JP3844519B2 - 免疫抑制剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はヒトインターロイキン2レセプターγ鎖に特異的に結合して、ヒトインターロイキン2レセプターγ鎖とインターロイキン2レセプターβ鎖との結合を選択的に阻害し、インターロイキン2応答を遮断する活性を有するポリペプチド、該ポリペプチドを含有する免疫抑制剤、該ポリペプチドをコードするDNA、該遺伝子を有する組換えDNA、該組換えDNAを有する形質転換体、該形質転換体を培養して目的とするポリペプチドを製造する方法に関する。
本ポリペプチドは、単独、あるいはインターロイキン2のインターロイキン2レセプターへの結合を阻害する物質と併用することにより、インターロイキン2の関与が示唆されている臓器移植時の拒絶反応の予防、アレルギー性疾患や自己免疫疾患などの炎症性疾患の治療薬として有効な薬剤として利用し得る有用な物質である。
以下、「インターロイキン2」を単に「IL−2」と称することがある。
【0002】
【従来の技術】
臓器移植の外科的技術が著しく向上した現在、臓器移植手術の成否は術後の移植片拒絶反応をいかにして抑制できるかにポイントが絞られてきている。拒絶反応は、生体が移植片を異物として認識し、それを排除するために一連の免疫反応が惹起されることにより生じる。そこで、従来より拒絶防止薬として、ステロイド剤、アザチオプリン、メトトレキセート、6−メルカプトプリンなどのいわゆる免疫抑制剤と呼ばれている薬剤の投与が行われてきた。しかし、安全域が狭いこと、あるいは効果が弱いことなどの理由で生着率の著しい向上はみられなかった。
ところが、近年開発されたサイクロスポリンAの登場により、生着率には格段の向上がみられるようになった。しかしながら、サイクロスポリンAには重篤な腎毒性があることが明らかとなり、その使用の制限を与儀なくされてきている。
したがって、より安全で、かつ効果的な免疫抑制剤の開発が望まれてきている。
【0003】
さて、IL−2は、ヘルパーT細胞から産生されるタンパク質であり、生体内においてキラーT細胞の増殖や分化誘導、B細胞の分化誘導など、広汎な働きを有している生体防御上非常に重要な因子である。臓器移植や骨髄移植においては、移植片の生着の鍵を握ると考えられている宿主対移植片反応(HVG反応)、あるいは移植片対宿主反応(GVH反応)に、IL−2などにより活性化されたキラーT細胞が深く関与していることが示されている。
他方、自己免疫疾患は生体内での免疫系のバランスがくずれ、生体自身を攻撃することにより発症すると考えられており、その中でも特にIL−2をはじめとする免疫系に関与する因子の過剰産生、あるいはそれに対する過剰反応などがその大きな一因となっている可能性が高い。
【0004】
これらのことから、IL−2応答を選択的かつ効果的に抑制することができれば、臓器移植時の拒絶反応の予防や、自己免疫疾患の治療が可能となるものと考えられるようになった。事実、IL−2と細胞毒を融合させて、IL−2を結合する受容体(IL−2レセプター)を有しているIL−2応答細胞を選択的に傷害することができるポリペプチドを調製し、これを自己免疫疾患の動物モデルの一つであるアジュバント関節炎ラットに投与すると関節炎の発症が遅れ症状も軽くなり、またマウス同種心臓移植時に投与すると移植心の拒絶が抑制されるという報告もある( Proc. Natl.Acad.Sci.USA、86巻、1008頁、1989年)。
しかし、IL−2と細胞毒を融合させて得られるポリペプチドはその血中半減期が短く、効果をあげるためには大量に投与する必要があり、それに伴う副作用が懸念される。そこで、より安全でかつ有効なIL−2応答を抑制できる薬剤の開発が望まれている。
【0005】
従来より、IL−2応答細胞上のIL−2レセプターは、分子量が約55kdのα鎖と約75kdのβ鎖の2つの糖蛋白質分子からなることが知られており、それぞれの分子とIL−2との結合の解離定数は、α鎖の場合10-8M、β鎖の場合10-9Mであるが、α鎖とβ鎖の両方の分子が接してIL−2との三者の会合体が形成された場合には、解離定数が10-12Mという高親和性の結合となることものと考えられていた。
しかし、マウスの非リンパ球系の細胞にヒトβ鎖cDNAを単独に導入してもIL−2の結合は起こらず、また、ヒトα鎖とヒトβ鎖のcDNAを同時に導入しても、中程度のIL−2の結合は起こるが、高親和性の結合は起こらないことが明らかとなり(Science、244巻、551頁、1989年)、IL−2の結合を規定するα鎖、β鎖以外の第三の分子の存在が示唆されるようになった。
そして、本発明者らによって、第三のIL−2レセプターの構成分子である64kdの糖蛋白質分子(以下、IL−2レセプターγ鎖と称する)をコードする遺伝子がクローニングされることにより(特願平4−104947・Science、257巻、379頁、1992年)、IL−2/IL−2レセプターシステムが完全に解明された。
【0006】
すなわち、マウスの非リンパ球系の細胞にヒトβ鎖とヒトγ鎖のcDNAを同時に導入しIL−2の結合を解析すると、当初β鎖単独で生じると考えられていた中親和性の結合が観察されるようになり、また、ヒトα鎖、ヒトβ鎖、及びヒトγ鎖のcDNAを同時に導入すると、当初α鎖とβ鎖により生じると考えられていた高親和性のIL−2の結合が起こることが明らかとなった。更に、IL−2のシグナル伝達のトリガーと考えられているIL−2とIL−2レセプター複合体の細胞内への取り込み反応は、β鎖単独、あるいはα鎖とβ鎖の両者の発現細胞においては生じないが、それらの細胞にγ鎖を発現させることにより生じることが示された。従って、本発明者らが世界で初めて見いだすことに成功したIL−2レセプターγ鎖分子は、単にIL−2の結合を規定している分子ではなく、IL−2のシグナル伝達機構に必須の分子であることが明らかとなった。
【0007】
IL−2レセプターγ鎖分子は、IL−2存在下でIL−2レセプターβ鎖の細胞外領域に結合することが知られている(Science、257巻、379頁、1992年)。従って、β鎖とγ鎖との結合を妨げると、β鎖単独の場合にはIL−2結合そのものが生じず、α鎖とβ鎖の両者に対しては中程度の結合が生じるものの、IL−2シグナル伝達が遮断されるものと考えられる。すなわち、IL−2応答細胞上のIL−2レセプターβ鎖とIL−2レセプターγ鎖との結合を阻害することができれば、IL−2のシグナル伝達が完全に遮断されてIL−2に対して不応答性となり、IL−2が関与していると考えられる臓器移植時の拒絶反応や、自己免疫疾患等の治療が可能となる。しかし、現在までIL−2レセプターβ鎖とIL−2レセプターγ鎖との結合阻害する活性を有する物質は全く知られていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的はヒトIL−2レセプターγ鎖に特異的に結合して、ヒトIL−2レセプターγ鎖とIL−2レセプターβ鎖との結合を選択的に阻害し、IL−2応答を遮断する活性を有するポリペプチド、該ポリペプチドを含有する免疫抑制剤、該ポリペプチドをコードするDNA、該DNAを有する組換えDNA、該組換えDNAを有する形質転換体、該形質転換体を培養して目的とするポリペプチドを製造する方法を提供することである。
本ポリペプチドは、単独、あるいはIL−2とIL−2レセプターとの結合を阻害する物質と併用することにより、IL−2の関与が示唆されている臓器移植時の拒絶反応の予防、アレルギー性疾患または自己免疫疾患などの炎症性疾患の治療薬として有効な薬剤として利用し得る。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、後述の方法により、目的とするヒトIL−2レセプターγ鎖に特異的に結合して、ヒトIL−2レセプターγ鎖とヒトIL−2レセプターβ鎖との結合を選択的に阻害し、IL−2応答を遮断する活性を有するポリペプチドを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明はヒトIL−2レセプターγ鎖に特異的に結合して、ヒトIL−2レセプターγ鎖とヒトIL−2レセプターβ鎖との結合を選択的に阻害し、IL−2応答を遮断する活性を有するポリペプチド、該ポリペプチドを含有する免疫抑制剤、該ポリペプチドをコードするDNA、該DNAを有する組換えDNA、該組換えDNAを有する形質転換体、該形質転換体を培養して目的とするポリペプチドを製造する方法を提供するものである。
詳細には本発明は以下の通りである。
(発明1)ヒトインターロイキン2レセプターγ鎖に特異的に結合し、ヒトインターロイキン2の応答を遮断する活性を有するポリペプチド。
(発明2)ポリペプチドが、マウスモノクローナル抗体である発明1記載のポリペプチド。
(発明3)モノクローナル抗体を産生する細胞が、GP−2又はGP−4である発明2記載のモノクローナル抗体。
(発明4)モノクローナル抗体を産生する細胞が、TUGh4、TUGh5又はAG14である発明2記載のモノクローナル抗体。
(発明5)ポリペプチドが、モノクローナル抗体の可変領域のみを含んでなる発明1記載のポリペプチド。
(発明6)ポリペプチドが、配列番号1記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドである発明5記載のポリペプチド。
(発明7)ポリペプチドが、配列番号2記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドである発明5記載のポリペプチド。
(発明8)ポリペプチドが、配列番号1記載のアミノ酸配列のN末端Metが除かれたポリペプチドである発明5記載のポリペプチド。
(発明9)ポリペプチドが、配列番号2記載のアミノ酸配列のN末端Metが除かれたポリペプチドである発明5記載のポリペプチド。
(発明10)ポリペプチドが、(1)配列番号1記載のアミノ酸配列の一部を削除、(2)配列番号1記載のアミノ酸配列の一部を他のアミノ酸配列に置換、(3)配列番号1記載のアミノ酸配列にアミノ酸残基もしくはペプチドを付加、または(4)配列番号1記載のアミノ酸配列の一部をアセチル化、アミド化、もしくはポリエチレングリコール付加したものである発明5記載のポリペプチド。
(発明11)ポリペプチドが、(1)配列番号2記載のアミノ酸配列の一部を削除、(2)配列番号2記載のアミノ酸配列の一部を他のアミノ酸配列に置換、(3)配列番号2記載のアミノ酸配列にアミノ酸残基もしくはペプチドを付加、または(4)配列番号2記載のアミノ酸配列の一部をアセチル化、アミド化、もしくはポリエチレングリコール付加したものである発明5記載のポリペプチド。
(発明12)ポリペプチドが、マウスモノクローナル抗体の定常領域をヒト抗体の定常領域へと変換した発明1記載のポリペプチド。
(発明13)ポリペプチドが、マウスモノクローナル抗体の定常領域、及び可変領域の枠組み配列を、各々ヒト抗体の定常領域と枠組み配列へと変換した発明1記載のポリペプチド。
(発明14)発明1ないし13記載のポリペプチドを含有してなる免疫抑制剤。
(発明15)発明1ないし13記載のポリペプチドと、抗ヒトインターロイキン2レセプターα鎖抗体、及び/又は抗ヒトインターロイキン2レセプターβ鎖抗体とを含有してなる発明14記載の免疫抑制剤。
(発明16)発明1ないし13記載のポリペプチドと、抗ヒトインターロイキン2レセプターα鎖抗体の可変領域を含むポリペプチド、該ポリペプチドの一部を削除したポリペプチド、該ポリペプチドの一部を他のアミノ酸に置換したポリペプチド、もしくは該ポリペプチドの一部に他のアミノ酸残基、ポリペプチドあるいは他の物質を付加したポリペプチド、及び/又は抗ヒトインターロイキン2レセプターβ鎖抗体の可変領域を含むポリペプチド、該ポリペプチドの一部を削除したポリペプチド、該ポリペプチドの一部を他のアミノ酸に置換したポリペプチド、もしくは該ポリペプチドの一部に他のアミノ酸残基、ポリペプチドあるいは他の物質を付加したポリペプチドとを含有してなる発明14記載の免疫抑制剤。
(発明17)発明1ないし13記載のポリペプチドと、ヒト定常領域を有する抗ヒトインターロイキン2レセプターα鎖抗体、及び/又はヒト定常領域を有する抗ヒトインターロイキン2レセプターβ鎖抗体とを含有してなる発明14記載の免疫抑制剤。
(発明18)発明1ないし13記載のポリペプチドと、ヒト定常領域及びヒト可変領域の枠組み配列を有する抗ヒトインターロイキン2レセプターα鎖抗体、及び/又はヒト定常領域及びヒト可変領域の枠組み配列を有する抗ヒトインターロイキン2レセプターβ鎖抗体とを含有してなる発明14記載の免疫抑制剤。
(発明19)発明1ないし13記載のポリペプチドをコードするDNA。
(発明20)DNAが配列番号1記載の塩基配列を有する発明19記載のDNA。
(発明21)DNAが配列番号2記載の塩基配列を有する発明19記載のDNA。
(発明22)発明19ないし21記載のDNAを有する組換えDNA。
(発明23)発明22記載の組換えDNAを有する形質転換体。
(発明24)形質転換体が大腸菌、または真核細胞である発明23記載の形質転換体。
(発明25)発明23または24記載の形質転換体を培養することにより、発明1ないし13記載のポリペプチドを生産させ、該ポリペプチドを取得することを特徴とする該ポリペプチドの製造方法。
【0010】
本発明に従えば、ヒトIL−2レセプターγ鎖に結合し、ヒトIL−2レセプターγ鎖とヒトIL−2レセプターβ鎖との結合を選択的に阻害し、IL−2応答を遮断する活性を有するポリペプチドが提供される。
【0011】
本研究者らはまずヒトIL−2レセプターγ鎖に特異的に結合するマウスモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを多数作成し、その中からヒトIL−2応答を阻害する活性を有するマウスモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマクローンを選択した。以下にマウス抗ヒトIL−2レセプターγ鎖モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマクローンの調製法を記す。
【0012】
ハイブリドーマは骨髄腫細胞と抗体産生細胞を融合することにより製造される。抗体産生細胞としては、リコンビナントヒトIL−2レセプターγ鎖分子で免疫されたマウスやラットなどの動物からの脾臓またはリンパ節細胞を用いればよい。なお、免疫する物質としては、リコンビナントヒトIL−2レセプター分子の場合、単独、あるいは他の蛋白質との融合分子、分子の一部のポリペプチド等を用いても差し支えない。その場合、リコンビナントヒトIL−2レセプター分子のうち、細胞外領域のみからなる分子を用いると特に効率的である。また、リコンビナントヒトIL−2レセプターγ鎖分子の代わりに、ヒトIL−2レセプターγ鎖分子を発現しているヒト細胞、ヒトIL−2レセプターγ鎖分子をコードする遺伝子が導入され、該γ鎖分子を生合成するに至ったマウス細胞等を用いても構わない。また、それらの細胞より精製したγ鎖分子そのものを免疫原として用いてもさしつかえない。
【0013】
抗体産生細胞と骨髄腫細胞の由来する動物の種は、両細胞が融合可能な限り異なってもよいが、通常同一種の細胞を用いた方が良い結果が得られる。本発明実施のための一つの好ましいハイブリドーマは、ヒトリコンビナントIL−2レセプターγ鎖分子の細胞外領域のみからなるポリペプチドで免疫したマウスの脾臓細胞または同リンパ節細胞と、マウス骨髄腫細胞との間のハイブリドーマである。
例えば、生理食塩水に懸濁したヒトリコンビナントIL−2レセプターγ鎖分子の細胞外領域のみからなるポリペプチドで免疫したBalb/cマウスの脾臓細胞とBalb/cマウスの骨髄腫細胞SP2/0-Ag14の間のハイブリドーマであり、後述の実施例で示されるように優れた結果が得られる。
ヒトリコンビナントIL−2レセプターγ鎖分子の細胞外領域のみからなるポリペプチドは、同分子をコードする遺伝子を含む発現プラスミドベクターを有する形質転換体を培養することにより得られる。形質転換体としては大腸菌等の原核細胞、CHO細胞等の真核細胞などいずれを用いても構わない。
【0014】
骨髄腫細胞としては、SP2/0-Ag14のほかに、X63-Ag8-6.5.3, P3-X63-Ag8-U1, P3-X63-Ag8, P3-NSI/1-Ag4-1, MPC11-4.5.6.TG.1.7, (以上マウス細胞)、210.RCY.Ag1.2.3 (ラット細胞)、SK0-007,GH15006TG-A12 (以上ヒト細胞)等の8アザグアニン耐性の細胞株を用いてもよい。ハイブリドーマの作成と、更にその中からIL−2レセプターのγ鎖分子に結合し、IL−2応答を遮断する活性を有するモノクローナル抗体を産生しているハイブリドーマクローンの選択は、例えば次の様にして行える。ポリエチレングリコール、あるいはセンダイウイルスなどを用いて抗体産生細胞と骨髄腫細胞とを融合させる。融合したハイブリドーマのみが、ヒポキサンチン、チミジン、アミノプテリンを含む培地(HAT培地)中で生育することができる。得られたハイブリドーマがすべて抗体を産生しているわけではないし、抗体を産生しているハイブリドーマがすべて目的とする抗体を産生しているわけではないので、それらのハイブリドーマクローンの中からIL−2レセプターのγ鎖分子に結合し、IL−2応答を遮断する活性を有しているモノクローナル抗体を産生しているハイブリドーマクローンを選択しなければならない。
【0015】
その選択は例えば以下の様な方法を用いて行うことができる。すなわち、ハイブリドーマ培養上清中に産生されている抗体の、ヒトIL−2レセプターγ鎖分子をコードする遺伝子が導入され、該ペプチドを発現しているマウスL929細胞(以下Lγ細胞と称する)への結合と、ヒトIL−2レセプターβ鎖分子をコードする遺伝子が導入され、該ペプチドを発現しているマウスL929細胞(以下、Lβ細胞と称する)への結合を測定し、前者に対して結合量が高く、後者に対して結合量の低いものを選択する。そのような抗体を産生しているハイブリドーマがIL−2レセプターのγ鎖分子に特異的に結合する抗体を産生しているハイブリドーマとなる。
【0016】
細胞への抗体の結合量の測定は、放射標識された抗マウスイムノグロブリン抗体を用いたラジオイムノアッセイ、蛍光色素標識された抗マウスイムノグロブリン抗体を用いた蛍光イムノアッセイなどいかなる方法を用いてもかまわない。また、スクリーニングに用いる細胞は、ヒトγ鎖を発現している細胞とヒトγ鎖を発現していない細胞との組み合わせである限りいかなる細胞を用いてもかまわない。
【0017】
IL−2レセプターのγ鎖分子に特異的に結合する抗体が、すべてIL−2応答を遮断する活性を有する抗体とは限らないので、更に例えば以下のような方法により、IL−2レセプターのγ鎖分子に対する抗体を産生しているハイブリドーマの中から、IL−2応答を遮断する活性を有する抗体を産生しているハイブリドーマを選択する。
ハイブリドーマ培養上清を、ヒトIL−2依存的に増殖活性を示すヒト成人T細胞白血病ウイルス感染T細胞株ILT−Mat細胞に加え、ILT−Mat細胞の増殖阻害活性を測定する(Journal of Experimental Medicine、169巻、1323頁)。増殖阻害活性を有していれば、そのハイブリドーマが目的とするモノクローナル抗体産生細胞ということになる。なお、IL−2レセプターのγ鎖分子に対する抗体を産生しているハイブリドーマの中から、IL−2応答を遮断する活性を有する抗体を産生しているハイブリドーマを選択する方法としては、ILT−Mat細胞を用いる方法以外にも、ヒト細胞を用いて行うヒトIL−2の生物活性測定法である限り、いかなる方法を用いても構わない。こうして得られたハイブリドーマクローンとして、例えばGP−2(FERM P−13576、BP−4641)、GP−4(FERM P−13575、BP−4640)、TUGh4(FERM P−14011、BP−4642)、TUGh5(FERM P−14012、BP−4643)および、AG14(FERM BP−4648)と呼ばれる細胞がある。
【0018】
モノクローナル抗体の大量調製を行うには、GP−2細胞(FERM P−13576、BP−4641)、GP−4細胞(FERM P−13575、BP−4640)、TUGh4細胞(FERM P−14011、BP−4642)、TUGh5細胞(FERM P−14012、BP−4643)あるいは、AG14(FERM BP−4648)を、組織適合性動物、あるいは胸腺欠損ヌードマウスなどの腹腔内に接種して増殖させ、該動物の腹水中に産生された抗体を回収して、塩析、イオン交換クロマトグラフィーなどの操作により精製すればよい。
【0019】
次に、IL−2レセプターγ鎖に結合し、IL−2応答を遮断する活性を有するモノクローナル抗体のV領域からなるポリペプチドは以下のようにして作成することができる。
まず、IL−2レセプターγ鎖に結合し、IL−2応答を遮断する活性を有するモノクローナル抗体産生ハイブリドーマクローンよりtotalRNAを抽出し、モノクローナル抗体のV領域をコードする遺伝子(cDNA)を取得する。本発明者らはより迅速に目的とするcDNAを取得する方法を鋭意工夫し、以下の様な方法により抗体のV領域をコードするcDNAを取得した。
【0020】
すなわち、既に遺伝子の塩基配列が報告されているマウスIgGのH鎖、及びL鎖の塩基配列を基に、それぞれのV領域の遺伝子の5’端、及び3’端に共通性の高い20〜30個の塩基配列を有するDNA分子(プライマーDNA)4種類を考案する。以降、5’側、3’側とはH鎖V領域遺伝子、及びL鎖V領域遺伝子のセンスストランドを基準としている。5’側プライマーとは、センスストランド上の配列を有するDNA分子であり、3’側のプライマーとはセンスストランドの3’端に相補的な配列を有するDNA分子である。
次に考案したL鎖V領域5’側プライマーの5’端に、翻訳開始コドンであるATG配列を付加し、H鎖の3’側プライマーの3’端に翻訳終止コドンを付加する。
もちろん、H鎖V領域5’側プライマーの5’端にATG配列を付加し、L鎖V領域3’側プライマーの3’端に終止コドンを付加しても良い。終止コドンとしてはTAA,TAG,TGAのいずれを用いても良い。尚、本発明の実施例においては、終止コドンとしてTGAを用いた。
なおH鎖及びL鎖のそれぞれのプライマーDNAの5’端(ここでの5’端とは3’側プライマーにおいては該プライマー分子を基準としたときの5’端である)に、発現ベクターに挿入するための適当な制限酵素サイトを導入しておく。デザインしたプライマーDNAはDNA合成機などを用いて化学合成する。
【0021】
次に、得られたハイブリドーマより公知の方法に従ってtotalRNAを抽出し、逆転写酵素と3’側プライマーDNAを用いて一本鎖cDNAを作製し、5’側プライマーDNA及び3’側プライマーDNAを用い、Taqポリメラーゼによる Polymerase Chain Reaction法(PCR法、Science, 230巻, 1350頁, 1985年)にて抗体のH鎖のV領域及びL鎖のV領域をコードするDNA断片のみをそれぞれ選択的に増幅し取得する。
【0022】
H鎖V領域をコードする遺伝子と、L鎖V領域をコードする遺伝子とを大腸菌等で発現させ、機能的な抗体V領域からなるポリペプチドを調製するには、それぞれの遺伝子を2つのベクターに別個に組み込んで発現させるか、又はそれぞれの遺伝子を1つのベクターに同時に組み込んで発現させ、その後H鎖V領域からなるポリペプチドとL鎖V領域からなるポリペプチドをアッセンブリさせてもよいが、その効率は極めて悪いことが知られている(Science, 240巻, 1038頁, 1988年)。
本来抗体は、H鎖とL鎖がSS架橋による共有結合で結合して得られる分子が2つが組み合わさって構成されている。すなわちダイマーの構造をしており、また各分子のH鎖同士がSS結合を形成している。H鎖とL鎖のSS架橋の位置はともに定常領域(以下、C領域と称する)上であり、H鎖V領域とL鎖V領域同士は非共有結合で結合している。
したがって、H鎖V領域からなるポリペプチドとL鎖V領域からなるポリペプチドをアッセンブリさせて抗体V領域のみからなるポリペプチドを調製する場合、両分子の会合は非共有結合のみに頼らなければならないため、機能的な分子の形成効率が悪いものと考えられる。しかし最近になって、H鎖V領域からなるポリペプチドとL鎖V領域からなるポリペプチドをリンカーを用いて連結させ、1本鎖の機能的な分子として調製する技術が開発された(Science, 242巻, 423頁, 1988年)。
本発明者らは当該技術を応用して、機能的でかつ1本鎖の抗IL−2レセプターγ鎖抗体のV領域のみからなるポリペプチドを発現させることに成功した。
【0023】
まず、プロモーター領域を含むDNA、リボゾーム結合領域を含むDNA、ATG配列を付加した5’側プライマーに導入した制限酵素サイトを含むDNA、同鎖3’側プライマーに導入した制限酵素サイトを含むDNA、抗体L鎖V領域と抗体H鎖V領域とをつなぐための適当な長さのリンカーペプチドをコードするDNA、ATG配列を付加していない5’側プライマーに導入した制限酵素サイトを含むDNA、同鎖3’側プライマーに導入した制限酵素サイトを含むDNA、最後にターミネーター領域を含むDNAの順に上流より並べられているDNAを含有する発現ベクターを構築する。
PCRにより増幅したH鎖V領域をコードするDNAと、L鎖V領域をコードするDNAのそれぞれを挿入する場合、リンカーペプチドをコードするDNA及びV領域をコードするDNAの翻訳がずれないように注意する。
【0024】
さて、本発明においてプロモーターの由来は問うところではなく、例えば大腸菌のtrpプロモーター、tacプロモーター、trcプロモーター、lacプロモーターや、λファージのλPLプロモーター、λPRプロモーター、さらには真核細胞のSV40プロモーター、MoloneyLTRプロモーター、CMVプロモーターなどを用いることができる。リボゾーム結合領域は、例えば大腸菌のtrpLやtrpE、lacZのリボゾーム結合領域や、λファージのCII蛋白のリボゾーム結合領域を用いることができる。あるいは化学合成したDNA配列を用いることができる。また、目的とするポリペプチドを大腸菌体内に顆粒状として大量に蓄積させるために、リボゾーム結合領域を2つ以上としてもよい。
【0025】
H鎖V領域からなるポリペプチドとL鎖V領域からなるポリペプチドとを繋ぐためのリンカーペプチドの配列は、得られる抗体V領域からなるポリペプチドが機能的である限りいかなる配列でもよいが、生体内投与時の副作用を最小限とするためになるべく短く、独自の構造を有しないような配列とした方が望ましい。
ターミネーターとしては、例えば大腸菌のtrpAターミネーター、rrnBターミネーター、recAターミネーターなどを用いることができる。また、発現プラスミドのコピー数は一般的に多い方が好ましく、複製起点としてpBR系の複製起点よりpUC系の複製起点を用いた方が望ましい。
【0026】
構築した発現ベクターにPCRにて増幅したH鎖V領域からなるポリペプチドをコードするDNA及びL鎖V領域からなるポリペプチドをコードするDNAをそれぞれ挿入して組換えDNAを得る。挿入後、この組換えDNAを通常の方法で宿主に導入し、そして組換えDNA上の遺伝子を発現させれば良い。宿主としては、原核生物及び真核生物の何れであってもよい。原核生物の例としては、大腸菌、枯草菌などを挙げることができる。真核細胞は例えば酵母、CHO細胞などを用いれば良い。好ましくは原核細胞、更に好ましくは大腸菌を宿主として用いるのが良い。
組換えDNAをこれらの生物に組み込む方法も公知の方法を利用すればよく、例えば大腸菌では、対数増殖期の細胞を50mMの塩化カルシウムで氷中約30分処理することにより、大腸菌の細胞壁の構造を変化させ、続いてプラスミドDNAを注入し約10分後30℃〜42℃で2分間の熱処理を施した後、培地を加え30℃〜37℃で約60分培養することにより、組換えDNAを細胞に組み込むことができる。
【0027】
目的とするIL−2レセプターγ鎖に対するモノクローナル抗体のV領域のみからなるポリペプチドは、組換えDNAで形質転換された細胞を培養することによって当該細胞の体内あるいは培地中に蓄積させることができる。培地は各細胞を培養しうるそれぞれの公知の培地を利用すればよく、培養条件も公知の条件でよい。培養後は、目的とするモノクローナル抗体のV領域のみからなるポリペプチドを公知の方法で取得すればよい。
【0028】
IL−2レセプターγ鎖に結合し、IL−2応答を遮断する活性を有するマウスモノクローナル抗体のC領域をヒト抗体のC領域へと変換したポリペプチド、またはマウスモノクローナル抗体の定常領域、及びV領域の枠組み配列(以下、FRと称する)を各々ヒト抗体のC領域、FRへと変換したポリペプチドは以下のようにして作成することができる。
まず、抗体のH鎖、あるいはL鎖のそれぞれのシグナルペプチドをコードする遺伝子の5’端塩基配列に相当する20〜30個の長さのDNAを合成する。その際、合成されるDNAの5’端に発現ベクターのプロモーター領域の下流への挿入のための制限酵素サイトを導入しておく。続いて抗体のH鎖、あるいはL鎖のそれぞれのV領域をコードする遺伝子の3’端塩基配列の相補的配列に相当する20〜30個の長さのDNAを合成する。同様に該DNAの3’端に、ヒト抗体のC領域cDNAを結合させるための制限酵素サイトを配しておく。
IL−2応答を遮断する活性を有するマウスモノクローナル抗体産生ハイブリドーマより、常法に従ってtotalRNAを調製し、リバーストランスクリプターゼ等を用いて一本鎖cDNAを調製後、合成したDNAをプライマーとしてPCR反応を行い、抗体のH鎖、あるいはL鎖のそれぞれのシグナルペプチド及びV領域をコードするDNA断片を取得する。
【0029】
同様にヒト抗体のC領域遺伝子は、抗体を合成しているヒトB細胞株やヒト形質細胞株よりtotalRNAを調製して、リバーストランスクリプターゼ等を用いてcDNAを調製後、あらかじめ合成した抗体のH鎖、あるいはL鎖のそれぞれのC領域の5’端、及び3’端の部分の塩基配列に相当するDNAをプライマーとしてPCRすることにより得られる。その際、5’側プライマーの5’端の外側には、抗体のH鎖、あるいはL鎖のそれぞれのシグナルペプチド及びV領域をコードするDNA断片を取得する際用いた3’側プライマーに導入した制限酵素サイトと同じサイトを、また、3’側プライマーの5’端の外側には、発現ベクターのプロモーター領域の下流への挿入のための制限酵素サイトを配しておき、V領域3’端とC領域5’端の繋ぎ目は、フレームがずれないようにデザインする。なお、調製する抗体のクラスあるいはサブクラスは、それぞれのクラスあるいはサブクラスの抗体を産生する細胞よりtotalRNAを調製してC領域をコードするDNAを調製することにより、使用目的に応じて自由に決定できる。
【0030】
得られたマウス抗体のシグナルペプチドとV領域とをコードするDNA断片と、ヒト抗体のC領域をコードするDNA断片とを、それぞれに導入したサイトに当たる制限酵素によりそれぞれを切断した後、それぞれを混合する。ついで、これらのDNAを制限酵素により切断された動物細胞で発現可能な発現ベクターに挿入する。発現ベクターを切断するために用いられる制限酵素は、マウス抗体のシグナルペプチドとV領域とをコードするDNA断片と、ヒト抗体のC領域をコードするDNA断片とにPCRプライマーに由来して導入される制限酵素サイトに一致する切断面を生じるものである。なお、マウス抗体のシグナルペプチドとV領域とをコードするDNA断片がH鎖のそれをコードする場合には、ヒト抗体H鎖のC領域をコードするDNA断片と混合して発現ベクターに挿入しなければならず、同様に、マウス抗体のシグナルペプチドとV領域とをコードするDNA断片がL鎖のそれをコードする場合には、ヒト抗体L鎖のC領域をコードするDNA断片と混合して発現ベクターに挿入しなければならない。
最終的に、マウス抗体のシグナルペプチドとV領域とをコードするDNA断片と、ヒト抗体のC領域をコードするDNA断片とが、発現ベクターに正しい方向に挿入されているものをそれぞれ選択する。
【0031】
調製したH鎖またはL鎖のマウス抗体のシグナルペプチド、V領域、及びヒト抗体のC領域をコードする遺伝子を含むそれぞれの発現ベクターを通常の方法により動物細胞に同時に導入する。発現させる宿主は、動物細胞以外でもよいが、その場合は、それぞれの宿主で発現可能なベクターを用いる。
導入後、細胞をクローニングして、その培養上清中に産生されている抗体のIL−2レセプターγ鎖に対する結合活性を測定することにより、目的とするIL−2レセプターγ鎖に結合し、IL−2応答を遮断する活性を有するマウスモノクローナル抗体のC領域をヒト抗体のC領域へと変換したポリペプチドを得ることができる。
【0032】
マウスモノクローナル抗体のC領域、及びV領域のFRを各々ヒト抗体のC領域、FRへと変換したポリペプチドは、以下のようにして調製できる(Medical Immunology、22巻、6号、628頁)。まず、調製したマウスモノクローナル抗体のV領域をコードするDNAから導きだしたアミノ酸配列と、既に知られているヒトの抗体のV領域アミノ酸配列とのホモロジー検索を行い、最もホモロジーの高い配列をH鎖、及びL鎖についてそれぞれ選択する。次に、シグナルペプチドとV領域のFR部分は選択したヒト抗体のアミノ酸配列となるように、またそれ以外のV領域はマウスモノクローナル抗体のアミノ酸配列となるようにデザインして、そのペプチドをコードするDNA断片をH鎖、及びL鎖についてそれぞれデザインし合成する。その際、30〜40個位の塩基の長さとなるようにDNA断片を分割し、それぞれの繋ぎ目は5〜7程度重なるようにして、更に一つおきに本来の配列の相補的配列となるように合成する。また、シグナルペプチドの5’端とV領域の3’端の外側には、それぞれ発現ベクター、ヒトC領域と結合させるための制限酵素サイトを配しておく。それらの合成DNA断片を混合してPCR後、回収した抗体のH鎖及びL鎖それぞれのシグナルペプチドとV領域をコードするDNA断片を、導入した制限酵素サイトに当たる制限酵素により切断する。上述のマウスモノクローナル抗体のH鎖、及びL鎖のC領域をヒト抗体のC領域へと変換したポリペプチドをそれぞれ発現するベクターより、同様の制限酵素を用いてH鎖、及びL鎖のシグナルペプチドとV領域をコードするDNA断片をそれぞれ切断分離し、調製したシグナルペプチドとV領域をコードするDNA断片へとすげ替える。このようにして構築した組換えDNAを上記と同様の方法により動物細胞へ導入し、同様の方法で発現している細胞を選択することにより、目的とするIL−2レセプターγ鎖に結合し、IL−2応答を遮断する活性を有するマウスモノクローナル抗体のC領域、及びV領域のFRを各々ヒト抗体のC領域、FRへと変換したポリペプチド得ることができる。
【0033】
本発明のポリペプチドは、IL−2レセプターγ鎖に特異的に結合して、IL−2の応答を遮断する活性を有しており、臓器移植時の拒絶反応の予防、自己免疫疾患などの治療に対して有効なものである。
また、本発明のモノクローナル抗体は、ここで得られたハイブリドーマクローンの産生するモノクローナル抗体に限定されるものではなく、IL−2レセプターγ鎖に結合し、かつIL−2応答を遮断する活性を有する限り本発明のモノクローナル抗体に含まれる。また、本モノクローナル抗体のC領域を公知の方法により、ヒトC領域へと変換したキメラ抗体、更にV領域のFRをヒト化した抗体も、IL−2レセプターγ鎖に結合し、かつIL−2応答を遮断する活性を有する限り本発明のモノクローナル抗体に含まれる。
また、同じく本発明のポリペプチドの構造は、例えば配列表の配列番号1または2記載の配列であるが、これらに限定されるものではなく、IL−2レセプターγ鎖に結合し、かつIL−2応答を遮断する活性を有する限り本発明のポリペプチドに含まれる。例えば、(1)配列番号1または2記載のポリペプチド構造中の1若しくは複数個のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換した構造を有するポリペプチド、(2)配列番号1または2記載のポリペプチド構造中のN末端及び/またはC末端より1若しくは複数個のアミノ酸残基が欠損し、かつ連続しているアミノ酸配列を有するポリペプチド、(3)配列番号1又は2記載のポリペプチドのN末端及び/またはC末端に1若しくは複数個のアミノ酸残基が付加された構造を有するポリペプチド及び(4)配列番号1又は2記載のポリペプチド構造中の1若しくは複数個のアミノ酸残基がアセチル化、アミド化又はポリエチレン付加された構造を有するポリペプチド、等もIL−2レセプターγ鎖に結合し、IL−2応答を遮断する活性を有する限り本発明のポリペプチドに含まれる。
特に、配列表の配列番号1及び2記載のポリペプチドのN末端のMetは微生物を用いて発現する過程又は精製過程において切断され、その結果N末端がAspとなる場合がある。このポリペプチドも上記活性、即ちヒトIL−2レセプターγ鎖に結合し、IL−2応答を遮断する活性を有する。また、Metが結合した形で生産させた後、アミノペプチダーゼ等の酵素でN末端Metをはずしたものも上記活性を有する。
更に、必要により本発明のモノクローナル抗体、及びポリペプチドに毒素を付加したものを用いても良い。
【0034】
本発明の免疫抑制剤は上記モノクローナル抗体、あるいはポリペプチドを0.1重量%〜100重量%、好ましくは0.5重量%〜70重量%の割合で含有すればよい。したがって、本発明のモノクローナル抗体、あるいはポリペプチドをそのまま投与してもよいし、また通常製剤用担体と混合して調製した製剤の形で投与される。製剤用担体としては、製剤分野において常用され、かつ本発明のモノクローナル抗体、あるいはポリペプチドと反応しない物質が用いられる。注射剤の場合には、本発明のモノクローナル抗体、あるいはポリペプチドを水に溶解させて調製されるが、必要に応じて生理食塩水又はぶどう糖溶液に溶解させてもよく、また緩衝剤、保存剤、安定化剤又は賦形剤を含有させてもよい。また、これらの製剤は治療上価値のある他の成分を含有していてもよい。
【0035】
本発明に係る免疫抑制剤の投与方法としては、経口、注射、直腸内などいずれの方法を用いてもかまわないが、注射による投与が好ましい。投与量は、投与方法、患者の症状、年齢などにより異なるが、通常1回0.001〜1000mg、好ましくは0.01〜10mgを1日当り1〜3回投与すればよい。
【0036】
以下本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明する。尚、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0037】
【実施例】
(実施例1、細胞外領域のみからなるリコンビナントヒトIL−2レセプターγ鎖ポリペプチドの調製)
細胞外領域の3’端にstopコドンを持つIL−2レセプターγ鎖cDNAを調製するため、内部にNdeIサイトを有するオリゴマー5'-GGACATATGCTGAACACGACAATTCTG-3'(配列番号:3)と内部にHindIIIサイトを有するオリゴマー5'-GAAAAGCTTCTATTATGAAGTATTGCTCC-3'(配列番号:4)をDNA合成機380Aにより合成した。両オリゴマーをプライマーとし、IL−2レセプターγ鎖分子のcDNAを含むプラスミド(本プラスミドで形質転換された大腸菌は、通産省工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託番号FERM BP−4200として寄託されている)を鋳型としてサーマルサイクラーを用い、TaqポリメラーゼによるPCR(変性94℃、アニール55℃、合成72℃、20サイクル)を行った。
約0.7kbの増幅されたバンドを回収して、NdeIとHindIII(宝酒造社製)にて切断後、プラスミドpFv(TU27)−DE(本プラスミドで形質転換された大腸菌は、通産省工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託番号FERM BP−3973として寄託されている)をNdeIとHindIIIで切断し回収した大きな断片とライゲーションし、pIL−2RGSを構築した(図1)。
pIL−2RGSで形質転換された大腸菌HB101をM9−カザミノ酸培地にて培養し、大腸菌の菌体内に顆粒として発現させた。大腸菌を超音波破砕し、3,000xgで遠心分離する事により顆粒を分離した。更に、顆粒を6Mグアニジン塩酸にて溶解した後、最終濃度が3,5Mグアニジン塩酸、30μM還元型グルタチオン、3μM酸化型グルタチオン存在下、蛋白濃度が50μg/mlの条件で、室温で一晩攪拌することにより巻戻しを行い、150mMNaClを含む10mMリン酸緩衝液(pH7,5)(以下、PBSと略す)に対して透析する事により、可溶性の細胞外領域のみからなるリコンビナントヒトIL−2レセプターγ鎖ポリペプチドを調製した。
【0038】
(実施例2、ハイブリドーマの調製)
6〜8週令の雌のBALB/cマウスに、細胞外領域のみからなるリコンビナントヒトIL−2レセプターγ鎖ポリペプチドを1匹あたり100μgずつフロインドの完全アジュバント(バクト社製)とともに皮下投与することにより免疫した。3週間おきに同様の操作により2回追加免疫し、マウスの眼窩静脈より採血して、後に述べる方法に従って、細胞外領域のみからなるリコンビナントヒトIL−2レセプターγ鎖ポリペプチドへの結合量を調べることにより抗体価を測定した。抗体価の高かったマウスを更に同様の操作にて最終免疫し、その3日後、脾臓を摘出して脾臓細胞とマウス骨髄腫細胞(SP2/0-Ag14)とを、50%ポリエチレングリコール#4000(ナカライテスク社製)存在下にて、細胞数にして10:1の割合で混合し細胞融合させた。
融合細胞を、10%牛胎児血清(ギブコ社製)を含むRPMI1640培地(ギブコ社製)にて5X106個/mlとなるように懸濁し、1穴あたり5X105個のマウス胸腺細胞を含有する96穴平底プレート(コーニング社製)に100μlずつ分注した。1日、2日、3日、6日後に培地の半量をヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジンを含む培地(HAT培地)と交換し、以後3日ごとに同様の操作を繰り返した。融合より約2週間後、融合した細胞(ハイブリドーマ)の増殖してきた各穴の培養上清に含まれる抗体の、Lγ細胞とLβ細胞への結合量を測定し、Lγ細胞にのみ結合するハイブリドーマを、限界希釈法にてクローン化した。
【0039】
更に同様の方法により、それぞれのハイブリドーマクローンの培養上清中の細胞への結合量を測定して、抗IL−2レセプターγ鎖抗体産生ハイブリドーマを得た。更に、得られた抗IL−2レセプターγ鎖抗体産生ハイブリドーマの培養上清について、以下の方法にてIL−2の生理活性の抑制能を調べた。10%牛胎児血清(FCS)を含むRPMI1640培地にて2X105個/mlの濃度となるように懸濁したILT-Mat細胞液を1穴当たり100μlずつ96穴平底マイクロプレートに分注して、サンプルの培養上清を50μl加え、更に10%FCSを含むRPMI1640培地にて200u/mlに調製したヒトリコンビナントIL−2溶液を50μlずつ加えて、5%CO2存在下37℃にて48時間培養した。最後の4時間は1μCiの3H−チミジン(デュポン社製)を加えて培養し、細胞内に取り込まれた放射活性量をシンチレーシンカウンター(パッカード社製)にて測定することにより、培養上清によるIL−2の生理活性の阻害能を調べた。このような方法にてIL−2レセプターγ鎖分子に対する抗体を産生するハイブリドーマを調製した。こうして得られたハイブリドーマとしてGP−2(FERM P−13576、BP−4641)、GP−4(FERM P−13575、BP−4640)、TUGh4(FERM P−14011、BP−4642)、TUGh5(FERM P−14012、BP−4643)および、AG14(FERM BP−4648)がある。
ハイブリドーマGP−2が産生する抗体をGP−2抗体と呼び、ハイブリドーマGP−4が産生する抗体をGP−4抗体と呼ぶ。ハイブリドーマTUGh4が産生する抗体をTUGh4抗体と呼び、ハイブリドーマTUGh5が産生する抗体をTUGh5抗体と呼ぶ。ハイブリドーマAG14が産生する抗体をAG14抗体と呼ぶ。
【0040】
(実施例3、抗体のV領域のみをコードするcDNAの調製)
5X106個のハイブリドーマGP−2、あるいはGP−4をPBSにて洗浄後、guanidine thiocyanate, N-lauryl sarcosine 及び EDTAを含むRNA抽出用緩衝液(ファルマシア社製)に懸濁した。ハイブリドーマ懸濁液をCesium Cloride溶液(ρ=1.51g/ml,ファルマシア社製)が入ったチューブに重層し、125,000xgにて16時間遠心した。ハイブリドーマ懸濁液とCesium Cloride溶液は等容量とした。上清を吸い取ったのち、残部に1mM EDTAを含む10mMトリス塩酸塩緩衝液(pH7.5)を加えて懸濁を行い、懸濁液を新しいチューブに入れ、65℃で5分間インキュベートした。これに、1/10容量の2M Potassium Acetate(pH5.0)(ファルマシア社製)と3倍容量のエタノール(ナカライテスク社製)を加えて、−20℃で一晩放置した。5,000xgにて20分間の遠心分離を行った後上清を捨て、得られた沈澱を80%エタノールにて洗浄し、沈澱を乾燥させた。
沈澱を1mM EDTAを含む10mMトリス塩酸塩緩衝液(pH7.5)にて溶解してtotalRNA画分溶液とした。
【0041】
次に、totalRNA画分溶液に、抗体のH鎖のV領域の3’側プライマー溶液(最終濃度で1μM)、L鎖のV領域の3’側プライマー溶液(最終濃度で1μM)、deoxyNTP混合液、cDNA合成用緩衝液(アマシャム社製)、RNAase Inhibitor(宝酒造社製)、及びReverse Transcriptase(宝酒造社製)を加えて42℃にて1時間反応させcDNAを合成した。
得られたcDNAに、抗体H鎖V領域のみをコードするcDNAを増幅するために用いる5’側プライマー及び3’側プライマー(それぞれ最終濃度1μM)、及び抗体L鎖V領域のみをコードするcDNAを増幅するために用いる5’側プライマー及び3’側プライマー(それぞれ最終濃度1μM)、deoxy NTP混合液、PCR用緩衝液(シータス社製)及びTaq Polymerase(宝酒造社製)を加えPCR(シータス社、サーマルサイクラー)を行った。反応は変性30秒(94℃)、アニール30秒(55℃)、プライマーイクステンション1分(72℃)にて30サイクル行い、各サイクル毎にプライマーイクステンションの時間を15秒ずつ延長させた。
反応後、1mM EDTAを含む40mMトリス酢酸緩衝液(pH8.0)を用いてアガロースゲル電気泳動を行い、該当するcDNAフラグメントを切り出し、ジーンクリーンキット(バイオ101社製)を用いて抽出・精製した。なお、cDNAの合成、及びPCRに用いたプライマーの配列を図2に示した(配列番号:5−8)。
【0042】
(実施例4、発現ベクターの構築)
図4に示すように、まずpT13SNco(本プラスミドを含有する E. coli AJ−12447は、FERM P−10757、BP−4635 として通産省工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託されている。)[J. Biochem.,104巻, 30頁, 1988年に記載]を制限酵素ClaI及びBamHI(いずれも宝酒造社製)にて切断して得られる大きいDNA断片と、図3に示された配列を有するDNA断片(リンカー、配列番号9、10))とをT4DNAリガーゼ(宝酒造社製)を用いて連結した。図3に示された配列を有するDNA断片はDNA合成機で作成した。
【0043】
次に、プラスミドpT13SNcoに由来するClaI−BamHI大断片と合成DNA断片を連結して得られるプラスミドを制限酵素EcoRIとPvuII(いずれも宝酒造社製)にて切断し、小さいDNA断片(便宜的にA断片と命名する)を得る。
一方、pUC18(Methods in Enzymology, 101巻, 20頁, 1983年)を制限酵素HindIIIで切断し、T4DNAポリメラーゼ(宝酒造社製)を用いて切断面を平滑化し、更にT4リガーゼを用いて自己連結させて、HindIIIサイトを消失させる。HindIIIサイトが消失したpUC18を制限酵素NdeIで切断し、T4DNAポリメラーゼ(宝酒造社製)を用いて切断面を平滑化し、更にT4リガーゼを用いて自己連結させて、NdeIサイトを消失させる。
HindIIIサイトとNdeIサイトが消失したpUC18を、EcoRIとHincII(宝酒造社製)にて切断して得られる大きいDNA断片と、A断片とをT4リガーゼにて連結することにより、複製起点をpUC系のものとするプラスミド pFv-DEを得た。
【0044】
(実施例5、pFv-DEへの抗体V領域cDNAの組み込み、及びV領域のみからなる抗体生産菌の調製)
図5に示すように、まずpFv-DEを制限酵素NdeI及びSalI(宝酒造社製)で切断して大きいDNA断片を得た。この大きいDNA断片と、実施例3で得られたGP−2のL鎖V領域cDNAをNdeI及びSalIで切断した断片とをT4リガーゼを用いて連結した。また、同様にして、大きいDNA断片と、実施例3で得られたGP−4のL鎖V領域cDNAをNdeI及びSalIで切断した断片とをT4リガーゼを用いて連結した。
こうして得られた2種のプラスミドを、それぞれ制限酵素XhoI及びHindIII(宝酒造社製)で切断して大きいDNA断片をそれぞれ調製した。
大きいDNA断片のうちGP−2のL鎖V領域cDNAを含むものと、実施例3で得られたGP−2のH鎖V領域cDNAをXhoI及びHindIIIで切断した断片とをT4リガーゼを用いて連結した。また、同様にして、大きいDNA断片のうちGP−4のL鎖V領域cDNAを含むものと、実施例3で得られたGP−4のH鎖V領域cDNAをXhoI及びHindIIIで切断した断片とをT4リガーゼを用いて連結した。
こうして、V領域のみからなる抗体を発現する2種のプラスミド、すなわち pFv(GP-2)-DE 及び pFv(GP-4)-DE をそれぞれ取得した。
続いてそれぞれのプラスミドで大腸菌HB101株を形質転換し、V領域のみからなる抗体を生産する株として、E. coli pFv(GP-2)-DE/HB101(AJ−12844, FERM P−13607、BP−4636)、及び E. coli pFv(GP-4)-DE/HB101(AJ−12845, FERM P−13608、BP−4637)を得た。
【0045】
(実施例6、V領域のみからなる抗体生産菌より、生産物の取得)
得られた形質転換株 E. coli pFv(GP-2)-DE/HB101(AJ−12844、FERM P−13607、BP−4636)及び E. coli pFv(GP-4)-DE/HB101(AJ−12845, FERM P−13608、BP−4637)それぞれを、50μg/mlのアンピシリンを含む2xTY[1.6%トリプトン、1%酵母エキス、(以上バクト社製)、0.5%NaOH、pH7.0]5ml中で37℃の条件下で一晩生育させた。ついで、その培養懸濁液5mlを100mlのM9−カザミノ酸培地(0.6%Na2HPO4・12H2O、0.3%KH2PO4、0.05%NaCl、0.1%NH4Cl、0.05%MgSO4・7H20、0.00147%CaCl2、0.2%グルコース、0.2%カザミノ酸、0.02%L-ロイシン、0.02%L-プロリン、0.0002%チアミン塩酸塩、100μg/mlアンピシリン、pH6.9)へ接種し、37℃にて3時間培養した。その後、終濃度が25μg/mlとなるように3-インドールアクリル酸(IAA)を添加し、更に37℃にて20時間誘導培養した。菌体懸濁液の一部を位相差顕微鏡により約1500倍に拡大して観察すると、大腸菌体内に顆粒が形成されていることが認められた。
【0046】
続いて上記の如く培養した菌体懸濁液を遠心分離機にかけ菌体を集め、2倍濃縮となるように、30mM NaClを含む20mMTris-HCl緩衝液(pH7.5)を添加して懸濁を行った。懸濁液に、1mg/ml濃度のリゾチームを含む0.5M EDTA(pH8.0)水溶液37.5mlを添加し、攪はんした後、氷中にて1時間放置した。ついで超音波破砕で菌体を破壊し、6000rpm,5分間の遠心分離を行うことにより顆粒を回収した。この顆粒を6M塩酸グアニジン溶液中に可溶化し、さらに溶液の濃度の調製を行って目的ポリペプチド濃度が100μg/mlとなるようにし、かつ塩酸グアニジン濃度が3.5Mとなるようにした。その後、これに酸化型グルタチオンと還元型グルタチオンを添加し、それぞれの終濃度が3μMおよび30μMとなるようにした。続いて、pHを8.0に調整した後、室温で10〜16時間放置した。最後に、PBSを用いて透析を行い、目的とするV領域のみからなる抗体を得た。得られた2種の抗体をそれぞれポリペプチドFv(GP-2)及びポリペプチドFv(GP-4)と命名した。
両ポリペプチドの分子量をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により決定した。その分子量は後述の実施例7に従って推定されたアミノ酸配列から計算される値とそれぞれほぼ一致した。
また、プロテインシークエンサーにてN末端側のアミノ酸配列を検定した。両ポリペプチドとも、後述の実施例7で予想されたアミノ酸配列と同一の配列を有することが確認された。
【0047】
(実施例7、塩基配列の決定、及びアミノ酸配列の推定)
構築したV領域のみからなるポリペプチドを発現するプラスミドpFv(GP-2)-DE、及びpFv(GP-4)-DEをアルカリSDS法にて精製し、市販されているシークエンス用プライマーM4、あるいはRV(宝酒造社製)を用い、7-DEAZAシークエンスキット(宝酒造社製)にて塩基配列を決定した。得られた塩基配列よりアミノ酸配列配列を推定した。
なお、配列表の配列番号1にポリペプチドFv(GP-2)をコードするDNAの塩基配列を示した。また、同塩基配列より推定されるアミノ酸配列を併記した。配列表の配列番号2にポリペプチドFv(GP-4)をコードするDNAの塩基配列を示した。また、同塩基配列より推定されるアミノ酸配列を併記した。
配列表の配列番号1に示されるように、ポリペプチドFv(GP-2)はN末端にMetを、C末端にSerを有する244個のアミノ酸からなるポリペプチドである。また、ポリペプチドFv(GP-4)はN末端にMetを、C末端にSerを有する243個のアミノ酸からなるポリペプチドである。
GP−2が産生する抗体のL鎖V領域は配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列のうち、2番目から109番目に至る配列に当たり、H鎖V領域は124番目から244番目に至る配列に当たる。GP−4が産生する抗体のL鎖V領域は配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列のうち、2番目から108番目に至る配列に当たり、H鎖V領域は123番目から243番目に至る配列に当たる。
【0048】
(実施例8、抗体GP−2、抗体GP−4、ポリペプチドFv(GP-2)、及びポリペプチドFv(GP-4)の活性の検定)
10%FCSを含むRPMI1640培地にて2x105個/mlの濃度となるように懸濁したILT-Mat細胞液を96穴平底マイクロプレート上の各穴に分注した。ILT-Mat細胞液の分注量は1穴当たり100μlずつとした。そこに各サンプル溶液を添加した。添加するサンプル溶液の容量は50μlであり、それぞれに含まれる抗体あるいはポリペプチドの量は、それぞれ40μg/mlであった。
37℃、30分間インキュベートし、更に10%FCSを含むRPMI1640培地を用いて種々の濃度に調製したヒトリコンビナントIL−2溶液を50μlずつ加えて、5%CO2存在下37℃にて48時間培養した。最後の4時間は1μCiの3H−チミジン(デュポン社製)を加えて培養した。
細胞内に取り込まれた放射活性量をシンチレーションカウンター(パッカード社製)にて測定することにより、抗体GP−2、抗体GP−4、ポリペプチドFv(GP-2)、及びポリペプチドFv(GP-4)の応答遮断能を調べた。
その結果図6に示す通り、抗体GP−2、抗体GP−4、ポリペプチドFv(GP-2)、及びポリペプチドFv(GP-4)は、それぞれILT-Mat細胞のIL−2応答を遮断する活性を有していることが明らかとなった。
【0049】
(実施例9、抗IL−2レセプターα鎖抗体、抗IL−2レセプターβ鎖抗体共存下における、モノクローナル抗体GP−2のIL−2応答遮断活性の検定)
10%FCSを含むRPMI1640培地にて4x105個/mlの濃度となるように懸濁したILT-Mat細胞液を96穴平底マイクロプレート上の各穴に分注した。ILT-Mat細胞液の分注量は1穴当たり100μlずつとした。そこに各サンプル溶液を添加した。添加するサンプル溶液の容量は50μlであり、それぞれに含まれる抗体GP−2、抗IL−2レセプターα鎖抗体および抗IL−2レセプターβ鎖抗体の量は、それぞれ40μg/mlであった。
37℃、30分間インキュベートし、更に10%FCSを含むRPMI1640培地を用いて種々の濃度に調製したヒトリコンビナントIL−2溶液を50μlずつ加えて、5%CO2存在下37℃にて48時間培養した。最後の4時間は1μCiの3H−チミジン(デュポン社製)を加えて培養した。
細胞内に取り込まれた放射活性量をシンチレーションカウンター(パッカード社製)にて測定することにより、抗IL−2レセプターα鎖抗体及び/又は抗IL−2レセプターβ鎖抗体と共存させた場合の抗体GP−2の応答遮断能を調べた。
その結果図7に示す通り、モノクローナル抗体GP−2は、抗IL−2レセプターα鎖抗体及び/又は抗IL−2レセプターβ鎖抗体を共存することにより、ILT-Mat細胞のIL−2応答をより効果的に遮断することが明らかとなった。
【0050】
(実施例10、抗体TUGh4、抗体TUGh5および抗体AG14の活性の検定)
10%FCSを含むRPMI1640培地にて2x105個/mlの濃度となるように懸濁したILT-Mat細胞液を96穴平底マイクロプレート上の各穴に分注した。ILT-Mat細胞液の分注量は1穴当たり100μlずつとした。そこに各サンプル溶液を添加した。添加するサンプル溶液の容量は50μlであり、それぞれに含まれる抗体あるいはポリペプチドの量は、それぞれ40μg/mlであった。
37℃、30分間インキュベートし、更に10%FCSを含むRPMI1640培地を用いて種々の濃度に調製したヒトリコンビナントIL−2溶液を50μlずつ加えて、5%CO2存在下37℃にて48時間培養した。最後の4時間は1μCiの3H−チミジン(デュポン社製)を加えて培養した。
細胞内に取り込まれた放射活性量をシンチレーションカウンター(パッカード社製)にて測定することにより、抗体TUGh4、抗体TUGh5および抗体AG14それぞれの応答遮断能を調べた。
その結果、抗体TUGh4、抗体TUGh5および抗体AG14は、それぞれILT-Mat細胞のIL−2応答を遮断する活性を有していることが明らかとなった。
【0051】
(参考例、抗体TUGm2の活性の検定)
モノクローナル抗体TUGm2(実施例2の方法に準拠してラットに免疫することにより作成した抗マウスIL−2レセプターγ鎖抗体)及び/又は抗マウスIL−2レセプターβ鎖抗体(TM−β1;ファーミンジェン社製)を用いて、これらがCTLL細胞のIL−2応答性を遮断するかどうかを調べた。
10%FCSを含むRPMI1640培地にて1x104個/mlの濃度となるように懸濁したCTLL−2細胞液を96穴平底マイクロプレート上の各穴に分注した。CTLL−2細胞液の分注量は1穴当たり50μlずつとした。そこに各サンプル溶液を添加した。添加するサンプル溶液の容量は50μlであり、それぞれに含まれる抗体の量は、それぞれ40μg/mlであった。
37℃、30分間インキュベートし、更に10%FCSを含むRPMI1640培地を用いて種々の濃度に調製したヒトリコンビナントIL−2溶液を50μlずつ加えた。最終的にそれぞれの穴の中の溶液の容量が200μlとなるように10%FCSを含むRPMI1640培地を添加した。
次に、5%CO2存在下37℃にて48時間培養した。最後の4時間は1μCiの3H−チミジン(デュポン社製)を加えて培養した。
細胞内に取り込まれた放射活性量をシンチレーションカウンター(パッカード社製)にて測定することにより、モノクローナル抗体TUGm2及び/又は抗マウスIL−2レセプターβ鎖抗体それぞれの応答遮断能を調べた。
その結果図8に示すとおり、モノクローナル抗体TUGm2は、抗マウスIL−2レセプターβ鎖抗体と共存させることにより、CTLL−2細胞のIL−2応答を遮断することが明らかとなった。
【0052】
【発明の効果】
本発明のヒトIL−2レセプターγ鎖に特異的に結合して、ヒトIL−2レセプターγ鎖とIL−2レセプターβ鎖との結合を選択的に阻害し、IL−2応答を遮断する活性を有するポリペプチドは、単独、あるいはIL−2のIL−2レセプターへの結合を阻害する物質と併用することにより、IL−2の関与が示唆されている臓器移植時の拒絶反応の予防、アレルギー性疾患や自己免疫疾患などの炎症性疾患の治療薬として有効な薬剤として利用し得る有用な物質である。
【0053】
【配列表】
配列番号:1
配列の長さ:732
配列の型:核酸
鎖の数:二本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸
配列の特徴
特徴を表す記号:CDS
存在位置:1..732
配列
Figure 0003844519
Figure 0003844519
【0054】
配列番号:2
配列の長さ:729
配列の型:核酸
鎖の数:二本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の特徴
特徴を表す記号:CDS
存在位置:1..729
配列
Figure 0003844519
Figure 0003844519
【0055】
配列番号:3
配列の長さ:27
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸
配列
Figure 0003844519
【0056】
配列番号:4
配列の長さ:29
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸
配列
Figure 0003844519
【0057】
配列番号:5
配列の長さ:23
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸
配列
Figure 0003844519
【0058】
配列番号:6
配列の長さ:32
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸
配列
Figure 0003844519
【0059】
配列番号:7
配列の長さ:45
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸
配列
Figure 0003844519
【0060】
配列番号:8
配列の長さ:32
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸
配列
Figure 0003844519
【0061】
配列番号:9
配列の長さ:87
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸
配列
Figure 0003844519
【0062】
配列番号:10
配列の長さ:89
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸
配列
Figure 0003844519

【図面の簡単な説明】
【図1】プラスミドpIL-2RGSの構築工程を示す図面である。
【図2】プライマーの配列を示す。
【図3】L鎖V領域とH鎖V領域をつなぐためのリンカーのDNA配列を示す。
【図4】プラスミドpFv-DEの構築工程を示す図面である。
【図5】プラスミドpFv(GP-2)、及びプラスミドpFv(GP-4)の構築工程を示す図面である。
【図6】モノクローナル抗体GP−2、GP−4、Fv(GP−2)、及びFv(GP−4)が、それぞれILT-Mat細胞のIL−2依存的増殖を抑制する活性を有する事を示す図面である。
▲;コントロール抗体添加
■;GP−2抗体添加
□;Fv(GP−2)添加
●;GP−4添加
○;Fv(GP−4)添加
【図7】モノクローナル抗体GP−2、及びGP−4が、抗IL−2レセプターα鎖抗体(H31)、あるいは抗IL−2レセプターβ鎖抗体(TU25)共存下に、それぞれILT-Mat細胞のIL−2依存的増殖を抑制する活性を有することを示す図面である。
▲;コントロール抗体添加
■;GP−2抗体添加
□;抗IL−2Rβ鎖抗体添加
△;抗IL−2Rβ鎖抗体+GP−2抗体添加
○;抗IL−2Rα鎖抗体添加
●;抗IL−2Rα鎖抗体+GP−2抗体添加
◆;抗IL−2Rα鎖抗体+β鎖抗体+GP−2抗体添加
【図8】モノクローナル抗体TUGm2が単独、あるいは抗マウスIL−2レセプターβ鎖抗体と共存させた場合に、それぞれがCTLL−2細胞のIL−2依存的増殖を抑制する活性を有することを示す図面である。
●;抗体なし(培地のみ)
○;抗体TUGm2添加
□;抗IL−2Rβ鎖抗体添加
■;TUGm2+抗IL−2Rβ鎖抗体添加

Claims (6)

  1. ヒトインターロイキン2レセプターγ鎖に特異的に結合し、ヒトインターロイキン2の応答を遮断する活性を有し、かつ、配列番号1または配列番号2記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド。
  2. ポリペプチドが、アミノ酸配列のN末端Metが除かれたポリペプチドである請求項 1 記載のポリペプチド。
  3. 請求項1または請求項2記載のポリペプチドをコードするDNA
  4. DNAが配列番号1記載の塩基配列を有する請求項3記載のDNA。
  5. DNAが配列番号2記載の塩基配列を有する請求項3記載のDNA。
  6. 請求項3乃至5記載のDNAを有する組換えDNA。
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