JP3847045B2 - セラミックヒーターとその製造方法及びこれを用いたウエハ加熱装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主にウエハを加熱するのに用いるウエハ加熱装置及びこれに用いるセラミックヒーターとその製造方法に関するものであり、例えば、半導体ウエハや液晶基板あるいは回路基板等のウエハ上に半導体薄膜を生成したり、前記ウエハ上に塗布されたレジスト液を乾燥焼き付けしてレジスト膜を形成するのに好適なウェハ加熱装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、半導体製造装置の製造工程における、半導体薄膜の成膜処理、エッチング処理、レジスト膜の焼き付け処理等においては、半導体ウエハ(以下、ウエハと略す)を加熱するためにウエハ加熱装置が用いられている。
【0003】
従来の半導体製造装置は、まとめて複数のウエハを成膜処理するバッチ式のものが使用されていたが、ウエハの大きさが8インチから12インチと大型化するにつれ、処理精度を高めるために、一枚づつ処理する枚葉式と呼ばれる手法が近年実施されている。しかしながら、枚葉式にすると1回当たりの処理数が減少するため、ウエハの処理時間の短縮が必要とされている。このため、ウエハ支持部材に対して、ウエハの加熱時間の短縮、ウエハの吸着・脱着の迅速化と同時に加熱温度精度の向上が要求されていた。
【0004】
上記のようなウエハ加熱装置の例として、例えば特開平11−40330号公報に「窒化物セラミックスまたは炭化物セラミックスからなる板状体の表面に、金属粒子を焼結して形成した発熱体を設けてなることを特徴とするヒーター」が示されている。
【0005】
このセラミックヒーターは、ウエハ表面に形成された感光性樹脂を乾燥させるヒーターである。この構造を図4を用いて説明すると、セラミックスからなる均熱板32の表面に金、銀、白金、パラジウム、鉛、タングステン、ニッケルから選ばれる1種以上の金属粒子を焼結させた金属粒子焼結体34とAu、Ag、Pd、Pt、Niから選ばれる少なくとも1種以上の金属からなる金属被覆層34からなる発熱抵抗体35が形成されている。また、金属粒子焼結体34には、窒化物セラミックスおよび炭化物セラミックスに前記金属粒子を密着させるために金属酸化物を含ませることが示されている。また、窒化物セラミックスおよび炭化物セラミックスの表面に形成されている薄い酸化膜が、金属粒子表面の酸化膜および前記金属酸化物と反応して発熱抵抗体5の密着性が向上することが示されている。また、導通端子37がハンダ36により発熱抵抗体35に固定されている。そして、ウエハWはリフトピン39により均熱板32と離間して設置されることが示されている。
【0006】
窒化アルミニウム質セラミックスと炭化珪素質セラミックスは、両者とも熱伝導率が高いので均熱性を必要とする半導体ウエハ加熱装置用の均熱板32の材料としては好適であるが、感光性樹脂からなる膜をウエハWの上に形成し乾燥させる工程に使用される均熱板32の材料としては、炭化珪素質セラミックスの方が優れている。これは、窒化アルミニウム質セラミックスの場合、窒化アルミニウムが空気中の水分と反応してアンモニアガスを発生させ、これが感光性樹脂に悪影響を与えるからである。そこで、感光性樹脂の乾燥工程に使用される均熱板32としては、炭化珪素質セラミックスの方が有用である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、均熱板の基材として炭化珪素質セラミックスを用いた場合、炭化珪素質セラミックスと発熱抵抗体との間の絶縁層を形成することが困難であった。例えば、絶縁層としてAu−Pt混合粉末にガラスを混合したペーストを炭化珪素質セラミックスの表面にプリント法により形成し焼結させようとすると、発熱抵抗体に添加しているガラス成分が炭化珪素に濡れず発熱抵抗体が容易に剥離してしまうという問題があった。そこで、X線電子分校分析により、炭化珪素質セラミックスの表面をスパッタリングしながら酸化皮膜の厚みを分析してみたところ、酸化皮膜の厚みは、20〜30nm程度と非常に薄いことが判った。
【0008】
また、発熱抵抗体を形成する際に、これをプリントする絶縁層の平坦度が悪いとプリントした発熱抵抗体に厚みバラツキが発生し、これにより均熱板に温度分布が発生し、ウエハの温度が安定しないという課題があった。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の課題について鋭意検討した結果、ウェハ加熱装置を構成するセラミックヒーターとして、炭化珪素質セラミックスからなる板状体の一方の主面に、厚み0.05〜2.0μmのSiO2からなる膜と、厚み10〜600μmのガラスからなる絶縁層をこの順に備え、該絶縁層上に発熱抵抗体を備えるとともに、該発熱抵抗体と電気的に接続される給電部を具備することにより、上記課題を解決することができることを見出した。
【0010】
また、前記絶縁層の平坦度を300μm以下とすることにより、プリント形成する発熱抵抗体の厚みを所定範囲内に管理することができ、ウエハの温度制御の精度を向上させることができることが判った。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
図1は本発明のウエハ加熱装置の一例を示す断面図で、炭化珪素を主成分とするセラミックスの板状体からなる均熱板2の一方の主面を、ウエハWを載せる載置面3とするとともに、他方の主面に形成されたSiO2膜21の上にガラスからなる絶縁層4を介して発熱抵抗体5を形成し、この発熱抵抗体5と電気的に接続する給電部6を備えてセラミックヒーターを構成したものである。
【0013】
図2を用いて、さらに本発明のウエハ加熱装置の均熱板2の構造を細かく説明する。均熱板2のウエハ載置面3を除く表面には、酸化雰囲気中で熱処理することにより生成したSiO2膜21が形成されている。そして、このSiO2膜21の上にガラスからなる絶縁層4が形成され、さらにその上に、Au、Pt族金属もしくはこれらの合金からなる発熱抵抗体5が形成され、この発熱抵抗体5には給電部6が形成されてセラミックヒーターを構成してある。このセラミックヒーターを支持体11に接合し、上記給電部6に導通端子7を押圧して接続することによりウェハ加熱装置を構成している。また、ウエハWは、支持ピン22により載置面3から離間して保持される。これにより、ウエハWが均熱板2に片当たりして温度分布が悪くなるといった問題を防止している。
【0014】
前記SiO2膜21の厚みtは、0.05〜2.0μmとする。さらに好ましくは、0.1〜1.0μmとすることが好ましい。これにより、表面に形成するガラスからなる絶縁層4を炭化珪素質セラミックス表面に信頼性高く形成することが可能となる。この厚みtを0.05μm未満とすると、この上に絶縁層4となるガラス層を形成した場合に、表面のSiO2膜21がガラスに吸収され、絶縁層4に均熱板2からのハジケが発生してしまい好ましくない。また、前記SiO2膜21の厚みを2.0μmより大きくすると、SiO2膜21中にクリストバライトからなる結晶相が増えてしまい、絶縁層4の密着性が低下してしまうので好ましくない。なお、信頼性と生産性の面から考慮するとSiO2膜21の厚みtは0.1〜1.0μmとすることがさらに好ましい。
【0015】
また、SiO2膜21は、アモルファス状態であることが好ましいが、厚みが厚くなったり前記SiO2膜21を徐冷したりすると、SiO2膜21内に結晶が生成してくる。析出する結晶相としては、クォーツ、クリストバライト、トリジマイト等の結晶相が生成してくる。このうち、特にクリストバライトは、180〜270℃に大きな体積変化を伴うα相とβ相間の転移点があり、SiO2膜21にクラックを発生させるので結晶相として好ましくない。
【0016】
これに対し、本発明者等が鋭意検討した結果、SiO2膜21に含まれる結晶相であるクリストバライトの(101)面のピーク高さが炭化珪素の(102)面のピーク高さに対し10%以下であるようにすれば、良好な耐久性を示すことが判った。逆に、前記ピーク高さの割合が10%を越えると、熱サイクル試験において絶縁層4にクラックが発生したり絶縁層4が剥離し易くなり、発熱抵抗体5が断線してしまうので好ましくない。
【0017】
なお、炭化珪素の結晶相については、六方晶系であるα−炭化珪素の主ピークである(102)面を取り上げたが、実際は、炭化珪素の他の結晶系とピークが重なるものがあるが、全てを前記ピークに代表させて表記した。また、前記SiO2膜21を1470〜1570℃付近で徐冷するとトリジマイトが生成する場合がある。この場合、トリジマイトも110〜165℃付近に体積変化を伴うα相とβ相間の転移点があるので、SiO2膜21中にトリジマイトが生成することも好ましくない。
【0018】
また、図3に本発明のSiO2膜21を表面に形成した炭化珪素のX線回折ピークの一例を示した。図の左側の矢印で示したピークが、クリストバライトの主ピークである(101)面のピークであり、上にSiC(102)と記したピークが炭化珪素の(102)面のピークである。
【0019】
また、前記SiO2膜21を形成する方法については、炭化珪素質セラミックスからなる均熱板2を平坦度100μm以下に研磨した後、酸化雰囲気中1200〜1600℃で1〜12時間処理し、冷却過程において少なくとも1000〜600℃を200℃/時間より速い速度で冷却することにより、前記のようにクリストバライト結晶の生成を抑えたSiO2膜21を形成することができる。
【0020】
また、SiO2膜21中の酸素の拡散は非常に遅いので、本発明の請求範囲相当の厚みのSiO2膜21を炭化珪素質セラミックスからなる均熱板2の表面に形成するには、このように、高温の酸化雰囲気中で熱処理を施すことが必要である。
【0021】
そして、酸化雰囲気中の熱処理により形成したSiO2膜21のうち、載置面3側の膜は、研磨により除去する。
【0022】
また、ガラスからなる絶縁層4は、厚みを10〜600μmとする。この厚みが10μm以下であると、均熱板2と発熱抵抗体5との間の電気的な絶縁が不十分となる。また、前記厚みが600μm以上となると、ガラスは熱伝導率が低いので、発熱抵抗体5からウエハW載置面3への熱伝達が遅くなってしまうので好ましくない。
【0023】
このガラスからなる絶縁層4の表面は、平坦度が300μm以下であることが望ましい。これは、もし平坦度が300μmより大きいと、絶縁層4の表面に発熱抵抗体5をプリント法により形成する際に、厚みバラツキが生じて発熱抵抗体5の抵抗分布が崩れてしまうからである。
【0024】
ガラスからなる絶縁層4の平坦度を300μm以下とするためには、均熱板2の絶縁層4を塗布する側の炭化珪素質セラミックスの平坦度を300μm以下とすると同時に、炭化珪素質セラミックスの熱膨張率3.9×10-6deg-1に対し、ガラスの熱膨張率を3.0〜3.6×10-6deg-1とすることが必要である。これは、ガラスが焼結する際の収縮による応力が焼き付けの際の熱処理では十分緩和されず、絶縁層4側が凹となるような反りが残留しやすいからである。このように、ガラスの熱膨張率を炭化珪素質セラミックスの熱膨張率より小さくすることにより均熱板2の反りを低減することが、平坦度を向上させるのに有効である。
【0025】
また、前記絶縁層4の平坦度が300μmより大きい場合は、予め膜厚を管理した発熱抵抗体5を転写シートに形成しておき、該発熱抵抗体5を転写により絶縁層4上に形成することによって発熱抵抗体5の厚みを均一とし、均熱板2を均一に加熱することができるようにする。
【0026】
また、ガラスからなる絶縁層4は、プリントもしくは転写により一定厚みの膜を形成し、そのガラスの作業点以上の温度で熱処理することにより形成する。ガラスの熱膨張率は、炭化珪素の熱膨張率3.9×10-6deg-1より若干小さな3.0〜3.6×10-6deg-1程度にすることが好ましい。これは、ガラスが焼結し溶融する際に、その収縮による応力を十分緩和し切っておらず、収縮による応力が反りの形で残留しているため、この分を吸収するためガラスの熱膨張率を炭化珪素に較べ若干小さくする。この結果、ガラスに残留する応力が圧縮応力となるので、熱応力に対しクラックが発生し難くなるからである。
【0027】
さらに、発熱抵抗体5は、絶縁層4との密着性を高めるためガラスを含み、このガラスの軟化点が、絶縁層4に含まれるガラスの転移点より低いことが発熱抵抗体5の加工精度を向上させる上で好ましい。ガラスは転移点以上の温度では高粘度の粘性流体であると考えられる。このため、絶縁層4に含まれるガラスの転移点より発熱抵抗体5に含まれるガラスの軟化点を低くし、発熱抵抗体5の焼き付け時に、基材となる絶縁層4に影響がでないようにする。
【0028】
発熱抵抗体5のパターン形状としては、円弧状の電極部と直線状の電極部とからなる略同心円状をしたものや渦巻き状をしたものなど、載置面3を均一に加熱できるパターン形状であれば良い。均熱性を改善するため、発熱抵抗体5を複数のパターンに分割することも可能である。また、発熱抵抗体5としては、金や銀、パラジウム、白金族の金属等の材質のものを使用することができる。また、必要に応じて発熱抵抗体をトリミングすることにより、均熱性を向上させる。
【0029】
また、ウエハ載置面3の赤外線放射率は80%以上であることが好ましい。これにより、均熱板2の熱が載置面3から赤外線および遠赤外線でウエハWに高効率で放射されるので、載置面3表面の温度が一定になりやすく、また、ウエハWの加熱効率が高くなる。
【0030】
炭化珪素質セラミックスには、炭素と炭化硼素を焼結助剤として用いる系とAl2O3およびY2O3を添加する系、また、Siの成形体を炭素系ガス中で処理して炭化する反応焼結により形成した系等がある。炭素を添加した系は、炭素が残留するので一般的には黒くなり、また、Al2O3およびY2O3を添加した系は、炭化珪素にAlが固溶することにより黒くなるので、このような操作を管理することにより赤外線放射率を80%以上にすることができる。また、反応焼結により作製した炭化珪素は、反応焼結の状態により色が黄緑色から灰色になる場合がある。この場合、赤外線放射率の高い材料、例えば、コージライトを溶射したり、CVD等の手法を用いて表面に炭化珪素からなる皮膜を形成することにより赤外線放射率を80%以上にすることができる。
【0031】
なお、均熱板2を形成する炭化珪素質セラミックスは、主成分の炭化珪素に対し、焼結助剤として硼素(B)と炭素(C)を添加したり、もしくはアルミナ(Al2O3)、イットリア(Y2O3)のような金属酸化物を添加して十分混合し、平板状に加工したのち、1900〜2100℃で焼成することにより得られる。炭化珪素はα型を主体とするものあるいはβ型を主体とするもののいずれであっても構わない。
【0032】
また、反応焼結による炭化珪素は、Si粉末からなる成形体を形成し、これを1600〜2000℃の炭化水素ガス中で炭化処理することにより得ることができる。
【0033】
さらに均熱板2は、均熱板2と支持体11の外周にボルト17を貫通させ、均熱板2側より弾性体8、座金18を介在させてナット19を螺着することにより弾性的に固定している。これにより、均熱板2の温度を変更したり載置面3にウエハを載せ均熱板2の温度が変動した場合に支持体11変形が発生しても、上記弾性体8によってこれを吸収し、これにより均熱板2の反りを防止し、ウエハW加熱におけるウエハW表面に温度分布が発生することを防止できる。
【0034】
また、熱電対10は、均熱板2の中央部のウエハ載置面3の直近に設置され、熱電対10の温度を基に均熱板2の温度を調整する。発熱抵抗体5が複数のブロックに別れており、個別に温度制御する場合は、それぞれの発熱抵抗体5のブロックに測温用の熱電対10を設置する。熱電対10としては、その応答性と保持の作業性の観点から、外径1.0mm以下のシース型の熱電対10を使用することが好ましい。また、均熱板2に埋め込まれた先端部に力が掛からないように熱電対10の途中が支持部7の板状構造部13に保持されている。この熱電対10の先端部は、均熱板2に孔が形成され、この中に設置された円筒状の金属体の内壁面にバネ材により押圧固定することが測温の信頼性を向上させるために好ましい。
【0035】
また、支持体11は板状構造体13と側壁部からなり、該板状構造体13には発熱抵抗体5に電力を供給するための導通端子7が絶縁材9を介して設置され、不図示の空気噴射口や熱電対保持部が形成されている。そして、前記導通端子7は、給電部6に弾性体8により押圧される構造となっている。また、前記板状構造体13は、複数の層から構成されている。
【0036】
また、均熱板2に形成された給電部6と導通端子7間の接続を、押圧による接触とすることにより、均熱板2と支持体11の温度差による両者の膨張の差を接触部分の滑りで緩和できるので、使用中の熱サイクルに対し、耐久性良好なウエハ加熱装置を提供することができる。この押圧手段である弾性体8としては、図1に示すようなコイル状のバネや、他に板バネ等を用いて押圧するようにしても構わない。
【0037】
弾性体8の押圧力としては、0.3N以上の荷重を導通端子7に掛けるようにすればよい。弾性体8の押圧力を0.3N以上とする理由は、均熱板2および支持体11の膨張収縮による寸法変化に対し、それに応じて導通端子7が移動しなければならないが、装置の構成上導通端子7を均熱板2の下面から給電部6に押し当てるようにしているため、導通端子7の摺動部との摩擦により導通端子7が給電部6から離れることを防止する為である。
【0038】
また、導通端子7の給電部6との当接面側の径は、1.5〜4mmとすることが好ましい。さらに、導通端子7を保持する絶縁材9は、その使用温度に応じて、200℃以下の温度では、ガラス繊維を分散させたPEEK(ポリエトキシエトキシケトン樹脂)材のものを用いることが可能であり、また、それ以上の温度で使用する場合は、アルミナ、ムライト等からなるセラミック製の絶縁材9を用いることが可能である。
【0039】
このとき、導通端子7の少なくとも給電部6との当接部を、Ni、Cr、Ag、Au、ステンレスおよび白金族の金属のうち少なくとも1種以上からなる金属により形成することが好ましい。具体的には、導通端子7自体を上記金属で形成するか、または導通端子7の表面に該金属からなる被覆層を設けることもできる。
【0040】
あるいは、導通端子7と給電部6の間に上記金属からなる金属箔を挿入することにより、導通端子7表面の酸化による接触不良を防止し、均熱板2の耐久性を向上させることが可能となる。
【0041】
また、導通端子7の表面にブレーチング加工やサンドブラスト加工を施したりして、表面を荒らすことにより接点が点接触となることを防止すると、さらに接触の信頼性を向上させることができる。ウエハ加熱装置1は、均熱板2面内の温度は均一になるように調整するが、加熱時、ウエハの入れ替え時等は、構造的に均熱板2と支持体9の温度の関係は一定ではない。この温度差により、給電部6と導電端子7は、捻れた位置関係で接触する場合が多いので、これらの接点を平坦に加工すると、片当たりして接触不良を起こしやすい。
【0042】
そして、このウエハ加熱装置1によりウエハWを加熱するには、不図示の搬送アームにて載置面3の上方まで運ばれたウエハWを不図示のリフトピンにて支持したあと、リフトピン8を降下させてウエハWを載置面3上に載せる。
【0043】
次に、給電部6に通電して発熱抵抗体5を発熱させ、絶縁層4及び均熱板2を介して載置面3上のウエハWを加熱する。均熱板2を炭化珪素質焼結体により形成すると、熱を加えても変形が小さく、板厚を薄くできるため、所定の処理温度に加熱するまでの昇温時間及び所定の処理温度から室温付近に冷却するまでの冷却時間を短くすることができ、生産性を高めることができるとともに、80W/m・K以上の熱伝導率を有することから、薄い板厚でも発熱抵抗体5のジュール熱を素早く伝達し、載置面3の温度ばらつきを極めて小さくすることができる。
【0044】
さらに、このようなウエハ加熱装置1をレジスト膜形成用として使用する場合は、炭化珪素質焼結体を均熱板2に使用すると、大気中の水分等と反応してアンモニアガスを発生させレジスト膜を劣化させることがないので好ましい。また、この際、焼結助剤に水と反応してアンモニアやアミンを形成する可能性のある窒化物を含まないようにすることが必要である。これにより、ウエハW上に微細な配線を高密度に形成することが可能となる。
【0045】
【実施例】
実施例 1
炭化珪素原料に3重量%のB4Cと2重量%の炭素を適量のバインダおよび溶剤を用いて混合し、造粒したあと成形圧100MPaで成形し1900〜2100℃で焼成して、熱伝導率が80W/m・Kであり外径が230mmの円盤状の炭化珪素質焼結体を得る。そして、両面を平面研削した後、1000℃、1100℃、1200℃、1400℃、1600℃×1時間と、1600℃×2時間、4時間、8時間、12時間、さらに1800℃×4時間、8時間の熱処理を各々施し、冷却時少なくとも1000℃から600℃までを300℃/時間の速度で冷却してSiO2からなる膜21を形成した後、一方の表面に200μmのガラスペーストをプリント形成し、900℃で焼き付け処理することにより絶縁層4を形成し、絶縁層4の状態を観察した。尚、ガラスの熱膨張率は、3.4×10-6deg-1のものを用いた。
【0046】
また、こうして作製した一方の面にガラスを塗布した円盤状の炭化珪素質焼結体を300℃の恒温槽に30分間挿入し均熱化したものを、室温に取り出して空気吹き付けにより急冷し、再度300℃の恒温槽に挿入するサイクルを500サイクル施して、ガラスからなる絶縁層4の状態を確認した。
【0047】
熱処理後に形成されたSiO2からなる膜21の厚みtは、X線光電子分光分析装置(PHI製Quantum2000)を用いて、表面を18.7nm/minのスパッタレートでスパッタリングすることにより、確認した。
【0048】
結果を、表1に示した。
【0049】
【表1】
【0050】
表1から判るように、全く熱処理を施していないNo.1は、表面に形成されたSiO2からなる膜21の厚みtが0.02μmと非常に薄いため、ガラスからなる絶縁層4を形成した際に、表面のSiO2からなる膜21がガラスに吸収され、一部にハジケが発生した。また、前記膜が2μm以上となった1800℃×8時間処理したNo.13は、耐久テスト後、絶縁層4にクラックが発生していることが判った。
【0051】
これに対し、SiO2からなる膜21の厚みtが0.05〜2.0μmであるNo.2〜12はガラス層のハジケが発生せず均質なガラス層が生成できた。また、耐久テストにおいてガラスからなる絶縁層4にクラックが発生しないことが判った。
【0052】
実施例 2
ここでは、炭化珪素を大気中で熱処理することにより表面に形成されるSiO2からなる膜21のX線回折による結晶ピークと耐久性の相関を調べた。大気中の熱処理温度を1000〜1800℃とし、保持時間を1〜12時間の間で変量し、さらに、冷却速度を調整して、前記膜21に生成する結晶相の量を変量させた。
【0053】
前記膜21の結晶相の確認は、理学電機製のRINT1400V型のX線回折装置を用いて、Cuの管球を用いて管電圧50kV、管電流200mA、ステップ幅0.020度、計数時間0.50秒、2θ=20〜80度の条件で実施した。ピークは、クリストバライトの(100)面と炭化珪素の(102)面のピーク高さを測定し比較した。なお、簡略化のため、前記高さは測定データの各ピークの強度計数値を使って計算した。
【0054】
こうして、準備したサンプルを用いて実施例1と同様の耐久テストを実施し、SiO2からなる膜21のX線回折による結晶ピークと耐久性の相関を調べた。
【0055】
結果を、表2に示した。
【0056】
【表2】
【0057】
表2から判るように、クリストバライトの(101)面のピーク高さが炭化珪素の(102)面のピーク高さに対し10%を越えるNo.7、8は、耐久テスト後絶縁層4の表面を観察したところ、表面にクラックが発生していた。これに対し、前記比率が10%以下であるNo.1〜6は、絶縁層4にクラックが発生せず、良好な耐久性を示した。
【0058】
実施例 3
ここでは、ガラスからなる絶縁層4の平坦度と、この上にプリント法により形成した発熱抵抗体5の抵抗値バラツキの関係を調査した。実施例1と同様な方法で作製したガラスからなる絶縁層4を形成した炭化珪素質基板を用いて、さらに、絶縁層4上に30重量%のAu−Ptを含有するガラスペーストをプリントし、600℃で発熱抵抗体5を焼き付け処理した。ガラスからなる絶縁層4の平坦度は、炭化珪素質基板の平坦度を調整することにより異なる平坦度の絶縁層4を有する試料を準備した。また、ガラスからなる絶縁層4の平坦度が350μmである試料の絶縁層4の表面に、予め転写シートに形成された厚み管理された発熱抵抗体5を転写により形成し、焼き付け処理した試料を作製した。
【0059】
このようにして準備したサンプルの発熱抵抗体5の抵抗値を5cmのブロックに分割し、それぞれ同一の抵抗値に調整するブロック毎に、バラツキを調査した。バラツキは、以下の式により計算した。
【0060】
バラツキ=(最大抵抗値−最小抵抗値)/最大抵抗値×100
平坦度がほぼ同等の各3個の試料を準備し、3個のサンプルのバラツキの平均をとり、データとした。
【0061】
結果を、表3に示した。
【0062】
【表3】
【0063】
表3に示したように、ガラスからなる絶縁層4の平坦度が350μmとなるNo.6は、抵抗値バラツキが15%と大きくなり、大きなトリミングを施さなければ抵抗値分布を調整できないことが判った。これに対し、前記平坦度が20〜300μmであるNo.1〜5は、抵抗値バラツキが8%以下となり、小さなトリミングで抵抗値分布を調整できることが判った。
【0064】
実施例 4
ここでは、発熱抵抗体5に含まれるガラスの軟化点と絶縁層4に含まれるガラスの転移点の関係と、発熱抵抗体5の抵抗値バラツキとの相関を調べた。ガラスの転移点および軟化点については、ガラス部分をリューターを用いて削り取り、回収した粉末を示差走査熱量分析計により評価した。評価方法については、データの吸熱ピークを確認し、低温側から転移点、軟化点の温度と判定し、この温度差を測定した。発熱抵抗体5の部分は、できるだけ金属分を含まない部分を選び、窒素ガスをフローさせながら、金属による影響を抑制して評価した。
【0065】
試料は、実施例3に準じた方法で、各々ガラスの種類と組み合わせを変更して試料を作製した。また、抵抗値バラツキは、実施例3と同様な方法で評価した。
【0066】
結果は、表4に示した。
【0067】
【表4】
【0068】
表4から判るように、絶縁層4に含まれるガラスの転移点温度から、発熱抵抗体5に含まれるガラスの転移点温度を引いた差が、正もしくは0となるNo.1〜4は、抵抗値バラツキが小さくなったが、前記差が負となるNo.5、6は、抵抗値バラツキが大きくなった。また、No.6については、絶縁層4の組織内に発泡した部分が発生した。以上の結果から、発熱抵抗体5に含まれるガラスの軟化点を絶縁層4に含まれるガラスの転移点より高くすることが、抵抗値分布を改善するために有効であることが判った。
【0069】
実施例 5
ここでは、炭化珪素質基板の赤外線放射率と、ウエハ加熱の昇温時間の関係を調査した。炭化珪素質基板として、炭化硼素と炭素を焼結助剤として用いた試料No.1、Al2O3とY2O3を焼結助剤として用いたNo.2、Siからなる成形体をメタンガス流中で炭化させる反応焼結により形成したNo.3となる炭化珪素質基板を準備し、実施例1と同様な方法で厚み0.5μmのSiO2からなる膜21を形成し、ウエハ載置面3ではない他方の主面上に厚み200μmのガラスからなる絶縁膜4を形成し、さらにその上に発熱抵抗体5を転写法により形成し焼き付け処理して均熱板2を得た。
【0070】
No.3においては、さらに、ウエハWの載置面3上に、CVD法により黒いSiC膜を形成したNo.4、前記載置面3上に溶射により15μmのコージライト膜を形成したNo.5を準備した。その後、各均熱板2の発熱抵抗体5に抵抗調整部を設けて、均熱性を向上させた後、図1に示したような支持体11に組み込んで、均熱板2を200℃に保持しておき、載置面3にウエハを載せたあと、ウエハ温度が200℃に安定するまでの昇温時間を比較した。赤外線放射率は、日本アビオニクス株式会社製のコンパクトサーモTVS−2200MK−IISTを使用し、200℃において、載置面3に黒体を塗布した前後の放射率を測定し、黒体を塗布したものの放射率を100%としてそれに対する塗布前の面の放射率を計算により求めた。
【0071】
結果を、表5に示した。
【0072】
【表5】
【0073】
表5に示したように、赤外線放射率が80%以下であるNo.3は、昇温時間が50秒かかったが、赤外線放射率が80%であるNo.1、2、4、5は、昇温時間が40秒以下となり、良好であった。
【0074】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、炭化珪素質セラミックスからなる板状体の一方の主面に、厚み0.05〜2.0μmのSiO2からなる膜と、厚み10〜600μmのガラスからなる絶縁層をこの順に備え、該絶縁層上に発熱抵抗体を備えるとともに、該発熱抵抗体と電気的に接続される給電部を具備してセラミックヒーターを構成したことによって、発熱抵抗体の密着の信頼性を高めることができ、このセラミックヒーターを用いて構成したウェハ加熱装置は耐久性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のウエハ加熱装置を示す断面図である。
【図2】本発明のウエハ加熱装置の一部拡大断面図である。
【図3】本発明のウエハ加熱装置におけるSiO2膜のX線回折パターンの一例を示す図である。
【図4】従来のウエハ加熱装置の均熱板の一部拡大断面図である。
【符号の説明】
1:ウエハ加熱装置
2:均熱板
3:載置面
4:絶縁層
5:発熱抵抗体
6:給電部
7:導通端子
8:弾性体
10:熱電対
11:支持体
21:SiO2膜
W:半導体ウエハ
Claims (10)
- 炭化珪素質セラミックスからなる板状体の一方の主面に、厚み0.05〜2.0μmのSiO2からなる膜と、厚み10〜600μmのガラスからなる絶縁層をこの順に備え、該絶縁層上に発熱抵抗体を備えるとともに、該発熱抵抗体と電気的に接続される給電部を具備してなるセラミックヒーター。
- 前記SiO2からなる膜は、X線回折ピークにおけるクリストバライトの(101)面のピーク高さが炭化珪素の(102)面のピーク高さに対し10%以下であることを特徴とする請求項1記載のセラミックヒーター。
- 前記ガラスからなる絶縁層の表面の平坦度が300μm以下であることを特徴とする請求項1記載のセラミックヒーター。
- 前記発熱抵抗体がガラスを含み、このガラスの軟化点が、前記絶縁層に含まれるガラスの転移点より低いことを特徴とする請求項1記載のセラミックヒーター。
- 前記発熱抵抗体が金属成分として、Pt族金属、Au、もしくはこれらの合金を主成分とすることを特徴とする請求項1記載のセラミックヒーター。
- 前記板状体の発熱抵抗体と反対側の主面をウェハ載置面とし、ウェハの加熱に用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のセラミックヒーター。
- 前記ウエハ載置面の赤外線放射率が80%以上であることを特徴とする請求項6記載のセラミックヒーター。
- 炭化珪素質セラミックスからなる板状体の表面を平坦度100μm以下に研磨し、酸化雰囲気中1200〜1600℃で1〜12時間処理した後、少なくとも1000〜600℃を200℃/時間より早い速度で冷却することによってSiO2からなる膜を形成し、この膜上に絶縁層、発熱抵抗体を形成する工程を含むセラミックヒーターの製造方法。
- 前記発熱抵抗体を転写により形成することを特徴とする請求項8記載のセラミックヒーターの製造方法。
- 請求項6記載のセラミックヒーターを支持体に接合し、前記給電部に導通端子を接続したことを特徴とするウェハ加熱装置。
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