JP3834997B2 - 工作機械 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ローダ等のワーク供給手段を備え、自動運転される工作機械に関する。
【0002】
【従来の技術】
ローダを備えた工作機械において、素材無し状態となったり、製品満載状態となって機械が待機状態となることがある。すなわち、多数のワークを連続して順次加工する場合に、ローダの受取位置への前工程からの素材ワークの供給が遅れて、ローダによるワークの搬入ができなくなることがある。また、後工程がつかえて、ローダのワーク搬出位置が加工済みの製品ワークで満載状態となって、搬出できなくなることがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような場合に、機械が停止するため、熱変位が連続加工時の変位量と異なるようになり、熱変位補正が適正に行えず、次のワークの加工精度に悪影響を与えることがある。
【0004】
この発明の目的は、ワークの搬入,搬出不能状態になっても、加工再開時における加工精度が維持できる工作機械を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明の工作機械は、ワーク(W)を支持するワーク支持手段(3)、およびワーク(W)に対して工具(15)により加工を行う加工手段(20)を有する工作機械本体(1)、この工作機械本体(1)を制御する制御手段(21)と、ワーク供給台(13)の供給位置(P)のワーク(W)を前記ワーク支持手段(3)に供給しかつこのワーク支持手段(3)から加工済のワーク(W)をワーク排出台(14)の排出位置(Q)に排出するワーク供給手段(2)と、前記供給位置(P)のワーク(W)の有無を検出する素材無し検出手段(29)と、前記排出位置(Q)のワーク(W)の有無を検出する製品有無検出手段(30)とを備える。前記制御手段(21)は、前記製品有無検出手段(30)によりワーク有りと検出されまたは前記素材無し検出手段(29)により素材無しと検出された状態が所定時間続いたことを検出する判別手段(25)と、この判別手段(25)により前記状態が所定時間続いたと判別されると、前記ワーク支持手段(3)に支持されたワーク(W)に前記工具(15)が干渉しない範囲で前記工作機械本体(1)の各軸を動かせる仮加工プログラム(28)を実行する空運転手段(26)とを有する
この構成によると、ワーク供給手段(2)により素材となるワーク(W)をワーク支持手段(3)に搬入し、この搬入されたワーク(W)の加工手段(20)による加工が完了すると、その加工済みワークである製品ワーク(W)をワーク供給手段(2)で排出する。この加工および搬入,搬出の繰り返し過程で、前記供給位置(P)に素材となるワーク(W)がないことや、前記排出位置(Q)にワーク(W)があることで、ワーク供給手段(2)によるワーク支持手段(3)に対するワーク(W)の搬入または搬出ができない状態になると、制御手段(21)の空運転手段(26)の制御により仮加工プログラム(28)を実行させ、ワーク(W)に前記工具(15)が干渉しない範囲で前記工作機械本体(1)の各軸を動かせる。このように非切削運転が行われることにより、加工中に限りなく近い機械の熱変位が維持される。そのため、搬入,搬出が可能となって加工が再開されたときに、次のワーク(W)が精度良く加工できる。
【0006】
この発明において、前記仮加工プログラム(28)は、前記制御手段(21)で実行されて加工を行うプログラムである加工プログラム(23)に対して、所定の処理を加えて前記制御手段(21)に実行させるプログラムであり、前記所定の処理として、原点オフセットを行うことにより、前記ワーク支持手段(3)に支持されたワーク(W)に前記工具(15)が干渉しない範囲の移動に止めるものとしても良い。
このように原点オフセットを利用することにより、本加工の加工プログラム(23)を利用して、本加工に近い非切削運転の動きを簡単な処理で行わせることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
この発明の一実施形態を図面と共に説明する。この実施形態は、タレット式の旋盤に適用したものである。この工作機械は、工作機械本体1と、ワーク供給手段であるローダ2と、工作機械本体1およびローダ2を各々制御する制御手段である本体制御手段21およびローダ制御装置22を備える。工作機械本体1は、ワーク支持手段である主軸3と、刃物台であるタレット5を備えた加工手段20とで構成される。加工手段20は、タレット5の他に、刃物台の駆動系と、クーラント(切削油)の供給等を行う加工補助装置31等を備える。主軸3は、ワークWを把持する主軸チャックを有しており、主軸台4に設置されて主軸モータ(図示せず)により駆動される。
【0009】
タレット5は、タレットキャリッジ6に、タレットバー5a(図2)を介して割り出し回転および前後(Z軸方向)の移動が可能に搭載されており、外周面の各部に取付けられた任意の工具15を回転割り出し可能である。タレットキャリッジ6は、ベッド16に設けられたレール19に沿って左右(X軸方向)に移動可能であり、サーボモータおよび送りねじからなる第1の送り機構17で進退可能とされている。タレット5の前後の送りは、タレットキャリッジ6に搭載されたサーボモータおよび送りねじからなる第2の送り機構18で進退可能とされ、これら第1,第2の送り機構17,18により、工具15の切込みおよび送りが行われる。
【0010】
ローダ2は、工作機械本体1の上方に架設したレール7に走行台8を設置し、走行台8に前後移動台9を介して昇降ロッド10を設置したものである。昇降ロッド10の下端にはローダヘッド11が設けてある。ローダヘッド11は、2個のローダチャック12を、主軸3に対向する面と下面とに各々有し、両ローダチャック12の位置は、旋回機構等(図示せず)で互いに入れ替え可能である。
ローダ2の走行台8の走行範囲において、ワーク供給台13とワーク排出台14とが工作機械本体1の両側に配置されている。ワーク供給台13およびワーク排出台14は各々コンベヤ装置等からなる。ワーク排出台14は、次工程の工作機械(図示せず)へのワーク供給台となる。
【0011】
制御系を説明する。本体制御装置21は、コンピュータ式の数値制御装置およびプログラマブルコントローラ等からなる。ローダ制御装置22は、所定のプログラム(図示せず)に従ってローダ2を制御する手段であり、これら本体制御装置21とローダ制御装置22とは、互いに動作確認等の信号を授受して制御を行う。
本体制御装置21は、加工プログラム23を演算制御部24で解読し、各軸の送り機構17,18(図2)や主軸モータの駆動制御を行うと共に、タレット5の回転割出しや、加工補助装置31のクーラント供給等の制御を行う手段である。演算制御部24の軸送り制御部には、所定の軸(例えば、切り込み方向の軸(X軸))についての原点オフセット手段27が設けてある。また、演算制御部24は、各軸の送りを熱変位に応じて適宜の方法で補正する熱変位補正手段(図示せず)を有している。このような本体制御装置21において、判別手段25および空運転手段26が設けてある。
【0012】
判別手段25は、ローダ2によるワークWの搬入ができない状態および搬出ができない状態を判別する手段である。判別手段26による判別は、ワーク供給台13上の供給位置PのワークWの有無を検出する素材無し検出手段29と、ワーク排出台14上の排出位置Q上のワークWの有無を検出する製品有無検出手段30の検出信号に基づいて行うものとしてある。これら素材無し検出手段29および製品有無検出手段30は、例えば光電スイッチ等のセンサ類からなる。
空運転手段26は、仮加工プログラム28に従って所定の条件で工作機械本体1に非切削運転をさせる手段である。空運転手段26は、演算制御部24に仮加工プログラム28を実行させるものとしてある。仮加工プログラム28は、非切削運転として、ワーク支持手段である主軸3および加工手段20に実加工に近い動作をさせるものである。仮加工プログラム28は、加工プログラム23に代えて実行されるものであっても、また加工プログラム23を、所定の処理を加えて実行させるものであっても良い。空運転手段26は、非切削運転を行う前記所定の条件として、判別手段25によりワークWの搬入または搬出ができない状態が所定時間続いたことが判別されたときに行うものとしてある。
判別手段25および空運転手段26の処理は、後に図4の流れ図と共に説明する。
なお、本体制御装置21には、上記各手段の他に、所定時間、仮加工プログラム28の実行が続き、復旧しなかった時に、機械サイクルを停止させる手段(図示せず)が設けてある。これにより、エネルギの無駄が省かれる。
【0013】
上記構成の動作を説明する。ワーク供給台13の供給位置Pの素材ワークWは、ローダ2の下向きのローダチャック12で把持される。ローダ2は、把持した素材ワークWを持って、主軸3の前に移動し、主軸3に把持されている加工済みの製品ワークWを、主軸3と対向するローダチャック12で受け取る(図3)。この受け取り後、2つのローダチャック12,12の位置を入れ替え、素材ワークWを主軸3に搬入する。この搬入後、ローダ2は、前記の受け取った製品ワークWをワーク排出台14の排出位置Qに排出する。この排出後、ローダ2は、ワーク供給台13の供給位置Pに送られた次の素材ワークWを把持し、前記の動作を繰り返す。なお、ローダ2は、素材ワークWを把持した状態で、所定の位置で、主軸3のワークWの加工の完了を待ち、主軸3へ移動する。
ワーク供給台13は、供給位置Pの素材ワークWが無くなると、次の素材ワークWを供給位置Pに移動させる。ワーク排出台14は、排出位置Qに排出された製品ワークWを後工程へ搬出する。
【0014】
このようなワークWの供給,加工,排出の繰り返し過程で、次工程の遅れ等でワーク排出台14の排出位置Qに製品ワークWが残っていて、ローダ2による主軸3の製品ワークWの搬出ができないことがある。ローダ2は、前記の繰り返し動作を行うため、満載で製品ワークWを搬出できない場合は、下向きのローダチャック12に素材ワークWを持った状態で待機することになる。主軸3は、製品ワークWを保持した状態で待機する。また、前工程の遅れで、ワーク供給台13の供給位置Pに素材ワークWがなく、ローダ2で素材ワークWを主軸3に供給できない場合がある。このような場合、ローダ2は、所定の位置で待機することになるが、工作機械本体1は、図4に流れ図で示すように、所定の条件で非切削運転が行われる。
【0015】
まず、製品が満載であるか否か(図4のステップS1)、つまりワーク排出台14の排出位置Qに製品ワークWが残っているか否かが判断され、満載でなければ、素材無しであるか否か(S2)、つまりワーク供給台13の供給位置Pに素材ワークWがあるか否かが判断される。素材有りである場合は、本加工のプログラムである加工プログラム23が実行される(S6)。1個のワークWの加工が終了し、所定のリセット指令が行われると、次のワークWの加工のために、再度ステップS1の判断に戻る。リセット指令がない場合は、加工を終了する。
【0016】
製品満載の判断ステップ(S1)および素材無しの判断ステップ(S2)で、製品満載または素材無しのいずれかに該当する場合は、最初(リセットされた場合は、リセット後の最初)に製品満載または素材無しとなったときから所定時間が経過したか否かが判断され(S3)、所定時間が経過していないときは、製品満載の判断ステップ(S1)の前に戻り、再度製品満載および素材無しの判断ステップ(S1,S2)を繰り返す。この繰り返し過程で、製品満載および素材無しのいずれにも該当しなくなったときは、前記と同様に本加工プログラムが実行される(S6)。
製品満載および素材無しの状態が所定時間続くと、その時間経過の判断ステップ(S3)の後、仮加工プログラムが実行され(S4)、非切削運転される。
【0017】
仮加工プログラム28(図1)は、工作機械本体1の各軸を動かし、クーラント等も制御し、本加工に近い動きをさせる非切削動作プログラムのことである。本加工に近い動きとは、例えば、本加工で行う工作機械本体1の略全ての動作を行い、かつその所定の軸移動に対して、本加工よりも少ない所定の割合の動作を行うか、または所定の軸移動に対して原点オフセットを行うことにより、ワークWに工具15が干渉しない範囲の移動に止める動きのことである。
この原点オフセットは、例えば、図2に示すように本加工で設定されている原点位置Oが(XO ,Z0 )である場合、この原点位置OよりもワークWから遠い位置となる仮原点位置O1 (X1 ,Z1 )にオフセットする。この原点オフセットは、図1の原点オフセット手段27で行われる。このように原点オフセットを利用することにより、本加工の加工プログラム23を利用して、本加工に近い非切削運転の動きを簡単な処理で行わせることができる。
【0018】
この工作機械は、このようにローダ2による主軸3に対するワークWの搬入または搬出ができない状態になったときに、非切削運転をさせるようにしたため、ワークWの搬入,搬出不能状態になっても、加工時の熱変位を維持し、加工再開時における加工精度を維持することができる。
なお、前記実施形態は工作機械本体1が旋盤である場合につき説明したが、この発明は、マシニングセンタ等、工作機械一般に適用できる。また、ローダ2も、前記実施形態のようなガントリ式のものに限らず、各種形式のローダ2を用いたものに適用できる。
【0019】
【発明の効果】
この発明の工作機械は、ワーク供給手段によるワーク支持手段に対するワークの搬入または搬出ができない状態になったときに、ワークに工具が干渉しない範囲で工作機械本体の各軸を動かせる運転を行うようにしたため、ワークの搬入,搬出不能状態になっても、加工再開時における加工精度を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態にかかる工作機械の概念構成を示すブロック図である。
【図2】同工作機械の工作機械本体を示す平面図である。
【図3】その主軸とローダとのワーク受渡し状態を示す側面図である。
【図4】製品満載,素材無しの判断から仮加工プログラムを実行する処理の流れ図である。
【符号の説明】
1…工作機械本体 26…空運転手段
2…ローダ(ワーク供給手段) 28…仮加工プログラム
3…主軸(ワーク支持手段) 29…素材無し検出手段
12…ローダチャック 30…製品有無検出手段
13…ワーク供給台 O…原点位置
14…ワーク排出台 O1…オフセット後の原点位置
15…工具 P…供給位置
20…加工手段 Q…排出位置
21…本体制御装置(制御手段) W…ワーク
25…判別手段

Claims (2)

  1. ワークを支持するワーク支持手段、およびワークに対して工具により加工を行う加工手段を有する工作機械本体と、この工作機械本体を制御する制御手段と、ワーク供給台の供給位置のワークを前記ワーク支持手段に供給しかつこのワーク支持手段から加工済のワークをワーク排出台の排出位置に排出するワーク供給手段と、前記供給位置のワークの有無を検出する素材無し検出手段と、前記排出位置のワークの有無を検出する製品有無検出手段とを備え、前記制御手段は、前記製品有無検出手段によりワーク有りと検出されまたは前記素材無し検出手段により素材無しと検出された状態が所定時間続いたことを検出する判別手段と、この判別手段により前記状態が所定時間続いたと判別されると、前記ワーク支持手段に支持されたワークに前記工具が干渉しない範囲で前記工作機械本体の各軸を動かせる仮加工プログラムを実行する空運転手段を有するものとした工作機械。
  2. 前記仮加工プログラムは、前記制御手段で実行されて加工を行うプログラムである加工プログラムに対して、所定の処理を加えて前記制御手段に実行させるプログラムであり、前記所定の処理として、原点オフセットを行うことにより、前記ワーク支持手段に支持されたワークに前記工具が干渉しない範囲の移動に止めるものとした請求項1記載の工作機械。
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