JP3838302B2 - 車両用トルク配分クラッチの制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、原動機から複数の車輪へそれぞれ伝達されるトルクの割合を制御するトルク配分クラッチを備えた車両用トルク配分クラッチの制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
原動機から複数の車輪へ向かう動力伝達経路に直列的に設けられたり、或いはその動力伝達経路の差動歯車装置に対して並列的に設けられたトルク配分クラッチを備え、各車輪へ伝達されるトルクの割合が調節される形式の車両が知られている。たとえば、エンジンと前輪差動歯車装置或いは後輪差動歯車装置との間に直列に設けられたトルク配分用クラッチを有する4輪駆動車、中央差動歯車装置(センタデフ)に並列に設けられた差動制限クラッチを有する4輪駆動車などがそれである。上記のトルク配分クラッチは、通常、発進時などにおいて車両状態に応じたトラクションを得ることや、車両の重量配分に応じた車輪の駆動力を得ることなどを目的とするトルク配分制御に用いられる。たとえば、特開平2−31933号公報に記載された車両用駆動力配分制御装置はその一例である。
【0003】
上記従来の車両用駆動力配分制御装置では、その油圧式クラッチの目標伝達トルクと実際の伝達トルクとの差を無くすために、前後輪或いは左右輪の回転速度差に基づいて目標伝達トルク補正値を求める目標伝達トルク補正部を設ける技術が開示されている。これによれば、目標伝達トルクが得られるようにクラッチ締結力を付与した場合に、目標伝達トルクと実伝達トルクとの間に生じる伝達トルク差を無くすべく前記回転速度差により目標伝達トルク補正値が求められ、その目標伝達トルク補正値によって補正された指令値すなわち制御信号が出力されるようになっている。
【0004】
すなわち、かかる従来の車両用駆動力配分制御装置において用いられる油圧式クラッチは、回転速度差に拘らずそれへの指令値すなわちそれに供給される作動油圧に対応した伝達トルクとなる一般的なクラッチ特性を備えたものではクラッチジャダ現象が発生することから、それに供給される作動油圧が一定の状態においても回転速度差の増加に伴って伝達トルクが緩やかに増加するクラッチ特性を備えたものであるため、予め記憶された関係から、回転速度差の増加に伴って伝達トルクが増加するという関係を補正するための補正値をその回転速度差に基づいて求め、これにより油圧式クラッチへの指令値とその油圧クラッチの実際の伝達トルクとが一致させられるようになっているのである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、トルク配分クラッチとしては、上記のように油圧を介して作動させられる油圧クラッチや、電磁ソレノイドの磁力を利用して作動させられる電磁クラッチが用いられるが、摩擦特性の個体差や摩擦特性の経時変化(劣化)などの機械的要因、或いは駆動電流検知装置の精度低下などの電気的要因に起因して、そのトルク配分クラッチに対する指令値と実際の伝達トルクとの関係がずれる場合がある。しかしながら、上記従来の駆動力配分制御装置では、駆動力配分制御において指令値に対応した伝達トルクが得られないため、発進時の空転に起因するトラクション性能の低下や、旋回走行時におけるアンダーステアおよびオーバステア特性が影響を受けるという不都合があった。
【0006】
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、機械的或いは電気的要因による指令値と実際の伝達トルクとの関係のずれに拘らず、トルク配分クラッチに対する指令値に対応する大きさの伝達トルクが得られる車両用トルク配分クラッチの制御装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための第1の手段】
前記目的を達成するための第1発明の要旨とするところは、原動機から複数の車輪へそれぞれ伝達されるトルク(t r ,t f )の割合を制御するトルク配分クラッチを備え、そのトルク配分クラッチの伝達トルクを所定の値とするための指令値(t ref )を出力する車両用トルク配分クラッチの制御装置であって、(a) 前記トルク配分クラッチの入力トルク (t in )を算出する入力トルク算出手段と、(b) 前記トルク配分クラッチの入力側回転部材と出力側回転部材との回転速度差 ( ΔN ) を算出する回転速度差算出手段と、(c) 前記指令値と前記トルク配分クラッチの実際の伝達トルクとの間のずれに対応する補正値( Δ t ref )を決定し、その補正値を用いて前記ずれが解消されるように前記指令値を補正する指令値補正手段とを備え、 (d) 前記回転速度差算出手段は、直進走行状態であり、且つ前記指令値、回転速度差、車速の変動幅が予め設定された値よりも小さい車両の定常走行状態において、前記回転速度差 ( ΔN ) を算出するものであり、
前記指令値補正手段は、前記定常走行状態において、以下の式
Δ t ref =1/2{〔(Rα/V)+2K 2 〕ΔN+(1−2K 1 ) t in }
但し、Δt ref :補正値、R:車輪の動荷重半径、
α:タイヤのスリップ率、V:車速、ΔN:回転速度差、
K 1 :指令値t in に重量配分を反映させるためのゲイン、
K 2 :指令値t in に差動回転数を反映させるためのゲイン、
t in :トルク配分クラッチの入力トルク
によって補正値 ( Δ t ref ) を決定するものであることにある。
【0012】
【第1発明の効果】
このようにすれば、指令値補正手段において、前記指令値と前記トルク配分クラッチの実際の伝達トルクとの間のずれに対応する補正値を決定するために前記トルク配分クラッチの入力側および出力側の回転駆動系の運動方程式から求められた予め記憶された関係から、前記トルク配分クラッチの回転速度差と入力トルクとに基づいて補正値が決定され、その補正値を用いて前記ずれが解消されるように、そのトルク配分クラッチに対する指令値が補正されるので、機械的或いは電気的要因による指令値と実際の伝達トルクとの関係のずれに拘らず、トルク配分クラッチに対する指令値に対応する大きさの伝達トルクが得られる。車両の動力伝達経路における駆動系回転体の運動方程式から求められる指令値(指令トルク)と実際の伝達トルクとの差である不足トルクは、上記トルク配分クラッチの回転速度差の函数であるからである。また、回転速度差算出手段は、直進走行状態であり、且つ前記指令値、回転速度差、車速の変動幅が予め設定された値よりも小さい車両の定常走行状態において、前記回転速度差を算出するものであり、前記指令値補正手段は、定常走行状態において、上式から前記指令値を補正するものであるので、プロペラシャフトなどの回転部材の回転変動等に起因するノイズの影響が少なくなって、信頼性のあるトルク配分クラッチの入力トルクや、入力側回転部材と出力側回転部材との回転速度差が得られる。
【0016】
【課題を解決するための第2の手段】
また、前記目的を達成するための第2発明の要旨とするところは、原動機から複数の車輪へそれぞれ伝達されるトルク(t r ,t f )の割合を制御するトルク配分クラッチを備え、そのトルク配分クラッチの伝達トルクを所定の値とするための指令値(t ref )を出力する車両用トルク配分クラッチの制御装置であって、(a) 前記トルク配分クラッチの入力トルク (t in ) を算出する入力トルク算出手段と、 (b) 前記トルク配分クラッチの入力側回転部材と出力側回転部材との回転速度差 ( ΔN ) を算出する回転速度差算出手段と、 (c) 車両が定常走行状態である第1区間において零の指令値 (t ref =0 ) を出力させる第1指令値出力手段と、 (d) 車両が定常状態であり且つ前記第1区間とは異なる第2区間において零とは異なる指令値 (t ref ≠0 ) を出力させる第2指令値出力手段と、 (d) 下記(1)式で示す指令値差に関する変数( atr )と、下記(2)式で示すスリップ率差に関する変数( dslip )とを軸とする二次元座標上で、該指令値差に関する変数( atr )と該スリップ率差に関する変数( dslip )との関係が、下記 (3) 式で示す直線を中心とした所定幅の正常領域内に入るように、指令値 (t ref ) を補正する指令値補正手段とを、備えることにある。
atr =t ravB −t ravA − 1/2 ・(t inavB −t inavA )・・・ (1) 式
但し、 atr :指令値差に関する変数、
t ravA :第1区間における指令値の平均値、
t ravB :第2区間における指令値の平均値、
t inavA :第1区間におけるトルク配分クラッチの入力トルクの平均値
t inavB :第2区間におけるトルク配分クラッチの入力トルクの平均値
dslip =(ΔN avB /V B −ΔN avA /V A ) ・・・ (2) 式
但し、 dslip :スリップ率差に関する変数、
ΔN avA :第1区間における回転速度差の平均値、
ΔN avB :第2区間における回転速度差の平均値、
V A :第1区間における車速の平均値、
V B :第2区間における車速の平均値、
atr =KA・dslip ・・・(3) 式
但し、K A =K・W・R・R、
K:車輪のスリップ率sと車輪の前後力係数μとの比例定数、
W:車輪の接地荷重、R:車輪の動荷重半径、
【0017】
【発明の他の態様】
ここで、好適には、前記車両は4輪駆動車両であり、前記トルク配分クラッチは、車両の前後輪のトルク配分を調節するために、エンジンと前輪差動歯車装置或いは後輪差動歯車装置との間に直列に設けられたトルク配分用クラッチ、或いは、中央差動歯車装置(センタデフ)に並列に設けられた差動制限クラッチを有するものである。
【0018】
また、好適には、少なくとも前記車両の直進走行を要件とする車両の定常走行を判定する定常走行判定手段を含み、前記入力トルク算出手段は、その定常走行判定手段によって車両の定常走行が判定されているときに前記トルク配分クラッチの入力トルクを算出するものである。このようにすれば、前記指令値補正手段は、車両の定常走行が判定されているときの前記トルク配分クラッチの入力トルクに基づいて前記指令値を補正する利点がある。
【0019】
また、好適には、少なくとも前記車両の直進走行を要件とする車両の定常走行を判定する定常走行判定手段を含み、前記回転速度差算出手段は、その定常走行判定手段によって車両の定常走行が判定されているときに前記トルク配分クラッチの入力側回転部材と出力側回転部材との回転速度差を算出するものである。このようにすれば、前記指令値補正手段は、車両の定常走行が判定されているときの前記トルク配分クラッチの入力側回転部材と出力側回転部材との回転速度差に基づいて前記指令値を補正する利点がある。
【0020】
また、好適には、少なくとも前記車両の直進走行を要件とする車両の定常走行を判定する定常走行判定手段を含み、前記入力トルク算出手段は、その定常走行判定手段によって車両の定常走行が判定されているときに前記トルク配分クラッチの入力トルクを算出するものであり、前記回転速度差算出手段は、その定常走行判定手段によって車両の定常走行が判定されているときに前記トルク配分クラッチの入力側回転部材と出力側回転部材との回転速度差を算出するものである。このようにすれば、前記指令値補正手段は、車両の定常走行が判定されているときの前記トルク配分クラッチの入力トルクと入力側回転部材および出力側回転部材の回転速度差とに基づいて前記指令値を補正する利点がある。
【0021】
また、好適には、前記入力トルク算出手段は、その定常走行判定手段によって車両の定常走行が判定されているときに前記トルク配分クラッチの入力トルクを、予め設定された所定区間内における平均値として算出するものである。また、前記回転速度差算出手段は、その定常走行判定手段によって車両の定常走行が判定されているときに前記トルク配分クラッチの入力側回転部材と出力側回転部材との回転速度差を、予め設定された所定区間内における平均値として算出するものである。このようにすれば、プロペラシャフトなどの回転部材の回転変動や車体振動等に起因するノイズの影響が少なくなって、信頼性のあるトルク配分クラッチの入力トルクや、入力側回転部材と出力側回転部材との回転速度差が得られる利点がある。
【0022】
また、好適には、前記定常走行判定手段は、前記車両が直進走行であり、且つ前記トルク配分クラッチの入力トルク(エンジンの出力トルク)、そのトルク配分クラッチに対する指令値、そのトルク配分クラッチの入力側回転部材と出力側回転部材との回転速度差、および車速が予め設定された値よりも変動幅が小さいときに、前記車両の定常走行を判定するものである。このようにすれば、プロペラシャフトなどの回転部材の回転変動等に起因するノイズの影響が少なくなって、信頼性のあるトルク配分クラッチの入力トルクや、入力側回転部材と出力側回転部材との回転速度差が得られる利点がある。
【0023】
また、好適には、前記指令値補正手段は、予め記憶された補正値算出式、或いは予め記憶されたマップから、トルク配分クラッチの入力トルクおよび入力側回転部材と出力側回転部材との回転速度差の少なくとも一方に基づいて、前記補正値を算出し、その補正値に基づいて前記指令値を補正するものである。
【0024】
また、好適には、前記回転速度差算出手段により算出された前記トルク配分クラッチの入力側回転部材と出力側回転部材との回転速度差を、車両の前輪および後輪の車輪径差に基づいて補正する回転速度差補正手段を含むものである。このようにすれば、前記回転速度差算出手段により算出された前記トルク配分クラッチの入力側回転部材と出力側回転部材との回転速度差から、車輪の径差に基づく誤差が除去されるので、回転速度差の信頼性が一層高められる利点がある。
【0025】
また、好適には、上記回転速度差補正手段は、車両の直進走行時において前記トルク配分クラッチを解放させたときのそのトルク配分クラッチの入力側回転部材と出力側回転部材との回転速度差から車輪径補正係数を算出し、車速に基づいて算出したトルク配分クラッチの軸まわりの回転速度とその車輪径補正係数とに基づいて車輪径差に由来して発生する径差由来回転速度差を算出し、その径差由来回転速度差を前記回転速度差算出手段により算出された回転速度差から差し引くことにより補正するものである。
【0026】
また、好適には、前記第1指令値出力手段は、前記トルク配分クラッチを解放させる第1指令値を第1区間において出力させるものであり、前記2指令値出力手段は、上記トルク配分クラッチをその入力側回転体および出力側回転体の相対回転を許容する半係合状態とする第2指令値を、前記第2区間において出力させるものである。このようにすれば、指令値補正手段における補正が簡単となって信頼性が高められる。
【0027】
また、好適には、前記第1区間および第2区間における前記トルク配分クラッチの入出力回転速度差および車速に基づいて前後輪のスリップ率差をそれぞれ算出するスリップ率差算出手段と、上記第1区間および第2区間における前後輪のスリップ率差からそれ等前後輪のスリップ率差の変化量に対応する変数dslip を算出するスリップ率差対応変数算出手段と、前記第1区間および第2区間における第1指令値および第2指令値とトルク配分クラッチの入力トルクとに基づいて、指令値差に対応して変化する変数atr を算出する指令値差対応変数算出手段を含み、前記指令値補正手段は、上記変数dslip およびatr に基づいて前記指令値を補正するものである。このようにすれば、トルク配分クラッチの伝達トルク特性のずれが好適に修正される。
【0028】
また、好適には、前記トルク配分クラッチ異常判定手段は、前記トルク配分クラッチの入力トルクが、そのトルク配分クラッチの入力側回転部材と出力側回転部材との回転速度差に基づいて算出された異常判断基準値を越えたことに基づいて前記トルク配分クラッチの異常を判定するものである。
【0029】
また、好適には、前記トルク配分クラッチ異常判定手段は、指令値差を表す軸とスリップ率差を表す軸とからなる二次元座標において、前記第1区間および第2区間における指令値差とスリップ率差とを示す位置が、予め設定された判断基準領域からはずれたことに基づいて、前記トルク配分クラッチの異常を判定するものである。
【0030】
【発明の好適な実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0031】
図1は、本発明の一実施例の制御装置を備えた車両の動力伝達装置を示している。図において、原動機として機能するエンジン10には、トルクコンバータ付自動変速機12、前部差動歯車装置14、およびトランスファ16を収容するトランスアクスルハウジング18が締結されている。これにより、エンジン10の出力トルクは、トルクコンバータ付自動変速機12、前部差動歯車装置14、左右1対の車軸20、22を介して左右1対の前輪24、26へ伝達される一方、上記トルクコンバータ付自動変速機12、トランスファ16、プロペラシャフト28、トルク配分クラッチとして機能する電磁クラッチ30、後部差動歯車装置32、左右1対の車軸34、36を介して左右1対の後輪38、40へ伝達されるようになっている。
【0032】
上記電磁クラッチ30は、エンジン10から前輪24、26と後輪38、40とへそれぞれ伝達されるトルクの割合を調節するためのトルク配分クラッチとして機能するものであって、プロペラシャフト28に接続されてそれと共に回転する入力側摩擦板42と、後部差動歯車装置32のドライブピニオン44に接続されてそれと共に回転する出力側摩擦板46と、それら入力側摩擦板42と出力側摩擦板46とを電磁力に従って押圧することにより相互に摩擦係合させる電磁ソレノイド48とを基本的に備え、後述の電子制御装置110からの指令値tref に対応した大きさの伝達トルクを発生するように構成されている。上記電磁クラッチ30が解放された場合には、エンジン10から出力されるトルクの100%が前輪24、26へ伝達されるが、電磁クラッチ30が完全係合された場合には、エンジン10から出力されるトルクの50%が前輪24、26へ伝達され、残りの50%が後輪38、40へ伝達されるので、本実施例では、上記電磁クラッチ30によるトルク配分調節範囲は、前輪と後輪との重量配分比が0.5:0.5である場合には、1:0から0.5:0.5の間までのトルク配分比範囲となっている。なお、一般には、電磁クラッチ30が完全係合された場合には、前後輪の重量配分相当に前後輪のトルクが分配される。本実施例では、電磁クラッチ30により前輪駆動状態から直結4WDまで前後輪のトルクを調節できる。
【0033】
図2に詳しく示すように、電磁クラッチ30は、プロペラシャフト28に連結されるユニバーサルジョイント50およびクラッチドラム52を両軸端に有し、クラッチハウジング54によりベアリング56を介して回転可能に支持された入力軸58と、その入力軸58に対して同心となる状態でクラッチハウジング54によりベアリング60を介して回転可能に支持された出力軸62と、入力軸58の軸端面に相対回転可能に嵌合された状態でその入力軸58と連結されたクラッチロータ64と、回転不能となるように非回転部材であるクラッチハウジング54の突起65に係合させられた状態でベアリング66を介して入力軸58に支持された電磁ソレノイド48と、電磁ソレノイド48の磁力により吸引される環状磁性部材68を有してクラッチドラム52の内周面とクラッチロータ64の外周面との間に設けられ、その電磁ソレノイド48の磁力によって比較的小さな摩擦トルクが発生させられるコントロール(パイロット)クラッチ70と、そのコントロールクラッチ70からの摩擦トルクが伝達されるカムリング72とそのカムリング72に接触するボールカム74とを有し、上記コントロールクラッチ70を介して伝達された比較的小さな回転力をスラスト方向(軸心方向)の力に変換し且つ倍力して環状押圧部材76に伝達する押圧装置78と、軸方向において互いに重ねられた状態でクラッチドラム52の内周面およびクラッチロータ64の外周面に対して軸方向の移動可能且つ軸まわりの相対回転不能に設けられて、上記環状押圧部材76からのスラスト方向の力により押圧される前記入力側摩擦板42および出力側摩擦板46とを備え、たとえば図3に示す特性に従って、電磁ソレノイド48に供給される駆動電流に対応した大きさの伝達トルクを発生させる。
【0034】
図1に戻って、車両には、4輪駆動モードを選択するときに操作される4輪駆動選択スイッチ80、左前輪24の回転速度を検出する車輪速度センサ82、右前輪26の回転速度を検出する車輪速度センサ84、左後輪38の回転速度を検出する車輪速度センサ86、右後輪40の回転速度を検出する車輪速度センサ88、車両の前後Gすなわち走行方向の加速度GX を検出する前後Gセンサ90、車両の左右Gすなわち横方向の加速度GY を検出する左右Gセンサ92、ステアリングホイール93により操作される車両の舵角を検出する舵角センサ94、アクセルペダルにより操作されるスロットル開度を検出するスロットルセンサ96、エンジン10の回転速度を検出するエンジン回転速度センサ98、自動変速機12の実際のギヤ段すなわちシフト位置を検出するシフト位置センサ100、ブレーキペダル102が操作されたことを検出するブレーキセンサ104、パーキングブレーキレバー106が操作されたことを検出するPBブレーキセンサ108がそれぞれ設けられており、それらのスイッチ或いはセンサからは、4輪駆動モードを選択されたことを示す信号S4WD、左前輪24の回転速度NFLを示す信号SNFL、右前輪26の回転速度NFRを示す信号SNFR、左後輪38の回転速度NRLを示す信号SNRL、右後輪40の回転速度NRRを示す信号SNRR、前後加速度GX を示す信号SGX 、左右加速度GY を示す信号SGY 、車両の舵角δを示す信号Sδ、スロットル開度θthを示す信号Sθ、エンジン10の回転速度NE を示す信号SNE 、シフト位置SPを示す信号SSP、ブレーキペダル102の操作を示す信号SBK、パーキングブレーキレバー106の操作を示す信号SPBが、トルク配分制御用の電子制御装置110へ供給される。
【0035】
上記電子制御装置110は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェースなどを含む所謂マイクロコンピュータであって、CPUはRAMの記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムを実行することにより上記の入力信号を処理し、電磁クラッチ30へ制御信号を出力するとともに、電磁クラッチ30の作動中を示す作動表示灯112および電磁クラッチ30の異常を示す異常表示灯114を表示させる。図4は、上記電子制御装置110の構成例を詳細に示すものである。エンジン制御および変速制御用電子制御装置115からは、スロットル開度θth、自動変速機12のギヤ段、エンジン系のフェイルを表す信号とエンジン10の回転速度に対応した周波数のエンジンパルス信号が電子制御装置110に供給される。電子制御装置110は、ABS用制御装置116および4WD用制御装置117と、指令値tref を表す指令信号に応じて電磁クラッチ30に制御電流を出力する駆動回路118とを備えている。
【0036】
図5は、上記電子制御装置110の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図5において、トルク配分制御手段120は、たとえば発進時制御、旋回走行時制御、通常走行時制御、制動時制御など、車両の前輪および後輪のトルク配分を制御する複数種類の制御モードの中のいずれか1つを、車両状態に基づいて択一的に選択し、選択した制御モードにおいて予め設定された制御式に従って、電磁クラッチ30の伝達トルク或いはその電磁クラッチ30に供給すべき駆動電流に対応する大きさの指令値tref を表す制御信号SCを出力すると共に、作動表示灯112を点灯させる。たとえば、4輪駆動選択スイッチ80によって4輪駆動モードが選択されているとき、ブレーキセンサ104により主ブレーキの操作が検出されると制動時制御が選択される。また、たとえば図6に示す関係から車速Vと車両舵角δとで示される走行状態に基づいて発進時制御(図6の▲1▼)、旋回走行時制御(図6の▲2▼)、通常走行時制御(図6の▲3▼)のいずれかが選択されるのである。
【0037】
上記発進時制御では、車両状態に応じた最大のトラクションを得るために、前輪24、26と後輪38、40とに対する車両の重量配分に相当するトルク配分となるように電磁クラッチ30が制御されたり、舵角δに応じて後輪38、40への伝達トルクを制限するように電磁クラッチ30が制御される。また、上記旋回走行時制御では、特に路面摩擦係数が小さい圧雪路或いは凍結路における旋回走行中の操縦安定性を高めるために、たとえばアンダーステアとオーバーステアとの中間の中立ステアとなる目標ヨーレート(重心を通る鉛直線まわりの旋回角速度)に実際のヨーレートが追従するように、電磁クラッチ30が制御される。また、上記通常走行時制御では、基本的には重量配分に対応したトルク配分となるように電磁クラッチ30の入力側および出力側の回転速度差が発生すると伝達トルクが大きくなるようにされるが、直進走行などのような4輪駆動が不要なときには燃費を高めるために可及的に締結力を小さくするように、電磁クラッチ30が制御される。また、上記制動時制御では、ABS制御やVSC制御との制御干渉を回避するために、ブレーキペダル102が操作されると、直接的に電磁クラッチ30の締結力が小さくされるように、或いはABS制御が開始されるまでは電磁クラッチ30が締結されてエンジンブレーキ力を4輪に分配させるが、ABS制御が開始されると締結力が小さくされ、またVSC制御が開始されると解放されるように、電磁クラッチ30が制御される。
【0038】
入力トルク算出手段122は、エンジン10のプロペラシャフト28まわりの出力トルク(車両の駆動トルク)すなわち電磁クラッチ30の入力トルクtin(N・m)を、たとえば図7に示す予め記憶された関係から実際のエンジン回転速度NE (rpm)およびスロットル開度θth(%)或いは吸入空気量Qに基づいて逐次算出する。この入力トルク算出手段122は、好ましくは後述の定常走行判定手段126により車両の定常走行が判定されている状態において、予め設定された時間幅を有して時間経過とともに移動させられる移動区間内に得られた複数個の入力トルクtinの平均値すなわち移動平均値として入力トルクtinavを算出する。ここで、上記入力トルクtinは、前輪24、26側へ配分されるトルクtf と電磁クラッチ30から後輪38、40側へ配分されるトルクtr との和(tin=tf +tr )として定義される。上記後輪38、40側へ配分されるトルクtr は電磁クラッチ30の伝達トルクであり、定常状態では電磁クラッチ30に対する指令値tref に対応している。
【0039】
回転速度差算出手段124は、電磁クラッチ30の入力軸58の回転速度Nf を前輪回転速度NFLおよびNFRの平均値と前部差動歯車装置14のギヤ比とに基づいて算出するとともに、電磁クラッチ30の出力軸62の回転速度Nr を後輪回転数度NRLおよびNRRの平均値と後部差動歯車装置32のギヤ比とに基づいて算出し、入力軸58の回転速度Nf から出力軸62の回転速度Nr を差し引くことにより、入力軸58と出力軸62との回転速度差ΔN(rpm)すなわち電磁クラッチ30の差動(スリップ)回転数ΔN(=Nf −Nr )を算出する。この回転速度差算出手段124も、好ましくは後述の定常走行判定手段126により車両の定常走行が判定されている状態において、予め設定された時間幅を有して時間経過とともに移動させられる移動区間内に得られた複数個の差動回転数ΔNの平均値すなわち移動平均値として差動回転数ΔNavを算出する。
【0040】
定常走行判定手段126は、車両の直進走行であるか否かを車両の舵角δに基づいて判定する直進走行判定手段と、電磁クラッチ30の入力トルクtin、その電磁クラッチ30に対する制御信号SCにより表される指令値、その電磁クラッチ30の回転速度差ΔN、および車速Vの変動幅が予め設定された判断基準値すなわち変動幅よりも小さいか否かを判定する安定走行判定手段とを備え、直進走行であると判定され、且つ上記入力トルクtin、電磁クラッチ30に対する指令値、電磁クラッチ30の回転速度差ΔN、および車速Vの変動幅が予め設定された変動幅より小さい安定走行状態が判定されたことに基づいて、前記車両の定常走行状態を判定する。
【0041】
指令値補正手段128は、上記定常走行判定手段126により車両の直進走行および安定走行が判定されている状態において、たとえば数式1に示す予め記憶された関係から、上記定常走行状態において求められた実際の電磁クラッチ30の回転速度差ΔNおよび電磁クラッチ30の入力トルクtinに基づいて補正値Δtref を算出し、たとえば数式2に示す補正式を演算することにより、たとえば通常走行時制御による指令値tref を補正し、補正後の指令値tref を電磁クラッチ30へ出力する。
【0042】
【数1】
【0043】
【数2】
tref =tref +Δtref ・・・(2)
【0044】
ここで、上記数式1の理論的根拠を説明する。先ず、通常走行時制御の指令値tref は、数式3により表される。また、直進走行時における電磁クラッチ30の入力側および出力側の回転駆動系の運動方程式は数式4のようになる。数式4において、If は、エンジン10のクランクシャフト、ドライブシャフト、自動変速機12、プロペラシャフト28、入力軸58などの入力側回転体の慣性モーメントをプロペラシャフト28まわりに換算したものである。Ir は、出力軸62、後部差動歯車装置32、車軸34、36などの出力側回転体の慣性モーメントをドライブピニオン44まわりに換算したものである。また、Tf は、前輪24、26に発生するトルクをプロペラシャフト28まわりに換算したものであり、Tr は、後輪38、40に発生するトルクをドライブピニオン44まわりに換算したものである。それらトルクTf およびTr は、それぞれスリップ率α(μ)の函数であると仮定すると、数式5に示すように定義される。数式5において、係数Rはギヤ比および車輪径の函数であり、スリップ率α(μ)は路面摩擦係数μの函数である。また、K1 は重量配分を反映させるためのゲインであり、K2 は差動回転数を反映させるためのゲインである。
【0045】
【数3】
tref =K1 tin+K2 ΔN ・・・(3)
【0046】
【数4】
tf =tin−tr =If ・ dωf /dt +Tf ・・・(4-1)
tr =Ir ・ dωr /dt +Tr ・・・(4-2)
【0047】
【数5】
Tf =α(μ)〔(Rωf /V)−1〕 ・・・(5-1)
Tr =α(μ)〔(Rωr /V)−1〕 ・・・(5-2)
【0048】
数式 4-1から数式 4-2を差し引いて、数式 5-1および5-2 を代入すると、数式6となるので、定常状態(微分値=0状態)であると仮定して、tref =tr として数式3を代入すると数式7となる。よって、数式8に示す不等式が成立するならば、指令値tref に対して実際の伝達トルクtr が小さいことを表し、数式9に示す不等式が成立するならば、指令値tref に対して実際の伝達トルクtr が大きいことを表している。したがって、指令値tref と実際の伝達トルクtr とのずれすなわち不足トルクをΔtref とすると、前記数式3および上記数式6から前記数式1が得られるのである。
【0049】
【数6】
tin−2tr =(If ・ dωf /dt −Ir ・ dωr /dt )
+Rα(μ)ΔN/V ・・・(6)
【0050】
【数7】
(1−2K1 )tin=〔(Rα(μ)/V)+2K2 〕ΔN ・・・(7)
【0051】
【数8】
ΔN>(1−2K1 )tin/〔(Rα(μ)/V)+2K2 〕・・・(8)
【0052】
【数9】
ΔN<(1−2K1 )tin/〔(Rα(μ)/V)+2K2 〕・・・(9)
【0053】
図8および図9は、電子制御装置110の制御作動の要部を説明するフローチャートである。図8は、前記トルク配分制御手段120に対応する制御モード選択ルーチンであり、図9は、トルク配分クラッチ伝達トルク補正ルーチンである。図8において、S1では、車速V、舵角δ、ブレーキセンサ104の出力信号などが読み込まれた後、S2において、ブレーキペダル102が操作されたか否かがブレーキセンサ104からの信号に基づいて判断される。このS2の判断が肯定された場合は、S3において制動時制御が選択され、本ルーチンが終了させられる。しかし、S2の判断が否定された場合は、S4において、図6に示す予め記憶された関係から車速V、舵角δに基づいて発進時制御、旋回走行時制御、通常走行時制御のいずれかが判定される。S4において発進時制御が判定された場合にはS5において発進時制御が選択され、S4において旋回走行時制御が判定された場合にはS6において旋回走行時制御が選択され、S4において通常走行時制御が判定された場合にはS7において通常走行時制御が選択される。
【0054】
図9において、前記定常走行判定手段126に対応するステップ(以下、ステップを省略する)SA1では、車両の定常走行状態であるか否か、すなわち車両の直進走行、且つ入力トルクtin、指令値tref 、回転速度差ΔN、および車速Vの変動の少ない安定走行であるか否かが、舵角δ、入力トルクtin、指令値tref 、回転速度差ΔN、および車速Vに基づいて判断される。このSA1の判断が否定される場合は、後述のSA7において変数の初期化が実行された後、本ルーチンが終了させられる。
【0055】
しかし、上記SA1の判断が肯定される場合は、SA2において、変数iが予め設定された判断基準値Aに到達したか否かが判断される。この判断基準値Aは、ばらつきの影響を緩和するために平均演算する移動平均区間に相当するものであり、たとえば数百ミリ秒乃至数秒程度の値が用いられる。当初はそのSA2の判断が否定されるので、続くSA3において、入力トルクtinおよび回転速度差ΔNが読み込まれるとともにそれらが積算された後、SA4において上記変数iに「1」が加算されてインクリメントされ、再びSA1以下が実行される。
【0056】
以上のステップが繰り返し実行されるうち、変数iの内容が判断基準値Aに到達してSA2の判断が肯定されると、SA5において、入力トルクtinおよび回転速度差ΔNの移動平均値tinavおよびΔNavが、それまでの積算値を移動平均区間Aでそれぞれ除算することにより算出される。本実施例では、SA3乃至SA5が前記入力トルク算出手段122および回転速度差算出手段124に対応している。
【0057】
次いで、前記指令値補正手段128に対応するSA6では、たとえば数式1に示す通常走行時制御の補正値算出式から、SA5において求められた電磁クラッチ30の回転速度差ΔNavおよび電磁クラッチ30の入力トルクtinavに基づいて補正値Δtref が算出されるとともに、数式2に示す補正式により、たとえば数式3に示す通常走行時制御の制御式から図示しないステップにおいて求められた通常走行時制御による指令値tref が補正され、補正後の指令値tref が電磁クラッチ30へ出力される。そして、SA7において、変数iなどが初期化された後、本ルーチンが終了させられる。
【0058】
上述のように、本実施例によれば、指令値補正手段128(SA6)において、電磁クラッチ30の回転速度差ΔNavおよび電磁クラッチ30の入力トルクtinavに基づいて補正値Δtref が算出されるので、機械的或いは電気的要因による指令値tref と実際の伝達トルクtr との関係(図3)のずれに拘らず、電磁クラッチ30に対する指令値tref に対応する大きさの伝達トルクtr が得られる。車両の動力伝達経路における駆動系回転体の運動方程式から求められる指令値(指令トルク)tref と実際の伝達トルクtr との差である不足トルクΔtref は、数式1に示すように、上記電磁クラッチ30の入力トルクtinおよび回転速度差ΔNの函数であるからである。また、直進走行において発生する電磁クラッチ30の回転速度差ΔNavが用いられるので、路面摩擦係数μが低い路面において、指令値tref の補正が行われ得る利点がある。
【0059】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0060】
図10および図11は、本発明の他の実施例における電子制御装置110の制御機能の要部を示す機能ブロック線図、および電子制御装置110の制御作動の要部を示すフローチャートである。前述の実施例では、数式1に示す通常走行時制御の補正値算出式から、実際の電磁クラッチ30の回転速度差ΔNavおよび電磁クラッチ30の入力トルクtinavに基づいて補正値Δtref を算出し、数式2に示す補正式により通常走行時制御による指令値tref を補正する指令値補正手段128が設けられているのに対し、本実施例では、その指令値補正手段128に替えて、たとえば図12に示す関係から実際の電磁クラッチ30の回転速度差ΔNavおよび電磁クラッチ30の入力トルクtinavに基づいて補正係数λを決定し、その補正係数λにより指令値tref を補正する指令値補正手段130が設けられている点において相違し、その他は共通している。以下、その相違点を中心に説明する。
【0061】
図12に示す回転速度差ΔNavおよび入力トルクtinavと補正係数λとの関係は、各回転速度差ΔNavおよび入力トルクtinav毎に、指令値tref および伝達トルクtr のずれΔtref から補正係数λ〔=(tref +Δtref )/tref 〕を実験的に求めることによって得られたものである。図10の指令値補正手段130は、上記図12に示す予め記憶された関係から実際の電磁クラッチ30の回転速度差ΔNavおよび電磁クラッチ30の入力トルクtinavに基づいて補正係数λを決定し、その補正係数λを指令値tref に乗算することにより、補正後の指令値tref (=tref ・λ)を出力する。図11のSB6は、上記指令値補正手段130に対応するものであり、上記図12の関係からSA5において算出された実際の電磁クラッチ30の回転速度差ΔNavおよび電磁クラッチ30の入力トルクtinavに基づいて補正係数λを決定し、その補正係数λを指令値tref に乗算することにより、補正後の指令値tref (=tref ・λ)を出力する。本実施例によれば、前述の実施例と同様の効果が得られる他に、実際の路面摩擦係数μの推定精度に影響されないので、前後輪トルク配分の制御精度が高められる利点がある。
【0062】
図13は、本発明の他の実施例における電子制御装置110の制御機能の要部を示す機能ブロック線図であり、図14および図15は、本発明の他の実施例における電子制御装置110の制御作動の要部を示すフローチャートである。この図13において、回転速度差補正手段132は、車両の前輪24、26と後輪38、40との径差に起因して発生する電磁クラッチ30の回転速度差ΔN(=Nf −Nr )を除去する補正を行う。たとえば、車両の直線走行時における電磁クラッチ30の入力軸58の回転速度Nf と出力軸62の回転速度Nr とから補正係数kik (=Nr /Nf )を決定し、たとえば数式10に示す補正式を用いて前記回転速度差算出手段124により算出された回転速度差ΔNを補正するのである。
【0063】
【数10】
ΔN=ΔN−(1−kik )Nf ・・・(10)
【0064】
図14は、上記径差に起因する回転速度差のずれを補正するための補正係数kik を求めるためのルーチンである。図14のSC1では、補正係数決定フラグFk が「1」にセットされているか否かが判断される。このSC1の判断が肯定された場合は既に補正係数kik が求められた状態であるので本ルーチンが終了させられるが、SC1の判断が否定された場合は、SC2において車両の直進走行であるか否かが舵角δに基づいて判断される。
【0065】
上記SC2の判断が否定された場合は、車両の前輪24、26と後輪38、40との径差以外の要因が補正係数kik (=Nr /Nf )に含まれて不適当な状態であるので本ルーチンが終了させられる。しかし、SC2の判断が肯定された場合は、SC3において電磁クラッチ30が解放された後、SC4において電磁クラッチ30の入力軸58の回転速度Nf と出力軸62の回転速度Nr とが求められるとともに、それらから補正係数kik (=Nr /Nf )が算出される。そして、SC5において、補正係数kik が決定されたことを示す補正係数決定フラグFk が「1」にセットされる。
【0066】
図15のSD1では、トルク指令値の補正が可能な状態を示す補正待機フラグFA が「1」にセットされているか否かが判断される。当初はこのSD1の判断が否定されるのでSD2以下が実行される。SD2乃至SD6は前述の図9のSA1乃至SA5と同様のステップである。上記SD6に続くSD7では、車両の直進走行且つ安定走行状態であって電磁クラッチ30の回転速度差ΔNavおよび電磁クラッチ30の入力トルクtinavが求められた状態であるので、補正待機フラグFA が「1」にセットされる。このため、次の制御サイクルのSD1の判断が肯定されるので、SD8において、補正係数kik が決定されたことを示す補正係数決定フラグFk が「1」にセットされているか否かが判断される。このSD8の判断が否定される場合は指令値tref の補正を回避するために本ルーチンが終了させられる。
【0067】
しかし、上記SD8の判断が肯定された場合は、前記回転速度差補正手段132に対応するSD9において、数式10から補正係数kik (=Nr /Nf )に基づいてSD6により算出された回転速度差ΔNavが補正される。次いで、図9のSA6と同様のSD10において、上記補正後の回転速度差ΔNavおよび入力トルクtinavに基づいて指令値tref が補正される。そして、SD11において、補正待機フラグFA が「0」にクリアされ、SD12において変数iなどが初期化された後、本ルーチンが終了させられる。
【0068】
本実施例によれば、前述の図5、図10に示す実施例と同様の効果が得られるのに加えて、前輪24、26と後輪38、40との径差に起因するずれを含まないように補正係数kik に基づいて回転速度差ΔNavが補正されるので、トルク配分の制御精度が一層高められる利点がある。
【0069】
図16および図17は、本発明の他の実施例における電子制御装置110の制御機能の要部を示す機能ブロック線図、および電子制御装置110の制御作動の要部を示すフローチャートである。図18の判断基準線Lは、入力側摩擦板42や出力側摩擦板46の異常摩耗、電磁ソレノイド48の断線などに起因する電磁クラッチ30のトルク伝達不良すなわち伝達トルクの異常低下を判定する基準値であり、トルク配分制御手段120による通常走行時制御において、電磁クラッチ30の入力トルクtinavに対して最大の回転速度差の最大値或いはそれに余裕値を加えた値に基づいて決定されている。図16において、トルク配分クラッチ異常判定手段134は、車両の定常走行状態において、上記図18に示す関係から、入力トルク算出手段122および回転速度差算出手段124により得られた実際の電磁クラッチ30の入力トルクtinavおよび回転速度差ΔNavに基づいて、電磁クラッチ30の伝達トルク異常低下を判定する。
【0070】
図17において、SE1乃至SE9は、図15の実施例のSD1乃至SD9と同様である。SE9に続くSE10では、たとえば図19に示すフェール判定ルーチンが実行される。すなわち、図19のSF1では、図18に示す予め記憶された関係から、SE6において算出された実際の電磁クラッチ30の入力トルクtinavおよび回転速度差ΔNavに基づいて、電磁クラッチ30の伝達トルク異常低下が判定される。すなわち、実際の入力トルクtinavおよび回転速度差ΔNavを示す点が図18の異常領域内であるか否かが判断される。このSF1の判断が否定された場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定された場合は、SF2においてフェールフラグFf が「1」にセットされ、本ルーチンが終了させられる。
【0071】
続いて、図17のSE12では、変数iなどが初期化された後、SE13において、フェールフラグFf が「1」であるか否かが判断される。このSE13の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定される場合は、SE14のフェール処理が実行される。このフェール処理では、異常表示灯114が点灯させられるとともにフェール状態が所定の記憶場所に記憶され、電磁クラッチ30に対する駆動電流すなわち制御値tref が緩やかに減少させられて緩やかに解放される。上記SE10、SE13、SE14がトルク配分クラッチ異常判定手段134に対応している。本実施例によれば、入力トルクtinavおよび回転速度差ΔNavに基づいて電磁クラッチ30の異常判定が行われるので、機械的或いは電気的要因による指令値tref と実際の伝達トルクtr との関係のずれが発生すると容易に認識でき、その関係のずれを修正したり、或いは指令値tref を補正したりすることにより、電磁クラッチ30に対する指令値tref に対応する大きさの伝達トルクが得られる。また、摩擦係数μが低い路面において電磁クラッチ30の異常判定が可能となる利点がある。
【0072】
図20は、本発明の他の実施例の電子制御装置110の制御機能を説明する機能ブロック線図であり、図21は、その電子制御装置110の制御作動を説明するフローチャートである。また、図22は、電磁クラッチ30の異常判定およびトルク補正に用いる関係を示す図である。
【0073】
第1指令値出力手段140は、第1の区間たとえば図23にタイムチャートに示すA区間において予め設定された一定値たとえば0N・m(ニュートンメータ)を表す第1指令値trefAをトルク配分制御手段120に出力させる。また、第2指令値出力手段142は、第2の区間たとえば図23にタイムチャートに示すB区間において電磁クラッチ30を半係合とさせるためにA区間とは異なる値に予め設定された一定値たとえば100N・m(ニュートンメータ)を表す第2指令値trefBをトルク配分制御手段120に出力させる。
【0074】
スリップ率差算出手段144は、回転速度差算出手段124により上記A区間およびB区間内の平均値としてそれぞれ求められた電磁クラッチ30の回転速度差ΔNavA および回転速度差ΔNavB と、A区間およびB区間内の平均車速VA およびVB とから、A区間およびB区間の前輪および後輪のスリップ率差ΔNavA /VA およびΔNavB /VB をそれぞれ算出する。スリップ率差対応変数算出手段146は、上記A区間およびB区間における前後輪のスリップ率差ΔNavA /VA およびΔNavB /VB から、それ等スリップ率差の変化量に対応して変化するように定義された変数(前後輪スリップ率差の変化量)dslip 〔=( ΔNavB /VB )−(ΔNavA /VA )〕を算出する。
【0075】
指令値差対応変数算出手段148は、上記A区間およびB区間内の平均値としてそれぞれ求められた第1指令値trefAおよび第2指令値trefBと入力トルクtinA およびtinB とに基づいて、指令値差に対応して変化するように定義された変数atr 〔=trefB−trefA−1/2(tinB −tinA )〕を算出する。
【0076】
指令値補正手段150は、図22に示す変数atr を示す軸と変数dslip を示す軸とからなる二次元座標において、実際に求められた上記変数atr および変数dslip を示す位置が、予め設定された正常領域Bから外れる場合には、その正常領域B内に位置するように、すなわち、A区間及びB区間における入出力回転速度差ΔNavA およびΔNavB と指令値trefAおよびtrefBとに基づいて、指令値tref の補正を行う。たとえば、電磁クラッチ30の特性が図25のTB に示すようにトルク不足側へ変化している場合には、B区間における差動回転速度ΔNavB は図23に示すよりも大きく現れることから、図22の二次元座標において実際の変数atr および変数dslip を示す点が正常領域Bと変数atr を示す軸(横軸)との間に位置することになるので、その点が正常領域B内となるように指令値tref を増加させる補正が行われるが、電磁クラッチ30の特性が図25のTC に示すようにトルク過剰側へ変化している場合には、B区間における差動回転速度ΔNavB は図23に示すよりも小さく現れることから、図22の二次元座標において実際の変数atr および変数dslip を示す点が正常領域Bと変数dslip を示す軸(縦軸)との間に位置することになるので、その点が正常領域B内となるように指令値tref を減少させる補正が行われるのである。
【0077】
トルク配分クラッチ異常判定手段152は、上記二次元座標において、実際に求められた上記変数atr および変数dslip を示す位置が、予め設定された異常判定領域D内にある場合には、指令値trefAから指令値trefBへ変化したにも拘らずスリップ率の変化が殆ど発生しない状態であるので、電磁クラッチ30が作動しない状態であると判定してその電磁クラッチ30の異常判定を行う。上記異常判定領域Dは、変数dslip の値が極めて小さな領域であって、変数atr を示す軸に沿ってその変数dslip が零の位置を含むように設定されているのである。
【0078】
上記正常領域Bに基づいて指令値tref を補正する理論的な根拠を以下に説明する。電磁クラッチ30の入力側および出力側の回転駆動系の運動方程式は数式11のようになる。ここで、前記数式4と同様に、Ir は電磁クラッチ30の出力側回転体の慣性モーメントを出力軸62まわりに換算したものであり、If は電磁クラッチ30の入力側回転体の慣性モーメントをドライブピニオン44(入力軸58)まわりに換算したものである。また、ωf およびωr は、入力軸58および出力軸62の回転角速度、μ(sf)およびμ(sr)は前輪24、26および後輪38、40の前後力係数、Wf およびWr は前輪24、26および後輪38、40の接地荷重、sfおよびsrは前輪24、26および後輪38、40のスリップ率〔=(Rf ωf −V)/Rf ωf 、および=(Rr ωr −V)/Rr ωr 〕、Rf およびRr は前輪24、26および後輪38、40の動荷重半径である。
【0079】
【数11】
If ・ dωf /dt =tin−tr −μ(sf)・Wf ・Rf ・・・(11-1)
Ir ・ dωr /dt =tr −μ(sr)・Wr ・Rr ・・・(11-2)
【0080】
上記数式11において、定常走行では dωf /dt =0、 dωr /dt =0と見做すことができるので、数式12となる。また、図24に示すように、前輪24、26或いは後輪38、40の前後力係数(車輪に発生する駆動力に対応する係数)は、車輪のスリップ率が比較的小さい範囲H内ではその車輪のスリップ率sに対して線型であるから、数式13に示すように、前輪24、26のスリップ率sfおよび後輪38、40のスリップ率srに比例する一方、前輪24、26の動荷重半径Rf と後輪38、40の動荷重半径Rr は互いに同じ値Rであるので、上記数式12は数式14に示すように書き替えられる。上記車輪のスリップ率sは、一般に、車速Vと車輪(タイヤ)周速vとの函数であり、(V−v)/v×100(%)または(V−v)/V×100(%)として表されるものである。
【0081】
【数12】
tin−tr −μ(sf)・Wf ・Rf =0 ・・・(12-1)
tr −μ(sr)・Wr ・Rr =0 ・・・(12-2)
【0082】
【数13】
μ(sf)=K・sf ・・・(13-1)
μ(sr)=K・sr ・・・(13-2)
【0083】
【数14】
tin−tr =K・sf・Wf ・Rf ・・・(14-1)
tr =K・sr・Wr ・Rr ・・・(14-2)
【0084】
ここで、上式14-1および14─2 から数式15が導かれる一方で、電磁クラッチ30が解放される前記A区間では後輪38、40のスリップ率srが零となるので、上記数式14が数式16に変形させられ、その数式16から数式17が導かれる。また、その数式15から数式17を差し引くことにより数式18となり、前輪24、26の接地荷重Wf および後輪38、40の接地荷重Wr を互いに同じ値Wとすると数式19に示すようになる。
【0085】
【数15】
tin−2tr =K(sf・Wf −sr・Wr )Rf ・・・(15)
【0086】
【数16】
tinA =K・sfA ・Wf ・R ・・・(16-1)
srA =0 ・・・(16-2)
【0087】
【数17】
tinA =K・(sfA ・Wf −srA ・Wr )R ・・・(17)
【0088】
【数18】
【0089】
【数19】
【0090】
また、前記前輪24、26のスリップ率sfおよび後輪38、40のスリップ率srは、スリップ率の定義から数式20に示すように表される。数式20のR・ωf は前記タイヤ周速vに相当している。右辺は近似的に表現されたものである。このため、数式19の右辺の(sf−sr)は、次式21のように表されるので、その数式19は数式22のように変形させられ得る。この数式22を用いれば、車輪のスリップ率sf、srを求めることが不要となるので、比較的精度よく実際の伝達トルクtr を算出することができる。
【0091】
【数20】
sf=(R・ωf −V)/Rωf =(R・ωf −V)/V ・・・(20-1)
sr=(R・ωr −V)/Rωr =(R・ωr −V)/V ・・・(20-2)
【0092】
【数21】
sf−sr=R・(ωf −ωr )/V=R・ΔN/V ・・・(21-1)
sfA −srA =R・(ωfA−ωrA)/VA =R・ΔNA /VA ・・・(21-2)
【0093】
【数22】
【0094】
しかしながら、実際には、路面摩擦係数μに対応する前後力係数(図24)を正確に求めることが困難であるため、A区間内で得られた回転速度差の平均値ΔNavA 、入力トルクtinavA 、および車速(車体速)VA とB区間内で得られた回転速度差の平均値ΔNavB 、入力トルクtinavB 、および車速(車体速)VB とを用いて、以下に示すような補正を行うようにしているのである。先ず、上記数式22から数式23に示すように、書き替えられる。また、A区間およびB区間における指令(トルク)値tref に対応して変化する変数atr を数式24に示すように定義し、A区間およびB区間における前後輪のスリップ率差(ΔN/V)の差に対応して変化する変数dslip を数式25に示すように定義し、定数KA を数式26に示すように定義すると、数式27に示すように上記変数atr は変数dslip の一次函数として表される。本実施例では、上記数式27の関係を示す直線を中心とする所定幅の領域を図22に示す正常領域Bとして設定し、その正常領域B内に入るように指令値tref を補正するようにしているのである。
【0095】
【数23】
travB−1/2 ・(tinavB −tinavA )=
1/2 ・K・W・R・R(ΔNavB /VB −ΔNavA /VA )・・・(23)
【0096】
【数24】
atr =travB−travA−1/2 ・(tinavB −tinavA ) ・・・(24)
【0097】
【数25】
dslip =(ΔNavB /VB −ΔNavA /VA ) ・・・(25)
【0098】
【数26】
KA =・K・W・R・R ・・・(26)
【0099】
【数27】
atr =KA ・dslip ・・・(27)
【0100】
図21は、電子制御装置110の制御作動の要部を説明するフローチャートである。図において、前記第1指令値出力手段140に対応するSG1では、区間Aにおいて指令値trefAが電磁クラッチ30に出力される。続くSG2では、区間A内における電磁クラッチ30の入力トルクtinavA および回転速度差ΔNavA が算出される。また、前記第2指令値出力手段142に対応するSG3では、区間Bにおいて指令値trefBが電磁クラッチ30に出力される。続くSG4では、区間B内における電磁クラッチ30の入力トルクtinavB および回転速度差ΔNavB が算出される。上記SG2およびSG4は、図20の入力トルク算出手段122および回転速度差算出手段124に対応している。
【0101】
次いで、前記指令値差対応変数算出手段148に対応するSG5では、上記SG2およびSG4によりA区間およびB区間内の平均値としてそれぞれ求められた指令値trefA(本実施例ではtrefA=0)およびtrefBと入力トルクtinA およびtinB とに基づいて、指令値差に対応して変化するように定義された変数atr 〔=trefB−1/2(tinB −tinA )〕が算出される。また、前記スリップ率差算出手段144および前記スリップ率差対応変数算出手段146に対応するSG6では、上記SG2およびSG4によりA区間およびB区間における前後輪のスリップ率差ΔNavA /VA およびΔNavB /VB が算出され、それ等前後輪のスリップ率差ΔNavA /VA およびΔNavB /VB から、前後輪のスリップ率差の変化量に対応して変化するように定義された変数dslip 〔=( ΔNavB /VB )−(ΔNavA /VA )〕が算出される。
【0102】
前記トルク配分クラッチ異常判定手段152に対応するSG7では、図22の二次元座標において、実際に求められた上記変数atr および変数dslip を示す位置が、予め設定された異常判定領域D内にある場合には、指令値trefAから指令値trefBへ変化したにも拘らずスリップ率の変化が殆ど発生しない状態であるので、電磁クラッチ30が作動しない状態であると判定してその電磁クラッチ30の異常判定が行われる。このSG7の判断が肯定された場合は、SG8において異常表示灯114が点灯されて異常表示が行われる。
【0103】
しかし、上記SG7の判断が否定された場合は、SG9において、図22の二次元座標において、実際に求められた変数atr および変数dslip を示す位置が、予め設定された正常領域B内にあるか否かが判断される。このSG9の判断が肯定された場合は、指令値の補正が行われることなく本ルーチンが終了させられる。しかし、上記SG9において、実際に求められた変数atr および変数dslip を示す位置が変数atr を示す軸(横軸)側へ外れたと判断される場合には、指令値tref に対して実際の伝達トルクtr が不足の状態であるので、SG10において、その正常領域B内に位置するように、予め設定された補正係数Cを指令値tref に加算或いは乗算することにより、その指令値tref が増加する方向へ補正が行われる。反対に、上記SG9において、実際に求められた変数atr および変数dslip を示す位置が変数dslip を示す軸(縦軸)側へ外れたと判断される場合には、指令値tref に対して実際の伝達トルクtr が過剰の状態であるので、SG11において、正常領域B内に位置するように、予め設定された補正係数Cを指令値tref から減算或いは除算することにより、指令値tref が減少する方向へ補正されるのである。本実施例では、上記SG9、SG10、SG11が、前記指令値補正手段150に対応している。
【0104】
上述のように、本実施例によれば、指令値補正手段150(SG9、SG10、SG11)において、前記A区間およびB区間における指令値差に対応して変化する変数atr とスリップ率差に対応して変化する変数dslip とに基づいて指令値tref が補正されるので、機械的或いは電気的要因による指令値と実際の伝達トルクとの関係のずれに拘らず、電磁クラッチ30への指令値tref に対応する大きさの伝達トルクtr が得られる。すなわち、実際の走行時における電磁クラッチ30の指令値差(trefB−0)とスリップ率差(ΔNavB −ΔNavA )は、実際の電磁クラッチ30の指令値tref と実際の伝達トルクtr との間のクラッチ特性に関連して変化することから、その指令値差とそれに対応するスリップ率差とにより示される作動領域が、予め設定された正常な作動領域B内となるように指令値tref が補正されることにより、伝達トルクtr が指令値tref に対応したものとされるのである。たとえば、図25において、電磁クラッチ30の特性曲線が当初の特性曲線TA からトルク不足側の曲線TB 或いはトルク過剰側の曲線TC 側へずれている場合でも、上記の指令値tref に対する補正により当初の特性曲線TA の近傍へ戻されるのである。
【0105】
また、本実施例によれば、トルク配分クラッチ異常判定手段152(SG7)により、前記A区間およびB区間における指令値差に対応して変化する変数atr とスリップ率差に対応して変化する変数dslip とに基づいて電磁クラッチ30の異常が判定されるので、機械的或いは電気的要因による指令値tref と実際の伝達トルクtr との関係のずれが発生すると容易に認識でき、たとえ指令値tref を補正するステップSG9、SG10、SG11が設けられていなくても、手動設定などにより、クラッチ特性の関係のずれを修正したり、或いは指令値tref を補正したりすることにより、電磁クラッチ30に対する指令値tref に対応する大きさの伝達トルクが得られる。
【0106】
また、本実施例では、摩擦係数μが高い路面において電磁クラッチ30の特性変化による異常判定が可能となる利点がある。
【0107】
図26は、路面摩擦係数μを検知或いは推定可能な車両において指令値tref を補正するために、上記図22に替えて用いられる関係を示している。この図26では、低い路面摩擦係数μl 、高い路面摩擦係数μh 、それらの中間の路面摩擦係数μm のそれぞれにおける関係(数式27)atr =KAl・dslip 、 atr=KAh・dslip 、 atr=KAm・dslip を中心とする正常範囲Bl 、Bh 、Bm が、それぞれ設定されている。車両では、実際の路面摩擦係数μに基づいてそれら正常範囲Bl 、Bh 、Bm のいずれかが選択され、選択された正常範囲Bに基づいて前述と同様に指令値tref が補正される。本実施例によれば、図22を用いる場合に比較して、指令値tref の補正精度が一層高められる。
【0108】
以上、本発明の一実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0109】
たとえば、前述の図1乃至図19の実施例において、指令値補正手段128(130)は、入力トルクtinおよび回転速度差ΔNに基づいて指令値tref に対する補正を行うものであったが、入力トルクtinおよび回転速度差ΔNのいずれか一方に基づいて指令値tref に対する補正を行うものであってもよい。
【0110】
また、前述の図1乃至図15の実施例では、直進走行中のトルク配分のための通常走行時制御において指令値tref が補正されていたが、制動時制御、発進時制御、旋回走行時制御などの他のトルク配分制御の指令値tref を補正するようにしてもよい。たとえば、他のトルク配分制御の指令値tref を補正するために、直進走行により得られた補正係数λが用いられてもよいのである。
【0111】
また、前述の図13乃至図15の実施例には、前後輪の径差に起因する回転速度差ΔNの誤差を補正する回転速度差補正手段132が設けられていたが、他の実施例にも設けられていてもよい。
【0112】
また、前述の図1乃至図19の実施例では、指令値tref に対する補正を行う指令値補正手段128(130)と電磁クラッチ30の異常を判定するトルク配分クラッチ異常判定手段134とが択一的に備えられていたが、同時に備えられていてもよい。また、図20乃至図25の実施例では、補正値指令手段150とトルク配分クラッチ異常判定手段152とが同時に備えられていたが、択一的に備えられていても差し支えない。
【0113】
また、前述の図1乃至図19の実施例では、専ら路面摩擦係数μが小さい路面において指令値tref の補正或いは電磁クラッチ30の異常判定が行われ、図20乃至図25の実施例では、専ら路面摩擦係数μの大きい路面において指令値tref の補正或いは電磁クラッチ30の異常判定が行われていたが、それら両方の実施例の手段が同時に車両に備えられても差し支えない。
【0114】
また、前述の実施例では、エンジン10の出力トルクすなわち電磁クラッチ30の入力トルクtinを算出する際などに用いられるスロットル開度θthに替えて、アクセルペダル操作量、エンジン10の燃料噴射量や吸入空気量などの要求出力量が用いられても差し支えない。
【0115】
また、前述の図20乃至図25の実施例において、A区間およびB区間における指令値差に対応して変化する変数atr は、trefB−1/2(tinB −tinA )であったが、指令値tref のA区間およびB区間の差(trefB−0)そのものであっても差し支えないし、スリップ率差に対応して変化する変数dslip は、〔=( ΔNavB /VB )−(ΔNavA /VA )〕であったが、それ以外の変数を含むものであってもよい。
【0116】
また、前述の実施例の電磁クラッチ30は、プロペラシャフト28と後部差動歯車装置32との間に設けられるものであったが、所謂センターデフの差動を制限するためにそれに並列に設けられた差動制限クラッチ、トランスファと前部差動歯車装置との間に設けられたクラッチ、プロペラシャフト28とそれに連結された差動歯車装置の出力側の1対の車軸との3軸のうちの何れかの2軸間に設けられたクラッチなどであってもよい。要するに、原動機から複数の車輪へそれぞれ伝達されるトルクの割合を調節する電磁式、油圧式などのトルク配分クラッチであればよいのである。
【0117】
その他一々例示はしないが、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の車両用トルク伝達制御装置を4輪駆動車両の動力伝達経路と共に説明する図である。
【図2】前輪および後輪のトルク配分を行うために、図1の動力伝達経路に設けられた電磁クラッチの構成を説明する断面図である。
【図3】図2の電磁クラッチのクラッチ特性を説明する特性図である。
【図4】図1の電子制御装置の構成例を詳細に説明する図である。
【図5】図1の電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図6】図5のトルク配分制御手段において複数種類の制御モードを切り換えるために予め記憶された関係を示す図である。
【図7】図5の入力トルク算出手段において入力トルクを算出するために予め記憶された関係を示す図である。
【図8】図4の電子制御装置の制御作動の要部を説明するためのフローチャートであって、制御モード選択ルーチンを示す図である。
【図9】図4の電子制御装置の制御作動の要部を説明するためのフローチャートであって、トルク配分クラッチ伝達トルク補正ルーチンを示す図である。
【図10】本発明の他の実施例における電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図であって、図5に相当する図である。
【図11】図10の実施例における電子制御装置の制御作動の要部を説明するためのフローチャートであって、トルク配分クラッチ伝達トルク補正ルーチンを示す図である。
【図12】図10および図11の実施例において補正係数λを求めるために用いられる予め記憶された関係を示す図である。
【図13】本発明の他の実施例における電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図であって、図5に相当する図である。
【図14】図13の実施例における電子制御装置の制御作動の要部を説明するためのフローチャートであって、補正係数算出ルーチンを示す図である。
【図15】図13の実施例における電子制御装置の制御作動の要部を説明するためのフローチャートであって、トルク配分クラッチ伝達トルク補正ルーチンを示す図である。
【図16】本発明の他の実施例における電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図であって、図5に相当する図である。
【図17】図16の実施例における電子制御装置の制御作動の要部を説明するためのフローチャートであって、トルク配分クラッチフェール処理ルーチンを示す図である。
【図18】図16および図17の実施例において電磁クラッチの異常を判定するために予め記憶された関係を示す図である。
【図19】図16の実施例における電子制御装置の制御作動の要部を説明するためのフローチャートであって、フェール判定ルーチンを示す図である。
【図20】本発明の他の実施例における電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図であって、図5に相当する図である。
【図21】図20の実施例における電子制御装置の制御作動の要部を説明するためのフローチャートであって、トルク配分クラッチ伝達トルク補正ルーチンを示す図である。
【図22】図20および図21の実施例において伝達トルクの補正および異常判定のために予め記憶された関係を示す図である。
【図23】図20および図21の実施例において、予め設定されたA区間およびB区間において変化させられる指令値tref および差動回転速度ΔNを示すタイムチャートである。
【図24】車輪のスリップ率と前後力係数との関係を示す図である。
【図25】図20および図21の実施例において、電磁クラッチの特性のずれを示す図である。
【図26】本発明の他の実施例における伝達トルクの補正のために予め記憶された関係を示す図であって、図22に相当する図である。
【符号の説明】
10:エンジン(原動機)
24、26:前輪(車輪)
30:電磁クラッチ(トルク配分クラッチ)
38、40:後輪(車輪)
122:入力トルク算出手段
124:回転速度差算出手段
128、130、150:指令値補正手段
134、152:トルク配分クラッチ異常判定手段
140:第1指令値出力手段
142:第2指令値出力手段
144:スリップ率差算出手段
Claims (3)
- 原動機から複数の車輪へそれぞれ伝達されるトルク(t r ,t f )の割合を制御するトルク配分クラッチを備え、該トルク配分クラッチの伝達トルクを所定の値とするための指令値(t ref )を出力する車両用トルク配分クラッチの制御装置であって、
前記トルク配分クラッチの入力トルク(t in )を算出する入力トルク算出手段と、
前記トルク配分クラッチの入力側回転部材と出力側回転部材との回転速度差 ( ΔN ) を算出する回転速度差算出手段と、
前記指令値と前記トルク配分クラッチの実際の伝達トルクとの間のずれに対応する補正値( Δ t ref )を決定し、該補正値を用いて前記ずれが解消されるように前記指令値を補正する指令値補正手段とを備え、
前記回転速度差算出手段は、直進走行状態であり、且つ前記指令値、回転速度差、車速の変動幅が予め設定された値よりも小さい車両の定常走行状態において、前記回転速度差 ( ΔN ) を算出するものであり、
前記指令値補正手段は、前記定常走行状態において、以下の式
Δ t ref =1/2{〔(Rα/V)+2K 2 〕ΔN+(1−2K 1 ) t in }
但し、Δt ref :補正値、R:車輪の動荷重半径、
α:タイヤのスリップ率、V:車速、ΔN:回転速度差、
K 1 :指令値t in に重量配分を反映させるためのゲイン、
K 2 :指令値t in に差動回転数を反映させるためのゲイン、
t in :トルク配分クラッチの入力トルク
によって補正値 ( Δ t ref ) を決定するものであることを特徴とする車両用トルク配分クラッチの制御装置。 - 原動機から複数の車輪へそれぞれ伝達されるトルク(t r ,t f )の割合を制御するトルク配分クラッチを備え、該トルク配分クラッチの伝達トルクを所定の値とするための指令値(t ref )を出力する車両用トルク配分クラッチの制御装置であって、
前記トルク配分クラッチの入力トルク (t in ) を算出する入力トルク算出手段と、
前記トルク配分クラッチの入力側回転部材と出力側回転部材との回転速度差 ( ΔN ) を算出する回転速度差算出手段と、
車両が定常走行状態である第1区間において零の指令値 (t ref =0 ) を出力させる第1指令値出力手段と、
車両が定常走行状態であり前記第1区間とは異なる第2区間において零とは異なる指令値 (t ref ≠0 ) を出力させる第2指令値出力手段と、
下記(1)式で示す指令値差に関する変数( atr )と、下記(2)式で示すスリップ率差に関する変数( dslip )とを軸とする二次元座標上で、該指令値差に関する変数( atr )と該スリップ率差に関する変数( dslip )との関係が、下記 (3) 式で示す直線を中心とした所定幅の正常領域内に入るように、指令値 (t ref ) を補正する指令値補正手段と
を、備えることを特徴とする車両用トルク配分クラッチの制御装置。
atr =t ravB −t ravA − 1/2 ・(t inavB −t inavA )・・・ (1) 式
但し、 atr :指令値差に関する変数、
t ravA :第1区間における指令値の平均値、
t ravB :第2区間における指令値の平均値、
t inavA :第1区間におけるトルク配分クラッチの入力トルクの平均値
t inavB :第2区間におけるトルク配分クラッチの入力トルクの平均値
dslip =(ΔN avB /V B −ΔN avA /V A ) ・・・ (2) 式
但し、 dslip :スリップ率差に関する変数、
ΔN avA :第1区間における回転速度差の平均値、
ΔN avB :第2区間における回転速度差の平均値、
V A :第1区間における車速の平均値、
V B :第2区間における車速の平均値、
atr =KA・dslip ・・・(3) 式
但し、K A =K・W・R・R、
K:車輪のスリップ率sと車輪の前後力係数μとの比例定数、
W:車輪の接地荷重、R:車輪の動荷重半径、 - 前記二次元座標において、前記指令値差に関する変数( atr )と前記スリップ率差に関する変数( dslip )との関係が、予め設定された異常判定領域内に入ることに基づいて、前記トルク配分クラッチの異常判定を行うトルク配分クラッチ異常判定手段を備えることを特徴とする請求項2の車両用トルク配分クラッチの制御装置。
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