以下、本発明の車両用衝突検知装置を具体化した各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
まず、第一実施形態の車両用衝突検知装置10について、図1乃至図6を参照しつつ説明する。車両用衝突検知装置10は、図1、2、3に示すように、車両の衝突を検知し、乗員保護装置20を起動するよう構成された装置であり、フロアトンネル上に配置された第1のセンサとしての加速度センサ(以後フロアセンサ7と称する)と、バンパ1と、バンパ1内に配設され、チャンバ空間2aが内部に形成されるチャンバ部材2と、チャンバ空間2a内の圧力変化を検出する第2のセンサとしての圧力センサ3と、コントローラ11を備えている。コントローラ11は、各センサ類と伝送線を介して接続されており、検出結果を基に後述する種々の手段として機能する。また、車両用衝突検知装置10は、歩行者の衝突を検知し、歩行者保護装置21も起動するよう構成されている。
フロアセンサ7は、加速度の大きさを検出するためのセンサであり、コントローラ11と伝送線を介して電気的に接続されている。具体的には、加速度により極板間の距離が変位することに伴う静電容量の変化を利用して、加速度を電気的に検出する静電容量式のセンサである。車室に加わる加速度の大きさを検出するため、車幅方向ほぼ中央で、排気管やブレーキ配管等が収納されるフロアトンネル上部に配置される。
バンパ1は、図1、図2に示すように、バンパリーンフォース4、チャンバ部材2、アブソーバ5を主体として構成されている。
バンパリーンフォース4は既設のものである。バンパ1内に配設されて車両幅方向に延びる金属製の梁状部材であって、車両側面側に位置して車両前後方向に延びる一対の金属製部材である既設のサイドメンバ6の前端に取り付けられている。
チャンバ部材2は、バンパ1内でバンパリーンフォース4の前面上部に取り付けられ、車幅方向に延びる、ポリエチレン等の合成樹脂からなる中空の部材で、バンパ1における圧力伝達の作用を持つ部材である。チャンバ部材2の内部にはチャンバ空間2aが形成されている。チャンバ空間2aは閉じた空間であるが、密閉されてはおらず、一部の狭小部分で外気と連通し大気圧になっている。これにより標高差や気温変化などによる気圧の変化の影響を受けない。チャンバ空間2aには不図示の差込口を介して圧力センサ3の受圧部が差し込まれている。チャンバ部材2の下部にはアブソーバ5が配置されている。アブソーバ5は、バンパ1において衝撃吸収の作用を持つ部材である。たとえば発泡樹脂等を用いることができる。また、チャンバ空間2aはチャンバ部材2内に1つ設けられていればよいが、車両幅方向に複数設けられていてもよい。
圧力センサ3は、気体圧力を荷重として検出可能なセンサ装置であり、チャンバ部材2に組み付けられている。具体的には、差込口を介してその受圧部がチャンバ空間2a内に差し込まれ、チャンバ空間2a内の空気の圧力変化を検出可能に構成されている。圧力センサ3は、圧力に比例した信号を出力する。圧力センサ3は、コントローラ11と伝送線を介して電気的に接続されている。チャンバ空間2aがチャンバ内に複数設けられている場合はチャンバ空間2aごとに設けられているものとする。
車速センサ12は、車速パルスから移動平均として車両の走行速度の大きさを検出する既設の速度センサであり、コントローラ11と伝送線を介して電気的に接続されている。
コントローラ11は、衝突時にフロアセンサ7の検出結果に基づいて乗員保護装置20を作動させるべき衝突か否かを判定するする衝突判定手段として機能する。また、衝突判定手段はフロアセンサ7の検出結果を閾値と比較するものであり、圧力センサ3の検出結果に基づいて閾値を所定の閾値に変更する閾値変更手段の機能も備えている。さらにまた、圧力センサ3および既設の車速センサ12の検出結果に基づいて衝突物の有効質量を算出する有効質量算出手段、および有効質量算出手段によって算出された有効質量に基づいて衝突物の種類を判別する歩行者衝突判定手段として機能する。
なお、ここで「有効質量」とは、衝突時に圧力センサで検知した信号から、運動量と力積の関係を利用して算出する質量をいうものとする。バンパ1ではアブソーバ5やその他の部材で衝撃を吸収する機能があり、衝突する物体も地面で支えられているものである。したがって、圧力センサで検知した荷重から計算できるものは、実際の質量とは異なったものとなるため、誤解を避けるため、上記の意味で「有効質量」という言葉を用いる。
コントローラ11は、上述したように、フロアセンサ7の検出結果に基づいて、乗員保護装置20を作動させるべきであると判定した場合には、乗員保護装置20の駆動装置22を動作させるための信号を出力し、乗員保護装置20を作動させる。乗員保護装置20を作動させるべき速度でないと判定した場合には、以後もフロアセンサ7の検出結果に基づいて乗員保護装置20を作動させるべきであるか否かを判定することを続行する。
また、コントローラ11は、圧力センサ3および車速センサ12の検出結果に基づいて衝突物の有効質量を算出し、衝突物の種類を歩行者と判別し、さらに歩行者保護装置21を作動させるべき速度であると判定した場合には、歩行者保護装置21の駆動装置23を動作させるための信号を出力し、歩行者保護装置21を作動させる。衝突物の種類を歩行者でないと判別した場合や、衝突物が歩行者であっても歩行者保護装置21を作動させるべき速度でないと判定した場合には、コントローラ11は、以後も圧力センサ3および車速センサ12の検出結果に基づいて衝突物の有効質量を算出し、衝突物の種類を判別することを続行する。
乗員保護装置20は、図1、2では1つしか書かれていないが、複数であってよく、運転者用エアバッグ、助手席用エアバッグ、サイドエアバッグ、カーテンエアバッグ、ニーエアバッグ等を含むものとする。
歩行者保護装置21はポップアップフード、ポップアップエンジンフード、アクティブボンネット、アクティブフード、カウルエアバッグ、フードエアバッグ等の名称で呼ばれる公知のものであってよく、エンジンフードの後端を衝突検知後瞬時に上昇させ、上昇した分のストロークを緩衝用機構で支え、歩行者がエンジンフードにたたきつけられる衝撃を和らげ保護するというものか、または、カウルエアバッグ、フードエアバッグ等の名称で呼ばれる、車体外部のエンジンフード上からフロントウインド下部にかけてエアバッグを展開し歩行者の衝撃を緩衝するというもの等である。駆動装置22は乗員保護装置20を駆動するためのものである。駆動装置23は歩行者保護装置21を駆動するためのものである。
<歩行者衝突判定手順>
つぎに、図面を参照しつつ、本実施形態における歩行者衝突判定処理について説明する。図4には、衝突物からの衝撃を模した概念図が示されている。図から明らかなように、バンパ1へ物体が衝突すると、チャンバ部材2が変形し、チャンバ空間2aの容積が急激に変化するため、一部の狭小部分で外気と連通していても、内部の気体圧力が上昇する。チャンバ空間2a内の気体圧力の変化は、圧力センサ3によって電気的に検出される。
このようにチャンバ空間の圧力を検出するよう構成された圧力センサ3は、ごく弱い軽微な衝突を捉えることができるため、加速度センサであるフロアセンサ7に比べ、衝突の初期において検知することが可能である。
コントローラ11は、伝送線を介して圧力センサ3から出力される信号を取り込むとともに、車速センサ12からの車速信号を取り込む。さらに、圧力センサ3からの出力と車速に基づいて衝突物の有効質量を算出し、算出した有効質量が所定の閾値より大きいか否かによって、衝突物が歩行者等であるか否かを判定する。
車両への衝突が発生した場合、歩行者と質量の異なる衝突物では、検知される圧力センサ3の値は異なってくるため、圧力センサ3の検知出力から衝突物の有効質量を算出し、この有効質量について、人体の有効質量と、想定される他の衝突物の質量との間に閾値を設定することにより、衝突物の種類を切り分けることができる。圧力センサ3の検知出力と検知時間の積は、ある有効質量を持った衝突物がある速度で衝突したことによる運動量と等しいため、衝突時の車速とから衝突物の有効質量が算出できる。
以下、本実施形態における有効質量の算出方法について説明する。図4を参照すると、車両がある速度の大きさVで、静止した質量Mの物体に衝突したとすれば、圧力センサ3から見て、静止した圧力センサ3に向けて質量Mの物体が車両の速度の大きさVで衝突したとみなすことができる。このとき、衝突時の車速検出値をV、衝突の継続時間をΔt、はたらいた荷重をFとすると、よく知られた運動量と力積の関係式、
MV=FΔt・・・(1)
から、質量はM=FΔt/Vとして算出できる。
ある質量Mの衝突物がある大きさの衝突速度(車速センサ12による車速検出値)Vでバンパ1に衝突した場合、その衝突荷重Fはチャンバ部材2に伝わりチャンバ空間2aが潰れて容積が変化する。この体積変化によりチャンバ空間2a内の圧力が上昇するため、圧力センサ3が圧力を検出する。圧力センサ3は、実質的には荷重を検出しているものなので、この圧力検出値を荷重と同様に扱うことができる。圧力センサ3の値は、ノイズ等による誤検知を防ぐために数ミリ秒から数十ミリ秒の所定時間での平均値を使うこととし、継続時間Δtを平均をとる積分時間として積分すればよく、(1)式から有効質量を式、
M=(∫P(t)dt)/V ・・・(2)
によって求めることができる。なお、係数は無視して示している。また、衝突速度の大きさは車速センサ12による車速検出値として取り込んだ値を使うため、有効質量を算出する際には定数として取り扱うこととする。
なお、有効質量を算出する方法には、他に運動エネルギーの式E=MV2/2から、M=2E/V2として算出方法もある。しかしながら、車速センサによる車速検出値は、車速パルスを用いるため、低速では精度が悪く、精度の悪い車速検出値を2乗するのでさらに精度が悪くなるという問題がある。そこで、ここでは運動量と力積の関係を用いて、単に車速検出値で除するようにし、運動エネルギーを用いる方式より精度を向上させている。
なお、実際には車両の走行中に物体が衝突するのは圧力センサ3ではなくバンパ1の表面であり、チャンバ部材2やアブソーバ5での衝撃吸収の影響もあるので、十分な実験を行ない補正係数を得るものとする。補正係数はコントローラ11内のROM26またはRAM24に保持するようにする。このようにすることにより正確な判定が可能となる。さらにこの後も車両用衝突検知装置10は検知を継続し、新たな衝突に備える。
つぎに、図5に示すフローチャートに基づいて、本実施形態の車両用衝突検知装置10におけるコントローラ11の処理の流れについて説明する。
コントローラ11には、衝突検知のプログラムがROM26またはRAM24に格納されており、CPU25がそのプログラムに従って以下に述べる各処理を実行する。図5に示すように、コントローラ11は、たとえば車両始動用のキーを回してONにした場合や始動用ボタンが押された場合、イニシャル処理として、各演算値を初期化する処理を行う(ステップS−1)。特にここで、閾値Vthも閾値Vth_0に初期化する。
次のステップS−2で、コントローラ11は、各信号の演算値を読み込む。圧力センサ3の値は、ノイズ等による誤検知を防ぐために数ミリ秒から数十ミリ秒の所定時間での平均値を使うよう、圧力値を検出している時間で積分したもの∫P(t)dtを読み込む。車速センサ12の値は、所定時間の車速パルスから移動平均として検出した値を車速検出値Vとして読み込む。フロアセンサ7の値は、圧力センサ3同様、ノイズ等による誤検知を防ぐために数ミリ秒から数十ミリ秒の所定時間での積分したもの∫G(t)dtを読み込む。
<歩行者判別手順>
ステップS−3からステップS−5までが歩行者判別手順である。ステップS−3では、(2)式、M=(∫P(t)dt)/Vにより、ステップS−2で読み込んだ圧力センサ3の積分値を車速検出値Vで除して有効質量を求める。
次のステップS−4で、コントローラ11は算出した有効質量Mが所定の閾値Mth以上であるか否かを判定する。閾値Mth以上である場合(ステップS−4でYes)には、衝突物は歩行者以上の質量の物体と判定し、次のステップS−5に進む。閾値Mth以上でない場合(ステップS−4でNo)には、ステップS−2に戻る。
ステップS−5において、ステップS−2で読み込んだ車速検出値Vを再び使い、あらかじめ定められたVmax、Vminの範囲と比較する。車速検出値Vがこの範囲にあるとき、コントローラ11は歩行者保護装置21を作動させる信号を出力する(ステップS−6)。
Vmaxは歩行者保護装置21の効果がある上限の速度として設定される。すなわち、Vmaxを超える大きさの速度では、歩行者はエンジンフードの範囲を超えてはね上げられるので、ポップアップフード等のような歩行者保護装置21を作動させても効果がない。また、歩行者保護装置21が作動すると、運転者の視界を妨げるため危険である。さらにまた、引き続き大きな速度のまま他の物体と衝突することも考えられ、エンジンルームが潰れるような深刻な衝突であれば、ポップアップフード等のような歩行者保護装置21が作動して後端が上昇したエンジンフードが、フロントガラスを突き破って車室に侵入し乗員に危害を加えるおそれがある。このためVmaxを超える大きさの速度では、歩行者保護装置21は作動しないようにしている。
また、Vminは歩行者保護装置21の効果がある下限の速度として設定される。すなわち、Vminより小さい速度では、歩行者はエンジンフードの上にはね上げられないか、またははね上げられてもエンジンフードに強く打ち付けられないため、歩行者保護装置21を作動させても効果がない。したがって、Vminより小さい速度では、歩行者保護装置21は作動しないようにしている。
ここまでは歩行者保護装置に主眼を置いて説明してきたが、この機構であれば、車両や建造物に衝突する際にも衝突の兆候として検知できることがわかる。
<衝突判定手順>
衝突判定手順について説明する。ステップS−7からステップS−9までが衝突判定手順である。まずステップS−7で、歩行者判別手順でも使用した圧力センサ3の時間積分値を、所定の閾値Pthと比較する。圧力センサの積分値が所定の閾値Pth以上であれば(ステップS−7でYes)、何らかの衝突過程が開始されたとみなし、閾値Vthに、圧力センサ3が衝突を検知した場合の閾値Vth_1を代入する(ステップS−8)。この閾値Vth_1はステップS−1で初期化された閾値Vth_0より小さな値である。すなわち、閾値の変更は、上述のように構成された圧力センサ3が、軽微な衝突を捉えることができ、加速度センサであるフロアセンサ7に比べ、衝突の初期において検知することが可能であることを利用して、後のステップS−9で、より小さな衝撃で早期に衝突を判定できるようにするためのものである。なお、歩行者検知のための圧力センサ3は、強い衝撃に対しては飽和してしまい分解能がないので、この圧力センサ3の検出結果をもって乗員保護装置20を作動させることはしない。
ステップS−7で条件を満たさない場合は、閾値Vthの値をステップS−1で初期化された閾値Vth_0のままステップS−9へ行く。ステップS−2に戻らずステップS−9へ行くのは、故障や何らかの原因で圧力上昇が検出できなくとも、少なくともフロアセンサ7での検知を有効にするようにするためである。このことによって、閾値Vth_0での検知は可能となるので、乗員の安全に寄与する。
ステップS−9では、ステップS−2で読み込んだ、フロアセンサ7の加速度の検出値を時間積分したものを閾値と比較する。閾値Vth以上であれば乗員保護装置20を作動させる(ステップS−10)。このときステップS−7でYesと判定されていれば、ステップS−8を経ているので、閾値Vthは、ステップS−1で初期化された閾値Vth_0より小さな値である閾値Vth_1となっている。この様子を図6に示す。図6は横軸を時間とし、縦軸はステップS−7の部分を、判定結果Yesをハイ側に示し、Vthの部分を速度の大きさとして示す。なお、ステップS−9はフロアセンサ7の検知した加速度を時間で積分した値(∫G(t)dt)を閾値と比較するものであり、加速度を時間積分したものは速度と呼ばれるため、閾値はVで表記している。
図6に即して説明すると、ステップS−7がYesとなると、ステップS−8で、閾値VthはVth_0からVth_1へと変化している。なお、この2つのステップには実際にはタイムラグがあるが、ごく短い時間であるため無視して示してある。すると、閾値がVth_0では、時刻Aでフロアセンサ7の積分値が閾値を超えて乗員保護装置20の作動を判定されていたものが、閾値Vth_1では、それより早い時刻Bで乗員保護装置20の作動を判定できるようになることがわかる。これにより早期に乗員保護装置を作動させることが可能となる。なお、通常は乗員保護装置が誤作動することがないよう、Vth_0は、十分高いものとしておく必要がある。ステップS−9で条件を満たさない場合はステップS−2に戻る。以後、フローを継続する。
以上詳述したことから明らかなように、本実施形態によれば、車両内の所定の位置に配設されて当該車両に加わる衝撃を検出するフロアセンサ7(第1のセンサ)と、フロアセンサ7による検出値を基にして得られる演算値が所定の閾値(Vth)を超えた場合に乗員保護装置20の起動が必要な衝突が発生したと判定する衝突判定手段(ステップS−9)とを備える車両用衝突検知装置10において、フロアセンサ7よりも車両前方側に配置されてフロアセンサ7とは異なる物理量を検出する圧力センサ3(第2のセンサ)と、圧力センサ3による検出結果に基づいて衝突判定手段(S−9)の所定の閾値を変更する閾値変更手段(ステップS−7〜S−8)とを備えたことを特徴とする。
この構成によれば、車両に衝突が発生すると、フロアセンサ7よりも車両前方側に配置された圧力センサ3は、フロアセンサ7とは異なる物理量を検出し、閾値変更手段(ステップS−7〜S−8)は、圧力センサ3による検出結果∫P(t)dtに基づいて衝突判定手段(ステップS−9)の所定の閾値Vthを変更する。すなわち、フロアセンサ7よりも早期に衝突を検知できる圧力センサ3の検出結果に基づいて、フロアセンサ7による演算値と比較される衝突判定手段(ステップS−9)の所定の閾値Vthを変更するので、誤動作を防ぎつつ衝突の早期において衝突を検知することが可能となる。また、フロアセンサ7で検知し難いオフセット衝突の場合でも、フロアセンサ7よりも車両前方側に配置された圧力センサ3により良好に衝突を検知することが可能となる。また、乗員保護装置として、より複雑な形状のエアバッグの採用を可能にする。従来のエアバッグは通常2段階の展開を行っており、第1段階では、比較的弱い圧力で、収納部のふたを開け、折りたたまれて収納されたエアバッグを拡げ、第2段階で強い圧力でさらに展開し衝撃に備えるようにしていたが、展開時間が限られていたため球体を基本としたものであった。この構成によれば、いままでより早期に衝突を検知できるため、初期の展開圧力を低くするか、または初期の展開時間を長く設定できるので、複雑な形状であっても展開初期に破損することなく展開することができ、乗員をより安全に保護する形状とすることができる。
また、本実施形態によれば、車両バンパ1内に配設され且つチャンバ空間2aが内部に形成されるチャンバ部材2と、チャンバ内の圧力を検出する圧力センサ3と、圧力センサによる圧力検出結果に基づいて車両バンパへの物体の衝突を判定するバンパ衝突判定手段(ステップS−4〜S−5)とを備え、第1のセンサ(フロアセンサ7)は、加速度センサにより構成され、第2のセンサは、圧力センサ3により構成されることを特徴とする。
この構成によれば、車両に衝突が発生すると、車両バンパ1内に配設されたチャンバ部材2におけるチャンバ空間2a内の圧力が変化し、圧力センサ3がチャンバ空間2a内の圧力変化を検出する。そして、閾値変更手段(ステップS−7〜S−8)は、圧力センサ3による検出結果に基づいて衝突判定手段(ステップS−9)の所定の閾値を変更する。すなわち、第1のセンサとしての加速度センサ(フロアセンサ7)より早期に衝突を検知できる圧力センサ3の検出結果に基づいて、加速度センサ(フロアセンサ7)による演算値にて乗員保護装置20の起動が必要な衝突を判定する閾値Vthを変更するので、誤動作を防ぎつつ衝突の早期において、信頼性の高い衝突検知をすることが可能となる。また、歩行者保護装置21の起動制御用に設けられたチャンバ部材2及び圧力センサ3を有する機構を利用するため、装置を安価に構成できる。
また、本実施形態によれば、閾値変更手段(ステップS−7〜S−8)は、所定の閾値Vthをより小さい値Vth_1に変更することを特徴とする。この構成によれば、衝突のさらに早期において誤作動を避けつつ衝突を検知することが可能となる。
また、本実施形態によれば、第2のセンサ(圧力センサ3)の出力結果に基づいて歩行者との衝突を判定する歩行者衝突判定手段(ステップS−3〜S−5)を備えることを特徴とする。この構成によれば、歩行者と歩行者保護装置21の作動が必要な衝突があった場合、歩行者を保護することが可能となる。
また、チャンバ空間2aは車両幅方向全域にわたって存在するように構成できるため、オフセット衝突であっても良好に検知でき、閾値を下げることができるので、衝突時には早期に車両衝突検知を可能とする
なお、ステップS−2で圧力の積分値の読み込みを行わず、ステップS−7で、圧力センサ3の値のピークの値を所定の閾値を比較するようにしてもよい。すなわち、式 ∫P(t)dt≧Pthに換えて、たとえば、Pthpをピーク値と比較するための閾値として、式 P(t)≧Pthpなどとしてもよい。この場合、十分な実験を行い、衝突が判定できる閾値がノイズ等と判別できるような値であることが条件である。積分時間が不要になる分、早期に検知できるようになる。
また、ステップS−2でフロアセンサ7の積分値∫G(t)dtの読み込みを行わず、ステップS−9で、フロアセンサ7の値を読み込みつつ所定時間の時間積分を行うようにしてもよい。
さらにまた、ステップS−7で、圧力センサ3の時間積分値を、所定の閾値Pthと比較し、所定の閾値Pth以上であれば、閾値Vthに閾値Vth_1を代入するようにした(ステップS−8)が、圧力センサ3の時間積分値の範囲に応じて、閾値を、たとえば、Vth_11、Vth_12、……、Vth_1nのように複数用意したものから選択してVthに代入するようにしてもよい。すなわち、圧力センサ3で大きな圧力を検知した場合、より大きな衝突過程が開始されたとみなし、より小さな閾値を選択するものとする。こうすることにより、図6に示すように、時刻Bより、さらに早い時刻Bnでフロアセンサ7での衝突検知が可能となる。
この構成によれば、誤動作を防ぎつつ衝突の早期において、信頼性の高い衝突検知をすることが可能となる。また、歩行者保護装置21の起動制御用に設けられたチャンバ部材2及び圧力センサ3を有する機構を利用するため、装置を安価に構成できる。
次に、本発明の第二実施形態の車両用衝突検知装置10について、図7乃至図10を参照しつつ説明する。第二実施形態は、図8に示すように、第一実施形態の構成に、さらにサテライトセンサと呼ばれる加速度センサを第3のセンサとして設け、第2のセンサと協働してフロアセンサ7の閾値を変更し乗員保護装置を作動させるものである。尚、上述した第一実施形態と同一部材については同一の符号を付し、それらについての詳細な説明を省略する。
サテライトセンサ8は図7に示すように左右一対のサイドメンバ6の前部、不図示のラジエターサポート付近に左右一対設けられている。サテライトセンサ8はフロアセンサ7と同様に静電容量式のものであってよいが、仕様は異なっていてもよい。
つぎに、図9に示すフローチャートに基づいて、本実施形態の車両用衝突検知装置10におけるコントローラ11の処理の流れについて説明する。このうち、歩行者保護装置21の作動に関わる部分は第一実施形態と共通であるので、説明は省略し、乗員保護装置20に関わる部分を説明する。
ステップS−1、S−7、S−8は第一実施形態と同じである。ステップS−2もコントローラ11が、各信号の演算値を読み込むことは同様である。サテライトセンサ8が追加されているため、サテライトセンサ8の値をフロアセンサ7同様、ノイズ等による誤検知を防ぐために数ミリ秒から数十ミリ秒の所定時間での積分したもの∫G1(t)dtを読み込む。なお一対あるサテライトセンサ8の値としては、和をとったものを使うか、比較をとり、どちらか大きい方を使うか、どちらでもよいものとする。
ステップS−7では、判定内容は第一実施形態と同じであるが、条件を満たさないと判定された場合はステップS−15へ進むようになっている。ステップS−7で条件を満たす場合は、第一実施形態と同様にステップS−8へと進み、フロアセンサ7の閾値VthにVth_1を代入し、ステップS−11へと進む。
ステップS−8に続くステップS−11では、ステップS−2で読み込んだ、サテライトセンサ8の加速度の検出値を時間積分したものを閾値V1thと比較する。条件を満たす場合、次のステップS−12へ進み、フロアセンサの閾値Vthに、圧力センサが軽微な衝突を検知しサテライトセンサが衝突を検知したときの閾値Vth_2を代入する。続いてステップS−13に進む。ステップS−11で条件を満たさない場合、フロアセンサの閾値Vthを、ステップS−8で代入されたVth_1のまま、変更せずにステップS−13に進む。
ステップS−13の説明をする前に、説明の都合上ステップS−15とS−16について説明する。前述したように、ステップS−7は、判定内容は第一実施形態と同じであるが、条件を満たさないと判定された場合はステップS−15へ進むようになっている。ステップS−15では、ステップS−11と同じく、ステップS−2で読み込んだ、サテライトセンサ8の加速度の検出値を時間積分したものを閾値V1thと比較する。条件を満たす場合、次のステップS−16へ進み、フロアセンサ7の閾値Vthに、圧力センサが衝突を検知せずサテライトセンサが衝突を検知したときの閾値Vth_3を代入する。続いてステップS−13に進む。ステップS−15で条件を満たさない場合、フロアセンサ7の閾値Vthを、ステップS−1で初期値化されたVth_0のまま、変更せずにステップS−13に進む。
ステップS−13では、ステップS−2で読み込んだ、フロアセンサ7の加速度の検出値を時間積分したものを閾値Vthと比較する。閾値Vth以上であれば乗員保護装置20を作動させる(ステップS−14)。しかしながら、閾値Vthは、どのステップを経てきているかにより異なっている。すなわち、ステップS−11でYesとなっている場合(ステップS−12→S−13)は、Vth_2であり、ステップS−11でNoとなっている場合(ステップS−11→S−13)は、Vth_1であり、ステップS−15でYesとなっている場合(ステップS−16→S−13)はVth_3であり、ステップS−15でNoとなっている場合(ステップS−15→S−13)はVth_0である。以上の4通りがあることになる。これらの大小関係は、
Vth_0>Vth_1>Vth_3>Vth_2・・・(3)
となっている。なお、ステップS−13の条件を満たさない場合はステップS−2へ戻り、フローを継続する。
閾値Vthが上述した4通りの場合を、図10を使って説明する。図10の各図は横軸を時間とし、縦軸はステップS−7、S−11、S−15の部分を、判定結果Yesをハイ側に示し、Vthの部分を速度の大きさとして示す。
まず1つめとして、ステップS−7でYesとなり、さらにステップS−11でYesとなっている場合(ステップS−12→S−13)、すなわち、圧力センサ3に基づき軽微な衝突を検知し、さらにサテライトセンサ8に基づき衝突を検知して閾値Vthが閾値Vth_2になっている場合について説明する。これを示すのは図10(a)である。図10(a)に即して説明すると、ステップS−7がYesとなると、ステップS−8で、閾値VthはVth_0からVth_1へと変化している。なお、この2つのステップには実際にはタイムラグがあるが、ごく短い時間であるため無視して示してある。つぎにやや時間をおいてステップS−11がYesとなると、ステップS−12で、閾値VthはVth_1からVth_2へと変化している。ステップS−11がYesとなる箇所がステップS−7がYesとなる箇所より右側に書かれているのは、サテライトセンサ8による衝突検知が圧力センサ3による軽微な衝突の検知よりも時間が遅れることを示している。ただし、サテライトセンサ8はフロアセンサ7より車両前方に配置されているため、フロアセンサ7よりも早い時刻に衝突を検知することが可能である。よって、サテライトセンサ8を使いフロアセンサ7の閾値をさらに下げ、フロアセンサ7の判定が早期となるようにしている。
閾値VthがVth_2へと変化したことにより、閾値がVth_0では、時刻Aでフロアセンサ7の積分値が閾値を超えて乗員保護装置20の作動を判定されていたものが、閾値Vth_2では、それより早い時刻Cで乗員保護装置20の作動を判定できるようになることがわかる。これにより、早期に乗員保護装置を作動させることが可能となる。
図10(a)で示すものは、圧力センサ3の検出値を基にして軽微な衝突をしたと判断し、さらにサテライトセンサ8の検出値を基に衝突したと判断しているものであるので、もっとも衝突の蓋然性が高いと考えることができる。したがって、閾値Vth_2は4つの中でもっとも低い値となっており、時刻Cは4つの場合のうち、もっとも早く検知できることを示している。
つぎに2つめとして、ステップS−7でYesとなったが、ステップS−11でNoとなっている場合(ステップS−11→S−13)、すなわち、圧力センサ3に基づき軽微な衝突を検知したが、サテライトセンサ8に基づいた判断では、衝突を検知しておらず、閾値Vthが閾値Vth_1となっている場合について説明する。これを示すのは図10(b)である。
図10(b)に即して説明すると、ステップS−7がYesとなると、ステップS−8で、閾値VthはVth_0からVth_1へと変化している。しかし、ステップS−11ではNoであるため、閾値はこのまま変化しない。閾値VthがVth_0からVth_1へと変化したことにより、閾値がVth_0では、時刻Aでフロアセンサ7の積分値が閾値を超えて乗員保護装置20の作動を判定されていたものが、閾値Vth_1では、それより早い時刻Bで乗員保護装置20の作動を判定できるようになることがわかる。これにより早期に乗員保護装置を作動させることが可能となる。なお、時刻Bは時刻Cよりは遅い時刻となっている。
図10(b)で示すものは、圧力センサ3の検出値を基にして軽微な衝突をしたと判断したが、さらにサテライトセンサ8の検出値を基にした判断では衝突はしていないというものなので、衝突がごく小さいものであった場合が考えられる。この場合、フロアセンサ7の出力の積分値は実線で示したものではなく、図中Zの符号を付して点線で示したように、フロアセンサ7で検出する値も閾値以下となる。あるいは、サテライトセンサ8が故障や何らかの原因により信号を検出できなかった場合が考えられ、この場合でも早期に検知が可能である。
つづいて3つめとして、ステップS−7でNoとなったが、ステップS−15でYesとなっている場合(ステップS−16→S−13)、すなわち、圧力センサ3に基づいた判断では軽微な衝突はないが、サテライトセンサ8に基づいた判断では、衝突を検知したというもので、閾値Vthが閾値Vth_3となっている場合について説明する。これを示すのは図10(c)である。図10(c)に即して説明すると、ステップS−7がNoのままであるが、ステップS−15でYesとなり、ステップS−16で閾値VthはVth_0からVth_3へと変化している。
閾値VthがVth_3へと変化したことにより、閾値がVth_0では、時刻Aでフロアセンサ7の積分値が閾値を超えて乗員保護装置20の作動を判定されていたものが、閾値Vth_3では、それより早い時刻Dで乗員保護装置20の作動を判定できるようになることがわかる。これにより早期に乗員保護装置を作動させることが可能となる。なお、時刻Dは時刻Bより早く、時刻Cより遅い時刻となっている。
図10(c)で示すものは、圧力センサ3の検出値を基にした判断では軽微な衝突はないのだが、サテライトセンサ8の検出値を基にした判断では衝突があるというものであるので、圧力センサ3が故障や何らかの原因により信号を検出できなかった場合や、あるいは、圧力センサ3が検知できない箇所、すなわちバンパ1に衝突をしない部分での衝突であった場合が考えられる。このような場合でも早期に検知が可能であることを示す。
さらにつづけて4つめとして、ステップS−7でNoとなり、さらにステップS−15でNoとなっている場合(ステップS−15→S−13)、すなわち、圧力センサ3に基づいた判断では軽微な衝突はなく、さらにサテライトセンサ8に基づいた判断でも衝突を検知していないというもので、閾値Vthが閾値Vth_0のままの場合について説明する。これを図10の各図に即して説明すると、この場合、閾値VthがVth_0のまま右に伸びる点線とフロアセンサの積分値と交わる時刻Aで乗員保護装置の作動が判定されることになる。
圧力センサ3の検出値を基にした判断で軽微な衝突はなく、さらにサテライトセンサ8の検出値を基にした判断でも衝突がないのであるから、衝突の蓋然性は低いと考えることができる。衝突が起こっていない通常走行の場合、これに該当する。したがって、閾値Vth_0は従来と同等の値となっており、時刻Aも従来と同等である。また、圧力センサとサテライトセンサが、同時に故障したか、何らかの原因により信号を検出できなかった場合が考えられ、この場合でも随時フロアセンサ7の信号を判定するようにしている。
以上、説明したことから明らかなように、本実施形態によれば、車両内においてフロアセンサ7(第1のセンサ)よりも車両前方側に配設されてフロアセンサ7と同じ物理量を検出するサテライトセンサ8(第3のセンサ)を更に備え、閾値変更手段(ステップS−7〜S−8、S−11〜S−12、S−15〜S−16)は、圧力センサ3(第2のセンサ)による検出結果∫P(t)dtとサテライトセンサ8による検出結果∫G1(t)dtとに基づいて、衝突判定手段(ステップS−13)の所定の閾値(Vth)を変更することを特徴とする。
この構成によれば、閾値変更手段は、圧力センサ3による検出結果∫P(t)dtとサテライトセンサ8による検出結果∫G1(t)dtとに基づいて衝突判定手段の所定の閾値を変更するので、より早期に且つ高精度に衝突を検知することが可能となる。
また、本実施形態によれば、閾値変更手段(ステップS−7〜S−8、S−11〜S−12、S−15〜S−16)は、所定の閾値(Vth)をより小さい値(Vth_1、Vth_2、Vth_3)に変更することを特徴とする。この構成によれば、衝突の早期において誤作動を避けつつ衝突を検知することが可能となる。
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能であることは云うまでもない。
第二実施形態において、4つの閾値の大小関係を、
Vth_0>Vth_1>Vth_3>Vth_2・・・(3)
としたが、このうち、Vth_1=Vth_3としてもよい。ROM26またはRAM24において使用するメモリを節約することができる。
第二実施形態において、サテライトセンサ8はフロアセンサ7と同様に静電容量式のものとしたが、異なるような加速度センサでもよく、単に所定の加速度を超えたときにONするようなものであってもよい。サテライトセンサ8を安価なものとすることができる。
各実施形態において、ステップS−7で圧力センサの検出値を時間積分したものを使ったが、時間積分せず、ピークの値を所定の閾値を比較するようにしてもよい。式 ∫P(t)dt≧Pthに換えて、たとえば、Pthpをピーク値と比較するための閾値として、式 P(t)≧Pthpなどとしてもよい。この場合、十分な実験を行い、衝突が判定できる閾値がノイズ等と判別できるような値であることが条件である。積分時間が不要になる分、早期に検知できるようになる。
各実施形態において、フロアセンサ7はコントローラ11と離れて配置されるものとしたが、コントローラと同じ筐体の中にあってもよい。ただし、場所は加速度を良好に検知できる車両幅方向中央部であるフロアトンネルの上部とする。
各実施形態において、第2のセンサとして、歩行者衝突検知用の圧力センサの信号を用いたが、光学的または電磁的なセンサ信号を使ってもよい。たとえば、車室内または車両前方に配置されたカメラや車両用レーダ装置で、光学的または電磁的に外界の走行環境を検出して障害物や先行車等を認識し、警報、自動ブレーキ等といった各種制御を実行することで低速度における衝突を回避し、安全性を向上させる技術が開発、実用化されている。このような衝突回避システムのセンサ信号を、衝突回避が間に合わない場合に、本発明の車両用衝突検知装置の第2センサの信号として使ってもよく、衝突回避システムのセンサ信号に合わせるよう図5、図9のフローチャートのステップS−7を改変すれば、容易に車両用衝突検知装置を構成できる。