JP3839645B2 - 車両用障害物推定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、障害物に車両が衝突したときにその障害物の種類を推定する車両用障害物推定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両には、障害物に衝突したときにその障害物の種類を推定し、種類に応じてフード近傍のエアバッグを作動させるなどの二次衝突対策を講じる装置を備えるものが知られている。この種の装置としては、例えば特開平8−216826号公報「フードエアバッグセンサシステム」が知られている。以下、この従来の技術について説明する。
【0003】
図16(a),(b)は特開平8−216826号公報の図6及び図7に基づき作成した説明図である。なお、各構成要素の名称や符号については適宜変更した。
(a)は、車両101が歩行者等の特定の障害物S11に衝突したことを示す。フードエアバッグセンサシステム100は、車両101のフロントバンパ102にバンパセンサ103を備えるとともに、フード104の下にフードセンサ105を備える。バンパセンサ103は略水平方向からの荷重を検出するセンサであり、フードセンサ105は略垂直方向からの荷重を検出するセンサである。
フードエアバッグセンサシステム100の制御装置106は、バンパセンサ103及びフードセンサ105が共に荷重を検出したときにのみ、衝突した障害物S11が特定の障害物であると推定して、フードエアバッグモジュール107へ制御信号を出力する。この制御信号に応じて、フード104近傍のフードエアバッグ108は膨張する。
【0004】
(b)は、車両101が建造物等の障害物S12に衝突したことを示す。バンパセンサ103だけが荷重を検出したときには、制御装置106は、衝突した障害物S12が特定の障害物ではないと推定する。この場合には、制御装置106はフードエアバッグモジュール107へ制御信号を出力しないので、フードエアバッグ108は膨張しない。
【0005】
このようにフードエアバッグセンサシステム100は、先ずバンパセンサ103が荷重を検出し、次にフードセンサ105が荷重を検出し、この2つの検出信号に基づいて障害物S11が特定の障害物であると推定して、二次衝突対策を講じる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来のフードエアバッグセンサシステム100は、バンパセンサ103で荷重を検出した後に、フードセンサ105で荷重を検出するという、2段階の検出方法を採用したシステムである。
ところが、バンパセンサ103が荷重を検出してからフードセンサ105が荷重を検出するまでの経過時間は、一定ではない。経過時間が長いと、制御装置106が障害物S11,S12の種類を推定するのに要する時間も長くならざるを得ない。障害物S11,S12の種類を推定するのに時間がかかることは好ましいことではない。
【0007】
さらには、障害物S11が特定の障害物ではない場合であっても、バンパセンサ103で荷重を検出した後に、フードセンサ105が荷重を検出することは有り得る。この場合に制御装置106は、障害物S11が特定の障害物であると誤って推定することになる。すなわち、障害物S11の種類判定にエラーが発生する可能性がある。このようなエラーの発生は好ましいことではない。
【0008】
そこで本発明の目的は、車両が衝突した障害物の種類の推定時間を短縮できるとともに、障害物の種類をより正確に推定できる技術を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1は、障害物に車両が衝突したときに、その障害物の種類を推定する車両用障害物推定装置において、この車両用障害物推定装置に、
障害物に車両が当った衝撃力に応じて変形する変形可能部材と、
この変形可能部材の変形速度を検出する変形速度検出手段と、
この変形速度検出手段で検出した変形速度が増速中に、障害物に車両が衝突したほぼ直後の時点の値で且つ零を若干越える値の、予め定めた第1基準速度に達した時点でタイマを始動させるタイマ始動手段と、
初期値が0である変形速度最大値を変形速度が上回る度に、この変形速度の値に更新することによって、変形速度の最大値を求める変形速度最大値更新手段と、
変形速度最大値に1.0未満の定数を乗じた値に相当する値を第2基準速度と定める第2基準速度発生手段と、
変形速度が第2基準速度に達した時点でタイマを停止させて、タイマ始動から停止までの経過時間を求める経過時間演算手段と、
障害物が特定の障害物であると推定する基準となる程度の所定の時間範囲に、経過時間が収るときに、特定の障害物であると推定して推定信号を発する推定信号発生手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
車両用障害物推定装置は、障害物に車両が当ったときの変形可能部材の変形速度を検出し、この変形速度が増速中に第1基準速度に達した時点から変形速度最大値まで増大した後に減少して第2基準速度に達した時点までの経過時間を求め、この経過時間が所定の時間範囲に収るときに、衝突した障害物が特定の障害物であると推定する。
経過時間が所定の時間範囲に収るか否かによって、障害物の種類を推定するだけなので、障害物の種類を推定するまでに要する時間を極めて短縮することができるとともに、障害物の種類をより正確に推定することができる。
【0011】
請求項2は、推定信号発生手段が、車両のフードを上昇させる若しくはフード近傍のエアバッグを作動させるなどの二次衝突対策を講じる車両用二次衝突対策装置へ、推定信号を発するものであることを特徴とする。
【0012】
車両用二次衝突対策装置は、推定信号発生手段から特定の障害物であるとの推定信号を受けたときに、二次衝突対策を講じて障害物やエンジンルーム内の機器への衝撃力を十分に吸収する。より適格に且つ速やかに、二次衝突対策を講じることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図面に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は運転者から見た方向に従い、Frは前側、Rrは後側、Lは左側、Rは右側を示す。また、図面は符号の向きに見るものとする。
【0014】
図1は本発明に係る車両用二次衝突対策装置の斜視図である。
車両用二次衝突対策装置10は、車両11の前部にエンジンルーム12を設け、エンジンルーム12の上部開口を前開き形式のフード13で塞ぎ、フード13の後端部を車体フレーム14に左右のフード保持機構20,20で開閉可能に取付けたものである。フード13は前部を、車体フレーム14にフードロック15にてロック可能である。図中、16はフロントガラスである。
【0015】
図2は本発明に係る車両用二次衝突対策装置のシステム図であり、車両11の前半部を左側から見たものである。
車両用二次衝突対策装置10は、障害物S1に車両11が衝突したときにフード13を上昇させることで二次衝突対策を講じる装置であり、左右のフード保持機構20(この図では左のみ示す。以下同じ。)と、閉じたフード13の後部を持上げるときに使用する左右のアクチュエータ30とからなる。さらに、車両用二次衝突対策装置10は車両用障害物推定装置40を備える。車両用障害物推定装置40の詳細については後述する。
【0016】
フード保持機構20は、通常時にはフード13の開閉を行うヒンジ作用を果たし、車両11に障害物S1が衝突したときには伸張したリンクでフード13の後部の上昇位置を決める連結リンク機構兼用のヒンジである。
アクチュエータ30は、後述する制御部44から電気的なアクチュエータ駆動指令信号(推定信号)siを受けたときに、図示せぬ点火装置にてガス発生剤に点火して多量のガスを発生し、ガスの急激な昇圧によってピストン31が所定ストロークだけ上昇し、フード13の後部を持ち上げるものである。
【0017】
図3は本発明に係る車両前部の側面断面図であり、車両11の前部にフロントバンパ41を設け、このフロントバンパ41の前部を覆うバンパフェイス42の内面に、バンパセンサ43を取付けたことを示す。バンパセンサ43は加速度センサである。
【0018】
なお、バンパセンサ43は、上記図1に示すように車幅方向に複数個(例えば3個)を配列してもよい。バンパセンサ43を複数個設けた場合には、これらバンパセンサ43の検出信号に基づき制御部44が制御作用をすることになる。例えば、制御部44で複数の検出信号の平均値を算出し、その平均値に基づきアクチュエータ30を制御したり、複数の検出信号のうち最も大きい信号に基づきアクチュエータ30を制御する。
【0019】
図4は本発明に係るバンパフェイス及びバンパセンサの構成図兼作用図である。
バンパフェイス42は、車両11が障害物S1に当った衝撃力に応じて変形する変形可能部材であり、例えば樹脂製品である。
想像線にて示すバンパフェイス42は、障害物S1に当った衝撃力に応じて実線にて示すように変形する。このときにバンパフェイス42における変形する部分の加速度を、バンパフェイス42に取付けられたバンパセンサ43で検出することができる。そして、バンパセンサ43で検出した変形加速度を積分することにより、バンパフェイス42の変形速度を知ることができる。
【0020】
車両用障害物推定装置40は、障害物S1に車両11が衝突したときにその障害物S1の種類を推定して、車両用二次衝突対策装置10に推定信号siを発するものである。具体的には、車両用障害物推定装置40は、変形可能部材としてのバンパフェイス42と、バンパセンサ43と、バンパセンサ43の信号に基づいて車両用二次衝突対策装置10のアクチュエータ30に推定信号siを発する制御部44とからなる。制御部44は、例えばマイクロコンピュータである。
【0021】
図5は本発明に係るバンパフェイス及びバンパセンサの作用図である。
バンパフェイス42の前端の地上高さH1に対して、重心Gvの地上高さH2が低い障害物S2(以下、「低重心障害物S2」と言う。)に車両11が衝突すると、車両11の下部に低重心障害物S2を巻き込むことがある。その場合には、巻き込まれた低重心障害物S2によって、バンパフェイス42が車両11の下側且つ後方へ引張られるように変形する。
【0022】
次に、障害物S1や低重心障害物S2にバンパフェイス42が衝突したときの、バンパフェイス42の変形速度の変化について、図4及び図5を参照しつつ図6、図7にて説明する。
図6は本発明に係るバンパフェイスの変形速度グラフ(その1)であり、横軸を時間とし縦軸をバンパ変形速度として、障害物に衝突したバンパフェイスの変形速度の変化を表したものである。但し、各符号を次のように定義する。
【0023】
曲線VB1;障害物が軽量物であるときの変形速度波形曲線
曲線VB2;障害物が歩行者等の特定の障害物であるときの変形速度波形曲線
曲線VB3;障害物が低重心障害物であるときの変形速度波形曲線
VM1;曲線VB1の変形速度最大値
VM2;曲線VB2の変形速度最大値
VM3;曲線VB3の変形速度最大値
VS;曲線VB1,VB2,VB3の第1基準速度
(衝突したほぼ直後の値であり、例えば零を若干越える値)
VE1;曲線VB1の第2基準速度(変形速度最大値VM1の1/2)
VE2;曲線VB2の第2基準速度(変形速度最大値VM2の1/2)
VE3;曲線VB3の第2基準速度(変形速度最大値VM3の1/2)
P0;曲線VB1,VB2,VB3のVSの点
P1;曲線VB1がP0からVM1まで増大した後にVE1まで減少した点
P2;曲線VB2がP0からVM2まで増大した後にVE2まで減少した点
P3;曲線VB3がP0からVM3まで増大した後にVE3まで減少した点
TC1;曲線VB1がP0からP1まで変化した時間(経過時間)
TC2;曲線VB2がP0からP2まで変化した時間(経過時間)
TC3;曲線VB3がP0からP3まで変化した時間(経過時間)
TS;下限時間(P0からの所定の経過時間)
TL;上限時間(P0からの所定の経過時間)
【0024】
この図6のグラフから明らかなように、どの変形速度波形曲線VB1,VB2,VB3も、第1基準速度VSを越えて変形速度最大値VM1,VM2,VM3まで増大した後に、減少して第2基準速度VE1,VE2,VE3を通過する特性を有することが判る。
さらには、軽量な障害物の変形速度波形曲線ほど、第1基準速度から第2基準速度へ短時間で変化することが判る(例;TC1<TC2)。
【0025】
さらにまた、上述のように障害物が上記図5に示す低重心障害物S2である場合には、バンパフェイス42が車両11の下側且つ後方へ引張られるように変形する。この場合には、変形速度波形曲線VB3に示すように、変形速度最大値VM3に到達した時点から点P3に変化するまでの時間は、他の変形速度波形曲線VB1,VB2に比べて長いことが判る。すなわち、変形速度波形曲線VB3における変形速度の減少は極めて緩やかである。
本発明者等は、このようにバンパフェイス42(図4参照)が当った障害物の種類に応じて、バンパフェイス42の変形速度VBが刻々と変化する特性、すなわち、変形速度波形特性が異なることを知見した。
【0026】
ここで、経過時間TC1と経過時間TC2との間に下限時間TSを設定するとともに、経過時間TC2と経過時間TC3との間に上限時間TLを設定する。また、曲線VB1,VB2,VB3を総称して「変形速度波形曲線VB」と言い、VM1,VM2,VM3を総称して「変形速度最大値VM」と言い、VSを「第1基準速度VS」と言い、VE1,VE2,VE3を総称して「第2基準速度VE」と言い、TC1,TC2,TC3を総称して「経過時間TC」と言う。
【0027】
今、車両がある障害物に衝突したとする。このときのバンパフェイスの変形速度波形曲線はVBである。この変形速度波形曲線VBにおける経過時間TCは、所定の時間範囲(下限時間TSと上限時間TLとの間)に収る、とする。このように、経過時間TCが所定の時間範囲に収る場合には、衝突した障害物が特定の障害物であると推定することができる。
図6においては、変形速度波形曲線VB2の特性を有する障害物が、特定の障害物に該当する。なお、上限時間TLは、数十ms(ミリ秒)程度と極めて短時間である。
【0028】
図7は本発明に係るバンパフェイスの変形速度グラフ(その2)であり、横軸を時間とし縦軸をバンパ変形速度として、車両がある同一の障害物に、高速で衝突したときと低速で衝突したときの、バンパフェイスの変形速度の変化を対比させて表したものである。但し、各符号を次のように定義する。
【0029】
曲線VB11;高速で衝突したときの変形速度波形曲線
曲線VB12;低速で衝突したときの変形速度波形曲線
VM11;曲線VB11の変形速度最大値
VM12;曲線VB12の変形速度最大値
VS;曲線VB11,VB12の第1基準速度
(衝突したほぼ直後の値であり、例えば零を若干越える値)
VE11;曲線VB11の第2基準速度(変形速度最大値VM11の1/2)
VE12;曲線VB12の第2基準速度(変形速度最大値VM12の1/2)
P01;曲線VB11のVSの点
P02;曲線VB12のVSの点
P11;曲線VB11がP01からVM11まで増大した後にVE11まで減少した点
P12;曲線VB12がP02からVM12まで増大した後にVE12まで減少した点
TC11;曲線VB11がP01からP11まで変化した時間(経過時間)
TC12;曲線VB12がP02からP12まで変化した時間(経過時間)
【0030】
この図7のグラフから明らかなように、車両が同一の障害物に、高速で衝突したときの経過時間TC11に対して、低速で衝突したときの経過時間TC12は、ほとんど差がないことが判る。
すなわち、同一の車両が同一の障害物に衝突するのであれば、衝突する時点での車速に違いがあっても、車両が障害物に衝突したときの経過時間TC11,TC12同士には、大差がない。
【0031】
このことからも、上記図6で説明したように、バンパフェイスの変形速度波形曲線VBが所定の時間範囲(下限時間TSと上限時間TLとの間)に収る特性を有する曲線であるときに、その衝突した障害物が特定の障害物であると推定する推定方法は、障害物への衝突速度(車両が障害物に衝突する時点での車速)にかかわらず正確に推定できるので、極めて有効な推定方法であると言える。
【0032】
図8は本発明に係る制御部の制御フローチャートであり、制御部44(図4参照)をマイクロコンピュータとした場合の制御フローを表したものである。図中、ST××はステップ番号を示す。以下、図4及び図6を参照しつつ説明する。なお、バンパフェイス42の変形速度をVBとして説明する。
【0033】
ST01;全ての値を初期設定する(例:変形速度最大値VM=0、経過時間TC=0)。
ST02;バンパセンサ43にて検出したバンパフェイス42の変形加速度GBを読み込む。
ST03;変形加速度GBからバンパフェイス42の変形速度VBを算出する。例えば、変形加速度GBを積分することにより変形速度VBを得る。
【0034】
ST04;変形速度VBが予め定めた第1基準速度VSに達したか否かを判定し、YESであれば「ST09」に進み、NOであれば「ST02」に戻る。
ST09;図2に示す制御部44に組込まれたタイマ45の経過時間TCをリセットする(TC=0)。
ST10;タイマ45を始動させる。
ST11;変形速度VBがこれより前に検出した旧変形速度の最大値VMより大きいか否かを判定し、YESであれば「ST12」に進み、NOであれば「ST13」に進む。
ST12;変形速度VBを変形速度最大値VMと定める。
ST13;変形速度最大値VMに応じて第2基準速度VEを設定する。具体的には、次の▲1▼又は▲2▼の手法によって第2基準速度VEを定める。
▲1▼変形速度最大値VMに予め定めた1.0未満の定数CVを乗じた値を第2基準速度VEと定める(VE=VM×CV)。
▲2▼変形速度最大値VMに応じて、次の図9に示すマップを参照することにより、第2基準速度VEを定める。
【0035】
図9(a),(b)は本発明に係る第2基準速度設定説明図である。
(a)は、横軸を変形速度最大値VMとし縦軸を第2基準速度VEとする、変形速度最大値VM−第2基準速度VE対応図であり、変形速度最大値VMに応じた第2基準速度VEを示す。第2基準速度VEは、変形速度最大値VMに予め定めた1.0未満の定数CVを乗じて求めた値である(VE=VM×CV)。
(b)は、上記(a)に基づいて作成したマップであり、変形速度最大値VMに応じた第2基準速度VEを示す。
このように、制御部44(図4参照)のメモリに予めマップを設定しておき、上記ステップST13において、変形速度最大値VMに応じてマップを参照することで、第2基準速度VEを設定することができる。
【0036】
再び、図8の制御フローチャートに戻って説明を続ける。
ST14;変形速度VBが第2基準速度VEに達したか否か、すなわち、第2基準速度VEまで減少したか否かを判定し、YESであれば「ST16」に進み、NOであれば「ST02」に戻る。
ST16;タイマ45を停止させる。
ST17;タイマ45の始動から停止までの経過時間TCを演算して求める。
ST18;経過時間TCが所定の時間範囲、すなわち、予め定めた下限時間TSと上限時間TLとの間に収るか否かを判定し、YESであれば「ST19」に進み、NOであれば「ST20」に進む。
ST19;車両10が衝突した障害物S1は特定の障害物であると推定して推定信号si(例えば、アクチュエータ駆動指令信号si)を発し、制御を終了する。
ST20;変形速度最大値VM=0、経過時間TC=0にリセットして「ST02」に戻る。
【0037】
ここで、図4を参照しつつ車両用障害物推定装置40の、より具体的な構成を説明する。車両用障害物推定装置40は、次の(1)〜(7)を備える。
(1)変形可能部材としてのバンパフェイス42(図4参照)。
(2)バンパフェイス42の変形速度VBを検出する変形速度検出手段51。変形速度検出手段51は、バンパセンサ43(図4参照)並びにステップST02〜ST03の組合せからなる。
(3)変形速度検出手段51で検出した変形速度VBが増速中に予め定めた第1基準速度VSに達した時点で、タイマ45(図4参照)を始動させるタイマ始動手段52。タイマ始動手段52は、ステップST04、ST09及びST10の組合せからなる。
【0038】
(4)変形速度VBをこれより前に検出した旧変形速度の最大値VMと比較して大きい方を変形速度最大値VMと定める変形速度最大値更新手段53。変形速度最大値更新手段53は、ステップST11及びST12の組合せからなる。ステップST11及びST12によれば、変形速度VBが増す度に変形速度最大値VMを最も大きい値に更新することにより、障害物S1の種類に応じた変形速度最大値VMを設定することができる。
【0039】
(5)変形速度最大値VMに1.0未満の定数CV、例えば0.4〜0.6を乗じた値に相当する値を第2基準速度VEと定める第2基準速度発生手段54。第2基準速度発生手段54は、ステップST13からなる。定数CVが0.4〜0.6より小さ過ぎても大き過ぎても特定の障害物S1であると推定するための精度が低下するからである。
(6)変形速度VBが第2基準速度VEに達した時点でタイマ45を停止させて、タイマ始動から停止までの経過時間TCを求める経過時間演算手段55。経過時間演算手段55はステップST14、ST16及びST17の組合せからなる。(7)経過時間TCが所定の時間範囲(下限時間TSと上限時間TLとの間)に収るときに特定の障害物S1であると推定して推定信号siを発する推定信号発生手段56。推定信号発生手段56は、ステップST18〜ST20の組合せからなる。
【0040】
以上の説明から明らかなように、車両用障害物推定装置40によれば、(1)障害物S1に車両11が当ったときのバンパフェイス42の変形速度VBを検出し、(2)この変形速度VBが増速中に予め定めた第1基準速度VSに達した時点から変形速度最大値VMまで増大した後に減少して第2基準速度VEに達した時点までの経過時間TCを求め、(3)この経過時間TCが所定の時間範囲、すなわち、下限時間TSと上限時間TLとの間に収るときに、衝突した障害物S1が特定の障害物(例えば歩行者)であると推定することができる。
【0041】
このように、本発明の車両用障害物推定装置40は、障害物S1に変形可能部材としてのバンパフェイス42が当ったときに、このバンパフェイス42の変形速度波形特性(変形速度VBが刻々と変化する特性)が障害物S1の重量等の種類によって異なることを応用したものである。
【0042】
従って、障害物S1の種類を推定するために、変形速度検出手段51という単一の検出手段だけを用いたので、検出手段の数を減らすことができる。しかも、単一の検出手段で一方向の衝撃力を検出するだけですむので、検出時間を短縮することができる。
【0043】
さらには、変形速度VBが第1基準速度VSに達した時点から第2基準速度VEに達した時点までの経過時間TCを求め、この経過時間TCが所定の時間範囲に収るか否かによって、障害物S1の種類を推定するだけなので、障害物S1の種類を推定するまでに要する時間を極めて短縮することができるとともに、障害物S1の種類をより正確に推定することができる。
【0044】
さらにまた、第2基準速度発生手段54によって、障害物S1の種類に応じて異なる変形速度最大値VMに1.0未満の定数CVを乗じた値に相当する値を第2基準速度VEと定めたので、障害物S1への衝突速度にかかわらず、障害物S1の種類をより一層正確に推定することができる。
【0045】
図10は本発明に係る制御部の制御フローチャート(変形例)であり、上記図8に示す制御フローチャートのうち、ステップST04とST09の間に、破線の枠で囲ったステップST05〜ST08を追加し、ステップST14とST16の間に、破線の枠で囲ったステップST15を追加したものである。
ST05;ST04でYESの判定を受けた場合に、フラグF=0であるか否かを判定し、YESであれば「ST06」に進み、NOであれば「ST02」に戻る。
ST06;タイマ45が非作動であるか否かを判定し、YESであれば「ST09」に進み、NOであれば「ST11」に進む。
ST07;ST04でNOの判定を受けた場合に、フラグF=0と設定して「ST08」に進む。
ST08;タイマ45が作動中であるかを判定し、YESであれば「ST11」に進み、NOであれば「ST02」に戻る。
ST15;ST14でYESの判定を受けた場合に、フラグF=1と設定して「ST16」に進む。
【0046】
次に、上記構成の車両用二次衝突対策装置10の作用を、図11〜図14に基づき説明する。
図11は本発明に係る車両用二次衝突対策装置の作用図(その1)であり、フード13を下げてエンジンルーム12を閉じた通常の状態を示す。このとき、フード保持機構20は折畳んだ状態にある。
フード13は、ピン21を支点として上下スイング可能である。フード13を想像線で示すように開けることで、エンジンルーム12に収納された機器17の保守・点検作業をすることができる。
【0047】
図12は本発明に係る車両用二次衝突対策装置の作用図(その2)であり、フード13を下げてエンジンルーム12を閉じた通常の状態を示す。
制御部44は、衝突した障害物S1が特定の障害物であると推定したときに、アクチュエータ30へ推定信号(アクチュエータ駆動指令信号)siを発する。アクチュエータ30は持上げ作動を開始し、ピストン31を高速で突出すことにより、フード13の後部裏面13aを突き上げる。
【0048】
図13は本発明に係る車両用二次衝突対策装置の作用図(その3)であり、ピストン31を所定の最大高さだけ高速で突出すことにより、フード13を想像線で示す元の高さから実線で示す高さまで、突き上げたことを示す。フード13は慣性により、更に持上がる。フード13の上昇に伴って、フード保持機構20も起立する。
【0049】
図14は本発明に係る車両用二次衝突対策装置の作用図(その4)であり、フード保持機構20が全開開度になってスイングを停止したことを示す。このため、フード13はこれ以上持上がることができない。この結果、フード13の後部は、想像線で示す元の位置から実線で示す位置へ、所定量(100〜200mm)だけ持上がったことになる。フード保持機構20は、フード13を持上がった位置で保持させる。
【0050】
所定量だけ持上がったフード13から、エンジンルーム12に収納されたエンジン等の機器17までの、距離は大きい。この結果、フード13の下方への変形可能量は増大する。このため、車両11に衝突された障害物S1がフード13に衝突したときに、持上がったフード13を想像線にて示すように大いに変形させることで、衝撃力を十分に吸収させることができる。従って、機器17を障害物S1から保護することができるとともに、障害物S1への衝撃も十分に緩和することができる。
【0051】
以上の説明をまとめると、車両用障害物推定装置40は、車両11に衝突された障害物S1が特定の障害物であると推定したときに、制御部44から車両用二次衝突対策装置10へ推定信号siを発する。車両用二次衝突対策装置10は、推定信号siを受けてフード13を上昇させることで、より適格に且つ速やかに二次衝突対策を講じる。フード13は、機器17や障害物S1への衝撃力を十分に吸収する。
【0052】
図15は本発明に係る車両用二次衝突対策装置(変形例)のシステム図である。
変形例の車両用二次衝突対策装置60は、障害物S1に車両11が衝突したときにフード13の近傍に備えたエアバッグ62を作動させることで二次衝突対策を講じるものである。衝突した障害物S1が特定の障害物であると車両用障害物推定装置40が推定して、制御部44からエアバッグモジュール61へ推定信号siを発することで、エアバッグ62を膨張させることができる。そして、エアバッグ62を膨張させて二次衝突対策を講じることにより、エンジンルーム12に収納された機器17(図14参照)や障害物S1への衝撃力をエアバッグ62にて十分に吸収させることができる。
【0053】
なお、上記本発明の実施の形態において、変形可能部材は、バンパフェイス42に限定するものではなく、車両11が障害物S1に当った衝撃力に応じて変形するように車両11の備えるものであればよい。
また、変形速度検出手段51は、バンパフェイス42等の変形可能部材の変形速度VBを検出するものであればよい。
さらにまた、車両用障害物推定装置40において、定数CV、第1基準速度VS、下限時間TS及び上限時間TLの各値は任意であり、特定の障害物の基準を適宜設定することにより、決めればよい。
【0054】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1によれば、障害物に車両が当ったときの変形可能部材の変形速度を検出し、この変形速度が増速中に予め定めた第1基準速度に達した時点から変形速度最大値まで増大した後に減少して第2基準速度に達した時点までの経過時間を求め、この経過時間が所定の時間範囲に収るときに、衝突した障害物が特定の障害物であると推定することができる。
この推定のために、変形速度検出手段という単一の検出手段をだけを用いたので、検出手段の数を減らすことができる。しかも、単一の検出手段で一方向の衝撃力を検出するだけですむので、検出時間を短縮することができる。
【0055】
さらには、変形速度が第1基準速度に達した時点から第2基準速度に達した時点までの経過時間を求め、この経過時間が所定の時間範囲に収るか否かによって、障害物の種類を推定するだけなので、障害物の種類を推定するまでに要する時間を極めて短縮することができるとともに、障害物の種類をより正確に推定することができる。
【0056】
さらにまた、第2基準速度発生手段によって、障害物の種類に応じて異なる変形速度最大値に1.0未満の定数を乗じた値に相当する値を第2基準速度と定めたので、障害物への衝突速度にかかわらず、障害物の種類をより一層正確に推定することができる。
【0057】
請求項2は、推定信号発生手段から、車両のフードを上昇させる若しくはフード近傍のエアバッグを作動させるなどの二次衝突対策を講じるための車両用二次衝突対策装置に、推定信号を発するように構成したので、より適格に且つ速やかに二次衝突対策を講じることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る車両用二次衝突対策装置
【図2】本発明に係る車両用二次衝突対策装置のシステム図
【図3】本発明に係る車両前部の側面断面図
【図4】本発明に係るバンパフェイス及びバンパセンサの構成図兼作用図
【図5】本発明に係るバンパフェイス及びバンパセンサの作用図
【図6】本発明に係るバンパフェイスの変形速度グラフ(その1)
【図7】本発明に係るバンパフェイスの変形速度グラフ(その2)
【図8】本発明に係る制御部の制御フローチャート
【図9】本発明に係る第2基準速度設定説明図
【図10】本発明に係る制御部の制御フローチャート(変形例)
【図11】本発明に係る車両用二次衝突対策装置の作用図(その1)
【図12】本発明に係る車両用二次衝突対策装置の作用図(その2)
【図13】本発明に係る車両用二次衝突対策装置の作用図(その3)
【図14】本発明に係る車両用二次衝突対策装置の作用図(その4)
【図15】本発明に係る車両用二次衝突対策装置(変形例)のシステム図
【図16】特開平8−216826号公報の図6及び図7に基づき作成した説明図
【符号の説明】
10,60…車両用二次衝突対策装置、11…車両、13…フード、40…車両用障害物推定装置、42…変形可能部材(バンパフェイス)、45…タイマ、51…変形速度検出手段、52…タイマ始動手段、53…変形速度最大値更新手段、54…第2基準速度発生手段、55…経過時間演算手段、56…推定信号発生手段、62…エアバッグ、CV…定数、S1,S2…障害物、si…推定信号、TC…経過時間、TS…下限時間、TL…上限時間、VB…変形速度、VS…第1基準速度、VE…第2基準速度、VM…変形速度最大値。
Claims (2)
- 障害物に車両が衝突したときに、その障害物の種類を推定する車両用障害物推定装置において、この車両用障害物推定装置は、
前記障害物に前記車両が当った衝撃力に応じて変形する変形可能部材と、
この変形可能部材の変形速度を検出する変形速度検出手段と、
この変形速度検出手段で検出した変形速度が増速中に、前記障害物に前記車両が衝突したほぼ直後の時点の値で且つ零を若干越える値の、予め定めた第1基準速度に達した時点でタイマを始動させるタイマ始動手段と、
初期値が0である変形速度最大値を前記変形速度が上回る度に、この変形速度の値に更新することによって、前記変形速度の最大値を求める変形速度最大値更新手段と、
前記変形速度最大値に1.0未満の定数を乗じた値に相当する値を第2基準速度と定める第2基準速度発生手段と、
前記変形速度が第2基準速度に達した時点で前記タイマを停止させて、タイマ始動から停止までの経過時間を求める経過時間演算手段と、
前記障害物が特定の障害物であると推定する基準となる程度の所定の時間範囲に、前記経過時間が収るときに、特定の障害物であると推定して推定信号を発する推定信号発生手段と、
を備えたことを特徴とする車両用障害物推定装置。 - 前記推定信号発生手段は、車両のフードを上昇させる若しくはフード近傍のエアバッグを作動させるなどの二次衝突対策を講じる車両用二次衝突対策装置へ、前記推定信号を発するものであることを特徴とした請求項1記載の車両用障害物推定装置。
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