JP3835265B2 - 車両用エンジンによって駆動される空調装置の制御方法 - Google Patents

車両用エンジンによって駆動される空調装置の制御方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両に搭載されたエンジン(内燃機関)によって駆動される空調装置の制御方法に係り、特に、エンジンが減速時にフューエルカットをする場合に、空調装置等の冷凍サイクル用冷媒圧縮機と、その作動状態に対応してエンジンそのものを制御する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
本発明と比較すべき従来技術として、特開昭58−38350号公報に記載されている車両の空調装置(エアコン或いはA/C、この場合はクーラ)用コンプレッサの運転制御方法を図8によって説明する。この制御方法によれば、基本的に、エンジンが所定のフューエルカット復帰判定値よりも大きい回転数で回転している状態において、エンジンのスロットルバルブがアイドリングの開度まで閉じられた時にフューエルカットが開始(ON)されて、エンジンへの燃料供給が停止される。また、それによってエンジンの回転数が低下してフューエルカット復帰判定値よりも低くなった時に、フューエルカットが終了(OFF)されてエンジンへの燃料の供給が再開される。
【0003】
この場合、エンジンと空調装置の冷媒圧縮機との間の動力伝達システムに設けられたクラッチが遮断されている時(空調装置のOFF状態)と、クラッチが接続されている時(空調装置のON状態)とでは、エンスト防止のためにフューエルカット復帰判定値を異なる値とする必要があるので、空調装置がOFFの時のフューエルカット復帰判定値をaとすると共に、空調装置がONの時のフューエルカット復帰判定値をbとすると、復帰判定値bに対応する空調装置ON時のフューエルカット時間は、復帰判定値aに対応する空調装置OFF時のフューエルカット時間よりも短くなる。それらの間の差は図8の「フューエルカット」の欄に斜線領域として示されている。
【0004】
そこで、この従来技術においては、空調装置が使用されている状態でも、フューエルカット後にエンジンの回転数が空調装置ON時の復帰判定値bよりも少し高めのエアコンカット判定値cまで低下した時に、冷媒圧縮機のクラッチを遮断して空調装置を停止させることにより、フューエルカット復帰判定値を空調装置ON時の復帰判定値bから空調装置OFF時の復帰判定値aに変更し、エンジンの回転数が復帰判定値bに対して比較的に低い復帰判定値aまで低下した時に、フューエルカットを終了してエンジンへの燃料供給を再開すると共に、冷媒圧縮機のクラッチを接続して空調装置の運転も再開するように制御する点に特徴がある。
【0005】
エンジンのフューエルカット期間中にも空調装置の運転を続ける場合には、それ以前から行われていたように、空調装置ON時の復帰判定値bを採用する必要があることから、フューエルカット期間が短くなって、比較的早期にフューエルカットを終了させる必要があったのに比べて、前述の従来技術によれば、フューエルカットの期間が図8に示した斜線領域の分だけ増える結果、フューエルカットの期間が大幅に長くなるという利点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述の従来技術によれば、フューエルカットの期間が長くなるという利点が生じる半面、図8の「A/C」(エアコン)の欄に斜線領域として示したように、フューエルカット後に冷媒圧縮機のクラッチが遮断されて空調装置が運転を停止する期間が、そのような制御を行わない場合に比べて長くなるので、空調装置からの吹き出し温度が図8の最下欄に示したように最大でThだけ上昇するために、高温で不快な暖気が車室内へ流出するという問題がある。
【0007】
本発明は、従来技術におけるこのような問題に鑑み、空調装置が使用されている状態においてエンジンへのフューエルカットが実行されても、空調装置の冷房能力は確保して、不快な暖気が車室内へ流出することを防止すると共に、エンジンのフューエルカット時間を可及的に長く取ることができるような、これらの相反する2つの要求を同時に満たし得るところの、車両用エンジン及び空調装置の新規な制御方法を提供することを目的としている。なお、空調装置という語は、例えば冷蔵庫のように、冷凍サイクルを有する空調装置用以外のものをも含むものとする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、この課題を解決するための手段として、特許請求の範囲の請求項1に記載された通りの車両用エンジンによって駆動される空調装置の制御方法を提供する。
【0009】
車両用エンジンがフューエルカットを実行し、次いで、エンジン回転数が所定の第1判定値まで低下したと制御装置によって判定された時に、制御装置が冷媒圧縮機の吐出量及びトルクを一旦零或いは零に近い値まで低下させた後に、再びそれらを徐々に上昇させるという様式の冷媒圧縮機のトルク制御を行うので、フューエルカット期間中の冷媒圧縮機の運転時間が延長されて、最少限の冷房能力がフューエルカット期間の大部分において確保することができるので、フューエルカット期間中に暖気が車室内へ流入するという問題が解消する。従って、フューエルカット期間における冷房能力の確保と、フューエルカット時間の延長という相反する要求に同時に応えることができる。
【0010】
本発明においては、制御装置によって冷媒圧縮機のトルク制御が開始された後に、エンジン回転数が所定の第2判定値まで低下したと制御装置によって判定された時に、制御装置が車両用エンジンのフューエルカットを終了させることができる。この第2判定値は、冷媒圧縮機のトルクの大きさに応じて変化する値として設定することが望ましい。更に、トルク低下量及び冷媒圧縮機のトルクの上昇速度の一方又は両方を、冷媒圧縮機のトルク制御が開始された時のエンジン回転数、車速、外気温度、空調装置の送風機の送風量を含む車両の運転条件に応じて決定することが望ましい。また、本発明においては、空調装置がOFFの場合は、エンジン回転数が所定の第3判定値まで低下したと制御装置によって判定された時に、制御装置が車両用エンジンのフューエルカットを終了させることができる。なお、3つの判定値は、第1判定値>第2判定値≧第3判定値、の関係がある。
【0011】
本発明においては、冷媒圧縮機として吐出容量が固定の圧縮機を用いることができる。この場合は圧縮機を車両用エンジンによって変速装置を介して駆動する必要がある。この変速装置としては、変速比を無段階に変化させ得る無段変速装置を用いることが望ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の車両用エンジン及び空調装置の制御方法を適用することができるシステムの全体構成を図1に例示する。空調装置用の冷凍サイクル1は、冷媒圧縮機2、凝縮器3、受液器4、膨張弁5、その感温部5a、蒸発器6、配管8等から構成されている。凝縮器3の下流側には高圧センサ18が設けられている。
【0013】
この実施例における冷媒圧縮機2は可変容量型のものであって、例えば、後述のような斜板型の圧縮機を使用することができる。また、冷媒圧縮機2として定容量型の圧縮機を使用することも可能であって、その場合には定容量型の圧縮機を無段変速装置等の変速装置を介して駆動すればよい。図示実施例においては、可変容量型圧縮機2を、電磁クラッチのような動力伝達機構9と、ベルト伝動装置10とを介して駆動している。動力伝達機構9は無段変速装置等の変速装置を含み得る。本発明の場合、動力源は車両に搭載されたエンジン(内燃機関)11である。実施例のエンジン11の吸気通路11aにはスロットルバルブ11bが設けられている。なお、この実施例における可変容量型圧縮機2には電磁式の容量制御弁15が取り付けられているが、その詳細は後に説明する。
【0014】
冷凍サイクル1の蒸発器6は空調装置の空気通路7内に設置される。空気通路7内には送風機12が設けられて矢印のように空気を送る。蒸発器6の下流側には蒸発器吹出温度センサ13が設けられている。空気通路7を出た空気は、図示しないヒータコアや通路切換装置等を経て車室内へ流出する。
【0015】
可変容量型圧縮機2の容量制御弁15を制御するために空調用制御装置14が設けられる。空調用制御装置14は制御のためのパルス電流Inを発生して容量制御弁15へ供給する。そのために、蒸発器吹出温度センサ13から蒸発器吹出温度信号Teが空調用制御装置14へ入力されている。これ以外にも、空調用制御装置14には、内気温度センサ、外気温度センサ、日射センサ、エンジンの冷却水温センサ等の、多数のセンサ類16によって検出された信号とか、空調装置の操作パネル17に設けられている温度設定スイッチ、風量切換スイッチ、吹き出しモードスイッチ、内外気切換スイッチ、冷媒圧縮機2の作動指令を出すエアコンスイッチ等のスイッチ類からの信号も入力されている。
【0016】
エンジン11には、それを制御するためのエンジン制御装置19が設けられている。エンジン制御装置19にはエンジン11の運転状態を検出するために設けられた多数のセンサ類19aから信号が入力されており、その演算結果である制御信号は幾つかのアクチュエータ類19へ供給されてエンジン11を制御する。エンジン制御装置19と空調用制御装置14との間でも、例えば、エンジンの回転数信号Neのような信号がやりとりされる。なお、空調用制御装置14とエンジン制御装置19は一体化されていてもよい。
【0017】
次に、図1に示したシステムを本発明の制御方法によって制御する場合の空調用制御装置14及びエンジン制御装置19の作動について、図2のフローチャートに例示された制御の手順と、図3に例示されたタイムチャートと、図4〜図6に例示された制御マップ等によって具体的に説明する。
【0018】
エンジン11が始動されると、図2に示すフローチャートのステップ101において、車両に取り付けられた各種のセンサ類から車両走行状態の情報を空調用制御装置14及びエンジン制御装置19内の電子式制御装置(ECU)へ読み込む。次のステップ102では、エンジン11の吸気通路11aを開閉するスロットルバルブ11bの開度がアイドリング状態の開度になっているか否かを判定する。言うまでもなく、スロットルバルブ11bと並列にアイドル回転速度制御バルブ(ISCV)が設けられている場合には、スロットルバルブ11bのアイドリング状態における開度は零であるから、このステップにおいてはスロットルバルブ11bが全閉状態になっているか否かを判定することになる。NOであればステップ101へ戻る。
【0019】
ステップ102においてYESと判定されたときはステップ103へ進んで、エンジンの回転数Neが所定のフューエルカット判定値A(第3判定値)よりも大きいか否かの判定を行う。この判定がYESであれば、ステップ104においてエンジン11へのフューエルカットを開始する。NOのときはステップ101へ戻る。フューエルカット開始後のステップ105の判定においては、第1判定値として、空調装置ON時のフューエルカット復帰判定値Bよりも大きな値Cをエアコンカット判定値として設定し、エンジン回転数がエアコンカット判定値C以下になったか否かを判定する。この判定がNOであれば、ステップ106においてフューエルカットを継続するが、YESになるとステップ107へ進み、図4に示すようなマップによって冷媒圧縮機2のトルク制御を行う。
【0020】
まず、エンジン回転数の低下を防止するために、冷媒圧縮機2の駆動軸に作用するトルク(コンプレッサトルク)を一旦0に近い値まで低下させる。これは、動力伝達機構9が電磁クラッチ等を含む場合は、それを遮断すればよいが、図示実施例の場合は冷媒圧縮機2が可変容量型圧縮機であるから、その吐出容量が実質的に0になるように調整してもよい。コンプレッサトルクが実質的に0になった後に、今度は徐々に冷媒圧縮機2の吐出容量を増加させて行くことにより、コンプレッサトルクも徐々に増加させる。それによって、冷凍サイクル1内に少しずつでも冷媒を循環させることにより、蒸発器吹出温度センサ13によって検出される蒸発器6からの冷風の吹出温度が上昇するのを抑制し、車室内へ暖気が吹き出すのを防止する。
【0021】
その際に、コンプレッサトルクの増加に伴って図3に示すようにエンジン回転数が低下するから、過度に低下するとエンストを起こすので、フューエルカット復帰判定値D(第2判定値)を図5に示すような可変の値としてマップに設定しておく。この場合のフューエルカット復帰判定値Dは、例えば、最小値を空調装置OFF時の復帰判定値A(第3判定値)と同じ値にすると共に、最大値を空調装置ON時の復帰判定値Bと同じ値として、それらの間でコンプレッサトルクの大きさに応じて無段階に変化するように設定することができる。
【0022】
そしてステップ108において、エンジン回転数がその時のコンプレッサトルクに対応するフューエルカット復帰判定値D(第2判定値)を下回ったと判定された時は、ステップ109へ進んでフューエルカットを終了してエンジン11への燃料供給を再開するので、再びステップ101へ戻って前述の制御を繰り返す。それまでは、ステップ110においてフューエルカットを継続する。
【0023】
なお、図4に示すようなコンプレッサトルクの制御パターンの代わりに、図2に示すステップ105の判定において、エンジン回転数がエアコンカット判定値C(第1判定値)を下回った時の斜板型圧縮機20のトルク制御のために、冷凍サイクル1及び車両の状態を示すセンサ類の検出値(エンジン回転数、車速、外気温度、送風機12の送風量、等の値)から、予め0よりも大きいトルクの最小値m、吐出容量増加開始までの待機時間t、トルクの増加速度(勾配)α等の、必要なファクターを決めておいて、図6に示すように制御してもよい。つまり、この例では、前述の例のように吐出容量を一旦0としないで最小値mまでの低下にとどめると共に、コンプレッサトルクを時間tだけ最小値mに据え置いてから勾配αの速度で増加させる。
【0024】
このように、エンジン或いは車両の減速時の制御において、フューエルカット時間の延長を図るために空調装置の冷媒圧縮機のトルクを低減させる一方、それによって冷房能力が極端に低下するのを防止するために、吐出容量が徐々に増加するように冷媒圧縮機を制御することにより、吹出温度の上昇を最大でも図3に示すTl程度に低く抑えると共に、フューエルカット時間を図3に斜線領域として示すように延長することができるので、燃費率の向上と、冷房能力の確保という相反する要求を同時に満足させることができる。
【0025】
本発明の制御方法を実行する場合に必要なコンプレッサトルクの制御は、冷媒圧縮機として可変容量型圧縮機を使用するとか、定容量型の圧縮機を使用する場合には、それを無段変速装置のような変速装置を介して駆動することによって可能になるが、可変容量型圧縮機の一つの例として図7に示した斜板型の可変容量型圧縮機20を図1に示す冷媒圧縮機2として使用する場合について簡単に説明する。図7において21は回転軸であって、図1に示したようなベルト伝動装置10等を介してエンジン(内燃機関)11によって回転駆動される。動力伝達機構9は電磁クラッチを含んでいてもよいし、クラッチ機構を持たない、常時動力伝達型のクラッチレス機構であってもよい。
【0026】
回転軸21には斜板ガイド22が取り付けられる。円盤状の斜板23は中心の穴によって回転軸21に緩挿されていて固定されてはいないので、回転軸21に対して自由に傾斜することができる。斜板23には腕24が一体的に設けられていて、その球状の先端25が、斜板ガイド22の一部に形成されたカム穴26に係合している。斜板23は、回転軸21上のコイルスプリング27によって常に図において右方向に向かって軸方向に押されている。それによって斜板23は、常に傾斜角度(回転軸21と直角に交わる仮想の平面に対する角度)が小さくなる方向に付勢されている。
【0027】
斜板型圧縮機20のハウジング28となるシリンダブロック29には、回転軸21の周りに均等に、例えば5個のシリンダボア30が回転軸21と平行に形成されている。それらのシリンダボア30にそれぞれ挿入されたピストン31の左端部は、シュー32のような減摩手段を介して斜板23の周辺部に対して摺動可能に、且つ斜板23の傾斜を許すように係合している。
【0028】
シリンダブロック29には弁板33とリアハウジング34が図示しないボルトのような手段によって一体的に取り付けられている。また、リアハウジング34の一部には、先に触れた電磁式の容量制御弁15が取り付けられている。リアハウジング34の中心部には吸入室35が形成されると共に、その周囲には第1吐出室36が形成されていて、第1吐出室36は絞り通路37を介して第2吐出室38と連通している。
【0029】
吸入室35に設けられた吸入口39は前述の冷凍サイクル1における蒸発器6に接続されて、低温、低圧の冷媒を受け入れる。第2吐出室38に設けられた吐出口40は前述の凝縮器3に接続されて、高温、高圧の冷媒を凝縮器3へ送り出すようになっている。従って、吸入室35には最も低圧の吸入圧Psが作用すると共に、第1吐出室36には最も高圧の吐出圧PdHが作用し、第2吐出室38には吐出圧PdHよりも少し減圧された吐出圧PdLが作用する。
【0030】
斜板23を収容している斜板室41は、絞り通路42を介して吸入室35と連通していると共に、通路43を介して容量制御弁15の制御圧室44と連通している。詳細な説明は省略するが、容量制御弁15は、ソレノイド45が電気的に付勢されて弁棒46が上下方向に移動する時に弁部開口47の大きさが変化することによって、吐出圧PdHの冷媒の一部を減圧して通路43を介して斜板室41へ送り込むので、斜板室41内は、吐出圧PdHと吸入圧Psとの中間の、任意の高さの制御圧Pcを帯びることになる。
【0031】
従って、図1に示したように、空調用制御装置14から冷媒圧縮機2(この場合は斜板型圧縮機20)の電磁式容量制御弁15へ供給するパルス状の制御電流Inのデューティ比を変化させて、ソレノイド45への通電量を変化させると、斜板室41内の制御圧Pcの大きさを任意に変化させることができる。
【0032】
なお、容量制御弁15の弁棒46にはソレノイド45の電磁気的付勢力だけでなく、第1吐出室36の高圧の吐出圧PdHと、少し減圧された第2吐出室38の吐出圧PdLとの差圧による付勢力も作用しているので、それらの合力が弁棒46を上下方向に移動させることになる。この場合の差圧は、絞り通路37を通過する冷媒の流量、即ち、斜板型圧縮機20の吐出量に対応しているので、吐出量を自動的に指令値に合致させるようにフィードバック制御する作用をする。
【0033】
図7に示された斜板型の可変容量型圧縮機20はこのように構成されているから、空調装置の作動状態において回転軸21がエンジン11によって回転駆動されると、斜板23の傾斜角度に応じて決まるストロークにおいてピストン31が軸方向に往復運動をして、吸入室35の低圧の冷媒を作動室48内へ吸入し、圧縮して高圧の冷媒を第1吐出室36へ吐出する。
【0034】
この時に、作動室48内において冷媒を圧縮することによってピストン31に作用する圧縮反力と、斜板室41内の制御圧Psによってピストン31に作用する背圧による力、更には関連するコイルスプリング27等の付勢力等が釣り合う位置まで、斜板23が回転軸21上を移動する。斜板23の腕24は球状の先端25によって斜板ガイド22のカム穴26に係合しているから、斜板23が軸方向に移動する際に、図7の中に鎖線によって例示したように、斜板23の傾斜角度が無段階に変化する。それによってピストン31のストロークが無段階に変化するので、空調用制御装置14の作動によって斜板室41の制御圧Pcを変化させることにより、斜板型圧縮機20の吐出容量を零と最大値との間で自由に変化させることができる。
【0035】
斜板型圧縮機20の回転軸21に作用しているトルクの大きさは、例えば、動力伝達機構9から回転軸21までの部分にトルク計測手段を設けることによって検出することができる。この実施例においてはソレノイド45へ供給する制御電流Inの電流値に加えて、冷凍サイクル1に設けられた高圧センサ18の検出値と、エンジン制御装置19から得られるエンジン11の回転数Neとからトルクを算出することができる。
【0036】
なお、それと反対に制御電流Inの目標値を算出する場合には、トルクの目標値と、エンジン11の回転数Neと、高圧センサ18が検出する圧力値とから演算が可能である。それによって算出された制御電流値を利用して、回転軸21のトルクが目標値に合致するように斜板型圧縮機20を制御することもできる。
【0037】
また、冷媒圧縮機2として定容量型の圧縮機を用いる場合には、動力伝達機構9として無段変速装置のような変速装置を使用すればよい。この場合は無段変速装置の入力回転数と出力回転数との比である変速比を変化させることによって、冷媒圧縮機2の吐出量と、冷媒圧縮機2を駆動するトルクの大きさを自由に変化させることができる。従って、この場合も、前述の実施例と同様な効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】車両用エンジンによって駆動される空調装置の全体を示すシステム構成図である。
【図2】本発明の制御の手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明によって制御が行われた場合の、車両用エンジンと空調装置の状態を例示するタイムチャートである。
【図4】本発明による圧縮機のトルク制御のパターンを例示する線図である。
【図5】本発明による制御の第3判定値を決定する方法を例示する線図である。
【図6】本発明による圧縮機のトルク制御の他のパターンを例示する線図である。
【図7】斜板型の可変容量型圧縮機の構造を例示する縦断面図である。
【図8】従来技術によって制御が行われた場合の、車両用エンジンと空調装置の状態を例示するタイムチャートである。
【符号の説明】
1…冷凍サイクル
2…冷媒圧縮機
7…車両用空調装置の空気通路
9…動力伝達機構
11…車両用エンジン
11b…スロットルバルブ
13…蒸発器吹出温度センサ
14…空調用制御装置
15…電磁式の容量制御弁
16…センサ類
17…空調装置の操作パネル
18…高圧センサ
19…エンジン制御装置
20…斜板型の可変容量型圧縮機
21…回転軸
23…斜板
31…ピストン
35…吸入室
36…第1吐出室
41…斜板室
44…制御圧室
45…ソレノイド
46…弁棒
47…弁部開口
48…作動室
Pc…制御圧
Ps…吸入圧
PdH…吐出圧
PdL…少し減圧された吐出圧

Claims (7)

  1. 車両用エンジンによって冷凍サイクルの冷媒圧縮機を駆動するように構成されている空調装置の駆動システムにおいて、前記車両用エンジンが減速時にフューエルカットを実行し、次いで、エンジン回転数が所定の第1判定値まで低下したと前記制御装置によって判定された時に、前記制御装置が前記冷媒圧縮機の吐出量及びトルクを一旦零或いは零に近い値まで低下させた後に、再びそれらを徐々に上昇させるという様式の冷媒圧縮機のトルク制御を行い、前記冷媒圧縮機のトルク制御が開始された後に、エンジン回転数が所定の第2判定値まで低下したと前記制御装置によって判定された時に、前記制御装置が前記車両用エンジンのフューエルカットを終了させ、空調装置がOFFの場合は、エンジン回転数が所定の第3判定値まで低下したと前記制御装置が判定した時に、フューエルカットを終了させることによって、最少限の冷房能力の確保と、フューエルカット時間の延長とを両立させると共に、3つの判定値が、第1判定値>第2判定値≧第3判定値、の関係にあることを特徴とする、車両用エンジンによって駆動される空調装置の制御方法。
  2. 請求項1において、前記第2判定値を、前記冷媒圧縮機のトルクの大きさに応じて変化する値として設定したことを特徴とする、車両用エンジンによって駆動される空調装置の制御方法。
  3. 請求項1において、トルク低下量及び前記冷媒圧縮機のトルクの上昇速度の一方もしくは両方を、前記冷媒圧縮機のトルク制御が開始された時のエンジン回転数、車速、外気温度、空調装置の送風機の送風量を含む車両の運転条件に応じて決定することを特徴とする、車両用エンジンによって駆動される空調装置の制御方法。
  4. 請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記冷媒圧縮機が可変容量型の圧縮機であることを特徴とする、車両用エンジンによって駆動される空調装置の制御方法。
  5. 請求項4において、前記冷媒圧縮機が斜板型の可変容量型圧縮機であることを特徴とする、車両用エンジンによって駆動される空調装置の制御方法。
  6. 請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記冷媒圧縮機が吐出容量固定の圧縮機であって、前記車両用エンジンによって変速装置を介して駆動されることを特徴とする、車両用エンジンによって駆動される空調装置の制御方法。
  7. 請求項6において、前記変速装置が変速比を無段階に変化させ得る無段変速装置であることを特徴とする、車両用エンジンによって駆動される空調装置の制御方法。
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