JP3836002B2 - 電子部品実装用フィルムキャリアテープの製造方法及び製造装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、たとえばCSP(Chip Size Package)、BGA(Ball Grid Array)のように実装される電子部品とほぼ同等の面積に外部と接続するための端子が形成された電子部品実装用フィルムキャリアテープを製造する方法およびその製造装置に関する。さらに詳しくは本発明は、実装される電子部品がフィルムキャリアに形成されたスリットを介してボンディングされるタイプの電子部品実装用フィルムキャリアテープの製造方法およびこの製造方法に使用される製造装置に関する。
【0002】
【従来技術】
電子機器の小型軽量化に伴い、電子機器に使用するためのフィルムキャリアも小型化しており、CSP(Chip Size Package)、BGA(Ball Grid Array)のように、実装される電子部品と実装基板とがほぼ同等の面積を占有する配線基板技術が利用されている。
【0003】
このようなフィルムキャリアには、可撓性絶縁フィルムの一方の面に電子部品を貼着し、他方の面に配線パターンを形成し、可撓性絶縁フィルムにスリットを形成して、電子部品と配線パターンとこのスリットを介してワイヤーボンディングすることにより、電子部品を実装するタイプのものがある。このスリットは、配線パターンなどを形成する前に穿設することが好ましいが、フィルムキャリアの構成上、配線パターンを形成した後電子部品を実装する前に穿設せざるを得ない場合がある。
【0004】
このように最後にスリットを形成する場合、フィルムキャリアには既に配線パターンが形成され、端子部分を除く配線パターン部分はソルダーレジスト層により被覆されている。スリットは、フィルムキャリアを基台金型の上に載置して固定した後、打抜き金型を押し下げて穿設されるが、上述のように配線パターンが形成され、その配線パターンがソルダーレジストで被覆され、可撓性絶縁フィルムの裏面に接着剤層が形成されているフィルムキャリアに打抜き金型を用いてスリットを形成すると、打抜き金型によりフィルムキャリアを形成する各層が打ち抜き金型側に引き寄せられることがある。特に接着剤層が弾性を有する場合には、その傾向が大きくなる。
【0005】
その結果、フィルムキャリアを形成する可撓性の低い層、即ち熱硬化性樹脂が硬化することにより形成されているソルダーレジスト層にクラックが発生することがある。このようにソルダーレジスト層にクラックが発生したフィルムキャリアは使用することができないばかりでなく修復も極めて困難であり、廃棄せざるを得ないのが現状である。
【0006】
【発明の目的】
本発明は、ソルダーレジスト層を形成後にスリットを形成する電子部品実装用フィルムキャリアテープを製造する方法であって、スリットの形成によってフィルムキャリアが損傷を受けにくい電子部品実装用フィルムキャリアテープの製造方法を提供することを目的としている。
【0007】
また、本発明は、このように最後にスリットを形成する際に、フィルムキャリアに損傷を与えにくい電子部品実装用フィルムキャリアテープの製造装置を提供することを目的としている。
【0008】
【発明の概要】
本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープの製造方法は、
可撓性絶縁フィルムの一方の面に積層された導電性金属箔を選択的にエッチングして所定形状の配線パターンを形成し、該配線パターンの表面にソルダーレジスト層を形成し、他方、該可撓性絶縁フィルムの配線パターンが形成されていない可撓性絶縁フィルムの表面に電子部品を仮固定する接着剤層を形成し、次いで、該接着剤層によって仮固定される電子部品に形成されている電極とフィルムキャリアに形成された電極とを電気的に接続するためのスリットを形成する工程を有する電子部品実装用フィルムキャリアテープの製造方法において、
少なくとも上記電子部品実装用フィルムキャリアテープに打抜き形成されるスリットの周縁部を、上型とは独立して形成され、打抜き金型を下降させることにより上型に対して弾性部材によって付勢された固定治具により基台金型に140〜180g/cm2の範囲内の圧力で基台金型に押圧しながら、打抜き金型でスリット形成部を打抜いて該電子部品実装用フィルムキャリアテープと電子部品に形成された電極とを電気的に接続するためのスリットを形成することを特徴としている。
【0009】
また、本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープの製造方法で好適に使用される製造装置は、基台金型と、該基台金型の上面に電子部品実装用フィルムキャリアテープを載置し、少なくとも該電子部品実装用フィルムキャリアテープのスリット打抜き部分の周縁部を、上型とは独立して形成され、打抜き金型を下降させることにより上型に対して弾性部材によって付勢された固定治具により基台金型に140〜180g/cm2の範囲内の圧力で押圧して固定する縁部加圧手段と、該基台金型に対して接近・離隔運動して該電子部品実装用フィルムキャリアテープにスリットを形成する打抜き金型とを有することを特徴としている。
【0010】
例えば上記のような装置を用いた本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープの製造方法によれば、少なくともスリットを形成する部分の縁部を他の部分よりも高い押圧で基台金型に押し付けてスリットを形成しているので、打抜き金型によりフィルムキャリアが変形することが少ないので、ソルダーレジスト層にクラックが発生するのを有効に防止できる。また、上記のような押圧でフィルムキャリアを基台金型に押し付け固定してもこの圧力によってフィルムキャリアが変形することはない。
【0011】
【発明の具体的な説明】
次に本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープの製造方法およびこの方法に使用される製造装置について図面に基づいて具体的に説明する。
図1は、本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープの製造方法においてスリットを形成する工程の例を模式的に示す断面図である。図2は、本発明の方法で製造される電子部品実装用フィルムキャリアテープに電子部品を実装した例を示す断面図である。図3は、電子部品を仮固定するための接着剤層が形成された後、スリットを打抜き形成する際にソルダーレジスト層にクラックが生ずる機構の例を模式的に説明する図である。
【0012】
本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープの製造方法は、実装される電子部品と略同一の面積の絶縁フィルムに外部端子形成部を有する配線パターンを形成した後、このフィルムキャリアテープに電子部品を実装するためのスリットを形成する工程固定治具を有している。
本発明の方法で電子部品実装用フィルムキャリアテープ10を製造するに際しては、図2に示すように、まず、絶縁フィルム11のスプロケットホール12などの必要な貫通孔を形成する。
【0013】
本発明の方法で使用される絶縁フィルム11は、可撓性を有すると共に、エッチングする際に酸などと接触することからこうした薬品に侵されない耐薬品性、および、ボンディングする際の加熱などによっても変質しないような耐熱性を有している。このような絶縁フィルム11を形成する素材の例としては、ポリエステル、ポリアミド、液晶ポリマーおよびポリイミドなどを挙げることができる。特に本発明ではポリイミドからなるフィルムを用いることが好ましい。
【0014】
絶縁フィルム11を構成するポリイミドフィルムの例としては、ピロメリット酸2無水物と芳香族ジアミンとから合成される全芳香族ポリイミド、ビフェニルテトラカルボン酸2無水物と芳香族ジアミンとから合成されるビフェニル骨格を有する全芳香族ポリイミドを挙げることができる。特に本発明ではビフェニル骨格を有する全芳香族ポリイミド(例;商品名:ユーピレックスS、宇部興産(株)製)が好ましく使用される。この方法で使用可能な絶縁フィルム11の厚さは、通常は7.5〜125μm、好ましくは25〜75μmの範囲内にある。
【0015】
このような絶縁フィルム11の両縁部近傍に、この絶縁フィルム11を装置内で移送するためのスプロケットホール12を多数形成する。また、フィルムキャリアの位置決め孔、リードの切断孔(図示なし)などの必要な貫通孔も同時に穿設する。このような貫通孔は、通常はパンチングにより形成される。
上記のように各種貫通孔あるいはスリットなどが形成された絶縁フィルム11の一方の面に導電体金属箔を積層する。
【0016】
本発明では、導電性金属箔として、導電性を有し、厚さが通常は3〜35μm、好ましくは9〜25μmの範囲内にある金属箔を使用することができる。具体的には、導電性を有する金属箔の例としては、銅箔、アルミニウム箔などを挙げることができる。ここで使用される銅箔には、電解銅箔と圧延銅箔とがあるが、エッチング特性、操作性などを考慮すると電解銅箔を使用することが好ましい。
【0017】
なお、配線パターンを形成する導電性金属箔は、通常は絶縁フィルム11の一方の面に積層されるが、この導電性金属箔は接着層13を介して絶縁フィルム11の表面に積層することもできるし、こうした接着層を介することなく積層することもできる。
こうして絶縁フィルム11の一方の面に導電性金属箔を積層し、次いでこの導電性金属箔表面にフォトレジストを塗布し、このフォトレジストに形成しようとする配線パターンと同一のパターンを露光現像することにより形成し、このフォトレジストにより形成されたパターンをマスキング材として導電性金属箔をエッチングして所望の配線パターン16を形成する。
【0018】
このようにして形成された配線パターン16の表面には、電子部品30を電気的に接続するインナーリード17および電子部品30をこのフィルムキャリアを介して外部と接続するための外部端子形成部18を除いてソルダーレジスト層20が形成されており、このソルダーレジスト層20により配線パターン16の表面が保護されている。
【0019】
ソルダーレジスト層20を形成する場合に使用されるソルダーレジスト塗布液は、硬化性樹脂が有機溶媒に溶解若しくは分散された比較的高粘度の塗布液である。このようなソルダーレジスト塗布液中に含有される硬化性樹脂の例としては、エポキシ系樹脂、エポキシ系樹脂のエラストマー変性物、ウレタン樹脂、ウレタン樹脂のエラストマー変性物、ポリイミド樹脂、ポリイミド樹脂のエラストマー変性物およびアクリル樹脂を挙げることができる。特にエラストマー変性物を使用することが好ましい。このようなソルダーレジスト塗布液中には、上記のような樹脂成分の他に、硬化促進剤、充填剤、添加剤、チキソ剤および溶剤等、通常ソルダーレジスト塗布液に添加される物質を添加することができる。さらに、ソルダーレジスト層20の可撓性等の特性を向上させるために、ゴム微粒子のような弾性を有する微粒子などを配合することも可能である。
【0020】
このようなソルダーレジスト塗布液は、スクリーン印刷技術を利用して塗布することができる。ソルダーレジスト塗布液は、次の工程でメッキ処理される部分を除いて塗布される。このようなソルダーレジストの塗布平均厚さは、通常は1〜80μm、好ましくは5〜50μmの範囲内にある。
こうしてソルダーレジスト塗布液を塗布した後、溶剤を除去し、樹脂を硬化させることによりソルダーレジスト層20を形成する。ソルダーレジストを形成する樹脂は、通常は加熱硬化する。このソルダーレジスト層を形成するための加熱硬化温度は、通常は80〜180℃、好ましくは120〜150℃であり、この範囲内の温度に通常は30分〜3時間保持することにより樹脂が硬化する。
【0021】
このようにして形成されたソルダーレジスト層20は、絶縁フィルム11表面に形成されている配線パターン16を保護することから、硬質の樹脂によって形成されており、例えばこのソルダーレジスト層20に応力がかかると、図3に示すようにクラック44が形成されることがある。こうしたクラック44が形成されたソルダーレジスト層20は、配線パターン16を充分に保護することはできない。
【0022】
なお、通常はソルダーレジスト層を形成した後、このソルダーレジスト層によって被覆されていない配線パターン部分(リード部など)は、メッキ処理される。このメッキ処理には、錫メッキ、はんだメッキ、金メッキ、ニッケル/金メッキなどを挙げることができる。
一方、上記のように配線パターン16が形成され、さらにこの表面にソルダーレジスト層20が形成されている絶縁フィルム11の反対側の面には、電子部品30を仮固定するための接着剤層14が形成されており、この接着剤層14の表面には、電子部品30が仮固定のために貼着されるまでは、保護フィルム15が剥離可能に貼着されその表面を被覆している。
【0023】
この接着剤層14に電子部品30を貼着して仮固定した後、この電子部品に形成されている電極(例えば、電極パット)31と絶縁フィルム11に形成されている配線パターン16の先端部であるインナーリード17とを電気的に接続する。従って、この接着剤層14は電子部品30の位置合わせなどのためにある程度の可撓性を有していることが好ましく、また、電子部品30を仮固定のために貼着する際にこの接着剤層14はある程度の弾性を有していることが望ましい。
【0024】
実装される電子部品30には、ボンディング用スリット19に対応する位置にボンディング用の接続パット31が形成されている。この電子部品30は、絶縁フィルム11の配線パターン16が形成されていない面に積層されている接着剤層14から保護フィルム15を剥離して接着剤により仮固定した後、ボンディング用スリット19に露出しているボンディング用パット31と、電子部品実装用フィルムキャリアテープ10に形成されているボンディング用スリット18の縁部に形成されているインナーリード17とが導電性細線18で電気的に接続されることによりフィルムキャリアに実装される。
【0025】
例えば上記のような構成を有する電子部品実装用フィルムキャリアテープ10では、電子部品30のボンディング用のパット31とインナーリード17とを導電性細線21により電気的に接続するためにスリット19を形成するが、このスリット17は、絶縁フィルム11に配線パターン16およびこの配線パターン16表面にソルダーレジスト層20を形成し、この絶縁フィルム11の裏面に電子部品30仮接着用の接着剤層14を保護フィルム15と共に積層した後にフィルムキャリアテープのスリット形成部を打抜き金型で打抜くことにより形成される。
【0026】
ところがこのフィルムキャリアテープには、スリットを形成する前に電子部品30仮接着用の接着剤層14が既に形成されており、この接着剤層14は、電子部品30を、可撓性の高いフィルムキャリアに仮固定することから、弾性がありかつ軟質であることが望ましい。しかしながら、このような弾性がありかつ軟質の接着剤からなる接着剤層14を配置した状態でスリットを形成しようとすると、例えば図3に示すように、打抜き金型42を下方に押し下げてスリットを形成する際に、接着剤層14が圧縮され、電子部品実装用フィルムキャリアテープ10のソルダーレジスト層20を除く各層が打抜き金型42の下方移動に追随して、基台金型40に形成されているポンチ穴43内に引っ張りこまれることがある。一方、ソルダーレジスト層20は、スリットの縁部にインナーリード17が形成されていることから、打抜き金型42とは接触していないと共に、このフィルムキャリアテープ10を固定するための上型41によって基台金型40方向に押され、上型41と基台金型40とによって挟持されている。このためソルダーレジスト層20が打抜き金型42の移動によって、ポンチ孔43内に引き込まれることはなくまたソルダーレジスト層20の上端部は上型41と接触しており変形することはないが、インナーリード17が形成されている部分の接着剤層14が打抜き金型42の移動に伴ってポンチ孔43内に引き込まれると、この接着剤層14が薄くなりソルダーレジスト層20の配線パターン16に接している部分近傍に下方向およびポンチ孔43方向へ変形させようとする応力が生ずる。
【0027】
一般にソルダーレジスト層20は硬化性樹脂で形成されており、この硬化性樹脂の硬化体からなるソルダーレジスト層20は、上記のような打抜き金型42によるスリット19の形成の際に生ずる上記のような層の変形に追随するような可撓性を有していない。このため打抜き金型42の移動によって、最も可撓性の低いソルダーレジスト層20に例えば図3に示すようなクラック44が生じ、このようにソルダーレジスト層20にクラック44が生じたフィルムキャリアでは、配線パターン16の保護が不完全になる。上記のようなクラック44は、電子部品30を仮固定するための接着剤層14を形成した後に、上記のようにしてスリット19を打抜き形成した場合に生じ、接着剤層14を形成する前にスリット19を形成するとこのようなクラック44はほとんど生じない。
【0028】
本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープの製造方法は、上述のように電子部品30を仮固定するための接着剤層14をスリットの穿設前に形成した電子部品実装用フィルムキャリアテープを製造する際に特に顕著に生ずる問題である。そして、このような接着剤層14を形成されていない電子部品について、上記と同様にしてスリットを形成してもソルダーレジスト層20にクラックはほとんど発生しない。
【0029】
本発明では、スリットを形成する際にソルダーレジスト層に応力によってソルダーレジスト層20にクラックが生じないようにこのソルダーレジスト層を打抜き金型により打ち抜く際に、このソルダーレジスト層20の下部にある層をポンチ孔43方向に移動する力に抗し得る圧力で基台金型に押し付けながらスリットを形成する。このために本発明で使用するスリット形成装置には、電子部品実装用フィルムキャリアテープを基台金型に所定の圧力で押圧して固定する縁部加圧手段が設けられている。
【0030】
図1には、本発明で採用可能な縁部加圧手段を配置したスリット形成装置の例が示されている。
即ち、図1には、ポンチ孔43を備えた基台金型40と、この基台金型40に電子部品実装用フィルムキャリアテープを載置してスリットを打抜き形成する際にこの電子部品実装用フィルムキャリアテープ全体を押さえるための上型41を有するスリット形成装置が示されている。そして、この上型41には、電子部品実装用フィルムキャリアテープを所定の押圧で基台金型40に押し付ける固定治具45が配置されている。この固定治具45は、上型41とは独立して電子部品実装用フィルムキャリアテープを基台金型に押付けて固定可能に形成されている。具体的には、固定治具45は上型41にバネのような弾性部材46を介して接合されている。この固定治具45の下端面は、基台金型40と上型41との間にスリットを形成しようとする電子部品実装用フィルムキャリアテープ10を配置して、上型41を基台金型40方向に移動させて電子部品実装用フィルムキャリアテープ10を固定する際に、この固定治具45が最初に電子部品実装用フィルムキャリアテープに接触する。さらに、上型を下方に移動させると、弾性部材46によって下方に付勢された固定治具45は、さらにフィルムキャリアテープ10を強く基台金型40に押し付ける。そして、上型41が所定の圧力で基台金型40の上表面に載置された電子部品実装用フィルムキャリアテープ10と接触すると上型41の下降は停止する。
【0031】
固定治具45が電子部品実装用フィルムキャリアテープ10を基台金型に押し付ける圧力は、通常は40〜200g/cm2の範囲内、好ましくは140〜180g/cm2の範囲内、特に好ましくは150〜170g/cm2の範囲内にあるので、スリットを形成する周縁部は、固定治具によって押圧されていない部分の1〜6.7倍、好ましくは4.7〜6倍、特に好ましくは5〜5.7倍の押圧で電子部品実装用フィルムキャリアテープを基台金型40に押し付けている。
【0032】
このようにして基台金型40に電子部品実装用フィルムキャリアテープを載置して、上型41を基台金型40まで下降させて電子部品実装用フィルムキャリアテープを固定すると共に、スリットを形成する部分の周囲を固定治具45あるいは硬質押付け部材47で基台金型40に上記所定の圧力で押し付ける。次いで、図1(1)および(2)に示すように、上型41に形成された打抜き金型42を基材金型40に形成されているポンチ孔43に至るまで下降させて電子部品実装用フィルムキャリアテープ10に打抜きスリットを形成する。そして、この上型41に形成された打抜き金型42を上型41と共に上昇させることにより、スリット19が形成された電子部品実装用フィルムキャリアテープを形成することができる。このときに打抜き金型42が下降して電子部品実装用フィルムキャリアテープの接着剤層14をパンチ孔に引き込むことによりソルダーレジスト層20にかかる応力は、スリット形成部近傍の変形が少ないので、小さくなり、従ってクラックの発生が防止できる。すなわち、スリット形成部の縁部が、縁部加圧手段45によって基台金型40に上記圧力によって押し付けられているので、接着剤層14が引き出されてソルダーレジスト層20に過度の応力がかかることがなく、従ってそのソルダーレジスト層20にクラックなどが発生することがない。
【0033】
また、本発明で使用するスリット形成装置は、従来の打抜き装置のバネなどの弾性部材によって賦勢された固定治具を変更するだけであり、このスリット形成装置の改良することによって実質的に製品のコストは変動しない。
このスリット形成装置の打抜き金型42は、形成しようとするスリットの幅および長さに対して、通常は85〜105%、好ましくは90〜105%の幅および長さを有している。このような長さを有する打抜き金型を使用することにより、形成されたスリットの壁面の打抜き荒れが少なくなる。
【0034】
上記のようにしてスリットが形成された電子部品実装用フィルムキャリアテープは、接着剤層14の表面に貼着されている保護フィルムをはがして電子部品を貼着して、電子部品30に形成されているパット31がスリット19から露出するように位置合わせを行い電子部品を仮固定する。次いで、金線などの導電性細線21で、パット31とスリット19の縁部に形成されている電極とを電気的に接続する。具体的にはたとえば25μm程度の金線などを用いて、熱及び超音波を用いてパット31とスリット19の縁部に形成されたインナーリードとを接続する。スリットの縁部に形成されたインナーリードはソルダーレジスト層20によって保護された配線パターン16で外部端子形成部18に接続している。この外部端子接続部18には、例えば、ハンダボールなどを配置して電子部品30を外部の装置に接続可能にする。
【0035】
本発明の製造方法では、スリットを形成する際に、スリットを打抜き形成する部分の縁部に所定の圧力をかけて電子部品実装用フィルムキャリアテープを基台金型に押し付けながらスリットを形成している。このときの押付け圧力は高い値であり、高い圧力で電子部品実装用フィルムキャリアテープを押し付けることにより、ソルダーレジスト層にクラックが発生するのを有功に防止することができる。また、このような圧力でスリット形成部の縁部を押さえつけることによっても、この圧力によって、配線パターンなどこの押さえつけられた部分に断線などが発生することはなく、非常に安定してスリットを形成することができる。
【0036】
さらに、本発明の製造方法で使用することが可能な打抜き装置は、種々改変することができる。例えば、打抜き金型42は、上型41に取外し可能に固定されていてもよい。また、上型41を配置することなく、さらに、固定治具45と打抜金型42の加圧手段とを別々に制御可能にして、固定治具45による押し付け圧力を本発明で規定する範囲内に制御しながら、打抜金型42でスリットを形成することもできる。
【0037】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、絶縁フィルムの一方の面に配線パターンが形成され、この配線パターンの表面にソルダーレジスト層が形成され、他方、絶縁フィルムの配線パターンが形成されていない面には、電子部品を仮固定するための柔軟で可撓性の高い接着剤層が形成されている電子部品実装用フィルムキャリアテープに電子部品の電極パットとフィルムキャリアのリードとを電気的に接続するためのスリットを打ち抜き形成するに際して、スリット形成予定部の周縁部が特定の圧力で基台金型に押し付けられているために、スリットを形成するための打ち抜き金型を押し下げても絶縁フィルムに設けられた接着剤層が打ち抜き金型によってポンチ孔方向に引き出されることがなく、従って、硬質でクラックが発生しやすいソルダーレジスト層にかかる応力を低減することができる。
【0038】
また、このようにフィルムキャリアのスリット形成予定部の周縁部を上記所定の圧力で基台金型に押し付けることによっても、配線パターン、ソルダーレジスト層など、フィルムキャリアを構成する他の構成要素には全く影響がない。
さらに、本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープの製造装置は、打ち抜き金型の周縁部に電子部品実装用フィルムキャリアテープのスリット打抜き部分の周縁部を基台金型に所定の圧力で押圧して固定する縁部加圧手段を配置してなり、従来のスリット形成装置を用いて比較的容易に製造することができるにも拘らず、この装置を用いることにより、ソルダーレジスト層にクラックを発生させることなく、裏面に電子部品仮固定用の接着剤層を有する電子部品実装用フィルムキャリアテープに安定にスリットを形成することができる。
【0039】
【実施例】
次の本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープの製造方法およびこの方法に使用する装置について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0040】
【実施例1】
図2に示すように、一方の面に12μm厚のエポキシ系接着剤を塗布した厚さ75μm、幅35mm、長さ100mのポリイミドフィルム(商品名:ユーピレックスS、宇部興産(株)製)からなる絶縁フィルムの両縁部に所定間隔でスプロケットホールをパンチングにより形成した。
【0041】
次いで、このポリイミドフィルムに厚さ18μmの電解銅箔をラミネートした。
こうして積層された電解銅箔の表面にフォトレジストを塗布し、露光、現像し、残存するフォトレジストをマスキング材として電解銅箔をエッチングすることにより配線パターンを絶縁フィルムの一方の面に形成した。なお、エッチング後、フォトレジストからなるマスキング材はアルカリ洗浄により除去した。
【0042】
こうして形成された配線パターンの表面に、リード部を残してエポキシ系ソルダーレジストを塗布した。
このフィルムキャリアテープにスルファミン酸ニッケル浴で2.0μmの電気ニッケルメッキ層を形成した後、このフィルムキャリアテープを金メッキ槽に移行させて金の電気メッキを行った。
【0043】
上記のように金メッキすることで、電子部品側接続端子のワイヤーボンディングされる端子の表面および外部端子接続部に、平均厚さ0.3μmの金メッキ層を形成した。
これとは別に、ポリエチレンテレフタレートフィルム(平均厚さ:25μm)の一方の面にエポキシ系熱硬化性接着剤を平均塗布厚50μmの厚さで塗布した接着剤フィルムを調製した。
【0044】
この接着剤フィルムと上記のようにして形成された一方の面に配線パターンが形成された絶縁フィルムとを絶縁フィルムの配線パターンが形成されていない面と接着剤フィルムのエポキシ系熱硬化性接着剤とが対面するように配置して加熱圧着することにより絶縁フィルムの配線パターンが形成されていない面にポリエチレンテレフタレートフィルムからなる剥離層付の接着剤層を形成した。
【0045】
こうして接着剤層が形成されたフィルムキャリアを接着剤層が基台金型に面するように配置して固定治具でフィルムキャリア全体を押さえると共に、図1に示すようにスリット形成予定部を固定治具を用いて160g/cm2の圧力で基台金型に押し付けた。次いで、打ち抜き金型を下降させてフィルムキャリアのスリット形成部を打ち抜いてスリットを形成した。スリットの打ち抜きに使用した打ち抜き金型は、スリット形成後上昇させ、さらに上型を上昇させて次の工程に備えた。
【0046】
こうして形成された電子部品実装用フィルムキャリアテープのソルダーレジスト層を光学顕微鏡で観察したが、クラックの発生は認められなかった。また、固定治具による押し付けによっても配線パターンなどに断線などは認められなかった。
上記のようにして10000個のフィルムキャリアを製造したが、得られたフィルムキャリアのソルダーレジスト層にクラックは認められなかった。
【0047】
【比較例1】
実施例1において、バネの強さを30g/cm2にした以外は、同様にしてフィルムキャリアを製造した。
こうして製造したフィルムキャリアについてソルダーレジスト層におけるクラックの発生数を実施例と同様にして測定した結果、10000個のフィルムキャリア中、10000個のフィルムキャリアに明らかにスリットを形成した際に生じたと思われるクラックが認められた。
【0048】
【参考例1】
実施例1において、接着剤層を形成しないフィルムキャリアについて、上記実施例1と同様にしてスリットを形成したが、ソルダーレジスト層にクラックは発生しなかった。この結果から、ソルダーレジスト層にクラックが発生するのは、接着剤層が敷設されたソルダーレジスト層に特異的に見られる現象であることがわかる。そして、実施例1で敷設した接着剤層がエポキシ系熱硬化性接着剤からなる比較的軟質の接着剤であり、スリットを形成する際に打ち抜き金型によってこの接着剤層がポンチ孔側に引き出されてソルダーレジスト層に応力が加わることにより、ソルダーレジスト層にクラックが発生するものであると推定される。
【0049】
【実施例2、3】
実施例1において、固定治具によるに押し付け圧を180g/cm2(実施例2)および140g/cm2(実施例3)に変えた以外は同様にしてスリットを打ち抜き形成してフィルムキャリアテープを製造した。
得られたフィルムキャリア10000個のソルダーレジスト層を実施例1と同様にして観察したが、クラックの発生は認められなかった。
【0050】
また、上記のようにして固定治具でフィルムキャリアを押さえつけながらスリットを打ち抜き形成したことに伴う配線パターンの切断など、電気的および外見的な不具合は認められなかった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープの製造方法においてスリットを形成する工程の例を模式的に示す断面図である。
【図2】 図3は、本発明の方法で製造される電子部品実装用フィルムキャリアテープに電子部品を実装した例を示す断面図である。
【図3】 図3は、電子部品を仮固定するための接着剤層が形成された後、スリットを打抜き形成する際にソルダーレジスト層にクラックが生ずる機構の例を模式的に説明する図である。
【符号の説明】
10・・・電子部品実装用フィルムキャリアテープ
11・・・絶縁フィルム
12・・・スプロケットホール
13・・・接着層
14・・・接着剤層
15・・・保護フィルム
16・・・配線パターン
17・・・インナーリード
18・・・外部端子形成部
19・・・ボンディング用スリット
20・・・ソルダーレジスト層
21・・・導電体細線
30・・・電子部品
31・・・接続パット
40・・・基台金型
41・・・上型
42・・・打ち抜き金型
43・・・ポンチ穴
44・・・クラック
45・・・固定治具
46・・・弾性部材
Claims (8)
- 可撓性絶縁フィルムの一方の面に積層された導電性金属箔を選択的にエッチングして所定形状の配線パターンを形成し、該配線パターンの表面にソルダーレジスト層を形成し、他方、該可撓性絶縁フィルムの配線パターンが形成されていない可撓性絶縁フィルムの表面に電子部品を仮固定する接着剤層を形成し、次いで、該接着剤層によって仮固定される電子部品に形成されている電極とフィルムキャリアに形成された電極とを電気的に接続するためのスリットを形成する工程を有する電子部品実装用フィルムキャリアテープの製造方法において、
少なくとも上記電子部品実装用フィルムキャリアテープに打抜き形成されるスリットの周縁部を、上型とは独立して形成され、打抜き金型を下降させることにより上型に対して弾性部材によって付勢された固定治具により基台金型に140〜180g/cm2の範囲内の
圧力で基台金型に押圧しながら、打抜き金型でスリット形成部を打抜いて該電子部品実装用フィルムキャリアテープと電子部品に形成された電極とを電気的に接続するためのスリットを形成することを特徴とする電子部品実装用フィルムキャリアテープの製造方法。 - 上記接着剤層の表面に保護フィルムが剥離可能に貼着されていることを特徴とする請求項第1項記載の電子部品実装用フィルムキャリアテープの製造方法。
- 上記配線パターンが、実装される電子部品と略同一の面積を有する絶縁フィルムの表面に形成されていることを特徴とする請求項第1項記載の電子部品実装用フィルムキャリアテープの製造方法。
- 上記スリットが形成される電子部品実装用フィルムキャリアテープのソルダーレジストの上から固定用治具によりフィルムキャリアテープを基台金型に加圧しながら打抜き金型を用いて電子部品実装用フィルムキャリアテープにスリットを打抜き形成することを特徴とする請求項第1項記載の電子部品実装用フィルムキャリアテープの製造方法。
- 基台金型と、該基台金型の上面に電子部品実装用フィルムキャリアテープを載置し、少なくとも該電子部品実装用フィルムキャリアテープのスリット打抜き部分の周縁部を、上型とは独立して形成され、打抜き金型を下降させることにより上型に対して弾性部材によって付勢された固定治具により基台金型に140〜180g/cm2の範囲内の圧力で押圧し
て固定する縁部加圧手段と、該基台金型に対して接近・離隔運動して該電子部品実装用フ
ィルムキャリアテープにスリットを形成する打抜き金型とを有することを特徴とする電子部品実装用フィルムキャリアテープの製造装置。 - 上記縁部加圧手段が、上型とは独立して電子部品実装用フィルムキャリアテープを基台金型に押付け固定可能に設けられている固定治具であることを特徴とする請求項第5項記載の電子部品実装用フィルムキャリアテープの製造装置。
- 上記固定治具によって、電子部品実装用フィルムキャリアテープを基台金型に140〜180g/cm2の範囲内の圧力で押圧することを特徴とする請求項第6項記載の電子部品実
装用フィルムキャリアテープの製造装置。 - 上記打抜き金型が、形成しようとするスリットの打抜き予定長さおよび幅に対して85〜105%の長さおよび幅を有することを特徴とする請求項第5項記載の電子部品実装用フィルムキャリアテープの製造装置。
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