JP3847030B2 - ボックス式建築物の部屋ボックス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、複数の部屋ボックスを組み合わせてなるボックス式建築物の構築に際して、部屋ボックスを吊り上げて移送する際の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、建築物の構築にあたって、現場作業の軽減による工期の短縮及び均一な施工を実現するために、予め設備の整った工場等において複数の箱形のユニットを製造し、これらユニットを現場で組み合わせて建築物を完成させるといったユニット工法が採用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ユニット工法において使用されるユニットは、柱と梁を主体としたラーメン構造のものが一般的であり、単体で構造的に独立して水平力、垂直力に耐えることができるようになっている。通常、工場等で製造されたユニットは、クレーンで吊り上げられてトラックに積載され、現場まで移送されるが、このようなラーメン構造のユニットの場合には、クレーンでそのまま吊り上げても、何ら支障をきたすことがなかった。
【0004】
しかし、ラーメン構造のユニットの場合、重厚な柱や梁が一体となっているので、その高さが高くなってしまい、トラックに積載したときには、総高さが道交法による高さ制限にひっかかることがあった。
【0005】
一方、本出願人は、枠状のフレームを組み立ててなる部屋ボックスを用いて、ボックス式建築物を構築する工法を開発しており、この工法において使用される部屋ボックスは、重厚な梁等が別体となっているので、有効天井高を十分に確保しながら、その全高を低く設定することができ、ラーメン構造のユニットを使用するときのようなトラック積載時の不具合を解消することができる。
【0006】
しかし、逆に、部屋ボックスの場合には、単体で水平力、垂直力に耐えることができないので、そのままクレーンで吊り上げると、変形を生じてしまう虞があり、クレーンによる吊り上げに際して特殊な大型治具を必要としていた。
【0007】
この発明は、上記に鑑み、クレーン吊り上げ時の変形を、簡単かつ確実に防止することができる部屋ボックスの提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、この発明は、天井フレームと、床フレームと、互いに対向する一対の軸フレームとを備え、前記天井フレームに引っ掛けたクレーンワイヤー等の紐状体で吊り上げられて移送される部屋ボックスであって、前記軸フレームが配されていない開放面側に、部屋ボックスの変形を防止する補強部材を設けている。
【0009】
そして、前記補強部材は、吊り上げ時におけるクレーンワイヤー等の紐状体の作用方向に沿って、前記天井フレームと床フレームとの間にハ字型に差し渡した一対の方杖と、これら方杖間のほぼ中央位置に配置した仮設柱とからなる。
【0010】
また、前記方杖と仮設柱の両端を、天井フレームと床フレームへボルトで取り外し可能に接合するようにしている。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る部屋ボックスの一例を示す斜視図、図2は、同じくその分解斜視図である。
【0013】
本実施形態に係る部屋ボックス(2)は、予め設備の整った工場で製造されるもので、例えば図1及び図2に示すように、天井としての天井パネル(10)と、床としての床パネル(11)と、これら天井パネル(10)と床パネル(11)との間に差し渡した壁体(12)(13)(14)とから箱形に形成されている。
【0014】
天井パネル(10)は、天井フレーム(15)と、この天井フレーム(15)の下面に取り付けられたパーティクルボード及び内装面材からなる天板(16)とからなり、この天板(16)によって水平力を負担することで水平ブレースを廃止したブレースレス構造となっている。なお、天井パネル(10)は、ブレ−スレス構造に限らず、天井フレーム(15)内にブレースを設けるようにしても良い。
【0015】
天井フレーム(15)は、軽量形鋼からなる一対の長尺横材(17)(17)と、同じく軽量形鋼からなる一対の短尺横材(18)(18)とを方形枠状に接合してなり、長尺横材(17)(17)間には、複数の横桟(19)(19)…が適宜間隔をあけて差し渡されている。そして、この天井フレーム(15)の枠内には、断熱材(20)(20)…が充填されている。また、天井フレーム(15)における一方の長尺横材(17)及び両方の短尺横材(18)(18)の側面には、一対のL型の固定プレート(21)(21)が夫々取り付けられている。
【0016】
さらに、他方の長尺横材(17)の下面には、その中央位置及び中央と両端とのほぼ中間の位置に、合計3個のL型の仮設プレート(26)(26)…がボルト(27)(27)…によって取り外し可能に取り付けられ、両方の長尺横材(17)(17)の上面には、紐状体である4本のクレーンワイヤー(28)(28)…を引っ掛ける一対のアイボルト(29)(29)が夫々取り外し可能に螺合されている。なお、アイボルト(29)(29)…に引っ掛けられた4本のクレーンワイヤー(28)(28)…は、天井パネル(10)の中央上方で1本に束ねられ、クレーンで引き上げられるようになっている。
【0017】
床パネル(11)は、床フレーム(30)と、この床フレーム(30)の上面に取り付けられたパーティクルボードからなる床板(31)とからなる。床フレーム(30)は、軽量形鋼からなる一対の長尺横材(32)(32)と、同じく軽量形鋼からなる一対の短尺横材(33)(33)とを方形枠状に接合してなり、長尺横材(32)(32)間には、複数の横桟(34)(34)…が適宜間隔をあけて差し渡されている。そして、床フレーム(30)における一方の長尺横材(32)及び両方の短尺横材(33)(33)には、一対のL型の固定プレート(35)(35)…が夫々取り付けられている。また、他方の長尺横材(32)の上面には、その中央位置及び両端位置に、合計3個のL型の仮設プレート(36)(36)…がボルト(37)(37)…によって取り外し可能に取り付けられている。
【0018】
壁体(12)は、建築物の外壁を構成するもので、軸フレーム(40)と、この軸フレーム(40)の外面側に取り付けられた外壁材(41)と、軸フレーム(40)の内面側に断熱内壁枠(43)を介して取り付けられた内壁材(44)とからなる。軸フレーム(40)は、軽量形鋼からなる上下一対の横材(45)(45)と、同じく軽量形鋼からなる左右一対の縦材(46)(46)とを方形枠状にピン接合してなり、その上側の横材(45)が天井フレーム(15)における短尺横材(18)の固定プレート(21)(21)に固定され、その下側の横材(45)が床フレーム(30)における短尺横材(33)の固定プレート(35)(35)に固定され、これによって壁体(12)は、天井パネル(10)と床パネル(11)の短手方向に沿った一端部間に跨って配されている。
【0019】
壁体(13)は、建築物の間仕切り壁を構成するもので、壁体(12)に対向して天井パネル(10)と床パネル(11)の短手方向に沿った他端部間に跨って配されている。この壁体(13)は、方形枠状の軸フレーム(50)のみによって構成されているが、工場又は現場作業おいてその内面側に適宜内壁材(44)が取り付けられるようになっている。なお、この軸フレーム(50)も、壁体(12)の軸フレーム(40)と同様に軽量形鋼の横材(51)(51)及び縦材(52)(52)を方形枠状にピン接合してなり、その横材(51)(51)が対応する上下の固定プレート(21)(21)(35)(35)に夫々固定されている。
【0020】
壁体(14)は、壁体(12)と同様に建築物の外壁を構成するもので、並設された軸フレーム(57)(58)(59)と、これら軸フレーム(57)(58)(59)の外面側に取り付けられた外壁材(41)と、軸フレーム(57)(58)(59)の内面側に断熱内壁枠(43)を介して取り付けられた内壁材(44)とからなる。これら軸フレーム(57)(58)(59)は、壁体(12)の軸フレーム(40)と同様に軽量形鋼の横材及び縦材を方形枠状にピン接合してなるが、そのうちの1つの軸フレーム(57)の枠内には、ブレース(66)(66)が差し渡されて、この軸フレーム(57)部分が耐力壁を構成している。なお、軸フレーム(57)(58)(59)は、図示しないボルトによって互いに横綴りされている。
【0021】
そして、この壁体(14)は、その軸フレーム(58)(59)の上下端が、天井フレーム(15)における一方の長尺横材(17)及び床フレーム(30)の一方の長尺横材(32)の固定プレート(21)(21)…に夫々固定されて、天井パネル(10)と床パネル(11)の長手方向に沿った一端部間に跨って配されている。
【0022】
従って、上記構成の部屋ボックス(2)は、天井パネル(10)と床パネル(11)との間に、コ字型に並んだ壁体(12)(13)(14)を配置した構造となっており、天井パネル(10)と床パネル(11)の長手方向に沿った他端部間の面は開放されている。このような構造の場合、それ単体で構造的に独立して水平力や垂直力に耐えることができず、工場から現場への移送に際して、天井フレーム(15)のアイボルト(29)(29)…にクレーンワイヤー(28)(28)…を引っ掛けて、部屋ボックス(2)を吊り上げると、変形を生じる虞がある。
【0023】
そこで、部屋ボックス(2)の開放面(60)側には、部屋ボックス(2)の変形を防止するための補強部材(61)を取り付けるようにしている。この補強部材(61)は、図1及び図3に示すように、吊り上げ時の開放面(60)側のクレーンワイヤー(28)(28)の作用方向に沿って、ハ字型に設けられた軽量形鋼からなる一対の方杖(62)(62)と、これら方杖(62)(62)間のほぼ中央位置に設けられた軽量形鋼からなる仮設柱(63)とから構成されている。これら方杖(62)(62)及び仮設柱(63)の上端は、天井フレーム(15)の仮設プレート(26)(26)…へボルト(64)(64)…で取り外し可能に接合され、また下端は、床フレーム(30)の仮設プレート(36)(36)…へボルト(65)(65)…で取り外し可能に接合されている。
【0024】
なお、上記の部屋ボックス(2)は、複数種類のうちの1つのタイプに過ぎず、この他にも各種タイプが用意されており、例えば、壁体(12)を外壁材(41)無しの間仕切り壁としたタイプ、或いは長手方向の壁体(14)を設けることなくその部分を開放面としたタイプ等がある。また。部屋ボックス(2)の適用場所に応じて、例えば、台所部分であればシステムキッチンを設置したり、洗面部分であれば洗面台やユニットバス等を設置する等、各種の内装が施されている。
【0025】
しかし、いずれのタイプも、ボックスとしての形状及び移送に際しての剛性を最低限確保できるように、天井フレーム(15)と床フレーム(30)との間に、少なくとも互いに対向する一対の軸フレームを差し渡した構造となっている点では共通している。
【0026】
このようにして工場で製造した各種の部屋ボックス(2)(2)…は、クレーンワイヤー(28)(28)…で順次吊り上げられてトラックに積載される。この吊り上げ時には、図2及び図3に示すように、クレーンワイヤー(28)(28)…が天井パネル(10)の中央上方からアイボルト(29)(29)…に向かって放射状に張られており、これらクレーンワイヤー(28)(28)…の引張力によって天井フレーム(15)に大きな圧縮力がかかるが、この圧縮力は、各軸フレーム(40)(50)(57)(58)(59)を介して床パネル(11)側に伝達されるだけでなく、開放面(60)側においても、方杖(62)(62)及び仮設柱(63)を介して床パネル(11)側に伝達される。従って、天井フレーム(15)にかかる圧縮力は、部屋ボックス(2)全体にまんべんなく分散されることになり、これによって部屋ボックスの(2)変形が防止される。
【0027】
特に、方杖(62)(62)をクレーンワイヤー(28)(28)の作用方向に沿ってハ字型に配置しているので、強度の弱い開放面(60)側においても、クレーンワイヤー(28)(28)の引張力を効率良く床パネル(11)側に伝達することができるとともに、クレーンワイヤー(28)(28)が引っ掛けられるアイボルト(29)(29)間に仮設柱(63)が存在するので、天井フレーム(15)の長尺横材(17)の座屈を確実に防止することができる。しかも、吊り上げた状態からトラックへ積載時、或いはトラックによる移送時に、部屋ボックス(2)に衝撃が加わっても、開放面(60)側には方杖(62)(62)及び仮設柱(63)があるので、ボックスとしての形状を確実に維持することができる。
【0028】
そして、トラックによって現場まで運搬された部屋ボックス(2)(2)…は、再びクレーンワイヤー(28)(28)…で吊り上げられて基礎上に順次設置される。そして、部屋ボックス(2)(2)…から方杖(62)(62)、仮設柱(63)、及び各種仮設プレート(26)(36)を取り外し、それら部屋ボックス(2)(2)…の上側に、構造梁、2階部分を構成する部屋ボックス(2)(2)…及び小屋組等を順次積み重ねることによって、建築物が構築されるようになっている。
【0029】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で上記の実施形態において多くの修正変更を加え得ることは勿論である。
【0030】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の部屋ボックスによると、開放面側に補強部材を設けているために、枠状フレームを組み合わせた強度的に弱い構造であっても、従来のように大型の治具を用いることなく、クレーンワイヤー等の紐状体による吊り上げ時の変形を防止することができる。しかも、補強部材は、取り外すことができるので、設計の妨げにならず、別の部屋ボックスの移送時には再度利用することも出来る。
【0031】
また、方杖は、部屋ボックスを吊り上げる紐状体の作用方向に沿って、天井フレームと床フレームとの間にハ字型に差し渡されているため、その紐状体の引張力を天井フレーム側から床フレーム側へと効率よく伝達することができる。更に、方杖間に仮設柱を設けると、強度をより向上することができ、部屋ボックスの変形を確実に防止することができる。
【0032】
しかも、このように補強部材を方杖や仮設柱で構成することによって、その構造を簡単にすることができ、取り付けや取り外しの作業時間が短くて済むとともに、コストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る部屋ボックスの一例を示す斜視図である。
【図2】同じくその分解斜視図である。
【図3】クレーンワイヤーと方杖及び仮設柱との位置関係を示す図である。
【符号の説明】
(2) 部屋ボックス
(15) 天井フレーム
(28) クレーンワイヤー
(30) 床フレーム
(40)(50)(57)(58)(59) 軸フレーム
(60) 開放面
(61) 補強部材
(62) 方杖
(63) 仮設柱
(64)(65) ボルト
Claims (2)
- 天井フレームと、床フレームと、互いに対向する一対の軸フレームとを備え、前記天井フレームに引っ掛けたクレーンワイヤー等の紐状体で吊り上げられて移送される部屋ボックスであって、前記軸フレームが配されていない開放面側に、部屋ボックスの変形を防止する補強部材を設け、前記補強部材は、吊り上げ時におけるクレーンワイヤー等の紐状体の作用方向に沿って、前記天井フレームと床フレームとの間にハ字型に差し渡した一対の方杖と、これら方杖間のほぼ中央位置に配置した仮設柱とからなるボックス式建築物の部屋ボックス。
- 前記方杖と仮設柱の両端を、天井フレームと床フレームへボルトで取り外し可能に接合するようにした請求項1記載のボックス式建築物の部屋ボックス。
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- 1999-08-03 JP JP21945299A patent/JP3847030B2/ja not_active Expired - Fee Related
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