JP3837749B2 - 酸化物超電導導体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、酸化物超電導導体およびその製造方法に関するものであり、特に、ケーブル、マグネット、シールド、限流器、高周波およびその中間製品分野で使用する高い臨界電流値を有する酸化物超電導導体およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
酸化物超電導線材の製造方法として、たとえば、フレキシブルなテープ基板上に、酸化物超電導材料を膜状に形成する方法が考えられ、レーザアブレーション法、CVD法等の気相法を用いた製造方法の開発が、進められている。中でも、エキシマレーザを用いたレーザアブーション法は、他の気相法に比べて最も速い速度で臨界電流密度の高い膜を形成することができるため、実用化に対して有望である。
【0003】
このような酸化物超電導線材の製造において、基板が金属である場合、酸化物超電導膜が金属基板上に直接形成されることはほとんどない。超電導膜の形成時の加熱によって、基板と超電導膜との相互拡散が生じ、性能が劣化してしまうからである。そのため、金属基板上に超電導膜を形成する際には、基板と超電導膜との間に、イットリア安定化ジルコニア、酸化マグネシウム等の絶縁材料からなる中間層が設けられる。したがって、このようにして得られる酸化物超電導線材においては、超電導膜は、一方の面が絶縁体に接しており、他方の面は最外層となって空気中に露出した構造をなしている。
【0004】
このような構造を有する酸化物超電導線材に、電流を流すための電流リードを接続する際には、最外層の超電導膜の上に銀ペースト等で接続するか、もしくは、インジウム、ハンダ等で直接溶接する方法がとられている。
【0005】
一方、この超電導膜と電流リードの接続部分は、できるだけ接触抵抗を低くすることが望ましい。そのため、たとえば、文献(“High Tc superconductor/noble−metal contacts withsurface resistivities in the 10-10 Ωcm2 range”J.W.Ekin et al;Appl.Phys.Lett.52 P1819−P1821,(1988))によれば、超電導薄膜とリード線の接触部分において、銀または金コートを行なった後に熱処理を施すことにより、接触抵抗が低減できることが開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、テープ基板上に酸化物超電導膜が形成された構造を有する酸化物超電導線材は、最外層に超電導膜が露出し、露出した側の表面は何ら安定化処理が施されていない。そのため、このような酸化物超電導線材に比較的大きな電流を流した場合に、局所的な熱発生のため、超電導膜が局所的に超電導状態から常電導状態へ転移し、電流輸送が不安定になるという問題があった。
【0007】
特に、テープ基板上に酸化物超電導膜を形成する際には、超電導特性の分布が避けられないため、局所的に臨界電流密度の低い部分ができてしまう。このように臨界電流密度の低い部分は、線材全体に電流を流したとき、より低い電流で超電導に転移し、抵抗が発生してしまう。これにより、ジュール熱が発生し、局所的な温度上昇によって臨界電流値がよりいっそう低下するという問題があった。
【0008】
また、上述のように、最も高い臨界電流密度が得られる気相法、たとえばレーザアブーション法を用いることにより、酸化物超電導薄膜を長尺の基板上に作製し、酸化物超電導導体が得られる。この導体は、膜の性能としては、実用化に対して十分な特性が得られている。
【0009】
しかしながら、酸化物超電導膜を導体化し、機器またはデバイスとして使用する場合には、長期にわたって安定に動作することが必要となる。具体的には、たとえば、環境中に長時間放置した場合の安定性、液体窒素と室温間のヒートサイクルに対する安定性、および液体窒素温度から室温に移行する場合の結露に対する安定性等を確立する必要がある。また、超電導導体の製造工程においては、超電導膜の形成後の後工程における膜の傷の発生を防止することも必要である。
【0010】
この点で、従来の超電導膜が露出した構造の導体は、十分な安定性が得られないという問題点を有していた。特に、発明者らは、長さを問わず保護層を有しない酸化物超電導膜を大気中(平均20℃,45RH%)に保管したところ、1カ月程度の長期間経過後には、臨界電流が10%以上低下することを確認した。
【0011】
一方、リード線との接触部分については、従来のPb−Sn半田を用いる接続方法では、接触抵抗の低い接合を作ることは困難な場合が多かった。
【0012】
この発明の目的は、上述の問題点を解決し、高い臨界電流値を有し、安定した電流輸送を行なうことができる、酸化物超電導導体およびその製造方法を提供することにある。
【0013】
また、この発明のさらなる目的は、長期間の保存によってもその安定性が低下しない、酸化物超電導導体およびその製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明による酸化物超電導導体は、フレキシブルなテープ基板と、テープ基板上に形成された中間層と、中間層上に形成された酸化物超電導膜と、酸化物超電導膜上に形成された、熱膨張係数が1×10-5/K〜5×10-5/Kの値を有し、かつ耐酸化性の金属からなる、厚さが0.5μm以上の保護層とを備え、保護層の厚さが酸化物超電導導体の両端の電流リードとの接続部分において、1μm以上であることを特徴とする。
【0015】
請求項2の発明による酸化物超電導導体は、フレキシブルなテープ基板と、テープ基板上に形成された中間層と、中間層上に形成された酸化物超電導膜と、酸化物超電導膜上に形成された厚さが0.5μm以上の金または銀からなる保護層とを備え、保護層の厚さが酸化物超電導導体の両端の電流リードとの接続部分において、1μm以上であることを特徴とする。
【0018】
請求項3の発明による酸化物超電導導体は、請求項1または請求項2の発明において、上記保護層を第1の保護層とし、第1の保護層上に形成された、熱膨張係数が1×10-5/K〜5×10-5/Kの値を有するセラミックスまたはポリマーからなる第2の保護層をさらに備える。
【0029】
なお、この明細書において「超電導導体」には「超電導線材」が含まれる。
【0030】
【作用】
酸化物超電導導体は、水分(湿気)と反応して分解することが知られている。したがって、発明者らは、前述の問題点を解決するためには、大気中に存在する湿気との反応を防止するための保護層を超電導膜の露出面に設ける必要があることに着目した。そして、この反応防止層の構造を次のように検討した。
【0031】
まず、反応防止層に用いられる材料としては、以下の4点が要求される。
▲1▼ 水蒸気の透過係数が小さいこと。
【0032】
▲2▼ 保護膜形成時に、酸化物超電導膜と反応しないこと。
▲3▼ 熱膨張係数が酸化物超電導体の値に近いこと、または、ずれる場合は酸化物超電導体の値より大きい方向にずれること。これは、酸化物超電導体は引張り歪みに対しては臨界温度および臨界電流密度が減少するが、圧縮歪みに対しては臨界温度および臨界電流密度が増加することが知られているためである。
【0033】
▲4▼ 耐候性があること。
ここで、請求項1の発明によれば、保護層として、熱膨張係数が1×10-5/K〜5×10-5/Kの金属が用いられる。酸化物超電導体の熱膨張係数は、1.5×10-5/Kであり、このような金属は前述の要件をすべて満たしている。
【0034】
また、酸化物超電導膜の上に金属からなる膜がコーティングされた構造の超電導導体においては、超電導導体に電流を流した際に生じる局所的な発熱は、瞬時に金属からなる保護層に拡散する。そのため、超電導膜部分での温度上昇による常電導への転移を防止することができ、安定した電流輸送を行なうことができる。そのうえ、金属は、一般にガスの透過係数が小さいため有利である。
【0035】
また、請求項1の発明によれば、金属からなる保護層の厚さは、0.5μm以上である。以下の実施例で示すとおり、0.5μm以上の厚さがあれば、局所的な発熱の抑制に効果がある。さらに、請求項1の発明によれば、酸化物超電導導体両端の電流リードとの接続部分では、金属からなる保護層の厚さは、1μm以上である。保護層の厚さが1μmより薄いと、電流リードをハンダ等でボンディングする際、ハンダと保護層との反応により、低い接触抵抗に抑えられた超電導膜と保護層との界面が破壊される場合がある。そのため、以下の実施例で示すとおり、電流リードとの接触部分においては、保護層の厚さを1μm以上とすることにより、局所的な発熱の抑制に効果がある。
【0036】
請求項2の発明によれば、保護層を形成する金属が金または銀である。金属材料のうち、酸化物超電導体と熱膨張係数が近いかまたは大きい値を有する元素である、銀(熱膨張係数は1.9×10-5/K)と金(熱膨張係数は1.4×10-5/K)とは、反応性が少ないため特に有利である。また、特に銀は安価であり、経済的な面からも有利に利用できる。
【0039】
請求項3の発明によれば、保護層は2層構造を有している。上記金属の保護層である第1の保護層上に、セラミックスまたはポリマーからなる第2の保護層を設けることにより、機械的強度を向上させることができる。
【0040】
セラミックス材料としては、酸化ジルコニウム(安定化のためにY、Mg、Ca等を添加したものを含み、Yを添加したYSZの熱膨張係数は1.6×10-5/Kである。)、酸化マグネシウム(熱膨張係数は1.38×10-5/Kである。)、チタン酸バリウム(熱膨張係数は、c軸配向のとき1.57×10-5/Kであり、多結晶セラミックス状態では1.9×10-5/Kである。)がある。
【0041】
ポリマー材料としては、ポリイミド(熱膨張係数は1〜4×10-5/Kである。)、エポキシ樹脂(熱膨張係数は4×10-5/K以下である。)、ポリシラザン(熱膨張係数は〜3×10-5/K以下である。)を用いることができる。ポリマー材料は、無機材料を混合分散させることにより、熱膨張係数をある程度変更させることができる利点もある。
【0043】
また、いかなる方法で金属膜を作製しても、表面上の欠陥の生成を避けることは困難である。したがって、形成後に熱処理を行なうことにより、欠陥が減少し、酸化物超電導膜との密着性を向上させることができる。
【0050】
なお、酸化物超電導膜の表面粗さを調査したところ、最高0.8μmの凸部があった。したがって、第1の保護層としては少なくとも0.8μmより厚い膜を形成することが好ましい。
【0053】
【実施例】
<実施例1>
図1は、本発明による一例の酸化物超電導線材の構造を示す斜視図である。
【0054】
図1を参照して、この酸化物超電導線材は、基板としてのハステロイテープ1の上に、中間層としてイットリア安定化ジルコニア層2が設けられ、この上にY−Ba−Cu−O系酸化物超電導膜3が形成され、さらにこの上に金または銀からなるコーティング膜4が形成されている。
【0055】
このような構造の酸化物超電導線材について、以下のように、本発明の効果を調べる実験を行なった。
【0056】
(実験1)
まず、1mのハステロイテープ基板上に、中間層としてイットリア安定化ジルコニア層を形成し、さらにこの上に、Y−Ba−Cu−O系酸化物超電導膜を形成した。この酸化物超電導線材について、線材全長の臨界電流値を測定したところ、12A±1Aの分布であった。
【0057】
次に、この線材の前半分0.5mの部分に、0.8μmの厚さの銀をコーティングした後、700℃の酸素ガス雰囲気中で1時間のアニーリング処理を行なった。
【0058】
このようにして得られた酸化物超電導線材について、臨界電流値の測定を行なった。その結果を図2に示す。図2において、横軸は線材の先頭からの位置(cm)を示し、縦軸は臨界電流値(A)を示している。
【0059】
図2を参照して、この酸化物超電導線材は、銀をコーティングした前半分0.5mの部分は19〜20Aの臨界電流値を示し、銀をコーティングしていない部分は予め測定した11〜13Aの臨界電流値のままであった。
【0060】
(実験2)
金または銀のコーティングについて、その膜厚依存性を調べるため、以下の実験を行なった。
【0061】
まず、実験1と同様に、1mのハステロイテープ基板上に、中間層としてイットリア安定化ジルコニア層を形成し、さらにこの上に、Y−Ba−Cu−O系酸化物超電導膜を形成した。
【0062】
次に、この線材の前半分0.5mの部分に、厚さがそれぞれ0.2、0.4、0.5、0.6、0.8および1μmとなるように銀をコーティングした後、700℃の酸素ガス雰囲気中で1時間のアニーリング処理を行なった。
【0063】
このようにして得られた6種の酸化物超電導線材について、臨界電流値の測定を行ない、コーティングした部分の臨界電流値とコーティングしていない部分の臨界電流値の比を評価した。その結果を図3に示す。図3において、横軸は銀の膜厚(μm)を示し、縦軸はコーティングした部分の臨界電流値とコーティングしていない部分の臨界電流値の比(コーティング部Ic/コーティングなし部Ic)を示している。
【0064】
図3より明らかなように、銀の膜厚が0.5μm以上のとき、臨界電流値が向上することがわかる。
【0065】
また、金のコーティングについても、同様の実験を行なった。その結果を図4に示す。図4において、横軸は金の膜厚(μm)を示し、縦軸はコーティングした部分の臨界電流値とコーティングしていない部分の臨界電流値の比(コーティング部Ic/コーティングなし部Ic)を示している。
【0066】
図4より明らかなように、金の膜厚が0.5μm以上のとき、臨界電流値が向上することがわかる。
【0067】
(実験3)
銀のコーティングをした後の熱処理温度と、得られる超電導線材の臨界電流値との関係について調べるため、以下の実験を行なった。
【0068】
まず、実施例1と同様に、1mのハステロイテープ基板上に、中間層としてイットリア安定化ジルコニア層を形成し、さらにこの上に、Y−Ba−Cu−O系酸化物超電導膜を形成した。
【0069】
次に、この線材の前半分0.5mの部分に、0.8μmの厚さの銀をコーティングした後、400、500、600、700、750、800および900℃で、酸素ガス雰囲気中1時間のアニーリング処理を行なった。
【0070】
このようにして得られた7種の酸化物超電導線材について、臨界電流値の測定を行ない、コーティングした部分の臨界電流値とコーティングしていない部分の臨界電流値の比を評価した。その結果を図5に示す。図5において、横軸は熱処理温度(℃)を示し、縦軸はコーティングした部分の臨界電流値とコーティングしていない部分の臨界電流値の比(コーティング部Ic/コーティングなし部Ic)を示している。
【0071】
図5より明らかなように、熱処理温度が500℃〜750℃の範囲のとき、臨界電流値が向上することがわかる。
【0072】
(実験4)
電流リードとの接続部分における金または銀のコーティングについて、その膜厚依存性を調べるため、以下の実験を行なった。
【0073】
まず、ハステロイテープ基板上に中間層としてイットリア安定化ジルコニア層を形成し、さらにこの上にY−Ba−Cu−O系酸化物超電導膜を形成した。次に、厚さがそれぞれ0.5、1、1.5および2μmとなるように、銀をコーティングした。
【0074】
このようにして得られた銀がコーティングされた4種の酸化物超電導線材と、コーティングをしていない酸化物超電導線材に、それぞれ電流リードを接続し、電流を流した。電流量を徐々に上げていき、発熱によって電流リードとの接触部の超電導膜が損焼し、電流が流れなくなるときの電流値(以下「電流リード部損焼電流」という)を測定した。その結果を図6に示す。図6において、横軸は銀コート膜厚(μm)を示し、縦軸は電流リード部損焼電流(A)を示している。
【0075】
図6より明らかなように、電流リードとの接続部分においては、銀コート膜の膜厚が1μm以上のとき、高い臨界電流値が得られることがわかる。
【0076】
また、金のコーティングについても、同様の実験を行なった。
その結果を図7に示す。図7において、横軸は金コート膜厚(μm)を示し、縦軸は電流リード部損焼電流(A)を示している。
【0077】
図7より明らかなように、電流リード部との接続部分においては、金コート膜の膜厚が1μm以上のとき、高い臨界電流値が得られることがわかる。
【0078】
以上の実施例1で説明したように、本発明によれば、高い臨界電流値を有し、安定した電流輸送を行なうことができる酸化物超電導導体が得られる。
【0079】
<実施例2>
しかしながら、酸化物超電導膜に0.5μmの銀を保護層として形成した酸化物超電導導体でも、大気中に保管すると、1カ月程度の長期的には臨界電流が低下することが確認された。いかなる方法で銀膜を作製しても、表面上の欠陥の生成を避けることは困難であり、僅かな数の欠陥が生じていれば、酸化物超電導膜と水蒸気が反応する可能性があるからである。そのため、実際に0.5μm程度の銀の反応防止層を形成しても、大気中に放置すると臨界電流の低下が認められた。
【0080】
そこで、発明者らは、長期間の安定性を必要とする機器またはデバイスに対しても適用可能な酸化物超電導導体を得るための実験を行なった。
【0081】
ここで、発明者らは、長期間の安定性を評価する方法として、次の方法を考えた。
【0082】
従来、大気中に保管して影響を調査すると、結果が判明し得るまで長い時間を必要としていた。そこで、大気環境で保管する時間を加速する模擬試験として、恒温恒湿槽にサンプルを一定期間保管して、液体窒素中で臨界電流値を測定することを繰返すことによって、環境中に長時間放置した場合の安定性および液体窒素温度から室温に移行する場合の結露に対する安定性を評価することが可能となった。また、液体窒素中と大気中にそれぞれ1分間放置(それぞれの状態の温度になってからの時間)するサイクルを多数回実施することにより、液体窒素と室温間のヒートサイクルに対する安定性を評価することが可能となった。
【0083】
(実験5)
まず、基板として、ニッケル系の耐熱合金ハステロイC−276(熱膨張係数1.53×10-5/K、基板としての大きさ:幅10mm、長さ550mm)を用いた。この基板の上に、基板との反応を抑制するための中間層として、酸化ジルコニウム層(Yを添加したYSZ)を、ハステロイテープ上に形成できるように搬送機構を備えたマグネトロンスパッタ装置を用いて形成した。次に、この基板を搬送できる機構を備えたエキシマレーザを用いて、中間層を設置した基板上に、YBaCuO系超電導膜の形成を行なった。このときの作製条件を表1に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
このようにして得られたサンプルについて、X線回折装置で反応防止層の結晶性を調査したところ、基板に起因するピーク、中間層に起因するピークの他に、YBaCuO系超電導膜が基板に対して垂直に配向していることが確認できた。
【0086】
また、4端子法を用いて液体窒素中におけるサンプルの臨界電流を測定した結果を、表2に示す。
【0087】
【表2】
【0088】
測定後、臨界電流の測定に使用した電極部分を切取り、500mmの長さのサンプルとした。なお、別途作製した550mm長のサンプルで長さ方向の臨界電流を5cm間隔で調査したところ、全長の臨界電流に対しての各部分の値は3%のずれしか生じていなかった。
【0089】
上記で作製した酸化物超電導膜サンプルに、銀をスパッタ法(DCスパッタ装置)によって上記サンプルを搬送させながら5μm〜20μm形成した。膜形成後、酸素雰囲気中で500℃、650℃、750℃で熱処理を行ない、臨界電流を測定した結果を、表2に併せて示す。
【0090】
上記のサンプルを常温大気中(約25℃,約40RH%)に30日放置した後、臨界電流値を測定したが、表2に示す値と同じであった。
【0091】
また、より厳しい環境として、80℃−85RH%の恒温恒湿槽に全サンプルを500時間保管した後、臨界電流を測定したが、結果は表2に示した値と同じであった。
【0092】
さらに、液体窒素中と実験室(約25℃、約40RH%)環境にサンプルを各10分間ずつ保管するヒートサイクル試験を100回繰返した。なお、液体窒素中からサンプルを取出した際は、そのまま自然乾燥とした。このヒートサイクル試験後の臨界電流を測定した結果を、表2に併せて示す。表2より明らかなように、臨界電流の低下がないことを確認した。
【0093】
(実験6)
実験5と同じ工程で、長さ150mmのY系酸化物超電導サンプルを作製した。銀層は実験5と異なり、Y系酸化物超電導膜を作製している装置に直結させたレーザアブーション装置で、チャンバを隔てて連続した状態で形成した。形成条件は、表1においてターゲットを銀に、基材温度を無し(外部加熱装置なし)に、ガスをアルゴンに変えて実施した。この工程により、実験5に比べ銀を別途コーティングする時間を短縮できた。すなわち、5μmの厚み、1m長で換算した場合、サンプルセット時間を除いて3時間の短縮ができた。
【0094】
実験5と同様に液体窒素中で臨界電流を測定し、大気中に30日間放置して測定した結果と、80℃−85RH%に保った恒温恒湿槽に500時間保管した後再び臨界電流値を測定した結果を、表3に示す。
【0095】
【表3】
【0096】
さらに、液体窒素中と実験室(約25℃、約40RH%)環境にサンプルを各10分間ずつ保管するヒートサイクル試験を100回繰返した。なお、液体窒素中からサンプルを取出した際は、そのまま自然乾燥とした。このヒートサイクル試験後の臨界電流を測定した結果を、表3に併せて示す。表3より明らかなように、臨界電流の低下がないことが確認された。
【0097】
(実験7)
実験5において銀層の厚みを1〜4μmにしたことを除いて、他は同じ条件でサンプルを作製した。
【0098】
実験5と同様に液体窒素中で臨界電流を測定し、大気中に30日間放置して測定した結果と、80℃−85RH%に保った恒温恒湿槽に500時間保管した後再び臨界電流値を測定した結果を、表4に示す。
【0099】
【表4】
【0100】
表4より明らかなように、銀層の厚みが薄いと、恒温恒湿槽に入れた後の臨界電流値は低下していた。
【0101】
なお、比較のため、80℃−85RH%の恒温恒湿槽の環境中に、銀の保護膜を形成していないサンプルを1時間保管したところ、臨界電流が0に低下した。
【0102】
次に、上記表4に示したサンプル1、2、3と同じ条件でサンプルa、b、cを作製し、臨界電流値を測定し(初期値)、恒温恒湿槽中に1時間保管して臨界電流を測定することを繰返し、初期値の95%になるまで行なった。結果を表5に示す。
【0103】
【表5】
【0104】
表4のサンプル1、2、3と表5のサンプルa、b、cの結果より、臨界電流の低下に関して、恒温恒湿槽中の環境12時間が、大気環境の30日に相当することが判明した。よって、恒温恒湿槽500時間は大気環境の1250日(3.4年)に相当し、この段階でも臨界電流の低下は0であることが予想できる。
【0105】
(実験8)
実験5において、銀層の処理温度を800℃、850℃にしたことを除いて、他は同じ条件でサンプルを作製した。
【0106】
実験5と同様に液体窒素中で臨界電流を測定した。その結果を表6に示す。
【0107】
【表6】
【0108】
表6より明らかなように、実験5に比べて小さい臨界電流値しか得られなかった。
【0109】
そこで、さらに実験5の条件で、20cm長のY系酸化物超電導サンプルを4本(A、B、C、D)作製し、5μmの銀を形成した。サンプルAは熱処理なし、サンプルBは750℃で、サンプルCは800℃で、サンプルDは850℃で熱処理した。結果を表7に示す。
【0110】
【表7】
【0111】
表7より明らかなように、熱処理温度を750℃より高くすることだけで、サンプルの臨界電流が低下することが判明した。
【0112】
以上の実施例で説明したように、この発明によれば、酸化物超電導導体の外部に、熱処理を施した厚み5〜20μmの金属からなる保護層があるため、大気中に放置しても酸化物超電導膜の臨界電流が低下することがなく、80℃−85RH%の環境中500時間保管しても臨界電流は低下することがなく、さらに、液体窒素中と室温間のヒートサイクル試験を100回繰返しても臨界電流は低下することがないことがわかった。
【0113】
<実施例3>
しかしながら、上記のように金属層形成後に熱処理をしても、または金属層を厚くしても、作製時、輸送中、後工程時における加工中において表面への傷を防ぐことは困難である。そこで、発明者らは、次に、第1層の金属と異なるセラミックスまたはポリマー材料をコーティングし、第2層とした。以下、このような2層構造を有する保護層を備える酸化物超電導導体について行なった実験について説明する。
【0114】
(実験9)
まず、基板として、ニッケル系の耐熱合金ハステロイC−276(熱膨張係数1.53×10-5/K、基板としての大きさ:幅10mm、長さ550mm)を用いた。この基板の上に、基板との反応を抑制するための中間層として、酸化ジルコニウム層(Yを添加したYSZ)を、ハステロイテープ上に形成できるように搬送機構を備えたマグネトロンスパッタ装置を用いて形成した。次に、この基板を搬送できる機構を備えたエキシマレーザを用いて、中間層を設置した基板上に、YBaCuO系超電導膜の形成を行なった。このときの作製条件を表8に示す。
【0115】
【表8】
【0116】
このようにして得られたサンプルを、X線回折装置で反応防止層の結晶性を調査したところ、基板に起因するピーク、中間層に起因するピークの他に、YBaCuO系超電導膜が基板に対して垂直に配向していることが確認できた。
【0117】
また、4端子法を用いて液体窒素中におけるサンプルの臨界電流を測定した結果を、表9に示す。
【0118】
【表9】
【0119】
測定後、臨界電流の測定に使用した電極部分を切取り、500mmの長さのサンプルとした。なお、別途作製した550mm長のサンプルで長さ方向の臨界電流を5cm間隔で調査したところ、全長の臨界電流に対しての各部分の値は3%のずれしか生じていなかった。
【0120】
上記のように作製した酸化物超電導膜サンプルに、銀および金をレーザアブーション法によって1μm形成した。成膜条件は表8においてターゲットを銀または金にしたこと、ガスをアルゴンにしたことを除いて同じ条件で行なった。
【0121】
膜形成後、酸素雰囲気中で800℃、750℃、500℃で熱処理を行ない、臨界電流を測定した結果を、表10に示す。
【0122】
【表10】
【0123】
表10より明らかなように、800℃で熱処理すると、サンプルの臨界電流値は減少し、750℃以下では増加していることがわかる。
【0124】
測定後、臨界電流の測定に使用した電極部分を切取り、3分割して長さ150mmのサンプルを3本分用意した。
【0125】
別途長さ200mmのYBCO膜サンプルを作製し、銀または金を3μm、5μmコーティングし、酸素雰囲気中で500℃、750℃で熱処理したものをそれぞれ3本分ずつ用意し、臨界電流を測定した。その結果を表11および表12に示す。
【0126】
【表11】
【0127】
【表12】
【0128】
測定後、臨界電流の測定に使用した電極部分を切取り、長さ150mmのサンプルとした。
【0129】
上記で銀または金をそれぞれ1、3、5μmコーティングし、500℃または750℃で熱処理した長さ150mmのサンプル上に、▲1▼ポリイミド(硬化300℃×1時間)、▲2▼ポリシラザン(硬化250℃×30分)、▲3▼エポキシ樹脂(硬化150℃×1時間)を、それぞれ8μmコーティングし、第2層目の保護層を形成した。ただし、臨界電流測定を行なうため、電極の形成に必要な両端25mm分は、ポリマーでコーティングしなかった。
【0130】
ポリマーをコーティングしたサンプルの臨界電流を測定したところ、表11、表12に示すとおり、コーティングによる臨界電流値の変化は生じなかった。
【0131】
上記のサンプルを常温大気中に30日放置した後、臨界電流値を測定したが、表11および表12に示す値と同じであった。
【0132】
より厳しい環境として、80℃−85RH%の恒温恒湿槽に全サンプルを100時間保管した後、臨界電流を測定した結果を、表11および表12に示す。
【0133】
(実験10)
まず、実験9と同じ工程で、長さ150mmのY系酸化物超電導サンプルを作製した。次に、第1層として、実験9で銀と金の種類、500℃と750℃の熱処理温度による特性の大きな違いがなかったこと、第1層の厚さは1μm、3μmおよび5μmで差がなかったことから、厚み1μmの銀を形成し、500℃で熱処理した。続いて、第2層として、液状で感光性のポリイミド原料(アクリロイル基を内蔵する芳香族ジアミンとビフェニルテトラカルボン酸無水物)を、臨界電流測定を行なうため電極の形成に必要な端25mm分(両端)を除き塗布し、紫外線を3分間照射した。膜厚は5μmであった。
【0134】
このようにして得られたサンプルについて、実験9と同様に液体窒素中で臨界電流を測定し、80℃−85RH%に保った恒温恒湿槽に100時間保管した後、再び臨界電流値を測定した。結果を表13に示す。
【0135】
【表13】
【0136】
(実験11)
まず、実験9と同じ工程で、長さ150mmのY系酸化物超電導サンプルを作製した。次に、第1層として、実験9で銀と金の種類、500℃と750℃の熱処理温度による特性の大きな違いがなかったこと、第1層の厚みは1μm、3μmおよび5μmで差がなかったことから、厚さ1μmの銀を形成し、500℃で熱処理した。続いて、第2層として、固型ポリイミドとYSZ、MgO、TiBaO3 を、レーザアブーション法により、臨界電流測定を行なうため電極の形成に必要な端25mm分(両端)を除きコーティングした。レーザアブーション法でのコーティング条件は、表8と比べガスをアルゴンにしたこと、エネルギー密度をポリイミドの場合には0.1J/cm2 としたことを除き、同じ条件で行なった。膜厚は5μmであった。
【0137】
実験10と同様に液体窒素中で臨界電流を測定し、80℃−85RH%に保った恒温恒湿槽に100時間保管した後、再び臨界電流値を測定した。結果を表14に示す。
【0138】
【表14】
【0139】
(実験12)
実験9において第1層の厚みを0.1〜0.8μmにし、その後の熱処理を500℃で行ない、第2層のエポキシ樹脂でコーティングしたサンプルを比較のために作製した。なお、作製条件は実験9と同じである。
【0140】
このようにして得られたサンプルについて、実験9と同様に液体窒素中で臨界電流を測定し、80℃−85RH%に保った恒温恒湿槽に100時間保管した後、再び臨界電流値を測定した。結果を表15に示す。
【0141】
【表15】
【0142】
表15から明らかなように、第1層に用いた銀、金ともに厚みが0.1〜0.8μmでは、恒温恒湿槽に入れた後の臨界電流値は低下していた。
【0143】
(実験13)
実験9において第1層を形成することなく、第2層を実験9、実験10、実験11に示した方法で形成した。
【0144】
実験9と同様に液体窒素中で臨界電流を測定し、80℃−85RH%に保った恒温恒湿槽に100時間保管した後、再び臨界電流値を測定した。結果を表16に示す。
【0145】
【表16】
【0146】
表16より明らかなように、第1層がない場合では、恒温恒湿槽に入れた後の臨界電流値は低下していた。
【0147】
(実験14)
実験9において第1層として銅(熱膨張係数1.4×10-5/K)、アルミニウム(熱膨張係数2.3×10-5/K)の厚さを1〜5μmにし、その後の熱処理を500℃で行なったものと行なわないものを用意し、次に第2層のポリイミド樹脂でコーティングしたサンプルを比較のために作製した。なお、作製条件は実験9と同じである。
【0148】
得られたサンプルについて、実験9と同様に液体窒素中で臨界電流を測定し、80℃−85RH%に保った恒温恒湿槽に100時間保管した後、再び臨界電流値を測定した。結果を表17に示す。
【0149】
【表17】
【0150】
表17より明らかなように、耐酸化性のない金属を用いた場合は、上記のように、臨界電流の低下は大きかった。
【0151】
(実験15)
実験9において第1層の厚みをそれぞれ1μm、3μmおよび5μmとし、その後の熱処理を実施しない点を除き、実験9と同じ条件で作製し、第2層のポリイミドも実験9と同じ条件でコーティングしたサンプルを比較のために作製した。
【0152】
このようにして得られたサンプルについて、実験9と同様に液体窒素中で臨界電流を測定し、80℃−85RH%に保った恒温恒湿槽に100時間保管した後、再び臨界電流値を測定した。結果を表18に示す。
【0153】
【表18】
【0154】
表18より明らかなように、第1層に対して熱処理を行なわないと、上記のように臨界電流の低下が認められた。
【0155】
以上の実施例3で説明したように、この発明によれば、酸化物超電導導体の外部に2層構造からなる保護層があるため、大気中に放置しても、酸化物超電導膜は劣化することがない。
【0156】
なお、ポリイミド、ポリシラザン、エポキシを保護層としてコーティングしたサンプルを鉛筆硬度試験をJIS DO20に従い行なったところ、すべて8H以上であった。
【0157】
また、YSZ、MgO、TiBaO3 を保護層としてコーティングしたサンプルでは1H以上であった。
【0158】
<実施例4>
上記のようにAgまたはAuを第1層として厚く形成することによって第2層がなくても長期間の保存安定することが判明した。
【0159】
そこで発明者らは、次に第1層の金属と同じ金属材料を別の形成方法でコーティングする手法を行なった。
【0160】
第1層はレーザアブレーション法が望ましいが、レーザアブレーション法は中間層、酸化物の超電導層を形成する有望な方法であるため第1層を厚く形成するために装置使用時間を多く専有するのは効率的ではなかった。
【0161】
以下、第2層を湿式法で形成した酸化物超電導体について行なった実験について説明する。
【0162】
(実験16)
まず、基板として、ニッケル系の耐熱合金ハステロイC−276(熱膨張係数1.53×10-5/K、基板としての大きさ:幅10mm、長さ550mm)を用いた。この基板の上に、基板との反応を抑制するための中間層として、酸化ジルコニウム層(Yを添加したYSZ)を、ハステロイテープ上に形成できるように搬送機構を備えたマグネトロンスパッタ装置を用いて形成した。次に、この基板を搬送できる機構を備えたエキシマレーザを用いて、中間層を設置した基板上に、YBaCuO系超電導膜の形成を行なった。このときの作製条件は表8に示すものと同様であった。
【0163】
このようにして得られたサンプルを、X線回折装置で反応防止層の結晶性を調査したところ、基板に起因するピーク、中間層に起因するピークの他に、YBaCuO系超電導膜が基板に対して垂直に配向していることが確認できた。
【0164】
また、4端子法を用いて液体窒素中におけるサンプルの臨界電流を測定した結果2.92Aであった。
【0165】
測定後、臨界電流の測定に使用した電極部分を切取り、500mmの長さのサンプルとした。なお、別途作製した550mm長のサンプルで長さ方向の臨界電流を5cm間隔で調査したところ、全長の臨界電流に対しての各部分の値は3%のずれしか生じていなかった。
【0166】
上記のように作製した酸化物超電導膜サンプルに、銀をレーザアブーション法によって1μm形成した。成膜条件は表8においてターゲットを銀にしたこと、ガスをアルゴンにしたことを除いて同じ条件で行なった。
【0167】
次にAgが形成されていない面を樹脂でコーティングし乾燥した後、塩化第一スズ溶液に浸漬し前処理を行なった。
【0168】
酒石酸カリウムナトリウムを還元剤として銀液に混合させた溶液にサンプルを1時間浸漬させた。
【0169】
洗浄後Agがコーティングされていない側の樹脂をアセトンで溶解させAgメッキの厚みを測定したところ約8μmであった。
【0170】
Agメッキ8μmをした上記500mmサンプルを3分割し長さ約150mmとした。この3つのサンプルに対し、▲1▼熱処理をしない▲2▼500℃で熱処理▲3▼75℃で熱処理を行なって液体窒素中でサンプルの臨界電流を測定した。表19に示すとおり、熱処理を行なうことにより、臨界電流は向上した。
【0171】
【表19】
【0172】
上記のサンプルを常温大気中(約25℃,約40RH%)に30日放置した後、臨界電流値を測定したが、表19に示す値と同じであった。
【0173】
また、より厳しい環境として、80℃−85RH%の恒温恒湿槽に全サンプルを500時間保管した後、臨界電流を測定したが、結果は表19に示した値と同じであった。
【0174】
さらに、液体窒素中と実験室(約25℃、約40RH%)環境にサンプルを各10分間ずつ保管するヒートサイクル試験を100回繰返した。なお、液体窒素中からサンプルを取出した際は、そのまま自然乾燥とした。このヒートサイクル試験後の臨界電流を測定した結果を、表19に併せて示す。表19より明らかなように、臨界電流の低下がないことを確認した。
【0175】
(実験17)(実験16の比較例)
実験16において、酸化物超電導膜サンプル上に銀をレーザアブレーション法によって1μmの膜形成を実施しない点を除き、実験16と同じ条件で酸化物超電導膜を作製し、第2層の無電解メッキ法による銀層も実験16と同じ条件でコーティングしたサンプルを比較のために作製した。
【0176】
このようにして得られたサンプルについて、実験16と同様に液体窒素中で臨界電流を測定したところ、サンプル500mm全長にわたって臨界電流はゼロであった。
【0177】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、高い臨界電流値を有し、安定した電流輸送を行なうことができる酸化物超電導導体が得られる。また、この発明によれば、長期間の保存によってもその安定性が低下しない酸化物超電導導体が得られる。
【0178】
したがって、電流輸送容量が飛躍的に増大するため、超電導マグネットケーブル等の電力機器用導体として利用すると効果的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による一例の酸化物超電導線材の構造を示す斜視図である。
【図2】線材の先頭からの位置と臨界電流値との関係を示す図である。
【図3】銀の膜厚とコーティング部Ic/コーティングなし部Icとの関係を示す図である。
【図4】金の膜厚とコーティング部Ic/コーティングなし部Icとの関係を示す図である。
【図5】熱処理温度とコーティング部Ic/コーティングなし部Icとの関係を示す図である。
【図6】銀コート膜厚と電流リード部損焼電流との関係を示す図である。
【図7】金コート膜厚と電流リード部損焼電流との関係を示す図である。
【符号の説明】
1 ハステロイテープ
2 イットリア安定化ジルコニア層
3 Y−Ba−Cu−O系酸化物超電導膜
4 金または銀からなるコーティング膜
Claims (3)
- フレキシブルなテープ基板と、
前記テープ基板上に形成された中間層と、
前記中間層上に形成された酸化物超電導膜と、
前記酸化物超電導膜上に形成された、熱膨張係数が1×10-5/K〜5×10-5/Kの値を有し、かつ耐酸化性の金属からなる、厚さが0.5μm以上の保護層とを備え、
前記保護層の厚さが、前記酸化物超電導導体の両端の電流リードとの接続部分において、1μm以上であることを特徴とする酸化物超電導導体。 - フレキシブルなテープ基板と、
前記テープ基板上に形成された中間層と、
前記中間層上に形成された酸化物超電導膜と、
前記酸化物超電導膜上に形成された、厚さが0.5μm以上の金または銀からなる保護層とを備え、
前記保護層の厚さが、前記酸化物超電導導体の両端の電流リードとの接続部分において、1μm以上であることを特徴とする酸化物超電導導体。 - 前記保護層を第1の保護層とし、前記第1の保護層上に形成された、熱膨張係数が1×10-5/K〜5×10-5/Kの値を有するセラミックスまたはポリマーからなる第2の保護層をさらに備える請求項1または請求項2に記載の酸化物超電導導体。
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