JP5602697B2 - カム式トルクダンパ - Google Patents
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Description
しかし、特許文献1に示されるようなラバーによって荷重の一部を受ける構造においては、ラバーの特性上、使用状態によって弾性特性が変化するため、吸振効果を十分に発揮するには大きな圧縮代が必要となる場合がある。その場合、ダンパカムを付勢するスプリング35が伸び過ぎて付勢力を発揮できず、主たる付勢手段のスプリングによってトルクを十分に吸収できなくなるおそれもあった。
第二付勢手段が所定以上圧縮されると、初期圧縮部が一対のダンパカム部材を第一付勢手段に抗するように当接させるので、第一付勢装置の圧縮による高トルクの吸収、衝撃トルク緩和が行われる。
したがって、一対のダンパカム部材の回転位相の相対変化において、付勢力の異なる付勢手段が集約されて2段階にカム式トルクダンパが働くので、小位相差時の低トルクから大位相差時の高トルクまで広範囲に亘ってトルク変動による衝撃の、適切な吸収が可能となり、少ない部品数で駆動伝達系の質感を向上できる。
なお、本明細書の説明および特許請求の範囲における前後左右上下等の向きは、本実施形態に係るカム式トルクダンパを備えたパワーユニットを自動二輪車等の小型車両に搭載した状態での車両の向きに従うものとする。本実施形態において、小型車両は自動二輪車である。
図中矢印FRは車両前方を、LHは車両左方を、RHは車両右方を、UPは車両上方を、それぞれ示す。
また、図4、5、8、9における黒小矢印は本発明に係るオイルの流れを、図5、8、9における白抜き矢印は各部の動きを、模式的に示す。
自動二輪車1には、ヘッドパイプ3に連なり後下方へ傾斜する左右一対のメインフレーム4と、ヘッドパイプ3の下部から下方へ下がり、後方へ湾曲し、その先端部がメインフレーム4の後端部に接続される左右一対のサブフレーム5が設けられてある。
ヘッドパイプ3にはフロントフォーク8が回動可能に支持され、その上端にはステアリングハンドル9が装着され、下端には前輪10が軸支されている。
メインフレーム4の後部には、一対のリヤフォーク11がその前端を枢支され、上下方向に揺動可能になっている。リヤフォーク11の中央部とメインフレーム4の後端部との間に、図示しないリヤクッションが装着されている。リヤフォーク11の後端には後輪12が軸支されている。
変速機7は、静油圧式無段変速機70で構成され、その変速機軸71はクランク軸30と平行である。
図示しない後輪駆動プロペラシャフトが、変速機軸71と直交する方向に配設された連絡軸85(図2、4参照)に接続されて、リヤフォーク11に沿って車両後方へ伸び、後輪12の回転軸12aに達して、後輪12を駆動する。
内燃機関6は水冷式であり、シリンダやオイルを冷却する過程で昇温した冷却水は、サブフレーム5の前面に取りつけられたラジエータ19で冷却される。
また、シリンダヘッドカバー27の中には、カム軸44が設けられ、カム軸44の上方に排気ロッカーアーム軸45、吸気ロッカーアーム軸46が設けられ、これらのアーム軸に設けられた排気ロッカーアーム47、吸気ロッカーアーム48は、上記カム軸44のカム44a、44bに駆動されて、上記排気弁42、吸気弁43のステム頂部を押して各弁を開閉駆動する。
図3に示されるように、カム軸44は、その端部に設けられたカム軸従動スプロケット49とクランク軸30に設けられたカム軸駆動スプロケット50とに掛け回されたカム軸駆動チェーン51によって駆動される。
オイルポンプ集合体90は、オイルパン92内のオイルを下部のオイルストレーナ93を経由して吸入する。オイルポンプ軸91に嵌装されたオイルポンプ軸従動スプロケット94と、クランク軸30に設けられたオイルポンプ軸駆動スプロケット95とに掛け回されたオイルポンプ駆動チェーン96によって、オイルポンプ集合体90は内燃機関6によって駆動される。クランクケースの後部にオイルクーラ97と低圧用オイルフィルタ98が見える。高圧用オイルフィルタはクランクケースの右側に設けてあるので、図示されていない。
クランク軸出力歯車37と変速機入力側トルクダンパ60は、クランク軸30にスプライン結合されたカラー61上に構成されている。クランク軸出力歯車37はカラー61上に回動自在に嵌装され、その側面に円弧状凹面を有する凹カム37aが形成されている。
カラー61外周のスプラインにリフタ62が軸方向移動可能に嵌装され、リフタ62の端面に円弧状凸面を有する凸カム62aが形成され、凸カム62aは凹カム37aに噛み合っている。
カラー61の端部にはスプリングホルダ63がスプラインとコッタによって固定されている。スプリングホルダ63とリフタ62との間に皿ばね64が設けられ、凸カム62aを凹カム37aの方へ付勢している。
静油圧式無段変速機70において変速された回転力は、変速機軸71から取り出される。
カム式トルクダンパ100は、図4において二点鎖線で示されるように、ニュートラル・ドライブ切換用クラッチ75と連絡軸85との間を接続するように設けられる。
カム式トルクダンパ100の出力回転軸105は、入力回転軸101と同軸芯で左方に延出し、軸受ハウジング87に嵌入されたボールベアリング106を介して、左クランクケース20Lに支持されている。ボールベアリング106は本実施形態において複列アンギュラボールベアリングであが、2個の間隔を空けたボールベアリングでもよい。
遊転歯車77は、変速機軸71に固定された変速機出力歯車73に噛合っている。遊転歯車77に隣接して、係合歯78aを有する摺動部材78が、ニュートラル・ドライブ切換え軸76に軸方向摺動可能に遊嵌されている。
ニュートラル・ドライブ切換用クラッチ75は、摺動部材78の係合歯78aが遊転歯車77から外れると、ニュートラル状態となり、摺動部材78を摺動させ、係合歯78aを遊転歯車77の係合部に係合させると、動力伝達経路は接続され、ドライブ状態となる。
カム式トルクダンパ100の入力回転軸101のボールベアリング102、103の間に、ボールベアリング102の右側に隣接して、クラッチ出力歯車79に噛合うダンパ入力歯車104が嵌着されている。
出力回転軸105の左端には、ダンパ出力傘歯車107が一体的に形成されている。一方、連絡軸85の前端には連絡軸傘歯車86が一体に形成され、出力回転軸105のダンパ出力傘歯車107に噛み合っている。
また、カム式トルクダンパ100の入力回転軸101には、軸芯に沿ってオイル流路101aが穿孔されている。
右クランクケースカバー21Rの内面には、取り付けられた状態の入力回転軸101のオイル流路101a内に先端が油密的に挿入される給油突起22が形成されており、給油突起22内には、右クランクケースカバー21Rのオイル供給路21Raに連通し、入力回転軸101のオイル流路101a内に開口するオイル注入路22aが穿設されている。
カム式トルクダンパ100の出力回転軸105には、軸芯に沿ってオイル流路105aが穿孔されており、オイル流路105aはその左端においてオイル供給路84aに開口している。
したがって、カム式トルクダンパ100は、入力回転軸101のオイル流路101aおよび出力回転軸105のオイル流路105aからオイルが、簡易な構造で容易に供給される構造となっている。
出力回転軸105のケーシング108内の右先端側には、ケーシング108内に収納された第一ダンパカム部材(本発明の「ダンパカム部材」)110がスプライン嵌合によって相対回転不能かつ軸方向移動可能に取り付けられている。
第一ダンパカム部材110の右方において、ケーシング108の内周面108aには、第一付勢ばね111による第一ダンパカム部材110の右方への移動を限定する規制部材112が設けられている。
また、出力回転軸105には、そのオイル流路105aに連通し、第一ダンパカム部材110より第一付勢ばね111側のケーシング内第一付勢ばね側空間108dに開口するオイル供給孔105bが設けられている。
連絡軸支持部84のオイル供給路から出力回転軸105のオイル流路105aに供給されたオイルは、そのオイル供給孔105bからケーシング内第一付勢ばね側空間108dに充填され、簡易な構造で容易にオイル供給がなされる。
また、入力回転軸101のケーシング108内の左先端側には、ケーシング108の内周面108aを摺動するピストン状の第二ダンパカム部材(本発明の「ダンプカム部材」、「一方のダンプカム部材」)120がスプライン嵌合によって相対回転不能かつ軸方向移動可能に取り付けられている。
第二ダンパカム部材120には、ピストン状の外周部120aに、左方に向けて円周方向で2箇所の凹カム部120bが一体に形成されている(図6参照)。
各スプリングポケット130aには、第二付勢ばね(本発明の「第二付勢手段」)121が装填されて左方に伸び、第二ダンパカム部材120の右端面120cに当接して第二ダンパカム部材120を左方に付勢している。第二付勢ばね121は全体で第一付勢ばね111に対して弱い付勢力を備えている。
一方、第二ダンパカム部材120は、ケーシング108の右端底面108cに当接した受圧部材120との間の第二付勢ばね122によって左方に付勢されているので、その凹カム部121bが第一ダンパカム部材110の凸カム部111dに当接するまで左方に移動して、通常はケーシング108内でその状態で停止している。
一対の第一、第二ダンパカム部材110、120は、第二付勢ばね121により押し合う状態であり、通常は凸カム部110の頂部(最も突出した箇所)と凹カム部120bの底部(最も引き込んだ箇所)とが当接している(図6参照)。
入力回転軸101には、そのオイル流路101aに連通し、第二ダンパカム部材121と受圧部材120との間の間隙部125に開口するオイル供給孔101bが設けられている。
右クランクケースカバー21Rのオイル供給路21Raから入力回転軸101のオイル流路101aに供給されたオイルは、そのオイル供給孔101bから間隙部125に充填される。
第二付勢ばね121に対応する所定の設定トルクは、従来のカム式トルクダンパのダンパカム部材の付勢手段と同様の、比較的強い付勢力を備えている第一付勢ばね111に対応する設定トルクより小さいものとなる。
そして、カム式トルクダンパ100Aは、第二ダンパカム部材120と第一ダンパカム部材110との間に所定の設定トルク以下のトルクが作用するとき、図5に示される状態のように、両ダンパカム部材110、120に周方向のずれなしに第二ダンパカム部材120と第一ダンパカム部材110が一体に回転する。
回転方向での滑りθによって、第一ダンパカム部材110が、第二ダンパカム部材120により駆動されて、先ず、第一付勢ばね111より付勢力が相対的に小さい第二付勢ばね121の付勢力に抗して、第一ダンパカム部材110が第二ダンパカム部材120に対して軸方向に相対変位するので、第一ダンパカム部材110と第二ダンパカム部材120とが互いに相対回転することにより過大トルクを吸収する。
それに対して、従来のカム式トルクダンパのダンパカム部材の付勢手段は比較的強いから、図7中、G線部のように、比較的高いトルクTに応じてダンパカム間の回転方向での滑りθが生じることとなるから、過大トルクの吸収時の衝撃が大きいものとなる。
その状態以降は、第二付勢ばね121は無効となり、一対の第一、第二ダンパカム部材110、120は、第一付勢ばね111に抗するように当接させられる。
すなわち、第一ダンパカム部材110は、高い過大トルクTに応じた一対の第一、第二ダンパカム部材110、120の周方向のすべり(回転位相の相対変化)θにより、第一付勢ばね111の比較的大きい付勢力に抗して、第二ダンプカム部材120に対して図5中軸方向左方に相対変位して過大トルクを吸収する。
過大トルクが解消するときは、上記の逆の順の作動がなされる。
また、オイル流路120dから左側に流出したオイルは凹カム部120bと凸カム部110dとの潤滑に供される。入力回転軸101がケーシング108の右端底面108cを貫通する貫通孔のクリアランス108eからのオイルリークは、図2、図4から明らかなようにクランクケース20のオイルパン92への還流となるので許容される。
また、オイル流路120fから右側に流出したオイルは凸カム部110dと凹カム部120bとの潤滑に供される。出力回転軸105がケーシング108の左端底面108bを貫通する貫通孔のクリアランス108eからのオイルリークは、図2、図4から明らかなようにクランクケース20のオイルパン92への還流となるので許容される。
すなわち、本実施形態1のカム式トルクダンパ100Aは、回転動力が入力される入力回転軸101と、入力回転部材101と同軸芯に配設され、入力回転部材101に入力された回転動力が伝達されて出力する出力回転軸105と、入力回転軸101および出力回転軸105にそれぞれ相対回転不能に設けられ、互いに当接した状態での回転位相の相対変化により軸方向の相対変位を生じる一対の第一、第二ダンパカム部材110、120と、一対の第一、第二ダンパカム部材110、120を当接方向に付勢する第一付勢ばね111とを備え、一対の第一、第二ダンパカム部材110、120のうち少なくとも第二ダンパカム部材110は、軸方向に移動可能に設けられたカム式トルクダンパ100Aにおいて、第一付勢ばね111による一対の第一、第二ダンパカム部材110、120の当接方向の移動を限定する規制部材112と、規制部材112による当接方向の移動の不足を補い、第一付勢ばね111より小さい付勢力で一対の第一、第二ダンパカム部材110、120を当接させる第二付勢ばね121と、第二付勢ばね121が所定以上圧縮されたとき、一対の第一、第二ダンパカム部材110、120を第一付勢ばね111に抗するように当接させる初期圧縮部109とを備えている。
第二付勢ばね121が所定以上圧縮されると、初期圧縮部109が一対の第一、第二ダンパカム部材110、120を第一付勢ばね111に抗するように当接させるので、第一付勢ばね111の圧縮による高トルクの吸収、衝撃トルク緩和が行われる。
したがって、一対の第一、第二ダンパカム部材110、120の回転位相の相対変化において、付勢力の異なる第一、第二付勢ばね111、121が集約されて2段階にカム式トルクダンパ100Aが働くので、小位相差時の低トルクから大位相差時の高トルクまで広範囲に亘ってトルク変動による衝撃の、適切な吸収が可能となり、少ない部品数で駆動伝達系の質感を向上できる。
その他は、実施形態1のカム式トルクダンパ100Aと同じであり、本実施形態のカム式トルクダンパ100Bの説明は、上記実施形態1の説明において、「第二付勢ばね121」を「第二付勢ばね121B」と、「受圧部材130」を「受圧部材130B」と読み替えて該当する。
すなわち、本実施形態の第二付勢ばね121Bは、入力回転軸101の軸芯を中心とする皿ばねであるので、第二ダンパカム部材120を均等に受圧部材130Bで受けることができるうえ、部品の偏りがなく、アンバランスが抑制され、振動を低減できる、ということである。
ケーシング108内の出力回転軸105には、ケーシング108内に収納された受圧部材130Cがスプライン嵌合によって相対回転不能かつ軸方向移動可能に取り付けられている。
第一付勢ばね111Cはコイルばねであり、従来のカム式トルクダンパのダンパカム部材の付勢手段と同様の、比較的強い付勢力を備えている。
したがって、受圧部材130Cの小径部130Ccは、第一付勢ばね111Cの内側に位置している。
受圧部材130Cの右方において、ケーシング108の内周面108aには、第一付勢ばね111Cによる受圧部材130Cの右方への移動を限定する規制部材112Cが設けられている。
第一ダンパカム部材110Cは、段部110Caより右方がケーシング108の内周面108aを摺動するピストン部110Cbをなし、段部110Caより左方が小径部110Ccをなしている。
各スプリングポケット130Ceには、第二付勢ばね121Cが装填されて右方に伸び、第一ダンパカム部材110Cの左端面110Cgに当接して第一ダンパカム部材110Cを右方に付勢している。第二付勢ばね121Cは全体で第一付勢ばね111Cに対して弱い付勢力を備えている。
したがって、受圧部材130Cが第一付勢ばね111Cの内側に配置され、第二付勢ばね121Cの少なくとも一部が第一付勢ばね111Cの内側に配置されている。
また、出力回転軸105には、そのオイル流路105aに連通し、受圧部材130Cより第一付勢ばね111側のケーシング内第一付勢ばね側空間108dに開口するオイル供給孔105bが設けられている。
連絡軸支持部84のオイル供給路から出力回転軸105のオイル流路105aに供給されたオイルは、そのオイル供給孔105bからケーシング内第一付勢ばね側空間108dに充填され、簡易な構造で容易にオイル供給がなされる。
第二ダンパカム部材120Cには、ピストン状の外周部120Caに、左方に向けて円周方向で2箇所の凹カム部120Cbが一体に形成されている。
しかし、第一ダンパカム部材110Cは、規制部材112Cによって右方への移動を限定された受圧部材130Cとの間の第二付勢ばね122Cによって右方に付勢されているので、その凸カム部110Cdが第二ダンパカム部材120Cの凹カム部120Cbに当接するまで左方に移動して、通常はケーシング108内でその状態で停止している。
一対の第一、第二ダンパカム部材110C、120Cは、第二付勢ばね121Cにより押し合う状態であり、通常は凸カム部110Cdの頂部(最も突出した箇所)と凹カム部120Cbの底部(最も引き込んだ箇所)とが当接している。
また、その状態で、受圧部材130Cと第一ダンパカム部材110Cとの間には軸方向距離Dの間隙部125Cが生じている。
また、出力回転軸105のオイル流路105aは、右端で開口している。
連絡軸支持部84のオイル供給路から出力回転軸105のオイル流路105aに供給されたオイルは、そのオイル供給孔105bからケーシング内第一付勢ばね側空間108dに充填され、オイル供給孔105cから間隙部125Cに充填され、簡易な構造で容易にオイル供給がなされる。
もっとも、出力回転軸105からのオイル供給で十分であれば、入力回転軸101のオイル流路101aを省略することも可能である。
しかし、実施形態3のカム式トルクダンパ100Cにおける、第二付勢ばね121Cによる一対の第一、第二ダンパカム部材110C、120Cの作用効果、第一付勢ばね111Cによる一対の第一、第二ダンパカム部材110C、120Cの作用効果は、実施形態1のカム式トルクダンパ100Aと同様であり、以下その説明は省略する。
すなわち、本実施形態3のカム式トルクダンパ100Cは、回転動力が入力される入力回転軸101と、入力回転部材101と同軸芯に配設され、入力回転部材101に入力された回転動力が伝達されて出力する出力回転軸105と、入力回転軸101および出力回転軸105にそれぞれ相対回転不能に設けられ、互いに当接した状態での回転位相の相対変化により軸方向の相対変位を生じる一対の第一、第二ダンパカム部材110C、120Cと、一対の第一、第二ダンパカム部材110C、120Cを当接方向に付勢する第一付勢ばね111Cとを備え、一対の第一、第二ダンパカム部材110C、120Cのうち少なくとも第一ダンパカム部材110Cは、軸方向に移動可能に設けられたカム式トルクダンパ100Cにおいて、第一付勢ばね111Cによる一対の第一、第二ダンパカム部材110C、120Cの当接方向の移動を限定する規制部材112Cと、規制部材112Cによる当接方向の移動の不足を補い、第一付勢ばね111Cより小さい付勢力で一対の第一、第二ダンパカム部材110C、120Cを当接させる第二付勢ばね121Cと、第二付勢ばね121Cが所定以上圧縮されたとき、一対の第一、第二ダンパカム部材110C、120Cを第一付勢ばね111Cに抗するように当接させる初期圧縮部109Cとを備えている。
第二付勢ばね121Cが所定以上圧縮されると、初期圧縮部109Cが一対の第一、第二ダンパカム部材110C、120Cを第一付勢ばね111Cに抗するように当接させるので、第一付勢ばね111Cの圧縮による高トルクの吸収、衝撃トルク緩和が行われる。
したがって、一対の第一、第二ダンパカム部材110C、120Cの回転位相の相対変化において、付勢力の異なる第一、第二付勢ばね111C、121Cが集約されて2段階にカム式トルクダンパ100Cが働くので、小位相差時の低トルクから大位相差時の高トルクまで広範囲に亘ってトルク変動による衝撃の、適切な吸収が可能となり、少ない部品数で駆動伝達系の質感を向上できる。
例えば、本発明のカム式トルクダンパは、請求項1の構成を備える多様な形態、用途のカム式トルクダンパであってよく、内燃機関内の出力軸直前に組み込まれることに限定されず、たとえば、内燃機関外の駆動プロペラシャフトに組み込まれてもよい。
また、実施形態における入力回転軸側と出力回転軸側の構成が、反対になった構成であってもよい。
また、第一ダンパカム部材に凹カム部を備え、第二ダンパカム部材に凸カム部を備えるようにしてもよい。
なお、本発明のカム式トルクダンパが内燃機関に備えられる場合の内燃機関は、上記実施形態の水冷式4ストロークサイクルV型2気筒内燃機関に限定されず、車両搭載の場合の車両は自動二輪車に限定されず、また、車両搭載用内燃機関に限定されない。
Claims (10)
- 回転動力が入力される入力回転部材(101)と、
同入力回転部材(101)と同軸芯に配設され、同入力回転部材(101)に入力された回転動力が伝達されて出力する出力回転部材(105)と、
前記入力回転部材(101)および出力回転部材(105)にそれぞれ相対回転不能に設けられ、互いに当接した状態での回転位相の相対変化により軸方向の相対変位を生じる一対のダンパカム部材(110,110C:120,120C)と、
前記一対のダンパカム部材(110,110C:120,120C)を当接方向に付勢する第一付勢手段(111,111C)とを備え、
前記一対のダンパカム部材(110,110C:120,120C)の少なくとも一方(110,110C)は、軸方向に移動可能に設けられたカム式トルクダンパ(100,100B,100C)において、
前記第一付勢手段(111,111C)による前記一対のダンパカム部材(110,110C:120,120C)の当接方向の移動を限定する規制部材(112,112C)と、
同規制部材(112,112C)による前記当接方向の移動の不足を補い、前記第一付勢手段(111,111C)より小さい付勢力で前記一対のダンパカム部材(110,110C:120,120C)を当接させる第二付勢手段(121,121B,121C)と、
同第二付勢手段(121,121B,121C)が所定以上圧縮されたとき、前記一対のダンパカム部材(110,110C:120,120C)を前記第一付勢手段(111,111C)に抗するように当接させる初期圧縮部(109,109C)とを備えたことを特徴とするカム式トルクダンパ。 - 前記初期圧縮部(109)は、前記一対のダンパカム部材(110:120)のうちの一方のダンパカム部材(120)と、同一方のダンパカム部材(120)と前記第二付勢手段(121,121B)を介して間隙部(125)を有して接続され、前記入力回転部材(101)または出力回転部材(105)に相対回転不能かつ軸方向移動不能に固定された受圧部材(130,130B)とで構成され、
前記一対のダンパカム部材(110:120)の回転位相の相対変化による軸方向の相対変位により、所定以上の圧力が前記第二付勢手段(121,121B)に作用した場合は、同第二付勢手段(121,121B)が圧縮され前記間隙部(125)が閉じて、前記一方のダンパカム部材(120)と前記受圧部材(130,130B)とが直接当接するように構成されたことを特徴とする請求項1記載のカム式トルクダンパ。 - 前記第二付勢手段(121)は、コイルばねであり、同受圧部材(121)に、前記入力回転部材(101)または出力回転部材(105)の軸芯を中心とする同心同径円上に複数配置されたことを特徴とする請求項2記載のカム式トルクダンパ。
- 前記第二付勢手段(121B)は、前記(101)または出力回転部材(105)の軸芯を中心とする皿ばねであることを特徴とする請求項2記載のカム式トルクダンパ。
- 前記初期圧縮部(109C)は、前記一対のダンパカム部材(110C:120C)のうちの一方のダンパカム部材(110C)と、同一方のダンパカム部材(110C)と前記第二付勢手段(121C)を介して間隙部(125C)を有して接続され、前記入力回転部材(101)または出力回転部材(105)に相対回転不能かつ軸方向移動可能、且つ前記規制部材(112C)により前記第一付勢手段(111C)による前記一対のダンパカム部材(110C:120C)の当接方向の移動が限定された受圧部材(130C)とで構成され、
前記一対のダンパカム部材(110C:120C)の回転位相の相対変化による軸方向の相対変位により、所定以上の圧力が前記第二付勢手段(121C)に作用した場合は、同第二圧縮手段(121C)が圧縮され前記間隙部(125C)が閉じて、前記一方のダンパカム部材(110C)と前記受圧部材(130C)とが直接当接するように構成されたことを特徴とする請求項1記載のカム式トルクダンパ。 - 前記第二付勢手段(121C)は、コイルばねであり、前記受圧部材(130C)に、前記入力回転部材(101)または出力回転部材(105)の軸芯を中心とする同心同径円上に複数配置されたことを特徴とする請求項5記載のカム式トルクダンパ。
- 前記第一付勢手段(111C)がコイルばねであり、前記受圧部材(130C)が同第一付勢手段(111C)の内側に配置され、前記第二付勢手段(121C)の少なくとも一部が同第一付勢手段(111C)の内側に位置されたことを特徴とする請求項6記載のカム式トルクダンパ。
- 前記一方のダンパカム部材(120,110C)と前記受圧部材(130,130B,130C)が、ケーシング(108)に収納されて、同一方のダンパカム部材(120,110C)と受圧部材(130,130B,130C)の間にオイルが充填され、
前記一方のダンパカム部材(120,110C)に、軸方向移動においてオイルが軸方向前後に通過するオイル流路(120d,110Cf)が設けられたことを特徴とする請求項2ないし請求項7のいずれか記載のカム式トルクダンパ。 - 前記第一付勢手段(111,111C)が、前記ケーシング(108)に収納されて、同第一付勢手段(111,111C)が付勢するダンパカム部材(110)または受圧部材(130C)より同第一付勢手段(111,111C)側の前記ケーシング内の空間(108d)にオイルが充填され、
前記第一付勢手段(111,111C)が付勢するダンパカム部材(110)または受圧部材(130C)に、軸方向移動においてオイルが軸方向前後に通過するオイル流路(110f,130Cg)が設けられたことを特徴とする請求項8記載のカム式トルクダンパ。 - 前記オイルは、前記入力回転部材(101)または出力回転部材(105)の内部を通して供給されるように構成されたことを特徴とする請求項8または請求項9記載のカム式トルクダンパ。
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