JP3836595B2 - 重荷重用空気入りラジアル・タイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は空気入りラジアル・タイヤに関するもので、特に、建設車両用タイヤに代表される重荷重用空気入りラジアル・タイヤに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、建設車両用タイヤ等の重荷重用空気入りラジアル・タイヤのビード部には、耐久性を向上するために、ワイヤー・チェーファーやナイロン・チェーファーなどの補強材がビード部に配置され、また、ビード部外側のリムと接触する位置に配置されたゴム・チェーファーは、リムとの擦れなどによる故障発生を防止するために、特にリム離反点近傍で十分な肉厚が確保されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の建設車両用タイヤ等の重荷重用空気入りラジアル・タイヤは、上記のように、ワイヤー・チェーファーやナイロン・チェーファーなどの補強材がビード部に配置され、十分な肉厚のゴム・チェーファーが配置されていたので、タイヤの重量増加によるコストの上昇および転がり抵抗の増加、ひいては燃料消費量の増加という不具合が生じる。また、ビード部のゴム・ボリュームを極端に増加すると、ビード部の発熱が大きくなり、高熱によるゴムとコード間の接着力低下やゴム部材自体の劣化などによるビード部故障を引き起こすことになる。さらに、それだけではなく、タイヤの成型工程で、ワイヤー・チェーファーやナイロン・チェーファーなどの補強材をビード部に貼り付ける必要があり、生産性を向上する阻害要因の一つとなっていた。
これらの不具合を解消するためには、従来の建設車両用タイヤ等の重荷重用空気入りラジアル・タイヤからワイヤー・チェーファーやナイロン・チェーファーなどの補強材を除去し、ゴム・チェーファーの肉厚を薄くすることが最も手っ取り早い手段であるが、タイヤに荷重が負荷されたときにビード部のリム・フランジへの倒れ込みが大きくなり、プライ背面およびプライ端部からの亀裂が発生してセパレーション故障につながりやすくなる傾向があるという不具合が生じる。また、ビード部へのせん断入力が大きくなって、ダイアゴナル・クラック(斜め方向の亀裂)故障が発生しやすくなるという不具合が生じる。
【0004】
本発明の目的は、上記のような従来技術の不具合を解消し、ワイヤー・チェーファーやナイロン・チェーファーなどのビード部補強材を除去してコスト低減、軽量化および生産性向上を図るとともに、ビード部の肉厚や形状を適正化することによってビード部耐久性に優れた重荷重用空気入りラジアル・タイヤを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明による空気入りタイヤは、左右一対のビード部に設けられたビード・コアーと、クラウン部から両サイドを経て両ビード部に延び、該ビード・コアーをタイヤ内側から外側に向けて折り返してビード部に係留された、ラジアル・コード層よりなるカーカス・プライを備えた空気入りタイヤにおいて、
リム・フランジ円弧部に隣接してラジアル方向外側に位置するタイヤ外輪郭の曲率半径r2 がリム・フランジ円弧部の曲率半径r1 の4乃至8倍であり、
タイヤを正規リムに装着し正規内圧を充填した状態で、
リム・フランジ円弧部の中心点Qを通りタイヤ回転軸方向に延びる直線上におけるタイヤ表面からカーカス折り返し部のコード層の中心までの距離をD1 とし、正規荷重を静的に負荷したときのリム離反点Rからカーカス折り返し部のコード層の中心までの距離をD2 とし、
該リム離反点Rのレベルとタイヤ最大幅のレベルとの中間のレベルに位置するタイヤ表面の中間点Sからカーカス折り返し部のコード層の中心までの距離をD3 とし、
該中間点Sからカーカス本体のコード層の中心までの距離をD4 としたときに、(1)D2 /D1 が110乃至190%であり、
(2)該カーカス・プライの折り返し端が該中間点Sのレベルよりラジアル方向外側に位置するときはD3 /D1 が70乃至110%であり、
該カーカス・プライの折り返し端が該中間点Sのレベルよりラジアル方向内側に位置するときはD4 /D1 が125乃至180%である
ことを特徴とする重荷重用空気入りラジアル・タイヤ。
【0006】
空気入りタイヤは、それぞれのサイズに応じて、JATMA(日本)、TRA(米国)およびETRTO(欧州)などが発行する規格に定められた標準リムに装着して使用され、この標準リムが通常正規リムと称される。本明細書でもこの慣用呼称に従い、「正規リム」とは、米国のタイヤとリムの協会であるTRAが1997年度に発行したYEAR BOOKにおいて定められた、適用サイズ・プライレーティングにおける標準リムを指す。
同様に、本明細書において「正規荷重」および「正規内圧」とは、TRAが1997年度に発行したYEAR BOOKにおいて定められた、適用サイズ・プライレーティングにおける最大荷重および最大荷重に対応する空気圧を指す。
【0007】
また、本明細書では、
「カーカス・ライン」とは、タイヤを正規リムに装着し正規内圧を充填し無負荷時の状態で、タイヤの回転軸を含むタイヤ断面におけるカーカス本体の厚み中心ラインを意味し、
「カーカス本体」とは、カーカスのビード折り返し部を除いた部分であって、クラウン部から両サイドを経て両ビード部まで延びている部分を指し、
「カーカス本体とカーカス折り返し部との距離」は、カーカス・プライを形成するラジアル・コード層の中心間の距離を指す。
【0008】
一般的に言って、タイヤの負荷転動時には、ビード部にトルクによるせん断変形が生じ、タイヤの表面から内側へそのせん断変形が伝わって行くが、特に、タイヤを正規リムに装着し正規内圧を充填した状態で、正規荷重を静的に負荷したときのリム離反点Rの近傍でこのせん断変形による歪が大きくなる。
本発明のタイヤでは、上述のように、リム・フランジ円弧部に隣接してラジアル方向外側に位置するタイヤ外輪郭の曲率半径r2 がリム・フランジ円弧部の曲率半径r1 の4乃至8倍であるので、タイヤの負荷時の倒れ込みによるリム反力のリム離反点R近傍への集中が抑制される。その結果、ワイヤー・チェーファーやナイロン・チェーファーなどのビード部補強材を除去して、ゴム・チェーファーの肉厚を薄くすることが可能となり、コスト低減、軽量化および生産性向上を図るとともに、ビード部の耐久性を向上させることが可能となる。
【0009】
本発明の空気入りタイヤでは、上述のように、リム・フランジ円弧部に隣接してラジアル方向外側に位置するタイヤ外輪郭の曲率半径r2 がリム・フランジ円弧部の曲率半径r1 の4乃至8倍であるが、曲率半径r2 が曲率半径r1 の4倍より小さくなると、ワイヤー・チェーファーやナイロン・チェーファーなどのビード部補強材を除去したときに、タイヤの負荷時の倒れ込みが大きくなり、リム反力がリム離反点R近傍へ集中する。その結果、ゴム・チェーファーの肉厚を厚くする必要が生じ、それでも、セパレーション故障が発生しやすくなる。
【0010】
本発明の空気入りタイヤでは、上述のように、リム・フランジ円弧部に隣接してラジアル方向外側に位置するタイヤ外輪郭の曲率半径r2 がリム・フランジ円弧部の曲率半径r1 の4乃至8倍であるが、曲率半径r2 が曲率半径r1 の8倍より大きくなると、タイヤの負荷時の変形が大きくなり過ぎて、リム・フランジとタイヤが接触する根元でクラック故障が発生したり、または、カーカス本体の張力が極端に大きくなり、カーカス本体側でセパレーション故障が発生しやすくなり、さらにビード・コアーとカーカス・プライが擦れて故障が発生しやすくなる。
【0011】
また、本発明の空気入りタイヤでは、上述のように、リム・フランジ円弧部の中心点Qを通りタイヤ回転軸方向に延びる直線上におけるタイヤ表面からカーカス折り返し部のコード層の中心までの距離をD1 とし、正規荷重を静的に負荷したときのリム離反点Rからカーカス折り返し部のコード層の中心までの距離をD2 としたときに、距離D1 に対する距離D2 の比率D2 /D1 が110乃至190%であるが、この比率D2 /D1 が110%より小さくなると、せん断歪みを抑制する効果が極めて小さくなり、またリム・フランジ背面部の肉厚が厚くなり過ぎて、タイヤの軽量化がを図ることができなくなる。
一方、この比率D2 /D1 が190%より大きくなると、ゴム・チェーファーの肉厚が厚くなり、タイヤの軽量化を図ることができなくなる。
【0012】
また、本発明による空気入りタイヤでは、上述のように、該リム離反点Rのレベルとタイヤ最大幅のレベルとの中間のレベルに位置するタイヤ表面の中間点Sからカーカス折り返し部のコード層の中心までの距離をD3 とし、該リム離反点Rのレベルとタイヤ最大幅のレベルとの中間のレベルに位置するタイヤ表面の中間点Sからカーカス本体のコード層の中心までの距離をD4 としたときに、
カーカス・プライの折り返し端が中間点Sのレベルよりラジアル方向外側に位置するときはD3 /D1 が70乃至110%であり、
カーカス・プライの折り返し端が中間点Sのレベルよりラジアル方向内側に位置するときはD4 /D1 が125乃至180%である。
これは、
カーカス・プライの折り返し端が中間点Sのレベルよりラジアル方向外側に位置するときはD3 /D1 が70%より小さいと、外部からのカット入力に対し不利となって他の故障が発生しやすくなり、また、
カーカス・プライの折り返し端が中間点Sのレベルよりラジアル方向内側に位置するときはD4 /D1 が125%より小さいと、折り返し端上部のスペースが確保されなくなるので、125%以上が必要となる。
一方、D3 /D1 が110%より大きくなる、または、D4 /D1 が180%より大きくなると、ゴム・チェーファーの肉厚が厚くなり、タイヤの軽量化を図ることができなくなる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、本発明に基づく実施例1乃至4の重荷重用空気入りラジアル・タイヤおよび従来例の重荷重用空気入りラジアル・タイヤについて説明する。タイヤ・サイズは、いずれも、20.5R25である。TRAが1997年度に発行したYEAR BOOKによれば、タイヤ・サイズ20.5R25に相当する正規リムは25×17.00/2.0で、正規内圧は500kPaで、正規荷重は9500kgである。
【0014】
図1は本発明に従う実施例1の重荷重用空気入りラジアル・タイヤの一方のビード部の部分断面略図である。
実施例1の重荷重用空気入りラジアル・タイヤは、左右一対のビード部に設けられたビード・コアー1と、クラウン部から両サイドを経て両ビード部に延び、ビード・コアー1をタイヤ内側から外側に向けて折り返してビード部に係留された、ラジアル・コード層よりなるカーカス・プライ2と、ゴム・チェーファー3とを備えている。
リム・フランジ円弧部に隣接してラジアル方向外側に位置するタイヤ外輪郭の曲率半径r2 がリム・フランジ円弧部の曲率半径r1 の4.2倍で、換言すればこれらの曲率半径の比r1 /r2 が0.24である。
実施例1の重荷重用空気入りラジアル・タイヤを正規リム25×17.00/2.0に装着し正規内圧500kPaを充填した状態で、リム離反点Rからカーカス折り返し部22のコード層の中心までの距離D2 がリム・フランジ円弧部の中心点Qを通りタイヤ回転軸方向に延びる直線上におけるタイヤ表面からカーカス折り返し部22のコード層の中心までの距離D1 の115%であり、カーカス・プライ2の折り返し部22の端部が中間点Sのレベルよりラジアル方向外側に位置していて、リム離反点Rのレベルとタイヤ最大幅のレベルとの中間のレベルに位置するタイヤ表面の中間点Sからカーカス折り返し部22のコード層の中心までの距離D3 がタイヤ表面からカーカス折り返し部22のコード層の中心までの距離D1 の85%である。
【0015】
実施例2の重荷重用空気入りラジアル・タイヤは、
リム離反点Rからカーカス折り返し部22のコード層の中心までの距離D2 がリム・フランジ円弧部の中心点Qを通りタイヤ回転軸方向に延びる直線上におけるタイヤ表面からカーカス折り返し部22のコード層の中心までの距離D1 の170%である
ことを除いて、上記の実施例1の重荷重用空気入りラジアル・タイヤとほぼ同じタイヤである。
実施例3の重荷重用空気入りラジアル・タイヤは、
リム・フランジ円弧部に隣接してラジアル方向外側に位置するタイヤ外輪郭の曲率半径r2 がリム・フランジ円弧部の曲率半径r1 の5.9倍で、換言すればこれらの曲率半径の比r1 /r2 が0.17であり、
リム離反点Rのレベルとタイヤ最大幅のレベルとの中間のレベルに位置するタイヤ表面の中間点Sからカーカス折り返し部22のコード層の中心までの距離D3 がタイヤ表面からカーカス折り返し部22のコード層の中心までの距離D1 の90%である
ことを除いて、上記の実施例1の重荷重用空気入りラジアル・タイヤとほぼ同じタイヤである。
従来例の重荷重用空気入りラジアル・タイヤは、
リム・フランジ円弧部に隣接してラジアル方向外側に位置するタイヤ外輪郭の曲率半径r2 がリム・フランジ円弧部の曲率半径r1 の2.5倍で、換言すればこれらの曲率半径の比r1 /r2 が0.40であり、
リム離反点Rからカーカス折り返し部22のコード層の中心までの距離D2 がリム・フランジ円弧部の中心点Qを通りタイヤ回転軸方向に延びる直線上におけるタイヤ表面からカーカス折り返し部22のコード層の中心までの距離D1 の250%であり、
リム離反点Rのレベルとタイヤ最大幅のレベルとの中間のレベルに位置するタイヤ表面の中間点Sからカーカス折り返し部22のコード層の中心までの距離D3 がタイヤ表面からカーカス折り返し部22のコード層の中心までの距離D1 の125%である
ことを除いて、上記の実施例1の重荷重用空気入りラジアル・タイヤとほぼ同じタイヤである。
【0016】
上記実施例1乃至3の重荷重用空気入りラジアル・タイヤおよび上記従来例の重荷重用空気入りラジアル・タイヤについて、ビード部耐久性能の比較試験を実施した。
この比較試験は、正規内圧500kPaを供試タイヤに充填し、8km/hの速度で室内ドラム試験機による耐久試験であり、荷重はステップ・ロード方式とし、第一ステップは正規荷重9500kgの150%を負荷して3×24時間走行、第二ステップは正規荷重の170%負荷でさらに3×24時間走行、第三ステップは正規荷重の190%負荷の状態でさらに3×24時間走行、以降第三ステップと同一条件で故障が発生するまで走行させるという試験条件である。
【0017】
上記の比較試験の結果、故障が発生するまで走行時間を、上記従来例のタイヤを100として指数表示で示すと、上記実施例1のタイヤは116で、上記実施例2のタイヤは121で、上記実施例3のタイヤは120であった。数字が大きいほどビード部耐久性能が優れていることを示している。
【0018】
上記の比較試験の結果を、供試タイヤの概要とともに表1に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
【発明の効果】
上記の表1に示す比較試験の結果から、本発明による実施例1乃至4の重荷重用空気入りラジアル・タイヤは従来例の重荷重用空気入りラジアル・タイヤに比べ、ビード部耐久性に優れたタイヤであることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による空気入りタイヤのビード部の断面略図である。
【符号の説明】
1 ビード・コアー
2 ラジアル・カ−カス
21 カ−カス本体
22 カ−カス折り返し部
3 ゴム・チェーファー
Q リム・フランジ円弧部中心点
R リム離反点
S 中間点
Claims (1)
- 左右一対のビード部に設けられたビード・コアーと、クラウン部から両サイドを経て両ビード部に延び、該ビード・コアーをタイヤ内側から外側に向けて折り返してビード部に係留された、ラジアル・コード層よりなるカーカス・プライを備えた空気入りタイヤにおいて、
リム・フランジ円弧部に隣接してラジアル方向外側に位置するタイヤ外輪郭の曲率半径r2 がリム・フランジ円弧部の曲率半径r1 の4乃至8倍であり、
タイヤを正規リムに装着し正規内圧を充填した状態で、
リム・フランジ円弧部の中心点Qを通りタイヤ回転軸方向に延びる直線上におけるタイヤ表面からカーカス折り返し部のコード層の中心までの距離をD1 とし、正規荷重を静的に負荷したときのリム離反点Rからカーカス折り返し部のコード層の中心までの距離をD2 とし、
該リム離反点Rのレベルとタイヤ最大幅のレベルとの中間のレベルに位置するタイヤ表面の中間点Sからカーカス折り返し部のコード層の中心までの距離をD3 とし、
該中間点Sからカーカス本体のコード層の中心までの距離をD4 としたときに、(1)D2 /D1 が110乃至190%であり、
(2)該カーカス・プライの折り返し端が該中間点Sのレベルよりラジアル方向外側に位置するときはD3 /D1 が70乃至110%であり、
該カーカス・プライの折り返し端が該中間点Sのレベルよりラジアル方向内側に位置するときはD4 /D1 が125乃至180%である
ことを特徴とする重荷重用空気入りラジアル・タイヤ。
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