JP3842472B2 - 液晶表示装置および楕円偏光板 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ベンド配向モードまたは水平配向モードの液晶表示装置、およびそれに用いる楕円偏光板に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置(LCD)は、CRT(cathode ray tube)と比較して、薄型、軽量、低消費電力との大きな利点を有する。液晶表示装置は、液晶セルおよび液晶セルの両側に配置された一対の偏光素子からなる。液晶セルは、棒状液晶性分子、それを封入するための二枚の基板および棒状液晶性分子に電圧を加えるための電極層からなる。封入した棒状液晶性分子を配向させるため、二枚の基板には配向膜が設けられる。
液晶セルに表示される画像の着色を除去するため、液晶セルと偏光素子との間に光学補償シート(位相差板)を設けることが多い。偏光素子(偏光膜)と光学補償シートとの積層体は、楕円偏光板として機能する。光学補償シートに、液晶セルの視野角を拡大する機能を付与する場合もある。光学補償シートとしては、延伸複屈折フイルムが従来から使用されている。
【0003】
延伸複屈折フイルムに代えて、透明支持体上に円盤状化合物を含む光学異方性層を有する光学補償シートを使用することも提案されている。光学異方性層は、円盤状化合物を配向させ、その配向状態を固定することにより形成する。円盤状化合物は、一般に大きな複屈折率を有する。また、円盤状化合物には、多様な配向形態がある。従って、円盤状化合物を用いることで、従来の延伸複屈折フイルムでは得ることができない光学的性質を有する光学補償シートを製造することができる。円盤状化合物を用いた光学補償シートについては、特開平6−214116号公報、米国特許5583679号、同5646703号、西独特許公報3911620A1号の各明細書に記載がある。
【0004】
米国特許4583825号、同5410422号の各明細書には、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置が開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend) 液晶モードとも呼ばれる。ベンド配向モードの液晶表示装置は、応答速度が速いとの利点がある。
水平配向モードでは、棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に水平に配向させ、電圧印加時に実質的に垂直に配向させる。水平配向モードは、平行配向モードあるいはホモジニアス配向モードとも呼ばれる。水平配向モードの液晶セルは、古くから提案されている。最近では、ECB(Elecrically Controlled Birefringence)型液晶表示装置に、水平配向モードの液晶セルが利用されている。ECB型液晶表示装置については、特開平5−203946号公報に記載がある。
【0005】
ベンド配向モードや水平配向モードには、一般的な液晶モード(TNモード、STNモード)と比較すると、視野角が広く、応答速度が速いとの特徴がある。しかし、CRTと比較すると、さらに改良が必要である。
ベンド配向モードや水平配向モードの液晶表示装置をさらに改良するため、一般的な液晶モードと同様に光学補償シートを用いることが考えられる。しかし、従来の延伸複屈折フイルムからなる光学補償シートは、ベンド配向モードや水平配向モードの液晶表示装置では、光学補償機能が不充分であった。
前述したように、延伸複屈折フイルムに代えて、円盤状化合物を含む光学的異方性層と透明支持体とを有する光学補償シートを使用することが提案されている。特開平9−197397号公報(米国特許5805253号)および国際特許出願WO96/37804号明細書(欧州特許出願0783128A号明細書)には、円盤状化合物を含む光学補償シートを使用したベンド配向モードの液晶表示装置が開示されている。円盤状化合物を含む光学補償シートを使用することで、ベンド配向モードの液晶表示装置の視野角は著しく改善される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者が、ベンド配向モードまたは水平配向モードの液晶表示装置に円盤状化合物を含む光学補償シートを使用することを検討したところ、特定の波長の光が漏れて、表示画像に着色が生じる問題を発見した。本発明者の研究により、問題の原因が、楕円偏光板(偏光素子と光学補償シートとの積層体)の透過率の波長依存性にあることが判明した。さらに、本発明者が研究を進めたところ、従来の技術では、光学異方性層、透明支持体および偏光膜の配置に問題があって、透過率に波長依存性が生じていたことが明らかとなった。
従来の技術には、光学異方性層、透明支持体および偏光膜の配置(特に透明支持体の面内遅相軸の方向)について明確な説明がない。しかし、製造の容易さから、円盤状化合物の円盤面の法線の透明支持体面への正射影の平均方向と透明支持体の面内遅相軸と実質的に平行になり、かつ透明支持体の面内遅相軸と偏光膜の面内透過軸との角度が実質的に45゜になるように光学異方性層、透明支持体および偏光膜を配置していたと推定される。
製造工程では、透明支持体ロールの長手方向に、円盤状化合物のラビング処理を行うことが最も容易である。透明支持体ロールの長手方向は、一般に透明支持体の延伸方向であって、透明支持体の面内遅相軸の方向に相当する。ラビング方向は、円盤状化合物の円盤面の法線の透明支持体面への正射影の平均方向になる。また、ベンド配向モードまたは水平配向モードの液晶セルに対する最大の光学補償効果を得るためには、円盤状化合物の円盤面の法線の透明支持体面への正射影の平均方向と偏光膜の面内透過軸との角度が実質的に45゜になるように光学異方性層と偏光膜とを配置する必要がある。
【0007】
面内透過軸が直交するように二枚の偏光膜を配置し、その間に透明支持体を置くと、透過率(T)は、下記式(3)で定義される値になる。
(3) T=sin2(2φ)sin2(πRe/λ)
式中、φは、透明支持体の面内遅相軸と光の入射側の偏光膜の面内透過軸との角度であり;λは、光の波長であり;そして、Reは、波長λにおける透明支持体の面内レターデーション値である。
従来の技術では、透明支持体の面内遅相軸と偏光膜の面内透過軸との角度(φ)が45゜であったため、sin2(2φ)は最大の値(1)になる。そのため、透明支持体の面内レターデーション値(Re)の波長依存性によって、透過率(T)にも波長依存性が生じていた。
本発明の目的は、表示画像に着色を生じることなく、ベンド配向液晶モードまたは水平配向液晶モードの液晶表示装置の視角特性をさらに改善することである。
本発明の目的は、ベンド配向液晶モードおよび水平配向液晶モードの液晶表示装置に適した楕円偏光板を提供することでもある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、下記[1]〜[14]の液晶表示装置および[15]の楕円偏光板により達成された。
[1]ベンド配向モードの液晶セルおよび液晶セルの両側に配置された一対の偏光素子からなる液晶表示装置であって、偏光素子の少なくとも一方が、円盤状化合物を含む光学異方性層、光学異方性を有する透明支持体および偏光膜の積層体からなり、偏光膜が最も外側に配置されている楕円偏光板であり、円盤状化合物の円盤面の法線の透明支持体面への正射影の平均方向と透明支持体の面内遅相軸との角度が実質的に45゜になり、かつ透明支持体の面内遅相軸と偏光膜の面内透過軸とが実質的に平行または実質的に垂直になるように光学異方性層、透明支持体および偏光膜が配置されていることを特徴とする液晶表示装置。
[2]透明支持体が、5乃至100nmの範囲内に下記式(1)で定義されるReレターデーション値を有し、かつ100乃至1000nmの範囲内に下記式(2)で定義されるRthレターデーション値を有する[1]に記載の液晶表示装置。
(1) Re=(nx−ny)×d
(2) Rth=[(nx+ny)/2−nz]×d
式中、nxは、透明支持体の面内遅相軸の屈折率であり;nyは、透明支持体の面内進相軸の屈折率であり;nzは、透明支持体の厚さ方向の屈折率であり;そして、dは透明支持体の厚さである。
【0009】
[3]楕円偏光板が2枚以上の光学異方性を有する透明支持体の積層体を有し、透明支持体の少なくとも1枚が、光学異方性層および偏光膜と上記のように配置されている[1]に記載の液晶表示装置。
[4]楕円偏光板が2枚以上の光学異方性を有する透明支持体の積層体を有し、いずれの透明支持体も、光学異方性層および偏光膜と上記のように配置されている[1]に記載の液晶表示装置。
[5]透明支持体の積層体が、5乃至100nmの範囲内に下記式(1)で定義されるReレターデーション値と100乃至1000nmの範囲内に下記式(2)で定義されるRthレターデーション値とを有する[4]に記載の液晶表示装置。
(1) Re=(nx−ny)×d
(2) Rth=[(nx+ny)/2−nz]×d
式中、nxは、透明支持体の積層体の面内遅相軸の屈折率であり;nyは、透明支持体の積層体の面内進相軸の屈折率であり;nzは、透明支持体の積層体の厚さ方向の屈折率であり;そして、dは透明支持体の積層体の厚さである。
【0010】
[6]透明支持体の積層体が、セルロースエステルフイルムおよびポリカーボネートフイルムからなり、光学異方性層側からこの順に積層されている[3]または[4]に記載の液晶表示装置。
[7]楕円偏光板が、光学異方性層、透明支持体および偏光膜の順序の積層体からなる[1]に記載の液晶表示装置。
[8]楕円偏光板が、光学異方性層、2枚以上の光学異方性を有する透明支持体および偏光膜の順序の積層体からなり、最も偏光膜に近い透明支持体が、透明支持体の面内遅相軸と偏光膜の面内透過軸とが実質的に平行になるように配置されている[5]に記載の液晶表示装置。
[9]偏光素子の両方が、円盤状化合物を含む光学異方性層、光学異方性を有する透明支持体および偏光膜の積層体からなる楕円偏光板であり、それぞれの楕円偏光板において、光学異方性層、透明支持体および偏光膜が上記のように配置されている請求項1に記載の液晶表示装置。
くとも1枚が、光学異方性を有し、かつ光学異方性層および偏光膜と上記のように配置されている[1]に記載の液晶表示装置。
【0011】
[10]水平配向モードの液晶セルおよび液晶セルの両側に配置された一対の偏光素子からなる液晶表示装置であって、偏光素子の少なくとも一方が、円盤状化合物を含む光学異方性層、光学異方性を有する透明支持体および偏光膜の積層体からなり、偏光膜が最も外側に配置されている楕円偏光板であり、円盤状化合物の円盤面の法線の透明支持体面への正射影の平均方向と透明支持体の面内遅相軸との角度が実質的に45゜になり、かつ透明支持体の面内遅相軸と偏光膜の面内透過軸とが実質的に平行または実質的に垂直になるように光学異方性層、透明支持体および偏光膜が配置されていることを特徴とする液晶表示装置。
[11]透明支持体が、5乃至100nmの範囲内に下記式(1)で定義されるReレターデーション値を有し、かつ100乃至1000nmの範囲内に下記式(2)で定義されるRthレターデーション値を有する[10]に記載の液晶表示装置。
(1) Re=(nx−ny)×d
(2) Rth=[(nx+ny)/2−nz]×d
式中、nxは、透明支持体の面内遅相軸の屈折率であり;nyは、透明支持体の面内進相軸の屈折率であり;nzは、透明支持体の厚さ方向の屈折率であり;そして、dは透明支持体の厚さである。
[12]偏光素子の両方が、円盤状化合物を含む光学異方性層、光学異方性を有する透明支持体および偏光膜の積層体からなる楕円偏光板であり、それぞれの楕円偏光板において、光学異方性層、透明支持体および偏光膜が上記のように配置されている[10]に記載の液晶表示装置。
【0012】
[13]円盤状化合物を含む光学異方性層、光学異方性を有する透明支持体および偏光膜の積層体からなり、偏光膜が外側に配置されている楕円偏光板であって、円盤状化合物の円盤面の法線の透明支持体面への正射影の平均方向と透明支持体の面内遅相軸との角度が実質的に45゜になり、かつ透明支持体の面内遅相軸と偏光膜の面内透過軸とが実質的に平行または実質的に垂直になるように光学異方性層、透明支持体および偏光膜が配置されていることを特徴とする楕円偏光板。
なお、本明細書において、「実質的に垂直」、「実質的に平行」あるいは「実質的に45゜」とは、厳密な角度よりも±5°未満の範囲内であることを意味する。この範囲は、±4°未満であることが好ましく、±3°未満であることがさらに好ましく、±2°未満であることが最も好ましい。
また、本明細書において、「遅相軸(slow axis) 」は屈折率が最大となる方向を、「進相軸(fast axis)」は屈折率が最小となる方向、そして「透過軸(transmission axis)」は透過率が最大となる方向をそれぞれ意味する。
【0013】
【発明の効果】
本発明者は、光学異方性層、透明支持体および偏光膜の配置を変更することにより、表示画像に着色を生じることなく、ベンド配向液晶モードまたは水平配向液晶モードの液晶表示装置の視角特性をさらに改善することに成功した。
前記式(3)を再び引用する。
(3) T=sin2(2φ)sin2(πRe/λ)
式中、φは、透明支持体の面内遅相軸と光の入射側の偏光膜の面内透過軸との角度であり;λは、光の波長であり;そして、Reは、波長λにおける透明支持体の面内レターデーション値である。
本発明では、透明支持体の面内遅相軸と偏光膜の面内透過軸との角度(φ)を0゜または90゜に調整することによって、sin2(2φ)を最小の値(0)にする。そのため、透明支持体の面内レターデーション値(Re)が波長依存性を有していても、その波長依存性は透過率(T)には影響しない。
一方、光学異方性層と偏光膜との配置は、従来の技術と同様に、円盤状化合物の円盤面の法線の透明支持体面への正射影の平均方向と偏光膜の面内透過軸との角度が実質的に45゜になるように設定されている。従って、ベンド配向モードまたは水平配向モードの液晶セルに対しては、従来の技術と同様に、最大の光学補償効果が得られている。
以上の結果、本発明の液晶表示装置では、表示画像に着色を生じることなく、ベンド配向液晶モードまたは水平配向液晶モードの液晶表示装置の優れた視角特性がさらに改善されている。
なお、製造の容易さの観点では、従来の技術の方が本発明よりも有利である。ただし、従来の技術では、透明支持体ロールの長手方向に円盤状化合物のラビング処理を行っていたのに対して、本発明では、透明支持体ロールの長手方向に対して45゜の方向で円盤状化合物のラビング処理を行えばよい。従って、従来の製造装置を少し設計変更するだけで、本発明の液晶表示装置あるいは楕円偏光板を製造できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
最初に、添付の図面を引用しながら、液晶表示装置および楕円偏光板を説明する。
図1は、ベンド配向液晶セル内の液晶性化合物の配向を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、ベンド配向液晶セルは、上基板(14a)と下基板(14b)の間に液晶性化合物(11)を封入した構造を有する。ベンド配向液晶セルに使用する液晶性化合物(11)は、一般に正の誘電率異方性を有する。液晶セルの上基板(14a)と下基板(14b)は、それぞれ、配向膜(12a、12b)と電極層(13a、13b)を有する。配向膜は棒状液晶性分子(11a〜11j)を配向させる機能を有する。RDは配向膜のラビング方向である。電極層は棒状液晶性分子(11a〜11j)に電圧を印加する機能を有する。
ベンド配向液晶セルの印加電圧が低い時、図1のoffに示すように、液晶セルの上基板(14a)側の棒状液晶性分子(11a〜11e)と下基板(14b)側の棒状液晶性分子(11f〜11j)とは、実質的に逆の向きに(上下対称に)に配向する。また、基板(14a、14b)近傍の棒状液晶性分子(11a、11b、11i、11j)は、ほぼ水平方向に配向し、液晶セル中央部の棒状液晶性分子(11d〜11g)は、ほぼ垂直方向に配向する。
図1のonに示すように、印加電圧が高いと、基板(14a、14b)近傍の棒状液晶性分子(11a、11j)は、ほぼ水平に配向したままである。また、液晶セル中央部の棒状液晶性分子(11e、11f)は、ほぼ垂直に配向したままである。電圧の増加により配向が変化するのは、基板と液晶セル中央部との中間に位置する棒状液晶性分子(11b、11c、11d、11g、11h、11i)であり、これらはoffの状態よりも垂直に配向する。しかし、液晶セルの上基板(14a)側の棒状液晶性分子(11a〜11e)と下基板(14b)側の棒状液晶性分子(11f〜11j)とが、実質的に逆の向きに(上下対称に)に配向することは、offの状態と同様である。
【0015】
図2は、水平配向液晶セル内の液晶性化合物の配向を模式的に示す断面図である。
図2に示すように、水平配向液晶セルも、上基板(24a)と下基板(24b)の間に液晶性化合物(21)を封入した構造を有する。水平配向液晶セルに使用する液晶性化合物(21)も、一般に正の誘電率異方性を有する。液晶セルの上基板(24a)と下基板(24b)は、それぞれ、配向膜(22a、22b)と電極層(23a、23b)を有する。配向膜は棒状液晶性分子(21a〜21e)を配向させる機能を有する。RDは配向膜のラビング方向である。電極層は棒状液晶性分子(21a〜21j)に電圧を印加する機能を有する。
水平配向液晶セルの印加電圧が低い時、図2のoffに示すように、棒状液晶性分子(21a〜21j)は、実質的に水平に配向している。ただし、完全に水平方向に配向しているのではなく、一定の方向に、わずかに傾斜(プレチルト)している。これは、電圧印加時に、棒状液晶性分子(21a〜21j)を全て一定の方向(プレチルト方向)に傾けるためである。
図2のonに示すように、印加電圧が高いと、棒状液晶性分子(21a〜211j)は、offの状態よりも垂直方向に配向する。ただし、基板(24a、24b)近傍の棒状液晶性分子(21a、21j)は、ほぼ水平方向のままであり、液晶セル中央部の棒状液晶性分子(21d〜21g)は、ほぼ垂直に配向する。
【0016】
図3は、本発明に従う楕円偏光板を示す模式図である。
図3に示すように、楕円偏光板は、円盤状化合物(31a〜31e)を含む光学異方性層(31)、光学異方性を有する透明支持体(33)および偏光膜(34)の積層体からなる。図3に示す楕円偏光板は、光学異方性層(31)と透明支持体(33)との間に配向膜(32)を有する。
光学異方性層(31)に含まれる円盤状化合物(31a〜31e)は、平面分子である。円盤状化合物(31a〜31e)は、分子中にはただ一個の平面、すなわち円盤面を持つ。円盤面は、透明支持体(33)の面に対して傾斜している。円盤面と支持体面との間の角度(傾斜角)は、円盤状化合物と配向膜からの距離が増加するに伴って増加している。平均傾斜角は、15乃至50°の範囲であることが好ましい。図3に示すように傾斜角を変化させると、楕円偏光板の視野角拡大機能が著しく向上する。また、傾斜角を変化させた楕円偏光板には、表示画像の反転、階調変化あるいは着色の発生を防止する機能もある。
円盤状化合物(31a〜31e)の円盤面の法線(NL)を透明支持体面へ正射影した方向(PL)の平均は、配向膜(32)のラビング方向(RD)と反平行の関係になる。本発明では、円盤状化合物の円盤面の法線の透明支持体面への正射影の平均方向と透明支持体(33)の面内遅相軸(SA)との角度を実質的に45゜にする。よって、楕円偏光板の製造工程では、配向膜(32)のラビング方向(RD)と透明支持体の面内遅相軸(SA)との角度(θ)が実質的に45゜になるように調節すればよい。
さらに、本発明では、透明支持体(33)の面内遅相軸(SA)と偏光膜(34)の面内透過軸(TA)とが実質的に平行または実質的に垂直になるように透明支持体と偏光膜とを配置する。図3に示す楕円偏光板では、一枚の透明支持体を平行に配置している。透明支持体(33)の面内遅相軸(SA)は、原則として透明支持体の延伸方向に相当する。偏光膜(34)の面内透過軸(TA)は、原則として偏光膜の延伸方向に垂直な方向に相当する。
【0017】
図4は、本発明に従うベンド配向型液晶表示装置を示す模式図である。
図4に示す液晶表示装置は、ベンド配向液晶セル(10)、液晶セルの両側に配置された一対の楕円偏光板(31A〜34A、31B〜34B)およびバックライト(BL)からなる。
ベンド配向液晶セル(10)は、図1に示した液晶セルに相当する。液晶セル(10)の上下のラビング方向(RD2、RD3)は、同一方向(平行)である。
楕円偏光板は、液晶セル(10)側から、光学異方性層(31A、31B)、透明支持体(33A、33B)および偏光膜(34A、34B)がこの順に積層されている。光学異方性層(31A、31B)の円盤状化合物のラビング方向(RD1、RD4)は、対面する液晶セルのラビング方向(RD2、RD3)とは反平行の関係にある。前述したように、円盤状化合物のラビング方向(RD1、RD4)は、円盤面の法線を透明支持体面へ正射影した平均方向と反平行になる。透明支持体(33A、33B)の面内遅相軸(SA1、SA2)および偏光膜(34A、34B)の面内透過軸(TA1、TA2)は、円盤状化合物のラビング方向(RD1、RD4)と同一平面では実質的に45゜の角度になる。そして、二枚の偏光膜(34A、34B)は、面内透過軸(TA1、TA2)が互いに直交するよう(クロスニコル)に配置されている。
【0018】
図5は、ベンド配向型液晶表示装置における光学補償の関係を示す概念図である。
図5に示すように、本発明に従う液晶表示装置では、ベンド配向液晶セル(10)を、円盤状化合物を含む光学異方性層(31A、31B)と光学異方性を有する透明支持体(33A、33B)とが協調して、光学的に補償する。
光学異方性層(31A、31B)の円盤状化合物のラビング方向(RD1、RD4)を、液晶セルのラビング方向(RD2、RD3)とは反平行の関係に設定したことにより、ベンド配向液晶セル(10)の液晶性分子と光学異方性層(31A、31B)の円盤状化合物とが対応(a〜c、e〜g)して、光学的に補償する。そして、ベンド配向液晶セル(10)中央部の実質的に垂直に配向している液晶性分子には、透明支持体(33A、33B)の光学異方性が対応(d、h)するように設計されている。なお、透明支持体(33A、33B)に記入した楕円は、透明支持体の光学異方性により生じる屈折率楕円である。
【0019】
図6は、本発明に従う水平配向型液晶表示装置を示す模式図である。
図6に示す液晶表示装置は、水平配向液晶セル(20)、液晶セルの両側に配置された一対の楕円偏光板(31A〜34A、31B〜34B)およびバックライト(BL)からなる。
水平配向液晶セル(20)は、図2に示した液晶セルに相当する。液晶セル(20)の上下のラビング方向(RD2、RD3)は、反対方向(反平行)である。
楕円偏光板は、液晶セル(20)側から、光学異方性層(31A、31B)、透明支持体(33A、33B)および偏光膜(34A、34B)がこの順に積層されている。光学異方性層(31A、31B)の円盤状化合物のラビング方向(RD1、RD4)は、対面する液晶セルのラビング方向(RD2、RD3)とは反平行の関係にある。前述したように、円盤状化合物のラビング方向(RD1、RD4)は、円盤面の法線を透明支持体面へ正射影した平均方向の反平行になる。透明支持体(33A、33B)の面内遅相軸(SA1、SA2)および偏光膜(34A、34B)の面内透過軸(TA1、TA2)は、円盤状化合物のラビング方向(RD1、RD4)と同一平面では実質的に45゜の角度になる。そして、二枚の偏光膜(34A、34B)は、面内透過軸(TA1、TA2)が互いに直交するよう(クロスニコル)に配置されている。
【0020】
図7は、水平配向型液晶表示装置における光学補償の関係を示す概念図である。
図7に示すように、本発明に従う液晶表示装置では、水平配向液晶セル(20)を、円盤状化合物を含む光学異方性層(31A、31B)と光学異方性を有する透明支持体(33A、33B)とが協調して、光学的に補償する。
光学異方性層(31A、31B)の円盤状化合物のラビング方向(RD1、RD4)を、液晶セルのラビング方向(RD2、RD3)とは反平行の関係に設定したことにより、水平配向液晶セル(20)の液晶性分子と光学異方性層(31A、31B)の円盤状化合物とが対応(a〜c、e〜g)して、光学的に補償する。そして、水平配向液晶セル(20)中央部の実質的に垂直に配向している液晶性分子には、透明支持体(33A、33B)の光学異方性が対応(d、h)するように設計されている。なお、透明支持体(33A、33B)に記入した楕円は、透明支持体の光学異方性により生じる屈折率楕円である。
【0021】
図8は、楕円偏光板の様々な態様を示す模式図である。
図8のa1の態様は、図3で示した最も基本的な楕円偏光板に相当する。a1の態様の楕円偏光板は、円盤状化合物を含む光学異方性層(31)、光学異方性を有する透明支持体(33)および偏光膜(34)がこの順に積層されている。円盤状化合物のラビング方向(RD)と透明支持体(33)の遅相軸(SA)との角度は実質的に45゜であり、透明支持体(33)の遅相軸(SA)と偏光膜(34)の透過軸(TA)は実質的に平行である。
図8のa2の態様も、円盤状化合物を含む光学異方性層(31)、光学異方性を有する透明支持体(33)および偏光膜(34)がこの順に積層されている。円盤状化合物のラビング方向(RD)と透明支持体(33)の遅相軸(SA)との角度は実質的に45゜であり、透明支持体(33)の遅相軸(SA)と偏光膜(34)の透過軸(TA)は実質的に垂直である。
図8のa3の態様は、二枚の透明支持体(33a、33b)を有する。本発明では、二枚の透明支持体のうち、少なくとも一枚(図では33b)が、前述した定義を満足するように、光学異方性層(31)および偏光膜(34)と配置されていればよい。すなわち、円盤状化合物のラビング方向(RD)と一枚の透明支持体(33b)の遅相軸(SA2)との角度は実質的に45゜であり、その透明支持体(33b)の遅相軸(SA2)と偏光膜(34)の透過軸(TA)は実質的に平行である。a3の態様では、もう一枚の透明支持体(33a)は、従来の技術と同様に、遅相軸(SA1)が円盤状化合物のラビング方向(RD)と実質的に平行になるように配置されている。
図8のa4の態様では、二枚の透明支持体(33a、33b)のいずれも、前述した定義を満足するように、光学異方性層(31)および偏光膜(34)と配置されている。すなわち、円盤状化合物のラビング方向(RD)と二枚の透明支持体(33a、33b)の遅相軸(SA1、SA2)との角度は、いずれも実質的に45゜であり、二枚の透明支持体(33a、33b)の遅相軸(SA1、SA2)と偏光膜(34)の透過軸(TA)は、いずれも実質的に平行である。
図8のa5の態様でも、二枚の透明支持体(33a、33b)のいずれも、前述した定義を満足するように、光学異方性層(31)および偏光膜(34)と配置されている。すなわち、円盤状化合物のラビング方向(RD)と二枚の透明支持体(33a、33b)の遅相軸(SA1、SA2)との角度は、いずれも実質的に45゜であり、光学異方性層(31)に近い透明支持体(33a)の遅相軸(SA1)と偏光膜(34)の透過軸(TA)は、実質的に垂直であり、そして偏光膜(34)に近い透明支持体(33b)の遅相軸(SA2)と偏光膜(34)の透過軸(TA)は、実質的に平行である。
【0022】
図9は、楕円偏光板の別の様々な態様を示す模式図である。
図9のb1の態様の楕円偏光板は、光学異方性を有する透明支持体(33)、円盤状化合物を含む光学異方性層(31)および偏光膜(34)がこの順に積層されている。円盤状化合物のラビング方向(RD)と透明支持体(33)の遅相軸(SA)との角度は実質的に45゜であり、透明支持体(33)の遅相軸(SA)と偏光膜(34)の透過軸(TA)は実質的に平行である。
図9のb2の態様も、光学異方性を有する透明支持体(33)、円盤状化合物を含む光学異方性層(31)および偏光膜(34)がこの順に積層されている。円盤状化合物のラビング方向(RD)と透明支持体(33)の遅相軸(SA)との角度は実質的に45゜であり、透明支持体(33)の遅相軸(SA)と偏光膜(34)の透過軸(TA)は実質的に垂直である。
図9のb3の態様は、二枚の透明支持体(33a、33b)を有する。本発明では、二枚の透明支持体のうち、少なくとも一枚(図では33b)が、前述した定義を満足するように、光学異方性層(31)および偏光膜(34)と配置されていればよい。すなわち、円盤状化合物のラビング方向(RD)と一枚の透明支持体(33b)の遅相軸(SA2)との角度は実質的に45゜であり、その透明支持体(33b)の遅相軸(SA2)と偏光膜(34)の透過軸(TA)は実質的に平行である。b3の態様では、もう一枚の透明支持体(33a)は、従来の技術と同様に、遅相軸(SA1)が円盤状化合物のラビング方向(RD)と実質的に平行になるように配置されている。
図9のb4の態様では、二枚の透明支持体(33a、33b)のいずれも、前述した定義を満足するように、光学異方性層(31)および偏光膜(34)と配置されている。すなわち、円盤状化合物のラビング方向(RD)と二枚の透明支持体(33a、33b)の遅相軸(SA1、SA2)との角度は、いずれも実質的に45゜であり、二枚の透明支持体(33a、33b)の遅相軸(SA1、SA2)と偏光膜(34)の透過軸(TA)は、いずれも実質的に平行である。
図9のb5の態様でも、二枚の透明支持体(33a、33b)のいずれも、前述した定義を満足するように、光学異方性層(31)および偏光膜(34)と配置されている。すなわち、円盤状化合物のラビング方向(RD)と二枚の透明支持体(33a、33b)の遅相軸(SA1、SA2)との角度は、いずれも実質的に45゜であり、光学異方性層(31)および偏光膜(34)から遠い透明支持体(33a)の遅相軸(SA1)と偏光膜(34)の透過軸(TA)は、実質的に垂直であり、そして光学異方性層(31)および偏光膜(34)に近い透明支持体(33b)の遅相軸(SA2)と偏光膜(34)の透過軸(TA)は、実質的に平行である。
【0023】
[楕円偏光板の光学特性]
楕円偏光板は、円盤状化合物を含む光学異方性層、光学異方性を有する透明支持体および偏光膜を有する。
光学異方性層には、レターデーション値が0となる方向(光軸)が存在しないことが好ましい。また、光学異方性層には、レターデーションの絶対値が最小となる方向が光学異方性層の面内にも法線方向にも存在しないことが好ましい。
光学異方性層および透明支持体の光学的性質としては、下記式(1)で定義されるReレターデーション値および下記式(2a)または(2b)で定義されるRthレターデーション値が重要である。
(1) Re=(nx−ny)×d
(2a)Rth=[(n2+n3)/2−n1]×d
(2b)Rth=[(nx+ny)/2−nz]×d
式中、nxは、光学異方性層または透明支持体の面内遅相軸の屈折率であり;nyは、光学異方性層または透明支持体の面内進相軸の屈折率であり;n1は、光学異方性層の屈折率主値の最小値であり;n2およびn3は、光学異方性層のその他の屈折率主値であり;nzは、透明支持体の厚さ方向の屈折率であり;そして、dは光学異方性層または透明支持体の厚さである。
光学異方性層のReレターデーション値は、10乃至100nmであることが好ましい。光学異方性層のRthレターデーション値は、40乃至200nmであることが好ましい。また、光学異方性層では、屈折率の主値の最小値の方向とフイルム法線との角度(β)が、20乃至50゜であることが好ましい。
【0024】
透明支持体の好ましいレターデーション値は、楕円偏光板をベンド配向液晶セルに用いる場合と、水平配向液晶セルに用いる場合とで異なる。
楕円偏光板をベンド配向液晶セルに用いる場合、透明支持体(二枚以上の透明支持体を用いる場合は、それらの積層体)のReレターデーション値は、5乃至100nmであることが好ましく、Rthレターデーション値は、100乃至1000nmであることが好ましい。
楕円偏光板を水平配向液晶セルに用いる場合、透明支持体(二枚以上の透明支持体を用いる場合は、それらの積層体)のReレターデーション値は、0乃至100nmであることが好ましく、Rthレターデーション値は、10乃至1000nmであることが好ましい。
二枚の透明支持体を用いる場合(特にベンド配向液晶セルに用いる場合)、セルロースエステルフイルムとポリカーボネートフイルムとの併用が好ましい(詳細は後述)。
楕円偏光板をベンド配向液晶セルに用いる場合、セルロースエステルフイルムのReレターデーション値は、0乃至30nmであることが好ましく、Rthレターデーション値は、10乃至100nmであることが好ましい。また、ポリカーボネートフイルムのReレターデーション値は、5乃至100nmであることが好ましく、Rthレターデーション値は、100乃至1000nmであることが好ましい。
【0025】
本発明の液晶表示装置には、光学補償作用の波長依存性が低いとの特徴がある。光学補償作用の波長依存性が低いとは、具体的には、液晶表示装置に使用する光学異方性層と透明支持体のReレターデーションの合計値(二枚の楕円偏光板を使用する場合は、全ての光学異方性層と透明支持体の合計値)と液晶セルのReレターデーションとの差は、400乃至700nmの範囲のいずれの波長においても、10nm以下であることを意味する。本発明に従い、楕円偏光板の光学異方性層、透明支持体および偏光膜を配置することで、この値は容易に達成できる。
【0026】
[光学異方性層]
光学異方性層は円盤状化合物を含む。光学異方性層は、負の一軸性を有し傾斜配向した円盤状化合物を含む層であることが好ましい。円盤状化合物は、図3に示したように、円盤状化合物の円盤面と透明支持体面とのなす角が、光学異方性層の深さ方向において変化している(ハイブリッド配向している)ことが好ましい。円盤状化合物の光軸は、円盤面の法線方向に存在する。円盤状化合物は、光軸方向の屈折率よりも円盤面方向の屈折率が大きな複屈折性を有する。
光学異方性層は、後述する配向膜によって円盤状化合物を配向させ、その配向状態の円盤状化合物を固定することによって形成することが好ましい。円盤状化合物は、重合反応により固定することが好ましい。
なお、光学異方性層には、レターデーション値が0となる方向が存在しない。言い換えると、光学異方性層のレターデーションの最小値は、0を越える値である。
円盤状化合物は、様々な文献(C. Destrade et al., Mol. Crysr. Liq. Cryst., vol. 71, page 111 (1981) ;日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B. Kohne et al., Angew. Chem. Soc. Chem. Comm., page 1794 (1985);J. Zhang et al., J. Am. Chem. Soc., vol. 116, page 2655 (1994))に記載されている。円盤状化合物の重合については、特開平8−27284公報に記載がある。
円盤状化合物を重合により固定するためには、円盤状化合物の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。ただし、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に、連結基を導入する。従って、重合性基を有する円盤状化合物は、下記式(I)で表わされる化合物であることが好ましい。
【0027】
(I) D(−L−P)n
式中、Dは円盤状コアであり;Lは二価の連結基であり;Pは重合性基であり;そして、nは4乃至12の整数である。
円盤状コア(D)の例を以下に示す。以下の各例において、LP(またはPL)は、二価の連結基(L)と重合性基(P)との組み合わせを意味する。
【0028】
【化1】
Figure 0003842472
【0029】
【化2】
Figure 0003842472
【0030】
【化3】
Figure 0003842472
【0031】
【化4】
Figure 0003842472
【0032】
【化5】
Figure 0003842472
【0033】
【化6】
Figure 0003842472
【0034】
【化7】
Figure 0003842472
【0035】
【化8】
Figure 0003842472
【0036】
【化9】
Figure 0003842472
【0037】
式(I)において、二価の連結基(L)は、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−CO−、−NH−、−O−、−S−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。二価の連結基(L)は、アルキレン基、アリーレン基、−CO−、−NH−、−O−および−S−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることがさらに好ましい。二価の連結基(L)は、アルキレン基、アリーレン基、−CO−および−O−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることが最も好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1乃至12であることが好ましい。アルケニレン基の炭素原子数は、2乃至12であることが好まし。アリーレン基の炭素原子数は、6乃至10であることが好ましい。
【0038】
二価の連結基(L)の例を以下に示す。左側が円盤状コア(D)に結合し、右側が重合性基(P)に結合する。ALはアルキレン基またはアルケニレン基、ARはアリーレン基を意味する。なお、アルキレン基、アルケニレン基およびアリーレン基は、置換基(例、アルキル基)を有していてもよい。
L1:−AL−CO−O−AL−
L2:−AL−CO−O−AL−O−
L3:−AL−CO−O−AL−O−AL−
L4:−AL−CO−O−AL−O−CO−
L5:−CO−AR−O−AL−
L6:−CO−AR−O−AL−O−
L7:−CO−AR−O−AL−O−CO−
L8:−CO−NH−AL−
L9:−NH−AL−O−
L10:−NH−AL−O−CO−
【0039】
L11:−O−AL−
L12:−O−AL−O−
L13:−O−AL−O−CO−
L14:−O−AL−O−CO−NH−AL−
L15:−O−AL−S−AL−
L16:−O−CO−AR−O−AL−CO−
L17:−O−CO−AR−O−AL−O−CO−
L18:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−CO−
L19:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−AL−O−CO−
L20:−S−AL−
L21:−S−AL−O−
L22:−S−AL−O−CO−
L23:−S−AL−S−AL−
L24:−S−AR−AL−
【0040】
式(I)の重合性基(P)は、重合反応の種類に応じて決定する。重合性基(P)の例を以下に示す。
【0041】
【化10】
Figure 0003842472
【0042】
【化11】
Figure 0003842472
【0043】
【化12】
Figure 0003842472
【0044】
【化13】
Figure 0003842472
【0045】
【化14】
Figure 0003842472
【0046】
【化15】
Figure 0003842472
【0047】
重合性基(P)は、不飽和重合性基(P1、P2、P3、P7、P8、P15、P16、P17)またはエポキシ基(P6、P18)であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基(P1、P7、P8、P15、P16、P17)であることが最も好ましい。
式(I)において、nは4乃至12の整数である。具体的な数字は、円盤状コア(D)の種類に応じて決定される。なお、複数のLとPの組み合わせは、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
光学異方性層は、円盤状化合物および必要に応じて重合性開始剤や任意の成分を含む塗布液を、配向膜の上に塗布することで形成できる。
光学異方性層の厚さは、0.5乃至100μmであることが好ましく、0.5乃至30μmであることがさらに好ましい。
【0048】
配向させた円盤状化合物を、配向状態を維持して固定する。固定化は、重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01乃至20重量%であることが好ましく、0.5乃至5重量%であることがさらに好ましい。
円盤状化合物の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。
照射エネルギーは、20乃至5000mJ/cm2 であることが好ましく、100乃至800mJ/cm2 であることがさらに好ましい。また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
保護層を、光学異方性層の上に設けてもよい。
【0049】
[配向膜]
配向膜は、光学異方性層の円盤状化合物の配向方向を規定する機能を有する。配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で、設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
配向膜は、ポリマーのラビング処理により形成することが好ましい。ポリビニルアルコールが、好ましいポリマーである。疎水性基が結合している変性ポリビニルアルコールが特に好ましい。疎水性基は光学異方性層の円盤状化合物と親和性があるため、疎水性基をポリビニルアルコールに導入することで、円盤状化合物を均一に配向させることができる。疎水性基は、ポリビニルアルコールの主鎖末端または側鎖に結合させる。
疎水性基は、炭素原子数が6以上の脂肪族基(好ましくはアルキル基またはアルケニル基)または芳香族基が好ましい。
ポリビニルアルコールの主鎖末端に疎水性基を結合させる場合は、疎水性基と主鎖末端との間に連結基を導入することが好ましい。連結基の例には、−S−、−C(CN)R1 −、−NR2 −、−CS−およびそれらの組み合わせが含まれる。上記R1 およびR2 は、それぞれ、水素原子または炭素原子数が1乃至6のアルキル基(好ましくは、炭素原子数が1乃至6のアルキル基)である。
【0050】
ポリビニルアルコールの側鎖に疎水性基を導入する場合は、ポリビニルアルコールの酢酸ビニル単位のアセチル基(−CO−CH3 )の一部を、炭素原子数が7以上のアシル基(−CO−R3 )に置き換えればよい。R3 は、炭素原子数が6以上の脂肪族基または芳香族基である。
市販の変性ポリビニルアルコール(例、MP103、MP203、R1130、クラレ(株)製)を用いてもよい。
配向膜に用いる(変性)ポリビニルアルコールのケン化度は、80%以上であることが好ましい。(変性)ポリビニルアルコールの重合度は、200以上であることが好ましい。
ラビング処理は、配向膜の表面を、紙や布で一定方向に、数回こすることにより実施する。長さおよび太さが均一な繊維を均一に植毛した布を用いることが好ましい。
なお、光学異方性層の円盤状化合物を配向膜を用いて配向後、配向膜を除去しても、円盤状化合物の配向状態を保つことができる。すなわち、配向膜は、円盤状化合物を配向するため楕円偏光板の製造において必須であるが、製造された楕円偏光板においては必須ではない。
配向膜を透明支持体と光学異方性層との間に設ける場合は、さらに下塗り層(接着層)を透明支持体と配向膜との間に設けることが好ましい。
【0051】
[透明支持体]
透明支持体は、正の固有複屈折を有する透明なポリマーから形成することが好ましい。支持体が透明であるとは、光透過率が80%以上であることを意味する。
正の固有複屈折を有するポリマーを面配向させて得たポリマーフイルムは、一般に負の屈折率楕円を有する。その光軸は、法線方向に一本または法線を挟んで同一の角度で二本存在する。本発明では、このような光学的性質を有するポリマーフイルムを透明支持体とし、負の固有複屈折を有し光軸が円盤面の法線方向に存在する円盤状化合物を含む光学異方性層と組み合わせて用いることが好ましい。
ポリマーの例には、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンおよびセルロースエステル(例、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース)が含まれる。ポリカーボネートおよびセルロースエステルが好ましい。ポリマーフイルムは、ソルベントキャスト法により形成することが好ましい。
前述したように、二枚以上の透明支持体を積層体として用いてもよい。二枚の透明支持体を用いる場合(特にベンド配向液晶セルに用いる場合)は、セルロースエステルフイルム(好ましくは、トリアセチルセルロースフイルム)とポリカーボネートフイルムとを併用することが好ましい。光学異方性層側から、セルロースエステルフイルム、そしてポリカーボネートフイルムの順に積層することが特に好ましい。
【0052】
透明支持体の遅相軸は、ポリマーフイルムの延伸方向に相当する。ただし、特別に延伸処理を実施しなくても、製造工程において、ポリマーフイルムはロールの長手方向に延伸される。液晶セルや光学異方性層の光学的異方性によっては、そのような製造工程における自然な延伸により生じる光学異方性であっても、充分に本発明の効果が得られる場合もある。
透明支持体の厚さは、20乃至500μmであることが好ましく、50乃至200μmであることがさらに好ましい。
透明支持体とその上に設けられる層(接着層、配向膜あるいは光学異方性層)との接着を改善するため、透明支持体に表面処理(例、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、火炎処理)を実施してもよい。グロー放電処理またはコロナ放電処理を実施することが好ましい。二種類以上の表面処理を組み合わせて実施してもよい。
透明支持体の上に、接着層(下塗り層)を設けてもよい。接着層は、親水性ポリマー(例、ゼラチン)の塗布により形成することが好ましい。接着層の厚さは、0.1乃至2μmであることが好ましく、0.2乃至1μmであることがさらに好ましい。
保護層を、透明支持体の裏面に設けてもよい。
【0053】
[偏光膜]
偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フイルムを用いて製造する。
偏光膜の透過軸は、フイルムの延伸方向に垂直な方向に相当する。
偏光膜は、一般に保護膜を有する。ただし、本発明の楕円偏光板では、透明支持体を偏光膜の保護膜として機能させることができる。透明支持体とは別に、偏光膜の保護膜を用いる場合は、保護膜として光学的等方性が高いセルロースエステルフイルム、特にトリアセチルセルロースフイルムを用いることが好ましい。一対の偏光素子の一方のみを本発明に従う楕円偏光板とする場合は、他方の偏光素子は、偏光膜と保護膜との積層体とすることが好ましい。
【0054】
[楕円偏光板の製造]
楕円偏光板は、以下のように連続して製造することができる。
まず、透明支持体上に配向膜を形成し、透明支持体の搬送方向(遅相軸の方向が一致)に45゜の角度で配向膜にラビング処理を施す。次に、配向膜の上に光学異方性層を形成して巻き取る。その後、光学異方性層への傷およびゴミの付着を防止するため、光学異方性層を形成したフイルムを巻きほぐしながら、光学異方性層側にラミネートフイルムを貼り合わせて、再び巻き取る。
二枚の透明支持体を使用する場合には、ラミネートフイルムを貼り合わせたロールフイルムの透明支持体面に、粘着剤を介して二枚目の透明支持体を貼り合わせる。三枚以上の透明支持体を使用する場合は、順次、処理を繰り返して、粘着剤により貼り合わせる。
最後に、最表面の透明支持体の上に、粘着剤を介して偏光膜を貼り合わせる。巻き取り、および巻きほぐしの工程数を減らすために、上記のラミネートフイルム、二枚目以降の透明支持体および偏光膜の貼り合わせは、光学異方性層を形成した直後に、逐次実施することが好ましい。
【0055】
[液晶セル]
本発明の楕円偏光板は、ベンド配向液晶セルまたは水平配向液晶セルと組み合わせた液晶表示装置として用いると特に効果がある。
ベンド配向液晶セルは、セル中央部の液晶分子がねじれ配向していてもよい。ベンド配向液晶セルでは、液晶性化合物の屈折率異方性Δnと、液晶セルの液晶層の厚みdとの積(Δn×d)は、輝度と視野角を両立させるために、100乃至2000nmの範囲であることが好ましく、150乃至1700nmの範囲であることがさらに好ましく、500乃至1500nmの範囲であることが最も好ましい。
水平配向液晶セルでは、液晶性化合物の屈折率異方性Δnと、液晶セルの液晶層の厚みdとの積(Δn×d)は、輝度と視野角を両立させるために、100乃至2000nmの範囲であることが好ましく、100乃至1000nmの範囲であることがさらに好ましく、100乃至700nmの範囲であることが最も好ましい。
ベンド配向液晶セルおよび水平配向液晶セルは、いずれも、ノーマリーホワイトモード(NWモード)またはノーマリーブラックモード(NBモード)で用いることができる。
【0056】
【実施例】
[実施例1]
(第1透明支持体の作製)
厚さ100μmのトリアセチルセルロースフイルムに、厚さ0.1μmのゼラチン下塗り層を設けて、第1透明支持体を作製した。
波長546nmで測定した第1透明支持体のReレターデーション値は0.6nm、そして、Rthレターデーション値は35nmであった。
【0057】
(配向膜の形成)
第1透明支持体のゼラチン下塗り層の上に、下記の組成の塗布液を#16のワイヤーバーコーターで28ml/m2 塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥した。
次に、第1透明支持体の遅相軸(波長632.8nmで測定)と45゜の方向に、形成した膜にラビング処理を実施した。
【0058】
Figure 0003842472
【0059】
【化16】
Figure 0003842472
【0060】
(光学異方性層の形成)
配向膜上に、下記の円盤状(液晶性)化合物41.01g、エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)4.06g、セルロースアセテートブチレート(CAB551−0.2、イーストマンケミカル社製)0.90g、セルロースアセテートブチレート(CAB531−1、イーストマンケミカル社製)0.23g、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)1.35g、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.45gを、102gのメチルエチルケトンに溶解した塗布液を、#3のワイヤーバーで塗布した。これを金属の枠に貼り付けて、130℃の恒温槽中で2分間加熱し、円盤状化合物を配向させた。次に、130℃で120W/cm高圧水銀灯を用いて、1分間UV照射し円盤状化合物を重合させた。その後、室温まで放冷した。このようにして、光学異方性層を形成した。
波長546nmで測定した光学異方性層のReレターデーション値は38nmであった。また、円盤面と第1透明支持体面との間の角度(傾斜角)は平均で40゜であった。
【0061】
【化17】
Figure 0003842472
【0062】
(第2透明支持体の作製)
2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:28000)を、ジクロロメタンに溶解して、18重量%溶液を得た。溶液を真空脱泡し、ドープを得た。ドープをバンド上に流延し、50℃で10分間乾燥後にはぎ取り、さらに100℃で10分間乾燥した。得られたフイルムを170℃で縦に3.3%延伸し、さらに横に4.7%延伸して、厚さ80μmの2軸延伸ロールフイルム(第2透明支持体)を得た。縦延伸は2本のチャッキングロールの速度差で制御し、横延伸はテンターの幅で制御した。
波長546nmで測定した第2透明支持体のReレターデーション値は3nm、そして、Rthレターデーション値は200nmであった。
【0063】
(第2透明支持体の積層)
光学異方性層および第1透明支持体の積層体の第1透明支持体面に、上記第2透明支持体を粘着剤を介して貼り合わせた。第2透明支持体の遅相軸(波長632.8nmで測定)は、第1透明支持体の遅相軸と直交させた。
光学異方性層、第1透明支持体および第2透明支持体の積層体について、436nm、546nmおよび611.5nmの波長でReレターデーション値を測定した。
【0064】
(楕円偏光板の作製)
光学異方性層、第1透明支持体および第2透明支持体の積層体の第2透明支持体面に、偏光膜を粘着剤を介して貼り合わて、楕円偏光板を作製した。偏光膜の透過軸は、第1透明支持体の遅相軸と直交(第2透明支持体の遅相軸とは平行)させた。
【0065】
[実施例2]
(第2透明支持体の作製)
2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:28000)を、ジクロロメタンに溶解して、18重量%溶液を得た。溶液を真空脱泡し、ドープを得た。ドープをバンド上に流延し、50℃で10分間乾燥後にはぎ取り、さらに100℃で10分間乾燥した。得られたフイルムを170℃で縦に5.5%延伸し、さらに横に2.5%延伸して、厚さ80μmの2軸延伸ロールフイルム(第2透明支持体)を得た。縦延伸は2本のチャッキングロールの速度差で制御し、横延伸はテンターの幅で制御した。
波長546nmで測定した第2透明支持体のReレターデーション値は30nm、そして、Rthレターデーション値は200nmであった。
【0066】
(第2透明支持体の積層)
実施例1で作製した光学異方性層および第1透明支持体の積層体の第1透明支持体面に、上記第2透明支持体を粘着剤を介して貼り合わせた。第2透明支持体の遅相軸(波長632.8nmで測定)は、第1透明支持体の遅相軸と直交させた。
光学異方性層、第1透明支持体および第2透明支持体の積層体について、436nm、546nmおよび611.5nmの波長でReレターデーション値を測定した。
【0067】
(楕円偏光板の作製)
光学異方性層、第1透明支持体および第2透明支持体の積層体の第2透明支持体面に、偏光膜を粘着剤を介して貼り合わて、楕円偏光板を作製した。偏光膜の透過軸は、第1透明支持体の遅相軸と直交(第2透明支持体の遅相軸とは平行)させた。
【0068】
[比較例1]
(配向膜の形成)
実施例1で作製した第1透明支持体のゼラチン下塗り層の上に、実施例1で用いた組成の塗布液を#16のワイヤーバーコーターで28ml/m2 塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥した。
次に、第1透明支持体の遅相軸(波長632.8nmで測定)と平行方向に、形成した膜にラビング処理を実施した。
【0069】
(楕円偏光板の作製)
実施例1と同様に、光学異方性層、第2透明支持体および偏光膜を積層して、楕円偏光板を作製した。
光学異方性層、第1透明支持体および第2透明支持体の積層体について、436nm、546nmおよび611.5nmの波長でReレターデーション値を測定した。
【0070】
(楕円偏光板の光学特性)
実施例1、2および比較例1で作製した楕円偏光板の光学特性を下記第1表に示す。
【0071】
【表1】
Figure 0003842472
(註)
Re:Reレターデーション値(nm)
Rth:Rthレターデーション値(nm)
β: 円盤面の平均傾斜角(゜)
θ: 円盤面の法線の透明支持体面への正射影の平均方向(=ラビング方向)と透明支持体の面内遅相軸との角度(゜、90゜は垂直、0゜は平行)
α: 透明支持体の遅相軸と偏光膜の透過軸との角度(゜、90゜は垂直、0゜は平行)
【0072】
[実施例3]
(ベンド配向液晶セルの作製)
ITO電極付きのガラス基板に、ポリイミド膜を配向膜として設け、配向膜にラビング処理を行った。得られた二枚のガラス基板をラビング方向が平行となる配置で向かい合わせ、セルギャップを6μmに設定した。セルギャップにΔnが0.1396の液晶性化合物(ZLI1132、メルク社製)を注入し、ベンド配向液晶セルを作製した。
ベンド配向液晶セルに、55Hz矩形波で、5または5.5Vの電圧を印加し、436nm、546nmおよび611.5nmの波長でReレターデーション値を測定した。
【0073】
(液晶表示装置の作製)
作製したベンド配向セルを挟むように、実施例1で作製した楕円偏光板を二枚貼り付けた。楕円偏光板の光学異方性層がセル基板に対面し、液晶セルのラビング方向とそれに対面する光学異方性層のラビング方向とが反平行となるように配置した。
【0074】
[実施例4]
(液晶表示装置の作製)
実施例3で作製したベンド配向セルを挟むように、実施例2で作製した楕円偏光板を二枚貼り付けた。楕円偏光板の光学異方性層がセル基板に対面し、液晶セルのラビング方向とそれに対面する光学異方性層のラビング方向とが反平行となるように配置した。
【0075】
[比較例2]
(液晶表示装置の作製)
実施例3で作製したベンド配向セルを挟むように、比較例1で作製した楕円偏光板を二枚貼り付けた。楕円偏光板の光学異方性層がセル基板に対面し、液晶セルのラビング方向とそれに対面する光学異方性層のラビング方向とが反平行となるように配置した。
【0076】
(液晶表示装置の評価)
前述したように436nm、546nmおよび611.5nmの波長で測定した光学異方性層、第1透明支持体および第2透明支持体の積層体のReレターデーション値とベンド配向液晶セルのReレターデーション値の各波長における差を求めて、546nmの結果を基準(0)とする差の変化を波長依存性として計算した。
次に、実施例3、4および比較例2で作製した液晶表示装置の液晶セルに55Hzの矩形波電圧を印加した。白表示2V、黒表示5Vのノーマリーホワイトモードとした。透過率の比(白表示/黒表示)をコントラスト比として、上下左右のコントラスト比10が得られる視野角を測定した。
また、液晶表示装置の黒表示時の正面の色度を測定した。
さらに、液晶表示装置の436nmの透過率を測定し、二枚の偏光膜をパラニコル配置した積層体の436nmの透過率を100%とする相対値(%)を求めた。
以上の結果を第2表に示す。
【0077】
【表2】
Figure 0003842472
註:視野角の上は、いずれも80゜以上
【0078】
[実施例5]
(楕円偏光板の作製)
第2透明支持体を使用しなかった以外は、実施例1と同様に、光学異方性層、第1透明支持体および偏光膜を積層して、楕円偏光板を作製した。
【0079】
[比較例3]
(楕円偏光板の作製)
第2透明支持体を使用しなかった以外は、比較例1と同様に、光学異方性層、第1透明支持体および偏光膜を積層して、楕円偏光板を作製した。
【0080】
(楕円偏光板の光学特性)
実施例5および比較例3で作製した楕円偏光板の光学特性を下記第3表に示す。
【0081】
【表3】
Figure 0003842472
(註)
Re:Reレターデーション値(nm)
Rth:Rthレターデーション値(nm)
β: 円盤面の平均傾斜角(゜)
θ: 円盤面の法線の透明支持体面への正射影の平均方向(=ラビング方向)と透明支持体の面内遅相軸との角度(゜、0゜は平行)
α: 透明支持体の遅相軸と偏光膜の透過軸との角度(゜、90゜は垂直)
【0082】
[実施例6]
(水平配向液晶セルの作製)
ITO電極付きのガラス基板に、ポリイミド膜を配向膜として設け、配向膜にラビング処理を行った。得られた二枚のガラス基板をラビング方向が反平行となる配置で向かい合わせ、セルギャップを3.7μmに設定した。セルギャップにΔnが0.0988の液晶性化合物(ZLI4792、メルク社製)を注入し、水平配向液晶セルを作製した。
水平配向液晶セルに、55Hz矩形波で、5Vの電圧を印加し、436nm、546nmおよび611.5nmの波長でReレターデーション値を測定した。
【0083】
(液晶表示装置の作製)
作製した水平配向セルを挟むように、実施例5で作製した楕円偏光板を二枚貼り付けた。楕円偏光板の光学異方性層がセル基板に対面し、液晶セルのラビング方向とそれに対面する光学異方性層のラビング方向とが反平行となるように配置した。
【0084】
[比較例4]
(液晶表示装置の作製)
実施例6で作製した水平配向セルを挟むように、比較例3で作製した楕円偏光板を二枚貼り付けた。楕円偏光板の光学異方性層がセル基板に対面し、液晶セルのラビング方向とそれに対面する光学異方性層のラビング方向とが反平行となるように配置した。
【0085】
(液晶表示装置の評価)
436nm、546nmおよび611.5nmの波長で測定した光学異方性層および第1透明支持体の積層体のReレターデーション値と水平配向液晶セルのReレターデーション値の各波長における差を求めて、546nmの結果を基準(0)とする差の変化を波長依存性として計算した。
次に、実施例6および比較例4で作製した液晶表示装置の液晶セルに55Hzの矩形波電圧を印加した。白表示1.7V、黒表示5Vのノーマリーホワイトモードとした。透過率の比(白表示/黒表示)をコントラスト比として、上下左右のコントラスト比10が得られる視野角を測定した。
また、液晶表示装置の黒表示時の正面の色度を測定した。
さらに、液晶表示装置の436nmの透過率を測定し、二枚の偏光膜をパラニコル配置した積層体の436nmの透過率を100%とする相対値(%)を求めた。
以上の結果を第4表に示す。
【0086】
【表4】
Figure 0003842472

【図面の簡単な説明】
【図1】ベンド配向液晶セル内の液晶性化合物の配向を模式的に示す断面図である。
【図2】水平配向液晶セル内の液晶性化合物の配向を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明に従う楕円偏光板を示す模式図である。
【図4】本発明に従うベンド配向型液晶表示装置を示す模式図である。
【図5】ベンド配向型液晶表示装置における光学補償の関係を示す概念図である。
【図6】本発明に従う水平配向型液晶表示装置を示す模式図である。
【図7】水平配向型液晶表示装置における光学補償の関係を示す概念図である。
【図8】楕円偏光板の様々な態様を示す模式図である。
【図9】楕円偏光板の別の様々な態様を示す模式図である。
【符号の説明】
10 ベンド配向液晶セル
20 水平配向液晶セル
11、21 液晶性化合物
11a〜11j、21a〜21j 棒状液晶性分子
12a、12b、22a、22b 配向膜
13a、13b、23a、23b 電極層
14a、24a 上基板
14b、24b 下基板
31 光学異方性層
31a〜31e 円盤状化合物
32 配向膜
33 透明支持体
34 偏光膜
NL 円盤状化合物の円盤面の法線
PL 円盤面の法線を透明支持体面へ正射影した方向
RD ラビング方向
SA 面内遅相軸
TA 面内透過軸
BL バックライト
a〜h 光学補償の関係

Claims (13)

  1. ベンド配向モードの液晶セルおよび液晶セルの両側に配置された一対の偏光素子からなる液晶表示装置であって、偏光素子の少なくとも一方が、円盤状化合物を含む光学異方性層、光学異方性を有する透明支持体および偏光膜の積層体からなり、偏光膜が最も外側に配置されている楕円偏光板であり、円盤状化合物の円盤面の法線の透明支持体面への正射影の平均方向と透明支持体の面内遅相軸との角度が実質的に45゜になり、かつ透明支持体の面内遅相軸と偏光膜の面内透過軸とが実質的に平行または実質的に垂直になるように光学異方性層、透明支持体および偏光膜が配置されていることを特徴とする液晶表示装置。
  2. 透明支持体が、5乃至100nmの範囲内に下記式(1)で定義されるReレターデーション値を有し、かつ100乃至1000nmの範囲内に下記式(2)で定義されるRthレターデーション値を有する請求項1に記載の液晶表示装置。
    (1) Re=(nx−ny)×d
    (2) Rth=[(nx+ny)/2−nz]×d
    式中、nxは、透明支持体の面内遅相軸の屈折率であり;nyは、透明支持体の面内進相軸の屈折率であり;nzは、透明支持体の厚さ方向の屈折率であり;そして、dは透明支持体の厚さである。
  3. 楕円偏光板が2枚以上の光学異方性を有する透明支持体の積層体を有し、透明支持体の少なくとも1枚が、光学異方性層および偏光膜と上記のように配置されている請求項1に記載の液晶表示装置。
  4. 楕円偏光板が2枚以上の光学異方性を有する透明支持体の積層体を有し、いずれの透明支持体も、光学異方性層および偏光膜と上記のように配置されている請求項1に記載の液晶表示装置。
  5. 透明支持体の積層体が、5乃至100nmの範囲内に下記式(1)で定義されるReレターデーション値と100乃至1000nmの範囲内に下記式(2)で定義されるRthレターデーション値とを有する請求項4に記載の液晶表示装置。
    (1) Re=(nx−ny)×d
    (2) Rth=[(nx+ny)/2−nz]×d
    式中、nxは、透明支持体の積層体の面内遅相軸の屈折率であり;nyは、透明支持体の積層体の面内進相軸の屈折率であり;nzは、透明支持体の積層体の厚さ方向の屈折率であり;そして、dは透明支持体の積層体の厚さである。
  6. 透明支持体の積層体が、セルロースエステルフイルムおよびポリカーボネートフイルムからなり、光学異方性層側からこの順に積層されている請求項3または4に記載の液晶表示装置。
  7. 楕円偏光板が、光学異方性層、透明支持体および偏光膜の順序の積層体からなる請求項1に記載の液晶表示装置。
  8. 楕円偏光板が、光学異方性層、2枚以上の光学異方性を有する透明支持体および偏光膜の順序の積層体からなり、最も偏光膜に近い透明支持体が、透明支持体の面内遅相軸と偏光膜の面内透過軸とが実質的に平行になるように配置されている請求項5に記載の液晶表示装置。
  9. 偏光素子の両方が、円盤状化合物を含む光学異方性層、光学異方性を有する透明支持体および偏光膜の積層体からなる楕円偏光板であり、それぞれの楕円偏光板において、光学異方性層、透明支持体および偏光膜が上記のように配置されている請求項1に記載の液晶表示装置。
  10. 水平配向モードの液晶セルおよび液晶セルの両側に配置された一対の偏光素子からなる液晶表示装置であって、偏光素子の少なくとも一方が、円盤状化合物を含む光学異方性層、光学異方性を有する透明支持体および偏光膜の積層体からなり、偏光膜が最も外側に配置されている楕円偏光板であり、円盤状化合物の円盤面の法線の透明支持体面への正射影の平均方向と透明支持体の面内遅相軸との角度が実質的に45゜になり、かつ透明支持体の面内遅相軸と偏光膜の面内透過軸とが実質的に平行または実質的に垂直になるように光学異方性層、透明支持体および偏光膜が配置されていることを特徴とする液晶表示装置。
  11. 透明支持体が、0乃至100nmの範囲内に下記式(1)で定義されるReレターデーション値を有し、かつ10乃至1000nmの範囲内に下記式(2)で定義されるRthレターデーション値を有する請求項10に記載の液晶表示装置。
    (1) Re=(nx−ny)×d
    (2) Rth=[(nx+ny)/2−nz]×d
    式中、nxは、透明支持体の面内遅相軸の屈折率であり;nyは、透明支持体の面内進相軸の屈折率であり;nzは、透明支持体の厚さ方向の屈折率であり;そして、dは透明支持体の厚さである。
  12. 偏光素子の両方が、円盤状化合物を含む光学異方性層、光学異方性を有する透明支持体および偏光膜の積層体からなる楕円偏光板であり、それぞれの楕円偏光板において、光学異方性層、透明支持体および偏光膜が上記のように配置されている請求項10に記載の液晶表示装置。
  13. 円盤状化合物を含む光学異方性層、光学異方性を有する透明支持体および偏光膜の積層体からなり、偏光膜が外側に配置されている楕円偏光板であって、円盤状化合物の円盤面の法線の透明支持体面への正射影の平均方向と透明支持体の面内遅相軸との角度が実質的に45゜になり、かつ透明支持体の面内遅相軸と偏光膜の面内透過軸とが実質的に平行または実質的に垂直になるように光学異方性層、透明支持体および偏光膜が配置されていることを特徴とする楕円偏光板。
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