JP3845904B2 - 水素化反応用触媒、その製造法、及び該触媒を用いたカルボン酸類の水素化反応方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、種々の水素化反応、脱水素化反応、特にエステル類、カルボン酸類の水素化反応、並びにそれに用いる触媒及びその製造方法に関するものである。さらに具体的には、無水マレイン酸、マレイン酸、無水コハク酸、コハク酸、γ−ブチロラクトン、又はこれらの混合物を原料とし、接触水素化反応により1,4−ブタンジオール及び/又はテトラヒドロフランを製造する方法に関する。1,4−ブタンジオールは、主にポリブチレンテレフタレートやポリウレタン等のプラスチック原料として使用されるほか、ピロリジン、アジピン酸等の製造中間体等としても使用されている。また、テトラヒドロフランは、沸点が低く優れた溶解力をもつため溶媒として使用されるほか、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、テトラヒドロチオフェン等の原料として使用されており、非常に有用である。
【0002】
【従来の技術】
炭素質担体に金属を担持して得られる触媒が、水素化能を有することは公知である。しかしながら、通常、炭素質担体は担持する金属の原料となる多くの金属化合物に対して強い吸着特性を有するので、通常用いられる担持方法を採用すると担体の表層部を中心に金属が吸着担持される傾向がある。このような触媒は、担体内部が十分に利用されないため、反応活性が低くなることがある。
【0003】
例えば、米国特許第5,149,680号明細書、及び米国特許第4,659,686号明細書に、活性炭に担持したパラジウム−レニウム触媒を用いてマレイン酸水溶液からテトラヒドロフラン又はγ−ブチロラクトンを製造する方法が記載されているが、これらの明細書には、活性炭における各金属の担持位置に関する記載はなく、触媒の反応効率も低い。また米国特許第4,659,686号明細書に記載の方法では、反応を行う際に150気圧以上の水素圧力が必要であるという欠点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、担持成分である金属の担持状態を最適化し、より高い反応活性を示す炭素質担体を用いた水素化反応用触媒及びその製造方法を提供することにある。
また本発明は、従来、触媒の反応性が低く、比較的高い水素圧の条件下、又は低基質濃度の条件下で反応を行う必要があったマレイン酸等のカルボン酸類の水素化反応を、より温和な条件で効率よく行い、1,4−ブタンジオール及び/又はテトラヒドロフラン等を効果的に製造する等の水素化方法を提供することをも目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、炭素質担体にRu、Sn及びPtを担持した水素化反応用触媒であって、該触媒の粒子の最大断面積を与える断面の最長径の線を、計測間隔が3μm、電子ビ−ム直径が2μmの条件でX線マイクロアナライザ−の線分析を行った場合の各測定点のRu強度を全測定点のRu強度の平均値で割った値の度数分布をとった場合に、その平均値の50%未満の度数の占める割合が全体の35%未満であり、同じく各測定点のSn強度を全測定点のSn強度の平均値で割った値の度数分布をとった場合に、その平均値の30%未満の度数の占める割合が全体の20%未満であり、同じく各測定点のPt強度を全測定点のPt強度の平均値で割った値の度数分布をとった場合に、その平均値の50%未満の度数の占める割合が全体の40%未満であることを特徴とする水素化反応用触媒に関するものである。
【0006】
更に本発明は、該水素化反応用触媒を製造するにあたり、炭素質担体としてあらかじめ硝酸と接触した炭素質担体を使用することを特徴とする水素化反応用触媒の製造法に関するものである。
また本発明は、カルボン酸類を水素及び該水素化反応用触媒と接触させることを特徴とするカルボン酸類の水素化反応方法に関する。
【0007】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の水素化反応用触媒は、炭素質担体にRuとSn、またはこれらに必要に応じて他の周期律表のVIII族金属から選ばれる元素を組み合わせて担持した触媒である。そして本発明の触媒は、担持した触媒成分が担体内部に均一に担持されているという特徴を有する。このことは、EPMA(X線マイクロアナライザ−)の線分析により特徴づけられる。測定は、触媒の粒子の最大断面積を与える面の最長径を与える線での線分析を以下のようなEPMAの測定条件で行うなお、この最大断面積を与える面、及び最長径を与える線とは、電子顕微鏡で目視によりその位置を決定したものである。
【0008】
【表1】
EPMA : JXA−8600M(商品名、日本電子(株)製品)
電子銃加速電圧 : 20kV
照射電流 : 2×10-8A
電子ビ−ム径 : 2μm
計測ステップ : 3μm
計測時間 : 1sec./point
【0009】
上記の測定により、触媒の最長径を与える断面における金属種毎に特性X線チャートを得る。得られたチャ−トのピークの高さ(特性X線強度)は、その測定点におけるその金属の担持量を表すものである。上記条件で測定した線分析結果は、更にその担持状態を数値化するために統計的な数値処理を行う。すなわち、各金属別の線分析において、各測定点の強度を全測定点の強度の平均値で割った値を求め、その数値を0.1間隔で度数分布に作成する。これにより、平均強度に対して何%の強度を持つ測定点が全測定点の何%存在するかが判る。
【0010】
本発明の触媒は、担持金属成分のうちRuに関して、上記条件での線分析において、Ru平均強度に対して50%未満の強度を持つ測定点が全測定点の35%未満である。さらには25%未満であることがより好ましい。
更に上記の条件に加え、Snに関して上記条件での線分析において、Sn平均強度に対して30%未満の強度を持つ測定点が全測定点の20%未満であることが好ましく、15%未満であることがより好ましい。
【0011】
Ru、Snに加えて、第3の金属成分として周期律表で他のVIII族金属から選ばれる金属元素を組み合わせて担持したものが好ましい。この他のVIII族金属としては、Pt又はRhが好ましく、これらを併用しても良い。更にPtが特に好ましい。このPtを添加した場合、Ptに関して上記条件での線分析において、Pt平均強度に対して50%未満の強度を持つ測定点が全測定点の40%未満であることが好ましい。さらには30%未満であることがより好ましい。
【0012】
このような均一に担持された触媒粒子は、用いる全触媒粒子の中で少なくとも一部存在すれば、その効果が得られる限りにおいて有効であり、通常10%以上、中でも30%以上が該均一に担持された触媒粒子であることが望ましい。
本発明の触媒は、例えば以下の方法で製造される。担体として使用される炭素質担体は、活性炭、グラファイト、黒鉛等である。これら炭素質担体の形状は、粉末状、顆粒状、成形品のいずれからも選択でき、また操作性やろ過性の観点からその大きさが、平均粒径100μm以上を有するものが好ましい。なお、この担体の形状とは、上記のような炭素質の物質の一次粒子が凝集して形成された粒子のことを示す。
【0013】
前記の炭素質担体は、金属化合物を担持する前にあらかじめ硝酸処理を行う。硝酸処理は通常硝酸水溶液中で行う。その際の硝酸水溶液の濃度は、1wt%以上75wt%以下、好ましくは5wt%以上60wt%以下で行う。硝酸処理温度は、室温以上の任意の温度で実施可能であるが、処理温度が高いほど処理時間を短縮できるので、通常は50℃〜100℃の範囲で実施される。
【0014】
硝酸水溶液で処理する時間は、その温度にもよるが、90℃前後の温度を掛けた場合には、1分間から10時間、好ましくは10分間から5時間の範囲で行うことができる。
本発明の触媒の製造方法においては、炭素質担体を硝酸で処理することにより前記のようなX線マイクロアナライザーによる線分析の結果に示される如く、担持成分が担体内部にまで均一に担持されるというものである。このように均一に担持できる理由についての詳細は不明であるが、この硝酸処理により、炭素質担体上に酸素官能基が付与されて酸素含有量が増加すること、又は炭素質担体自体の表面構造が変化することにより、担体表面での金属化合物の吸着力が低下し、金属化合物が内部まで浸透して担持されるようになるものと推測される。
【0015】
次に、この硝酸処理した炭素質担体に、RuとSn、又はこれらにさらに必要に応じて周期律表の他のVIII族金属から選ばれる元素を担持する。この際、これら各金属は、金属あるいは金属化合物でも良い。該金属化合物の例としては、RuとSn、及び周期律表の他のVIII族金属の硝酸、硫酸、塩酸等の鉱酸塩が一般的に使用されるが、酢酸等の有機酸塩、水酸化物、酸化物又は錯塩、さらにはカルボニル錯体やアセチルアセトナ−ト塩に代表されるような有機金属化合物も使用することができる。
【0016】
また、その担持方法にも特に制限はなく、浸漬法、含浸法などの周知の方法が用いられる。浸漬法や含浸法によるときは、原料となる金属化合物を溶媒に溶解し、溶液として使用する。この時使用される溶媒は、基本的に金属化合物に対して十分な溶解性が有れば良く、特に制限は無い。また溶媒として水を用いた場合には、金属化合物の溶解度を高めるために、塩酸や、硝酸等の酸溶液とすることも可能である。具体的には、価格的な視点から水もしくはメタノ−ルやエタノ−ル等のアルコ−ル類が好適であり、必要に応じてこれらを混合した混合溶媒でも良い。
【0017】
担体に各担持成分を担持する順序については特に制限はなく、全ての担持成分を一度に同時に担持しても、各成分を金属種毎に個別に担持しても、または該複数成分のいくつかの金属種を組み合わせて複数回にわたって担持しても良い。
Ru及びSnの担持量(金属として)はそれぞれ、担体に対して通常0.5〜50重量%、好ましくは1〜20重量%である。また、必要に応じて添加される周期律表の他のVIII族金属、特に水素化活性の向上の点から好適なPt又はRhは、それぞれ単独または合計で、Ruに対して0.01〜10重量倍共存させるのが活性向上の観点から好ましい。
【0018】
また、上記のように金属成分の溶液を浸漬担持した後には乾燥を行う。尚、複数の担持成分を複数回にわたって浸漬担持する場合にはその都度乾燥を行う。その後、必要に応じて焼成、還元処理を行う。焼成処理を行う場合には、通常100〜600℃の温度範囲で行われる。また、還元処理を行う場合には、公知の液相還元法、気相還元法が採用され、気相還元法の場合、通常100〜500℃の温度範囲、好ましくは200〜450℃の範囲で行われる。還元処理を行った後の触媒の構造に関しては、その詳細は不明であるが、上のような還元条件では、貴金属成分は実質的に全てが金属に還元されると推定され、Snは、一部分が2価又は4価で残存すると推定される。
【0019】
また、上記のような本発明の触媒は、水素化反応用触媒として好適に用いられ、例えば、オレフィン、アルキン、カルボニル基、カルボキシル基、ニトリル基等の官能基の水素化反応、還元アミノ化反応、水素化分解反応に適している。中でも特に、カルボン酸類を接触水素化する反応に好適に使用される。本発明において、特に該カルボン酸類として、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、無水コハク酸、コハク酸のような、炭素数4のジカルボン酸及びその無水物の他、γ−ブチロラクトンのような炭素数4のカルボン酸の環状エステル、又はこの混合物を原料として、接触水素化反応により1,4−ブタンジオール及び/又はテトラヒドロフランを製造する方法に好適である。
【0020】
本発明によるこの炭素数4のカルボン酸類の水素化反応においては、反応生成物の分析結果等からみて、(無水)マレイン酸が水素添加されて、(無水)コハク酸となり、次いで、γ−ブチロラクトンとなり、更に最終生成物として、1,4−ブタンジオール及び/又はテトラヒドロフランを生成する反応機構と推測される。従って、上記の化合物のいずれをも反応原料として用いても1,4−ブタンジオール及び/又はテトラヒドロフランを製造することができるし、これらの2種以上の混合物であっても同様である。
【0021】
本発明方法によって、1,4−ブタンジオール及び/又はテトラヒドロフランを製造するには、通常、温度100〜350℃、好ましくは160〜300℃、水素圧10〜300kg/cm2、好ましくは50〜200kg/cm2の条件が採用される。回分反応の場合には、使用される本発明の触媒の量は、無水マレイン酸等の反応原料100重量部に対し、0.1〜100重量部であることが望ましいが、反応温度又は反応圧力等の諸条件に応じ、実用的な反応速度が得られる範囲内で任意に選ぶことができる。
【0022】
反応方式は、液相懸濁反応又は固定床反応のいずれであってもよい。また反応は、無溶媒で行ってもよいし、必要に応じて、反応に悪影響を与えない種類の溶媒を使用してもよい。この際使用できる溶媒としては、特に制限されないが、具体的には、水;メタノール、エタノール、オクタノール、ドデカノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;その他、ヘキサン、シクロヘキサン、デカリン等の炭化水素類が挙げられる。
【0023】
なお、反応で生成した1,4−ブタンジオール及び/又はテトラヒドロフランは、蒸留等の公知の方法により分離精製される。また、この分離精製後に残る未反応原料又は反応中間体としてのγ−ブチロラクトン等は、反応原料として再使用することができる。
【0024】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない、
なお、以下において「%」は「重量%」を示す。
実施例1
<炭素質担体の硝酸処理>
200mlのなす型フラスコに活性炭(三菱化学(株)、商品名:CX−2)20gと30%硝酸水溶液50gを入れ、ときどき攪拌しながら95℃のオイルバスで3時間加熱処理した。冷却後、蒸留水で洗浄し、80℃で5時間減圧乾燥した。
【0025】
<触媒の調製>
100mlのなす型フラスコに、H2PtCl6・6H2O(キシダ化学(株)製品)を0.96g、5N−HCl水溶液を6.71ml入れて溶解した。この液にSnCl2・2H2O(キシダ化学(株)製品)を1.01g入れて溶解し、溶解を確認後、RuCl3・3H2O(NEケムキャット社製品)を1.67g入れて完全に溶解させた。この金属化合物の溶液に、上記のようにして硝酸処理した活性炭を9.06g加え、よく振とうした。その後、回転減圧乾燥器で60℃、25mmHg下で溶媒の水を除去した後、アルゴン雰囲気下150℃で2時間焼成処理し、ついで水素雰囲気下、450℃で2時間還元処理して、6.1重量%Ru−3.4重量%Pt−5重量%Sn/活性炭の触媒を調製した。
【0026】
この触媒の粒子の最大断面積を与える断面の最長径の線におけるEPMA(X線マイクロアナライザ−)による線分析を、上記で得られた触媒の2つの粒子N1,N2について行った。測定は、以下の条件で行った。
【0027】
【表2】
EPMA : JXA−8600M(商品名、日本電子(株)製品)
電子銃加速電圧 : 20kV
照射電流 : 2×10-8A
電子ビ−ム径 : 2μm
計測ステップ : 3μm
計測時間 : 1sec./point
【0028】
この結果を元に、各元素の測定点の強度をその全測定点の強度の平均値で割った値の度数分布をとった結果を図1(触媒粒子N1のRuに関する度数分布を示したヒストグラム)、図2(触媒粒子N1のSnに関する度数分布を示したヒストグラム)、図3(触媒粒子N1のPtに関する度数分布を示したヒストグラム)、図4(触媒粒子N2のRuに関する度数分布を示したヒストグラム)、図5(触媒粒子N2のSnに関する度数分布を示したヒストグラム)、及び図6(触媒粒子N2のPtに関する度数分布を示したヒストグラム)に示した。その結果、Ruは平均値の50%未満の度数の占める割合は全体の4.6%(N1)、及び5.2%(N2)であり、Snは平均値の30%未満の度数の占める割合は全体の3.2%(N1)、4.7%(N2)であり、またPtは平均値の50%未満の度数の占める割合は全体の5.3%(N1)、及び5.4%(N2)であった。このようにEPMA強度の特に低い部分(平均値に比べ、その量が大幅に少ない部分)はごく少なく、各金属成分が担体内部まで均一に担持されていることが判った。
【0029】
<コハク酸の水素化反応>
容量200mlのオートクレーブに、水25g、コハク酸25gを仕込み、更に上記方法で調製した触媒4.6gを仕込み、室温下攪拌しつつ20kg/cm2の水素を圧入し、240℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度を240℃に維持しつつ、水素を圧入して水素圧を70Kg/cm2まで高め、この圧力で2時間反応を行った。反応終了後、反応液をデカンテ−ションにより触媒と分離し、残った触媒は脱塩水により洗浄した。この触媒に、水25g、コハク酸25gを仕込み、2回目の反応を全く同様の手法により行った。
このようにして、計4回の反応を繰り返して行い、反応成績の変化を調べた。反応成績の評価のうち、コハク酸の転化率は酸滴定により求め、反応生成物についてはガスクロマトグラフィーで定量分析を行った。その結果を後記表3に示した。
【0030】
比較例1
硝酸処理を行わなかった以外は実施例1と同様の方法で触媒を調製した。
この触媒の2つの粒子S1、S2について、その粒子の中央部付近の断面の最長径の線におけるEPMA(X線マイクロアナライザ−)による線分析を行った。この結果を元に、各元素の測定点の強度をその全測定点の強度の平均値で割った値の度数分布をとった結果を、図7(触媒粒子S1のRuに関する度数分布を示したヒストグラム)、図8(触媒粒子S1のSnに関する度数分布を示したヒストグラム)、図9(触媒粒子S1のPtに関する度数分布を示したヒストグラム)、図10(触媒粒子S2のRuに関する度数分布を示したヒストグラム)、図11(触媒粒子S2のSnに関する度数分布を示したヒストグラム)、及び図12(触媒粒子S2のPtに関する度数分布を示したヒストグラム)に示した。その結果、Ruは平均値の50%未満の度数の占める割合は全体の36.3%(S1)、及び55.6%(S2)であり、Snは平均値の30%未満の度数の占める割合は全体の20.2%(S1)、38.5%(S2)であり、またPtは平均値の50%未満の度数の占める割合は全体の40.1%(S1)、及び57.7%(S2)であった。このようにEPMA強度の特に低い部分(平均値に比べ、その金属量が大幅に少ない部分)が硝酸処理活性炭を用いた場合に比べ明らかに多く、各金属成分が担体内部まで均一に担持されていないことが判った。
この触媒を用い、実施例1と同様の手順でコハク酸の水素化反応を行った。反応生成物についての分析結果を表3に示した。
【0031】
【表3】
上記表3中に示した略号は以下の意味である。SA :コハク酸THF:テトラヒドロフランGBL:γ−ブチロラクトン
BDO:1,4−ブタンジオール
K(0-2hr):一次速度定数。反応終了後の反応生成物に含まれるカルボニル基の減少量から算出した。実施例1、比較例1共に、1回目の反応において生成物の量が少ないのは、触媒上に生成物、もしくは原料の一部が吸着されて検出できなかったためである。
【0032】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、炭素質担体に主金属としてRuとSn、さらに必要に応じて周期律表で他のVIII族金属から選ばれる元素を担体内部まで均一に担持した触媒を提供することができる。そして、この触媒を使用することにより、無水マレイン酸、マレイン酸、無水コハク酸、コハク酸、γ−ブチロラクトン、又はこれらの混合物を原料とした接触水素化反応において、比較的温和な反応条件下で、1,4−ブタンジオール及び/又はテトラヒドロフランを高い効率、かつ高い収率で製造することができ、その工業的利用価値は極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の触媒粒子N1のRnに関する度数分布を示したヒストグラム
【図2】実施例1の触媒粒子N1のSnに関する度数分布を示したヒストグラム
【図3】実施例1の触媒粒子N1のPtに関する度数分布を示したヒストグラム
【図4】実施例1の触媒粒子N2のRuに関する度数分布を示したヒストグラム
【図5】実施例1の触媒粒子N2のSnに関する度数分布を示したヒストグラム
【図6】実施例1の触媒粒子N2のPtに関する度数分布を示したヒストグラム
【図7】比較例1の触媒粒子S1のSnに関する度数分布を示したヒストグラム
【図8】比較例1の触媒粒子S1のRuに関する度数分布を示したヒストグラム
【図9】比較例1の触媒粒子S1のPtに関する度数分布を示したヒストグラム
【図10】比較例1の触媒粒子S2のSnに関する度数分布を示したヒストグラム
【図11】比較例1の触媒粒子S2のRuに関する度数分布を示したヒストグラム
【図12】比較例1の触媒粒子S2のPtに関する度数分布を示したヒストグラム
Claims (4)
- 炭素質担体にRu、Sn及びPtを担持した水素化反応用触媒であって、該触媒の粒子の最大断面積を与える断面の最長径の線を、計測間隔が3μm、電子ビ−ム直径が2μmの条件でX線マイクロアナライザ−の線分析を行った場合の各測定点のRu強度を全測定点のRu強度の平均値で割った値の度数分布をとった場合に、その平均値の50%未満の度数の占める割合が全体の35%未満であり、同じく各測定点のSn強度を全測定点のSn強度の平均値で割った値の度数分布をとった場合に、その平均値の30%未満の度数の占める割合が全体の20%未満であり、同じく各測定点のPt強度を全測定点のPt強度の平均値で割った値の度数分布をとった場合に、その平均値の50%未満の度数の占める割合が全体の40%未満であることを特徴とする水素化反応用触媒。
- 請求項1に記載の水素化反応用触媒を製造するにあたり、炭素質担体としてあらかじめ硝酸と接触した炭素質担体を使用することを特徴とする水素化反応用触媒の製造法。
- カルボン酸類を水素及び触媒と接触させることにより水素化する方法において、該触媒として、請求項1に記載の水素化反応用触媒を用いることを特徴とするカルボン酸類の水素化反応方法。
- カルボン酸類が、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、無水コハク酸、コハク酸、及びγ−ブチロラクトンからなる群から選ばれたものである請求項3に記載の水素化反応方法。
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