JP3838348B2 - 低騒音ギア構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ギアを介した回転伝達の際に発生する歯打音を抑制して騒音を低減するギア構造に関するものである。
【0002】
【関連する背景技術】
ギアを介した回転伝達は、工作機械や内燃機関等の様々な分野で広く実施されているが、伝達トルクが変動すると、ギア間のバックラッシにより歯面同士が衝突して歯打音を発し、この歯打音が騒音増大の要因となるという問題を抱えている。歯打音を抑制するための対策として、例えば実開平6−32818号公報に記載の技術が提案されている。この技術では、ギアの中心から外周側の各歯底に向けて放射状にオイル通路を形成し、回転軸から供給されたオイルをオイル通路を介して歯底から噴出させ、これにより歯打音の抑制を図っている。
【0003】
又、別の対策として、実開平4−93543号公報に記載の技術では、ギアのリムの内周に環状ウエイトを周方向に摺動可能に嵌め込むと共に、この環状ウエイトをカバーにより覆って内部に粘性流体を充填している。この技術は、所謂ビスカスダンパとして機能するものであり、ギアの回転変動に伴って環状ウエイトが周方向に変位したときのリム内周との間の摩擦抵抗、及び環状ウエイトが粘性流体をせん断したときのせん断抵抗を利用してギアの回転変動を減衰させ、これにより歯打音の抑制を図っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記前者の技術は、ギアの歯面にオイルを確実に供給するための対策に過ぎない。従って、供給されたオイルによる歯面の潤滑以上の歯打音の抑制作用は得られず、十分な騒音低減は期待できなかった。
又、後者の技術では、上記ビスカスダンパとしての機能を得るには、環状ウエイトに十分な慣性質量を与える必要があり、結果としてギア自体の慣性質量が不当に増大し、このギアを適用した装置の作動に支障をきたすという別の問題が生じた。
【0005】
本発明の目的は、ギアの慣性質量の不当な増加を未然に防止した上で、歯打音の抑制作用を十分に発揮し、もって、ギアの噛合に伴う騒音を確実に低減することができる低騒音ギア構造を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明では、回転軸に支持されたハブを中心として円盤状のウェブを介してリムが連結され、リムの外周面に形成された歯部を相手側ギアに噛合させ、該相手側ギアとの間で周期的なトルク変動を伴って回転伝達するギアと、ギアの一側面に配設されて、ギアの側面との間に流体室を形成するカバー体と、流体室内に粘性流体を供給する流体供給手段と、ギアに形成され、相手側ギアとの回転伝達に伴うトルク変動時に相手側ギアと噛合する歯部の位置と流体室とを連通する排出路とを備えたものである。
【0007】
ギアは相手側ギアと噛合して、相手側ギアに駆動力を伝達したり、逆に相手側ギアから駆動力を伝達されたりし、このときの伝達トルクに変動が生じると、両ギア間のバックラッシにより歯面同士が衝突して歯打音を発生させる。一方、円盤状のウェブを有するギアの側面とカバー体との間には流体室が形成され、この流体室には流体供給手段から粘性流体が供給され、供給された粘性流体はギアの回転に伴う遠心力で流体室内の外周側に滞留している。
【0008】
そして、上記伝達トルクの変動に伴ってギアの回転速度が急変すると、流体室内に滞留した粘性流体と流体室の外周との間にせん断抵抗が生じ、回転速度の急変を妨げるダンピング作用を奏するため、歯面の衝突が緩和される。
一方、このように粘性流体のせん断抵抗を利用して歯面の衝突を緩和しており、衝突緩和のためにウエイト等の重量物を用いていないため、ギアの慣性質量を増大させることなく実施可能である。
又、両ギア間の伝達トルクの変動時には、ギアの排出路が相手側ギアとの噛合位置に到達し、排出路から排出された粘性流体中で歯面同士の衝突が行われるため、歯面の衝突緩和がより確実に発揮される。
【0009】
請求項2の発明では、回転軸に支持されたハブを中心として透孔を有するスポーク状のウェブを介してリムが連結され、リムの外周面に形成された歯部を相手側ギアに噛合させ、相手側ギアとの間で周期的なトルク変動を伴って回転伝達するギアと、ギアの両側面にそれぞれ配設されて、ギアの両側との間に、ウェブの透孔を介して相互に連通する一対の流体室を形成する一対のカバー体と、各流体室内に粘性流体をそれぞれ供給する流体供給手段と、ギアに形成され、相手側ギアとの回転伝達に伴うトルク変動時に該相手側ギアと噛合する歯部の位置と両流体室とを連通する排出路とを備えたものである。
【0010】
従って、ギアの両側面とカバー体との間には、ウェブの透孔を介して相互に連通する一対の流体室が形成され、これらの流体室が、請求項1に記載した単一の流体室と同様の作用をそれぞれ発揮する。よって、請求項1に記載のように、ギア間の伝達トルクが変動したときには、粘性流体のせん断抵抗を利用して歯面の衝突が緩和され、且つ、ギアの慣性質量を増大させることなく実施可能となる。
又、両ギア間の伝達トルクの変動時には、ギアの排出路が相手側ギアとの噛合位置に到達し、排出路から排出された粘性流体中で歯面同士の衝突が行われるため、歯面の衝突緩和がより確実に発揮される。
【0012】
請求項3の発明では、ギアに、流体室内とギアの歯部の一側とを連通させる排出路が形成されたものである。従って、両ギア間の伝達トルクの変動時には、排出路から排出された粘性流体が歯面に付着し、その粘性抵抗によっても歯面の衝突が緩和されるため、結果として歯打音が抑制される。
請求項4の発明では、ギアが、相手側ギアとの間で周期的なトルク変動を伴って回転伝達するものであり、トルク変動時に相手側ギアと噛合する歯部の位置に排出路が形成されたものである。
【0013】
従って、両ギア間の伝達トルクの変動時には、ギアの排出路が相手側ギアとの噛合位置に到達しているため、歯面同士の衝突が排出路から排出される粘性流体中で行われて、粘性抵抗による衝突緩和がより確実に発揮される。
好ましい態様として、上記相手側ギアを、内燃機関の複数気筒に燃料を圧送する燃料噴射ポンプの入力軸に支持されたものとし、上記ギアの排出路を、各気筒への燃料噴射に伴って発生する燃料噴射ポンプの駆動トルク変動時に相手側ギアと噛合する歯部の位置に形成することが望ましい。従って、各気筒の燃料噴射時には、ギアの排出路が相手側ギアとの噛合位置に到達して、粘性流体中で確実に歯面の衝突が緩和され、燃料噴射ポンプの駆動に起因する歯打音が抑制される。
【0014】
別の好ましい態様として、上記相手側ギアを、内燃機関の吸気弁又は排気弁を開閉駆動するカム軸に支持されたものとし、上記ギアの排出路を、吸気弁又は排気弁の開閉駆動に伴って発生するカム軸の駆動トルク変動時に相手側ギアと噛合する歯部の位置に形成することが望ましい。従って、吸気弁又は排気弁の開閉駆動時には、ギアの排出路が相手側ギアとの噛合位置に到達して、粘性流体中で確実に歯面の衝突が緩和され、吸気弁又は排気弁の開閉駆動に起因する歯打音が抑制される。
請求項の発明では、流体供給手段が、ハブに形成された供給路を介して回転軸から供給される粘性流体を流体室内に供給するものであり、回転軸から供給される粘性流体がハブの供給路を経て流体室内に供給され、流体室内の外周側に滞留する。
請求項の発明では、流体供給手段が、カバー体に形成された供給口を介して、相対向する噴出ノズルから噴出された粘性流体を流体室内に供給するものであり、噴出ノズルから噴出された粘性流体がカバー体の供給口を経て流体室内に供給され、流体室内の外周側に滞留する。
【0015】
【発明の実施の形態】
[第1実施形態]
以下、本発明をディーゼル式内燃機関の燃料噴射ポンプを駆動するためのアイドラギアに適用した第1実施形態を説明する。尚、本実施形態は、請求項1、3、4の発明に相当するものである。
【0016】
図1は本実施形態の低騒音ギア構造を示す断面図、図2はそのアイドラギアを示す図1のII−II線断面図である。内燃機関は4サイクル4気筒ディーゼル機関として構成されており、図1中には、シリンダブロック1の前面が示されている。シリンダブロック1の前面に形成された下穴1aには回転軸2の基端が嵌合固定され、この回転軸2にはアイドラギア3(ギア)が嵌め込まれている。アイドラギア3は、回転軸2の基端側に形成された規制段部2aと、回転軸2の先端側に固着された規制板4とにより軸方向の移動を規制されて、回転軸2を中心として回転し得るようになっている。
【0017】
アイドラギア3は、上記回転軸2に嵌め込まれた中心側のハブ5と、このハブ5の外周側に配設された環状のリム6と、ハブ5とリム6の間に位置して両部材を連結する円盤状のウェブ7とから構成されており、これらのハブ5、リム6、ウェブ7は、例えば鍛造により一体成形されている。ウェブ7はハブ5及びリム6に対して反エンジン側に位置し(以下、図1中の左方をエンジン側、右方を反エンジン側として説明する)、アイドラギア3のエンジン側の側面は環状に凹設されている。
【0018】
上記リム6の外周面に形成された歯部6aは、下側位置において内燃機関のクランク軸に固定された図示しない駆動ギアと噛合する一方、上側位置において燃料噴射ポンプの入力軸に固定された被動ギア8(相手側ギア)と噛合している。駆動ギアと被動ギア8とのギア比は1:2に設定されており、内燃機関の運転時には、クランク軸の回転に伴ってアイドラギア3を介して燃料噴射ポンプが半分の速度で回転駆動される。よって、クランク軸が2回転して各気筒の燃焼が一巡する間に燃料噴射ポンプの入力軸は1回転し、入力軸の90°毎に何れかの気筒が圧縮上死点に至って、当該気筒に対して燃料噴射ポンプから高圧燃料が圧送される。
【0019】
一方、アイドラギア3のエンジン側の側面には、ウェブ7と対応する円盤状をなすカバー体9が配設されている。このカバー体9は、ハブ5及びリム6に形成された段差により位置決めされた状態で、ハブ5側に装着されたスナップリング10によりアイドラギア3に固定されている。これによりアイドラギア3とカバー体9との間には、回転軸2を中心とした環状の流体室11が形成されている。
【0020】
図2に示すように、カバー体9には回転軸2を中心とした90°間隔の4箇所に略四角状の供給口9aが形成され、これらの供給口9aを介して上記流体室11内はエンジン側に向けて開口している。尚、供給口9aの個数や配置状態はこれに限定されるものではなく、任意に変更可能である。一方、上記シリンダブロック1の前面には、カバー体9に相対向するように噴出ノズル12が配置され、アイドラギア3の回転に伴って噴出ノズル12は各供給口9aと順次対向する。噴出ノズル12は内燃機関の軸受等を潤滑するためのオイル通路13と連通し、機関の運転中は常にオイル通路13からオイル供給を受けてオイルを噴出し、噴出されたオイルはカバー体9の各供給口9aを経て流体室11内に供給される(流体供給手段)。
【0021】
図2に示すように、上記アイドラギア3のリム6には、90°間隔で4箇所に各々3本の排出油路14(排出路)が形成され、図3の詳細図に示すように、これらの排出油路14により、リム6の内周側の流体室11と外周側の歯部6aの歯底とが相互に連通している。アイドラギア3の歯数は、燃料噴射ポンプ側の被動ギア8の歯数と同一に設定され、且つ、4箇所の排出油路14の位置は燃料噴射時(図2に示す)に被動ギア8と噛合する位置に設定されている。よって、燃料噴射の度に何れかの排出油路14が両ギア3,8の噛合位置に到達することになる。
【0022】
ここで、アイドラギア3の回転に伴う遠心力で、上記流体室11内のオイルは各排出油路14から外周側に排出されるが、このときにオイルが流体室11内で適度に滞留するように、上記噴出ノズル12から流体室11へのオイル供給量等を勘案した上で、各排出油路14の総断面積が設定されている。
尚、上記回転軸2には軸方向の第1供給油路15、及び直交する第2供給油路16が形成され、上記オイル通路13のオイルは、下穴1a及びこれらの供給油路15,16を介して回転軸2の外周に案内され、アイドラギア3の摺動部分を潤滑するようになっている。
【0023】
次に、以上のように構成された低騒音ギア構造の作用を説明する。
内燃機関の運転時には、クランク軸の回転に伴ってアイドラギア3を介して燃料噴射ポンプが回転駆動され、この燃料噴射ポンプから圧送される燃料により各気筒の圧縮上死点近傍で燃料噴射が行われる。一方、オイル通路13からのオイルは噴出ノズル12から噴出され、カバー体9の各供給口9aを経て流体室11内に供給されている。供給されたオイルは、アイドラギア3の回転に伴う遠心力で図2のように流体室11内の外周側に滞留し、各排出油路14を経て外周に向けて順次排出される。
【0024】
燃料噴射ポンプの駆動負荷は一定ではなく、燃料を圧送する瞬間に急増する特性を有する。よって、燃料噴射の度にアイドラギア3から被動ギア8への伝達トルクが変動し、両ギア3,8間のバックラッシにより歯面同士が衝突して歯打音が発生する。ここで、流体室11内に滞留したオイルは、伝達トルク変動によりアイドラギア3の回転速度が急変したときに、流体室11内の外周との間にせん断抵抗を生じて、回転速度の急変を妨げるダンピング作用を奏する。よって、上記歯面の衝突が緩和されて、歯打音が大幅に抑制される。
【0025】
又、各気筒の燃料噴射時には、アイドラギア3の何れかの排出油路14が被動ギア8との噛合位置に到達しているため、歯面同士の衝突は排出油路14から排出されるオイル中で行われることになる。このときのオイルの噴出状況は、実開平6−32818号公報に記載の従来技術のようにギアの全周に噴出させる場合とは異なり、噛合箇所に集中的に噴出されることから、歯面は十分なオイル中で衝突し、上記せん断抵抗に加えてオイルの粘性抵抗によっても歯面の衝突が緩和されることになる。結果として歯打音はより一層抑制され、ギア3,8の噛合に伴う騒音を確実に低減できる。
【0026】
しかも、以上の騒音低減作用は、ギア3,8間の伝達トルクの大小に関わらず得られ、例えば、バネ力により歯打音を抑制するシザースギアのように、伝達トルクが高い運転状態(燃料噴射ポンプの駆動負荷が大)にはバネ力が不足して騒音を低減できない等の不具合はなく、全ての運転領域で十分な効果を得ることができる。
【0027】
図4は燃料噴射に伴ってアイドラギア3に発生した振動の減衰状態を示し、従来技術に比較して本実施形態のものでは、燃料噴射時の振動の振幅Wが小さいと共に、振動が減衰するまでの所要時間Tも短く、この振動と相関する歯打音が十分に抑制できることがわかる。言うまでもないが、これによる騒音低減効果は、車内及び車外の何れにおいても発揮される。
【0028】
又、以上の騒音の低減により、燃料噴射ポンプの高圧化を実現可能になるという別の利点も得られる。即ち、エミッション低減を目的とした高圧化が近年要望されているが、燃料噴射ポンプの負荷変動が増加することから騒音面で制限を受けている。ここで、上記作用により歯打音を抑制できれば、低騒音を保ったまま高圧化を実現することができる。
【0029】
一方、以上の説明から明らかなように、噴出ノズル12から供給されるオイルを一旦流体室11内に滞留させて、そのせん断抵抗を歯面の衝突緩和に利用し、その後に排出油路14から排出させて、その粘性抵抗を歯面の衝突緩和に利用しており、その構成は、アイドラギア3にカバー体9を固定して、供給油路15,16,22や排出油路14を形成しただけの非常に簡単なものであり、既存のアイドラギアを仕様変更して容易に実施できる。しかも、実開平4−93543号公報に記載の従来技術のように重量物である環状ウエイトを用いていないため、アイドラギア3の慣性質量は一般的なギアとほとんど変わらない。従って、アイドラギア3の慣性質量が増大したときの弊害、例えば内難機関の回転応答性が悪化する等の弊害を未然に防止することができる。
【0030】
[第2実施形態]
次に、本発明を別のアイドラギアに具体化した第2実施形態を説明する。尚、本実施形態は、請求項2乃至4の発明に相当するものである。本実施形態の低騒音ギア構造は、第1実施形態のものと比較して、オイルの供給手法、及び流体室11の構成が相違しており、回転軸2に対するアイドラギア3の支持構造や各ギアの歯数関係等は、第1実施形態と同様である。従って、共通部分の説明は省略し、相違点を重点的に説明する。
【0031】
図5は本実施形態の低騒音ギア構造を示す断面図、図6はカバー体を取外した状態のアイドラギアを示す図5のVI−VI線断面図である。本実施形態では、アイドラギア3のウェブ7が透孔7aを有するスポーク状をなして、回転軸2の軸方向においてハブ5及びリム6の中央に位置しており、アイドラギア3の両側面には、それぞれカバー体9が第1実施形態と同様の構造により装着されている。尚、カバー体9には第1実施形態で述べた供給口9aが省略されると共に、エンジン側の噴出ノズル12も省略されている。
【0032】
これらのカバー体9によりアイドラギア3の両側にはそれぞれ流体室11が形成され、各流体室11は、スポーク状のウェブ7の透孔7aを介して相互に連通して単一の流体室を形作っている。又、これらの流体室11に対応して排出油路14も個別に形成されており、第1実施形態と同じく、各排出油路14の位置は、燃料噴射時に被動ギア8と噛合する位置に設定されている。
【0033】
一方、回転軸2には第1供給油路15と共に2本の第2供給油路16が形成され、各第2供給油路16は回転軸2の外周にそれぞれ開口している。各第2供給油路16の開口箇所と対応するように、アイドラギア3のハブ5の内周には周方向に2条のオイル溝21が形成され、各オイル溝21内は第3供給油路22を介して上記流体室11とそれぞれ連通している。各オイル溝21はハブ5の全周に亘って形成され、アイドラギア3の回転角度に関わらず、第2供給油路16と第3供給油路22とを常に連通させる。尚、図6では、第3供給油路22を排出油路14と対応して90°間隔で4箇所に形成しているが、その個数や配置状態はこれに限定されるものではなく、任意に変更可能である。
【0034】
そして、オイル通路13からのオイルは、第1供給油路15及び第2供給油路16を経てアイドラギア3の摺動部分に案内されて潤滑に供されると共に、更にオイル溝21及び第3供給油路22を経て各流体室11に供給される(流体供給手段)。その後は第1実施形態と同様であり、供給されたオイルは、アイドラギア3の回転に伴う遠心力で流体室11内の外周側に滞留しながら、各排出油路14から外周に向けて順次排出され、重複した説明はしないが、第1実施形態同様の作用効果を得ることができる。
【0035】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、上記各実施形態では、ディーゼル式内燃機関の燃料噴射ポンプを駆動するためのアイドラギア3に具体化したが、適用箇所はこれに限らず、例えば内燃機関のカム軸駆動用のギアに適用してもよい。
即ち、燃料噴射ポンプの場合と同様に、吸排気弁を開閉駆動するカム軸にもバルブスプリングの反力に起因して負荷変動が発生するため、ギア列を介してクランク軸の回転をカム軸に伝達する場合にはギア間で歯打音が生じる。そこで、ギア列を構成するギアを上記実施形態のアイドラギア3と同様の構成とすれば、吸排気弁の開閉駆動に起因する歯打音を抑制することができる。更に、このようなアイドラギアに限らず、それ以外の駆動側或いは被動側のギアに具体化してもよい。例えば上記実施形態の場合には、アイドラギア3に代えてポンプ側の被動ギア8に同一機能を付加すれば、同様の作用効果を得ることができる。
【0036】
又、上記各実施形態では、アイドラギア3の排出油路14を燃料噴射時に被動ギア8と噛合する位置に形成したが、他の位置に変更してもよい。この場合には、歯面の衝突をオイル中で行うことはできないが、排出油路14から排出されたオイルが歯面に付着するため、その粘性抵抗で歯面の衝突を緩和できる。又、オイルのせん断抵抗による衝突緩和については実施形態と同様に得られるため、この場合でも歯打音を抑制することは十分に可能である。
【0037】
更に、上記各実施形態では、アイドラギア3の側面の凹状部分を利用して流体室11を形成したが、代わりに凹状のカバー体9を用いることで流体室11を形成してもよい。
一方、上記第2実施形態では、供給油路15,16,22を経て流体室11内にオイルを供給したが、第1実施形態のように噴出ノズル12を利用して供給するようにしてもよい。尚、アイドラギア3のウェブ7がスポーク状のため、噴出ノズル12からのオイルは、エンジン側の流体室11を経て反エンジン側の流体室11にも確実に供給される。
【0038】
又、上記第2実施形態では、アイドラギア3のウェブ7をスポーク状にしたが、第1実施形態のように円盤状として、両流体室11を完全に区画してもよい。上記のように各流体室11は第3供給油路22及び排出油路14を個別に備えるため、このように構成した場合でも、流体室11へのオイルの流通には何ら支障はない。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1〜4の発明の低騒音ギア構造によれば、ギアの慣性質量の不当な増加を未然に防止した上で、流体室内に滞留した粘性流体と流体室の外周との間のせん断抵抗を利用して回転速度の急変を妨げると共に、排出路から排出した粘性流体中で歯面同士を衝突させ、これにより歯打音の抑制作用を十分に発揮し、もって、ギアの噛合に伴う騒音を確実に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態の低騒音ギア構造を示す断面図である。
【図2】アイドラギアを示す図1のII−II線断面図である。
【図3】排出油路の詳細を示す拡大断面図である。
【図4】アイドラギアに発生した振動の減衰状態を示す説明図である。
【図5】第2実施形態の低騒音ギア構造を示す断面図である。
【図6】カバー体を取外した状態のアイドラギアを示す図5のVI−VI線断面図である。
【符号の説明】
2 回転軸
3 アイドラギア(ギア)
5 ハブ
6 リム
6a 歯部
7 ウェブ
7a 透孔
8 被動ギア(相手側ギア)
9 カバー体
9a 供給口(流体供給手段)
11 流体室
12 噴出ノズル(流体供給手段)
14 排出油路(排出路)
15 第1供給油路(流体供給手段)
16 第2供給油路(流体供給手段)
22 第3供給油路(流体供給手段)

Claims (4)

  1. 回転軸に支持されたハブを中心として円盤状のウェブを介してリムが連結され、該リムの外周面に形成された歯部を相手側ギアに噛合させ、該相手側ギアとの間で周期的なトルク変動を伴って回転伝達するギアと、
    上記ギアの一側面に配設されて、該ギアの側面との間に流体室を形成するカバー体と、
    上記流体室内に粘性流体を供給する流体供給手段と、
    上記ギアに形成され、上記相手側ギアとの回転伝達に伴うトルク変動時に該相手側ギアと噛合する歯部の位置と上記流体室とを連通する排出路と
    を備えたことを特徴とする低騒音ギア構造。
  2. 回転軸に支持されたハブを中心として透孔を有するスポーク状のウェブを介してリムが連結され、該リムの外周面に形成された歯部を相手側ギアに噛合させ、該相手側ギアとの間で周期的なトルク変動を伴って回転伝達するギアと、
    上記ギアの両側面にそれぞれ配設されて、該ギアの両側との間に、上記ウェブの透孔を介して相互に連通する一対の流体室を形成する一対のカバー体と、
    上記各流体室内に粘性流体をそれぞれ供給する流体供給手段と
    上記ギアに形成され、上記相手側ギアとの回転伝達に伴うトルク変動時に該相手側ギアと噛合する歯部の位置と上記両流体室とを連通する排出路と
    を備えたことを特徴とする低騒音ギア構造。
  3. 上記流体供給手段は、上記ハブに形成された供給路を介して回転軸から供給される粘性流体を上記流体室内に供給することを特徴とする請求項1または2に記載の低騒音ギア構造。
  4. 上記流体供給手段は、上記カバー体に形成された供給口を介して、相対向する噴出ノズルから噴出された粘性流体を上記流体室内に供給することを特徴とする請求項1または2に記載の低騒音ギア構造。
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