として更に備えられている。
この態様によれば、前述のシールド層及び独立的導電層を一対の電極とする蓄積容量のほか、他の蓄積容量が、積層構造の一部として備えられていることにより、当該電気光学装置全体としての蓄積容量の容量値の増大化を図ることができる。
この点特に、シールド層及び独立的導電層を一対の電極として蓄積容量を構成する場合においては、上述のように、該独立的導電層と同一層としてデータ線が形成されていることにより、該蓄積容量の誘電体膜(ないし層間絶縁膜)の薄膜化によりその容量値の増大を図るにあたっては、少なくとも前記データ線の「高さ」を考慮した上で行う必要があり、それには相応の限界があることに鑑みると、本構成に係る「他の蓄積容量」の存在は、画素電極の電位保持特性を良好に維持することにとって大きな貢献をなし得る。
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記導電層は、前記シールド層とは別の層に形成されており、該導電層が、前記蓄積容量を構成する一対の電極の一方を含み、前記蓄積容量を構成する一対の電極の他方は、前記導電層に対向するように形成された他の導電層に含まれる。
この態様によれば、導電層が一方電極を含むから、積層構造の多層化防止、製造工程の簡略化、製造コストの低廉化等を図りうる。なお、この場合、基本的には、シールド層は一方電極を含まないことになるから、該シールド層は、画素電極及びデータ線間の寄生容量の影響を排除することのみを主な任務とすることになる(ただし、導電層が一方電極を含み、シールド層もまた一方電極を含むような構成も考えられ得る。)。
そして、本態様では特に、蓄積容量は、導電層と、該導電層に対向するように形成された他の導電層とが、その一対の電極に該当することにより構成されることになる。ここで「導電層」は、前述のように、固定電位とされたシールド層に接続又は延設されていることにより、やはり固定電位とされていることになる。
すなわち、該導電層が含む一方電極とは、いわゆる固定電位側容量電極に該当し、他方電極とは、いわゆる画素電位側容量電極(すなわち、蓄積容量の一対の電極のうち、画素電極及び薄膜トランジスタに接続されることになる電極)に該当することになる。
このように、導電層、他の導電層を一対の電極とする場合においては、上述のようにシールド層及び独立的導電層を一対の電極とする場合に比較して、当該蓄積容量の誘電体膜をより薄くすることが可能となる。というのも、後者の構成では、独立的導電層がデータ線と同一層として形成されているため、該データ線の厚さを考慮した上で、当該蓄積容量の誘電体膜の厚さを決めなければならないところ、本態様に係る導電層及び他の導電層からなる蓄積容量においては、そのようなデータ線等は存在しないから、可能な限り、その誘電体膜を薄くすることが可能となるからである。
ただし、本態様においては、その分だけ積層構造が多層化されることになるのはいうまでもない。この点に関していえば、上述の独立的導電層を含む蓄積容量では、層間絶縁膜が共用されていたため(すなわち、シールド層及びデータ線間の絶縁を図るための絶縁膜と、蓄積容量を構成する誘電体膜とは同じであったため)、多層化を防止するという観点からすれば、当該蓄積容量の方が優位であるとも言える。
要するに、本態様に係る他の導電層を含む蓄積容量と、前述の独立的導電層を含む蓄積容量とを比較した場合に、どちらが優位であるとは一概には決し得ない。本発明においては、上述のような事情等を勘案した上でどちらの構成を採用するようにしてもよい。
この導電層及び他の導電層により蓄積容量を構成する態様では、前記導電層は、前記データ線と同一層として形成されているように構成するとよい。
このような構成によれば、積層構造の更なる簡略化等が図られる。すなわち、蓄積容量を全く別個の構成要素として形成する場合においては、例えば、下から順に、蓄積容量(下部電極、誘電体膜及び上部電極)、層間絶縁膜、データ線、層間絶縁膜及びシールド層などという積層構造が典型的に考えられることから比べると、本態様においては、蓄積容量(このうちの上部電極は導電層に含まれ、該導電層と同一層にデータ線が存在する。)、層間絶縁膜及びシールド層という簡易な構造を実現することができる。
なお、本構成に係る記載から逆に明らかとなるように、本発明において、データ線と導電層とは必ずしも同一層に形成されている必要はない。
また、この導電層及び他の導電層により蓄積容量を構成する態様では、前記蓄積容量を構成する一対の電極の他方と前記画素電極とを電気的に接続するための中継層が前記積層構造の一部として更に備えられているようにするとよい。
このような構成によれば、前記積層構造の一部をそれぞれ構成する、画素電極と蓄積容量の他方電極とは、同じく積層構造の一部を構成する中継層によって電気的に接続されることになる。具体的には、画素電極及び中継層間、並びに、中継層及び他方電極間にコンタクトホールを形成する等の手段によればよい。これにより、例えば、本態様に係る中継層を二層構造とするとともに、その上層は画素電極の材料として通常使用される透明導電性材料の一例たるITO(Indium Tin Oxide)と相性のよい材料で構成し、その下層は蓄積容量を構成する一対の電極の一方と相性のよい材料で構成する等の柔軟な構成を採ることが可能となり、画素電極に対する電圧の印加、あるいは該画素電極おける電位の保持をより好適に実現することができる。
この中継層が備えられる態様では、前記シールド層は、前記中継層と同一膜として形成されているようにするとよい。
このような構成によれば、中継層と前記シールド層とが同一膜として形成されていることにより、両構成を同時に形成することが可能となり、その分の製造工程の簡略化、あるいは製造コストの低廉化等を図ることができる。
なお、本態様の記載から逆に明らかとなるように、本発明においては、シールド層と中継層とを同一膜として形成する必要は必ずしもない。すなわち、両者を別々の層として形成してよい。
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記シールド層は、アルミニウムからなる膜を含む。
この態様によれば、シールド層がアルミニウムからなる膜を含むから、その低抵抗化を実現することができる。これにより、例えば、シールド層が高抵抗である場合に懸念される、クロストークや焼き付き等を発生させるおそれがなくなり、より高品質の画像を表示することが可能となる。
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記シールド層は、アルミニウムからなる膜及び高融点金属を含む膜の積層体を構成する。
この態様によれば、シールド層が、アルミニウムからなる膜を含むから、その低抵抗化を実現することができる。また、本態様ではそれに加えて、該シールド層が、高融点金属を含む膜、例えば水分をせき止める作用に比較的優れた窒化物からなる膜を含むから、薄膜トランジスタの半導体層に対する水分浸入防止作用が発揮される。この点、もし半導体層、あるいはゲート絶縁膜等に水分が浸入すると、半導体層及びゲート絶縁膜間の界面に正電荷が発生し、スレッショルド電圧を次第に高めていくという悪影響がでる。本態様では、上述のように、半導体層に対する水分浸入を効果的に防止することが可能であるから、該薄膜トランジスタのスレッショルド電圧が上昇するという不具合の発生を極力防止することが可能となり、もってその長期的且つ安定的な運用を期することができる。
さらに、シールド層がアルミニウムからなる膜及び高融点金属を含む膜を含む場合においては、前者において比較的高い光反射性能を享受しえ、後者において比較的高い光吸収性能を享受することが可能となる。すなわち、本態様によれば、薄膜トランジスタの半導体層に対する光入射を、相応に防止することが可能となるのである。この点、もし半導体層、とりわけそのチャネル領域に光が入射されると、光リーク電流が発生し、画像上にフリッカ等が現れるなどの悪影響が出る。本態様では、上述のように、半導体層に対する光入射を効果的に防止することが可能であるから、該薄膜トランジスタの正確な動作を実現することができ、もってより高品質な画像を表示することができる。
さらに加えて、本態様に係るシールド層が、前述のように中継層と同一膜として形成されている場合(換言すれば、本態様と前述の当該態様とを併せもつ構成)では特に、該シールド層が高融点金属を含む膜を含むことにより、次のような作用効果を得ることができる。すなわち、中継層は、通常、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)等の透明導電性材料からなる画素電極と電気的に接続されることになるが、このITO等の電気的接続の直接の相手方が、例えばアルミニウム等である場合には、いわゆる電食が生じてしまうことがある。ここに電食とは、ITOと該アルミニウム等が直接に接触することにより、後者において断線(侵食)を生じさせたり、該アルミニウム内にアルミナ等が形成されることにより、絶縁を生じさせたりする現象である。このような電食が生じると、中継層及び画素電極間の電気的な導通は困難な状況になり、該画素電極に画像信号に対応した正確な電圧を印加することが困難になる。
しかるに、上述のような構成では、中継層が、高融点金属を含む膜を含むシールド層と同一膜として形成されていることから、該中継層と画素電極とが直接的に接触する部分については、例えば、高融点金属を含む膜の一例たる窒化物からなる膜をあてることが可能となる。この場合、両者間に、上述のような電食を殆ど生じさせることがないから、中継層及び画素電極間の電気的な導通を、好適に維持することが可能となるのである。
以上により、この構成では特に、上述のような各種作用効果の他、中継層及び画素電極間、ひいては薄膜トランジスタ及び画素電極間の電気的接続を良好に維持することが可能となることにより、より高品質な画像を表示することができる。
更にいえば、この構成では、高融点金属を含む膜の一例たる窒化物からなる膜等は、シールド層及び中継層双方の形成領域に対応するように形成されていることになるから、前述したような薄膜トランジスタの半導体層に対する水分浸入作用を、基板の面についてより広範に得ることが可能となる。したがって、薄膜トランジスタの長期運用という作用効果を、より効果的に享受することが可能となる。
なお、本態様にいう「高融点金属を含む膜」として好適なものとしては、例えば、窒化チタン(TiN)や、窒化シリコン(SiN)あるいは酸窒化シリコン(SiON)等からなる膜を挙げることができる。
また、本態様にいう「積層体」とは、例えば、アルミニウム膜、窒化物膜という単純な二層構造を含むのは勿論、窒化物膜、アルミニウム膜及び窒化物膜という三層構造、あるいはその他種々の構成を含む概念であることは言うまでもない。
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記データ線は、アルミニウムからなる膜を含む。
この態様によれば、データ線が、アルミニウムからなる膜を含むから、その低抵抗化を実現することができる。
この態様では、前記データ線は、導電性ポリシリコン膜及び高融点金属を含む膜の少なくとも一方を更に含み、前記アルミニウムからなる膜とともに積層体を構成するようにするとよい。
このような構成によれば、まず、データ線が導電性ポリシリコン膜を含めば、該導電性ポリシリコン膜を積層体中の適当な位置に配置することで、当該データ線と薄膜トランジスタの半導体層との電気的接続を好適に実現することができる。
また、該データ線が高融点金属を含む膜、例えば窒化物からなる膜を含めば、薄膜トランジスタの半導体層に対する水分浸入防止作用が発揮される。この点、もし半導体層、あるいはゲート絶縁膜等に水分が浸入すると、半導体層及びゲート絶縁膜間の界面に正電荷が発生し、スレッショルド電圧を次第に高めていくという悪影響がでる。本態様では、上述のように、半導体層に対する水分浸入を効果的に防止することが可能であるから、該薄膜トランジスタのスレッショルド電圧が上昇するという不具合の発生を極力防止することが可能となる。
なお、本態様にいう「高融点金属を含む膜」として好適なものとしては、例えば、窒化チタン(TiN)や、窒化シリコン(SiN)あるいは酸窒化シリコン(SiON)等からなる膜を挙げることができる。
また、本態様にいう「積層体」とは、例えば、アルミニウム膜、窒化物膜という単純な二層構造を含むのは勿論、窒化物膜、アルミニウム膜及び窒化物膜という三層構造、あるいはその他種々の構成を含む概念であることは言うまでもない。
このように、データ線、あるいはシールド層が高融点金属を含む膜を含む態様では特に、前記高融点金属を含む膜は、前記走査線及び及び前記データ線並びに前記画素電極及び前記薄膜トランジスタの形成領域として規定される画像表示領域の周囲の周辺領域上にもまた形成されているようにするとよい。
このような構成によれば、画像表示領域の周囲の周辺領域上にもまた、高融点金属を含む膜、例えば窒化チタン膜が形成されている。この場合、当該周辺領域には、前記走査線を駆動するための走査線駆動回路、前記データ線を駆動するためのデータ線駆動回路等が設けられることが通常考えられ、加えて例えば、これら走査線駆動回路及びデータ線駆動回路が、前記基板上に作りこまれて内蔵回路を構成し、かつ、これらが例えばCMOS型の薄膜トランジスタを含む場合を考えると、当該薄膜トランジスタに対して、水分の浸入を生じさせない作用効果を期待することができる。すなわち、本構成によれば、画像表示領域を規定する薄膜トランジスタに加えて、周辺領域に形成される薄膜トランジスタについてもまた、正確動作、長期運用等を行うことができ、電気光学装置全体としての長期運用等を実現することができる。
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記走査線及び前記データ線並びに前記画素電極及び前記薄膜トランジスタの形成領域として規定される画像表示領域の周囲の周辺領域に、前記走査線及び前記データ線それぞれを駆動するための走査線駆動回路及びデータ線駆動回路を更に備えてなり、前記走査線駆動回路及び前記データ線駆動回路は第2の薄膜トランジスタを含み、前記第2の薄膜トランジスタを構成するソース電極及びドレイン電極の少なくとも一つは、前記シールド層と同一膜として形成されている。
この態様によれば、走査線駆動回路及びデータ線駆動回路を構成する第2の薄膜トランジスタを構成するソース電極及びドレイン電極の少なくとも一つと、シールド層との形成を同一膜として、すなわち両者を同時に形成することが可能となるから、その分の製造工程の簡略化、製造コストの低廉化等を図ることができる。
また、本態様と、前述のようにシールド層がアルミニウムからなる膜を含む態様とを併せもつ構成では特に、前述のソース電極及びドレイン電極の少なくとも一つもまた、アルミニウムからなる膜を含むことになるから、その低抵抗化を実現することができる。
さらには、本態様と、前述のように「データ線」が導電性ポリシリコン膜を含む態様とを併せもつ構成では特に、次のような作用効果を得ることも可能となる。すなわち、通常、画像表示領域を規定する前記薄膜トランジスタは、高速スイッチング特性等の特徴をもつNch型として形成されることが多い。したがって、この場合、前記導電性ポリシリコン膜はN型とされることになる。他方、走査線駆動回路及びデータ線駆動回路を構成する前記第2の薄膜トランジスタは、省電力特性等の特徴を持つCMOS型として形成されることが多い。ここにCMOS型の薄膜トランジスタとは、よく知られているように、Nch型薄膜トランジスタとPch型薄膜トランジスタの双方を併せもつ構成を備えたものである。ここでもし、前記のソース電極及びドレイン電極の少なくとも一つとデータ線とを同時に形成するような態様を採用すると、第2の薄膜トランジスタのうち、Pch型の薄膜トランジスタと、前述のN型の導電性ポリシリコンとが直接的に接触してしまうような場合が考えられることになる。これでは、当該接触箇所において、PN接合が形成されることにより、両者間の良好な電気的導通を図ることができない。しかるに、本態様によれば、第2の薄膜トランジスタのソース電極及びドレイン電極の少なくとも一つは、「シールド層」と同時に形成されることになるから、上述のような不具合が発生しないのである。
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記シールド層は、前記データ線に沿うように、かつ、該データ線よりも幅広に形成されている。
この態様によれば、データ線に沿うように、かつ、該データ線よりも幅広に形成されることから、該データ線と画素電極とが直接的に対向するような箇所を極力なくすことが可能となり、該シールド層によるシールド効果を、より一層効果的に享受することが可能となる。
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記シールド層は、前記データ線及び前記走査線の形成領域に対応するように、格子状に形成されている。
この態様によれば、シールド層は、データ線及び走査線の形成領域に対応するように、格子状に形成されていることから、該シールド層によるシールド効果を、より一層効果的に享受することが可能となる。
また、シールド層が格子状に形成されている態様と、前述した、該シールド層が蓄積容量の一方電極を含み、且つ、独立的導電層が他方電極を含む態様とを併せもつ構成では特に、該独立的導電層に対向すべき一方電極の面積が増大することになるから、蓄積容量の容量値増大が見込めることになり、画素電極の電位保持特性をより向上させることが可能となる。
さらに、このシールド層が格子状に形成されている態様と、前述した該シールド層が高融点金属を含む膜を含む態様とを併せもつ構成では特に、該高融点金属を含む膜の、基板上に閉める面積が相対的に増大することから、薄膜トランジスタの耐湿性、すなわち該薄膜トランジスタの半導体層に対する水分浸入防止作用をより効果的に享受することが可能となる。
本発明の電子機器は、上記課題を解決するために、上述の本発明の電気光学装置(ただし、その各種態様を含む。)を具備してなる。
本発明の電子機器によれば、上述の本発明の電気光学装置を具備してなるから、シールド層に存在により、データ線及び画素電極間の寄生容量の影響を排除して、表示ムラ等のない高品質な画像を表示することの可能な、投射型表示装置、液晶テレビ、携帯電話、電子手帳、ワードプロセッサ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルなどの各種電子機器を実現できる。
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施の形態から明らかにされる。
(第1実施形態)
以下では、本発明の第1の実施の形態について図を参照しつつ説明する。以下の第1実施形態は、本発明の電気光学装置を液晶装置に適用したものである。
(画素部における構成)
まず、本発明の第1実施形態における電気光学装置の画素部における構成について、図1から図3を参照して説明する。ここに図1は、電気光学装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路である。図2は、データ線、走査線、画素電極等が形成されたTFTアレイ基板の相隣接する複数の画素群の平面図である。図3は、図2のA−A’断面図である。なお、図3においては、各層・各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、該各層・各部材ごとに縮尺を異ならしめてある。
図1において、第1実施形態における電気光学装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素には、それぞれ、画素電極9aと当該画素電極9aをスイッチング制御するためのTFT30とが形成されており、画像信号が供給されるデータ線6aが当該TFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。
また、TFT30のゲートに走査線3aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9aは、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、…、Snを所定のタイミングで書き込む。
画素電極9aを介して電気光学物質の一例としての液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、対向基板に形成された対向電極との間で一定期間保持される。液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。ノーマリーホワイトモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加され、全体として電気光学装置からは画像信号に応じたコントラストをもつ光が出射する。
ここで保持された画像信号がリークするのを防ぐために、画素電極9aと対向電極との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70を付加する。この蓄積容量70は、走査線3aに並んで設けられ、固定電位側容量電極を含むとともに定電位に固定された容量電極400Dを含んでいる。
以下では、上記データ線6a、走査線3a、TFT30等による、上述のような回路動作が実現される電気光学装置の、実際の構成について、図2から図3を参照して説明する。
まず、図2において、画素電極9aは、TFTアレイ基板10上に、マトリクス状に複数設けられており(点線部9a’により輪郭が示されている)、画素電極9aの縦横の境界に各々沿ってデータ線6a及び走査線3aが設けられている。データ線6aは、後述するようにアルミニウム膜等を含む積層構造からなり、走査線3aは、例えば導電性のポリシリコン膜等からなる。また、走査線3aは、半導体層1aのうち図中右上がりの斜線領域で示したチャネル領域1a’に対向するように配置されており、該走査線3aはゲート電極として機能する。すなわち、走査線3aとデータ線6aとの交差する箇所にはそれぞれ、チャネル領域1a’に走査線3aの本線部がゲート電極として対向配置された画素スイッチング用のTFT30が設けられている。
次に、電気光学装置は、図2のA−A’線断面図たる図3に示すように、例えば、石英基板、ガラス基板、シリコン基板からなるTFTアレイ基板10と、これに対向配置される、例えばガラス基板や石英基板からなる対向基板20とを備えている。
TFTアレイ基板10の側には、図3に示すように、前記の画素電極9aが設けられており、その上側には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜16が設けられている。画素電極9aは、例えばITO膜等の透明導電性膜からなる。他方、対向基板20の側には、その全面に渡って対向電極21が設けられており、その下側には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜22が設けられている。このうち対向電極21は、上述の画素電極9aと同様に、例えばITO膜等の透明導電性膜からなり、前記の配向膜16及び22は、例えば、ポリイミド膜等の透明な有機膜からなる。このように対向配置されたTFTアレイ基板10及び対向基板20間には、後述のシール材(図17及び図18参照)により囲まれた空間に液晶等の電気光学物質が封入され、液晶層50が形成される。液晶層50は、画素電極9aからの電界が印加されていない状態で配向膜16及び22により所定の配向状態をとる。液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した電気光学物質からなる。シール材は、TFT基板10及び対向基板20をそれらの周辺で貼り合わせるための、例えば光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂からなる接着剤であり、両基板間の距離を所定値とするためのグラスファイバー或いはガラスビーズ等のスペーサが混入されている。
一方、TFTアレイ基板10上には、前記の画素電極9a及び配向膜16の他、これらを含む各種の構成が積層構造をなして備えられている。この積層構造は、図3に示すように、下から順に、下側遮光膜11aを含む第1層、TFT30及び走査線3a等を含む第2層、蓄積容量70及びデータ線6a等を含む第3層、シールド層400U等を含む第4層、前記の画素電極9a及び配向膜16等を含む第5層(最上層)からなる。また、第1層及び第2層間には下地絶縁膜12が、第2層及び第3層間には第1層間絶縁膜41が、第3層及び第4層間には第2層間絶縁膜42が、第4層及び第5層間には第3層間絶縁膜43が、それぞれ設けられており、前述の各要素間が短絡することを防止している。また、これら各種の絶縁膜12、41、42及び43には、例えば、TFT30の半導体層1a中の高濃度ソース領域1dとデータ線6aとを電気的に接続するコンタクトホール等もまた設けられている。以下では、これらの各要素について、下から順に説明を行う。
まず、第1層には、例えば、Ti(チタン)、Cr(クロム)、W(タングステン)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)等の高融点金属のうちの少なくとも一つを含む、金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、これらを積層したもの等からなる下側遮光膜11aが設けられている。この下側遮光膜11aは、平面的にみて格子状にパターニングされており、これにより各画素の開口領域を規定している(図2参照)。また、この下側遮光膜11aについては、その電位変動がTFT30に対して悪影響を及ぼすことを避けるために、画像表示領域からその周囲に延設して定電位源に接続するとよい。
次に、第2層として、TFT30及び走査線3aが設けられている。TFT30は、図3に示すように、LDD(Lightly Doped Drain)構造を有しており、その構成要素としては、上述したようにゲート電極として機能する走査線3a、例えばポリシリコン膜からなり走査線3aからの電界によりチャネルが形成される半導体層1aのチャネル領域1a’、走査線3aと半導体層1aとを絶縁するゲート絶縁膜を含む絶縁膜2、半導体層1aにおける低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1c並びに高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1eを備えている。
なお、TFT30は、好ましくは図3に示したようにLDD構造をもつが、低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1cに不純物の打ち込みを行わないオフセット構造をもってよいし、走査線3aの一部からなるゲート電極をマスクとして高濃度で不純物を打ち込み、自己整合的に高濃度ソース領域及び高濃度ドレイン領域を形成するセルフアライン型のTFTであってもよい。また、第1実施形態では、画素スイッチング用TFT30のゲート電極を、高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1e間に1個のみ配置したシングルゲート構造としたが、これらの間に2個以上のゲート電極を配置してもよい。このようにデュアルゲート、あるいはトリプルゲート以上でTFTを構成すれば、チャネルとソース及びドレイン領域との接合部のリーク電流を防止でき、オフ時の電流を低減することができる。さらに、TFT30を構成する半導体層1aは非単結晶層でも単結晶層でも構わない。単結晶層の形成には、貼り合わせ法等の公知の方法を用いることができる。半導体層1aを単結晶層とすることで、特に周辺回路の高性能化を図ることができる。
以上説明した下側遮光膜11aの上、かつ、TFT30の下には、例えばシリコン酸化膜等からなる下地絶縁膜12が設けられている。下地絶縁膜12は、下側遮光膜11aからTFT30を層間絶縁する機能のほか、TFTアレイ基板10の全面に形成されることにより、TFTアレイ基板10の表面研磨時における荒れや、洗浄後に残る汚れ等で画素スイッチング用のTFT30の特性変化を防止する機能を有する。
さて、前述の第2層に続けて第3層には、蓄積容量70及びデータ線6aが設けられている。蓄積容量70は、TFT30の高濃度ドレイン領域1e及び画素電極9aに接続された画素電位側容量電極としての中継層71と、固定電位側容量電極としての容量電極400Dとが、誘電体膜75を介して対向配置されることにより形成されている。この蓄積容量70によれば、画素電極9aにおける電位保持特性を顕著に高めることが可能となる。また、第1実施形態に係る蓄積容量70は、図2の平面図を見るとわかるように、画素電極9aの形成領域にほぼ対応する光透過領域には至らないように形成されているため(換言すれば、遮光領域内に収まるように形成されているため)、電気光学装置全体の画素開口率は比較的大きく維持され、これにより、より明るい画像を表示することが可能となる。なお、この蓄積容量70、及びこれと同層として形成されているデータ線6aに関する構成については、後に改めて詳しく触れることとする。
以上説明したTFT30ないし走査線3aの上、かつ、蓄積容量70ないしデータ線6aの下には、例えば、NSG(ノンシリケートガラス)、PSG(リンシリケートガラス)、BSG(ボロンシリケートガラス)、BPSG(ボロンリンシリケートガラス)等のシリケートガラス膜、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等、あるいは好ましくはNSGからなる第1層間絶縁膜41が形成されている。そして、この第1層間絶縁膜41には、TFT30の高濃度ソース領域1dとデータ線6aとを電気的に接続するコンタクトホール81が開孔されている。また、第1層間絶縁膜41には、TFT30の高濃度ドレイン領域1eと蓄積容量70を構成する中継層71とを電気的に接続するコンタクトホール83が開孔されている。
なお、これら二つのコンタクトホールのうち、コンタクトホール81の形成部分では、後述の誘電体膜75が形成されないように、換言すれば、該誘電体膜75に開口部が形成されるようになっている。これは、該コンタクトホール81においては、中継層71を介して、高濃度ソース領域1b及びデータ線6a間の電気的導通を図る必要があるためである。ちなみに、このような開口部が誘電体膜75に設けられていれば、TFT30の半導体層1aに対する水素化処理を行うような場合において、該処理に用いる水素を、該開口部を通じて半導体層1aにまで容易に到達させることが可能となるという作用効果を得ることも可能となる。
また、第1実施形態では、第1層間絶縁膜41に対しては、約1000℃の焼成を行うことにより、半導体層1aや走査線3aを構成するポリシリコン膜に注入したイオンの活性化を図ってもよい。
さて、前述の第3層に続けて第4層には、シールド層400Uが形成されている。このシールド層400Uは、平面的にみると、図2に示すように、図中Y方向に延在するように形成されている。より具体的には、シールド層400Uは、データ線6aに沿うように図中Y方向に沿って延び且つ該データ線6aよりも幅広に形成された本線部と、該シールド層400Uと前述の蓄積容量70を構成する固定電位側容量電極である容量電極400Dとを電気的に接続する、後述のコンタクトホール801に対応する箇所が突出した突出部とを備えている。また、このシールド層400Uは、画素電極9aが配置された画像表示領域10aからその周囲に延設され、定電位源と電気的に接続されることで、固定電位とされている。なお、ここに述べた「定電位源」としては、データ線駆動回路101に供給される正電源や負電源の定電位源でもよいし、対向基板20の対向電極21に供給される定電位源でも構わない。なお、このシールド層400Uに関する構成については、前述において後に説明を譲った蓄積容量70等の構成に関する説明とともに、後に改めて詳しく触れることとする。
以上説明した前述のデータ線6aの上、かつ、シールド層400Uの下には、NSG、PSG、BSG、BPSG等のシリケートガラス膜、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等、あるいは好ましくはNSGからなる第2層間絶縁膜42が形成されている。この第2層間絶縁膜42には、前記のシールド層400Uと容量電極400Dとを電気的に接続するためのコンタクトホール801、及び、画素電極9aと中継層71とを電気的に接続するためのコンタクトホール85がそれぞれ開孔されている。
なお、第2層間絶縁膜42に対しては、第1層間絶縁膜41に関して前述したような焼成を行わないことにより、容量電極400Dの界面付近に生じるストレスの緩和を図るようにしてもよい。
最後に、第5層には、上述したように画素電極9aがマトリクス状に形成され、該画素電極9a上に配向膜16が形成されている。そして、この画素電極9a下には、NSG、PSG、BSG、BPSG等のシリケートガラス膜、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等、あるいは好ましくはBPSGからなる第3層間絶縁膜43が形成されている。この第3層間絶縁膜43には、画素電極9a及び中継層71間を電気的に接続するためのコンタクトホール85が開孔されている。すなわち、コンタクトホール85は、第3層間絶縁膜43及び第2層間絶縁膜42を貫くように形成されていることになる。
また、第1実施形態では特に、第3層間絶縁膜43の表面は、CMP(Chemical Mechanical Polishing)処理等により平坦化されており、その下方に存在する各種配線や素子等による段差に起因する液晶層50の配向不良を低減する。ただし、このように第3層間絶縁膜43に平坦化処理を施すのに代えて、又は加えて、TFTアレイ基板10、下地絶縁膜12、第1層間絶縁膜41及び第2層間絶縁膜42のうち少なくとも一つに溝を掘って、データ線6a等の配線やTFT30等を埋め込むことにより、平坦化処理を行ってもよい。
(蓄積容量、シールド層及びデータ線に関する構成)
以下では、第1実施形態における蓄積容量70、シールド層400U及びデータ線6aに関する構成について、図4及び図5を参照しながら、より詳しく説明することとする。ここに図4は図2のB−B’断面図であり、図5は図2のC−C’断面図である。また、図6は、図5に対応する変形形態に係る図2のC−C’断面図である。
まず、第1実施形態においては、蓄積容量70は、既に述べたように、下部電極たる中継層71、誘電体膜75及び上部電極たる容量電極400Dから構成されている。このうち第1実施形態においては特に、上部電極たる容量電極400Dに特徴がある。
まず、該容量電極400Dは、図3から図5に示すように、データ線6aと同一膜として、すなわち製造工程段階において同時に形成されている。これにより、容量電極400D及びデータ線6aは、同一平面内で電気的に接続されることのないように、パターニング上分断されるようになっている。具体的には、データ線6aは、図2においてY方向に延在するように、且つ、画素電極9a間を縫うように、ストライプ状に形成されているとともに、容量電極400Dは、図2中X方向に延在し、画素電極9a間を縫うように、且つ、相隣接するデータ線6a間にのみ存在するように、略四辺形状のものが島状に形成されている。なお、この略四辺形状には、コンタクトホール85に対応するように括れ部が形成されている。
また、これら容量電極400D及びデータ線6aは、図3乃至図5に示すように、下層に導電性ポリシリコン膜A1、上層にアルミニウム膜A2の二層構造を有する膜として形成されている。このうちデータ線6aについては、前述した誘電体膜75の開口部を貫通するコンタクトホール81を介して、TFT30の半導体層1aと電気的に接続されることとなるが、該データ線6aが上述のような二層構造をとり、また後述の中継層71が導電性のポリシリコン膜からなることにより、該データ線6a及び半導体層1a間の電気的接続は、直接には、導電性のポリシリコン膜によって実現されることになる(すなわち、下から順に、半導体層1a、中継層71のポリシリコン膜、データ線6aの下層のポリシリコン膜A1及びその上層のアルミニウム膜A2ということになる。)。したがって、両者間の電気的接続を良好に保つことが可能となる。
また、容量電極400D及びデータ線6aは、光反射性能に比較的優れたアルミニウムを含み、且つ、光吸収性能に比較的優れたポリシリコンを含むことから、遮光層として機能し得る。すなわち、これらによれば、TFT30の半導体層1aに対する入射光(図3参照)の進行を、その上側で遮ることが可能である。
このような容量電極400Dは、蓄積容量70の固定電位側容量電極として機能する。容量電極400Dを固定電位とするためには、上述のように、画像表示領域10a外の定電位源に接続されることで固定電位とされたシールド層400Uと、コンタクトホール801を介して電気的に接続されることによってなされている。
ここでシールド層400Uは、既に述べたように、平面的に見ると、図2中Y方向に延在する本線部と、前記コンタクトホール801に対応する箇所に突出する突出部とを有し、一本一本のデータ線6aに対応するように、その一本一本が形成されるようになっている。また、このシールド層400Uの幅は、データ線6aの幅よりも広い。以上の結果、シールド層400Uは、データ線6aを覆うようにして形成されていることになり、これにより、該データ線6aと画素電極9aとが直接的に対向するような部分をなくしている。
また、このシールド層400Uは、アルミニウムからなる。これにより、該シールド層400Uは低抵抗化されているため、該シールド層が高抵抗である場合に懸念される、クロストークや焼き付き等を発生させるおそれがなくなり、より高品質の画像を表示することができる。
以上のほか、第1実施形態に係る蓄積容量70は、前述の容量電極400Dの下に、誘電体膜75、中継層71の二つの要素を備えている。より詳細には、中継層71は、例えば導電性のポリシリコン膜からなり画素電位側容量電極として機能する。ただし、中継層71は、金属又は合金を含む単一層膜又は多層膜から構成してもよい。また、この中継層71は、画素電位側容量電極としての機能のほか、コンタクトホール83及び85を介して、画素電極9aとTFT30の高濃度ドレイン領域1eとを中継接続する機能をもつ。中継層71は、平面的にみると、図2に示すように、略T字型の形状を有している(すなわち、図2中、X方向にT字型の縦棒が、Y方向にその横棒が延在するような形状となっている。)。
誘電体膜75は、図3に示すように、例えば膜厚5〜200nm程度の比較的薄いHTO(High Temperature Oxide)膜、LTO(Low Temperature Oxide)膜等の酸化シリコン膜、あるいは窒化シリコン膜等から構成される。蓄積容量70を増大させる観点からは、膜の信頼性が十分に得られる限りにおいて、誘電体膜75は薄いほどよい。また、容量増大という観点からは、誘電体膜の誘電率εは大きいほどよい。したがって、高誘電率材料を用いることが好ましいと考えられるが、そのような材料としては例えば、TaOx(酸化タンタル)、BST(チタン酸ストロンチウムバリウム)、PZT(チタン酸ジルコン酸塩)、TiO2(酸化チタン)、ZiO2(酸化ジルコニウム)、HfO2(酸化ハフニウム)及びSiON(酸窒化シリコン)及びSiN(窒化シリコン)のうち少なくとも一つを含んでなる絶縁材料等を挙げることができる。特に、TaOx、BST、PZT、TiO2、ZiO2及びHfO2といった高誘電率材料を使用すれば、限られた基板上領域で容量値を増大できる。あるいは、SiO2(酸化シリコン)、SiON(酸窒化シリコン)及びSiNといったシリコンを含む材料を使用すれば、層間絶縁膜等におけるストレス発生を低減できる。
さらに、この誘電体膜75は、場合により、複数の構造を有するように構成してもよい。例えば、下層に酸化シリコン膜、上層に窒化シリコン膜という二層構造をとると好適である。これにより、比較的誘電率の大きい窒化シリコン膜が存在することにより、蓄積容量70の容量値を増大させることが可能となる他、それにもかかわらず、酸化シリコン膜が存在することにより、蓄積容量70の耐圧性を低下せしめることがない。このように、誘電体膜75を二層構造とすることにより、相反する二つの作用効果を享受することが可能となる。また、窒化シリコン膜が存在することにより、TFT30に対する水の浸入を未然に防止することが可能となっている。これにより、第1実施形態では、TFT30におけるスレッショルド電圧の上昇という事態を招来することがなく、比較的長期の装置運用が可能となる。なお、第1実施形態では、誘電体膜75は、二層構造を有するものとなっているが、場合によっては、例えば酸化シリコン膜、窒化シリコン膜及び酸化シリコン膜等というような三層構造や、あるいはそれ以上の積層構造を有するように構成してもよい。
以上のように、第1実施形態に係る電気光学装置においては、容量電極400Dは、シールド層400Uとは別の層に形成されており、該容量電極400Dが、蓄積容量70の一方電極を含み、他方電極は、容量電極400Dに対向するように形成された中継層71に含まれることになる。すなわち、上述の容量電極400D及び中継層71は、それぞれ、本発明にいう「導電層」及び「他の導電層」に該当することになる。なお、第1実施形態に係る電気光学装置では特に、上述のように、「導電層」たる容量電極400Dはデータ線6aと同一層として形成されている。
このような構成となる第1実施形態の電気光学装置においては、次のような作用効果が奏されることになる。すなわち、まず、第1実施形態の電気光学装置では、データ線6aに沿うようにして固定電位のシールド層400Uが形成されていることにより、該データ線6a及び画素電極9a間に寄生容量を生じさせることが殆どない。すなわち、データ線6aの通電によって、画素電極9aにおける電位変動等が生じる可能性を低減することが可能となり、画像上に該データ線6aに沿った表示ムラ等を発生させることなどない、より高品質な画像を表示することが可能となる。
また、第1実施形態においては、シールド層400Uに接続された導電層たる容量電極400Dが、蓄積容量70の上部電極を構成していることから、TFTアレイ基板10上の積層構造の簡易化・簡略化を実現することができる。また、同じ理由により、積層構造中におけるシールド層400U及び蓄積容量70の配置を、よりコンパクトに、あるいはより好適に実現することができる。この点、第1実施形態では特に、容量電極400Dはデータ線6aと同一層として形成されていることから、積層構造の更なる簡略化等が図られている。すなわち、第1実施形態では、下から順に、蓄積容量70(中継層71、誘電体膜75及び容量電極400D)、第2層間絶縁膜42及びシールド層400Uという簡易な構造を実現することができる。
なお、上述において、シールド層400Uは、アルミニウムからなるものとされていたが、本発明はこのような形態に限定されるものではない。すなわち、本発明において、シールド層は、データ線6a及び画素電極9a間のデカップリングを行う機能を最低限もてばよいから、基本的には、固定電位となりえる材料であれば何を選択してもよい。
また、場合によっては、シールド層は積層体を構成してもよい(後述の第2実施形態、参照)。より具体的には、図3等において、アルミニウム膜及び窒化チタン膜という二層構造をとると好ましい。これによれば、まず、該シールド層はアルミニウムを含むから、上述と同様に低抵抗化を図ることが可能である。また、水分をせき止める作用に比較的優れた窒化チタン膜が存在することにより、TFT30の半導体層1a等に対して、水分が浸入していくことを未然に防止することが可能となる。これにより、TFT30の寿命を長期化することが可能となり、比較的長い間、安定した装置運用を行うことができる。
また、このようなシールド層は、光反射性能に比較的優れたアルミニウムを含み、且つ、光吸収性能に比較的優れた窒化チタンを含むことから、遮光層として機能し得る。すなわち、TFT30の半導体層1aに対する入射光(図2参照)の進行を、その上側でさえぎることが可能となるのである。ちなみに、このようなことについては、既に述べたように、容量電極400D及びデータ線6aについても同様にいえる。このように、第1実施形態においては、これらシールド層400U、容量電極400D及びデータ線6aが、TFTアレイ基板10上に構築される積層構造の一部をなしつつ、TFT30に対する上側からの光入射を遮る上側遮光膜(あるいは、「積層構造の一部」を構成しているという点に着目すれば「内蔵遮光膜」)として機能しうる。なお、この「上側遮光膜」ないし「内蔵遮光膜」なる概念によれば、上述の構成のほか、走査線3a等もまた、それに含まれるものとして考えることができる。要は、最も広義に解すれば、TFTアレイ基板10上に構築される不透明な材料からなる構成であれば、「上側遮光膜」ないし「内蔵遮光膜」と呼びうる。
そして、このような「上側遮光膜」という概念には、比較的光吸収性に優れたポリシリコンを含み得る前述の中継層71もまた含まれ得る。この点、第1実施形態における中継層71は、既に述べたように、平面的に見て、略T字型の形状を有する、より具体的には、図2において、チャネル領域1a’の上下両方向に該中継層71が存在しこれを覆うように形成されていることから、該中継層71は、上側遮光膜として如何ない機能を発揮することが可能となる。
なお、これに関連して、本発明においては、上述の図5に示すような構成に代えて、図6に示すような構成を採用してもよい。すなわち、中継層71において、図2中、半導体層1a中の下方向に延びる部分を省略する構成である。この場合、該中継層71は、平面的に見て、略L字型の形状を有することとなる。このような場合、上述のような上側遮光膜としての機能は、ある程度、削減されることになるが、該中継層71は、蓄積容量70の他方電極としての機能(すなわち、容量電極400Dと対向する部分が存在すればよい。)と、TFT30及び画素電極9a間の電気的中継を行う機能(すなわち、コンタクトホール83の位置に対応する部分が存在すればよい。)とを備えればよいということからすると、前記の省略された部分は必須ではないから、特段の支障が生じるわけではない。
(第2実施形態)
以下では、本発明の第2の実施形態について、図7及び図8を参照しながら説明する。ここに図7及び図8は、それぞれ、図2及び図3と同趣旨の図であって、TFTアレイ基板10上に構築される積層構造の態様が異なるものを示している。なお、この第2実施形態の電気光学装置の画素部における構成等については、前述の第1実施形態の電気光学装置と略同様であるので、以下では、両者間で実質的に同一、あるいは重複する部分については、その説明を省略乃至簡略化することとし、第2実施形態に特徴的な部分についてのみ主に説明を加えることとする。また、以下で参照する図面において、前記の「実質的に同一、あるいは重複する」要素を指示する場合には、上述の図1から図6までに使用した符号と同一の符号を用いることとする。
第2実施形態では、図7及び図8に示すように、第1実施形態と比較して、第2中継層402が設けられている点、及び、蓄積容量70Aとデータ線6a’の配置態様が大きく異なる。より詳しくは、図7及び図8においてまず、第4層には、本発明にいう「中継層」の一例たる第2中継層402がシールド層400Vと同一膜として形成されている。この第2中継層402は、蓄積容量70Aの下部電極たる中継層71と、第2層間絶縁膜42に穿設されたコンタクトホール851を介して電気的に接続されているとともに、画素電極9aと、第3層間絶縁膜43に穿設されたコンタクトホール89を介して電気的に接続されている。なお、これら第2中継層402及びシールド層400V間は、前述の容量電極400D及びデータ線6aと同様に、平面形状的に連続して形成されているのではなく、両者間はパターニング上分断されるように形成されている。他方、これら第2中継層402及びシールド層400Vは、上層に窒化チタン膜、下層にアルミニウム膜という二層構造を備えている。
以上のような構造により、第2実施形態では、まず、第1実施形態のように比較的深いコンタクトホール85を形成する必要がなく、比較的浅いコンタクトホール89及び851を形成すればよいことになる。したがって、一般にコンタクトホール形成工程が電気光学装置の生産性に影響を及ぼす(いわば、「律速工程」ともいえる。)ことを鑑みるに、第2実施形態においては、この点において有利であることになる。また、第2中継層402が、上述のような二層構造を有することにより、ITOからなる画素電極9aと直接的に接触することとなるのは、窒化チタン膜ということになる。したがって、第2実施形態においては、両者間にいわゆる電食を生じさせるおそれを低減することができる。ここに電食とは、ITOとアルミニウム等が直接に接触することにより、後者において断線(侵食)を生じさせたり、該アルミニウム内にアルミナ等が形成されることにより絶縁を生じさせたりする現象である。第2実施形態では、このような現象の発生を抑制することができるから、ほぼ常に、画素電極9a及びTFT30間の電気的導通を良好に維持することが可能となる。なお、このような二層構造をシールド層400Vが採っていることにより、低抵抗化及びTFT30の耐湿性向上(水分浸入防止作用)が見込めることは、上記第1実施形態と同様である。
一方、図8においては、蓄積容量70A及びデータ線6a’が、第3層に同一膜として形成されている点については上記第1実施形態と同様であるが、両構成要素の平面的な形状が異なっている。すなわち、蓄積容量70Aを構成する容量電極300は、図7に示すように、走査線3aの形成領域に重なるように、且つ図中X方向に沿って分断されつつ形成されており、データ線6a’は、半導体層1aの長手方向に一致するように、換言すれば図中Y方向に延在するように形成されている。更に詳しくは、容量電極300は、走査線3aに沿って延びる本線部と、図中、半導体層1aと交差する個所から該半導体層1aに沿って突出した突出部と、前述のコンタクトホール851に対応する個所が僅かに括れた括れ部とを備えている。このうち突出部は、蓄積容量70Aの形成領域の増大に貢献する。他方、データ線6a’は、図中Y方向に沿って延びる本線部と、コンタクトホール81に対応する箇所が突出した突出部とを備えている。このうちデータ線6a’の本線部は、画素電極9a間の間隙の中央からみると、図2においてやや左寄りに位置している。
容量電極300及びデータ線6aがこのような平面形状を有することにより、第1実施形態と比べると明らかなように、蓄積容量70Aの面積が相対的に増大していることがわかる。また、第2実施形態では、蓄積容量70Aの下部電極とデータ線6a’とは直接的には重なり合うことなく構成されることになる。すなわち、第1実施形態においては、その平面形状が略T字型の中継層71が存在し且つ同一幅のデータ線6aが図2中Y方向に延在していたため、該中継層71の直上にデータ線6aが形成されるような形となっていたが(図3及び図5参照)、第2実施形態では、データ線6a’が、容量電極300の面積増大に対応するように、画素電極9aの間隙の中央から見て図2においてやや左寄りに、あるいは大きく括れる形で形成されているため、中継層71、誘電体膜75及びデータ線という積層構造が形成されないようになっているのである。
以上のことにより、第2実施形態では、まず、第1実施形態に比べて、蓄積容量70Aの容量値が相対的に増大することから、画素電極9aにおける電位保持特性をよりよく向上させることができる。また、第2実施形態では、中継層71、誘電体膜75及びデータ線という積層構造が形成されないようになっていることから、当該部分における無用な寄生容量を形成するおそれがない。仮に、このような寄生容量が形成されると、データ線に対する通電により、中継層71の電位変動をもたらすおそれがあり、あるいは中継層71に対する通電により、データ線に対する電位変動をもたらすおそれがある。第2実施形態では、前記の寄生容量が形成されないから、このような影響を可能な限り排除することが可能となり、より高品質な画像を表示することができるのである。
ただし、第2実施形態においては、このような作用効果を得る代償として、データ線6a’の線幅が相対的に小さくなる。したがって、一般的には、データ線6a’の相対的な高抵抗化を招くことにはなるが、該データ線6a’は、上述のようにアルミニウムを含むことにより、相当程度の狭小化を行っても、十分に低い抵抗値を実現することができる。よって、画像信号の供給に支障が生じるというおそれは小さい。
ただ、第1及び第2実施形態でデータ線6a及び6a’が同一材料からなる場合においては、後者の方が相対的に高抵抗化することは否定できない。要するに、第1及び第2実施形態は、それぞれ、固有の作用効果を奏する形態と捉えることが可能であり、いずれを選択するかは、装置の仕様、使用環境、当該電気光学装置が組み込まれることとなる電子機器の種類等によって、適宜決められることになる。
(第3実施形態)
以下では、本発明の第3の実施形態について、図9及び図10を参照しながら説明する。ここに図9及び図10は、それぞれ、図2及び図3と同趣旨の図であって、TFTアレイ基板10上に構築される積層構造の態様が異なるものを示している。なお、この第3実施形態の電気光学装置の画素部における構成等については、前述の第1実施形態の電気光学装置と略同様であるので、以下では、両者間で実質的に同一、あるいは重複する部分については、その説明を省略乃至簡略化することとし、第2実施形態に特徴的な部分についてのみ主に説明を加えることとする。また、以下で参照する図面において、前記の「実質的に同一、あるいは重複する」要素を指示する場合には、上述の図1から図6までに使用した符号と同一の符号を用いることとする。
第3実施形態では、図9及び図10に示すように、第2実施形態と比較して、蓄積容量を構成する上部電極たる容量電極300とデータ線6a''とが同一膜として形成されていない点、また、それに伴って、層間絶縁膜が増加されている(新たにもう一層、「第4層間絶縁膜44」が設けられている)点に大きな相違がある。これにより、第1実施形態における第3層には、蓄積容量70及びデータ線6aが形成されていたのに代えて、第3実施形態では、実質的に蓄積容量(符号、70B)のみが形成され、新第4層にはデータ線6a''が形成され、新第5層にはシールド層400Wが形成される形となっている。また、新第4層と新第5層との間には、新たに第4層間絶縁膜44が設けられ、第1実施形態において第5層として形成されていた画素電極9aは、第3実施形態において新しく第6層として形成されている。
第3実施形態では、このようにデータ線6a''及び容量電極300が別々の層に形成されることにより、両者間の同一平面内における電気的絶縁について配慮する必要はない。これにより、第3実施形態では、例えば、走査線3aの延在方向に一致するように容量線を形成するとともに、容量電極300は、該容量線の一部として構成することが可能となる(図9参照)。このような構成によれば、容量電極300を固定電位とするためには、上述のシールド層400Uに関して述べたと同様に、該容量線を画像表示領域10aからその周囲に延設するとともに、これを前記定電位源と接続する形態などとすればよい。ただ、シールド層400W及び容量電極300間において、図9及び図10に示すようにコンタクトホール801’及び803を形成することにより両者間を電気的に接続するのであれば、シールド層400W及び容量電極300を含む容量線のうちいずれか少なくとも一方について、上述のような定電位源との接続を図ればよい。また、このような構成であれば、シールド層400W及び容量電極300は冗長構造をとるから、仮に、シールド層400W又は容量電極300の一部について通電が不能となる箇所が生じたとしても、その影響が全体的に波及する事態を未然に回避することができる。
他方、データ線6a''と容量電極300とが別々の層に形成されていることに伴い、第3実施形態におけるシールド層400Wは、前記の第1及び第2実施形態に比べて相対的により上層に位置することになる(すなわち、データ線6a''及びシールド層400W間に第3層間絶縁膜43が形成される。)。また、該シールド層400Wと容量電極300とを電気的に接続するために、データ線6a''と同一膜として形成されたシールド層用中継層6a1が新たに形成されている。このシールド層用中継層6a1は、シールド層400Wとはコンタクトホール803を介し、容量電極300とはコンタクトホール801’を介して、それぞれ電気的に接続されている。
以上のように、第3実施形態に係る電気光学装置においては、蓄積容量70Bを構成する一方電極は容量電極300、そして容量線に含まれ、他方電極は、第1中継層711に含まれることになる。すなわち、上述の容量電極300あるいは容量線及び第1中継層711は、それぞれ、本発明にいう「導電層」及び「他の導電層」に該当することになる。
なお、この第3実施形態に係る電気光学装置においては、上述の他、本発明にいう「中継層」の一例たる第3中継層406が、シールド層400Wと同一膜として設けられている。これら第3中継層406及びシールド層400Wは、前記の第2実施形態と同様に、上層に窒化チタン膜、下層にアルミニウム膜という二層構造を有している。これにより、画素電極9aのITOとの電食の発生が防止される。そして、この第3中継層406は、コンタクトホール804を介して第2中継層402’と電気的に接続されている。ただし、ここにいう第2中継層402’は、前記の第2実施形態におけるそれとは若干意味合いが異なり、該第2中継層402’は、データ線6a''と同一膜として形成されており、したがって、上層にアルミニウム膜、下層に導電性ポリシリコン膜という二層構造を有するものとなっている。この第2中継層402’は、コンタクトホール802を介して、蓄積容量70Bの下部電極たる第1中継層711と電気的に接続されている。
そして、以上のような構造により、第3実施形態では、第1実施形態に比べて、蓄積容量70Bの容量値が相対的に増大することから、画素電極9aにおける電位保持特性をよりよく向上させることができる。また、第3実施形態では、第2実施形態と同様に、第1中継層、誘電体膜75及びデータ線という積層構造が形成されないようになっていることから、当該部分における無用な寄生容量を形成するおそれがない。ただし、第3実施形態でこのような作用効果が得られるのは、第2実施形態のようにデータ線6a’及び容量電極300の平面的形状に工夫を加えることによってではなく、両者を別々の層に形成することによってである。
なお、上述の第3実施形態においては、「導電層」たる容量電極300が、データ線6a''と同一膜として形成されていないが、本発明は、このような形態も当然にその範囲内に収めるものである。むろん、このような第3実施形態、すなわちシールド層400Wとデータ線6a''を別々の層として形成する態様を基礎として、「導電層」たる容量電極を、データ線6a''と同一膜として形成することも可能である。そのような構造を有する電気光学装置は、例えば図11及び図12に示すようなものとなる。ここに図11及び図12は、図9及び図10と同趣旨の図であって、その変形形態に係る平面図及び断面図である。
この図11及び図12において、第4層には、容量電極302とデータ線6a''とが同一層に形成されている。これに伴い、図10において第3層として形成されていた容量電極300は省略されており、また、図12における第4層には、下部電極711Aが形成されている。この下部電極711Aは、第3層に依然位置する第1中継層711とコンタクトホール801''を介して電気的に接続されている。そして、容量電極302と下部電極711Aとの間には、誘電体膜751が形成されており、これらにより蓄積容量70B’が構成されるようになっている。
なお、図12においては、第1中継層711と画素電極9aとが、コンタクトホール891を介して、直接的に接続されるようになっている。これにより、図11の平面図に示すように、図9と比べてコンタクトホールの数が減少していることに伴い、前記の容量電極302及び下部電極711Aの面積を比較的広大に(とりわけ、図中右方向に広く)とることができる。すなわち、第1中継層711と画素電極9aとを直接的に接続することによって、蓄積容量70B’の容量値の増大が図られるようになっている。また、図11及び図12における第1中継層711は、図9及び図10におけるそれと同様に、平面的に見ると略T字型を有しており、チャネル領域1a’を中心として半導体層1aを覆うように形成されている。これにより、既に述べたように、半導体層1a及び画素電極9a間の電気的接続を中継する機能を発揮する他、該半導体層1aに対する上側遮光膜として機能しうるようになっている。
そして、このような変形形態においても、上述と略同様に、第1中継層、誘電体膜及びデータ線という積層構造が形成されないから、該積層構造に起因する寄生容量が発生しないという作用効果を享受することが可能である。それに加えて、この変形形態においては、データ線6a''と容量電極302とが同一層として形成されており、上記の図9及び図10に示す形態と比べると、容量電極300の形成ないしその工程を省略することが可能となっている。したがって、本変形形態では、その分の製造工程の簡略化、製造コストの低廉化等の達成という特有の効果を得ることができる。
(第4実施形態)
以下では、本発明の第4の実施形態について、図13乃至図16を参照しながら説明する。ここに図13及び図14は、それぞれ、図2及び図3と同趣旨の図であって、TFTアレイ基板10上に構築される積層構造の態様が異なるものを示している。同様に、図15及び図16は、図4及び図5と同趣旨の図である。
なお、この第4実施形態の電気光学装置の画素部における構成等については、前述の第1実施形態の電気光学装置と略同様であるので、以下では、両者間で実質的に同一、あるいは重複する部分については、その説明を省略乃至簡略化することとし、第2実施形態に特徴的な部分についてのみ主に説明を加えることとする。また、以下で参照する図面において、前記の「実質的に同一、あるいは重複する」要素を指示する場合には、上述の図1から図6までに使用した符号と同一の符号を用いることとする。
第4実施形態では、図14によく示すように、第1実施形態と比較して、蓄積容量の構成が大きく異なる。より詳しくは、図13乃至図16において、蓄積容量70Cは、その一対の電極として、シールド層400Xと、その下層且つデータ線6a’と同一膜として形成された中継電極712とが該当し、誘電体膜として第2層間絶縁膜42’が該当することにより、形成されるようになっている。すなわち、図14と図3とを比較した場合において、具体的には、コンタクトホール801の形成が省略されている点、前記の第1及び第2実施形態において蓄積容量70及び70Aの上部電極を構成していた容量電極400D及び容量電極300の形成が省略されている点、更には、第2層間絶縁膜42’が相対的に薄く形成されている点が異なっている。
蓄積容量70Cが、このように形成されていることに対応して、前記データ線6a及び中継電極712は、平面的に見ると、図13に示すような形状を呈す。
すなわち、蓄積容量70Cを構成する中継電極712は、一個の画素電極9aの一辺に沿うように、かつ、走査線3aの形成領域に重なるように形成された本体部と、該本体部から延在しコンタクトホール83に対応する領域に突出したコンタクト部とを有している。他方、データ線6a’は、上記の第2実施形態と略同様に、画素電極9a間の間隙の中央から見ると、図13においてやや左寄りに位置しながら延在する本線部と、コンタクトホール81に対応する箇所が突出した突出部とを備えている。
また、第4実施形態においては、シールド層400Xの平面的形状も若干の変更を受けており、図13に示すように、前記の第1及び第2の実施形態においては、相隣接するシールド層400Xから対向するように突出していた突出部が、相互に接続されるような形が呈されている。要するに、第4実施形態におけるシールド層400Xは、各コンタクトホール85の形成位置に対応する括れ部をそれぞれ有しつつも、全体的に、格子状にパターニングされていることになる。このような形状は、蓄積容量70Cの形成領域の増大に貢献することになる。なお、場合によっては、前記の第1及び第2の実施形態と同様に、シールド層400Xをストライプ状に形成するようにしてよいことは勿論である。
以上のように、第4実施形態に係る電気光学装置においては、蓄積容量70Cを構成する一方電極はシールド層400Xに含まれ、他方電極は、データ線6a’と同一層として形成された中継電極712に含まれることになる。すなわち、上述の中継電極712は、本発明にいう「独立的導電層」に該当することになる。
以上のような構造により、第4実施形態では、誘電体膜75、容量電極400D、あるいは容量電極300を形成する手間が省かれる分、製造工程の簡略化、あるいは製造コストの低廉化を図ることができる。そして、これらの要素を形成しなくて済む分、積層構造の多層化を防止することができる。
また、第4実施形態では、データ線6aとシールド層400Xとの電気的絶縁を図る絶縁膜と、蓄積容量70Cを構成する誘電体膜とは、同じ第2層間絶縁膜42’がその役割を担うことになる。また、これと同時に、シールド層400Xは、前述のようにデータ線6a及び画素電極9a間の寄生容量の影響排除という役割を担うとともに、蓄積容量70Cの一方電極の役割を担うことになる。このように、第2層間絶縁膜42’及びシールド層400Xは、第4実施形態において両義的な存在になるから、これによっても、積層構造の簡易化、あるいは製造工程の簡略化等の作用効果が導かれる。
なお、このようなことから、第4実施形態に係る第2層間絶縁膜42’については、上記の第1実施形態で述べたように、高誘電率化を図るべく、例えばTaOx、BST、PZT等を使用して形成するようにしてもよいし、また、酸化シリコン膜及び窒化シリコン膜の二層構造を有するように形成してもよい。
また、前述においては、シールド層400Xは格子状に形成されていたが、このような形態は、上記の第1及び第2実施形態においても同様に採用することが可能である。ただし、これら第1及び第2実施形態においては、シールド層400Xが、蓄積容量70及び70Aの一方電極を構成していないので、その容量値増大という効果が得られるわけではない。ただ、該シールド層400Xが、上述の第2実施形態のように、窒化チタン膜を含むように形成されているのならば、TFT30の半導体層1aに対する水分浸入防止作用を、基板上のより広い面積で享受することが可能となるから、該TFT30、ひいては電気光学装置の長期運用が可能となるという利点は得られる。
さらに、第4実施形態においては、上述のように蓄積容量70Cを構成するとしても、それに加えて、該蓄積容量70Cの積層構造中下方に、他の蓄積容量を構成するようにしてもよい。これによれば、電気光学装置全体としての蓄積容量の容量値の増大化を図ることができる。
この点特に、シールド層400X及び中継電極712を一対の電極として蓄積容量70Cが構成される場合においては、上述のように、該中継電極712と同一層としてデータ線6a’が形成されていることにより、該蓄積容量70Cの誘電体膜たる第2層間絶縁膜42’の薄膜化によりその容量値の増大を図るにあたっては、少なくとも前記データ線6a’の「高さ」を考慮して上で行う必要があり、それには相応の限界があることを鑑みるに、本構成に係る「他の蓄積容量」の存在は、画素電極9aの電位保持特性を良好に維持することにとって大きな貢献をなし得る。
なお、これを実現するためには、例えば、次のような構成を採ることが可能である。すなわち、中継電極71に適当な箇所に括れ部、或いは開口部を設けるとともに、該括れ部、或いは開口部を通過するように第1層間絶縁膜41に新たなコンタクトホールを穿設することで、シールド層400Xと電気的に接続された導電層を、絶縁層2の上に設ける。一方、半導体層1aを適当に延設することで延設部分を設ける。そして、前記導電層、絶縁層2及び延設部分によって、前記「他の蓄積容量」を構成するというものである。
(電気光学装置の全体構成)
以上のように構成された各実施形態における電気光学装置の全体構成を図17及び図18を参照して説明する。なお、図17は、TFTアレイ基板をその上に形成された各構成要素とともに対向基板20の側からみた平面図であり、図18は図17のH−H’断面図である。
図17及び図18において、本実施形態に係る電気光学装置では、TFTアレイ基板10と対向基板20とが対向配置されている。TFTアレイ基板10と対向基板20との間には、液晶50が封入されており、TFTアレイ基板10と対向基板20とは、画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されている。
シール材52は、両基板を貼り合わせるため、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、紫外線、加熱等により硬化させられたものである。また、このシール材52中には、本実施形態における液晶装置がプロジェクタ用途のように小型で拡大表示を行う液晶装置であれば、両基板間の距離(基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ、あるいはガラスビーズ等のギャップ材(スペーサ)が散布されている。あるいは、当該液晶装置が液晶ディスプレイや液晶テレビのように大型で等倍表示を行う液晶装置であれば、このようなギャップ材は、液晶層50中に含まれてよい。
シール材52の外側の領域には、データ線6aに画像信号を所定のタイミングで供給することにより該データ線6aを駆動するデータ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられており、走査線3aに走査信号を所定のタイミングで供給することにより、走査線3aを駆動する走査線駆動回路104が、この一辺に隣接する二辺に沿って設けられている。
なお、走査線3aに供給される走査信号遅延が問題にならないのならば、走査線駆動回路104は片側だけでもよいことは言うまでもない。また、データ線駆動回路101を画像表示領域10aの辺に沿って両側に配列してもよい。
TFTアレイ基板10の残る一辺には、画像表示領域10aの両側に設けられた走査線駆動回路104間をつなぐための複数の配線105が設けられている。
また、対向基板20のコーナ部の少なくとも一箇所においては、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的に導通をとるための導通材106が設けられている。
図18において、TFTアレイ基板10上には、画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が形成された後の画素電極9a上に、配向膜が形成されている。他方、対向基板20上には、対向電極21のほか、最上層部分に配向膜が形成されている。また、液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマテッィク液晶を混合した液晶からなり、これら一対の配向膜間で、所定の配向状態をとる。
ここで、本実施形態においては特に、上記第1乃至第4実施形態として説明した電気光学装置のシールド層(400U、400V、400W又は400X)に関連して、次のような特徴がある。すなわち、前述したデータ線駆動回路101及び走査線駆動回路104内には、例えばサンプリング回路やレベルシフタ回路等を構成するものとして、図19に示すようなCMOS型のTFT35が比較的多数形成されている。ここに図19は、前述の第1実施形態における電気光学装置の画像表示領域10a内に形成されるTFT30及びシールド層400U等の構成とともに、周辺領域における前記TFT35の構成を併せて示す断面図である。
そして、本実施形態では、このTFT35の半導体層351aに電気的に接続されるべき各種電極35A、35B及び35C(むろんソース電極及びドレイン電極を含む。)の少なくとも一つが、前記のシールド層400Uと同一膜として形成されているのである(図19参照)。なお、図19においては、第1実施形態におけるシールド層400Uと、前記電極35A、35B及び35Cのうち最前者(35A)及び最後者(35C)の電極とが同時に形成される場合が例示されている。これにより、製造工程の簡略化、あるいは製造コストの低廉化等を図ることができる。また、上述の各種実施形態においてはいずれにしても、シールド層がアルミニウムを含んでいたから、これと同時に形成される前記電極35A、35B及び35Cの少なくとも一つもまた、アルミニウムを含むこととなり、その低抵抗化を実現することができる。
なお、前記のTFT35の半導体層351a、絶縁膜352、ゲート電極353a等に関しては、上述の画像表示領域10a内におけるTFT30の半導体層1a、絶縁膜2、走査線3a等と同時に形成されるようにしておけばよい。
他方、本実施形態においては、前記の第2実施形態以降のように、シールド層400V、400W又は400Xが窒化チタン膜を含む場合、該シールド層を形成する一段階たる窒化チタン膜形成工程において、図20に示すように、前述のデータ線駆動回路101及び走査線駆動回路104等が形成される周辺領域をも覆うように、これと同時に、窒化チタン膜401を形成するような態様とすると好ましい。このようにすれば、窒化チタンが有する、既に述べたような水分浸入防止作用を、データ線駆動回路101及び走査線駆動回路104等を構成する前記のTFT35についても、同様に享受することが可能となる。すなわち、該TFT35ないしその半導体層351aの耐湿性が向上するから、該TFT35のスレッショルド電圧が上昇するという事態を可及的に回避することができ、もって該TFT35、ひいては当該電気光学装置の長期運用等が可能となるのである。
なお、上記第1実施形態におけるシールド層400Uは、アルミニウムの単層構造を有していたが、既に述べたように、該シールド層400Uにおいても、第2実施形態以降で示したような二層構造を採用するようにしてよい。したがって、前記図20に示すような構造は、第1実施形態に係る電気光学装置でも全く同様に採りえる。
また、上記各種実施形態において、データ線は、アルミニウム膜及び導電性ポリシリコン膜の二層構造を有していたが、本発明においては、該データ線が、前記のような窒化チタン膜を含む構成をとってもよい。すなわち、例えば、図3等において、下から順に、アルミニウム膜及び窒化チタン膜を含む二層構造としたり、導電性ポリシリコン膜、アルミニウム膜及び窒化チタン膜の三層構造としたりすることが可能である。この場合においては、該データ線を構成すべき当該窒化チタン膜の形成工程において、図20に示すような構造を同時に形成するようにすることが可能である。要は、図20に示すような構造の形成は、画像表示領域10a内における窒化物を含む膜を含む構成を形成する段階と同時に、これを行うようにすればよいのである。
なお、TFTアレイ基板10上には、これらのデータ線駆動回路101、走査線駆動回路104等に加えて、複数のデータ線6aに画像信号を所定のタイミングで印加するサンプリング回路、複数のデータ線6aに所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該電気光学装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。
(電子機器)
次に、以上詳細に説明した電気光学装置をライトバルブとして用いた電子機器の一例たる投射型カラー表示装置の実施形態について、その全体構成、特に光学的な構成について説明する。ここに、図21は、投射型カラー表示装置の図式的断面図である。
図21において、本実施形態における投射型カラー表示装置の一例たる液晶プロジェクタ1100は、駆動回路がTFTアレイ基板上に搭載された液晶装置を含む液晶モジュールを3個用意し、それぞれRGB用のライトバルブ100R、100G及び100Bとして用いたプロジェクタとして構成されている。液晶プロジェクタ1100では、メタルハライドランプ等の白色光源のランプユニット1102から投射光が発せられると、3枚のミラー1106及び2枚のダイクロックミラー1108によって、RGBの三原色に対応する光成分R、G及びBに分けられ、各色に対応するライトバルブ100R、100G及び100Bにそれぞれ導かれる。この際、特に、B光は、長い光路による光損失を防ぐために、入射レンズ1122、リレーレンズ1123及び出射レンズ1124からなるリレーレンズ系1121を介して導かれる。そして、ライトバルブ100R、100G及び100Bによりそれぞれ変調された三原色に対応する光成分は、ダイクロックプリズム1112により再度合成された後、投射レンズ1114を介してスクリーン1120にカラー画像として投射される。
また、電気光学装置として、電気泳動装置や、EL装置等にも適用できる。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気光学装置及び電子機器もまた、本発明の技術的範囲に含まれるものである。
1a,351a…半導体層、1a’…チャネル領域、2,352…絶縁膜、3a…走査線、6a,6a’,6a''…データ線、9a…画素電極、10…TFTアレイ基板、10a…画像表示領域、11a…下側遮光膜、12…下地絶縁膜、16…配向膜、20…対向基板、21…対向電極、22…配向膜、30,35…TFT、41,42,43,44…第1〜第4層間絶縁膜、50…液晶層、70,70A,70B,70B’,70C…蓄積容量、81,82,83,801,801’,801'',85,851,89,802,803,804,891…コンタクトホール、400U,400V,400W,400X…シールド層、6a1…シールド層用中継層、400D,300…容量電極(本発明にいう「導電層」の一例に該当する)、75,751…誘電体膜、42’…誘電体膜を兼ねる第2層間絶縁膜、71…中継層、711…第1中継層、711A…下部電極、712…中継電極(本発明にいう「独立的導電層」の一例に該当する)、402…第2中継層(第2実施形態におけるもの)、402’…第2中継層(第3実施形態におけるもの)、406…第3中継層。