JP3849357B2 - 触媒温度推定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の排気通路にそなえられた触媒装置の温度を推定する、触媒温度推定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車等の車両の内燃機関には、その排気通路に、排ガス中の有害物質(HC,CO,NOX )を浄化するための三元触媒がそなえられている。さらに、希薄燃焼内燃機関には、希薄燃焼時のNOX を浄化するため、排ガス中の酸素が過剰になる酸素過剰雰囲気において機能するNOX 触媒がそなえられている。
【0003】
これらの三元触媒及びNOX 触媒の浄化能力は、その温度(触媒温度)により大きく左右される。したがって、触媒の機能状態を考慮した最適な内燃機関の制御を行なうためには、触媒温度を正確に把握することが重要となる。しかしながら、触媒温度は直接には計測することが困難であるため、間接的な方法により推定することになる。また、触媒のある部位の温度を直接計測できたとしても、他の部位は同じ温度とは限らず、やはりその部位については温度の推定が必要となる。
【0004】
この触媒温度の推定方法については、従来から様々な方法が提案されており、例えば、特開平8−284650号公報では、機関負荷と回転速度とをパラメータとして予め定常時の触媒温度を記憶しておき、定常時にはマップから検索して触媒温度を推定するとともに、運転条件が変化した時には、触媒温度が収束するまでの時定数を考慮して推定温度を追従変化させるようにした技術が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、排気温度の変化に比較して触媒温度は応答が遅いため、排気温度が変化しない定常時においてはマップから検索して触媒温度を推定できるものの、排気温度、即ち触媒温度が変化する過渡時には触媒温度は排気温度の変化に追従できず、正確な触媒温度の推定は困難になる。この点に関し、従来の技術(特開平8−284650号公報)では、過渡時には触媒温度の推定を禁止して推定精度の悪化を防止するようにしているが、過渡時の触媒温度をも正確に推定しようとするものではない。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、排気温度が変化する過渡時においても正確に触媒温度を推定できるようにした、触媒温度推定装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1記載の本発明の触媒温度推定装置では、温度検知手段により排気温度若しくは内燃機関の排気通路に設けられた触媒装置の特定部位の温度を検出又は推定するとともに、排気流量検知手段により排気通路内の排気流量を検出又は推定する。そして、平均化時間設定手段により排気流量に基づき平均化時間を設定し、第一平均化手段により平均化時間内で温度を平均して短期平均温度を算出する。さらに、第二平均化手段により連続する複数の短期平均温度を移動平均することにより触媒温度を算出する。
また、平均化時間は、触媒温度推定時点に対して直近の所要期間を複数に分けた各期間に相当する時間であり、該所要期間は、該触媒に流入した排気の該触媒温度への影響がなくなるまでの時間に相当することを特徴としている。
請求項2記載の本発明の触媒温度推定装置は、請求項1記載の触媒温度推定装置において、該平均化時間は、該平均化時間の開始時点での該排気流量に応じて該排気流量が多いほど短く該排気流量が少ないほど長く設定されることを特徴としている。
請求項3記載の本発明の触媒温度推定装置は、請求項1又は2記載の触媒温度推定装置において、該温度検知手段として、該触媒装置の近傍上流に該排気温度を推定する高温センサをそなえ、該高温センサで検知された検知温度を演算して該排気温度を推定し、前記の検知温度を演算する際には、一次応答遅れで近似することを特徴としている。
請求項4記載の本発明の触媒温度推定装置は、請求項3記載の触媒温度推定装置において、該排気流量が大きいほど大きく、小さいほど小さくなるように予め設定されたAFS係数を用いて、該排気温度から該触媒温度を演算することを特徴としている。
請求項5記載の本発明の触媒温度推定装置は、請求項3又は4記載の触媒温度推定装置において、前記の検知温度を演算する際には、ノイズ対策としてのフィルタ処理を実施することを特徴としている。
【0008】
【発明の実施形態】
以下、図面により、本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図5は、本発明の一実施形態としての触媒推定装置について示すものであり、ここでは、本触媒推定装置を希薄燃焼内燃機関に適用した場合について示している。
【0009】
図1に示すように、本触媒推定装置が適用されたエンジン(希薄燃焼内燃機関)1は、その燃焼室2に通じる吸気通路3および排気通路4を有しており、吸気通路3には、上流側から順に図示しないエアクリーナ,スロットル弁〔ここでは電子制御スロットル弁(ETV)〕6およびインジェクタ7が設けられている。また、排気通路4には、その上流側から順に排ガス浄化用のNOX 触媒〔三元触媒一体型の吸蔵型NOX 触媒(以下、単に触媒という)〕8および図示しないマフラが設けられている。インジェクタ7は吸気マニホルド部分に気筒数だけ設けられており、各燃焼室2の上部中央には点火プラグ5が設けられている。
【0010】
さらに、このエンジン1を制御するために、電子制御ユニット(ECU)20と、種々のセンサとが設けられている。本エンジン1に設けられるセンサとして、まず吸気通路3側には、そのエアクリーナ配設部分に、吸気流量を検出するカルマン渦式エアフローセンサ(AFS)10が設けられており、排気通路4側には、触媒8の上流側部分に、排気温度を検出する高温センサ(排気温度センサ)14が設けられている。さらに、その他のセンサとして、図示しないクランクシャフトの回転に同期して信号を出力するクランク角センサ15等が設けられている。
【0011】
ECU20は、運転状態に応じて空燃比や点火時期を制御する一方、その機能要素である平均化時間設定手段21,第一平均化手段22,第二平均化手段23により、触媒8の触媒温度を推定するようになっている。この触媒温度の推定は、触媒8の劣化度あるいは再生度を判定したり、また、十分に触媒機能が発揮されている状態か否か判定する上で必要になるものであり、本触媒温度推定装置では、触媒に流入する熱量、及び排気ガスと触媒との間の熱伝達率が触媒の温度変化に及ぼす影響を考慮しながら触媒温度を推定するようになっている。
【0012】
具体的に説明すると、例えば、ある時点で触媒8の触媒温度がTe1℃になっているものとする。そして、上流からTe2℃の排気ガスが触媒8に流入し(排気ガスの温度は高温センサ14により測定)、その結果、触媒温度がTe3℃に上昇したものとする。この時、触媒温度がTe1℃からTe3℃に変化するのに要する時間は、触媒8に流入する熱量と、排気ガスと触媒8との間の熱伝達率により左右される。つまり、流入する熱量が大きい程、また、熱伝達率が高い程、触媒温度の上昇速度は速くなるのである。
【0013】
そして、触媒8に流入する熱量,及び排気ガスと触媒8との間の熱伝達率は、共に単位時間当たりの排気流量(流速)により影響を受け、排気流量が多いほど同じ排気温度であっても流入する熱量も多くなり、また、熱伝達率も高くなる。このため、同じ排気温度の排気ガスであっても、その流量が少ないときは、流量が多いときに比べて触媒8に流入する熱量も少なく、熱伝達率も低くなり、触媒温度が変化するのにかかる時間も長くなる。
【0014】
本触媒温度推定装置では、上述のような触媒温度の温度変化と排気流量との関係に着目し、以下に説明するような方法により触媒温度の推定を行なうようになっている。
図2を用いて説明すると、本触媒温度推定装置では、図2(a)に示すように、時点tX における触媒温度を、ある時点t0 から時点tX までに触媒8に流入した排ガスの排気温度に基づき推定するようになっている。この時点t0 から時点tX までの時間tt0Xは、時点t0 で触媒8に流入した排ガスの触媒温度への影響がなくなるまでの時間に相当する。したがって、時点t0 から時点tX までの時間tt0Xは、排ガスの流量により変化するが、ここでは、時点t0 から時点tX までを複数(ここでは5つ)の区間(N−4,N−3,N−2,N−1,N)にわけ、各区間の時間tt(tt(N-4) ,tt(N-3) ,tt(N-2) ,tt(N-1) ,tt(N) )を排気流量(流速)に基づき設定している。なお、以下、上記の区間を平均化区間といい、その区間の時間を平均化時間という。
【0015】
つまり、定常走行時の平均的な基準排気流量における時間tt0Xを5等分して基準時間ttBASEを設定し、ある平均化区間における排気流量が基準排気流量よりも多ければ平均化時間ttを基準時間ttBASEよりも短く設定し、基準排気流量よりも少なければ基準時間ttBASEよりも長く設定するようにして、時点t0 での排気流量に基づき平均化時間tt(N-4) を設定する。次に、時点t0 から平均化時間tt(N-4) 経過後(時点t1 )における排気流量に基づき平均化時間tt(N-3) を設定する。さらに、時点t1 から平均化時間tt(N-3) 経過後(時点t2 )における排気流量に基づき平均化時間tt(N-2) を設定し、以下、順次平均化時間tt(N-1) ,tt(N) を設定していく。
【0016】
そして、各平均化時間ttを設定していくとともに、合わせて各区間内での排気温度の平均値(短期平均温度)TeAVE(TeAVE(N-4) ,TeAVE(N-3) ,TeAVE(N-2) ,TeAVE(N-1) ,TeAVE (N))を算出していく。そして、算出した各平均化区間の短期平均温度TeAVEをさらに平均化することにより、時点tX での触媒温度の推定値とする。時点tX での触媒温度の推定値が算出されると、次は、図2(b)に示すように、時点tX での排気流量に基づき、次の平均化区間(N+1)の平均化時間tt(N+1) を設定するとともに、短期平均温度TeAVE(N+1) を算出する。そして、平均化区間(N−4)は使わずに平均化区間(N−3)から平均化区間(N+1)までの5つの平均化区間の短期平均温度TeAVE(TeAVE(N-3) ,TeAVE(N-2) ,TeAVE(N-1) ,TeAVE (N),TeAVE(N+1) )を平均化することにより、時点tX+1 での触媒温度の推定値を算出する。このような短期平均温度TeAVEに対する移動平均を用いた手法により、順次触媒温度を推定更新していく。
【0017】
以下、図3に示すフローチャートを参照しながら、本触媒温度推定装置による触媒温度推定方法についてより具体的に説明する。なお、ここでは、排気流量と吸気流量とが略等しいものとして、吸気流量に相関するAFS(排気流量検知手段)10の出力(AFS周波数)と、高温センサ(温度検知手段)14で検出される排気温度とに基づき、触媒温度を推定するものとする。
【0018】
図3のフローチャートに示すように、本触媒温度推定装置では、まず、AFS10により出力されたAFS周波数を読み込み(ステップS100)、平均化時間設定手段21により、読み込んだAFS周波数に対応して今回の平均化区間(N)の平均化時間を決定する(ステップS110)。平均化時間は、排気ガスから触媒8に熱が伝達されるのに要する時間に相関するものであり、前述のように排気流量が少ない程、仮に同じ排気温度であっても単位時間あたりの排ガスの持つ熱量が小さく、触媒に伝わる熱量も小さくなり、同じ熱量が伝わるのにも時間がかかるという特性に基づき、図4に示すように、AFS周波数が大きい程短くなり、AFS周波数が小さい程長くなるように予め設定されている。
【0019】
平均化区間(N)の平均化時間が決定されると、次式に示すように、ECU20の計測周期毎にそれぞれ計測周期,排気温度,AFS周波数を積算し、計測周期積算値,排気温度積算値,AFS周波数積算値を算出していく。次式において、(n) は今回の計算周期の値、(n-1) は前回の計算周期の値であることを示している。
【0020】
計測周期積算値(n) =計測周期積算値(n-1) +計算周期
排気温度積算値(n) =排気温度積算値(n-1) +排気温度×補正係数
AFS周波数積算値(n) =AFS周波数積算値(n-1) +AFS周波数
なお、排気温度の積算時に排気温度に乗算している補正係数は、排気温度が変化しない定常時においても存在する定常誤差、例えば、高温センサ14と触媒8との位置が離れていることによるその間の熱損失や、触媒8内での反応熱等を補正するためのものであり、エンジン負荷やエンジン回転速度、或いは排気流量(AFS周波数)をパラメータとして、実験により求めるものとする(以上、ステップS120)。これらの積算処理は、計測周期積算値(n) が平均化時間以上になるまで行なう(ステップS130)。
【0021】
平均化時間,排気温度積算値,AFS周波数積算値が算出されると、次に、第一平均化手段22により、今回の平均化区間(N)における短期平均温度(N)とAFS係数(N)とを決定する。短期平均温度(N)は次式により算出される。
短期平均温度(N)=排気温度積算値/(平均化時間/計算周期)
AFS係数(N)は排気ガスから触媒への熱伝達率に相関するものであり、熱伝達率は排気流量(流速)の影響を受け前述のように排気流量(AFS周波数)が少ない程熱伝達率も低いという特性に基づき、図5に示すように、平均AFS周波数が大きい程大きく、平均AFS周波数が小さい程小さくなるように予め設定されている。なお、平均AFS周波数は、次式により算出される。
【0022】
平均AFS周波数=AFS周波数積算値/(平均化時間/計算周期)
短期平均温度(N),AFS係数(N)の決定後は、平均化時間,排気温度積算値,AFS周波数積算値をリセットする(以上、ステップS140)。
そして、第二平均化手段23により、決定した短期平均温度(N)とAFS係数(N)とに基づき、次式に示すようにして触媒温度〔図2(a)に示す場合では、時点tX での触媒温度〕を推定する。
【0023】
触媒温度=Σ〔短期平均温度(m) ×AFS係数(m) 〕/ΣAFS係数(m)
ここで、mは平均化区間の区間番号であり、図2(a)に示す場合では、mはN−4〜N,図2(b)に示す場合では、mはN−3〜N+1となる(以上、ステップ150)。ただし、始動直後等5つの平均化区間が全ては算出されていない場合には、算出されている平均化区間の短期平均温度,AFS係数から触媒温度を推定する。
【0024】
なお、触媒温度変化は、触媒容量,管形状,各材質等の影響を受けるが、ここでは、これらの影響は上記係数(補正係数,AFS係数)に既に含んでいるものとしている。したがって、エンジン,車種が異なれば上記係数はそれぞれあらためて設定するものとする。
以上、本触媒温度推定装置による触媒温度の推定方法について説明したが、このような方法により触媒温度を推定することにより、例えば、図2(a)に示す場合において時点t4 における吸気流量(AFS周波数)が少ない場合と多い場合とを比較すると、時点t4 における吸気流量が少ない場合には、吸気流量が多い場合に比べて平均化区間(N)の平均化時間tt(N) が長く設定されるので、触媒温度の算出タイミング(時点tX )は遅くなる。つまり、排気温度(短期平均温度)が同じであっても、それが触媒温度に反映されるまでに時間がかかることになるのである。
【0025】
このように本触媒温度推定装置によれば、短期平均温度の平均化区間を吸気流量(AFS周波数)によって可変とすることにより、触媒8に流入する総熱量の違いが触媒温度の時間変化に与える影響を取り入れることが可能になり、排気温度や排気流量が変化する過渡時であっても、正確に触媒温度を推定することができるという利点がある。
【0026】
さらに、高温センサ14自体についても応答遅れが存在するが、特に排気流量が多い運転域では触媒8の上流での排気温度に対する触媒温度の応答遅れが小さくなるため、高温センサ14自体の応答遅れが無視できなくなる。しかしながらこの場合には高温センサ14の応答遅れの補正を行なうようにすればよく、次のように高温センサの応答遅れを一次遅れで近似して触媒8の上流での排気温度を求めるようにすればよい。
【0027】
実際の計算では一次フィルタを用いるものとすると、高温センサ14で検知した温度と実際の触媒8の上流位置(高温センサ14の取り付け位置)での排気温度との関係は次式で表すことができる。なお、次式においてHT(n) は今回の計算周期での高温センサ値(℃)、HT(n-1) は前回の計算周期での高温センサ値(℃)、aはフィルタ定数である。
【0028】
HT(n) =(1−a)×HT(n-1) +a×排気温度
上式を変形すると排気温度を下記のように表すことができる。
排気温度=1/a×HT(n) −(1−a)/a×HT(n-1)
ここで、上式において反映係数(フィルタ定数)R〔R=(1−a)/a〕を用いると次式のようになる。
【0029】
実際には高温センサ値の出力信号に種々の要因によりノイズがのる可能性があるため、ノイズ対策として〔HT(n) −HT(n-1) 〕の代わりにフィルタ処理を実施した次式のようなΔHT(n) を使用する。なお、Kはフィルタ定数である。
【0030】
排気温度=HT(n) +R×ΔHT(n)
ΔHT(n) =K×ΔHT(n-1) +(1−K)×〔HT(n) −HT(n-1) 〕
以上のようにして高温センサ14の応答遅れを考慮した排気温度(触媒8の上流での排気温度)を求めることができ、このように求めた排気温度に基づき触媒温度の推定を行なうことにより、より正確な触媒温度の推定が可能になるという利点がある。なお、式中の係数R及びKは、いずれも実験等により求めることができる。
【0031】
また、上述の実施形態では触媒8の全体が同じ温度と仮定し、代表して触媒中央部の温度を推定しているが、実際には触媒8の各部位により温度が異なる場合が多い。その場合でも上述した触媒温度の推定方法を利用すれば、触媒8の上流での排気温度から触媒中央部の温度を推定したのと同様にして触媒8の他の部位、例えば、図6に示すように触媒前部(上流部)、触媒後部(下流部)の温度を推定することも可能である。
【0032】
この場合、図7に示すように触媒8内の熱伝導時間に相関すると考えられる平均化時間を触媒前面からの距離に比例して変更することにより、触媒中央部の温度を推定した時のパラメータから触媒前部及び後部の温度を推定することが可能になる。また、定常誤差を補正するための補正係数は図8に示すように各部位によって変更する必要があるが、熱伝達率に相当するAFS係数は変更しなくてもよい。
【0033】
したがって、本触媒温度推定装置により推定した触媒温度を用いることにより、より精度の高いエンジン制御が可能になる。例えば、本エンジン1のような希薄燃焼内燃機関では、触媒(三元触媒一体型の吸蔵型NOX 触媒)8上に吸蔵されたNOX を放出するNOX 放出制御が必要となるが、触媒8の還元機能が発揮される活性温度になる前にNOX 放出制御を実行してNOX の放出を行なうと、浄化されないNOX を大気中に放出してしまうことになる。したがって、触媒8が活性温度に達しているか否かを判定することは重要となるが、本触媒温度推定装置により推定した触媒温度を用いることにより、放出されたNOX を確実に還元できる触媒温度においてNOX 放出を行なうことが可能になる。
【0034】
また、希薄燃焼運転時には、燃料中のS(硫黄)成分から生成された排ガス中のSOX も触媒8に吸蔵されるため(S被毒)、吸蔵されたSOX を放出して触媒8の劣化を防止しNOX 浄化効率を維持するための再生制御も必要となるが、SOX の放出速度は触媒温度に対して指数関数的に増加する。したがって、触媒8の再生度合いを判断する上で触媒温度の変化の履歴は重要となるが、本触媒温度推定装置のような方法により触媒温度を推定することにより、触媒温度の変化の履歴を正確にとることができ、正確に触媒8の再生度合いを判断することが可能になる。
【0035】
さらに、本触媒温度推定装置により推定した触媒温度を触媒耐熱温度の判定に用いた場合には、確実に触媒8の熱劣化を防止することが可能になる。例えば、通常触媒8はリーン雰囲気となると熱劣化しやすくなるので、触媒8がリーン耐熱温度以上となった場合にはリーン運転を禁止すればよい。
また、耐熱温度に達するまで最適な空燃比制御が行なえるため、燃費の面でも有利である。例えば、触媒8が高温となる条件では通常、空燃比よりもリッチとして燃料気化熱による冷却を行なうが、その際触媒8の個体差や制御のバラツキを見込んでリッチ度合いは大きめに設定されているので、本推定装置により正確に触媒温度を推定することによりリッチ度合いを最適にすれば燃料を低減することができる。
【0036】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、上述の実施形態では、平均化区間の決定において、触媒8を通過する排気流量を吸気流量によって代用しているが、排気流量を直接計測するようにしてもよい。また、吸気流量の計測手段としては、カルマン渦式エアフローセンサに限定されず、それ以外のセンサや流量計を用いてもよい。さらに、エンジン負荷,エンジン回転速度が高い程、排気流量も多くなることから、エンジン負荷とエンジン回転速度とに基づき平均化時間を決定するようにしてもよい。さらに、簡略化して車速から平均化時間を決定するようにしてもよい。
【0037】
また、上述の実施形態では、三元触媒一体型のNOX 触媒をそなえたエンジンに本触媒温度推定装置を適用した場合について説明したが、三元触媒とNOX 触媒とを別々にそなえたエンジンに適用することもできる。この場合には、各触媒毎に補正係数,平均化時間,AFS係数を設定することにより、各触媒毎の触媒温度を推定することが可能になる。
【0038】
また、触媒8の上流のエンジン1に近接した位置に、主に冷態始動の排ガス浄化のために三元触媒又は酸化触媒(以下、近接触媒と言う)を設置するようにしてもよい。その際に近接触媒の温度を推定する場合には、高温センサ14により検出した排気温度を用いてもよいし、近接触媒の上流に別の高温センサを設けてそのセンサにより測定した排気温度により近接触媒の温度を推定するようにしてもよい。そして、触媒8の温度制御を行なう場合には、近接触媒の温度が耐熱温度を越えないことにも注意しながら制御すればよい。
【0039】
さらに、触媒に直接高温センサを取り付けて触媒温度を直接測定した場合にも上述した温度推定方法を適用することができる。即ち、触媒8の特定部位の温度を直接測定した場合でも触媒の他の部位は同じ温度とは限らないので、他の部位についてはやはり温度を推定することが必要となるのである。例えば、触媒前部に高温センサを取り付けた場合には、上述した実施形態と同様の方法にて触媒中央部,触媒後部の温度を推定することが可能である。
【0040】
また、上述した実施形態では、高温センサにより測定した温度に基づき触媒温度を推定しているが、特定部位の温度を高温センサで測定する代わりにエンジン運転条件によるマップ値など他の方法で推定するようにしてもよい。例えば、エンジン負荷,エンジン回転速度のマップ値を用いて推定してもよいし、車速によるマップ値を用いて推定してもよい。この場合、前記推定温度(例えば触媒入口温度)に基づき、さらに上述の実施形態の方法により過渡時の温度を推定することになるため、二段階の推定となって誤差が大きくなる可能性もあるが、高温センサを省略してコストを低減できるという利点がある。
【0041】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の触媒温度推定装置によれば、排気温度や排気流量が変化する過渡時であっても、正確に触媒温度を推定することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態にかかる希薄燃焼内燃機関の全体構成図である。
【図2】 本発明の実施形態にかかる触媒温度の推定方法を説明する図である。
【図3】 本発明の実施形態にかかる触媒温度の推定処理を示すフローチャートである。
【図4】 本発明の実施形態にかかる平均化時間のAFS周波数に対する特性を示す図である。
【図5】 本発明の実施形態にかかるAFS係数の平均AFS周波数に対する特性を示す図である。
【図6】 本発明の実施形態にかかる触媒の温度推定箇所を示す図である。
【図7】 本発明の実施形態にかかる平均化時間のAFS周波数に対する特性を示す図である。
【図8】 本発明の実施形態にかかる定常誤差を補正するための補正係数の平均AFS周波数に対する特性を示す図である。
【符号の説明】
1 エンジン(内燃機関)
8 NOX 触媒(触媒装置)
10 カルマン渦式エアフローセンサ(排気流量検知手段)
14 高温センサ(温度検知手段)
20 ECU
Claims (5)
- 内燃機関の排気通路に設けられた触媒装置と、
排気温度若しくは該触媒装置の特定部位の温度を検出又は推定する温度検知手段と、
該排気通路内の排気流量を検出又は推定する排気流量検知手段と、
該排気流量検知手段により検出又は推定された排気流量に基づき平均化時間を設定する平均化時間設定手段と、
該平均化時間設定手段により設定された平均化時間内で該温度検知手段により検出又は推定された温度を平均して短期平均温度を算出する第一平均化手段と、
該第一平均化手段により算出された連続する複数の短期平均温度を移動平均することにより触媒温度を算出する第二平均化手段とをそなえ、
該平均化時間は、触媒温度推定時点に対して直近の所要期間を複数に分けた各期間に相当する時間であり、該所要期間は、該触媒装置に流入した排気の該触媒温度への影響がなくなるまでの時間に相当する
ことを特徴とする、触媒温度推定装置。 - 該平均化時間は、該平均化時間の開始時点での該排気流量に応じて該排気流量が多いほど短く該排気流量が少ないほど長く設定される
ことを特徴とする、請求項1記載の触媒温度推定装置。 - 該温度検知手段として、該触媒装置の近傍上流に該排気温度を推定する高温センサをそなえ、
該高温センサで検知された検知温度を演算して該排気温度を推定し、
前記の検知温度を演算する際には、一次応答遅れで近似する
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の触媒温度推定装置。 - 該排気流量が大きいほど大きく、小さいほど小さくなるように予め設定されたAFS係数を用いて、該排気温度から該触媒温度を演算する
ことを特徴とする、請求項3記載の触媒温度推定装置。 - 前記の検知温度を演算する際には、ノイズ対策としてのフィルタ処理を実施する
ことを特徴とする、請求項3又は4記載の触媒温度推定装置。
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