JP3835914B2 - 室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物 - Google Patents

室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物に関し、さらに詳しくは、湿気の存在しない密封条件下では安定であり、空気中の水分と接触することにより、室温で硬化してゴム状弾性体を生成するポリオルガノシロキサン組成物に関する。特に本発明は、優れた接着性を示し、貯蔵安定性に優れた室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
室温で硬化してゴム状弾性体を生成するポリオルガノシロキサン組成物の中で、空気中の水分と接触することによって硬化反応が生起するタイプのものは、縮合反応型の室温硬化性液状シリコーンゴム(RTVシリコーンゴム)として知られており、接着性に優れているため、電気・電子工業や自動車工業などにおける弾性接着剤およびコーティング材など、また建築用シーリング材などとして広く用いられている。このような組成物は、一般に分子末端が水酸基で封鎖された水酸基末端ポリジオルガノシロキサンをベースポリマーとし、分子中に平均2個を越える加水分解性基を有する架橋剤、および必要に応じて触媒や接着性向上剤などを配合したものであり、架橋剤の種類に応じて、硬化の際にアルコール、アセトン、カルボン酸、有機アミン、アミド、有機ヒドロキシルアミン、オキシム化合物などを放出する。また、一部の脱アルコール型のように、あらかじめ分子末端のケイ素原子に加水分解性基であるアルコキシ基の結合した末端反応性ポリオルガノシロキサンをベースポリマーとして用いたものもあり、硬化性および保存安定性、作業性などに優れた組成物が見出されている。
【0003】
また、各々の架橋剤および末端のケイ素原子に結合した加水分解反応性基の種類により、種々の特色が現れる。脱酢酸型のような脱カルボン酸型は、硬化性に優れ、特にガラスなどに対して優れた接着性を示す反面、硬化の際に酢酸のようなカルボン酸を放出するため、刺激臭が強いうえ、金属や大理石などを侵すという問題がある。脱アミン型は、同様に硬化の際に放出するアミンに臭気と毒性があり、脱ヒドロキシルアミン型および脱アミド型は低モジュラスの硬化物が得られるが硬化が遅いうえに、金属を腐食させる。脱アセトン型は、硬化が速く、腐食性がないが、架橋剤の合成が難しく、また未硬化物が保存中に黄変を起こしやすい。脱オキシム型は、接着性などの特性に優れ、汎用的に使用されているが、銅系金属に対して腐食性を示す。
【0004】
これらに対して、脱アルコール型のポリオルガノシロキサン組成物は、架橋剤であるアルコキシシラン類が安価に入手できるばかりでなく、硬化反応で放出される物質がメタノール、エタノールのようなアルコールなので揮発しやすく、臭気や腐食性の問題がないという利点がある。しかし、その反面、ベースポリマーの分子末端にケイ素官能基として水酸基を有するものは、硬化が遅いこと、および保存中に系中に存在する微量の水により、架橋剤が加水分解して発生するアルコールがベースポリマーを切断するために、保存安定性が悪いという難点があり、その克服が要望されていた。
【0005】
脱アルコール型のうち、分子末端のケイ素原子にアルコキシ基が結合したポリオルガノシロキサンをベースポリマーとして用い、アルコキシシラン、硬化触媒からなる1包装型の室温硬化性組成物は、末端が水酸基のポリオルガノシロキサンを用いたものに比べて保存安定性が良好で、硬化も速いなどの特徴を有している。しかしながら、一般的に脱アルコール型のものは、いずれのタイプのベースポリマーを用いたものも、他の脱酢酸型、脱オキシム型のものと比較して、接着性が乏しく、保存安定性が劣るなどの問題を有している。
【0006】
特表昭59−500219号公報および特表昭59−501040号公報には、アルコール捕捉剤として、シラザン化合物のようなケイ素−窒素結合含有化合物が有効であることが開示されている。また、特開昭60−135458号公報には、このアルコール捕捉剤として、アルコールと反応した後も架橋剤として利用できるように、加水分解可能なアルコキシ基を含有するケイ素−窒素結合含有化合物を用いる組成物が開示され、さらに特開昭60−123552号公報には、アルコールと反応した後にアンモニアを発生しないケイ素−窒素結合含有化合物をアルコール捕捉剤として用いることによって、銅系金属に対する腐食性が改善された組成物が開示されている。このような速硬化性の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、電気・電子工業の分野における接着剤、コーティング材として有用である。
【0007】
近年、電気・電子工業の分野において、低分子量有機ケイ素化合物のような揮発性物質による電気接点の障害が、問題視されてきている。すなわち、前述のようなポリオルガノシロキサン系の接着剤やコーティング材に含まれている揮発成分物質、たとえば低分子量シロキサンや、前述のアルコール捕捉剤などが、硬化中の組成物および硬化物の表面から揮発して、電気接点の障害を引き起こすことがある。この問題に対して、上記のような従来技術では、ベースポリマー中の低沸点物を除去する技術と組み合わせて用いても、満足すべき結果が得られない。したがって、このような接着剤などによる電気接点の障害への対策が求められている。このような課題に対して、特開平6−73293号公報には、アルコール捕捉剤としてアミノ基含有シランとシラザン化合物との重縮合反応物を用いることにより、電気接点障害を引き起こす可能性の低い組成物が提案されている。しかしながら、このような化合物は、長期間の保存中に発生するアルコールを捕捉することにより、低分子量物に変化して、電気接点障害の原因になる可能性が、保存前に比べて著しく高い。
【0008】
さらに、特開平8−143774号公報には、末端および/または側鎖にシリルアミノアルキル基を有するオルガノシロキサンおよび/またはオキシアルキレン化合物を捕捉剤に用いた組成物が開示されている。しかしながら、このような化合物は、捕捉剤としての能力を必要十分に発揮させるには、添加量を著しく多くする必要があり、ベースポリマーであるオルガノシロキサンとの相溶性が十分でないため、添加量によっては白濁したりする。したがって、このような低分子量有機ケイ素化物による接点障害は依然として残り、その対策が求められている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、前述のような従来技術の問題点を解決して、未硬化状態における保存安定性が良好で、室温において比較的短時間で硬化し、優れた接着性を示し、かつ金属に対する腐食性、および電気接点の障害を生じない室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意検討を行った結果、分子中に炭素官能性アミノ基を有する加水分解性シラン化合物の部分加水分解縮合物のアミノ基を、シリル化剤によりシリル化して得られる有機ケイ素化合物を配合することにより、硬化性、保存安定性および接着性に優れ、かつ電気接点の障害を引き起こさない室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物が得られることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、
(A)分子中に2個以上のケイ素官能基を有するケイ素官能性ポリジオルガノシロキサン、および必要に応じて架橋剤を含みさらに
(B)硬化触媒
を含み、(A)および/または架橋剤が、ケイ素官能基として置換または非置換のアルコキシ基を含む、室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物において、
(C)ケイ素原子に結合した1個の炭素官能基中の炭素原子に結合した第一級および/または第二級アミノ基を有し、かつケイ素原子に結合した3個の加水分解性基を有するシラン化合物の部分加水分解および縮合によって得られるアミノ基含有シロキサン化合物の、第一級および/または第二級アミノ基の少なくとも一部を、シリル化して得られる有機ケイ素化合物
を含むことを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明においてベースポリマーとして用いられる(A)ケイ素官能性ポリジオルガノシロキサンは、(A1)分子中にケイ素官能基として平均2個を越える数の加水分解性基を有するケイ素官能性ポリジオルガノシロキサンであるか、または(A2)上記以外の(A)、すなわち、分子中にケイ素官能基として平均2個を越える数の水酸基を有するか、分子中に2個の加水分解性基を有するケイ素官能性ポリジオルガノシロキサンである。(A1)成分は、それ自体が、(B)成分の触媒作用によって架橋反応を起こして硬化する。(A2)成分は、該(A2)成分と架橋剤を組み合わせて用いることにより、(B)成分の触媒作用によって(A2)成分と架橋剤とが架橋反応を起こして硬化する。いずれの場合も、反応は加水分解反応とそれに続く縮合反応であり、空気中の水分の存在で反応が進行する。
【0013】
本発明に用いられる(A)成分は、代表的には、下記の一般式:
【化1】
Figure 0003835914
(式中、R1 はたがいに同一でも異なっていてもよい置換または非置換の1価の炭化水素基を表し;R2 は−ZSiR3 3-a1 aを表し、Zは酸素および/または2価の炭化水素基を表し、R3 はたがいに同一でも異なっていてもよい置換または非置換の1価の炭化水素基を表し、X1 は水酸基または加水分解性基を表し、aは1〜3の数であり;nは該(A)成分の25℃における粘度を20〜1,000,000cPにする数である)で示される、実質的に直鎖状のポリジオルガノシロキサンであり、その末端基R2 は、ケイ素官能性基X1 を少なくとも1個有するケイ素官能性シロキシ単位である。すなわち、該(A)成分は、分子の両末端に、上記のケイ素官能性基X1 をそれぞれ少なくとも1個有する。
【0014】
1 は、たがいに同一でも異なっていてもよい置換または非置換の1価の炭化水素基である。R1 としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシルのようなアルキル基;ビニル、アリルのようなアルケニル基;フェニル、トリル、キシリルのようなアリール基;2−フェニルエチル、2−フェニルプロピルのようなアラルキル基が例示され;さらにこれらの炭化水素基の水素原子の一部が他の原子または基で置換されたもの、すなわちクロロメチル、3−クロロプロピル、3,3,3−トリフルオロプロピルのようなハロゲン化アルキル基;3−シアノプロピルのようなシアノアルキル基などの置換炭化水素基が例示される。これらのうち、合成が容易で、(A)成分が分子量の割に低い粘度を有し、硬化前の組成物に良好な押出し性を与えることと、硬化後の組成物に良好な物理的性質を与えることから、全有機基の85%以上がメチル基であることが好ましく、実質的にすべての有機基がメチル基であることが特に好ましい。一方、特に耐熱性、耐放射線性、耐寒性または透明性を付与する場合は、R1 の一部として必要量のフェニル基を;耐油性、耐溶剤性を付与する場合は、R1 の一部として3,3,3−トリフルオロプロピル基や3−シアノプロピル基を;また塗装適性を有する表面を付与する場合は、R1 の一部として長鎖アルキル基やアラルキル基を、それぞれメチル基と併用するなど、目的に応じて任意に選択できる。
【0015】
末端基R2 のケイ素原子に結合するR3 は、たがいに同一でも異なっていてもよく、またR1 と同一でも異なっていてもよい置換または非置換の1価の炭化水素基であり、R1 と同様なものが例示される。合成が容易で、X1 の反応性が優れていることから、メチル基またはビニル基が好ましい。またZは、たがいに同一でも異なっていてもよく、酸素原子;ならびにメチレン、エチレン、トリメチレンのようなアルキレン基;フェニレン基などの2価の炭化水素基が例示され、合成の容易なことから、酸素原子およびエチレン基が好ましく、酸素原子が特に好ましい。
【0016】
1 は末端基R2 に少なくとも1個存在するケイ素官能性基、すなわち水酸基または加水分解性基である。X1 としては、水酸基のほか;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシのようなアルコキシ基;2−メトキシエトキシ、2−エトキシエトキシのような置換アルコキシ基;イソプロペノキシのようなエノキシ基;アセトキシ、オクタノイルオキシのようなアシロキシ基;ジメチルケトキシマト、メチルエチルケトキシマト、ジエチルケトキシマト、メチルブチルケトキシマト、エチルブチルケトキシマトのようなケトキシマト基;アセトアミド、N−メチルアセトアミドのようなアミド基;N´,N´−ジメチル−N−メチルウレイド、N´,N´−ジメチル−N−ブチルウレイド、N´,N´−ジエチル−N−メチルウレイドのようなウレイド基;ジメチルアミノ、メチルエチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルブチルアミノのようなアミノ基などの加水分解性基が例示され、たがいに同一でも異なっていてもよい。合成の容易さ、硬化前の組成物の物性、保存中の安定性、硬化性、経済性および広範囲の用途に用いられることから、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、2−メトキシエトキシ基、イソプロペノキシ基、アセトキシ基またはメチルエチルケトキシマト基が好ましい。一方、保存中に生成されるアルコールを捕捉して、未硬化組成物の保存安定性を増すという本発明の最も特徴的な効果を有効に発揮することから、本発明を、X1 がアルコキシ基または置換アルコキシ基である(A1)成分を含む組成物に適用することが、さらに好ましい。
【0017】
末端基R2 におけるケイ素官能基X1 の数aは、1〜3である。そのうち、架橋剤を配合して硬化させる室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物に用いる(A2)成分としては、合成が容易で、各種の架橋剤と組み合わせて用いられることから、X1 が水酸基で、aが1のものが好ましい。このようなケイ素官能性ポリジオルガノシロキサンは、たとえば、オクタメチルシクロテトラシロキサンのような環状ジオルガノシロキサン低量体を、水の存在下に酸性触媒またはアルカリ性触媒によって開環重合または開環共重合させることにより、得られた直鎖状ポリジオルガノシロキサンの末端基に、ケイ素原子に結合する水酸基を導入できる。
【0018】
1 が加水分解性基のものは、たとえば、上述のようにして得られた、末端に水酸基を有するポリジオルガノシロキサンに、2個以上の任意の加水分解性基を有するシランを縮合させることによって、合成できる。この場合、該シランの加水分解性基はこの縮合反応によって1個が消費されるので、反応によって得られたポリジオルガノシロキサンの末端基R2 におけるX1 の数aは、用いられた加水分解性基含有シランが有していたX1 の数よりも1個少ない。
【0019】
また、硬化前の組成物に適度の押出し性を付与するとともに、硬化後のゴム状弾性体に優れた機械的性質を与えるために、(A)成分のnは、通常、該(A)の25℃における粘度が20〜1,000,000cPになるように選択される。該粘度が20cP未満では硬化後のゴム弾性体の伸びが十分でなく、一方、1,000,000cPを越えると均一な組成物が得にくく、押出し作業性も低下する。特に好ましい粘度は、硬化前および硬化後の組成物に要求される性質を調和させることから、500〜200,000cPの範囲である。
【0020】
架橋剤を用いなくても硬化しうる室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物においては、上記の(A)成分のうち、(A1)成分、すなわちX1 が加水分解性基であり、aが平均1を越える数(すなわち、分子中に平均2を越える数のX1 を有する)のものをベースポリマーとして用いる。この場合、(A1)成分中の該X1 の加水分解反応と、引続く縮合反応により、架橋剤がなくても架橋構造が形成され、硬化してゴム状弾性体を生ずる。好ましいX1 はメトキシのようなアルコキシ基;アセトキシのようなアシロキシ基;およびメチルエチルケトキシマトのようなケトキシマト基であり、メトキシ基が特に好ましい。aは2または3が好ましい。このようなベースポリマーを用いることは、硬化前の組成物を安定化させるとともに、優れた硬化性を与えるために好ましい。
【0021】
(A2)成分を用いる室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物においては、該(A2)成分を架橋剤と組み合わせて用いることにより、架橋構造を形成させる。(A2)成分としては、X1 が水酸基であるか、aが1(すなわち、分子中に水酸基および/または上記と同様の加水分解性基である2個のX1 を有する)のものを用いる。
【0022】
架橋剤としては、水および硬化触媒(B)の存在下に(A2)中のケイ素官能性基X1 と反応し、組成物を硬化させるためのケイ素官能性基を有するケイ素化合物および/またはその部分加水分解縮合物が用いられる。該ケイ素化合物は、下記の一般式:
4 4-bSiX2 b
(式中、R4 はたがいに同一でも異なっていてもよい置換または非置換の1価の炭化水素基を表し;X2 は加水分解性基を表し;bは平均2を越え、4以下の数である)で示される。R4 としては、(A)成分のケイ素原子に直接結合した有機基R1 と同様な基を例示することができ、合成のしやすさと、優れた架橋反応速度が得られることから、メチル基またはビニル基が好ましい。また、加水分解性基X2 としては、(A)成分の末端基に存在するX1 として、水酸基とともに挙げられたのと同様のものが例示される。
【0023】
このような架橋剤の例としては、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシランおよびそれらの部分加水分解縮合物のようなアルコキシ基含有化合物;テトラキス(2−エトキシエトキシ)シラン、メチルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、メチルトリス(2−エトキシエトキシ)シランおよびそれらの部分加水分解縮合物のような置換アルコキシ基含有化合物;メチルトリイソプロペノキシシラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、フェニルトリイソプロペノキシシラン、ジメチルジイソプロペノキシシラン、メチルビニルジイソプロペノキシシランおよびそれらの部分加水分解縮合物のようなエノキシ基含有化合物;メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジ−tert−ブトキシジアセトキシシランおよびそれらの部分加水分解縮合物のようなアセトキシ基含有化合物;テトラキス(ジメチルケトキシマト)シラン、メチルトリス(ジメチルケトキシマト)シラン、テトラキス(メチルエチルケトキシマト)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシマト)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトキシマト)シラン、フェニルトリス(メチルエチルケトキシマト)シラン、メチルトリス(ジエチルケトキシマト)シラン、テトラキス(メチルブチルケトキシマト)シラン、メチルトリス(エチルブチルケトキシマト)シラン、テトラキス(エチルブチルケトキシマト)シラン、ジメチルビス(ジメチルケトキシマト)シラン、ジメチルビス(メチルエチルケトキシマト)シラン、メチルビニルビス(メチルエチルケトキシマト)シラン、ジフェニルビス(ジエチルケトキシマト)シラン、メチルビス(メチルエチルケトキシマト)メトキシシラン、メチルビス(メチルエチルケトキシマト)エトキシシラン、メチルビス(メチルエチルケトキシマト)イソプロポキシシランおよびそれらの部分加水分解縮合物のようなケトキシマト基含有化合物などが例示される。これらのうち、bが2であるシランは、bが3または4であるシランと併用される。
【0024】
これらのうち、合成が容易で、組成物の保存安定性を損なうことなく、しかも大きな架橋反応速度、したがって大きな硬化速度を与えることを考慮すると、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、メチルトリス(イソプロペノキシ)シラン、ビニルトリス(イソプロペノキシ)シラン、メチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、テトラキス(メチルエチルケトキシマト)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシマト)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトキシマト)シラン、およびそれらの部分加水分解縮合物を用いることが好ましい。一方、保存中に生成されるアルコールを捕捉して、未硬化組成物の保存安定性を増すという本発明の最も特徴的な効果を有効に発揮することから、本発明を、X2 がアルコキシ基または置換アルコキシ基である架橋剤を含む組成物に適用することがさらに好ましい。
【0025】
架橋剤の配合量は、(A2)成分100重量部に対して、通常、0.5〜25重量部であり、好ましくは2〜10重量部である。0.5重量部未満では架橋が十分に行われず、硬度の低い硬化物しか得られないばかりでなく、架橋剤を配合した組成物の保存安定性が悪い。一方、25重量部を越えて配合すると、保存中にその一部が系より分離し、硬化の際に著しい収縮を生じ、得られたゴム状弾性体の物性が低下する。
【0026】
なお、(A)成分として、前述の(A1)であるX1 が加水分解性基で、aが平均1を越えるものを用いる場合は、前述のように、基本的には架橋剤がなくても硬化が可能であるが、このような場合においても、組成物の硬化性と、硬化して得られるゴム状弾性体の機械的性質とをバランスよく具現するために、上記の架橋剤を併用することが好ましく、加水分解性基X2 がX1 と同じである架橋剤を併用することがより好ましい。この場合の架橋剤の配合量は、(A1)成分100重量部に対して、通常、0.1〜25重量部であり、好ましくは0.3〜10重量部である。25重量部を越えて配合すると、さきに述べたような現象を生ずる。
【0027】
本発明において、さきに具体例を列挙したような、R4 として1価の炭化水素基を有するケイ素官能性化合物のほか、置換された1価の炭化水素基を有する炭素官能性有機ケイ素化合物を、架橋剤の一部または全部として用いてもよい。このことにより、本発明のポリオルガノシロキサン組成物の接着性を向上させることができる。このようなR4 としては、置換もしくは非置換のアミノ基、エポキシ基、イソシアナト基、(メタ)アクリロキシ基、メルカプト基およびハロゲン原子で置換されたアルキル基やフェニル基が例示され、このような置換アルキル基としては、置換メチル、3−置換プロピル、4−置換ブチルが例示されるが、合成が容易で、安定なことから、3−置換プロピル基が好ましい。また、このような架橋剤のケイ素官能基としては、容易に合成でき、縮合反応によって強い臭気や金属への腐食性を生じないことから、メトキシ、エトキシのようなアルコキシ基が好ましい。
【0028】
このようなR4 を有する化合物としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、3−アミノプロピルトリアセトアミドシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ジメチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランのような置換または非置換のアミノ基含有シラン;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシランのようなエポキシ基含有シラン;3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシランのようなイソシアナト基含有シラン;3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランのような(メタ)アクリロキシ基含有シラン;3−メルカプトプロピルトリメトキシシランのようなメルカプト基含有シラン;および3−クロロプロピルトリメトキシシランのようなハロゲン原子含有シラン;ならびにそれらの部分加水分解縮合物が例示される。このような置換炭化水素基含有シランや前記のビニル基含有シランは、炭素官能性シランであって、これらやその部分加水分解縮合物を配合することにより、組成物が硬化する際の各種基材への接着性を向上させることができる。これらのうち、組成物の硬化性および接着性を向上させる効果や、その発現性の速いことから、置換または非置換のアミノアルキル基含有有機ケイ素化合物を用いることが好ましい。
【0029】
このような炭素官能性有機ケイ素化合物の配合量は、前記の架橋剤のうち、(A)成分100重量部に対して0.05〜25重量部が好ましく、0.1〜10重量部がさらに好ましい。0.05重量部未満では接着性の向上効果が少なく、またその発現が遅い。また25重量部を越えて配合すると、前記のような問題点のほか、保存安定性と作業性が悪くなり、また黄変現象を生ずる。
【0030】
本発明に用いられる(B)成分は、(A1)成分自体に含有されるX1 どうし、および/または(A1)もしくは(A2)成分のX1 と架橋剤のX2 とを、水分の存在下に反応させて架橋構造を形成させ、ゴム状弾性体を得るための硬化触媒である。
【0031】
(B)成分としては、オクタン酸マンガン、オクタン酸鉄、オクタン酸亜鉛、オクタン酸スズ、ナフテン酸鉄、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸スズ、オレイン酸スズのようなカルボン酸金属塩;ジブチルスズジアセタート、ジブチルスズジオクトアート、ジブチルスズジラウラート、ジブチルスズジオレアート、ジフェニルスズジアセタート、ジブチルスズジメトキシド、ジブチルスズジフェノキシド、酸化ジブチルスズ、ジブチルビス(トリエトキシシロキシ)スズ、ジオクチルスズジラウラートのような有機スズ化合物;テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタンのようなアルコキシチタン類;ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセタト)チタン、1,3−プロパンジオキシビス(エチルアセチルアセタト)チタン、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタンのようなチタンキレート化合物が例示され、微量の存在で大きな触媒能を示すことから、有機スズ化合物、アルコキシチタン類およびチタンキレート化合物が好ましい。
【0032】
(B)成分の配合量は、架橋反応にあずかるケイ素官能基の種類、および(B)成分の種類によっても異なるが、(A)成分100重量部あたり、通常0.05〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部である。0.05重量部未満では、硬化触媒として十分に作用せず、硬化に長時間がかかるばかりでなく、特に空気との接触面から遠いゴム層の深部における硬化が不十分となる。逆に10重量部を越える場合には、その配合量に見合う効果がなく、無意味であるばかりか、経済的に不利益である。
【0033】
本発明に用いられる(C)成分は、本発明において特徴的な成分であり、本発明の組成物に、下記のような効果を与える重要な成分である。
▲1▼ 組成物が脱アルコール型のポリオルガノシロキサン組成物である場合、または架橋剤の一部に炭素官能性アルコキシシランを用いる場合に、該組成物を密閉保存している間に生成するアルコールを捕捉してベースポリマーの切断反応を防ぎ、該組成物に保存安定性を与える。
▲2▼ 該組成物による電気接点障害を生じる原因とはならない。
▲3▼ 組成物の接着性を向上させる。
【0034】
(C)成分としては、炭素原子に結合した第一級および/または第二級アミノ基を有し、かつケイ素原子に結合した加水分解性基を有するシラン化合物の部分加水分解および縮合によって得られるアミノ基含有シロキサン化合物を、シリル化剤によってオルガノシリル化して得られる有機ケイ素化合物が用いられる。
【0035】
上記のシロキサン化合物の単量体であるアミノ基含有シランは、代表的には、一般式:
56 cSiX3 3-c
(式中、R5 は第一級および/または第二級アミノ基を有する炭素官能基を表し;R6 は炭素数1〜3のアルキル基を表し;X3 は加水分解性基を表し;cは0〜2の整数である)で示される。
【0036】
アミノ基を有する炭素官能基R5 としては、3−アミノプロピル、4−アミノブチル、5−アミノペンチル、3−(m−アミノフェノキシ)プロピルのような第一級アミノ基含有基;N−メチル−3−アミノプロピルのような第二級アミノ基含有基;N−(アミノエチル)−3−アミノプロピル、N−〔N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチル〕−3−アミノプロピルのような第一級アミノ基と第二級アミノ基を併せ有する基が例示され、合成および取扱いが容易で、得られる(C)成分のアルコール捕捉効果が優れていることから、3−アミノプロピル基およびN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル基が好ましい。R6 としては、メチル、エチルおよびプロピルが挙げられ、合成が容易なことからメチル基が好ましい。
【0037】
ケイ素原子に結合した加水分解性基X3 としては、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシのような置換または非置換のアルコキシ基;アセトアミド、N−メチルアセトアミドのような置換アミド基;イソシアナト基;N′,N′−ジメチル−N−メチルウレイド、N′,N′−ジメチル−N−ブチルウレイド、N′,N′−ジエチル−N−メチルウレイドのような置換ウレイド基などが例示され、合成および取扱いが容易なことから、メトキシ基およびエトキシ基が好ましい。
【0038】
cは0〜2の整数であり、得られる(C)成分およびそれを用いるポリオルガノシロキサン組成物に必要な柔軟性に応じて、適宜選択される。すなわち、通常はcが0のものでよいが、硬化した組成物に柔軟性が必要な場合は、少なくとも一部としてcが1のもの、および/または一部としてcが2のものを用いることが好ましい。
【0039】
このようなアミノ基含有シランとしては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、4−アミノブチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(m−アミノフェノキシ)プロピルトリメトキシシランのようなトリメトキシシラン類;3−アミノプロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル(メチル)ジメトキシシランのようなジメトキシシラン類;3−アミノプロピル(ジメチル)メトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル(ジメチル)メトキシシランのようなモノメトキシシラン類;およびこれらに対応するエトキシ基含有シランなどが例示され、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。合成が容易で、経済的に入手できること、ならびに部分加水分解・縮合およびその後のシリル化反応が容易に進行することから、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランおよびN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0040】
また、部分加水分解・縮合の際に、アミノ基を含まないシラン類を共存させて共加水分解・共縮合させることにより、アミノ基含有シロキサン化合物に、アミノ基を含まないシロキサン単位を導入することもできる。このようなシラン類としては、ジメチルジメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシランのようなジメトキシシラン類;および対応するジエトキシシラン類などの二官能性シランが例示され、必要に応じて、三官能性シランまたは一官能性シランを用いることもできる。併用するシラン類の配合量は、アミノ基含有シランおよび併用するシラン類の合計量に対して80モル%以下の範囲内である。80モル%を越えると、(C)成分のアルコール捕捉剤としての能力が低下して、好ましくない。このようなシラン類の併用によって導入される二官能性シロキサン単位の存在は、本発明のポリオルガノシロキサン組成物の硬化物に柔軟性を付与し、かつ(C)成分の(A)成分に対する相溶性を上げて、組成物および硬化物の外観を改良し、とりわけ濁りを防止して透明性を与えるという利点がある。
【0041】
アミノ基含有シラン化合物の部分加水分解または部分共加水分解は、たとえば次のようにして行うことができ、部分加水分解反応に引続いて、同一の操作で縮合反応が進行して、アミノ基含有シロキサン化合物が得られる。すなわち、目的物の必要な重合度に応じて、縮合と加水分解を完全に行う理論量よりも少量の水、たとえばアミノ基含有トリアルコキシシラン類の場合は、該シラン1モルに対して0.5モル以上、1.5モル未満の水を反応させる。反応は室温でも進行するが、たとえば70℃までの温度に加温して、メタノール、エタノールなどの副生物を系外に留去することにより、反応を促進できる。反応は、たとえば原料シラン化合物を撹拌しつつ水を滴下した後、必要に応じて所定の温度に加温し、必要に応じて副生物または該副生物と水との共沸混合物を留去しながら、撹拌を15分〜4時間続けることにより、部分加水分解と縮合を行う。
【0042】
このようなして得られたアミノ基含有シロキサン化合物は、シラン化合物の一部の加水分解性基が残存し、シラン化合物としてアミノ基含有シランを用いた場合、加水分解・縮合反応の制御が容易で、(A)成分との相溶性に優れ、しかも電気接点障害を起こさず、優れた接着性を与えることから、重合度の好ましい範囲は1.5〜20であり、より好ましい範囲は2.0〜10の範囲である。重合度が1.5未満では、電気接点に障害を生ずることがあり、また接着性を向上させる効果が少ない。また、前述のようなアミノ基を含まない二官能性シランを併用して共加水分解を行えば、(A)成分との相溶性を損なわずに、さらに高重合度のシロキサンを制御よく得ることができる。
【0043】
アミノ基含有シロキサン化合物のシリル化に用いるシリル化剤は、一般式:
7 dSiX45 3-d または
5 3-e7 eSiNHSiR7 e5 3-e
(式中、R7 はたがいに同一でも異なっていてもよい置換または非置換の1価の炭化水素基を表し;X4 およびX5 はそれぞれ独立して、たがいに同一でも異なっていてもよい加水分解性基を表し;dおよびeはそれぞれ2または3である)で示される。R7 としては、メチル、エチル、プロピル、ブチルのような直鎖状または分岐状のアルキル基;フェニルのようなアリール基;ビニルのようなアルケニル基;3,3,3−トリフルオロプロピルのような置換炭化水素基などが例示され、取扱いが容易で、かつ組成物の耐熱性などに悪影響を与えないことから、メチル基が最も好ましく、ケイ素原子に結合した3個のR7 のうち2個がメチル基で、残余の1個が、tert−ブチル基、フェニル基またはビニル基のものも好ましい。
【0044】
4 としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のような、フッ素を除くハロゲン原子;およびジメチルアミノ、ジエチルアミノ、1−イミダゾリルのような第三級アミノ基が例示される。また、X5 としては、メトキシ、エトキシのようなアルコキシ基;2−プロペノキシのようなエノール基;イソシアナト基;上記の第三級アミノ基;アセトアミド、N−メチルアセトアミドのような置換アミド基;メチルエチルケトキシマトのようなカルバマト基;N′,N′−ジメチル−N−メチルウレイドのような置換ウレイド基などが例示され、合成が容易で、シリル化剤としての反応性が高いことから、X4 が塩素原子であるクロロシラン類、およびシラザン類が好ましく、後述のように、両者を併用することがさらに好ましい。また、dまたはeが2のシリル化剤を用いると、得られる(C)は、アルコールの捕捉剤として寄与するとともに、さらに架橋剤としても有効である。
【0045】
好ましいシリル化剤としては、トリメチルクロロシラン、ジメチルエチルクロロシラン、ジメチル−tert−ブチルクロロシラン、ジメチルフェニルクロロシラン、ジメチルメトキシクロロシラン、ジメチルエトキシクロロシランのようなクロロシラン類;およびヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、ヘキサプロピルジシラザン、1,3−ジ−tert−ブチル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ジメトキシ−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ジエトキシ−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ジイソシアナト−1,1,3,3−テトラメチルジシラザンのようなシラザン類が例示される。
【0046】
シリル化反応は、アミノ基含有シロキサン化合物に存在する第一級および/または第二級アミノ基に優先的に起こるが、残存するケイ素官能基にも起こる。反応は無触媒でも進行するが、反応を促進させるために、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウムのような酸性触媒の存在下に行うことが好ましい。また、反応系中で、触媒として必要量の塩化アンモニウムを生じるように、クロロシラン類とシラザン類を併用してもよい。この中でも、良好なシリル化反応が行われることから、相互の溶解性が良好なクロロシラン類とシラザン類、たとえばトリメチルクロロシランとヘキサメチルジシラザンの混合物を用いることが好ましい。反応は、通常50〜150℃で1〜24時間行い、反応終了後、または反応中に副生物を留去する。
【0047】
(C)成分の配合量は、(A)成分100重量部あたり、通常0.2〜25重量部、好ましくは1〜15重量部である。0.2重量部未満ではアルコール捕捉能力が十分でなく、組成物の接着性を向上する効果も十分でない。一方、25重量部を越えて配合してもそれに見合う効果がなく不経済であるばかりか、硬化して得られたゴム状弾性体の物理的性質や耐熱性を損ねたり、加熱により黄変をもたらすことがある。
【0048】
本発明の組成物に、硬化前の段階で適度の流動性を与え、硬化して得られるゴム状弾性体に、たとえばシーリング材、接着剤、現場成形ガスケットなどとして用いる場合に要求される高い機械的強度を付与するために、無機質充填剤を添加することが好ましい。このような無機質充填剤としては、煙霧質シリカ、焼成シリカ、沈殿シリカ、煙霧質酸化チタン、これらの表面をオルガノクロロシラン類、ポリオルガノシロキサン類、ヘキサメチルジシラザンなどで疎水化したもののような補強性充填剤;およびけいそう土、粉砕シリカ、アルミノケイ酸、炭酸カルシウム、有機酸表面処理炭酸カルシウム、マグネシア、アルミナのような非補強性充填剤が例示され、押出し作業性と、硬化して得られるゴム状弾性体に必要な物性に応じて選択される。これらの充填剤の添加量は、組成物の使用目的や充填剤の種類によっても異なるが、(A)100重量部に対して1〜200重量部の範囲が好ましく、5〜100重量部がより好ましい。1重量部未満では十分な機械的強度が得られず、200重量部を越えると、硬くなって十分なゴム弾性が得られない。
【0049】
さらに、本発明の組成物には、目的に応じて、顔料、チクソトロピー性付与剤、押出し作業性を改良するための粘度調整剤、紫外線防止剤、防かび剤、耐熱性向上剤、難燃化剤など、各種の添加剤を加えてもよい。
【0050】
本発明の組成物は、すべての構成成分、および必要に応じて配合される各種の添加剤を、湿気を遮断した状態で混合することによって調製できる。得られた組成物は、単一の非透湿性密閉容器中にそのまま保存し、使用時に該容器より押出しなどの方法によって放出し、空気中の水分にさらすことによって硬化させる、いわゆる1包装型室温硬化性組成物として用いることができる。また、本発明の組成物を、たとえば(A)、(C)成分と(B)成分とを別々の容器に保存しておき、使用の際にこれらを混合する、いわゆる多包装型室温硬化性組成物として用いることもできる。
【0051】
【発明の効果】
本発明の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、未硬化の状態で、湿気の存在しない密封条件で安定であり、空気中の水分と接触することによって硬化して、ゴム状弾性体になる。従来の同様な組成物に比べて電気接点の障害を引き起こす原因にならず、そのうえ、予期しなかったことに、各種の硬化機構による室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物が硬化する際の接着性を、著しく向上させる。
【0052】
特に、本発明による技術を、激しい臭気や金属への腐食性がない脱アルコール型の架橋機構に適用すると、(C)成分が保存中のアルコール捕捉剤として保存安定性に大きく寄与するほか、上述のように、電気接点の障害を起こさず、優れた接着性を与えるという効果がある。
【0053】
したがって、本発明の組成物は、工業用接着・シール材、建築用シーリング材などとして有用である。特に、電気・電子工業および他産業における電気・電子機器まわりへの応用、たとえばポッティング剤、絶縁シール剤、接着剤、コーティング材などとしての応用の際に、優れた接着性を示すうえに、金属への腐食や接点障害を起こさないので、その有用性は大きい。
【0054】
【実施例】
以下に、合成例、実施例および比較例によって、本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例中、部はすべて重量部を表し、粘度などの物性値はすべて25℃、相対湿度60%(以下、60%RHという)における値である。なお、合成例で得られたシリル化物の分析結果および構造単位において、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表す。
【0055】
以下の実施例および比較例において調製し、密封して保存した組成物について、次のような評価を行った。
【0056】
(a)指触乾燥時間:組成物を20℃、60%RHの雰囲気中に押出して、指で表面に接触して乾燥状態にあることを確認するに至る時間を測定した。
【0057】
(b)物理的性質:組成物を厚さ2mmのシート上に押出し、25℃、60%RHで168時間放置し、空気中の湿気により硬化させて、その物理的性質をJIS K 6301により測定した。
【0058】
(c)保存安定性:湿気を遮断した容器に組成物を入れて、70℃に5日間加熱した後、指触乾燥時間を20℃、60%RHの雰囲気下で測定した。また、厚さ2mmのシート状に押出し、25℃、60%RHで168時間放置し、空気中の湿気により硬化させて、その物理的性質をJIS K 6301により測定した。
【0060】
(e)せん断接着力:被着体として銅、アルミニウム、ポリカーボネートおよびアクリル樹脂をそれぞれ用い、組成物の厚み1mm、試験体の幅25mm、重ね幅10mmの、図1に示すせん断接着力測定用の試験体を作製した。これを25℃、60%RHで168時間放置し、空気中の湿気により硬化させて、そのせん断接着力および凝集破壊率を測定した。
【0061】
(f)電気接点障害:図2に示すように、可変定電圧電源(2.0V −120mA)によるマイクロモータを用い、60℃の恒温雰囲気中に未硬化の組成物試料4.0gとマイクロモータを置き、実装試験を行った。該マイクロモータの波形をオシロスコープを用いて観察し、波形が異常になった時点で電気接点障害が生じたものと判断し、その時間で電気接点障害が生じる程度を評価した。
【0062】
(g)腐食性:図3に示すように、未硬化の組成物15gと脱イオン水10gを入れた500mlのガラス瓶の上方に、表面をサンドペーパーで磨き、活性面を露出させた厚み1mmの銅板を吊るし、密栓をした後、40℃で168時間加熱する試験を行った。試験後の銅板の状態を、組成物を入れずに同様の操作を行った後のブランクと比較して、銅への腐食性を評価した。
【0063】
合成例1
温度計、撹拌装置、還流冷却器、滴下漏斗ならびに窒素の供給および排気口を備えた反応容器の内部を窒素で置換し、3−アミノプロピルトリメトキシシラン179部を仕込んだ。これを室温で撹拌しながら、滴下漏斗から水18部を1時間かけて滴下し、室温で撹拌をさらに1時間続けた後、40℃に昇温して、低沸点物の留去を1時間行い、さらに、圧力2Torrで温度100℃まで加熱して、未反応の3−アミノプロピルトリメトキシシランを留去した。ついで、ヘキサメチルジシラザン161部とトリメチルクロロシラン3.3部の混合物を加えて、90℃で加熱撹拌を8時間行った後、冷却し、濾過によって固形分を除き、ついで、圧力2Torrで温度100℃まで加熱して副生物を留去することにより、無色透明の油状物を得た。以下、これをC−1という。
【0064】
C−1は、20℃の蒸気圧が0.2Torr以上の低沸点物の含有率が0.8重量%、粘度が150cP、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、GPCと略す)によるポリスチレン換算平均分子量が約700であった。C−1の赤外分光スペクトルおよび核磁気共鳴スペクトルは、下記のとおりであった。
IR (cm-1):
-NH: 3370; -CH2-(飽和炭化水素): 2940, 2840: SiMe3: 1250, 840; Si-O-Si: 1090
1H-NMR (ppm):
SiOMe: 3.5〜3.3; NCH2-: 2.6 〜2.5; -CH2 CH 2CH2-: 1.5 〜1.3; -CH2Si: 0.6〜0.4; SiMe3: 0 〜-0.9
29Si-NMR (ppm):
SiMe3: 3; Si(OMe)2(O-Si-): -50〜-51; Si(OMe)(O-Si-)2: -57〜-61; Si(O-Si-)3: -66〜-69
【0065】
これらの結果から、C−1は、下記:
【化2】
Figure 0003835914
で示される構造単位(1)、(2)および(3)を有し、その存在比が1:1.5:1.4であり、3−アミノプロピルトリメトキシシランの部分加水分解縮合物のトリメチルシリル化物であることが確認された。
【0066】
合成例2
出発原料として3−アミノプロピルトリメトキシシランの代わりに3−アミノプロピルトリエトキシシラン221部を用い、部分加水分解に用いる水の量を12.6部とし、部分加水分解・縮合後のシリル化反応を、塩化アンモニウム1.6部の存在下にヘキサメチルジシラザン161部を用い、反応条件を110℃、15時間として行った以外は合成例1と同様にして、アミノ基含有シランの部分加水分解、縮合およびシリル化を行い、無色透明の油状物C−2を得た。
【0067】
C−2は、20℃の蒸気圧が0.2Torr以上の低沸点物の含有率が0.8重量%、粘度が230cP、GPCによるポリスチレン換算平均分子量が約1,300であった。C−2の赤外分光スペクトルおよび核磁気共鳴スペクトルは、下記のとおりであった。
IR (cm-1):
-NH: 3370; -CH2-(飽和炭化水素): 2940, 2840; SiMe3: 1250, 840; Si-O-Si: 1090
1H-NMR (ppm):
SiOCH 2CH3: 3.9〜3.8; NCH2-: 2.7 〜2.6; -CH2 CH 2CH2-: 1.5 〜1.3; SiOCH2 CH 3: 1.2 〜1.1; -CH2Si: 0.6〜0.4; SiMe3: 0 〜-1
29Si-NMR (ppm):
SiMe3: 3; Si(OEt)2(O-Si-): -52〜-53; Si(OEt)(O-Si-)2: -59〜-63; Si(O-Si-)3: -66〜-69
【0068】
これらの結果から、C−2は、下記:
【化3】
Figure 0003835914
で示される構造単位(4)、(5)および(6)を有し、その存在比が1:1.5:1であり、3−アミノプロピルトリエトキシシランの部分加水分解縮合物のトリメチルシリル化物であることが確認された。
【0069】
合成例3
部分加水分解・縮合後のシリル化反応を、硫酸アンモニウム4部の存在下に1,3−ジメトキシ−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン193部を用い、反応条件を90℃、10時間間として行った以外は合成例1と同様にして、アミノ基含有シランの部分加水分解、縮合およびシリル化を行い、無色透明の油状物C−3を得た。
【0070】
C−3は、20℃の蒸気圧が0.2Torr以上の低沸点物の含有率が0.8重量%、粘度が150cP、GPCによるポリスチレン換算平均分子量が約700であった。C−3の赤外分光スペクトルおよび核磁気共鳴スペクトルは、下記のとおりであった。
IR (cm-1):
-NH: 3370; -CH2-(飽和炭化水素): 2940, 2840; SiMe3: 1250, 840; Si-O-Si: 1090
1H-NMR (ppm):
Si(OMe)Me2: 3.5 〜3.3; NCH2-: 2.6 〜2.5; -CH2 CH 2CH2-: 1.5 〜1.3; -CH2Si: 0.6〜0.4; Si(OMe)Me 2: 0〜-0.9
29Si-NMR (ppm):
Si(OMe)Me2: -2; Si(OMe)2(O-Si-): -50〜-51; Si(OMe)(O-Si-)2: -57〜-61; Si(O-Si-)3: -66〜-69
【0071】
これらの結果から、C−3は、下記:
【化4】
Figure 0003835914
で示される構造単位(7)、(8)および(9)を有し、その存在比が1:2:1.4であり、3−アミノプロピルトリメトキシシランの部分加水分解縮合物のメトキシジメチルシリル化物であることが確認された。
【0072】
合成例4
合成例1で用いたのと同様の装置を用い、ジメチルジメトキシシラン120部と3−アミノプロピルトリメトキシシラン5部を仕込んだ。これを撹拌しながら40℃まで加熱し、滴下漏斗から水27部を2時間かけて滴下し、そのまま40℃で1時間撹拌を行った後、室温まで冷却し、3−アミノプロピルトリメトキシシラン174部を室温で30分かけて滴下した。その後、さらに水18部を1時間かけて滴下し、1時間撹拌を行った後、40℃に昇温して、低沸点物の留去を1時間行い、さらに、圧力2Torrで温度100℃まで加熱して、未反応のジメチルジメトキシシランおよび3−アミノプロピルトリメトキシシランを留去した。ついで、ヘキサメチルジシラザン161部とトリメチルクロロシラン3.3部の混合物を加えて、90℃で加熱撹拌を8時間行った後、冷却し、濾過によって固形分を除き、ついで、圧力2Torrで温度100℃まで加熱して、副生成物を留去することにより、無色透明の油状物C−4を得た。
【0073】
C−4は、20℃の蒸気圧が0.2Torr以上の低沸分含有率が0.8重量%、粘度が180cP、GPCによるポリスチレン換算平均分子量が約4,200であった。C−4の赤外分光スペクトルおよび核磁気共鳴スペクトルの測定結果は、下記のとおりであった。
IR (cm-1):
-NH: 3370; Me, -CH2-(飽和炭化水素): 2940, 2840; SiMe: 1250, 800; Si-O-Si: 1090
1H-NMR (ppm):
SiOMe: 3.5〜3.4; NCH2-: 2.7 〜2.6; -CH2 CH 2CH2-: 1.5 〜1.3; -CH2Si: 0.6〜0.4; SiMe: 0.2〜0.1; SiMe3: 0 〜-0.9
29Si-NMR (ppm):
SiMe3: 3; SiMe2(O-Si-)2: -21〜-22; Si(OMe)2(O-Si-): -50 〜-51; Si(Me)(O-Si-)2: -57〜-59
【0074】
これらの結果から、C−4は、下記:
【化5】
Figure 0003835914
で示される構造単位(1)、(2)、(3)および(10)を有し、その存在比が2:1:1:4.2であり、ジメチルジメトキシシランおよび3−アミノプロピルトリメトキシシランの共部分加水分解縮合物のトリメチルシリル化物であることが確認された。
【0075】
実施例1
20℃において0.01Torr以上の蒸気圧を有する低分子シロキサンの含有率が0.01重量%で、粘度が20,000cPのα,ω−ビス(メチルジメトキシシリル)ポリジメチルシロキサン100部に、比表面積200m2/gの煙霧質シリカ15部を添加し、均一に混合してマスターバッチを得た。これに、メチルトリメトキシシラン2.0部、合成例1で得られたC−1を2.0部およびジブチルビス(トリエトキシシロキシ)スズ0.5部を加え、湿気遮断下において均一に混合して、組成物を調製した。この組成物について、前述にような評価方法によって評価を行った。その結果は、表1に示すとおりであった。
【0076】
実施例2
メチルトリメトキシシランの代わりにテトラメトキシシラン2.0部を用い、C−1の代わりに合成例2で得られたC−2を2.0部用い、硬化触媒としてジブチルスズジラウラート0.5部を用いた以外は実施例1と同様にして組成物を調製し、その評価を行った。その結果は、表1に示すとおりであった。
【0077】
実施例3
C−2の代わりに合成例3で得られたC−3を2.0部を用いた以外は実施例2と同様にして組成物を調製し、その評価を行った。その結果は、表1に示すとおりであった。
【0078】
実施例4
C−2の代わりに合成例4で得られたC−4を4.0部を用いた以外は実施例2と同様にして組成物を調製し、その評価を行った。その結果は、表1に示すとおりであった。
【0079】
比較例1
C−1の代わりにヘキサメチルジシラザン3.0部を用い、硬化触媒としてジブチルスズジラウラート0.5部を用いた以外は、実施例1と同様にして組成物を調製し、その評価を行った。その結果は、表1に示すとおりであった。
【0080】
比較例2
C−1の代わりにN−トリメチルシリル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン2.0部を用い、硬化触媒としてジブチルスズジラウラート0.1部を用いた以外は、実施例1と同様にして組成物を調製し、その評価を行った。その結果は、表1に示すとおりであった。
【0081】
比較例3
C−1の代わりに3−アミノプロピルトリメトキシシランとヘキサメチルジシラザンとを、モル比2.5:1で加熱還流することによって得られた重縮合物2.0部を用い、硬化触媒としてジブチルスズジラウラート0.5部を用いた以外は、実施例1と同様にして組成物を調製し、その評価を行った。その結果は、表1に示すとおりであった。
【0082】
【表1】
Figure 0003835914

【図面の簡単な説明】
【図1】実施例のせん断接着強さの試験片の概略図である。
【図2】実施例において、電気接着障害の評価に用いた実装試験装置の概略図である。
【図3】実施例において、腐食性の評価に用いた装置の概略図である。
【符号の説明】
1 組成物試料
2 被着体
3 恒温槽(60℃)
4 マイクロモータ
5 可変定電圧装置(2.0V−120mA)
6 抵抗(1Ω)
7 オシロスコープ
8 ガラス瓶
9 脱イオン水
10 銅板

Claims (1)

  1. (A)分子中に2個以上のケイ素官能基を有するケイ素官能性ポリジオルガノシロキサン、および必要に応じて架橋剤を含み;さらに
    (B)硬化触媒
    を含み、(A)および/または架橋剤が、ケイ素官能基として置換または非置換のアルコキシ基を含む、室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物において、
    (C)ケイ素原子に結合した1個の炭素官能基中の炭素原子に結合した第一級および/または第二級アミノ基を有し、かつケイ素原子に結合した3個の加水分解性基を有するシラン化合物の部分加水分解および縮合によって得られるアミノ基含有シロキサン化合物の、第一級および/または第二級アミノ基の少なくとも一部を、シリル化して得られる有機ケイ素化合物
    を含むことを特徴とする室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
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